みずほ日本経済情報
2014年12月号
[日本経済の概況]
◆日本経済は、消費増税後の落ち込みから持ち直しつつある。足元の経済指 標をみると、マインド関連の指標には慎重さが残るものの、雇用・所得関 連が改善傾向を維持する中、生産や個人消費にも回復の動きがみられる。 経済の活動水準は、潜在生産量(物価変動に対して中立的とみられる生産 量)を引き続き下回っている。 ◆先行きの日本経済は、消費増税後の落ち込みから持ち直し、緩やかな回復 軌道に復するとみられる。個人消費は、雇用者所得の回復が支えとなる中 で、緩やかに回復する見込みである。設備投資も、生産・収益の持ち直し を背景に、回復するだろう。輸出は、緩やかながらも海外経済の回復が続 く中で円安傾向が強まっていることなどから、緩やかな増加基調が続くと みられる。もっとも、経済活動の水準は、潜在生産量を下回る状態が続く 見込みである。 ◆2014年の秋頃から進行した大幅な原油安が、貿易赤字に陥っている日本経 済にとって大きなサポートになると予想される。2014年8月からわずか4カ 月の間に原油価格は4割程度下落した。約4割の原油価格下落により2015年 の貿易収支はGDP比約1.6%(約8兆円)改善する計算になる。2014年の 貿易赤字は約10兆円で着地する見込みであり、足元の原油価格の下落は、 貿易赤字の大半を解消するほど大きなインパクトがあると評価できる。原 油価格下落に伴う貿易収支の改善は、ガソリン価格や電気料金などの引き 下げを通じて家計や企業に幅広く恩恵を及ぼし、内需の押し上げにもつな がると見込まれる。みずほ総研マクロモデルを用いて、原油価格の下落に 伴う実質成長率の押し上げ効果を試算すると、2015年の実質成長率は約 0.4%Pt押し上げられると計算される。 ◆今後は、①上記の原油安の効果に加えて、②追加金融緩和(10月末)後の 円安進行、③経済対策などの財政政策も成長率の押し上げに寄与する見込 みである。2015年入り後は、これらの「トリプルメリット」に支えられて、 着実に回復していくことが期待できるだろう。2 0 1 4年 1 2月 1 2日 発 行 [ 執 筆 担 当 ] 徳 田 秀 信 ( 総 括 )
03- 3591-1298 hid enobu.tok uda@mizuh o-ri.co.j p 大 和 香 織 ( 外 需 )
03- 3591-1284 kao ri.yamato @mizuho-r i.co.jp 風 間 春 香 ( 政 府 ・ 物 価 )
03- 3591-1418 har uka.kazam a@mizuho- ri.co.jp 坂 中 弥 生 ( 企 業 )
03- 3591-1242 yay oi.sakana ka@mizuho -ri.co.jp 齋 藤 周 ( 雇 用 ・ 消 費 )
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1.総 括
日本経済の現状 日本経済は、消費増税後の落ち込みから持ち直しつつある。足元の経済指標を みると、マインド関連の指標には慎重さが残るものの、雇用・所得関連が改善傾 向を維持する中、生産や個人消費にも回復の動きがみられる。経済の活動水準は、 潜在生産量(物価変動に対して中立的とみられる生産量)を引き続き下回ってい る。 経済の各部門を概観すると、海外経済は米国を中心に緩やかに回復している。 米国経済は、製造業ISM指数が高水準にあるなど、経済指標の改善傾向が続い ている。他方、ユーロ圏経済や中国経済は緩やかに回復しているものの、減速感 が強まっている。日本の対外交易環境は、原油価格の下落などを背景に改善して いる。輸出が増加するなか、輸入も上向きつつある。経常収支(季節調整値)は 黒字幅が拡大している。 企業部門について、生産・サービス活動は持ち直しつつある。企業収益は緩や かに回復しているものの、円安による原材料コスト上昇への懸念などから企業マ インドは持ち直しの動きが足踏みしている。設備投資は持ち直しつつある。家計 部門について、労働需給が引き締まった状態にあり常用雇用の回復が続いている ことなどから雇用者所得は回復基調にある。円安などによる実質所得の目減りへ の懸念もあって消費者マインドは弱含んでいるものの、個人消費は緩やかに持ち 直している。住宅着工戸数は、増税の影響が薄らぎ、底入れしている。公的需要 は増加基調にあり、税収は増加している。 国内企業物価(※)は原油価格の下落などを背景に前年比で低下している。消 費者物価(生鮮食品を除く、(※))は伸びが緩やかに縮小している。日銀は金融 緩和を強化している。(※)消費増税の影響を除くベース。 日本経済の先行き 先行きの日本経済は、消費増税後の落ち込みから持ち直し、緩やかな回復軌道 に復するとみられる。経済活動の水準は、潜在生産量を下回る状態が続く見込み である。 先行きの海外経済は米国を中心に緩やかな回復が続くとみられる。輸出は、緩 やかながらも海外経済の回復が続く中で円安傾向が強まっていることなどから、 緩やかな増加基調が続くとみられる。輸入は、国内経済の回復に向かう動きが続 く見込みであることから、低水準ながらも増加基調に復するとみられる。原油価 格の下落などを受けて、対外交易環境は改善傾向が続くとみられる。経常収支は、 黒字幅の拡大が続くとみられる。生産・サービス活動は、内外需の回復とともに、 緩やかに持ち直すだろう。企業マインドは国内経済の回復に伴う売上の持ち直し などを受けて緩やかに回復する見通しである。設備投資も、生産・収益の持ち直 しを背景に回復するだろう。家計部門では、雇用者所得の緩やかな回復基調が続 き、消費者マインドも雇用・所得環境の改善を背景に持ち直しに転じるとみられ る。先行きの個人消費は、雇用者所得の回復が支えとなる中で、緩やかに回復す るだろう。住宅着工戸数は、消費増税に伴う駆け込みの反動による影響が薄れる ことから、緩やかに持ち直す見込みである。公的需要は当面横ばいで推移した後、 経済対策効果が徐々にはく落し公共投資が減少基調に転じることから、緩やかに減少する見通しである。税収は、増加傾向が続く見込みである。円安による物価 上昇を原油価格の下落による物価押下げ圧力が上回るとみられることから、国内 企業物価の前年比マイナスが続くだろう。消費者物価(生鮮食品を除く、(※)) は、当面 1%を下回る推移が続く見通しである。日本銀行は 10 月に決定した内容 に即して金融緩和を進めるとみられる。(※)消費増税の影響を除くベース。 景気判断上の注目点、リ スク 以上のように、足元の景気は持ち直しつつあるものの、消費者マインドなどに 依然として慎重さが残る状況にある。他方、今後については、2014 年の秋頃から 進行した大幅な原油安が、貿易赤字に陥っている日本経済にとって大きなサポー トになると予想される。 2014 年 8 月平均の原油価格(ドバイ、以下同様)は約 101 ドル/バレルだった が、本稿執筆時点の 12 月 11 日には約 62 ドル/バレルとなっており、わずか 4 カ 月の間に 4 割程度下落したことになる。原油価格の年間下落率が 4 割に達するの は世界金融危機時の 2008 年以来であり、歴史的にみても大きなショックが生じた ことが分かる(図表 1)。 原油価格の下落による貿易赤字の改善効果を試算すると、約 4 割の原油価格下 落によって、2015 年の貿易収支はGDP比約 1.6%(約 8 兆円)改善する計算に なる(円安による下押し効果を除くベース)。2014 年の貿易赤字は約 10 兆円で着 地する見込み(みずほ総合研究所の予測)であるから、足元の原油価格の下落は、 貿易赤字の大半を解消するほど大きなインパクトがあると評価できる。 原油価格下落に伴う貿易収支の改善は、ガソリン価格や電気料金などの引き下 げを通じて家計や企業に幅広く恩恵を及ぼし、内需の押し上げにもつながると見 込まれる。みずほ総研マクロモデルを用いて、原油価格の下落に伴う実質成長率 の押し上げ効果を試算すると、2015 年の実質成長率は約 0.4%Pt 押し上げられる と計算される(図表 2)(個人消費が+0.1%Pt、設備投資が+0.3%Pt の寄与)。 