研究ノ i 卜
現代イギリス内部労働市場論
│
│ 職 場 の 労 働 組 合 と 労 務 管 理
│
│
問題提起一内部労働市場の構造と特徴
一内部労働市場の類型 ニロビンソン・モデルの検討 三内部労働市場の特徴
ニ生産システムと内部労働市場
一生産システムと労働市場の内部化
二 装 置 生 産 の ケ
l
ス 三大規模パッチ・大量生産のケl
ス結 現代イギリス内部労働市場論 論
千 百
井
幹
彦
問題提起
労使関係に関するOECDの最近(一九七五年﹀の刊行物の
‑つ
に︑
OECD諸国︑特に西ヨーロッパ諸国では︑近年労使
関係制度に共通の注目すべき変化が進行しているとの指摘がみ
(1
﹀られる︒その変化とは︑
H
労働者による経営参加の増大︑同企業や職場レベルでの労働条件決需の比重の増大︑回仕事を財産
権とみなす方向での雇用の安定化︑制職場レベルでの強力な労
働組合の発達︑同団体交渉事項の範囲の拡大︑以上の五項目で
ある︒これらの諸変化は︑いずれも職場の労働組合とマネイ
ジメントの対抗関係の労使関係に占める比重の増大を示してい
一 O三
現代イギリス内部労働市場論
本稿は︑この職場レベルの労使関係のウェイトの増大と共に る ︒
進行する︑現代イギリスの内部労働市場の問題について︑特に
労働力の﹁継続的一雇用﹂公認色白
2 6 ‑
ミ 自
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に注目して検
討することを意図している︒
労働力の﹁継続的雇用﹂という概念は︑
J‑R
・ヒ
ック
ス
(2 )
が︑﹃賃金の理論﹄で展開してみせたものである︒この概念に
ついて︑ヒックスは最近の著書﹃ケインズ経済学の危機﹄(一
九七四年)の中で︑次のように述べているQ﹁もうずっと以前
に︑﹃賃金﹄に関する一九三二年の著書において私はある一つ
の区別を行ったが:::(あの害物には私が今日退けたいことが
多いけれども︑この点は依然有効だと思う︒)それは︑臨時的
な一
雇用
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‑ 0
5 1
吋
0 52
︒︑すなわち永続的な関係を意味しない一回かぎりの仕事と︑継続的な一層用公認
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叩
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V E U 7
52
円)︑すなわち︑そこで人びとが相共に働き︑また相共に働き続ける一雇用︑とのあいだの区別である︒:・:財市場の大部分
が偶然的であるのに対して︑犬部分の労働市場︑そしてすべて
(3 )
のかなり重要な労働市場は︑継続的である︒﹂
つまり本稿では︑分析仮説としてヒックスのこの概念に依拠して︑純粋理念型としての労働力の機能的形態を想定してい
る︒郎ち︑工業化社会において独占資本が需要する主要な労働
力は︑﹁継続的雇用﹂を特徴とする︒そして主要な労働力の勤
続年数は永年化し︑職場でのOJT(DDF叩
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ぴ守
色色
白田
)に
一 O四
よるキャリアー形成を必然的なものとする︒
ヒックスが︑今日でも寸この点は依然有効だ﹂と主張してい
るにもかかわらず︑イギリスではこの労働力の﹁継続的雇用﹂
にたいしては︑これまであまり関心を払ってこなかったといっ
てよい︒イギリスの場合︑現実の労使関係の展開においてはも
ちろんのこと︑これに対応する労使関係研究の分野でも︑その
関心は専ら横断的関係としての全国レベル︑産業レベルの労使
関係であった︒
そして職場レベルの労使関係が問題となる場合でも︑たとえ
ば地域問︑職場開︑職種聞の賃銀格差とか︑時系列的な賃銀変
動の推移といったあくまでも横断的側面であった︒したがって
イギリスでは︑﹁継続的一雇用﹂の概念が本来問題とする勤続年
数とか︑キャリアー形成などの︑いわゆる垂直的な関係として
の職場レベルの労使関係に注目することは︑鉄鋼業︑鉄道業︑
綿工業︑石炭業などの一部の産業を除いては希であったといっ
(4 )
てよ
い︒
イギリスでこの垂直的な関係としての職場レベルの労使関係
に関する︑その問題意識において先駆的な研究といえば︑一九
六四年に出版されたA‑フランダiスのブォレl石油精製工場
( 5)
の生産性交渉の研究である︒そして一九六八年に︑ドノパン・
