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アメリカの畜産物貿易の構造変化

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(1)

2004 . 3

巻頭言|||||||||||||||||||||||||

地域に根ざした価値……… 1

寄 稿|||||||||||||||||||||||||

現場のホンネが改革の出発点

…物流から情報流通へ… ……… 2

調査研究|||||||||||||||||||||||||

アメリカの畜産物貿易の構造変化……… 4 宮城県におけるカキ養殖とトレーサビリティ………10

研究の視点

|||||||||||||||||||||||||

事業改革と役職員の内発性………15

ぶっくレビュー

|||||||||||||||||||||||||

『200カイリ時代の漁業共同経営

|日本漁業再生の視角|』………16

統計の眼|||||||||||||||||||||||||

トマトときゅうり………17

(2)

地域を基盤に、「食」と「農」の価値を、現代的視点で再認識しようという取組みが高まって おり、全国的には、地産地消やスローフードなどの運動が展開を見せている。地元では、身近に あって、ふと見過ごしてしまうようなもの、ごく普通のことが、実は大きな価値を持っている。

農村には豊かな自然とそこに暮す人々の営みがあり、都会生活で失われたものが残っている。

しかし農村社会では、過疎化や高齢化が進み、地域の活力が失われつつある。道路や医療、生 活に必要な社会基盤の整備も遅れており、農村の現実は厳しいものがある。こうした中で、その 地域にしかないもの、地域でしか味わえないもの、地域に根ざした価値というものを発見し、活 性化に結び付けていこうという取組みの意義は大きい。

農産物は、もともと、その地域の自然や景観、郷土料理、祭りや行事など、広い意味での地域 資源や食文化と深く結びついてきた。豊かで多様な農産物は地域の宝であり、人々は様々な工夫 をこらし、現代に伝えてきた。地域には、それぞれの風土で育まれた、優れた「食」と「農」の 伝統も数多く存在する。旅先で、その地方ならではのものに出会うと、旅を実感する人も多いと 思う。全国各地に埋もれている地域の伝統や食文化を掘り起こし、発信することが重要になって いる。

農業についても、多様な農業、現代的ニーズに応えられる農業が求められている。主業農家や 認定農業者などの役割は重要だが、女性や高齢者、定年帰農者、U・Iターン者など様々な人た ちが農業に参加できる場が求められている。消費者との交流や都市と農村の交流を通じて、農村 の良さを多くの人たちと共有していくことも、ますます必要になっている。農産物直売、農産物 加工、産直、学校給食、食農教育、グリーンツーリズム、体験農園など、子供からお年寄まで多 くの人たちが農業に親しめる環境づくりを進め、豊かな地域コミュニティーづくりの一環として 役立てていかなくてはならない。

今、ビジネスの世界では、存在意義を失ったものは、容赦なく切り捨てられるという世の中に なっている。農業の構造改革がいわれているが、単に経済的機能のみを追求した場合、農業・農 村の価値は過少なものとなってしまうだろう。こうした時代にあっても、経済的豊かさ以上に人 間的豊かさが求められ、自然と共生するライフスタイルがますます貴重になっている。今大事な のは、農業や農村の価値について、多くの人たちに理解と支持を広げていくことで、地域に根ざ した価値を足元から見つめなおすことだといえよう。

(基礎研究部 主席研究員 鴻巣 正)

地域に根ざした価値

(3)

★何が問題か

「組合長、もう少し肥料は安くならんとで すか?」ある時、専業農家とのやりとりの中 で、こんな質問が出た。

「安くなりますよ。肥料を安くするだけで、

野菜農家のあなたの経営が良くなるのなら、

農協が赤字になっても安くします。農家が本 当に栄えるためなら、農協は本望です。しか し、肥料を安くするだけで、あなたの経営は 本当に良くなるのですか。肥料代は経費全体 の何%ですか。あなたの経営で最も大きな経 費は何ですか。肥料代ですか。農薬代ですか。

ダンボール代ですか。減価償却費ですか。た ぶん、労賃だと思いますよ。認定農業者だと、

年間600万円の所得をめざす。家族の労賃も含 めると年間1千万円。年間2千万円売り上げ ていたら、売上の50%が労賃ということです。

最も大きな経費だから、『切りつめろ』とは言 わない。最も大きな経費だから、最も効果的 に投入しなければいけない。あなたは、年間 何時間働いていますか。家族は何時間働いて いますか。キャベツの作業時間は何時間です か。まず、最も大きな経費を掌握し、管理し てください。経営者が、朝から晩まで草取り をして、『一日中よく働いた』という自己満足 の世界ならば結構です。しかし、年俸600万円、

時給3,000円の経営者が、例えば、時給700円 で出来る仕事をしている間は、1時間2,300円 サボっているだけの話です。最も大きな経費 を、最も効果的に使うことを考えて下さい。

★欲しい物なら…

「農協の資材は高い。もう少し安くならな いのか。」と農家が言う言葉を真に受けては ならない。コスト削減努力は当り前のことで ある。しかし、「高い」と言われるのは、「要 らない物」を売ろうとしているから「高い」