今後は、①上記の原油安の効果に加えて、②追加金融緩和(10 月末)後の円安 進行、③経済対策などの財政政策も成長率の押し上げに寄与する見込みである。 2014 年の日本経済は消費増税の影響で夏場を中心に足踏み感が強まったが、2015 年入り後は、これらの「トリプルメリット」に支えられて、着実に回復していく ことが期待できるだろう。 図表 1 原油価格(ドバイ)の年間変動率 図表 2 原油価格下落による成長率への影響 ▲ 80 ▲ 60 ▲ 40 ▲ 20 0 20 40 60 80 100 120 140 85 90 95 00 05 10 (前年末比、%) (年末) (注)2014年末は2014年12月11日時点。 (資料)Bloombergよりみずほ総合研究所作成 ▲ 0.6 ▲ 0.4 ▲ 0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 2014 2015 2014 2015 2016 CY (前期比年率、%Pt) 外需 その他 家計(消費+住宅) 設備投資 GDP (注)みずほ総合研究所の9月時点の見通しにおける原油価格(ドバイ)の想定と12月 時点の見通しにおける想定との変化(4割弱低下)に伴う実質成長率への影響を みずほ総研マクロモデルによりシミュレーションしたもの。 (資料)内閣府「国民経済計算」などよりみずほ総合研究所作成
図表 3 景気判断 図表 4 景気の全体観を示す主要統計 11月 (現状判断) (現状判断) (先行き判断) 経済活動の方向性 持ち直しつつある 持ち直しつつある 持ち直し、緩やかな回復軌道に復する 経済活動の水準 潜在生産量を下回っている 潜在生産量を下回っている 潜在生産量を下回る状態が続く 海外経済 緩やかに回復している 緩やかに回復している 緩やかな回復が続く 対外交易環境 前年比横ばい圏まで回復している 改善している 改善傾向が続く 輸出 増加している 増加している 緩やかな増加基調が続く 輸入 上向きつつある 上向きつつある 低水準ながらも増加基調に復する 生産・サービス活動 持ち直しつつある 持ち直しつつある 緩やかに持ち直す 企業マインド 持ち直しの動きが足踏みしている 持ち直しの動きが足踏みしている 緩やかに回復する 設備投資 横ばい圏で推移している 持ち直しつつある 回復する 雇用者所得 回復基調にある 回復基調にある 緩やかな回復基調が続く 消費者マインド 弱含んでいる 弱含んでいる 持ち直しに転じる 個人消費 緩やかに持ち直している 緩やかに持ち直している 緩やかに回復する 住宅着工 底入れしつつある 底入れしている 緩やかに持ち直す 公的需要 増加基調にある 増加基調にある 当面横ばいで推移した後、緩やかに減少する 税収 増加している 増加している 増加傾向が続く 国内企業物価(注4) 伸びが縮小している 前年比で低下している 前年比マイナスが続く 消費者物価(注4) 伸びが緩やかに縮小している 伸びが緩やかに縮小している 1%を下回る推移が続く 金融政策 日銀は金融緩和を強化している 日銀は金融緩和を強化している 10月に決定した内容に即して金融緩和を進める (注1)矢印の向きは景気の方向性を示している。上向きが拡大局面、横向きが横這い局面、下向きが後退局面を意味する。 (注2)矢印の色は生産の水準感を示している。白は潜在生産量を上回る、紺は潜在生産量を下回る、白紺の縦縞は潜在生産量程度の生産量を意味する。 (注3)先行き判断は、3カ月程度先の経済の動きに関する判断を示している。 (注4)国内企業物価と消費者物価は、消費増税の影響を除くベースで判断している。 (資料)みずほ総合研究所 企 業 部 門 家 計 部 門 政 府 物 価 12月 総括 対 外 部 門 FY2011 FY2012 2014Q2 2014Q3 2014Q4 2014/07 2014/08 2014/09 2014/10 2014/11 景気動向指数 CI 先行指数 前期差、Pt - - - 0.8 ▲ 1.1 1.2 ▲ 1.6 n.a. CI 一致指数 前期差、Pt - - - 0.6 ▲ 1.6 1.5 0.4 n.a. CI 遅行指数 前期差、Pt - - - ▲ 0.2 ▲ 0.6 ▲ 0.5 1.1 n.a. DI 先行指数 % - - - 50.0 50.0 40.0 22.2 n.a. DI 一致指数 % - - - 40.0 20.0 70.0 65.0 n.a. DI 遅行指数 % - - - 80.0 60.0 30.0 50.0 n.a. 全産業活動指数 全産業 前期比、% 0.1 1.9 ▲ 3.4 ▲ 0.1 n.a. ▲ 0.4 0.0 1.0 n.a. n.a. 鉱工業 前期比、% ▲ 3.0 3.2 ▲ 3.8 ▲ 1.9 1.8 0.4 ▲ 1.9 2.9 0.4 n.a. 第3次産業 前期比、% 0.7 1.3 ▲ 3.8 0.4 0.6 ▲ 0.3 ▲ 0.1 1.3 ▲ 0.2 n.a. 建設業 前期比、% 5.1 10.9 ▲ 4.6 0.7 n.a. ▲ 1.2 2.9 ▲ 0.1 n.a. n.a. 公務等 前期比、% 0.3 ▲ 0.3 0.5 ▲ 0.1 0.4 0.3 ▲ 0.2 ▲ 0.3 0.7 n.a. 全産業供給指数 最終需要部門計 前期比、% ▲ 0.4 ▲ 0.0 ▲ 2.8 0.0 n.a. 0.5 ▲ 0.1 0.6 n.a. n.a. 個人消費 前期比、% ▲ 0.0 ▲ 0.2 ▲ 3.7 ▲ 0.8 n.a. ▲ 0.5 ▲ 0.1 0.9 n.a. n.a. 住宅投資 前期比、% ▲ 0.1 3.7 ▲ 9.4 ▲ 7.6 n.a. ▲ 1.9 ▲ 2.5 ▲ 1.3 n.a. n.a. 設備投資 前期比、% 0.7 ▲ 1.1 ▲ 5.9 ▲ 0.1 n.a. ▲ 0.7 ▲ 2.0 2.1 n.a. n.a. 政府消費 前期比、% 1.0 1.1 0.4 0.1 n.a. 0.2 ▲ 0.1 0.1 n.a. n.a. 公共投資 前期比、% ▲ 3.8 10.0 ▲ 1.7 5.1 n.a. ▲ 1.1 5.3 ▲ 1.2 n.a. n.a. 輸出 前期比、% ▲ 3.3 ▲ 2.1 ▲ 2.5 1.0 n.a. 3.8 ▲ 1.4 1.9 n.a. n.a. 輸入(控除項目) 前期比、% 1.2 2.0 ▲ 5.7 ▲ 0.4 n.a. ▲ 2.4 ▲ 3.0 5.3 n.a. n.a. 国民経済計算 実質GDP 前期比、% 0.4 1.0 ▲ 1.7 ▲ 0.5 n.a. - - - - -前期比年率、% - - ▲ 6.7 ▲ 1.9 n.a. - - - - -民需 寄与度、%Pt 1.3 1.5 ▲ 2.9 ▲ 0.7 n.a. - - - - -公需 寄与度、%Pt 0.1 0.3 0.1 0.1 n.a. - - - - -外需 寄与度、%Pt ▲ 1.0 ▲ 0.8 1.0 0.1 n.a. - - - - -名目GDP 年率、兆円 473.9 474.5 488.7 484.4 n.a. - - - - -前期比、% ▲ 1.3 0.1 0.1 ▲ 0.9 n.a. - - - - -GDPデフレーター 前年比、% ▲ 1.7 ▲ 0.9 2.1 2.0 n.a. - - - - -内需デフレーター 前年比、% ▲ 0.5 ▲ 0.8 2.5 2.4 n.a. - - - - -(注1)全産業活動指数は農林水産業生産指数を除く。産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第3次産業と公務等は第3次産業活動指数の値。 (注2)実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。 (注3)2014年10~12月期前期比は、10月の7~9月期平均に対する変化率。 (資料)内閣府「景気動向指数」、「四半期別GDP速報」、経済産業省「全産業活動指数、全産業供給指数」、「鉱工業指数」、「第3次産業活動指数」よりみずほ総合研究所作成
2.対外部門