リポート(ロDロ
04
田口
月間
宮吋
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中町
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の中で︑労使
関係におけるインフォーマル・システムとしての職場の労使関
係へのウェイトの増大が指摘されるに及んで︑賃銀ドリフトと
共に内部労働市場︑職場内でのキャリアー形成︑勤続年数への
評価︑職務評価Ccσ雪印古阻まるによる職階制度などの一連
の職場内部の問題に関心がたかまった︒また一九六八年には︑
官庁統計にも垂直的視点によるデータ処理がみられ忍にいたっ
た︒即ち︑一九六八年にスタートした新しい労働統計年鑑の
︹6
)
器
S3
同 白5 2 F 3
ミ
H U 2
・には︑職業別︑産業別勤続年数︑年齢別賃銀といった労働力の﹁継続的一一雇用﹂の実態を表わ
す労働統計が︑はじめて公式に発表されたのである︒
しかしとはいっても︑その後のイギリス労使関係研究の中
で︑この垂直的視点に基づく研究は依然として多くはない︒し
たがって本稿で利用できる文献も限られたものとなった︒ここ
で利用した文献は︑およそ次の三つに分けられる︒付均衡理論
を批判する経済学者︑D・ロビンソンやD・I・マックケイら
(7 )
の垂直的視点に基づく機械工業の労働市場分析︒同J
・ゴ
ール
ドソープらの産業社会学者による一連の職場レベルの労働者調
(8 )
査︒同フランダ
i
ス ︑
L・
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ハンターらの労使関係研究者に
(9 )
よる生産性交渉に関する研究および﹁全国物価・所得委員会﹂
(叩
)
の生産性交渉を中心とした一連の報告書︑などが主な文献であ
これにたいしてわが国では︑この労働力の﹁継続的雇用﹂の る ︒
概念に関しては︑表現こそちがえ早くより注目されていた︒即
ち︑わが国では︑内部昇進と年功賃銀とを指標として︑これを
独占段階における労使関係の一般的特徴であるとする︑いわゆ
現代イギリス内部労働市場論 る労使関係の収紋論として早くより神代教授︑小池教授によって主張されてきた︒小池教授は︑最近の著書﹃職場の労働組合と参加﹄(一九七七年)において︑西部選教授の﹁労働の回定性﹂の概念(労働力の﹁継続的雇用﹂と近似の概念)に言及され︑この概念の理念を分析のための基本的命題として使っておられる︒また隅谷教授は︑労使関係の国際比較研究のための基本的な分析概念として︑﹁広義の年功制﹂の概念を提唱され︑
(日 )
この命題に基づく労使関係の収飲論を展開しておられる︒
いずれにしても︑これらの主張には︑工業化社会において独
占資本との対抗関係の中で︑主要な労働力は﹁継続的雇用﹂化
の方向へ収飲していくという共通の問題意識が存在していると
いってよい︒そして問題は︑労働力の﹁継続的雇用﹂化の具体
的仕方は︑その国の資本主義の発展のちがいによって異なると
いう
こと
であ
る︒
したがってここでの分析は︑このような国際比較の視点を意
識しつつ︑イギリスの労使関係における労働力の﹁継続的雇
用﹂化と︑それに伴う内部労働市場の構造化の過程で︑現代工
業化社会一般に共通してみられる特徴と︑そのイギリス的特質
とを検討していくことになる︒
そしてさしあたってここでの分析対象は︑製造業における筋
肉労働者の内部労働市場に限定する︒
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("') J.R. Hicks, The Theory of Wages, 2nd ed., 1963,
pp.61‑66. (.g:
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暗殺駁P廃援『唱Il(<{同Q間詩雇』担民社説1寝耳~~手記'密~' ~ヰ同一同4号。(-てお〉。
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p.64. (時総慢話pトヤ>-'K製慌がむ但君主~'~ャ午印>-:ι1i'震
53
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Growth, Structure and Policy, 1962, ch. v.会J~事I!liO~健「ャ
