• 検索結果がありません。

2 表面技術 小特集 : 固液界面における in-situ 観察の最前線 液中 AFM を用いた原子 分子スケール固液界面計測 福間剛士 a 金沢大学 WPI ナノ生命科学研究所 ( 石川県金沢市角間町 ) Atomic- and Molecular-Scale Measureme

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "2 表面技術 小特集 : 固液界面における in-situ 観察の最前線 液中 AFM を用いた原子 分子スケール固液界面計測 福間剛士 a 金沢大学 WPI ナノ生命科学研究所 ( 石川県金沢市角間町 ) Atomic- and Molecular-Scale Measureme"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

— 2 —

1 .はじめに

 原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscopy)1)は,原子・

分子スケールの分解能で表面の構造や物性分布を計測できる 分析技術である。AFMは,大気,真空,液中といった幅広 い環境中で動作する点や,試料の導電性,磁性を問わずに用 いることができる点から,極めて汎用性の高い技術として知 られている。特に,液中で絶縁体を原子スケールで観察でき るという特徴は,数あるナノ計測技術の中でもAFMだけが 持つユニークなものである。この特徴は,絶縁性の試料を対 象とする化学,生物学,地球科学などの分野で特に有用である。

 近年,液中AFMによる高分解能計測技術には目覚ましい 進展があった。例えば,従来 1 分程度の時間を要していた液 中原子分解能観察が 1 秒/フレーム程度まで高速化され,結 晶成長・溶解過程のその場観察が可能となってきた2)。また,

従来 2 次元的だったAFMにおける探針走査方法を 3 次元化 し,固液界面で揺動する水分子や表面構造の 3 次元分布をサ ブナノスケール観察できる技術が開発された3)。さらに,固 液界面における電位分布をナノスケールで計測する技術が開 発され4),電気化学反応が生じる活性サイトのナノスケール 分布やその経時変化を可視化できるようになった5)。これら の技術は,様々な固液界面現象のナノレベルでのin-situ解析 を可能とするものであり,現在,幅広い学術・産業分野への 応用が期待されている。本稿では,これらの最新技術の原理

と応用事例について解説する。

2 .液中周波数変調

AFM

FM-AFM

 2.1 動作原理

 AFMには,いくつかの異なる動作モードがあり,それぞ れに長所・短所があり,現在でもそれらが目的に応じて使い 分けられている。なかでも,周波数変調AFM(FM-AFM)6)は,

最も空間分解能が高い動作モードとして知られている。歴史 的には,FM-AFMは超高真空中で原子スケールの高分解能 観察を行うために専ら用いられていたが,2005 年に筆者ら が液中原子分解能観察を報告したことを契機に7),世界中の 数多くの研究グループでその液中応用が模索され初めた。

 FM-AFMでは,鋭くとがった探針を先端に有する片持ち 梁(カンチレバー)を力検出器として用いる(図 1a)。カンチ レバーをその共振周波数(f0)近傍の周波数で機械的に振動さ せ,探針を試料に近づけると探針-試料間に相互作用力が働 き,カンチレバー振動系の共振周波数がシフトする。この周 波数シフト量を検出し,それを一定に保つように探針-試料 間距離を制御する。この状態で,探針を試料に対して水平方 向に走査すると,探針は試料表面の凹凸をなぞるように上下 するため,その際の探針の軌跡から表面形状像を得ることが できる。図 1bは,純水中でFM-AFM観察したマイカ(雲母)

のへき開表面の原子分解能観察像である3)。この図から,個々 の原子に相当する凹凸構造が明瞭に観察されていることが分

液中 AFM を用いた原子・分子スケール固液界面計測

福 間 剛 士a

a金沢大学 WPIナノ生命科学研究所(〒 920︲1192 石川県金沢市角間町)

Atomic - and Molecular - Scale Measurements at Solid - Liquid Interfaces by Liquid - Environment AFM

Takeshi FUKUMA

a

a WPI Nano Life Science Institute, Kanazawa University (Kakuma-machi, Kanazawa-shi, Ishikawa 920-1192)

Keywords : Atomic Force Microscopy, Solid-Liquid Interfaces, Crystal Growth and Dissolution, Hydration Structure, Metal Corrosion

〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰小特集:固液界面における in-situ 観察の最前線

図 1  (a)FM-AFMの原理.(b)水中で取得したマイカ表面のFM-AFM像3)

(2)

