北 海道 の雪 氷 No 18(1999)
〜水や氷を素材 とする教育実験〜
キュー プアイスを使 つた教育実験
北海道教育大学 矢作
裕 Cube lce Cooler
は じめに
映像ではな く,自然や現象 に直接触れ る機会が,おとなか らも子 どもか らも遠 ざかつていつている. このような無機 的な環境 の増加のも とでは
,学
校教育や社会教育の場では強調 しす ぎると思われ る く らい 自然や 自然現象 と直接的な接触 がはか られるような内容を準備 する必要がある。あ らゆる場面で 子 どもたち自身が五感 を通 じて体験す るような内容が求め られてい るといえようこの論文の副題 を
「水 を素材 とする」ではな く,「水や氷 を素材 とする」 と しているのは,寒冷地の特性 を意識 しその 教材化 をはか るという特別の意味がこめ られている。この種の実験 には一般 に水 の凍結 に関連 する事 象 を扱 うことが多いので冷熱源が必要 とな る.この論文では,そのための安全で簡単なクー ラー とそ れ を用いた実験の事例 を紹介する.
1:さ いころ氷 によるマイクロクーラー
図1のように,このかわい らしいクー ラーは,まず準備 した
「さいころ氷」(cube iCe)を トレイに盛 ったあ ら塩 (食塩
)の
上で転が し表面に氷 をまぶ す。ついで,それ をラ ップで包み,
輪 ゴムで根元 を とめ「 て るて るぼ うず」のようなかたちに して 使用する
.準
備す るものは トレイに盛 つたあ ら塩,さいころ氷1 個,氷
を包むためのラ ップ (15cln角 ぐらい),それに輸 ゴム1本 であ る.負
の温度の必要がなければ食塩は必要な い.小
さな氷 とその表面に付着 す るだけの塩の量 しか用いないので,低
温実験 のための最小の実験装置 とな る
.使
い終 つた食塩水 は放 置 し ておいて簡単 に再利用で きる.この冷熱源は
,簡
便 さ と安全,安
価,食
塩の再利用の点で とくに学校や社会教育施設 で多人数が同時 に行 う教育実験 に欠か せないもの となる筈である
マイクロクーラーの特性
図2は
,単
に氷をラップで包んただけのクーラーの時間―濡慮の経過を示 したものである.20°C の室温下で,クーラーを温度センサー上に直接おいて放置 したときの記録である.温
度センサー付近 の小領域の温度を2〜5°Cの 範囲に約2時間半保持することができる。あら塩を氷にまぶ したものは図3 のように,‑5°
C以 下に40分程度保つことができ,水の凍結融解を伴う実験に利用することができる。図1 さいころ氷でつ くるクーラー
‑47‑
⁝ ⁝ ノ ル
北海道 の雪氷 No.18(1999)
経過時間 (分)
図
2
氷 だけのクーラーの特性 図3
氷とあら塩によるクーラーの特性2:教
育実験の事例つ ぎのように,い くつもの教育実験の内容 を用意で きるが,そのなかか ら3例を紹介する。いずれも,
数十人が同時に実験 を
,各
自のテー ブル上で進行 させることがで きる。︵9︶ 燃 頭
①空気の流れをみる
②ストロー内にアイスレンズをつくる
③水と氷ではたらくスイッチ
④金属の熱収縮
⑤サーモモジュニルによる温度差発電
⑥水の凍結による体積膨張
⑦水の粘性実験
③.
(l)空気の流れをみる
は じめ に空気の流 れ を検知 す る小 さな風車 をつ くる
.空
気 の動 きに鋭 敏 に反応 す るので,皮膚 の表 面の空気の上昇,クー ラー による空気の下降 を検 出す ることがで きる。②高さ3cIIlをのこす
③のこりは台にする
/2ア
④できぁがり支持台をつかう
│:′1■.:ti lサ 'ナ
図
4
風車 をつ くる‑48‑
時間経過
〈分)
を
①はりがね9cm
イ
:200
︵P︶ 撻 頭
‐: l i… p
す 「 T:■ 1
風車をつくる (図4,5)。
●
正 方形 の図 をき りとる。
0
図の (―)部
分 を切 り取 る.0
対角線 に沿 つて折 る。●
はね の先端 を下 に曲げ る (45度 くらい
).
上昇 気流 に よ る回転 をみ る.