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謡罫J(~料請話器~j慢が~1Ii紺』獄中D1~'1・民‑¥‑]111社長m::).",~かE主Q'J .‑¥)0
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第二
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︑第
四章
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再検
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上・
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誌﹄
第一
八五
︑一
八七
号︑
一九
七四
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︒ 内 部 労 働 市 場 の 構 造 と 特 徴 一内部労働市場の類型
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ア lは︑労使関係の日英比較研究の中で両国の雇用制
度の違いとして︑日本の雇用制度が﹁組織志向型﹂
(O Hm 田口 町
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56
であるのにたいして︑イギリスのそれは︹1
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付
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口四戸円︒品同
25
ろであるとしている︒つまりドア
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は︑両国の雇用制度の特徴を単一概念によってとらえようとしている︒
しかし︑イギリスの場合︑今日のイギリスの一雇用制度の特徴
の全体像をドア!のごとく︑﹁市場志向型﹂の概念だけで斉一
に把握することには大いに疑問を感ずる︒むしろ日本とは逆に
イギリスの場合は︑画一的な規定ができないところにこそ︑現
代イギリス労使関係のイギリス的特質が存在しているといって
よい
たしかにイギリスでは︑今日でもなお徒弟規制を挺子として ︒
現代イギリス内部労働市場論 クラフト的伝統を継承している労働組合は存在しており︑この型の組合の支配する職場の内部労働市場︑一雇用制度は︑ドア!の主張するごとくおおむね﹁市場志向型﹂であるといってよい︒しかし徒弟制度を組合規制として確立する歴史的基盤をもちえなかったその他の労働組合︑つまり産業別組合︑一般組合の支配する職場での内部労働市場︑雇用制度の特徴は︑ドアーの用語をもってすれば︑むしろ﹁組織志向型﹂と規定したほうがより適切である︒
このようにイギリスでは︑わが国と違って内部労働市場に
も︑その構造と性格を異にした諸類型が複数存在しているとい
うことである︒イギリスの内部労働市場の諸類型について考察
しているのは︑D‑ロビンソンであるが︑彼はP・
B ‑
ドリ
ン
ジャ
l︑M・J・ピオリ!の内部労働市場論に基づき︑イギリ
ス的特質を考慮して四つの類型で内部労働市場をとらえてい
( 2 )
る︒そこで以下は︑この内部労働市場のロビンソン・モデルを
検討していく︒
なおアメリカの場合︑ドリンジャーらは︑二つの類型で内部
︿3﹀労働市場をとちえている︒即ち︑﹁会社市場﹂
( 2 5 G 2 8
自 己
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と﹁クラフト市場﹂(円g
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の二類型がこれで
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七現代イギリス内部労働市場論
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( 1 )
ニロビンソン・モデルの検討
ロビ
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の﹁入職口﹂(宮ユえg
可 己 の 概
念に依拠して︑第一図にみるような内部労働市場の四つの類型