液中AFMを用いた原子・分子スケール固液界面計測 かる。

 2.2 生体分子のサブナノスケール観察

 FM-AFMは,絶縁体の表面を液中で原子分解能観察でき るという他に類を見ない特徴を持っている。この特徴は,導 電性を持たない生体分子やその集合体の構造を高分解能に観 察する必要のあるナノバイオサイエンス分野での研究に有用 であったため,これまでにも数多くの観察事例が報告されて いる。図 2aに示した例は,チューブリンと呼ばれるタンパ ク質分子の集合体を液中でFM-AFM観察したものである8)。 黄色い破線で囲んだ部分が個々の分子に相当しており,その 内部構造が明瞭に観察されている。特に,白い矢印で示した 領域には約 0.5 nmピッチの周期構造が確認されるが,これ はαヘリックスと呼ばれるタンパク質二次構造のヘリカル ピッチによく一致している。このαヘリックスの位置が特定 で き た こ と に よ り,AFM像 と タ ン パ ク 質 の 構 造 モ デ ル

図 2b)を比較することで,分子の配向を完全に決定するこ とができる。また,C末端の位置がAFM画像において明る い輝点であらわされた位置に相当することもわかる。このよ うな,サブナノスケールの表面構造観察は,従来の計測技術 では不可能だったものであり,本技術の有用性がうかがえる。

3 .高速

FM-AFM

 3.1 FM-AFMの高速化

 固液界面では,溶媒,溶質分子はもちろん,表面を構成す る原子や分子でさえも静的な構造をとっているとは限らず,

むしろ動的に拡散,揺動している場合の方が多い。一方で,

従来のFM-AFMによる原子分解能観察は,観察速度が 1 分

/フレーム程度にとどまっていたため,秒オーダーで生じる 動的現象の計測には用いることができなかった。そこで我々 は,長年にわたってFM-AFMの高速化に取り組んできたが,

最近ようやくそれを実現し,約 1 秒/フレームの動作速度で

原子分解能観察が可能になってきた2)。この高速化を実現す るために,我々は様々な要素技術を開発したが,それらは大 きく分けて 2 つの改良に分類できる。第一に,高速に探針を 走査しながら試料表面の凹凸を正確になぞるために,装置を 構成するほとんどすべての要素の帯域,遅延,共振周波数を 改善し,探針-試料間距離制御帯域を従来の 100 Hz程度か ら 10 kHz程度まで向上させた。そして第二に,高速観察を 実現できるほど測定帯域(B)を拡大した状態で,原子分解能 観察に必要な力分解能が得られるよう,力感度を大幅に改善 した。それを可能としたのが,図 3に示す小型カンチレバー である9)。従来のカンチレバーは長さが約 150 μm程度で,

液中でのf0が 130 kHz程度であった。一方,我々が採用した 小型カンチレバーは長さが 10 μm程度,液中でのf0が約 3.5 MHzであり,f0が大幅に向上している。FM-AFMにおけ る力検出限界はf0が高いほど改善するため,これによって 5 kHz程度の帯域においても原子分解能観察に必要な約 10 pNの力分解能が得られるようになった。これは,従来の 約 50 倍に相当するため,原理的には我々の高速FM-AFMは,

全く性能を損なうことなく従来の約 50 倍の速度での高速観 察を実現できる。

 3.2 カルサイト溶解過程の原子スケールin-situ観察  図 4に,カルサイト(CaCO3)結晶溶解過程を高速FM-AFM 観察した例を示す2)。図において,右下から左上の方向に単 原子ステップが溶解により後退していく様子が観察されてい る。この像には,上下のテラスに挟まれるように幅 2 nm程 度の遷移領域がステップ端に形成されている様子が可視化さ れている。この構造は我々の観察によってその存在が初めて 確認されたものであるが,その後の詳細な分析の結果,カル サイトが溶解する過程で中間状態として形成されるCa(OH)2

の単分子層であることが分かってきた。このような中間状態 の存在は,カルサイト溶解機構の詳細な理解につながるほか,

図 2  チューブリンの(a)液中FM-AFM像と(b)分子構造モデル8)

図 3 (a)従来型および(b)小型カンチレバーのSEM像9)

(3)

— 4 — 解  説 有機分子やイオンの添加による結晶成長・溶解制御法の精度

向上にもつながる。この例に見るように,高速FM-AFM観 察によって,従来見ることができなかった原子レベルの動態 観察が可能となったことで,今後,様々な材料の結晶成長・

溶解および自己組織化過程の理解と制御が進展するものと期 待される。

4 .三次元水和・揺動構造計測技術 4.1 三次元走査型力顕微鏡(3D-SFM)