0
台 をひ ざや手 の 甲にのせ る。●
は りがねの台 にはね をのせ る。
●
回転 しは じめ るので,回転 方向 を確 かめ る。
下降気流による回転をみる.
0
テー プル には りがねの台 をお く(図5).0
軸 の 中央 にはね を乗せ る。●
ラ ップにつつんだ氷 を上の台にのせ る。
(2)ス トロー内にアイスレンズをつくる
図6はフ ィル ム状 のス トロー に水 と土 を入れ,クー ラ
ー を使 つて一方 向か ら凍結 させれば
,机
上 で アイス レンズ成 長 の過程 を約5分間で 直接 的 に観察 す る こ とが で き る。図7はス ライ ドグラスの間には さ まれ た水 の凍結 の 実験 (氷 のステ ン ドグラス)を行 つた ときの時 間一 温 度 の経過 を示 して いる
.約
10分間凍結 が進行 しつづ け る。この よ うに
,少
量 の水 を凍結 させ るよ うな さ まざ まな実 験 を行 うこ とがで きる。経過時間 (分)
北 海 道 の 雪 氷 No.18(1999)
図
5
針金でつ くつた支持台と風車颯 …
│ ■
│
図
6
机上につ くるアイスレンズcubelce
氷 と食塩の クーラーで土 を凍 らせ る.
‑49‑
図 7
︵Oo ︶
煽
嘔
鮨 塁
北海道の雪氷 No 18(1999)
("水と氷のスイッチ
長さ5 clnほどのフ イルム状 に した ス トロー に水 を入れ
,細
い短冊状 ア ル ミ箔片を両端 に挿入 して折 り曲げ,ホ ッチキスで封 じる.これ を電子 回 路の抵抗体 として
,図
8のような回路 を構成 する.左
図の状 態で,通常, 水の導電性 のため にラ ンプが点灯 し てい る.この ときス トロー を指 で押して水 を切 ることによつて高抵抗 と し,ランプ (LED)を 一時的 に消す こ とがで きる
.右
図の ようにス トロ ー に食塩 を使 つたマイ クロクー ラー を載せ る と,や
がて ランプが消 え,内部 の水の凍結 に よって導電性 が失 われたことを示すことがで きる.
水
氷 の ス イ ッチ
図
8
水/氷スイッチの部品配置と回路図おわ りに
水や水を素材 とする教育実験のテーマは
,低
温領域の実験が多い.ここに紹介 したもの以外に,た くさんの具体的な教育実験を用意することができる.道
具が簡単なだけに,その利用の しかたに独創 性がもとめられる.このクーラーの特徴は,手
軽に費用を気にせずに実験ができるということだけで なく,数
十人が同時に行う教育実験のアイデアを誘発することにもある.本
年の1月にすでに釧路市の 青少年科学館で外気で作成 した水をつかつたクーラーを冷熱源として水をつ くる実験が行われた。関連する文献
1)平松和彦
北海道新聞記事
「ペットボ トルで人工雪」 1996年11月 18日朝刊
2)矢作
裕
寒冷地における自然科学教育
寒地技術 シンポジウム 1988講演論文集 vo17 59‐60,1988
3)矢作
裕
上はどれほと深 く凍つているか
寒地技術シンポジウム 1989講演論文集vo18 34‐43,1989
0
矢作裕
水や氷を素材 とする教育実験
寒地技術シンポジウム 1992講演論文集 vo19 460‐ 465,1992
5)矢作
裕
滴下法による水の粘性係数の測定寒地技術シンポジウム1994講 演論文集 vol 10483 488,1994
0
矢作裕
コインの電池は使えるか
?
寒地技術シンポジウム 1995 講演論文集 vo111 1 6,19957)矢作
裕
・アイス リウム"の利用と徴速度撮影の効果'寒地技術 シンポジウム
講演論文集 vol l1 7‐14,1995
8)矢作
裕
釧路 と凍土
釧路叢書第31巻 (第二版)釧1路市
第 2版 19963 9)矢作
裕
霜柱を育てる
北海道の雪氷
日本雪水学会北海道支部 19957
10)矢 作
裕
霜柱 を育てる 日本雪氷学会議演論文集 199510
11)矢 作
裕
土や水の凍結融解過程を素材 とする科学教材の構成
北海道大学低温科学研力所共同研究報告 19963
12)矢 作
裕
アイスレンズをつ くる
北海道の雪氷
日本雪氷学会北海道支部 19967
13)矢 作