と言われる。相手が求めている物、探してい る物をお届けしたら、価格は二の次になる。

わが家では、ホウレンソウを栽培し、農協 共販で出荷している。季節によってはべと病 に頭を悩ます。べと病が入ると、その圃場の ホウレンソウはほとんど全滅となる。べと病 には、殺菌剤の散布で予防・防除するより、

抵抗性品種で防ぐ方が確実であり、農薬散布 の 経 費 や 作 業 も 省 く こ と が 出 来 る 。 最 近 、

「べと病抵抗性レース7対応」という試験品 種を、JAを通じた種苗卸業者が持って来た。

試験品種ではあるが、卸業者の在庫数を確認 し、わが家の必要量をすぐに注文した。

種子の価格は、これまでと同じだったが、

5割増しや2倍であっても私は買う。ここで 大切なのは、「高い」と言って値引きするつ もりがないということだ。価格にはこだわら ない。「価格」のことよりも「物の確保」を 優先している。欲しい物に出会ったら、価格 は二の次になる。

★情報の流通

「レース7対応」の種子を入手したことが 大切なことではない。「レース7対応」の種 子があるという「情報」が貴重なのだ。情報

現場のホンネが改革の出発点

…物流から情報流通へ…

遠賀郡農業協同組合 代表理事組合長  安 

‹

 澄 夫

(4)

提供に対して対価を払い、取引を継続して、

さらなる情報提供を期待している。「物」を 届けるのではなく、物に「情報」を添えて届 ける。さらに進んで、「情報に物を添えて」

お届けするというくらいの意識が必要な時代 になっている。

情報は農業現場にある。農家の庭先に足を 運び、相手の立場に立つことが大切だ。全国 連の企画立案者が、系統の経営体質強化のた めに机の上で考えた「経済事業改革」「物流 改革」ならば、要らない物を供給する仕組み になるおそれがある。物流センターを建てる ことでなく、情報流通の態勢を考えることが 大切だ。農業現場の日々変化する要望に対応 できる仕組みを構築しなければならない。

必要なモノや求められる情報を提供するた めには、相手の農家が「何を求めているか」

「何に困っているか」という情報を入手しな ければならない。物の供給という視点ではな く、相手の立場に立った視点で経済事業改革 に取り組まなければならない。農業現場を省 みない物流改革は、「迷惑の押し付け」にな るかもしれない。

★改革の出発点

農業経営のどこに問題があるか。農家経済 のどこに問題があるか。課題は農家の庭先に ある。解決策も農業現場にある。

農家の経営がよくならなければ、農協の経 営はよくならない。農家の経営体質を強化す るためのJAの経済事業改革でなければなら ない。農家の経営をよくすると考えたとき、

それは単に「物流」の問題ではない。物流改 革を否定はしないが、物流改革だけで問題は 解決しない。

「弾力的な供給価格の設定」「物流拠点整 備」「生産資材コストの削減」などが、全農 の経済事業改革に謳われている。しかし、こ

れだけで農家の経営はよくならない。これ以 前の問題が根深い。

全農の経済事業改革には、事業展開力の強 化や組織整備が掲げられているが、農家の経 営をよくするために「だからこうする」とい う部分が見えない。全農の経営体質強化のた めの改革に見える。「農家の経営体質強化の ため」にという意識が大切であり、「農家・

組合員へのメリット提供」という枝葉の問題 ではない。物流の前に、「農家のために何を すればよいのか」という情報の汲み上げが必 要である。

経済事業改革は、全国連による主導では実 を結ばない。協同組合は株式会社ではない。

本社から改革の号令を発すればよいのではな い。各JAの営農部門が、密接に農家と情報 交換した結果の積み重ねでなければならない。

農家組合員のホンネや、各JAの課題を見 据える。そして、農業と農家がよくなるため に、血の滲むような工夫と、身を切る努力を してシステムを築きあげる。そのうえで、各 JA・各組合員の理解と協力を求めなければ 受け入れられない。

★意識が変われば…

物流の時代は終わった。情報を流通させて こそ、物が動く。モノやカネの視点で考える 時代は終わった。「何のための物流か」「モノ の価値とは何か」「何が求められているのか」

という意識で取り組まなければならない時代 になった。物流改革を情報流通の改革に置き 換えれば、JA改革の進め方が変わる。

信用事業においても、「何のための信用事 業か」「農協金融の存在価値は何か」「組合 員は何を求めているのか」、これらの問いか けから改革がはじまる。

モノやカネで人の意識は変わらない。

知識と情報が人の意識を変える。

(5)

1 はじめに

2003年12月にそれまで懸念されてき たアメリカでのBSE(牛海綿状脳症)

発生が現実のものとなった。日本国内 で発生したBSEの影響がようやく沈静 化してきたところだけに、牛肉輸入量 の半分近く、国内流通量の30%を占め るアメリカ産牛肉の輸入禁止は、外食 産業を中心に深刻な影響を与え始めて いる。

また、今回のBSE騒動はグローバルに展開 す る 農 畜 産 貿 易 の 一 断 面 を 明 ら か に し た 。 DNA鑑定によってBSEに感染した牛は、子 牛の時にカナダから輸入されたことが判明し た。アメリカ側は、この結果を受けて早期の 輸入再開を主張しようとしているが、問題は 大量の家畜が生体で国境を越えて大量に取引 されていることである。