 固液界面では溶媒分子が固体表面と相互作用して,不均一 な 3 次元分布を示す。これを一般には溶媒和構造,水溶媒系 の場合には,水和構造と呼ぶ。また,固体表面の構造も必ず しも静的なものとは限らない。例えば,生体分子表面やポリ マーブラシで終端された表面などの場合,最表面の構造は液 中で熱揺動しており,これも時間的に平均すると 3 次元的な 空間分布を示す。これらの揺動する原子や分子のために,固 液界面は一般に表面に垂直な方向にナノスケールの厚みを もった 3 次元構造を示す。一方で,従来のAFMでは,図 5a に示すように,厚みを持たない 2 次元的な高さ分布像を可視 化する技術である。したがって,本質的に 3 次元的な分布を 持つ界面構造の情報を十分に取得することができない。

 我々は,この問題を解決するために 3 次元走査型力顕微鏡

(3D-SFM:Three-dimensional Scanning Force Microscopy)を 開 発した3)。この方法では,従来のAFMと同様に探針を水平方向 に走査する間に,高速に垂直方向にも探針を走査する(図 5b)。

これにより,探針は 3 次元界面空間をくまなく走査され,そ の間に探針に印可される力の変化を記録することで 3 次元力 分布像が得られる。探針が走査される間,探針は,周囲を取 り囲む水分子やその他の揺動分子と常に相互作用しているた め,得られた 3 次元力分布像に見られるコントラストは,こ

れらの揺動分子の時間平均された空間分布を強く反映する。

 4.2 三次元水和構造観察

 図 6に示した例は,マイカ/水界面において取得した 3 次 元力分布像である3)。この像には,水平方向に帯状に分布す るコントラストが見られるが,これは水和層に相当する分布 である。また,表面近傍には極めて明るいコントラストを示 す輝点のペアが見られるが,これらは探針先端原子と表面原 子との直接的な斥力の分布を表すものである。一方,それら の明るい輝点に挟まれるように,弱いコントラストの輝点が 見られる(矢印)。これらは,表面に吸着した吸着水の分布で ある。このような水和構造は,従来はシミュレーションで計 算するしかなかったが,本技術によってはじめて実験的に直 接観察することが可能となった。

 4.3 三次元揺動構造観察

 図 7に示した例は,脂質膜/水界面で取得した 3 次元力分 布像である10)。脂質膜は,細胞の隔壁を成す細胞膜の基本 構造として知られる。脂質分子は,親水性の頭部と疎水性の 尾部から成り,水溶液中では自発的に二重膜を形成する。こ こで,脂質頭部は一般に熱揺動しているものと考えられてい るが,時間平均すると表面に垂直な方向からやや傾いた角度 を中心に分布しているものと予想されていた。図 7に示した 3 次元力分布像を見ると,水平方向に帯状に分布する水和層 に相当するコトンラストに加えて,表面に垂直な方向からや や傾いた角度で周期的に分布するストライプ状のコントラス トが見られており,上述の予測結果と良い一致を示している。

 このような分子揺動構造の計測には,様々な学術・産業分 野において大きな需要がある。古くから,潤滑,防汚,凝集 制御,結晶成長制御などの目的で,表面や界面に分子 1 層か ら数層程度の極めて薄い分子吸着層を形成する技術が多数開 発され,実用化されてきた。近年これらの表面・界面制御技 術を高度化するために,吸着層の構造を分子レベルで精密に 制御する方法が盛んに模索されている。それを実現するため

図 5 従来のAFMと 3D-SFMの動作原理3)

図 6 マイカ/水界面の 3D-SFM3)

図 7 脂質膜/水界面の 3D-SFM10)

図 4  カルサイト溶解過程の高速FM-AFM像とそのモデル

(2 s/frame)2)

(4)

液中AFMを用いた原子・分子スケール固液界面計測 には,まず,吸着構造を評価する技術が必要であり,本技術

はその問題を解決し得る技術として期待されている。

5 .液中電位分布計測技術  5.1 オープンループ電位顕微鏡(OL-EPM)

 液中におけるナノスケールの電位分布は,様々な界面構造 や界面現象に大きな影響を及ぼすことが知られている。例え ば,タンパク質分子の折り畳み,分子間相互作用,摩擦,潤 滑,電気化学反応など,数多くの例を挙げることができる。

しかし,これまで電解液中においてナノスケールの電位分布 を直接計測できる技術がなかったために,これらの構造や反 応の機構について,ナノレベルでは十分に理解されていない ものが数多く残されている。

