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林   紀 行

  1 はじめに   2 教育委員会制度改革の歴史   3 新教育委員会制度をめぐる議論   4 二元代表制と教育委員会制度

教育委員会制度改革とその課題

1 は じ め に

 2011 年に滋賀県大津市の中学校で発生したいじめ事件では,学校の不適切な対 応だけでなく,教育機関をチェックする立場にあるはずの教育委員会がその実態 すら把握できなかったために,生徒や保護者だけでなく,地域住民の信頼を失う 結果となった。最終的には,越直美市長が問題解決に乗り出し,教育委員会から 切り離された第三者調査委員会が真相究明にあたった。  この事件を契機とし,その存廃も含めた議論は政策課題へと転化するが1),教 育委員会制度のあり方をめぐる議論は,かねてから繰り返されてきたものであっ た。そもそも,教育委員会制度の趣旨は,①政治的中立性の確保,②継続性・安 定性の確保,③地域住民の意向の反映にあるとされる。①政治的中立性の確保は, 個人の精神的な価値の形成を目指して行われる教育においては,その内容は中立 公正であることが重要なので,教育行政の執行にあたって,個人的な価値判断や 特定の党派的影響力から中立性を確保することが必要であることを意味する。次 に,②継続性・安定性の確保は,教育は,子どもの健全な成長発達のため,学習 期間を通じて一貫した方針の下,安定的に行われることが必要であるということ である。最後に,③地域住民の意向の反映は,教育は,地域住民にとって身近で 関心の高い行政分野であり,専門家のみが担うのではなく,広く地域住民の意向 を踏まえて行われることが必要であるということになる2)  こうした制度の趣旨に対して,行政学者は,首長部局との乖離から生じる非効 率性を問題としてきたのに対し,教育学者からは,制度の活性化に力点を置いた 主張がなされてきた3)。また,90 年代以降から,地方分権の流れの中で,教育委

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員会制度の見直し論が登場するが4),ここでの焦点は,首長と教育委員会との権 限分担であり,二つに分けることができる。第一のものが,教育委員会の政治的 中立性や継続性・安定性の確保を重視し,教育委員会の役割を再検討するもので ある。たとえば,中央教育審議会教育制度分科会地方教育行政部会が出した「地 方分権時代における教育委員会の在り方について(部会まとめ)」(2005 年)では, 教育に関する事務を安定的に行うためには,その内容の特殊性から,首長と別個 の執行機関が担当することが必要であるとしているが,これは現行制度を前提と しているものである。第二のものは,地方や民間サイドからの提案であり,中央 集権体制の一翼を担う教育委員会制度や対首長関係において不十分な地位にある 教育委員会制度への批判を基調としている。これは,分権改革が進む中で,自治 体の運営スタイルが,「管理型」から「経営型」へとシフトしていく中で,「管理型」 の典型である教育委員会制度そのものに変革を迫るものであったといえよう。  大津市のいじめ事件と一連の議論を受けて,教育の政治的中立性,継続性およ び安定性を確保しつつ,地方教育行政における責任の明確化,首長との連携の強 化を図るために,「地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下,地教行法)」 の一部が改正された。これにより,教育委員長と教育長を一本化した「新教育長」 を置く教育委員会制度が発足した。この制度では,教育委員会の会務を総理し, 教育委員会を代表するのが「新教育長」となるとともに,首長が議会同意を得て, 「新教育長」を任命するので,任命責任の所在が明確になった。また,すべての 地方公共団体に,首長が召集する総合教育会議が設置され,首長と教育委員会が 公の場で教育政策について,協議や調整をすることが可能となった5)  この改革に対し,「教育委員会はなお行政委員会としての性格を保有し,執行機 関として位置づけられてはいるものの(地方自治法180 条の 5),既述した通り, 地方教育行政は基本的には,首長・教育長による「独任的教育行政・学校教育運営」 という構造を擁しており,こうして,同法にあっては政治・行政による学校に対す る包括的規律権・支配権は一段と強化されたと言えよう」6)とし,首長の権限が強 まった点を批判する学説がみられる。確かに,旧制度と比べれば,首長が教育行政に, 「口出し」する法的根拠ができたということもできるが,こうした学説では,この 点ばかりが強調され,2015 年 4 月にスタートしたばかりの制度がどのようにすれ ば有効に機能するかという視点ではほとんど検討されていないようである。そこで, 本論文では,教育委員会制度の変遷に焦点をあてながら,新制度の今後の展開と その効果を発揮するための条件について検討していくこととしたい。

