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厚生労働科学研究費補助金(肝炎等克服政策研究事業)

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Academic year: 2021

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厚生労働科学研究費補助金(肝炎等克服政策研究事業)

分担研究報告書

トルバプタン治療を導入した難治性腹水合併肝硬変症のCONUT法を用いた栄養学的評価と 長期予後に関する検討

研究分担者  島田  昌明  国立病院機構名古屋医療センター  消化器科医長

研究要旨  難治性腹水合併肝硬変症のトルバプタン治療について栄養学的 治療効果と長期予後について検討した。2011年4月以降に腹水合併肝硬変症 44例にトルバプタン治療を導入した。投与前と3週後の腹満をSupport Team Assessment Schedule日本語版(STAS-J)でスコア化したところ、65.9% に腹満の改善を認めた。食事摂取エネルギー量は989±396 kcalから1109± 444 kcalへ増加した(p<0.05)。血清アルブミン(Alb)値、総リンパ球数

(TLC)、総コレステロール(T-cho)値はいずれも増加し、これらから算出 した栄養学的指標であるControlling Nutritional Status(CONUT)スコア は8.6±2.1から7.5±2.7へ改善した(p<0.01)。有効例と無効例について比 較 検 討 す る と 、 有 効 例 は ト ル バ プ タ ン 治 療 導 入 前 の 分 岐 鎖 ア ミ ノ 酸

(Branched Chain Amino Acid: BCAA)製剤投与量が多く(9.4±3.8 vs 7.5

±5.3 g/日、p<0.001)、ループ利尿薬投与量は少なかった(33.1±23.3 vs 38.7±19.4 mg/日、p<0.001)が、無効例では栄養状態不良例(CONUTス コア: 8.2±2.2 vs 9.6±1.6、p<0.05)、低Na血症例が多かった(136.6±4.9 vs 135.1±5.7 mEq/L、p<0.01)。長期予後について、平均生存期間は全体 で412日、無効例は234日であったが、有効例では508日と予後が改善してい た(p<0.05)。以上より患者の栄養状態とループ利尿剤投与量がトルバプタ ン治療効果予測因子となり得る可能性が示唆され、早期のトルバプタン治療 導入やBCAA製剤併用が重要であると考えられた。トルバプタン治療により 難治性腹水合併肝硬変患者の長期予後の改善が期待された。

研究協力者

名古屋医療センター消化器科 岩瀬弘明、平嶋  昇、龍華庸光、

加藤文一朗、浦田  登、後藤百子、

宇仁田  慧、近藤  高、田中大貴

A.研究目的

トルバプタンは腎集合管でバソプレシン V2-受容体拮抗作用を有する新しいタイプの 水利尿薬である。トルバプタンの国内第III 相臨床試験において腹部膨満感の改善率は 62.5%に認め、プラセボの37.3%と比べ有意

に高率であった。そのため従来の利尿薬で効 果不十分な難治性腹水を合併する肝硬変患 者に対し効果が期待されている。

肝硬変患者は低栄養状態の頻度が高く、

Controlling Nutritional Status(CONUT) 法は優れた栄養評価法の1つであり、肝疾患 エンドステージにおける長期予後の予測に も有用であると報告されている。

今回、トルバプタン治療を導入した難治性 腹水合併肝硬変患者について、CONUT法を 用いた栄養学的評価と長期予後について検 討した。

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― 105 ―  B.研究方法

2011年4月から従来の利尿薬で効果不十 分な難治性腹水を合併した肝硬変患者44例 にトルバプタン治療を導入した。トルバプタ ン投与中の飲水制限は行わなかった。トルバ プタン治療導入前と3週後で腹水による腹満 についてSupport Team Assessment Schedule 日本語版(STAS-J)を用い0〜4にスコア化 し、スコアが改善した患者を有効と定義した。

体重、食事摂取エネルギー量、血清アルブ ミン(Albumin: Alb)値、総リンパ球数(Total lymphocyte count: TLC)、総コレステロー ル(Total cholesterol: T-cho)値の変化を検 討した。CONUTスコアはAlb値、 TLC、 T-cho値から算出した。また、分岐鎖アミノ 酸(Branched Chain Amino Acid: BCAA) 製剤投与量、ループ利尿薬投与量および血清 ナトリウム(Na)値を評価した。さらに栄 養学的観点からトルバプタン治療効果と長 期予後について検討した。

統計解析として連続値は平均値±標準偏 差(Mean±SD)で表記し、差の検定はpaired t test、Wilcoxon rank sum testにて行った。

生 存 期 間 は Kaplan-Meier法 を 用 い 、 log-rank testで検定した。p<0.05をもって 統計学的有意差ありと判定した。

本研究は当院臨床研究審査委員会の承認 を得て後ろ向きに検討した。開示すべき利益 相反状態はない。

C.研究結果

患者背景は男性16例、女性28例で、平均 年齢は68.8±14.1歳であった。肝硬変の原因 はアルコール性:11例、B型:2例、C型:17例、

原発性胆汁性肝硬変:5例、自己免疫性肝炎:2 例、Others:7例であり、肝細胞癌の合併を12 例 に認 めた。Child-Pugh分 類 はB:16例 、 C:28例で、Child-Pughスコアは10.0±1.5で あった。