 大気・真空中においてナノスケールの分解能で表面電位分 布を計測できる技術として,ケルビンプローブ原子間力顕微 鏡(KPFM:Kelvin Probe Force Microscopy)が知られている11)。 この技術は,金属,半導体だけでなく絶縁体の計測も可能で あり,様々な分野で活用されている。しかしこの方法では探 針-試料間に直流バイアス電圧を必ず印可する必要があるた め,電解液中ではそれによって制御不能な電気化学反応や,

水分子,イオンの再配置が生じる。その結果,カンチレバー に不要な応力が働くほか,測定対象である試料表面近傍の電 位分布も大きく変化してしまい,安定した計測を行うことは できない。

 我々はこの問題を解決するために,オープンループ電位顕 微鏡(OL-EPM:Open-Loop Electric Potential Microscopy)と呼 ばれる技術を開発した(図 84), 12), 13)。この技術では,導電性 の探針と試料の間に,比較的高い周波数(fm)の交流バイアス 電圧を印可する。これによって誘起された静電気力のfm成 分および 2fm成分の振幅と位相を検出し,それらの値から計 算によって探針先端近傍の局所電位を求める。この方法では,

直流電圧を印可する必要がないため,fmを十分に高い周波数 に設定することで,上記のKPFMにおける問題を解決できる。

 5.2 金属腐食反応のin-situ解析

 金属腐食は,産業界における重大な問題の一つであり,毎 年多大な経済損失が生じている。したがって,金属腐食の予 防・予測技術の向上には,非常に大きな経済的意義がある。

金属を水中に浸漬すると,金属表面の比較的溶出しやすい箇 所から金属が金属陽イオンとなって液中に溶出する。した がって,腐食箇所近傍の溶液電位は上昇する傾向にある。こ のような金属の酸化反応が生じる箇所を,アノード領域と呼 ぶ。一方で,金属中に残された電子は,どこか別の場所で還 元反応によって消費される。この還元反応が生じる場所をカ

ソード領域と呼ぶ。典型的には,酸性溶液中ではプロトンの 還元反応が,大気暴露環境下では溶存酸素の還元反応などが 生じる。いずれの場合にも,カソード領域近傍の溶液中では 陽イオンが減少するか,もしくは陰イオンが増加するため,

溶液電位が低下する傾向にある。このような,アノードとカ ソードの組は局部電池と呼ばれ,局所腐食が生じる起源と考 えられている。しかし,従来このような局部電池の分布をナ ノスケールで可視化することはできなかったため,ナノス ケールの腐食機構については不明な点が数多く残されている。

 上述の通り,アノード領域はカソード領域に比べて高い電 位を示すため,液中で電位分布を計測することで,局部電池 分布を可視化できるものと期待される。図 9に,10 mM NaCl溶液中でOL-EPMにより測定した二相ステンレス表面 の形状像と電位像を示す5)。ここで用いたステンレス鋼は,

溶接処理により鋭敏化させることで,意図的に耐食性を劣化 させてある。電位像からは,ナノスケールの分解能で電位分 布が明瞭に観察されていることが分かる。図中に点線で示し た通り,電位像において明るいコントラスト(高電位)を示す 領域の形と,同時に取得した形状像に見られる窪んだ領域の 分布は必ずしも明瞭な相関を示さない。しかし,107 分後に 取得した形状像を観ると,点線で囲った領域が窪んでおり,

この箇所が選択的に腐食(溶出)したことが分かる。これは,

一見,電位像計測によって腐食箇所を予測したように見える が,それは正確な見方ではない。実際には,電位像は腐食反 応が生じている箇所をリアルタイムに示しているのであって,

決して予測しているわけではない。金属表面は一般的に酸化 膜に覆われていることが多く,腐食反応はその酸化膜の欠陥 を通して表面下で進行する場合が多い。腐食反応によって表 面近傍の溶液電位はリアルタイムに変化するのに対し,最表 面の形状は腐食による歪みがある程度蓄積されたタイミング で初めて変化する。従来,AFMによって腐食反応に伴う表 面形状変化を観ることをin-situ観察と呼ぶこともしばしば あったが,そのような計測では腐食反応自体が生じている箇 所をリアルタイムに観ることはできていなかったのである。

これは,腐食研究において極めて重要な発見と言える。OL- EPMによって,従来技術では見ることのできなかった腐食 反応サイトのナノスケール分布の変遷をリアルタイムに可視 化できるようになったことは大きな進歩と言える。

 このような計測技術は,特に,高耐食性材料の局所腐食機

図 9  電解液中でOL-EPMにより計測した鋭敏化処 理後の二相ステンレス表面の形状像と電位像5)

図 8 OL-EPMの構成と原理4)

(5)