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2 教育委員会制度の歴史

(1)戦後の教育行政制度の確立  戦前は,教育に関する事務は専ら国の事務とされ,地方では,府県知事および 市町村長が国の教育事務を執行していた。小中学校の教員は,府県知事が任命す るとともに,小中学校は市町村長が管理していた。戦後,こうした戦前の教育制 度は否定され,アメリカ型の教育制度が導入さるが,その下敷きとなった米国教 育使節団報告書では,次のように述べられている。  「 初等および中等学校の教育行政 教育の民主化の目的のために,学校管理を現在の 如く中央集権的なものよりむしろ地方分権的なものにすべきであるという原則は, 人の認めるところである。学校における勅語の朗読・御真影の奉拝等の式を挙げる ことは望ましくない。文部省は本使節団の提案によれば,各種の学校に対し技術的 援助および専門的な助言を与えるという重要な任務を負うことになるが,地方の学 校に対するその直接の支配力は大いに減少することであろう。市町村および都道府 県の住民を広く教育行政に参画させ,学校に対する内務省地方官吏の管理行政を排 除するために,市町村および都道府県に一般投票により選出せる教育行政機関の創 設を,われわれは提案する次第である。かかる機関には学校の認可・教員の免許状 の附与・教科書の選定に関し相当の権限が附与されるであろう。現在はかかる権限 は全部中央の文部省ににぎられている。」7)  このようなアメリカの意向を受け,地方公共団体には,首長から独立した教育 委員会が置かれ,教育行政を担うこととなった。次に,1948 年には,教育委員会 法8)が施行され,都道府県の教育委員会は7 名,市町村の教育委員会は 5 名の教 育委員で構成されることとなった(教育委員会法7 条 1 項)。教育委員は,地方 公共団体の議員の中から選ばれる1 人をのぞき,住民の直接選挙で選出されるこ ととなった(教育委員会法7 条 2,3 項)。  この教育委員会制度は,①教育行政の地方分権と独立,②公正な民意に即した 教育行政,③教育の自主性の確保という点に特徴があった。すなわち,一般行政 から独立した執行機関である教育委員会を地方公共団体に設置し,地域住民の意 思を反映した民主的な教育行政を行うことにより,住民にのみ責任を負って教育 行政が行われるべきであるということを意味するものであった9)  しかし,本来,公選制に期待された通りにはならず,教育委員の大半を教育関

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係者が占めたり,教育委員を選出する選挙の投票率が5 割をきるなど,住民の関 心は低調であった。さらに,無投票となる地方公共団体もあり,地方側から反対 の声が相次いだ。また,町村では,一般行政に対して従属的な地位に置かれ,委 員会としての体をなしていないところもみられた10) (2)教育委員公選制の廃止と地教行法の施行  こうした状況を受け,1956 年 6 月に教育委員会法は廃止され,「地方教育行政 の組織及び運営に関する法律」11)が施行された。同法により,首長が議会の同意 を得て,教育委員を任命する(地教行法4 条)とともに,都道府県の教育委員会 は文部大臣の承認,市町村の教育委員会は都道府県教育委員会の承認を得て,教 育長を任命する形式となった(地教行法16 条)。さらに,教育委員会がもってい た予算案や条例案を提出する権限も廃止され,以後は,首長が教育委員会の意見 を聞いて議会に提出することとなった。1956 年 6 月 30 日の文部事務次官通達に よれば,同法の目的は,「教育の政治的中立と教育行政の安定を確保し,教育行 政と一般行政との調和を進め,教育行政における国,都道府県および市町村の連 係を密にすること」であったが,教育行政における地方分権の在り方が見直され, 国が地方の教育行政に関与しやすくなったとともに,首長と教育委員会という教 育行政の二元化をもたらした12) (3)地方分権一括法の施行  1990 年代に始まった地方分権の流れは,教育行政にも波及し,1999 年 7 月に, 「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」が成立し,2000 年4 月より施行された。これにあわせて,地教行法の改正13)が行われ,教育長の 任命承認制度の廃止,指導等に関する規定の見直し,市町村立学校に関する都道 府県の基準設定権が廃止された。これは,地方の主体性を尊重する改革であり, 団体自治の強化といえるものであったが14),その背景には,教育委員会制度の特 質でもある「レイマンコントロール」が機能せず,制度が直化していたことがあ げられていた。

