酵素化学超短期講座
1. 酵素化学の基礎用語
[参考(雑学?)]
1713 レオミュール 鷹に金網で包んだ肉を飲ま込ませ肉が溶けることを確認 1783 スパランツァーニ 胃内の液がガラス容器内でも肉を溶かすことを確認 1833 ペイヤン、ぺルゾー 麦芽からジアスターゼ(デンプン→糖)を発見 1836 シュワン ペプシンを発見
1876 キューネ 膵臓からトリプシンを発見、Enzym(酵母の中に存在するもの)という名称を使う 1894 フィッシャー カギとカギ穴説を提唱
1926 サムナー ウレアーゼの結晶化 ⇨ 酵素の本体はタンパク質
1981と1983 チェックとアルトマン RNA酵素(ribozyme)の発見 ⇨核酸も酵素
2. 酵素反応の特徴 (1)基質特異性
・鍵と鍵穴説(by Fischer) ・誘導適合説(by Koshland)
(2)至適条件:酵素が最大活性を発揮する条件。pH、温度などがある。
○至適pH
…においては、その酵素は基質と結合するために最適の構造を とっている。しかしそれよりpHが上がったり下がったりする と、側鎖の荷電等が変化し、酵素全体の構造が崩れる。そのた めに、基質との結合力が落ち、反応速度が低下する。
○至適温度
…においては、その酵素は基質と結合するために最適の構造 をとっている。しかしそれより温度が上がると、熱振動のた めに構造が崩れ、基質との結合力が弱まる。ある程度まで崩 れても可逆的に復活できるが、完全に”伸びた鎖”状態になる と酵素はその能力を完全に失う(失活)。反対に温度が下が ると、分子(酵素、基質)の熱運動が低下し、酵素・基質間 の衝突回数が減少する。その結果、反応速度が低下する。
3. 酵素の反応速度論 (1)活性化エネルギー
化学反応などの速度過程が起こるときには、反応原系がエネル ギーの高い遷移状態を経て生成系に移行すると考えられている。
この遷移状態と反応原系のエネルギーの差を活性化エネルギーと いう。
(2)ミカエリスーメンテン曲線
酵素反応速度と基質濃度の間には右次のような関係がある。
この曲線を式で表したい。
酵素反応が次式のように進むと仮定する。
E + S ⇄ ES → E + P ・・・①
酵素基質複合体ESの生成・分解速度は次式で表される。
v(生成)=k₁[E][S] と v(分解)=(k-1+k₂)[ES]
①式の反応が平衡状態であるならば、v(生成)=v(分解)である。
k₁[E][S]=(k-1+k₂)[ES] ・・・②
ここで、[E]と[S]は[ES]を用いて次のように表される。
[E]=[E₀]-[ES] と [S]=[S₀]-[ES] [S₀] ( [S₀] [E₀] [ES])
②式にこれらの式を代入後、変形すると、次のようになる。
[ES] = k
1[E
0][S]
k
1[S] + k
1+ k
2今回求めたいのは酵素反応速度v(=k₂[ES])であるから
v = k
1k
2[E
0][S]
k
1[S] + k
1+ k
2= k
2[E
0][S]
k 1+k2 k1
+ [S]
ここで、Km (k-1+k₂)/k₁(ミカエリス定数)とおくと
v = k
2[E
0][S]
K
m+ [S]
・・・③Km [S]の時、次式のように近似される。
v = k
2[E
0][S]
[S] = k
2[E
0]
ここで、Vmax k₂[E₀](最大反応速度)とすると、③式は次のようになる。
v = V
max[S]
K
m+ [S]
・・・ミカエリスメンテンの式実際に使用する時は、両辺の逆数をとって
1
v = K
m+ [S]
V
max[S] = K
mV
max· 1 [S] + 1
V
max ・・・Lineweaver-Burkプロット の形にすると、データが直線となり使用しやすい。4. 酵素阻害剤
(1)拮抗阻害剤 (Competitive inhibitor)
v = V
max[S]
K
m(1 +
[I]Ki) + [S]
ここで、Ki k-i/kiである。(以下の式でも同様)(2)非拮抗阻害剤 (Noncompetitive inhibitor)
v = V
max(1 +
K[S]m)(1 +
[I]Ki
)
(3)不拮抗阻害剤 (Uncompetitive inhibitor)
v = V
max1 +
[I]Ki+
K[S]m5. アポ酵素(不活性)+ 共同因子 = ホロ酵素(活性)
共同因子:
金属イオン
補酵素:水溶性ビタミンからできる
6.アロステリック酵素 (Allosteric enzyme)
酵素ではないが、一番身近な例は、ヘモグロビンである。
生物有機化学
『酵素化学』編
1
タンパク質の分類
• 構造で分類
✓ 単純タンパク質:アミノ酸だけからなる
✓ 複合タンパク質:アミノ酸+α
• 機能で分類
✓ 機能タンパク質:酵素、抗体、ホルモン等
✓ 構造タンパク質:コラーゲン、エラスチン
タンパク質の分類
• 構造で分類
✓ 単純タンパク質:アミノ酸だけからなる
✓ 複合タンパク質:アミノ酸+α
• 機能で分類
✓ 機能タンパク質:酵素、抗体、ホルモン等
✓ 構造タンパク質:コラーゲン、エラスチン
3
酵素化学超短期講座
酵素研究の歴史
1713 René Antoine Ferchault de Réaumur 鷹の餌を引きずり出す 1783 Lazzaro Spallanzani 鷹の胃液を取り出す
1833 Anselme PayenとJean F. Persoz
(写真なし)ジアスターゼ発見 1836 Theodor Schwann ペプシン発見
1876 67 Wilhelm Kühne トリプシン発見⇨『Enzym』という名前登場 1894 『鍵とカギ穴説』発表
1926 Sumner ウレアーゼ結晶化⇨『酵素はタンパク質だ』
1980代頭 Thomas Robert Cech
とSidney Altman RNA酵素発見(ノーベル賞)
5
基礎用語
• 酵素(Enzyme):タンパク質でできた生体触媒
✓ Enzym=酵母の中(in yeast)
✓ 酵素=酵母の中の何か(素)
• 基質(Substrate):酵素が反応をしかける相手
• 生成物(Product):酵素反応の製品
• 酵素基質複合体(ES complex)
基礎用語 酵素反応を参考に
7
酵素(enzyme) 基質(substrate)
+
lysozyme
Chimeraを起動
9
酵素基質複合体(ES complex)
こういう複合体はできない 基質特異性のため再生した酵素 生成物(product)
11
++
補酵素
活性部位
触媒部位 結合部位
酵素反応の特徴
• 基質特異性
✓ 「鍵と鍵穴」説 (Hermann Emil Fischer)
- 酵素と基質は固い
✓ 「誘導適合」説 (Daniel E. Koshland Jr.)