そこで、本論では、特にカナダ、メキシコ との貿易に焦点を当てて、アメリカの畜産物 貿易の実態について検討する。まず2章でア メリカの農畜産物貿易を概観し、3章でその 構造的特徴について検討する。

2 北米地域における域内貿易の拡大

アメリカの農畜産物貿易の特徴

まず、アメリカの農畜産物貿易に関する近 年の傾向について簡単に触れておこう(図1) アメリカの農畜産物輸出は、70年代の穀物輸 出の拡大を契機に急増したが、80年代半ばの 穀物価格の急落によって輸出は縮小し、貿易

黒字は大きく減少する。その後再び輸出が回 復するが、90年代後半になると輸入の増加率 が輸出の増加率を超える状態が続いたため、

黒字額は再び縮小する傾向にある。

アメリカの農畜産物輸出品目の中で伸びて いるのが高付加価値品目である。96年をピー クとする穀物価格の上昇によって一時的にバ ルク輸出が増えるが、90年以降は高付加価値 製品がバルク製品を追い越し、高付加価値製 品が輸出の主力を担いつつある( 図 2 )1 ) そ の 中 で も 重 要 な の が 食 肉 製 品 で あ る 。 USDAのERSのデータによると90年代前半

(1990〜96)と後半(1997〜2000)の平均輸 出額は86億ドルから109億ドルへ大幅に増加 している2)。また野菜の輸出も同時期に30億 ドルから43億ドルに増えている。これに対し て、バルク輸出は軒並み減少している。穀物 は同時期に120億ドルから99億ドルまで減少 し、食肉製品に追い越されるに至った。

貿易相手地域別にみると、近年のアメリカ の農畜産物貿易で顕著なのが、NAFTAを締 結したカナダ、メキシコとの貿易の拡大であ

アメリカの畜産物貿易の構造変化

資料:USDA FASの資料より筆者作成

−10,000 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000

1935 38 41 44 47 50 53 56 59 62 65 68 71 74 77 80 83 86 89 92 95 98 2001

黒字額 輸出額 輸入額

図1 アメリカの農産物貿易の推移

(単位:100万ドル)

(6)

る。同じUSDAのデータから、90年代前半

(1990〜96)と後半(1997〜2000)の相手地 域(国)別平均輸出額をみると、日本(93億 ドル→96億ドル)とEU(76億ドル→77億ド ル)が横ばいなのに対して、カナダ(51億ド ル→70億ドル)とメ

キシコ(37億ドル→

58億ドル)への輸出 の伸びが著しい。こ れは輸入についても 同様で、カナダ(46 億ドル→79億ドル)

とメキシコ(29億ド ル→46億ドル)から の輸入が急増してい る。特にカナダから の輸入額はEU(53 億ドル→75億ドル)

を上回るほどである。

以上がアメリカの 農畜産物貿易の概要 であるが、次に高付 加価値製品の代表で ある畜産について分

析を進める。

π 急速に統合化される畜産物市場 まず、牛肉貿易についてみてみよう。

アメリカの牛肉貿易は、90年代は輸出 超過で黒字を記録していたが、97年頃 から輸入が急激に増え、2001年には輸 入額が輸出額を超え赤字に転換してい る(図3)。収支が赤字に転落した最 大の要因はカナダとオーストラリア、

特に対カナダ貿易の赤字である。対カ ナダ貿易は96年に赤字に転落すると、その後 急激に赤字額を拡大していった(図4)。逆 にメキシコに対しては、同時期に輸出の増加 によって黒字額が拡大したが、対カナダ貿易 の赤字額を埋めるほどではない。ただし、日

資料:USDA ERSの資料より作成

注:バルクには、小麦、米、飼料作物、油糧種子、綿花、タバコが含まれる。

図2 バルク製品と高付加価値製品輸出額の推移

40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0

バルク 高付加価値

(単位:100万ドル)

       1976          1978          1980       1982        1984       1986        1988        1990        1992       1994        1996     1998 2000 2002

収支 輸出 輸入

図3 牛肉輸出入額の推移

3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0

−500 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

(単位:100万ドル)

資料:USDAの貿易データベース(Fatus)より作成

(単位:100万ドル)

資料:図3と同じ

図4 牛肉貿易の相手国別収支

1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

ニュージーランド メキシコ 韓国 日本 カナダ ブラジル オーストラリア アルゼンチン 収支 3,000

2,000

1,000

0

−1,000

−2,000

−3,000

(7)

本市場が2002年にBSEの影響 で縮小しただけに、メキシコ は相対的に輸出市場としての 重要性を増している。

2002年の輸出総額に占める 国別シェアをみると、日本

(33%)と韓国(24%)、メキ シコ(23%)だけで約80%を 記録している。このように少 数の国に集中する傾向は輸入 についても当てはまる。2002 年の輸入総額に占める主要輸 入相手国のシェアをみると、