3 新教育委員会制度をめぐる議論

(1)旧教育委員会制度の概要  旧教育委員会制度(2015 年 4 月以前)の特徴として,①首長からの独立性,②

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合議制および③住民による意思決定(レイマンコントロール)をあげることがで きる。①首長からの独立性は,教育委員会は,首長から独立した行政委員会とし て,全ての都道府県及び市町村等に設置されているという特質がある(地教行法 2 条)。次に,②合議制は,原則として 5 人の教育委員で構成される教育委員会は, 教育委員長が主宰する会議で,教育行政における重要事項や基本方針を合議で決 定すること(地教行法13, 23 条),教育委員長は教育委員会を代表し,教育委員 のうちから教育委員会が選挙をしなければならないことである(地教行法12 条)。 最後に,③住民による意思決定(レイマンコントロール)は,教育委員は,人格 が高潔で,教育に関し識見を有するもののうちから,地方公共団体の長が,議会 の同意を得て任命すること(地教行法4 条),常勤である教育長は,教育委員の うちから教育委員会が任命すること(地教行法16 条),教育長は,教育委員会の 指揮監督の下に,教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどることであ る(地教行法17 条)。  教育委員会は,地方公共団体に設置されるが,首長から一定の距離をおいて独 立させた執行機関とすることで,教育の政治的中立,安定性および継続性を確保 しようとしてきた。住民自治の一要素でもあるレイマンコントロールは,首長が 議会の同意を得て任命する5 名の教育委員を通じて実現されるが,教育委員の互 選で選ばれる非常勤の教育委員長だけでは十分な対応ができないことから,高度 な専門性をもった常勤の教育長が必要とされた。教育長は,教育委員長以外の教 育委員のなかから教育委員会により任命され,教育行政に大きな影響力をもって いた。しかしながら,執行機関である教育委員会の補助機関として位置づけられ たため,法制度上は,教育委員会が教育長に対する指揮監督権を有していた15) それゆえ,教育行政の二元化が教育行政の責任の所在の曖昧さをもたらすことに つながっていた。 (2)教育委員会制度をめぐる議論  2005 年に,中教育審の教育制度分科会地方教育行政部会が出した「地方分権時 代における教育委員会の在り方について(部会まとめ)」は,教育行政の問題を 解決するためには,現行制度を前提としながら,教育委員会の組織・運営,教育 長,教育委員会事務局の在り方などを見直すことが必要であるとしている。首長 と教育委員会との関係については,「教育の政治的中立性を強く意識するあまり, 教育委員と首長との意思疎通が十分に行われず,相互の理解が十分でない」と指

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摘したのに対し,地方や民間からは,以下にあるように,制度そのものの見直し や存廃に関する厳しい意見が出された。  「 よって,公立学校施設整備をはじめ,地方行政全般に責任を持つ地方公共団体の長が, 一体的に教育行政に意向を反映させることができるようにするため,必置規制を緩 和し,地方公共団体における教育行政の実施について,教育委員会を設置して行うか, 長の責任の下で行うか,選択可能な制度とするよう強く要望する。」 全国市長会・全国町村会「教育委員会制度の選択制の導入に関する要望」(2006 年 6 月30 日)  「 教育委員会制度については,十分機能を果たしていない等の指摘を踏まえ,教育の 政治的中立性の担保に留意しつつ,当面,市町村の教育委員会の権限(例えば,学 校施設の整備・管理権限,文化・スポーツに関する事務の権限など)を首長へ移譲 する特区の実験的な取組を進めるとともに,教育行政の仕組み,教育委員会制度に ついて,抜本的な改革を行うこととし,早急に結論を得る。」 経済財政諮問会議「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(2006年7月7 日)  「 教育委員会制度が十分機能を果たしていない等の指摘を踏まえ,教育の政治的中立 性の担保に留意しつつ,首長への権限移譲に止まらず,首長から独立した執行機関 である教育委員会の必置規制を撤廃し,首長の責任の下で教育行政を行うことを地 方公共団体が選択できるようにする方向で検討し,結論を得るべきである。」 規制改革・民間開放推進会議「規制改革・民間開放の推進のための重点検討事項に 関する中間答申(2006 年 7 月 31 日)」  こうした議論をまとめると,教育委員会制度の問題は,①権限と責任,②住民の 意向,③審議の在り方,④迅速性・機動性という点に集約することができよう16) これを詳しくみていくと,①権限と責任については,教育委員会を代表する教育 委員長と事務方のトップである教育長との関係が分かりにくいこと,教育委員会 が任命する形式になっている教育長の人選には,首長の意思がかなりの程度まで 反映されていることがある。②住民の意向については,直接選挙で選ばれる首長 との意思疎通や連携に課題があること,教育委員や事務局職員の多くは教育関係 者が占め,閉鎖的な教育行政を行う傾向があることである。③審議の在り方は, 非常勤の教育委員は十分な情報を持っていないこともあり,教育委員会は事務局 案を追認するだけで,実質的な意思決定を行っていないこと,小規模である市町

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村の教育委員会の事務処理体制が不十分であることである。最後に,④迅速性と 機動性であるが,教育委員会の会議は,月に1 ~ 2 回程度しか開催されないので, 迅速な意思決定ができないということである。  こうした議論が展開される中,2013 年 4 月 15 日に,首相の諮問機関である教 育再生実行会議は「教育委員会制度等の在り方について(第2 次提言)」を安倍 晋三首相に提出した。ここでのポイントは,地方教育行政の権限と責任を明確に するために,住民を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせるような 体制を構築することであった。この提言の中では,「首長が任免を行う教育長が, 地方公共団体の教育行政の責任者として教育事務を行うよう現行制度を見直す。 首長による教育長の任命・罷免に際しては,議会の同意を得ることとし,議会が 教育長の資質・能力をチェックする」とされ,首長が任免する教育長が,地方公 共団体の教育行政の責任者として教育事務を行うこと,教育長の任命・罷免に際 しては,議会の同意を得ることとされた。そして,制度設計の詳細は,中教審の 議論に委ねられた17)  この提言を受け,下村博文文部科学大臣は,4 月 25 日に中教審に対して,「今 後の地方教育行政の在り方」について諮問した。その際には,教育再生実行会議 の提言が示した「首長が任免を行う教育長を地方公共団体の教育行政の責任者と する」ことを柱とする「改革の方向性」を踏まえ,具体的実施方法や法制化に関 わる事項の審議を要請した。  中教審では,教育長を責任者にすることについては,早い段階での合意があっ た。これを前提とした制度設計の議論では,教育長を執行機関とすることに対し, 選挙で選ばれていない個人が執行機関として権限をもつことに対して反対する意 見があり,「首長を執行機関,教育長を首長の補助機関としたうえで,教育委員 会を首長の附属機関」とすることを内容とするA 案と,「執行機関としての現行 の制度を維持しつつ,教育委員会と教育長の両者の権限を見直す」ことを内容と するB 案にまとめられた。そして,A 案を軸に検討が進められたが,首長が執行 機関ということは,政治的中立性の確保の上で問題であるということを懸念する 意見が出て,最終的には,A 案をベースとし,「首長を執行機関とし,首長が議 会の同意を得て任命する教育長が首長の補助機関となる(教育委員会は,特別な 附属機関となる)」ことを内容とする「制度改革案」18)B 案ベースとし,「性格 を改めた教育委員会が執行機関となる」ことを内容とする「別案」19)が併記され ることとなった20)