— 6 — 解  説 構の研究や耐食性評価に有用である。一般にステンレスをは

じめとする高耐食性材料は,電解液中に浸漬しても短時間で は腐食が進行せず,数か月から 1 年程度の浸漬実験で耐食性 を評価することもしばしばある。そのような浸漬実験は,多 大なコストと時間を要するため,高耐食性材料の開発効率を 低下させる一因となっている。OL-EPM観察では,腐食によっ て形状が変化するのを待つ必要がなく,腐食反応箇所を比較 的短時間で特定することができるため,この問題を解決でき る可能性がある。また,OL-EPM技術は,金属腐食に限らず,

他の様々な電気化学反応サイトのナノスケール分布のin-situ 解析にも応用できるものと期待される。

6 .おわりに

 本稿では,高速FM-AFM,3D-SFM,OL-EPMといった最 新の液中AFM技術とその応用事例を紹介してきた。これら の技術は,固液界面で揺動・拡散する原子,分子,電荷の挙 動をナノレベルで可視化するものであり,化学,生物学,ト ライボロジーなどの様々な分野での研究に大きな進展をもた らすものと期待される。これまで,原子・分子レベルの計測 技術は,主に基礎研究分野で用いられるものと思われてきた が,最近では民間企業でのニーズも日増しに高まっている。

それは,産業的に利用される材料,デバイス,技術が高度化 し,さらなる進化のためには,ナノレベルでの構造や現象の 正確な理解とそれに基づく精密な制御が必要となってきたた めである。本稿で紹介した技術が,学術分野における研究の 進展だけでなく,産業分野における多くのニーズを満たすた めの一助となれば幸いである。

(Received October 18, 2017)

文  献

₁ )G. Binnig, H. Rohrer, Ch. Gerber, E. Weibel ; Phys. Rev. Lett., 49, 57

(1986).

₂ )K. Miyata, J. Tracey, K. Miyazawa, V. Haapasilta, P. Spijker, Y.

Kawagoe, A. S. Foster, K. Tsukamoto, T. Fukuma ; Nano Lett., 17, 4083(2017).

₃ )T. Fukuma, Y. Ueda, S. Yoshioka, H. Asakawa ; Phys. Rev. Lett., 104, 016101(2010).

₄ )N. Kobayashi, H. Asakawa, T. Fukuma ; Rev. Sci. Instrum., 81, 123705

(2010).

₅ )K. Honbo, S. Ogata, T. Kitagawa, T. Okamoto, N. Kobayashi, I.

Sugimoto, S. Shima, A. Fukunaga, C. Takatoh, T. Fukuma ; ACS Nano, 10, 2575(2016).

₆ )T. R. Albrecht, P. Grütter, D. Horne, D. Ruger ; J. Appl. Phys., 69, 668

(1991).

₇ )T. Fukuma, K. Kobayashi, K. Matsushige, H. Yamada ; Appl. Phys.

Lett., 87, 034101(2005).

₈ )H. Asakawa, K. Ikegami, M. Setou, N. Watanabe, M. Tsukada, T.

Fukuma ; Biophys. J., 101, 1270(2011).

₉ )T. Fukuma, K. Onishi, N. Kobayashi, A. Matsuki, H. Asakawa ; Nanotechnology, 23, 135706(2012).

10)H. Asakawa, S. Yoshioka, K. Nishimura, T. Fukuma ; ACS Nano, 6, 9013(2012).

11)M. Nonnenmacher, M. P. O'Boyle, H. K. Wickramasinghe ; Appl.

Phys. Lett., 58, 2921(1991).

12)N. Kobayashi, H. Asakawa, T. Fukuma ; J. Appl. Phys., 110, 044315

(2011).

13)N. Kobayashi, H. Asakawa, T. Fukuma ; Rev. Sci. Instrum., 83, 033709

(2012).

参照

関連したドキュメント

2005 年に世界で初めて液中 FM-AFM による原子・分子 分解能観察に成功した。さらに 2007 年には,モデル生

2

なく、合成後 7 日経過した金ナノ粒子では p‐ニトロフェノールは 2 割減少した。溶媒

 すなわち,高分子ブレンド溶液からスピンコートや溶媒キャストによって相分離する場合,溶媒との溶解性の差が相分離構造

液中レーザーアブレーション(Pulsed Laser Ablation in Liquids: PLAL)によるナノ粒子作製は,パルスレーザー 堆 積 法(Pulsed Laser Deposition: PLD)の

大気圧 MeV-SIMS の開発 通常の SIMS は keV

の分析結果から、生成した粒子が酸化物あるい