カナダ(41%)とオーストラ リア(32%)、ニュージーラ ンド(17%)の3国だけで 90%に達している。

次に豚肉についてみてみよ う。豚肉の貿易は、輸入の拡 大が著しかった牛肉とは対照

的に輸入が輸出を超過する赤字状態が続いた。

しかしながら、黒字に転換した95年頃から輸 出が順調に拡大し、2002年には13億ドルにま で達している。ただし、輸入額も輸出額と同 じように拡大しているために、黒字額は3億 ドル程度で推移している(図5)

輸出相手国別にみると対日輸出が最も大き い(図6)。ただし、96年に74%にまで拡大 すると、その後はやや減少に転じ、その後 60%前後で推移している。対照的にシェアを 伸ばしているのがカナダやメキシコである。

特にカナダのシェアは96年頃の6%前後から 増えつづけ、2002年には12%に達している。

対メキシコ輸出も90年代初頭から半ばにかけ て減少しそのシェアを落とすものの、97年か

ら拡大に転じ現在では13%近くを占めている。

輸入相手国別にみると、最大の輸入相手国 はカナダで2002年時点の輸入総額の約74%と 圧倒的なシェアを占めている。輸出において カナダのシェアが増えているとはいえ、対カ ナダ貿易はアメリカにとっては大幅赤字である。

また、カナダのシェアの推移は、第2位の デンマークと比較すると興味深い。90年には カナダとデンマークのシェアは46%と32%と 接近していたが、その後デンマークからの輸 入額が減少したために、同国のシェアは低下 傾向を示し、2002年にはわずか17%である。

なお、メキシコからの輸入額は近年急増して いるが、そのシェアはわずか0.1%と無視し うる程度である。

資料:図3と同じ

1989 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 2001 2002

100%

80%

60%

40%

20%

0%

図6 アメリカの豚肉の輸出相手国別シェアの推移

その他 カナダ メキシコ 日本 収支

輸出 輸入

図5 豚肉輸出入額の推移

(単位:100万ドル)

資料:図3と同じ 1,500

1,000

500

0

−500

−1,000

1989 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 2001 2002

(8)

3 北米地域における地域内貿易の構造 このような分析結果を整理すると、次のよ うな特徴が明らかとなる。まず、牛肉にして も豚肉にしても、北米地域内の取引は一方通 行である。図7−1、2はアメリカの対カナ ダおよびメキシコの牛肉取引を示したもので ある。これによると、90年代半ばから対カナ ダ貿易では輸入が、対メキシコ貿易では輸出 が、連動するかのように急激に増加している。

また、メキシコからの輸入は文字通り無視で きるほど小さいし、カナダへの輸出にしても 輸入額の25%程度である。

これは豚肉でも同様である。対メキシコ貿 易では輸入規模は極めて小さく無視できるほ どであるため、対メキシコ貿易はアメリカの 一方的な輸出から黒字が続いている。対カナ ダ貿易も牛肉同様に、アメリカの大幅な赤字

で、輸出額も輸入額の22%程度である。

ただし、赤字額の推移は牛肉ほど明確に 対メキシコ輸出と連動しているわけでは なく、90年代初頭より3〜4億ドル程度 で推移して、ようやく2000年頃から拡大 し始めている。

このように、アメリカとカナダ、メキ シコの間の貿易は、牛肉と豚肉の両方で、

一方通行でおこなわれている。たしかに、

アメリカの畜産貿易において北米の比重 は大きくなっているが、実際にはカナダ

→アメリカ→メキシコとほぼ一方的に流 通している。アメリカにとっては、対カ ナダ貿易は赤字で対メキシコ貿易は黒字 という構造になっている。

それでもアメリカの畜産貿易がバラン スを取ることができるのは、対日貿易に おける巨大な輸出超過があるからである。

豚肉が95年から黒字に転換したのは、対日貿 易の黒字額がカナダやデンマークとの間の赤 字額を相殺できる規模に拡大したからである。

それはメキシコにとっても同じで、その輸出 の大半を日本に依存しているという構造を有 している3)。その意味では、デンマークなど の北米地域外から北米域内へ貿易の主軸が移 行しているとはいうものの、あくまでも日本 が輸出市場として緩衝材の役割を演じている からとも考えられる。

これは牛肉の場合でも同じである。豚肉の 主要貿易相手国に輸出では韓国が、輸入では オーストラリアやニュージーランドが加わる が、基本的には豚肉と同じ貿易構造を有して いる(図8−1、2)。アメリカは、対カナ ダやオーストラリア、ニュージーランド貿易 の赤字を日本と韓国、あるいはメキシコへの

収支 輸出 輸入

(単位:100万ドル)

1,500

1,000

500

0

−500

−1,000

1989 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 2001 2002

図7−1 対カナダ牛肉貿易の推移

収支 輸出 輸入

(単位:100万ドル)

700 600 500 400 300 200 100 0

資料:図3と同じ

1989 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 2001 2002

図7−2 対メキシコ牛肉貿易の推移

(9)

輸出によって補完するという図式となってい る。

また、近年の畜産物貿易の中でも注目され るのが、家畜の輸入増加である(図9)。特 に著しいのが豚の生体取引で、アメリカは完 全な輸入超過である。95年に前年の90万頭か らいきなり170万頭に急増すると、その後も