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 この答申を受け,自民党と公明党による与党協議では,関係議員によるワーキ ンググループが設置され,「制度改革案」と「別案」が検討されるが,その折衷 案に妥協点を見いだしていくこととなった。その結果,「教育長と教育委員長を 一本化した新たな責任者(新「教育長」)を置くこととし,首長が議会の同意を 得て任命・罷免する」ことを内容とする「与党合意」21)がまとまった。これは, 教育委員会を執行機関として維持し,教育委員長と教育長を一本化するというも のであった。そして,4 月に地教行法の一部改正法案が提出され,6 月に可決さ れた。 教職員や事務局職員の人事 教育内容等 教科書その他の教材の取り扱い 予算に関すること 議会への議案の提出 首 長 (執行機関) 教育長 (首長の補助機関) 事務局 議 会 同 意 任 命 � 罷 免 教育長が執行する事務 学校、公民館等の設置、管理等 児童生徒等の就学、入学、転学、退学 学校の組織編制 校舎等の施設、教具等の設備の整備 教職員の研修 教職員、児童生徒の保健、安全、厚生、福利 学校等の環境衛生 学校給食 社会教育 文化財の保護 など 特別な場合 のみ指示 =独立性の担保 大綱的な方針の策定 委 員 委 員 委 員 委 員 教育委員会の議を経て策定 勧告(首長又は教育長の事務が大綱的な方針に反する場合、 政治的中立性の確保のため必要がある場合等) 教育委員会の 議に基づいて 基本方針を策定 教育委員会(特別な附属機関) 教育委員会が、教育長の事務執行を 毎年点検・評価し、勧告 【制度改革案のイメージ】 首長が定める大綱的方針の審議 ・ 教職員等の人事異動の基準、懲戒処分の 基準 ・ 教育内容の基本的な事項 ・ 教科書採択の基準 など 教育委員会の議を経て 毎年施策を策定 教育長が毎年定める施策の基本的な事項に ついての審議 教育長の事務執行を毎年、点検・評価 首長又は教育長の諮問を受け、答申 首長又は教育長に勧告 首長が執行する事務 教育委員会の審議事項 ・・・ 特別な場合とは: ・ 教育長が行う事務の執行が著しく適正を欠く 場合や、児童、生徒等の生命又は身体の保護 のため緊急の必要がある場合など * * 委 員 議会の同意を得て任命 委員の任期:4年 委員は一斉に交代しない 【事務執行の責任者】 教育委員会の意見を聴いて指示 指示の内容・理由を公表 図 1 制度改革案のイメージ (中央教育審議会「今後の地方教育行政の在り方について」,15 頁)

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(3)新教育委員会制度の概要  今回の法改正のねらいは,教育行政における責任体制の明確化にあった。その ため,教育委員会を代表する教育委員長と事務方のトップである教育長を一本 化し,迅速かつ機動的に対応が取れる体制を構築することを目的としている。ま た,教育行政の事務の執行権は教育委員会がもち,首長が教育の基本方針を定め た教育大綱を策定し,首長と教育委員が総合教育会議で協議・調整を行うことが 定められた。さらに,教育長の任免権は,教育委員会から首長に移行し,教育委 員会が教育長の任命・罷免に関与できなくなった。首長が議会の同意を得て教育 長を任命するとともに,教育委員会の教育長に対する指揮監督権がなくなることに よって,法制度上における教育委員会と教育長の関係においては,教育長が優位に なった22)。これにより,執行権に対する首長の関与が強まり,教育委員会による 教育長の任免権や指揮監督権がなくなったことから,教育委員会と教育長,首長 の関係が大きく変わるであろうという見方も出ている23)