トルバプタン治療導入によりSTAS-Jスコ

アは3.1±0.6から2.0±1.0へ低下した(p< 0.001)。体重の変化は59.0±13.9から53.9± 12.9 kgへ減少した(p<0.001)。STAS-Jは 29例(65.9%)に改善を認めた。食事摂取エ ネルギー量は989±396 kcalから1109±444 kcalへ増加した(p<0.05)。血清Alb値(2.6

±0.5から2.8±0.5 g/dL、p<0.01)、TLC

(988±533から1163±714 /μL、p<0.05)、 T-cho値(108±39から120±42 mg/dL、p< 0.05)はいずれも増加し、CONUTスコアは 治療導入前の8.6±2.1から7.5±2.7へ改善し た(p<0.01)。有効例と無効例についてトル バプタン治療導入前で比較検討したところ、

CONUTスコア(8.2±2.2 vs 9.6±1.6、p< 0.05)、BCAA(9.4±3.8 vs 7.5±5.3 g/日、p

<0.001)、ループ利尿薬(33.1±23.3 vs 38.7

±19.4 mg/日、p<0.001)、血清Na値(136.6

±4.9 vs 135.1±5.7 mEq/L、p<0.01)であ り、栄養状態不良例、低Na血症例で治療効 果は乏しかった。また、有効例ではBCAA製 剤投与量が多く、ループ利尿薬投与量は少な かった。

長期予後について検討すると、トルバプタ ン治療導入後の平均生存期間は412日で、

無効例では234日と不良であったが、有効例 では508日と予後の改善を認めた(p<0.05)。

D.考察

CONUT法による栄養学的評価はたんぱ

く質貯蓄、免疫防御力、 脂質代謝を反映し ており、患者の栄養状態を正常、軽度障害、

中等度障害、 高度障害に分類する。また低 栄養状態を早期に効率的に評価することが 可能である。CONUT法により肝硬変患者の 63%が低栄養状態と報告されている。今回の

CONUTスコアの検討からトルバプタン導

入前は中等度もしくは高度の栄養障害を呈 していたと考えられた。

肝硬変患者に低Na血症、浮腫、腹水の合 併があるとQOLが低下し、特に腹水貯留は

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― 106 ―  生命予後を悪化させると報告されている。腹

水貯留による腹部膨満感は苦痛な身体症状 であることから、医師や医療スタッフによっ て患者の身体症状を評価し、患者にとって負 担がない評価法であるSTAS-Jを使用した。

STAS-Jスコアの改善は65.9%に認め、難治 性腹水でも効果のある治療と考えられた。腹 満の改善とともに患者の苦痛は軽減もしく は消失し、食事摂取エネルギー量が増加した。

血清Alb値、TLC、T-cho値のCONUTスコア 構成3因子およびCONUTスコアはいずれも 有意に改善した。トルバプタン治療導入前の 患者背景について有効例と無効例を比較検 討すると、有効例はBCAA製剤投与量が多く、

ループ利尿薬投与量は少なかったが、無効例 では栄養状態不良例や低Na血症例が多く、

治療導入前の効果予測因子となり得る可能 性が示唆された。

腹水合併肝硬変患者の予後は不良である と報告されている(6ヶ月:62%、12ヶ月:56%、

24ヶ月:49%)。今回検討した症例は難治性腹 水を合併するエンドステージの肝硬変症で、

予後は極めて不良なことが予想されたが、ト ルバプタン治療導入により平均生存期間は 無効例と比較し有効例で有意に改善を認め たことは、栄養状態の改善が予後に寄与した ことが推察された。

トルバプタン治療は難治性腹水を有する エンドステージの肝硬変患者の栄養状態を 改善し、さらには予後の向上をもたらすこと が期待された。

E.結論

トルバプタンは難治性腹水合併肝硬変症 において有効で、患者の栄養状態を改善する 治療であると考えられた。患者の栄養状態と ループ利尿剤投与量は効果予測因子の可能 性があり、早期のトルバプタン治療導入や BCAA 製剤併用が治療効果を上げるために 重要であると考えられた。トルバプタン治療 により長期予後の改善が期待された。

F.研究発表 1.論文発表

なし。

2.学会発表

1) CONUT法を用いた肝性腹水に対するト

ルバプタン投与例の栄養学的検討.島田昌明,

岩瀬弘明,平嶋昇,桶屋将之,龍華庸光,喜 田裕一,江崎正哉,加藤文一朗,浦田  登.

第112回日本内科学会講演会.2015.4.10.み やこめっせ

2) トルバプタンは肝性腹水患者の栄養状態 を改善させるか−CONUT法を用いた検討

−.島田昌明,岩瀬弘明,平嶋昇.日本肝臓 学会総会2015.5.21.熊本ホテルキャッスル 3) 難治性腹水合併非代償期肝硬変に対する トルバプタン治療の効果予測に関する検討.

島田昌明,岩瀬弘明,平嶋昇,龍華庸光,江 崎正哉,加藤文一朗,浦田登,後藤百子,水 田りな子,宇仁田慧,近藤高,田中大貴.第 22回日本門脈圧亢進症学会総会.2015.9.11. パシフィコ横浜

4) The evaluation of tolvaptan therapy concerned with the prediction of effect and long-term prognosis in patients with hepatic ascites. Masaaki Shimada, Hiroaki Iwase, Noboru Hirashima, Nobumitsu Ryuge, Masaya Esaki, Bunichiro Kato and Noboru Urata.

2015.12.5. APDW 2015 Taipei International Convention Center

G.知的財産権の出願・登録状況   なし。

参照

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