海外経済 海外経済は米国を中心に緩やかに回復している。米国は 11 月の製造業ISM指 数が 58.7(10 月 59.0)と高水準を維持した(図表 1)。11 月の非農業部門雇用者 数が前月差+32.1 万人(10 月同+24.3 万人)と事前の市場予想を上回って大幅 に増加するなど、雇用情勢の改善も続いている。米国以外の地域は緩やかに回復 しているものの、減速感が強まっている。ユーロ圏の 11 月の製造業PMIは 50.1 (10 月 50.6)と 50 近傍まで低下した。新規受注の低迷などからドイツ・フラン ス・イタリアのPMIがそろって 50 を下回るなど製造部門の停滞感が広がってい る。中国の 11 月の製造業PMIは 50.3(10 月 50.8)と 50 を上回っているもの の、7 月をピークに減速が続いている。 今後の海外経済は、米国を中心に緩やかな回復が続く見込みである。米国経済 は雇用情勢の改善や家計のバランスシート調整進展を背景に、民間需要の拡大が 続くとみられる。一方、ユーロ圏経済は地政学リスクの高まり等を背景に企業の 景況感が下振れており、引き続き低調な推移が見込まれる。中国経済は金融緩和 や景気対策の効果で腰折れこそ回避されるものの、過剰設備や不動産市場の調整 が続くことなどから、前年比 7%台前半の成長ペースにとどまるだろう。 対外交易環境 対外交易環境は改善している。11 月は円安により輸出物価の伸びが大きく高ま った。一方、輸入物価は円安による押し上げを原油価格の下落が幾分相殺し、前 月からの伸び拡大が小幅にとどまったため、交易条件(輸出物価/輸入物価)は前 年比+2.2%(10 月同▲0.1%)とプラスに転じた(図表 2)。原油価格は 1 バレル 60 ドル程度まで低下が続いており、円安を考慮しても当面の輸入物価を押し下げ る要因となる。今後の対外交易環境は改善傾向が続くとみられる。 輸出 輸出は増加している。10 月の輸出数量指数(みずほ総合研究所による季節調整 値)は前月比+3.7%(9 月同+1.0%)と伸びが高まった(図表 3)。月次として は、東日本大震災後の落ち込みから持ち直した 2011 年 5~6 月以来の高い伸びを 示した。地域別にみると、7 月以降減少が続いていた欧州向けが 2 ケタ増と反発 したほか、米国向けもプラスに転じた。また、中国を含むアジア向けは 3 カ月連 続で増加した。先行きについては、このところのアジア向けの押し上げに寄与し たとみられるスマートフォン向け電子部品輸出は一服する見込みである。一方、 緩やかながらも海外経済の回復が続く中で円安傾向が強まっており、輸出押し上 げが期待される。今後の輸出は緩やかな増加基調が続く見通しである。 輸入 輸入は上向きつつある。10 月の輸入数量指数(みずほ総合研究所による季節調 整値)は前月比+1.5%(9 月同+0.6%)と 2 カ月連続で上昇した。7~9 月期比 は+1.1%と上向きつつある。今後は、国内経済の回復に向かう動きが続く見込み であり、輸入は低水準ながらも増加基調に復するとみられる。 経常収支 経常収支(季節調整値)は黒字幅が拡大している。10 月は第一次所得収支の黒 字が拡大したほか、旅行収支の黒字化などからサービス収支が 1996 年以来初めて 黒字に転じたため、経常収支は+11.4 兆円(季節調整済み年率、9 月+5.0 兆円) と黒字幅が拡大した(図表 4)。今後は原油価格の下落により貿易赤字の縮小が進 むとみられることから、当面の経常収支は黒字幅の拡大傾向が続くとみられる。図表 1 米欧中の業況感(製造業)の推移 図表 2 交易条件の推移 図表 3 地域別輸出数量指数の推移 図表 4 経常収支の推移 図表 5 対外部門の主要統計 40 45 50 55 60 11 12 13 14 米ISM指数 中国PMI指数 ユーロ圏PMI指数 (注)指数が50超のとき業況拡大を示す。直近値は2014年11月。 (資料)米サプライマネジメント協会、Markit、中国物流購買連合会 (年/月) ▲ 20 ▲ 15 ▲ 10 ▲ 5 0 5 10 15 12 13 14 輸入物価 輸出物価 交易条件 (前年比、%) (年/月) (注)1.交易条件=輸出物価/輸入物価。直近値は2014年11月。 2.輸入物価は、グラフ中のマイナスが上昇を表す。 (資料)日本銀行「輸出入物価指数」 70 80 90 100 110 120 10 11 12 13 14 総合 米国 欧州 アジア (2010年=100) (注) みずほ総合研究所による季節調整値。直近値は2014年10月。 (資料) 財務省「貿易統計」よりみずほ総合研究所作成 (年/月) ▲ 25 ▲ 20 ▲ 15 ▲ 10 ▲ 5 0 5 10 15 20 25 13 14 (年/月) (兆円) 経常収支 貿易収支 サービス収支 第一次所得収支 第二次所得収支 (注)季節調整済年率換算値。直近値は2014年10月。 (資料)日本銀行「国際収支統計」 FY2012 FY2013 2014Q2 2014Q3 2014Q4 2014/07 2014/08 2014/09 2014/10 2014/11
海外経済 CPB生産指数 前期比、% 1.5 2.6 0.6 0.3 n.a. 0.5 ▲ 0.6 0.9 n.a. n.a. 米国 前期比、% 3.6 3.0 1.4 0.8 n.a. 0.3 ▲ 0.2 0.8 n.a. n.a. ユーロ圏 前期比、% ▲ 2.3 0.4 0.4 ▲ 0.4 n.a. 0.8 ▲ 1.1 0.5 n.a. n.a. アジア 前期比、% 5.3 5.6 1.3 1.1 n.a. 0.7 ▲ 0.4 0.9 n.a. n.a. 製造業の業況 米国(ISM) DI - - - 57.1 59.0 56.6 59.0 58.7 ユーロ圏(PMI) DI - - - 51.8 50.7 50.3 50.6 50.1 中国(PMI) DI - - - 51.7 51.1 51.1 50.8 50.3 対外交易環境 対外交易条件 前年比、% ▲ 0.6 ▲ 2.9 ▲ 1.4 ▲ 1.4 n.a. ▲ 1.9 ▲ 1.7 ▲ 0.7 ▲ 0.1 2.2 輸出物価 前年比、% 0.9 10.3 1.0 2.4 n.a. 0.7 2.7 3.7 4.0 7.4 輸入物価 前年比、% 1.7 13.6 2.4 3.8 n.a. 2.6 4.5 4.4 4.1 5.1 実質実効為替レート 前年比、% ▲ 5.7 ▲ 18.8 ▲ 1.6 ▲ 3.3 n.a. ▲ 1.3 ▲ 3.7 ▲ 5.0 ▲ 5.3 n.a. 輸出 輸出数量 前期比、% ▲ 5.8 0.6 ▲ 0.8 0.7 4.3 ▲ 0.1 ▲ 0.2 1.0 3.7 n.a. 米国向け 前期比、% 3.3 ▲ 0.0 ▲ 1.6 ▲ 2.6 2.8 ▲ 2.2 0.4 ▲ 0.7 3.2 n.a. 欧州向け 前期比、% ▲ 15.7 ▲ 1.5 1.1 ▲ 1.9 5.2 ▲ 3.5 ▲ 0.7 ▲ 6.6 10.4 n.a. 中国向け 前期比、% ▲ 15.7 3.2 ▲ 2.6 1.7 1.8 ▲ 5.7 6.6 0.5 ▲ 0.6 n.a. 中国を除くアジア向け 前期比、% ▲ 1.7 ▲ 1.8 ▲ 1.4 2.6 6.2 2.6 ▲ 0.4 4.9 3.0 n.a. 実質輸出 前期比、% ▲ 2.4 0.6 ▲ 1.2 1.6 4.8 2.2 ▲ 0.4 1.8 3.8 n.a. 輸入 輸入数量 前期比、% 1.6 1.8 ▲ 5.6 ▲ 0.2 1.1 ▲ 2.3 ▲ 2.3 0.6 1.5 n.a. 実質輸入 前期比、% 2.5 3.7 ▲ 6.9 0.8 0.5 ▲ 1.3 ▲ 1.2 4.0 ▲ 1.8 n.a. 対外収支 経常収支 年率、兆円 4.2 0.8 2.8 2.6 n.a. 1.2 1.6 5.0 11.4 n.a. 貿易・サービス収支 年率、兆円 ▲ 9.4 ▲ 14.4 ▲ 11.7 ▲ 13.7 n.a. ▲ 14.4 ▲ 13.8 ▲ 12.8 ▲ 9.5 n.a. 第一次所得収支 年率、兆円 14.6 16.7 16.3 18.6 n.a. 17.7 17.8 20.2 23.7 n.a.