加速度的に増えつづけ、2002年には574 万頭にまで拡大している。これに対し て輸出頭数は2002年でわずか12万頭で あり、輸入頭数に比べればほとんど無 視できるほど小さい。輸入相手国はほ ぼ100%カナダで、カナダから大量の豚 が一方的に流れてくることになる。輸 出については、貿易データベースでは メキシコのデータが不明であるので断 定はできないが、ERSのレポート4)

よると99年から2001年までの3年間の

平均頭数をみるとメキシコが78%を占 めているという。カナダはわずか3%

である。

牛の生体取引においてもアメリカは 完全に輸入超過国である。2002年をみ ると、輸入頭数が250万頭なのに対して、

輸 出 頭 数 は わ ず か1 3万 頭 に す ぎ な い 。 輸入相手国をみると、やはりカナダが 最大で2002年に170万頭(67%)を輸入して いる。豚と異なりメキシコからの輸入も多く、

残り80万頭強をメキシコから輸入している。

ただし、図9が示しているように、豚の輸入 が90年代半ばから急激に拡大したのに対して、

牛の輸入は2001と2002年こそ大きく増えたが、

全般的に200万から250万頭の範囲で推移して おり、豚のような劇的な変化は生じていない。

この点が豚と牛の大きな違いである。

さらにこのように急増した豚の輸入の詳細 をみると興味深い。残念ながら生体輸入に関 して肥育素豚とと畜用肥育豚別のデータを入 手できないので断定ができないが、同じERS のレポートによると2002年にカナダから輸入 された生体豚のうち64%が肥育素豚であった という5)。しかも、89年時点では肥育素豚の

図9 家畜(生体)の輸入頭数の推移

資料:図3と同じ

(単位:1000頭)

7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0

牛の輸入 豚の輸入

1989 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 2001 2002

図8−1 豚肉の対カナダ輸出入額の推移

収支 輸出 輸入

(単位:100万ドル)

1,000 800 600 400 200 0

−200

−400

−600

−800

1989 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 2001 2002

図8−2 豚肉の対メキシコ輸出額の推移

250

200

150

100

50

0

資料:図3と同じ

1989 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 2001 2002

(単位:100万ドル)

(10)

比率はわずか16%であっただけに、90年代半 ば以降の急激な増加は、肥育素豚の輸入増加 に負うところが大きいものと推測される。逆 に、生体での輸出においてはと畜用肥育豚の 比率が高い。85年から2001年までの平均値を みると、総輸出頭数のうち62%がと畜用肥育 豚で、メキシコに限定すると74%が肥育豚で あるという6)。この点からみても、対カナダ と対メキシコの生体貿易は明らかに特徴を異 にしている。なお、牛については詳しい数値 を入手することはできないが、一般的にカナ ダからはと畜用牛が、メキシコからは肥育素 牛が輸入される傾向があるという。

このような豚の90年代半ば以降の急増は明 ら か に 牛 と は 異 な る 豚 特 有 の 現 象 で あ り 、 NAFTAなど外的環境の変化だけでは説明で きない。国内の養豚のあり方に変化が生じて いることを示唆している。

4 まとめ

94年に発効したNAFTAの影響もあり、北 米地域内貿易はアメリカの農畜産物貿易にお いて、その存在を増している。しかしながら、

その構造は、カナダからアメリカ、メキシコ と一方的に流れるきわめて偏った構造となっ ている。牛肉にしても豚にしても、最後に日 本(牛肉では韓国も)という輸出市場が存在 してはじめて完結する図式となっている。

また、近年注目されるのが豚の生体での取 引増加である。牛の場合、取引頭数は90年代 を通じてほぼ一定であるが、豚の取引は90年 代半ば以降急増している。さらにこのように 急増した豚の輸入の詳細をみると興味深い。

USDAのレポートによるとカナダから輸入さ れた生体豚のうち肥育素豚の比率が増えてい

るのに対して、生体での輸出では逆にと畜用 肥育豚の比率が高いという。

このように畜産をめぐる問題はアメリカの 国内問題としてのみとらえることはもはや不 可能である。政策も北米全体を対象としなけ ればならない。この後は、北米地域の域内貿 易とアメリカ国内の養豚業の連動性の実態と それが及ぼす影響について分析を進めたい。

(大江徹男)

1) アメリカの農畜産貿易における高付加価値製品 の役割については藤本(2003)を参照。

2) USDA ERSのホームページより(http://ers.usda.

gov/briefing/agtrade/usagriculturaltrade.htm)

3) 渡辺・樋口(2001)を参照。

4) ERSのホームページのデータより(http://www.

ers.usda.gov/Briefing/Hogs/trade.htm)

5) ERSのホームページのデータより(http://www.

ers.usda.gov/Briefing/Hogs/trade.htm)

6) ERSのホームページのデータより(http://www.

ers.usda.gov/Briefing/Hogs/trade.htm)