4 二元代表制と教育委員会制度

(1)議会のチェック機能  地教行法改正法が成立するまでの過程をみると,首長と教育長との関係をどう するのかということが論点であった。すなわち,「地方公共団体を統括する首長 が教育長を任命することで,教育行政全体をコントロールする」という考え方 と「首長と教育長が一定の距離をおくことで,教育行政の政治的中立を確保する」 という考え方の対立があり,どちらの制度にするかが問題であった。  2012 年に実施された第 46 回衆議院議員選挙用に自民党が作成したマニフェス トの「自民党政策BANK」には,「現行の無責任な教育行政システムを是正する ため,首長が議会の同意を得て任命する「常勤」の「教育長」を教育委員会の責 任者とするなど,教育委員会制度を抜本的に改革します」とし,現行の教育委員 会制度の骨格となる部分が既に示されていた。表 1 にあるように,教育再生実行 会議,中教審,そして与党協議へと議論の場は移っていくが,基本的にはこの線 に沿って検討を行い,紆余曲折はあったものの,先に述べた二つの考え方の双方 に配慮して,政治的妥協の産物として現行制度ができたということができよう。

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 今後,この制度がどのように展開されていくのかという点については,首長と 教育委員会,一般行政と教育行政の「ヨコの関係」という視点と国と地方の関係 である「タテの関係」24)でみていくことの意義を指摘する議論もみられるが,地 方公共団体全体の枠組みの中で教育委員会制度をどのように位置づけるのか,す なわち,首長と議会という二元代表制と独立行政委員会である教育委員会との関 係から検討していくことの必要性を論じた先行研究は一部にしかみられない25) 確かに,改正前の地教行法でも,教育委員は,地方公共団体の長が議会の同意を 得て任命される形式であった。しかしながら,「(旧)教育長は教育委員会が任命 する」とされていたのに対し,改正後は,「(新)教育長は地方公共団体の長が議 会の同意を得て,任命する」形式に変わった点にはより配慮が必要であろう。首 長のもつ権限が拡大されたことだけに目が行きがちであるが,首長と教育長の連 携に対しては,教育委員会ではなく,議会によるチェックの重みがより増さなけ ればならない。  中教審での議論においても,議会の重要性はたびたび指摘されてきた。首長と 教育長の権限が強くなることは確実だったので,その職務執行に対する議会の チェック機能がより重要になることは,広く合意があったようである26)。たとえ ば,2005 年 1 月 13 日に中教審教育制度分科会地方教育行政部会がとりまとめた 「地方分権時代における教育委員会の在り方について(部会まとめ)」では,次の ように指摘している。  「 また,首長が教育委員を選任するにあたっては,議会同意を得ることが必要とされ 表 1 改革の経緯 2013 年 04 月 首相の私的諮問機関である教育再生実行会議が「教育委員会制度等の在 り方について(第二次提言)』を提出 2013 年 04 月 下村博文文科大臣が,教育委員会制度の見直しを中央教育審議会に諮問 2013 年 12 月 中央教育審議会が,教育委員会制度の改革案を下村博文文科大臣に答申 2014 年 03 月 与党の教育委員会改革を議論する作業部会が改革案を正式決定 2014 年 04 月 地教行法改正法案を閣議決定,同法案を国会に提出(法律案(閣法第76 号)) 2014 年 06 月 地教行法改正法が成立 2015 年 04 月 地教行法改正法が施行

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ている。教育委員会は,首長から独立した機関として位置づけられているため,そ の選任にあたっての議会の同意は教育委員に適材を確保する上で極めて重要である。 このため,議会は,教育委員の選任について同意するにあたっては,教育委員とし てふさわしい人材か否かを十分吟味し慎重に行うことが望まれる。」27)  具体的なチェックの方法については,中教審答申では,「教育委員の選考の過 程を地域住民に公開することや,議会同意の過程で教育委員の所信表明の機会を 設けるなど,選任方法を工夫することが考えられる」として示されている。これ までの教育委員の任命同意は,多くの場合には,事前に各会派に候補者が挨拶に 行ったり,経歴書が議員に回る程度であった。それについて,議会の側から注文 を出すということはほとんどみられず,不同意になる場合は,首長と議会の対立 の「とばっちり」のようなケースであった。すなわち,議事録に残らない形式的 なチェックが行われていたに過ぎなかった。また,今回の改正では,教育長の任 命には,議会の同意が必要となったが,これはより重い意味をもつ。教育長は, その地方公共団体の教育行政の第一義的な責任者である以上,その資質や適格性 をチェックすることは議会の責務である。  このような問題が指摘されているが,議会は教育行政の監視について,有効に機 能しているといえるのだろうか。文科省が行った 「表 2 教育長の任命同意手続」 の調査によれば,都道府県および政令指定都市では,教育長候補者の所信表明の みを実施したものが約33%と最も多くなっているが,所信表明も質疑もなかった「採 決のみ」という回答が約13%あった。さらに,市区町村では,「採決のみ」が半数 をこえる約52.5%であった。また,教育長の不同意は,それほど多くの件数がある 表 2 教育長の任命同意手続 県・指定市 市町村 ア 議会における教育長候補者による所信表明,質疑 1 (3.8%) 37 (6.7%) イ 議会における教育長候補者による所信表明のみ 10 (33.3%) 94 (17.0%) ウ 議会において首長に対する質疑 3 (10.0%) 161 (29.2%) エ 議会において所信表明や質疑はなく採決のみ 4 (13.3%) 290 (52.5%) オ その他 1 (3.8%) 40 (7.2%) (出典) 文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課「新教育委員会制度への移行に関す る調査(平成27 年 12 月 1 日現在)データ一覧」