を示した︒まずロビンソン・モデルの図形自体を簡単に説明し
てお
く︒
A︑
B
︑c
︑Dの各
プロ
7クは︑それぞれが内部労働
市場を示す︒ロビンソンは︑この各ブロックを企業レベル(企
業A︑企業Bなど)でおさえて説明しているが︑それらは時に
よって職場レベル︑工場レベルを単位としたブロックを一示すこ
とに
もな
る︒
︿モデルA﹀から︿モデル
DV
までの四つのモデルの各ブロックの内部は︑労働力の熟練度を区分の基準として︑さらに四
つの小ブロックの労働者集団に分類してある︒各ブロックの外
部から︑それぞれの小ブロック内部に向っている水平の矢印
は︑外部労働市場との接触を示し︑そのレベルで企業が当該小
寺フロックに必要な労働力を調達していることを表わす︒各ョフロ
ックの太い横線の実線は︑小ブロックの間のグループからグル
ープへの労働移動のないことを示す︒たとえば︑八モデル
AV
のお(半熟練)←は(熟練)への内部労働移動はない︒これに
たいして︑矢印付きの垂直な直線(長い方)は︑グループから
一 O八
グループへの内部昇進のあることを示す︒斜線によって示され
た空聞は︑その小ブロック内における監督者または職長の階層
を示し︑そこに示された矢印(短い方)は︑このグレードへの
昇進ルi
トを
示す
︒
次に各モデルの内容であるが︑まず︿モデル
AV
は︑各グループ(熟練︑半熟練︑不熟練)の聞に内部昇進︑昇格といった
垂直的な内部労働移動をする関係はなく︑互いに独立した内部
労働市場をもっ︒したがって︑ここでの労働者の雇用は︑各グ
レードが外部労働市場から独自に︑いわば水平的におこなわれ
る︒このため入職口は複数あり︑グレード間での労働移動はな
い︒また昇進については︑各グレード内の監督者レベルに限定
される︒そして紘グループに入職できるのは︑正規の徒弟訓練
を修了したクラフト・マンに限定される︒
ロビンソンは︑この︿モデル
AV
に4該当する具体例を示してはいない︒しかし従来からの労使関係の研究蓄積から判断し
て︑このモデルに該当するのは機械工業のうち特に受注空産な
いしは単品生産による生産財生産部門(タービン発電機︑ディ
ーゼル・エンジンなど)に属するクラフト・マン(仕上主や旋
盤工)などを中心とする労働者群の職場の内部労働市場がこの
( 2 )
モデルに近似である︒ドア!の規定するイギリスに特徴的な
﹁市場志向型﹂の雇用制度とは︑まさにこの︿モデル
AV
の内
部労働市場に該当するといってよい︒事実︑ドア!の研究した
イギりス電機会社(開口開口各巴
RE
口
2
切
8
自可
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・)
のう
内 部 労 働 市 場 の ロ ビ ン ソ ン ・ モ デ ル ( 第 一 図 )
〈モデル
D >
〈モデルC>
〈モデフレ
B>
くモテフレA>
現代イギリス内部労働市場論
一一・労働移動または昇進なし 一労働移動または昇進あり (注)
US:不熟練層
〔出所)• D.Robinson,External and Internal Labour Markets', in D.Robinson(e.d.), Local Labour Markets and Wage Structures, 1970. P.55.
SS:半熟練層
SK:熟練層
0:技術者などの層
一 O
九現代イギリス内部労働市場論
ち︑とくにブラッドフォード工場ハ回
g a F 己 問 R ︐ 8 3 )
は︑発
電機など生産財を生産しており︑この工場の内部労働市場はこ
(3 )
のモデルであるといってよい︒
八モデルB﹀は︑ハそデルム﹀とは対照的に最も垂直的な関
係をもった内部労働市場を構成している︒ここでの新規労働力
の一雇用は︑最下位のグレードである不熟練労働者に限定され
るQしたがって入職口は︑最下位にただ一つあるのみである︒
労働移動︑つまり下位グレードから上位グレードへの職務の昇
進は︑企業(職場﹀内部の既存の労働者の中から企業レベル︑
工場レベル︑職場レベルを単位として連続的︑垂直的におこな
われる︒このそデルには徒弟制度は存在しない︒
ロビンソンは︑このモデルの具体例としては鉄鋼業の熔鋼工
(4
)
(田宮田]円︒与をあげているにすぎないが︑鉄鋼業の基幹三分化工
程としての高炉部門︑製鋭部門︑圧延部門の生産労働者
Q g
l
E
口氏
︒口
R
語Z 3
の内部労働市場はすべてこのモデルに属す (5 u
る︒さらに︑石油化学工業の生産労働者の内部労働市場もこの