(資料) 財務省「貿易統計」、日本銀行「実質輸出入」、「国際収支統計」、「企業物価指数」、「外国為替相場」、CPB Netherlands Bureau for Economic Policy Analysis (注1) 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
(注2)2014年10~12月期前期比は、10月の7~9月期平均に対する変化率。
(注3) 輸出数量及び輸入数量はみずほ総合研究所による季節調整値。中国を除くアジア向け輸出数量は2010年輸出金額ウェイトにより算出。 (注4) 対外交易条件=輸出物価指数÷輸入物価指数。
3.企業部門
生産・サービス活動 生産・サービス活動は持ち直しつつある。10 月の鉱工業生産指数は前月比 +0.4%(9 月同+2.9%)と 2 カ月連続で上昇した(図表 1)。輸送機械(同▲1.8%) や情報通信機械(同▲6.2%)が減産となる一方で、はん用・生産用・業務用機械 (同+4.2%)や電気機械(同+3.4%)などが増産し、全体を押し上げた。非製 造業について、10 月の第 3 次産業活動指数は前月比▲0.2%と、2 カ月ぶりに低下 した(図表 2)。自動車整備業を含むその他サービス業(公務等を除く)や卸売業・ 小売業などが全体を押し下げた。建設業活動指数は、2013 年度補正予算・2014 年度予算に盛り込まれた公共事業の進捗などから、持ち直している。 製造工業生産予測指数をみると、11 月(前月比+2.3%)・12 月(同+0.4%) は増産が続く計画である。電子部品・デバイスや化学、輸送機械など予測指数が 発表されている 11 業種中 5 業種が 11 月・12 月ともに増産計画となった。11・12 月が予測指数通りと仮定すると、10~12 月期は前期比+3.3%と 3 四半期ぶりの 上昇となる。今後は、自動車の在庫調整が冬頃まで続く一方、円安等を背景に、 はん用・生産用・業務用機械など自動車以外の輸出業種が増産基調を維持するだ ろう。非製造業については、内需の持ち直しとともに緩やかに回復するとみられ る。今後の生産・サービス活動は、緩やかに持ち直す見込みである。 企業収益・財務 企業収益は緩やかに回復している。7~9 月期の経常利益(法人企業統計、金融・ 保険業を除く、季節調整値)は前期比+1.0%と 2 四半期ぶりに増加した(図表 3)。 非製造業(同▲4.2%)の減益が続く一方、製造業(同+11.1%)がプラスに転じ た。業種別の経常利益を前年比でみると、電気機械やはん用機械の増益幅が大き かった。非製造業では、卸売業・小売業で減益が続いたほか、物品賃貸業や情報 通信業も前年比マイナスとなった。 今後の企業収益は、円安の進行による輸出企業の業績改善や内需の持ち直しに 加え、原油安によるエネルギーコスト減も追い風となり、回復が続くとみられる。 企業マインド 企業マインドは持ち直しの動きが足踏みしている。11 月の景気ウォッチャー調 査では、現状判断DI(企業動向関連)が 44.6 と 4 カ月連続で低下した。円安に より海外生産していた取引先から受託生産の話が入るようになったといった声が みられる一方で、円安により原材料価格が上昇しているが、販売価格に転嫁でき ず利益が下がっているというコメントもみられた。 今後の企業マインドは内需の回復に伴う売上の持ち直しなどを受けて緩やかに 回復するだろう。 設備投資 設備投資は持ち直しつつある。7~9 月期のGDPベースの設備投資(2 次速報) は前期比▲0.4%と 2 四半期連続で減少した。内閣府によると、個人企業などで 弱めの動きがあったようだ。他方、法人企業統計ベースの名目設備投資は非製造 業がほぼ横ばいとなる一方で、製造業が大きく増加し、全体としてもプラスとな った(図表 4)。10 月の資本財出荷(除く輸送機械)は前月比+6.4%と 2 カ月連 続で増加している。先行指標をみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)は製 造業・非製造業ともに上向いている。増税後の落ち込みが薄らぐにつれ生産や収 益も上向いていることから、今後の設備投資は回復するだろう。図表 1 鉱工業生産指数の業種別寄与度分解 図表 2 第 3 次産業活動指数と建設業活動指数 図表 3 経常利益(法人企業統計ベース) 図表 4 設備投資(法人企業統計ベース) 図表 5 企業部門の主要統計 ▲ 4 ▲ 3 ▲ 2 ▲ 1 0 1 2 3 4 5 14/1 14/2 14/3 14/4 14/5 14/6 14/7 14/8 14/9 14/10 14/11 14/12 (注)「一般機械」は「はん用・生産用・業務用機械工業」を指す。 (資料)経済産業省「鉱工業指数」 (年/月) (前月比、%) 予測指数 一般機械 情報通信 機械 輸送機械 その他 鉱工業生産指数 電子部品・ デバイス 化学 75 80 85 90 90 95 100 105 13/4 13/6 13/8 13/10 13/12 14/2 14/4 14/6 14/8 14/10 (2005年=100) (2005年=100) 建設業活動指数(右目盛) 第3次産業活動指数 (注)第3次産業活動指数の直近値は2014年10月、建設業活動指数の 直近値は2014年9月。 (資料)経済産業省「第3次産業活動指数」、「全産業活動指数」 (年/月) ▲ 10 ▲ 5 0 5 10 15 2012 2013 2014 非製造業 製造業 全産業 (年/四半期) (前期比、%) (資料)財務省「法人企業統計」 ▲ 4 ▲ 2 0 2 4 6 2012 2013 2014 非製造業 製造業 全産業 (年/四半期) (前期比、%) (注)ソフトウェアを除く。 (資料)財務省「法人企業統計」 FY2012 FY2013 2014Q2 2014Q3 2014Q4 2014/07 2014/08 2014/09 2014/10 2014/11 生産・サービス 鉱工業生産指数 前期比、% ▲ 3.0 3.2 ▲ 3.8 ▲ 1.9 1.8 0.4 ▲ 1.9 2.9 0.4 n.a. 活動 鉱工業出荷指数 前期比、% ▲ 1.9 2.9 ▲ 6.8 ▲ 0.8 2.8 0.7 ▲ 2.1 4.4 0.6 n.a. 鉱工業在庫指数 前期比、% ▲ 3.0 ▲ 1.4 4.6 1.1 n.a. 0.9 0.9 ▲ 0.7 ▲ 0.4 n.a.