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わけではない28)。こうしてみてみると,教育長の任命手続において,議会が期待さ れた役割を十分に果たしているとは言い難い状況にあり,中教審の会議でみられた 議会のチェック機能に期待するということに沿わない結果となった。  また,教育委員の任命同意についてみると,より厳しい状況にあると考えられる。 メディアのニュース検索(全国紙,通信紙および地方紙)からは,ここ最近の教育 委員の不同意の例は見当たらなかった。そこで,2015 年 3 月から 2016 年 12 月ま での岡山県議会,岡山市議会および倉敷市議会における状況を調査した(地教行 法の改正は2015 年 4 月から施行されるが,3 月議会で同意の議案があったため,3 月からの調査とした)。その結果を示したのが表 3 である。議会に最も期待されて いたはずの教育長の同意であるが,岡山県議会では,候補者の所信表明のみが行わ れ29),それに対する質疑や討論は行われなかった(教育長の任命同意に関する議第 60 号)。新制度の趣旨からすれば,各論にまで踏み込んだ質疑が議会には求められ たはずであるが,旧地教行法の教育長が新教育長にそのままなったということもあ るのか,所信の内容は,ごく一般的な内容に留まった。次に,岡山市議会では,従 来の教育委員と同じく,教育長の任命同意の議案では,所信表明,質疑,討論の 全てが行われておらず,「素通り」ともいえる状況であった(2016 年 12 月時点で は,倉敷市では,改正前の地教行法に基づく教育長のため,市議会で教育長の任命 同意の議案は取り扱われていない)。また,教育委員の任命同意についてみると,3 議会ともに,委員会付託,質疑,討論,そして所信表明全てが行われておらず,任 命同意の手続が粛々と行われた。これでは,事後にどのように議会のチェック機能 が働いたのかを検証することはできず,制度改革は十分に効果があったとはいえな いだろう。 表 3 岡山県議会,岡山市議会および倉敷市議会における任命手続(2015 年 3 月~) 日時 対象 結果 委員会 質疑 討論 所信 その他 岡山県議会 15 年 3 月 19 日 教育長 同意 × × × ○ 15 年 12 月 22 日 教育委員 同意 × × × × 岡山市議会 15 年 9 月 24 日 教育委員 同意 × × × × 16 年 8 月 24 日 教育委員 同意 × × × × 16 年 9 月 2 日 教育長 同意 × × × × 倉敷市議会 16 年 3 月 29 日 教育委員 同意 × × × × 挨拶のみ (注)各議会の議事録をとりまとめた。委員会は,委員会付託の有無を示す。

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(2) おわりに  新教育委員会制度を構築する際には,議会に対する期待は大きかったものの, 当事者である議会側はそもそもこの問題に対する関心が薄かった。地方公共団体 内における教育行政の変化を二元代表制の視点からみていくという視点が欠如し ていたように考えられる。それゆえ,教育行政制度だけでなく,二元代表のあり 方や住民自治の視点からの見直しが必要であるといえよう30)  また,そもそもわが国の地方自治制度は,これまでの社会情勢を前提としたも のでいいのかという観点からの検討も必要であろう。具体的に言えば,少子高齢 化による人口減少と地方公共団体間の格差という観点である。たとえば,教育委 員会法制定時には,市町村の規模と教育委員会の関係が議論され,人口1 万人未 満の地方公共団体に設置することの是非が議論されていた31)。ところが,今回の 一連の議論では,こうした観点からの検討が抜け落ちていた。平成の大合併を経 て,地方公共団体の規模は格段に大きくなり,かつてのような共同体的要素はほ とんどなくなってしまっている。名誉職的な要素が強かった教育委員が前提とし ていたのは,そのような共同体的要素があった地方公共団体の存在だったはずで ある。したがって,その前提が変わったのであれば,首長と教育長との関係だけ でなく,教育委員の構成をどうするのか,現行の一元的な制度でよいのかまで踏 み込んだ検討が必要であったと考えられる。  今後の課題は,首長と教育長が連携した教育行政が展開され,議会が適切に チェック機能を果たしたのかということになるが,本論文では2015 年 4 月以降 のそうした活動にまで踏み込んだ調査をすることができなかった。教育長や教育 委員の任命同意だけでなく,総合教育会議の運営を議会が審議の中でどのように 扱ってきたのか,また,二元代表制は,教育行政の分野で適切に機能したのかな どの実証研究を今後の課題としたい。   1)  堀内孜「教育委員会制度改変と学校経営の自律性―公教育経営における教育行 政と学校経営の新たな関係―」『日本教育経営学会紀要』第57 号 (2015 年),2 頁。   2)  文部科学省初等中等教育局「教育委員会制度について」 (2013 年 2 月) (http:// www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/dai3/siryou2.pdf,アクセス日 2016 年 12 月 30 日)   3) 村上祐介『教育行政の政治学』 (木鐸社,2011 年),41 ~ 44 頁。   4)  高津芳明「「教育行政の一般行政からの独立」再考」日本教育政策学会年報編集 委員会編『日本教育政策学会年報』第18 号(八月書館,2011 年 7 月),101 頁。   5)  文部科学省「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律