引用・参照文献

大江徹男(2002)『アメリカ食肉産業と新世代農協』日 本経済評論社。

渡辺裕一郎・樋口英俊(2001)「メキシコの豚肉産業の 概要」『畜産の情報』農畜産業振興機構、12月号。

藤本晴久(2003)「米国における農産物・食品貿易政策 の 新 展 開 ― 高 付 加 価 値 生 産 物 (H i g h - V a l u e Agricultural  Products:HVP)輸出政策を中心に―」

『農業市場研究』農業市場学会、第12巻第1号(通巻57 号)

(11)

宮城県におけるカキ養殖とトレーサビリティ

1 宮城県のカキ養殖は、はえ縄垂下式養殖法の開発によって飛躍的に拡大し、現在は広島 県に次ぐ生産量を上げている。

2 その宮城県で養殖カキのトレーサビリティシステムが実用稼動した。導入に至った最大 の理由は、2002年に発覚した輸入カキの混入(偽装)問題とされ、そうした混入防止策 もシステムに組み込まれている。さらに、当該システムのデータは、宮城県産カキの流通 上の特徴とされる共販においても活用され、今年度の電子入札の導入にもつながっている。

3 しかしながら、トレーサビリティの対象となっているのは県産カキの5割程度という状 況である。費用負担、内部情報の開示に躊躇する加工業者の存在が影響している模様であ り、導入初年度の課題となっている。参加者の拡大による費用負担の相対的低減とともに、

製品差別化等消費者の支持が目に見える形で表れることが期待される。

1 宮城県におけるカキ養殖

カキ養殖の歴史

現在行われている数多くの魚海藻類養殖の なかでも、とくにカキ養殖は長い歴史を有し ている。室町時代末期の天文年間(1532〜55 年)にはすでに広島県で養殖が始まっていた とされている。

カキ養殖は、1923年に開発された垂下式養 殖法によって日本各地へ普及し、簡易垂下式、

いかだ垂下式、はえ縄垂下式など地域・海域 に応じた技術的な対応がなされた。それとと もに、内湾部から沿岸部、さらに外洋部へと 養殖場も順次拡大し、生産量も増加した。

宮城県におけるカキ養殖は、1600年代に松 島湾で行われた地まき養殖が始まりとされ、

既に300年を超える歴史がある。とはいえ、

宮城県等東北の沿岸域におけるカキ養殖が本 格化するのは、垂下式養殖法、とくにはえ縄 式垂下養殖法(注1)の登場によってであり、

1955年以降急速に拡大した。

π カキ生産の現状

カキの国内生産量(むき身換算。注2)は、

近年概ね3万5千トン前後で推移しており、

2001年の生産量(同)は3万7千トンとなっ ている。広島(2001年の生産量シェア56%)、

宮城(同15%)、岡山(同12%)、兵庫(同 4%)、岩手(同4%)の各県が主要産地と され、広島県を中心とする瀬戸内海と宮城県 を中心とする東北地方の太平洋岸が2大産地 を形成している。

宮城県の場合は、主に企業的経営体がいか だ式の養殖方法によって生産している広島県 と違い、ほとんどが漁家経営体によるはえ縄 式養殖となっている。ちなみに、1経営体あ たりの生産量でみれば、広島県48トン、宮城 県4トンと規模的に大きな開きがある。

宮城県におけるカキ産地は、気仙沼地区

(県北部)、牡鹿半島地区(県中央部)、松島湾 要 旨

(12)

地区(県南部)に大別されるが、なかでも石巻 市等牡鹿半島地区が生産の中心となっている。

県内カキ養殖漁業の動向

宮城県のカキ養殖業を営む経営体数や養殖 場規模はほぼ一定で推移してきた。2001年に はやや経営体が減少しているが、養殖場規模 は逆に拡大しており、生産体制はおおむね安 定期にあるといえる(第1表)。また、同年

実施のヒアリングでも後継者は確保されてい るとのことであった。その背景として、比較 的恵まれた所得環境が指摘される(注3)

したがって、台風等の自然災害や養殖貝の 斃死、貝毒等の問題を別にすれば、生産面に ついての問題はとくにない状況といえよう。

(注1) 種ガキを付着させた原盤(ホタテガイの殻)

をロープに挟み込んで連ね、ブイ(浮)をつ けて海面に延ばしたロープ(はえ縄)から吊 り下げる養殖法。1952年に宮城県水産試験場 等が開発したとされている。

(注2) 殻付きカキのむき身換算率は、同じマガキで はあるが、海域によって異なる。カキの生育 環境の違いによるものとされ、近年の換算率 は広島0.18、宮城0.10、岡山0.22となっている。

(注3) 東北地方の家族型カキ養殖業の総所得は831 万円(うち漁業所得620万円)であり、一方家 族型漁船漁業は同620万円(同245万円)とな っている(東北農政局「平成14年東北の漁業経 営」参照)

2 宮城県産カキの流通

その特徴は共同販売

カキの流通は、一般に県内の仲買人や加工 包装業者等中間業者を経由した流通の割合が 高い。「かきの流通実態調査結果」(2003年6 月水産庁発表)によれば、宮城県の場合は

「大半」、最大産地である広島県の 場合は「約8割」が県内中間業者 に出荷されている。両県における 流通の違いはその前段部分にある。

すなわち、広島県の場合、生産者 と中間業者との個別相対取引が主 体となっているのに対し、宮城県 の場合はほとんどが県漁連による 共同販売(以下「共販」)となって いる(第1図参照)

第1表 宮城県におけるカキ養殖業の動向 養殖施設規模 同割合

(%)

うち主たる 漁業とする 経営体数 

経営体数 はえ縄式(台)

4, 3.