出荷・在庫バランス %Pt 1.1 4.3 ▲ 1.5 ▲ 4.5 n.a. ▲ 3.0 ▲ 8.3 ▲ 2.2 n.a. n.a.
製造工業設備稼働率指数 前期比、% ▲ 2.5 4.8 ▲ 4.3 ▲ 3.3 2.5 ▲ 0.8 ▲ 1.7 3.6 0.7 n.a. 第3次産業活動指数 前期比、% 0.8 1.3 ▲ 3.8 0.4 0.6 ▲ 0.3 ▲ 0.1 1.3 ▲ 0.2 n.a. 収益・財務 売上高 前年比、% ▲ 4.6 2.5 1.1 2.9 n.a. - - - - -製造業 前年比、% ▲ 3.8 1.7 0.2 0.9 n.a. - - - - -非製造業 前年比、% ▲ 4.9 2.8 1.5 3.8 n.a. - - - - -経常利益 前年比、% 7.9 23.6 4.5 7.6 n.a. - - - - -前期比、% 8.0 23.6 ▲ 2.7 1.0 n.a. - - - - -製造業 前年比、% 13.3 36.0 ▲ 7.6 19.2 n.a. - - - - -非製造業 前年比、% 5.4 17.5 12.1 1.4 n.a. - - - - -企業倒産件数 前年比、% ▲ 6.3 ▲ 5.7 ▲ 11.7 ▲ 9.6 n.a. ▲ 11.3 ▲ 13.4 ▲ 3.9 ▲ 13.5 ▲ 18.2 マインド 大企業業況判断DI %Pt - - 16 13 n.a. - - - - -製造業 %Pt - - 12 13 n.a. - - - - -非製造業 %Pt - - 19 13 n.a. - - - - -中小企業景況判断指数 - - - 48.7 47.7 47.6 47.4 47.7 景気ウォッチャー調査DI(企業関連) %Pt - - - 53.9 48.5 47.9 46.2 44.6 設備投資 機械受注(船舶・電力除く民需) 前期比、% ▲ 3.0 11.5 ▲ 10.4 5.6 ▲ 3.2 3.5 4.7 2.9 ▲ 6.4 n.a. 建築物着工床面積(非居住用) 前期比、% 9.8 7.9 ▲ 4.0 ▲ 5.6 27.5 ▲ 4.7 ▲ 1.5 ▲ 13.3 41.4 n.a.
前期比、% ▲ 1.1 2.8 ▲ 5.9 ▲ 0.2 n.a. ▲ 0.7 ▲ 2.0 2.1 n.a. n.a.
資本財出荷(除く輸送機械) 前期比、% ▲ 6.0 5.5 ▲ 8.0 0.1 5.3 5.2 ▲ 7.7 2.7 6.2 n.a.
ソフトウェア受注額 前年比、% 2.2 2.0 3.8 1.8 n.a. 1.5 2.8 1.5 5.1 n.a.
(注1) 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。 (注2) 2014年10~12月期前期比は、2014年10月の2014年7~9月期平均に対する変化率。
4.家計部門
雇用者所得 雇用者所得は回復基調にある。10 月は失業率が 3.5%と前月から 0.1 ポイント 改善し、有効求人倍率が 1.10 倍と 0.01 ポイント上昇した。10 月の有効求人倍率 の改善は求職者数が減少した影響が大きい。有効求人数は夏場以降減少傾向をた どり、足元ではほぼ横ばいとなっている(図表 1)。もっとも、労働需給は引き締 まった状態が続いており、常用雇用は回復傾向にある。10 月の名目賃金は前年比 +0.5%と 9 月(同+0.7%)から伸び率が縮小したが、所定内給与は緩やかな増 加が続いている。物価調整後の実質雇用者所得(常用雇用×実質賃金(※))は、 物価の上昇幅が縮小したことを受けて、同▲1.2%(9 月同▲1.4%)と前月から 減少幅が縮小した。 先行きの雇用者所得は緩やかな回復基調が続くだろう。医療・福祉や宿泊・飲 食などで労働需要の高まりが続いており、雇用の改善基調が続く見込みである。 名目賃金も緩やかな伸びが続くだろう。所定内給与は賃上げを背景に緩やかな改 善ペースを維持するとみられる。また、生産活動の持ち直しを受けて所定外給与 も増加に転じるだろう。冬のボーナスについては、経団連の調査(11 月 13 日発 表、第 1 回集計)によると、昨年並みの増加を維持する模様である。 (※)消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)を用いて実質化。 消費者マインド 消費者マインドは、弱含んでいる。11 月の消費者態度指数は、構成項目である 4 つの意識指標全てが悪化し、4 カ月連続で低下した(図表 2)。今後の消費者マ インドは、物価の伸びの鈍化や雇用・所得環境の改善を背景に持ち直しに転じる だろう。 個人消費 個人消費は緩やかに持ち直している。10 月の小売業販売額は前月比▲1.4%と 3 カ月ぶりに減少した。月前半の台風上陸などで入店数が減少したことや、一部 店舗で営業時間を短縮したことが下押し要因となった模様だが、基調としては小 売業販売額は夏場の足踏みから持ち直している。11 月の新車販売台数(登録車と 軽 自 動 車 の 乗 用 車 、 み ず ほ 総 合 研 究 所 に よ る 季 節 調 整 値 ) は 前 月 比 ▲0.4%(10 月同+1.3%)と小幅に減少した(図表 3)。もっとも、消費増税後の 反動減が徐々に和らぐ中で、基調としては 9 月以降緩やかに持ち直している。 先行きの個人消費は緩やかな回復が続くだろう。2015 年 4 月の軽自動車税増税 を前にした駆け込み需要が見込まれることなどから、新車販売は持ち直し基調が 続く見込みである。その他の個人消費についても、雇用者所得の回復が支えとな る中で緩やかに回復するだろう。 住宅着工 新設住宅着工戸数は底入れしている。10 月の着工戸数(季調済み年率)は 90.4 万戸(前月比+2.7%)と 3 カ月連続で増加した。相続税対策を背景に貸家(同 +4.4%)が 2 カ月連続で大幅増となったほか、首都圏でマンションの大規模物 件の着工が相次いだことなどから分譲住宅(同+4.9%)も増加が続いた(図表 4)。 他方、持家は同▲1.7%(9 月同+4.0%)と 3 カ月ぶりに減少した。 今後は、貸家が緩やかに増加する中、持家と分譲住宅も増税に伴う駆け込みの 反動が薄れ、住宅着工は緩やかに持ち直すとみられる。図表 1 有効求人倍率の内訳 図表 2 消費者マインドの推移 図表 3 新車販売台数(乗用車)の推移比較 図表 4 新設住宅着工戸数の推移 図表 5 家計部門の主要統計 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 200 205 210 215 220 225 230 235 240 13/4 13/8 13/12 14/4 14/8 有効求人数 有効求職者数 有効求人倍率(右目盛) (万人) (倍) (年/月) (注)季節調整値。 (資料)厚生労働省「職業安定業務統計」よりみずほ総合研究所作成 35 40 45 50 2012/07 2012/12 2013/05 2013/10 2014/03 2014/08 (Pt) (年/月) 2014年4月: 消費税率引き上げ実施 2013年10月: 消費税率引き上げ決定 2012年12月: 安倍政権発足 (注)1.季節調整値。 2.2012年7月~2013年3月までは試験調査の値。それ以降は郵送調査の値。 (資料)内閣府「消費動向調査」よりみずほ総合研究所作成 350 400 450 500 550 600 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1996/2013 1997/2014 前回増税時(1996年1月~1997年12月) 今回増税時(2013年1月~2014年11月) (万台) (注)みずほ総合研究所による季節調整値。 (資料) (社)日本自動車販売協会連合会「新車販売台数状況」、 (社)全国軽自動車協会連合会「軽四輪車新車販売」よりみずほ総合研究所作成 15 20 25 30 35 40 45 2013 2014 持家 貸家 分譲 (年率、万戸) 利用関係別 5 7 9 11 13 15 17 2013 2014 分譲戸建 分譲マンション (年率、万戸) 分譲内訳 (年/月) (年/月) (注)分譲内訳はみずほ総合研究所による季節調整値。 (資料)国土交通省「住宅着工」 FY2012 FY2013 2014Q2 2014Q3 2014Q4 2014/07 2014/08 2014/09 2014/10 2014/11 雇用・所得 完全失業率 % 4.3 3.9 3.6 3.6 n.a. 3.8 3.5 3.6 3.5 n.a. 就業者数 前期差、万人 ▲ 5 47 15 13 n.a. ▲ 6 9 4 ▲ 11 n.a. 有効求人倍率 倍 0.82 0.98 1.09 1.10 n.a. 1.10 1.10 1.09 1.10 n.a. 新規求人数 前期比、% 10.1 8.4 0.5 ▲ 1.6 n.a. ▲ 1.5 ▲ 0.7 0.5 ▲ 0.3 n.a. 所定外労働時間 前期比、% ▲ 0.3 4.5 0.5 ▲ 2.0 n.a. ▲ 0.6 ▲ 1.4 1.5 ▲ 0.9 n.a. 名目賃金 前年比、% ▲ 0.7 0.1 0.8 1.4 n.a. 2.4 0.9 0.7 0.5 n.a. 実質賃金 前年比、% ▲ 0.5 ▲ 1.0 ▲ 3.4 ▲ 2.5 n.a. ▲ 1.7 ▲ 3.1 ▲ 3.0 ▲ 2.8 n.a. 名目雇用者所得(常用雇用×名目賃金) 前年比、% ▲ 0.1 1.1 2.2 3.1 n.a. 4.0 2.6 2.4 2.0 n.a. 実質雇用者所得(常用雇用×実質賃金) 前年比、% 0.1 ▲ 0.0 ▲ 2.0 ▲ 0.8 n.a. ▲ 0.0 ▲ 1.4 ▲ 1.4 ▲ 1.2 n.a. マインド 消費者態度指数 % - - - 41.5 41.2 39.9 38.9 37.7 個人消費 消費総合指数 前期比、% - - ▲ 5.1 0.4 n.a. ▲ 0.8 0.3 0.8 ▲ 0.2 n.a. 家計消費水準指数(除く住居等) 前期比、% 1.3 1.5 ▲ 8.5 0.4 n.a. ▲ 3.4 2.8 0.2 ▲ 0.1 n.a. 実質小売業販売額 前年比、% 1.3 1.9 ▲ 6.5 ▲ 3.2 n.a. ▲ 4.0 ▲ 3.4 ▲ 2.1 ▲ 2.4 n.a. 百貨店売上高(既存店) 前年比、% - - - ▲ 2.5 ▲ 0.3 ▲ 0.7 ▲ 2.2 n.a. 新車販売台数(乗用車) 年率、万台 443.9 483.7 447.6 428.7 449.9 428.6 412.5 445.1 450.9 448.9 広義対個人サービス活動指数 前期比、% 1.5 1.2 ▲ 3.4 0.7 n.a. ▲ 0.3 0.7 1.0 ▲ 1.0 n.a. 景気ウォッチャー調査DI(家計関連) %Pt - - - - - 49.4 45.8 46.7 42.3 39.5 住宅着工 合計 年率、万戸 89.3 98.7 88.7 85.5 n.a. 83.9 84.5 88.0 90.4 n.a. 持家 年率、万戸 31.7 35.3 28.4 26.7 n.a. 25.8 26.6 27.6 27.2 n.a. 貸家 年率、万戸 32.1 37.0 37.5 33.7 n.a. 33.0 32.9 35.1 36.7 n.a. 分譲住宅 年率、万戸 25.0 25.9 22.8 24.5 n.a. 24.6 24.0 24.9 26.1 n.a. (注1) 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。 (注2) 2014年10~12月期の新車販売台数(乗用車)は10・11月の平均値。 (注3) 消費総合指数は四半期系列、月次系列ごとに季節調整がかけられるため、月次平均と四半期値は一致しない。 (注4) 実質小売業販売額は、名目販売額を消費者物価指数(「電気・都市ガス・水道」を除く「財」の全国消費者物価指数)で除したもの。 (注5) 新車販売台数はみずほ総合研究所による季節調整値。 (注6) 2012年度の就業者数(前期差)は、算出の基礎に用いている推計人口の基準切り替えに伴う断層を調整した時系列接続用数値より計算。 (資料) 総務省「労働力調査」「家計調査」、厚生労働省「一般職業紹介状況」「毎月勤労統計」、内閣府「消費動向調査」「景気ウォッチャー調査」「消費総合指数」、
5.政府部門
公的需要 公的需要は増加基調にある。7~9 月の実質公共投資(SNA)は前期比+1.4% (4~6 月期同+0.9%)と 2 四半期連続で増加した。政府が 2013 年度補正予算・ 2014 年度予算の早期執行を進めている影響が顕れている。他方、先行指標の公共 工事請負金額(当社季節調整値)は 5 月をピークに減少している(図表 1)。進捗 ベースの公共投資は、経済対策効果が徐々にはく落し、先行き減少基調に転じる 見込みである。政府消費は、社会保障給付の拡大により増加が続くだろう。今後 の公的需要は当面横ばい圏で推移した後、緩やかに減少する見通しである。 税収 税収は増加している。10 月の国税収入は前年比+13.2%(9 月同+7.1%)と なった(図表 2)。消費税収や所得税収の増加が全体を押し上げた。今後も税収が 2014 年 4~10 月のペースで進捗した場合、2014 年度の累積税収は当初予算見込み (50.0 兆円)を 1.8 兆円程度上回る計算となる。景気が回復基調を維持する中、 税収は今後も増加傾向が続くとみられる。 経済政策 11 月 21 日、衆議院が解散し、12 月 14 日に総選挙が実施される。安倍首相は今 回の解散を「アベノミクス解散」と命名し、アベノミクス継続の是非が争点であ ることを強調した。安倍政権は 2012 年 12 月の発足以降、「大胆な金融政策」・「機 動的な財政政策」・「民間投資を喚起する成長戦略」からなる「三本の矢」を掲げ、 デフレ脱却と持続的な経済成長の実現を目指してきた。安倍政権 2 年間の実績を 振り返ると、1 年目は過度な円高の是正と株価の上昇を通じて、高所得者を中心 に消費者マインドが改善し、百貨店で高額商品の販売が増加するなどプラス効果 が現れた。大企業を中心に収益が拡大し、2014 年春闘では賃上げ率(厚生労働省 調査、2.19%)が 15 年ぶりの高さまで改善した。他方、足元ではアベノミクスに 伴って進んだ円安に対し、輸出企業にはプラスである一方、原材料コストの上昇 が内需型の中小企業を中心に収益の圧迫要因となっているとの批判も聞かれる。 増税による影響も加わり、家計の実質所得は前年割れが続いている。また、建設 業の人手不足と資材価格高騰を背景に、新たに公共事業を追加しても、工事の進 捗は遅れ気味である。 総選挙での各党の政権公約をみると、自民党は雇用や賃金などの経済指標が改 善していることを紹介した上で、アベノミクスを継続・加速させていくことを訴 えている(図表 3)。「地方に実感が届く景気回復」を目指すとして、地方創生特 区や地方の裁量が大きい交付金の創設、地域商品券の発行などを盛り込んだ。公 明党は「経済の好循環を確かなものにする」と訴えている。一方、民主党は「ア ベノミクスによって国民生活は疲弊している」と反論した。経済政策の転換で格 差を是正するとし、中間所得層の復活を表明した。維新の党は、アベノミクスに ついて、円高の是正と株価上昇が「経済回復のかすかな光をもたらした」と一部 評価したが、未だ手つかずの規制改革を徹底すると訴えた。