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(概要)」   6)  結城忠「新たな教育委員会制度の憲法・学校法学的評価」白鷗大学教育学部『白 鷗大学教育学部論集』第 9 巻 1 号(白鴎大学,2015 年 9 月),95 頁。   7) 米国教育使節団報告書(要旨)(昭和 21 年 3 月 31 日)   8) 教育委員会法(昭和 23 年 7 月 15 日法律第 170 号)    (委員)第7 条 都道府県委員会は 7 人の委員で,地方委員会は 5 人の委員で,こ れを組織する。    2 第 3 項に規定する委員を除く委員は,日本国民たる都道府県又は市町村の住民 が,これを選挙する。    3 委員のうち 1 人は,当該地方公共団体の議会の議員のうちから,議会において, これを選挙する。   9) 平原春好『教育行政学』(東京大学出版,2007 年),9 頁。  10) 坂田期雄『地方制度の構造と実態』(ぎょうせい,1979 年),78 ~ 79 頁。  11) 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和 31 年 6 月 30 日法律第 162 号)    (組織)第3 条 教育委員会は,5 人の委員をもつて組織する。ただし,町村の教 育委員会に あつては,条例で定めるところにより,3 人の委員をもつて組織する ことができる。    (任命)第4 条 委員は,当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で,人格が 高潔で,教 育,学術及び文化(以下単に「教育」という。)に関し識見を有するも ののうちから ,地方公共団体の長が,議会の同意を得て,任命する。    (罷免)第7 条 地方公共団体の長は,委員が心身の故障のため職務の遂行に堪え ないと認める場合又は職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると 認める場合においては,当該地方公共団体の議会の同意を得て,これを罷免する ことができる。    (教育長)第16 条 教育委員会に,教育長を置く。    2 都道府県に置かれる教育委員会(以下「都道府県委員会」という。)は,文部 大臣の承認を得て,教育長を任命する。    3 市町村又は第 2 条の市町村の組合におかれる教育委員会(以下「市町村委員会」 という。)は,第6 条の規定にかかわらず,当該市町村委員会の委員のうちから, 都道府県委員会の承認を得て,教育長を任命する。  12)  大西斎「教育委員会制度のありかたと課題についての一考察」『九州産業大学国 際文化学部紀要』第55 号(2013 年),81 ~ 82 頁。  13) 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(法律第 87 号)    (教育長)第16 条 教育委員会に,教育長を置く。    2 教育長は,第 6 条の規定にかかわらず,当該教育委員会の委員(委員長を除く。) である者のうちから,教育委員会が任命する。    3 教育長は,委員としての任期中在任するものとする。ただし,地方公務員法第

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27 条,第 28 条及び第 29 条の規定の適用を妨げない。    4 教育長は,委員の職を辞し,失い,又は罷免された場合においては,当然に, その職を失うものとする。  14)  三和義武「教育委員会制度の歴史的変遷と変容過程」『学び舎 : 教職課程研究』 (11)(愛知淑徳大学教育学会,2016 年),56 頁。  15)  戸田浩史「教育委員会は再生できるか」『立法と調査』No348(参議院事務局企 画調整室編集,2014 年),67 ~ 68 頁。  16) 文部科学省初等中等教育局「教育委員会制度について」(2013 年 2 月)  17) 教育再生実行会議「教育委員会制度等の在り方について(第二次提言)」    ○地方公共団体における教育行政の責任体制を明確にするため,首長が任免を行 う教育長が,地方公共団体の教育行政の責任者として教育事務を行うよう現行制 度を見直す。首長による教育長の任命・罷免に際しては,議会の同意を得ること とし,議会が教育長の資質・能力をチェックする。    ○教育長を教育行政の責任者とすることに伴い,教育委員会の性格を改め,その 機能は,地域の教育の在るべき姿や基本方針などについて闊達な審議を行い,教 育長に対し大きな方向性を示すとともに,教育長による教育事務の執行状況に対 するチェックを行うこととする。    (中略)     なお,合議制の執行機関である教育委員会制度を基本的に維持しつつ,教育長 を首長の任命によることとし,教育委員会規則の制定・改廃や具体的な教職員の 人事の決定は教育長に委任するなど,実態にあった制度の見直しをすべきであり, 仮に教育委員会の性格を改める場合には,首長を教育行政の責任者とし,教育長 を教育事務執行の責任者とすべきとの意見があったことも付記します。  18)  中央教育審議会「今後の地方教育行政の在り方について(答申)」 平成 25 年 12 月13 日    (3)首長と教育長の関係    ● 首長の任命責任を明確にするため,首長が教育長を直接任命することとする。 また,教育長の資格要件を明確化するとともに,教育長の資質能力や適格性を担 保するため,議会の同意を得ることとすることが適当である。    ● 教育長の罷免については,首長が議会の同意を得て行うことができるように し,罷免要件については,例えば,教育長の事務の執行が適当でないため学校運 営等に著しい支障が生じている場合などには,首長が教育長を罷免できることと することが考えられる。また,教育長の任期は,現行の教育委員としての任期(4 年) と同等とすることが適当である。    (4)新しい制度の方向性    ● 地方公共団体に,公立学校の管理等の教育に関する事務執行の責任者として, 教育長を置く。教育長は,首長が定める大綱的な方針に基づいて,その権限に属