1, 1,

5, 1.

1, 1,

 9

8, 0.

1, 1,

 9

6, 5.

1, 1,

 9

6, 3.

1, 1,

 9

6, 3.

1, 1,

 9

6, 4.

1, 1,

 9

7, 5.

1, 1,

8, 5.

1, 1,

 0

資料 東北農政局統計情報部『宮城県漁業の動き』

(注)1 宮城県の養殖施設ははえ縄式がほとんどであり、

    簡易垂下式といかだ式については省略した。

  2 1台は幹縄の長さ54.5m。

卸売市場 43

スーパー・量販店 38

卸売市場 39

スーパー・量販店 30

第1図 カキ流通の概要

東京20、東北12 関東・甲信越9

80

10 6

36

30 48

42

90 98

資料 農林水産省「かきの流通実態調査の結果概要」、宮城県「輸入生かき    混入(偽装)に係る調査結果及び防止対策について」等により筆者作成

(注) 流通経路別の数値は、それぞれの段階における金額ベースでの出荷    割合(単位%)を概数表示したものである。各調査時点はさまざま。

(13)

π 共販の仕組み

水揚されたカキは、処理場と呼ばれる施設 で洗浄水に浸した後殻むきされ、出荷ケース

(注4)に詰められる。この容器は漁協によ って集荷され、漁連の共販所(気仙沼、石巻、

塩釜の3か所)に持ち込まれる。

共販所に持ち込まれたカキは、共販所の冷 蔵庫内に漁協別、生産者別に整理、陳列され る。1生産者分を1ロットとして入札を行う ため、各ロットにつき1ケースが開封され、

漁連担当者の検品、検温後は見本として使用 される。カキについては、基本的には粒の大 きさ等の規格がなく、入札前の品定めの際に これを確認することとなる。

カキの入札は、当日持ち込まれた全ロット について一斉に実施される。今年度から導入 された電子入札では、実際には以下の手順で 進められており、入札締め切りと同時に結果 が判明する仕組みとなっている。

① 入札に参加する買受人(仲買人やパック 加工業者等の中間業者)は、事前に渡さ れる「見付書」(注5)を持って冷蔵庫 へ出向き、見本を参考に応札の可否や単 価を検討する。

② 入札会場の買受人席には必要台数のパソ コン端末が用意されており、買受人は自 分のIDコードとパスワードを入力した 上で、応札しようとするロットについて 価格を入力する。

③ セリ人が入札もれのないことを確認し、

入札終了。同時にセリ人のパソコンから、

落札結果一覧が出力される。

(注4) 定量10kgの透明なプラスチック容器で、混 入等を防止する目的で開封後の再使用ができ ないようになっている。

使用後の容器は漁連が回収し、容器再生産 原料としてリサイクルしている。

(注5) 正式名称は「鮮カキ入札原簿」。生産者、本 数、数量等入札データが記載されたもので、

出荷漁協別に作成される。

3 生カキにかかる表示等の法規制

食品表示に関する法律は、農林物資の規格 化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS 法)、食品衛生法、不当景品類及び不当表示 防止法、計量法、栄養改善法などいくつかあ るが、義務表示事項があるのはJAS法と食品 衛生法である。

JAS法による原産地表示

JAS法が義務づけている主な表示項目は、

名称(品名)、消費期限または賞味期限、原 材料(原材料としての添加物を含む)、保存の 方法、原産地等である。生鮮食品に限定すれ ば名称、原産地、一部内容量等となっている。

生カキは、食品表示制度を充実強化した同 法の改正(1999年7月。2000年7月施行)に よって対象となった。生食用、加熱用を問わ ず原産地表示が義務づけられており、偽装表 示のみならず、無表示も法律上違反となる。

さらに、02年6月の改正によって、違反業 者の氏名等事実の発表が可能となったほか、

命令違反に対する罰則も強化されている。

π 食品衛生法による採取海域の表示 食品衛生法は、名称、製造者住所氏名、消 費期限または品質保持期限、添加物、保存の 方法、アレルギー物質を含む場合はその旨等 の表示を義務づけている。

(14)

カキに関しては、韓国産生食用カキ(むき 身)の輸入解禁を契機に施行規則の改正が行 われ、初めて生食用カキの採取海域表示が義 務化された(99年10月施行)。この表示は、

小型球形ウイルス(SRSV)等によって食中 毒が発生した場合、採取海域までの遡及調査 や食中毒の被害拡大防止を目的に義務化され たものである。なお、加熱用生カキは、加熱 によって衛生上の支障がなくなることから対 象から除外されている。

