微分積分学 I
浪川 幸彦 June 12, 2007
4 微分
4.6 初等関数の定義と基本性質
積分に入る前に,逆三角関数および有理関数について簡単に補っておく。
後者は本来複素数についての話題の中で取り上げるはずであったが,予定を変更する。教 科書第2章7.8.節を自ら学ばれたい。
4.6.4 逆三角関数
前節で三角関数y= sin(θ) を導入するために,その逆関数 arcsinx を積分の形で定義した。
他の三角関数の逆関数 arccosx, arctanx も定義され,用いられる。それらは次の性質を持 つ(教科書の該当部分参照):
1) 連続関数で,定義域は arcsinx, arccosx が [−1,1], arctanx が R である;
2) 値域はarcsinx, arctanx が [−π/2, π/2], arccosx が [0, π] である;
3) arcsinx, arctanx が単調増加,,arccosx が単調減少関数である;
4) d
dxarcsin(x) = 1
√1−x2, d
dxarccos(x) =− 1
√1−x2, d
dxarctan(x) = 1 1 +x2.
Remark. これらを多価関数と見る方法もある。その場合,ここで定義されるものは主値と呼
ばれる。複素数に拡張するとその立場を取らざるを得ない。
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4.6.5 有理関数の標準形
実数はその名の通り,現実の世界を記述する量として至るところで用いられる。これに対 して複素数は現実の世界の背後にあって,強く影響を及ぼしている。例えば量子力学は複素 確率量を取り扱う。
では複素数の最も大切な性質は何かというと,それは次の定理が成り立つことである:
Theorem 4.6.10 (代数学の基本定理 Text p.80ff ). 複素係数の代数方程式 zn+a1zn−1+· · ·+an = 0 (n≥1, ak∈C)
には常に解がある。
Corollary 4.6.11. 複素係数のn次多項式は,(複素数の範囲では)かならず一次因数 n個 の積に分解される。これらの因子は定数倍を除いて一意的に定まる。
Corollary 4.6.12. 実係数の多項式は,(実数の範囲で)かならず一次因数(複数でよい)
と(対応する方程式が)実解を持たない 2次多項式(複数でよい)の積に分解される。これ らの因子は定数倍を除いて一意的に定まる。
これを用いると,一般の実有理関数を標準的な関数の和に分解できる。これは次章での積 分の計算において本質的に用いられる。
Theorem 4.6.13 (Text p.95ff ). 任意の有理関数は次の形の関数の和に(一意的に)分解 できる:
• 多項式;
• A
(x−a)k, A, a∈R, k ∈N;
• Ax+B
(x2 +ax+b)k, A, B, a, b, ∈ R, k∈N, x2+ax+b= 0 は実解を持たない
Remark. 実際に分解を求めるのには,未定係数法を微分と併用して用いるのが実際的である。
連絡:中間試験の返却
本日は中間試験の一部の返却のみになります。ごめんなさい。なお別配布プリントにある ように次回再試験を行います。対象者は全員です。
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