- 酵素も基質も柔軟である
13
酵素反応の特徴
• 至適条件
✓ 至適pH
反応速度
pH 至適pH
アルカリ性(塩基 性)側に寄ったこと で、表面の+-の 数・位置が変化し、
反応に最適な構造が 崩れた。
酸性側に寄ったこ とで、表面の+-の 数・位置が変化 し、反応に最適な 構造が崩れた。
15
酵素反応の特徴
• 至適条件
✓ 至適温度
反応速度
温度が上がった ことで、構造が 変化し、反応に 最適な構造が崩 れた。
温度が下がった ことで、酵素と 基質の衝突回数 が減った。
17
反応速度論
• 活性化エネルギー
• Michaelis-Menten曲線
✓ Michaelis-Mentenの式
- Vmax(最大反応速度)
- Km(ミカエリス定数)
反応速度論
19
最大反応速度(Vmax)
Km 基質濃度([S])
Michaelis定数
酵素反応速度(v)
Vmax / 2
v = V max [S]
K m + [S]
Maud Leonora Menten
Leonor Michaelis
アポ酵素とホロ酵素
• アポ酵素(不活性)+共同因子=ホロ酵素(活性)
✓ 共同因子:金属イオン、補酵素
✓ 補酵素=水溶性ビタミンが変化したもの
21
アポ酵素とビタミン
アポ酵素
水溶性ビタミン
ホロ酵素
基質
生成物
補酵素
触媒+
酵素の分類
触媒する反応の種類で分ける
• 酸化還元酵素
• 転移酵素
• 加水分解酵素 例)トリプシン EC 3.4.21.4
• 脱離酵素
• 異性化酵素
• 合成酵素
23
物質の酸化や還元反応を触媒する酵素群であり、
基質Aから水素または電子を奪い、他の基質Bに与 える。この酵素は一般的に補酵素を必要とする。
酸化還元酵素
転移酵素
いろいろな原子団の転移反応を触媒する酵素群であ り、基質A-Xから原子団Xを奪い、基質Bへ転移さ せる。この酵素も補酵素を必要とすることが多い。
25
加水分解酵素
タンパク質のペプチド結合や糖質のグリコシド結 合などを加水分解する酵素群で、消化酵素群はこ のグループに属する。
H OH H OH
脱離酵素
加水分解以外の方法で化学基の除去反応を触媒する。
27
異性化酵素
基質をその異性体に変える反応を触媒する。
合成酵素
ATPなどの高エネルギーリン酸化合物の分解エネ ルギーを利用して2つの分子を結合し、新たな物質 を合成する反応を触媒する。
ATP ADP Pi
29
• 阻害様式
✓ 拮抗阻害
✓ 非拮抗阻害
✓ 不拮抗阻害
阻害剤 (inhibitor)
v = V max [S]
K m (1 + K [I ]
i ) + [S ] v = V max
(1 + K [S] m )(1 + K [I]
i ) v = V max
1 + K [I ] + K [S] m
拮抗阻害
(competitive inhibition)
反応進む
反応進まず
(やがて元に戻る*)
拮抗(競争)する
結合場所が塞がれてしまい、
結合できない。
(生成物) E
S
I
*元に戻らないタイプの阻害剤もある。
31
非拮抗阻害
(noncompetitive inhibition)
*元に戻らないタイプの阻害剤もある。
E 反応進む
反応進まず
(やがて元に戻る*)
(生成物) I
S
結合場所が変形してしまい、
結合できない。
不拮抗阻害
(uncompetitive inhibition)
*元に戻らないタイプの阻害剤もある。
反応進む
反応進まず
(やがて元に戻る* )
(生成物) E
I S
33
アロステリック酵素
(allosteric enzyme)
全ユニットの親和性が 低い状態。
S
1個目の基質が結合する。
→構造変化が隣のユニットに伝わる。
→隣のユニットの親和性が高まる。
さらに情報が伝わっていく。
全ユニットの親和性が高い状態
シグモイド曲線