(6 ) 範鳴に属している︒ドア
i
の規定する﹁組蹴志向型﹂の雇用制 度の示す内部労働市場の特徴は︑この八モデルBV
の特
徴と
一
致す
る︒
八モデル
CV
は︑外部労働市場との捜触の仕方に特徴がみら
れるモデルである︒入職口は各グレードのそれぞれに存在して
いるが︑なかでも注目に値するのは︑半熟練のグレードには外
部労働市場のあらゆるグレードから入職できるように門戸が開
一 一
O
放されていることである︒つまり︑他の産業のクラフト・マン日
熟練労働者をはじめ︑現場監督者公石
2 1
8 δ
やホワイト・
カラ
l層にいたるまでが外部労働市場からとの半熟練のグレー
ドに入職すろ︒ロビンソンは︑その理由として︑半熟練のグレ
ードが高賃銀取得の機会を提供しているという経済的理由をあ
(7 U
げて
いる
︒
そしてこのそデルには徒弟制度が有効に機能している︒つま
り︑熟練労働者グループへの入職は︑主として徒弟訓練をへた
クラフト・マンが外部労働市場から参入する︒
ロビンソンは︑このモデルの具体例を示してはいないが︑そ
の記述から判断して自動車工業の組立工合
g o
H 5
Z C
H
半熟練のグループを中心とした内部労働市場を想定していることは確
(8
)
突で
ある
︒
八モデル
DV
は︑すべてのグレードではないが︑特定のグレードのために内部労働市場が垂直に区分される︒そして入職者
は︑不熟練労働者として一二つのセクションのいずれかより入職
し︑それぞれは一定の昇進の可能性をもっている︒しかし熟練
のグレードへ昇進できるのは︑そのうちの一つにすぎない︒熟
練層への入職は︑︿モデル
CV
と同じく徒弟制をへた熟練労働者によって外部労働市場からも衿こなわれる︒
マツタケイらの研究から判断して︑このモデルに該当するの
は家庭用電気製品などを生産する消費財生産部門としての機械
( 9 )
工業の内部労働市場である︒
製造業における筋肉労働者の内部労働市場は︑以上の四つの
類型のいずれかの範鴫に属しているといってよい︒但し︑この
ロビンソン・モデルは︑あくまでも理念型であり︑これらのモ
デルが現実の内部労働市場そのものを表現しているわけではな
いま鉄鋼業の内部労働市場を考えてみると︑それは︿モデル
A﹀十八モデル
BV
である︒というのは︑鉄鋼業の筋肉労働者は︑生産労働者と保全労働者(呂田
E g g s
当
R
る
Z
に よ っ
て構成されている︒そして両者は︑徒弟制の有無によりそれぞ
れ別個の内部労働市場を形成する︒つまり︑従弟制の存在しな
い生産労働者は︑︿モデルB﹀であり︑徒弟制をもっ保全労働
者は︑八モデル
AV
であるからである︒ハ1
)
ここでの内部労働市場モデルの説明は︑木項一ー一の注
( 2 )
のロ
ピン
ソ
γの
論文
によ
って
いる
︒な
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モデ
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う名
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現代イギリス内部労働市場論 ︿5﹀拙稿﹁イギリス鉄鋼業における工場内労使関係について﹂(
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三 内 部 労 働 市 場 の 特 徴
これまでの議論によって︑イギリスの内部労働市場の特徴お
よび問題点として次の諸点が指摘できる︒
まずイギリスでは︑産業の相違と内部労働市場の﹁型﹂との
有機的な関連性が明白であり︑より}般的には︑内部労働市場
の裂の形成と生産技術との相玄関連性である︒しかし内部労働
市場の型をより強く規定するのは︑徒弟制度との関係である︒
イギリスでは︑徒弟制度の有無が内部労働市場の型を規定する
決定的な要因である︒
即ち︑徒弟制のない生産労働者と徒弟規制をもっ保全労働者
とは︑同一職場内でも互いに異なった内部労働市場を形成する︒
現代イギリス内部労働市場論
そしてこのような労働者区分の本質は︑職務の性質に由来する
機能的区分や生産手段の技術水準による区分というよりは︑徒
弟制の有無による組合規制日制限的慣行を元とした制度的区分
である︒つまり︑イギリスにおいて内部労働市場のモデルが複
数存在するのは︑根本的には技術要因ではなく徒弟規制に象徴
される制度要因である︒
そして徒弟制が存在せず︑はっきり構造的に内部昇進型を示