次世代の党はアベノ ミクスの基本的な方向性を認めたが、「軌道修正が必要」とした。今回の総選挙は、 功罪両面が指摘されるアベノミクスに対して、国民が評価を行う絶好の機会であ る。また、中長期的に重要な政策テーマである財政再建や社会保障抑制への取り 組みも含めて、中長期的な視点での投票が望まれるだろう。図表 1 公共工事請負金額 図表 2 国税収入 図表 3 政権公約におけるアベノミクスに対する立場と今後の方向性 図表 4 政府部門の主要統計 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 (兆円) 11月 7~9月平均 (年/月) (注)みずほ総合研究所による季節調整値。 (資料)保証事業会社3社「公共工事前払金保証統計」 ▲ 5 0 5 10 15 20 25 13/1 13/3 13/5 13/7 13/9 13/11 14/1 14/3 14/5 14/7 14/9 (前年比、%) 税収計 消費税 法人税 その他 所得税 (年/月) (注)出納整理期間を含むベース。 (資料)財務省「租税及び印紙収入、収入額調」 一部評価 反対 (維新の党、次世代の党) ( 民主党など) 雇用や賃金などのいくつかの経済指標 が大きく改善(自民) 「経済回復のかすかな光をもたらした」 が、全体として失速(維新) 「国民生活は疲弊」(民主) 経済の好循環が生まれ始めた(自民) 「基本的方向性は是とする」(次世代) ― 「地方に実感が届く景気回復を加速」さ せる(自民) 手つかずの「規制改革を徹底」(維新) 経済政策を転換し、「厚く、豊かな中間 層を復活させる」(民主) 「経済の好循環を確かなものにする」 (公明) アベノミクスの「軌道修正が必要」(次世 代) ― 1年半延期(自民、公明) 延期(維新) 延期(民主) 再増税と同時に、軽減税率の導入を目 指す(自民、公明) 延期(次世代) 消費税の還付措置(給付付き税額控 除)についても検討(民主) 継続・加速 ( 自民党、公明党) アベノミクス 2 年間の評価 消費再増税 今後の方向性 (資料)各党政権公約よりみずほ総合研究所作成 FY2012 FY2013 2014Q2 2014Q3 2014Q4 2014/07 2014/08 2014/09 2014/10 2014/11
公的需要 政府消費(全産業供給指数) 前期比、% 1.1 0.4 0.4 0.1 n.a. 0.2 ▲ 0.1 0.1 n.a. n.a. 公共投資(全産業供給指数) 前期比、% 10.0 12.2 ▲ 1.6 5.1 n.a. ▲ 1.1 5.3 ▲ 1.2 n.a. n.a. 公共工事出来高 前期比、% 12.4 19.6 1.4 7.5 n.a. 1.8 3.1 0.6 n.a. n.a. 公共工事請負金額 前期比、% 10.3 17.7 18.5 ▲ 16.8 ▲ 10.0 ▲ 4.1 ▲ 16.5 0.8 ▲ 2.2 ▲ 5.1 財政フロー 財政資金対民間収支(一般+特別) 兆円 ▲ 34.5 ▲ 38.6 ▲ 14.5 1.9 n.a. 3.2 ▲ 1.9 0.5 ▲ 4.7 ▲ 1.7 前年差、兆円 12.4 ▲ 4.2 3.9 4.8 n.a. 1.6 1.6 1.5 0.5 0.4 一般会計租税・印紙収入 兆円 - - 14.6 11.9 n.a. 5.5 3.8 2.6 3.3 n.a. 前年比、% - - 10.2 10.9 n.a. 17.9 4.4 7.1 13.2 n.a. 会計年度累計、兆円 43.9 47.0 - - - 8.5 12.2 14.9 18.1 n.a. 会計年度累計、前年差、兆円 1.1 3.0 - - - 1.0 1.1 1.3 1.7 n.a. 所得税 前年比、% 2.7 11.8 2.2 10.2 n.a. 15.8 ▲ 2.6 9.3 16.8 n.a. 法人税 前年比、% 4.1 ▲ 0.4 21.4 11.7 n.a. - ▲ 2.1 6.7 12.3 n.a. 消費税 前年比、% 0.3 4.3 13.2 16.1 n.a. 17.5 16.5 13.2 28.5 n.a. 財政ストック 政府債務残高 兆円 991.6 1,025.0 1,039.4 1,038.9 n.a. 1,041.5 1,048.7 1,038.9 n.a. n.a.
前年差、兆円 31.7 33.4 30.8 27.7 n.a. 33.2 35.0 27.7 n.a. n.a. 内国債 兆円 774.8 812.1 824.1 830.0 n.a. 831.1 839.6 830.0 n.a. n.a. 国庫短期証券 兆円 162.0 157.4 160.7 154.4 n.a. 156.1 154.7 154.4 n.a. n.a. 借入金 兆円 54.9 55.5 31.4 20.7 n.a. 28.0 23.8 20.7 n.a. n.a. 外貨準備高 10億ドル 1,254.4 1,279.3 1,283.9 1,264.4 n.a. 1,276.0 1,278.0 1,264.4 1,265.9 n.a. (注3)公共工事請負金額の10~12月期前期比は、10・11月の7~9月期平均に対する変化率。 保証事業会社「公共工事前払金保証統計」 (注1)一般会計租税・印紙収入の月次の会計年度累計のうち、4・5月は前会計年度分の累計値。 (注2)公共工事出来高、公共工事請負金額はみずほ総合研究所による季節調整値。年度は原数値。 (資料)日本銀行「金融経済統計月報」、財務省「租税及び印紙収入、収入額調」、「財政資金対民間収支」、経済産業省「全産業供給指数」、国土交通省「建設総合統計」、
6.物価
国内企業物価 国内企業物価(※)は前年比で低下している。11 月の国内企業物価指数は前年 比+2.7%と 10 月(同+2.9%)から上昇幅が縮小した(図表 1)。原油価格の下 落が続く中(図表 2)、石油・石炭製品、化学製品などの前年比上昇幅が縮小した。 消費税を除くベース(同▲0.2%)は 2013 年 3 月以来の前年比マイナスとなった。 先行きを展望すると、ドル円相場が円安基調で推移していることは、物価の押 し上げ要因となるものの、原油価格下落による物価押し下げ圧力が、円安の影響 を上回るとみられる。国内企業物価指数は前年比マイナスが続く見込みである。 消費者物価 消費者物価(※)は伸びが緩やかに縮小している。10 月の生鮮食品を除く総合 指数(コアCPI、消費増税の影響を除くベース)は前年比+0.9%(9 月同+1.0%) と、2013 年 10 月(同+0.9%)以来の 1%割れとなった(図表 3)。自動車保険料 (任意)がプラスに寄与する一方、エネルギー関連や生鮮食品を除く食料などの 前年比上昇幅が縮小したことが、全体の伸び率鈍化につながった。また、11 月の 東京都区部コアCPI(消費増税の影響を除くベース)も前年比+0.5%と、前月 (同+0.7%)から伸びが縮小した(図表 4)。エネルギー価格のほか、耐久消費 財や宿泊料、被服・履物など幅広い品目の前年比上昇幅が縮小した。 今後のコアCPIは当面 1%を下回る推移が続く見通しである。円安による押 し上げ効果が見込まれる一方で、原油価格下落の影響が上回るとみられることか ら、エネルギー価格の伸びは縮小傾向が続く見通しである。また、食料(酒類除 く)・エネルギーを除く総合指数(米国基準コアCPI)は、消費増税に伴う内需 の水準低下などから、当分の間は改善の動きが足踏みするだろう。 (※)消費増税の影響を除く。 金融政策 日銀は金融緩和を強化している。11/18・19 の金融政策決定会合では、10 月に 追加した枠組みに沿って金融緩和を進めていくことを決定した。