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する事務を執行する。首長が大綱的な方針を定める際には,その附属機関として 設置する教育委員会の議を経るものとする。    ● 教育長の権限に属する事務の執行について,首長の関与は,原則として,大 綱的な方針を示すことにとどめ,日常的に指示は行わないものとする。    ● 教育委員会は,地域の教育の在るべき姿や基本方針について審議をするとと もに,教育長による事務執行を住民目線による第三者的立場からチェックするこ とを目的とする。  19)  上記の改革案について,首長の影響力が強くなり過ぎるおそれがあるとの立場 から,教育委員会を性格を改めた上で,執行機関として存続させるとともに,教 育長をその補助機関とする別案についても議論が行われ,この案を支持する強い 意見もあった(別案のイメージは,P. 17 を参照。)。  20)  前川喜平「新しい教育委員会制度」(政策研究大学院大学教育政策プログラム  シンポジウム「改めて問う 教育長の役割」)    (http://www3.grips.ac.jp/~education/wp/wp-content/uploads/2014/06/houkoku.pdf,ア クセス日2016 年 12 月 30 日)  21)  与党教育委員会改革に関するワーキングチーム「教育委員会制度の改革に関す る与党合意」 平成26 年 3 月 13 日    一,教育長と教育委員長を一本化した新たな責任者(新「教育長」)を置くことと し,首長が議会の同意を得て任命・罷免する。「教育委員長= 教育長」とすることで, 新「教育長」が,迅速かつ的確に,教育委員会の会議の開催や審議すべき事項を 判断できるようにする。首長が,その任期中に教育行政の責任者を任命できるよう, 新「教育長」の任期は3 年(他の委員は 4 年)とし,罷免要件は現行の教育委員 と同様とする。  22)  大畠菜穂子,2014「教育委員会制度はこれまでどう変わってきたのか」村上 祐介編『教育委員会改革「地方教育行政法」のどこが変わったのか』 (学事出版, 2014 年),31 ~ 33 頁。  23) 三和,前掲論文,56 頁。  24) 堀内,前掲論文,4 頁。  25)  中村有希「教育委員会制度改革と議会の役割 : 議会権限の「実質化」を通じた教 育行政の充実・発展に向けて」『地方議会人』45(11)(中央文化社,2015 年 4 月), 村上祐介「〈地方教育行政〉教育委員会制度改革と議会の役割」『議院NAVI』(第 一法規)(http://www.dh-giin.com/article/20150110/2488/2/,アクセス日 2016 年 12 月 30 日),青木栄一「独立性からみた地方教育行政の制度設計上の論点」『自治総研』 通巻432 号(2014 年 10 月)。  26) 村上「〈地方教育行政〉教育委員会制度改革と議会の役割」  27)  中央教育審議会教育制度分科会地方教育行政部会「地方分権時代における教 育委員会の在り方について(部会まとめ)」(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

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chukyo/chukyo0/toushin/05012701.htm,アクセス日 2016 年 12 月 30 日)  28)  2015 年 4 月から 2016 年 12 月までに,教育長の同意に関する議案が否決された のは,メディアなどの情報をまとめると,熊本県荒尾市議会(2015 年 9 月),岐阜 県輪之内町議会(2015 年 9 月),茨城県常陸大宮市議会(2015 年 12 月),山口県 美祢市議会(2016 年 6 月),京都府福知山市議会(2016 年 10 月),熊本県多良木 町議会(2016 年 10 月)の合計 6 件である。これは,二元代表制の課題でもあるが, 首長提案の議案が否決されるということはほとんどない。全国市議会議長会の調 査によれば,2015 年の一年間で市長提案が否決・不認定・不同意・不承認された のは,97,465 件中わずか 160 件である。  29) 岡山県議会平成 27 年 2 月定例会(3 月 19 日)  30)  村上祐介「教育委員会改革からみた地方自治制度の課題」『自治総研』通巻 430 号(地方自治総合研究所,2014 年),86 頁。  31)  安田隆子「教育委員会―その沿革と今後の改革に向けて―」『調査と情報』556 号(国立国会図書館調査及び立法考査局,2007 年),2 ~ 3 頁。 受付日:2016 年 12 月 3 日,採択日:2017 年 1 月 29 日

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Reforms of the Educational Administrative System

from the Point of View of the Problem

on New Board of Education

Noriyuki H

AYASHI

Summary

1 Introduction

2 History of reforms of Board of Education 3 New Board of Education System and problems

参照

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