生カキの表示例

生カキは、一部殻付きでの流通もあるが、

多くはむき身をパック詰めした形態で流通し ている。厚生労働省・農林水産省・公正取引 委員会が共同作成した食品表示に関するパン フレット「知っておきたい食品の表示」では、

この場合の表示例として、名称(生食・加熱 調理の用途区分も含む)、採取海域、消費期 限、保存方法、加工者(名称・住所)、原産 地を表示項目としている。

なお宮城県の場合、採取海域を第2表のと おり区分しているが、大区分、中区分、小区

分いずれによって表示するかは加工業者の任 意とされている。

4 宮城県におけるカキのトレーサビリティ システム

導入の経緯

発端は、02年に発覚した韓国産カキの宮城 県産カキへの混入問題にある。これを受けて 実施した同年の「食品トレーサビリティ開 発・実証試験」での一定の評価が実用化への 直接の契機となっている。

実 証 試 験 に お け る 実 際 の 履 歴 検 索 率 は 0.35%に止まったものの、消費者アンケート では「続けて欲しい」が91%を占めたと報告 されている。このことは、実証試験目的の第 一に掲げた「表示(原産地・品質・日付)に 対する信頼性の向上」について相応の効果が あったことを示すものであり、トレーサビリ ティシステムの本格導入に向けた大きな誘因 となっている。このほか、食中毒被害者発生 のリスク対策や製品の差別化等も導入時の目 的として掲げられている。

π システムの特徴

基本的な仕組みは、『食品トレーサビリテ ィシステム導入の手引き』(03年3月)に記 載されている前記実証試験と同様である。そ の大きな特徴は、①出荷ケース、加工ロット、

パックの各段階でID番号を付け、それぞれ を関連付けてデータベース化、②投入された 加工原料と製品重量の整合性確認にあるとい える。

実用化にあたっての変更点は、バーコード と密封容器の採用である。バーコードは、買 第2表 カキの採取海域区分

小区分 中区分

大区分

気 仙 沼 湾 志 津 川 湾 宮城県北部海域

または 宮城県海域A

宮城県海域

鹿 石巻湾中央部 宮城県中部海域

または 宮城県海域B

石 巻 湾 西 部 宮城県南部海域

または 宮城県海域C 資料 宮城県漁連資料

(15)

受人相互で売買取引があった場合(注6)も 重量の整合性確認が可能となるように、また 密封容器は、流通途上での混入防止を目的に 採用されたものである。輸入カキの偽装混入 問題で失った消費者の信頼回復が、いかに重 要な課題であったかを示すものといえる。

消費者は、製品パックに印字されている消 費期限日とパック番号を入力することにより、

インターネットのホームページ(宮城県漁連 あるいは加工業者のHP)やタッチパネル式 店頭端末等から当該製品の履歴を検索できる。

生産段階情報としては、殻むき日のほか生産 者のプロフィール等、加工段階では加工業者、

加工日、正味重量、塩水濃度等、あるいは衛 生検査結果も一覧で確認できる。

現状と課題

当該システムには、全漁協が参加している が加工業者の参加は15社に止まり、結果とし て約5割程度のカキを対象とする状況である。

同システムは消費者からも一定の評価を得て いるが、その定着・拡大にはより多くの加工 業者の参加が課題となっている。

加工業者には、設備費や運営費(注7)、

データ入力、あるいは加工ロットごとの工程 管理等、多くの負荷がかかり、さらに塩水濃 度等の加工情報や販売先情報の開示も求めら れている。こうした内部情報の開示を嫌って、

独自にシステム開発を進める動きもあるよう である(2003.7.2付河北新報)

ある程度の経費負担は許容するとの消費者 アンケート結果もあるが、消費者に負担して もらうことは現実には困難とみられる。同じ 価格であれば、トレーサビリティ対象製品を 選択購入してもらうのがせいぜいであろう。

実際に履歴が検索されることは少ないが、

消費者の信頼を得るためにはトレーサビリテ ィシステムが必要である。それには費用がか かり、それを製品価格に転嫁することは困難 である。これがトレーサビリティをめぐる現 状であろう。こうした状況では、同一システ ム使用による費用負担の相対的低減と製品差 別化による売上増等消費者の明確な支持が期 待される。その意味でも、公的機関等第三者 機関による認証や統一マーク採用の意義は大 きいものと考えられる。今後の動向が注目さ れる。

(出村雅晴)

(注6) 実際に、入札会場において、必要数量を落 札できなかった業者が落札業者に譲渡を交渉 する姿が見られた。

(注7) 設備費は印字機であり、新規設置の場合ト レイ式パック用で約180万円、ロケットと呼ば れる袋詰め用で約120万円(既に印字機を設置 している場合の改修費用はいずれも約20万円)

とのことである。このほかに、年間約240万円

(将来的には300万円程度)とされるシステム 運営費の負担が、1業者当たり5千円/月程 度必要とのことである。

<参考文献>

・ 食品需給研究センター(2003.3)『宮城県産カキの トレーサビリティシステム開発・実証検討事業報 告書』

・ 宮城県(2002.8)「輸入かき混入(偽装)に係る調 査結果及び防止対策について」

・ 水産庁(2003.6)「かきの流通実態調査の結果概要」

参照

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