声明文における 景気の現状判断は「緩やかな回復」と 10 月会合から据え置かれた。金融政策決定 会合後の記者会見で黒田総裁は、安倍首相が来年の消費再増税を延期したことに 関して、直接的な言及を避けつつも、財政運営に対する信任を確保するためには 財政規律を保つことが必要と述べた。物価見通しについては、原油安などを理由 に、1%を割る可能性も含めて当面 1%程度の推移が続くと発言した。 また、日銀は追加緩和を決定した 10 月会合の議事要旨を公表した。政策委員 9 人のうち、追加緩和に賛成が 5 人、反対が 4 人と意見が分かれていたが、追加緩 和がもたらす影響の大小が争点となっていたことが分かった。賛成派の委員は、 追加緩和は企業収益や雇用・賃金などに対し、これまで以上にしっかりとした効 果を発揮すると指摘した。他方、反対派の委員は、追加緩和による効果は、それ に伴うコストや副作用に見合わないと反論した。反対派の中からは、国債発行額 の大半を日銀が買い入れることになるのは財政ファイナンスであるとみなされる との意見や、これ以上の円安進行は内需型・中小企業への悪影響につながるとの 懸念が出た。議論は平行線のまま、追加緩和の実施が決定されたが、追加緩和に 伴うマイナス面への日銀としての対応策は十分議論する必要があったであろう。 日銀は当面、10 月に決定した内容に即して金融緩和を進めるとみられる。図表 1 国内企業物価指数 図表 2 原油価格(ドバイ原油) 図表 3 生鮮食品を除く総合消費者物価指数 図表 4 コアCPI(全国・東京都区部) 図表 5 物価の主要統計 ▲ 2.0 ▲ 1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 その他 電力・都市ガス・水道 食料品・飲料・たばこ・飼料 化学製品 非鉄金属 鉄鋼 石油・石炭製品 (資料)日本銀行「企業物価指数」 (年/月) (前年比、%) 総平均 消 費 増 税 の 影 響 (消費増税の影響を除く) 70 75 80 85 90 95 100 105 110 115 13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 (注)直近値は2014年11月。 (資料) 日経NEEDS (ドル/1バーレル) (年/月) (注)消費増税の影響は、全ての課税対象品目が増税分だけ上昇した場合に想定 される物価上昇幅(+2.0%Pt)。ただし、2014年4月は経過措置がとられる一部の 品目について旧税率が適用されるため、+1.7%Pt押し上げられる計算。 (資料)総務省「消費者物価指数」よりみずほ総合研究所作成 ▲ 1.0 ▲ 0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 食料(酒類・生鮮食品除く) 米国基準コアCPI エネルギー (前年比、%) 消 費 増 税 の 影 響 コアCPI (消費増税の影響を除く) (前年比、%) (年/月) ▲ 1.0 ▲ 0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 全国(消費増税の影響を除く) 都区部(消費増税の影響を除く) (前年比、%) (年/月) (注)消費増税の影響は、全ての課税対象品目が増税分だけ上昇した場合に想定される 物価上昇幅(全国:4月+1.7%Pt、5月+2.0%Pt、東京都区部:4月+1.7%Pt、 5月以降+1.9%Pt)。 (資料)総務省「消費者物価指数」よりみずほ総合研究所作成 FY2012 FY2013 2014Q2 2014Q3 2014Q4 2014/07 2014/08 2014/09 2014/10 2014/11 商品市況 日本銀行国際商品指数 前年比、% ▲ 8.6 ▲ 5.3 ▲ 0.1 ▲ 7.8 n.a. ▲ 2.1 ▲ 9.1 ▲ 11.8 ▲ 19.0 ▲ 28.9 国内企業物価 総平均 前年比、% ▲ 1.1 1.9 4.3 4.0 n.a. 4.4 3.9 3.6 2.9 2.7 (消費増税の影響を除く) 前年比、% - - 1.5 1.1 n.a. 1.5 1.1 0.7 0.1 ▲ 0.2 素原材料 前年比、% ▲ 0.4 3.3 ▲ 0.2 ▲ 0.8 n.a. 0.3 ▲ 0.8 ▲ 1.8 ▲ 3.7 ▲ 6.1 中間財 前年比、% ▲ 1.1 2.9 2.6 1.9 n.a. 2.4 1.9 1.5 0.5 0.4 最終財 前年比、% ▲ 1.1 0.1 0.0 ▲ 0.1 n.a. 0.1 ▲ 0.2 ▲ 0.2 ▲ 0.3 ▲ 0.5 企業向け 総平均 前年比、% ▲ 0.3 0.2 3.5 3.5 n.a. 3.4 3.5 3.5 3.6 n.a. サービス価格 (消費増税の影響を除く) 前年比、% - - 0.8 0.8 n.a. 0.7 0.8 0.8 0.9 n.a. 国際運輸を除く 前年比、% ▲ 0.3 0.1 3.5 3.5 n.a. 3.4 3.5 3.5 3.6 n.a. 金融・保険 前年比、% ▲ 0.2 1.2 3.7 4.0 n.a. 4.0 3.9 3.9 3.7 n.a. 不動産 前年比、% ▲ 2.0 ▲ 1.1 2.7 3.2 n.a. 3.0 3.3 3.4 3.2 n.a. 運輸 前年比、% 0.3 0.7 3.6 3.7 n.a. 3.5 3.7 3.8 3.8 n.a. 情報通信 前年比、% ▲ 0.7 ▲ 0.8 2.9 2.8 n.a. 2.7 2.8 2.8 3.2 n.a. 広告 前年比、% 1.2 0.8 4.1 3.5 n.a. 4.0 3.3 3.2 4.5 n.a. リース・レンタル 前年比、% ▲ 2.4 0.2 3.8 4.0 n.a. 4.2 3.9 4.0 4.4 n.a. 諸サービス 前年比、% 0.1 0.5 3.7 4.0 n.a. 4.0 3.9 3.9 3.7 n.a. 消費者物価 総合 前年比、% ▲ 0.3 0.9 3.5 3.3 n.a. 3.4 3.3 3.2 2.9 n.a. 生鮮食品を除く 前年比、% ▲ 0.2 0.8 3.4 3.2 n.a. 3.3 3.1 3.0 2.9 n.a. (消費増税の影響を除く※当社推計値) 前年比、% - - 1.4 1.2 n.a. 1.3 1.1 1.0 0.9 n.a. 酒類を除く食品・エネルギーを除く 前年比、% ▲ 0.6 0.2 2.3 2.3 n.a. 2.3 2.3 2.3 2.2 n.a. (消費増税の影響を除く※当社推計値) 前年比、% - - 0.6 0.6 n.a. 0.6 0.6 0.6 0.5 n.a. 耐久消費財 前年比、% ▲ 4.5 ▲ 0.9 4.1 3.8 n.a. 4.4 3.8 3.4 3.6 n.a. 半耐久消費財 前年比、% ▲ 0.4 0.7 3.0 3.0 n.a. 2.8 3.1 3.2 3.7 n.a. 非耐久消費財 前年比、% 0.1 2.1 6.2 5.4 n.a. 5.6 5.4 5.1 4.1 n.a. 一般サービス 前年比、% ▲ 0.3 0.0 1.5 1.2 n.a. 1.3 1.3 1.3 1.4 n.a. 公共サービス 前年比、% 0.4 1.5 2.8 3.5 n.a. 3.5 3.5 3.6 3.2 n.a. 金融政策 無担保コール翌日物金利(末値) % 0.06 0.04 0.06 0.03 n.a. 0.07 0.07 0.03 0.06 0.07 (注)実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。 (資料)日本銀行「企業物価指数」、「企業向けサービス価格指数」、総務省「消費者物価指数」