すのは︿モデルB﹀だけである︒外部労働市場の状況とは相対
的に自律して内部昇進が機能するという意味で︑八モデル
BV
は構造的な内部昇進型︑つまり﹁組織志向型﹂である︒これと
は対照的に八モデル
AV
は︑外部労働市場に労働力の参入・参出を全面的に依存するという意味で非構造的な内部労働市場で
ある︒八モデル
CV
と︿モデルDV
は︑一部に内部昇進もみられ︑徒弟制も存在しているという意味で︑さしずめ半構造的な
内部労働市場であるといえる︒
ロビンソンやマックケイらは︑イギリスの内部労働市場の特
徴を特にその機能面に注目し︑カーやドリンジャ
i
に依拠しつ( 1 )
つ次の三つの基準を指標としてとらえている︒
まず第一の基準は︑入職口の開放度に関するものである︒開
放的(O宮口)な内部労働市場の場合は︑労働力の補充はすべて
外部労働市場に依存する︒反対に閉鎖的(三
c z e
な内部労働
市場の場合は︑最下位の職務以外はすべて内部昇進︑配置転換
の方法により労働力は補充︑配置されろ︒ 第二の基準は︑内部移動するさいに職務序列が組織化されているか否かである︒構造的な内部労働市場では︑内部昇進や内部移動の経路が明確にルlル化されている︒反対に非構造的な
内部労働市場の場合には︑内部移動があるとしてもル
1
ル化されず︑水平方向︑垂直方向と多様で広い範囲でなされる︒
第三の慕準は︑内部化の制度的規制の有無に関するものであ
る︒つまり︑昇進や移動を規制する規則(実体ルールと手続必lル)が存存するか否かである︒
マックケイちは︑第三の基準に関じではこれ以上ふれていな
いが︑ここで問題となるのは︑規制の主体が誰かというこ主で
ある︒つまりその規制は︑労働者規制︑組合規制であるのか︑
マネイジメントの専権としてあるのか︑あるいは労使間協定の
形で存在するのかということが重要である︒
以上︑これまでの内部労働市場に関する考察をもとにして︑
袈造業における内部労働市場の類型を筆者なりに整理したのが
第一表である︒鉄鋼業と石油化学工業の生産労働者は︑八モデ
ル
BV
であるが︑鉄鋼業ι
は先任権が労働組合による制度的規制としてあり︑化学工業には昇進制ほ存在しているが先任権の
規制まではない︒また︿モデル
CV
の自動車工業︑︿モデル
D﹀の機械工業には︑一部に内部昇進制がみられるためにその
半構造的な性格を
3
印で表現した︒そもそもロピシソンやマックケイ︑句︑か︑イギリスにおいて内
﹁2
)
部労働市場論に注目したのは次の理由に基づく︒即ち︑従来の
内部市場の諸類型 第 一 表
準 基
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ロビンソン コ
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・モデル産 業
制度的規制 鉄 鋼 業
〈生産労働者〉
石 油 化 学 工 業 (生産労働者) 自 動 車 工 業 機 械 工 業 ( 消 費 財 ) 機 械 工 業 ( 生 産 財 )
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B B C
現代イギリス内部労働市場論
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〈注〉
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印は構造的,入職口は一つ,制度的規制あり.印は非構造的,入職者は複数,制度的規制なし く'印は半構造的,入職口は複数
•
A
伝統的な均衡理論の説くごとく同一地域︑同一産業︑同一職種
に均一な賃銀水準などは現実には存在しないこと︒たとえ同一
職種であっても︑工場開︑企業聞には賃銀格差があるという事
実認識からであった︒
そして賃銀の決定には︑外部労働市場における賃銀水準とい
った競争的な経済市場要因が決定的なものではなく︑工場レベ
ル︑職場レベルでの職場交渉によって形成される諸協定や諸制
度︑つまり制度要因こそが規定的な要因であると主張した︒即
ち ︑
H
内部労働市場は︑外部労働市場とは自律して機能すること︒同内部労働市場では︑市場経済要因よりも制度要因のほう
が影響力が大であること︒日賃銀︑その他の労働条件の決定は︑
職場レベル︑工場レベルで︑しかも経済要因よりも制度要因に
よってより多く決定されること︒以上のことを実証に基づいて
主張したのである︒
しかも注目に値するのは︑このような彼らの主張が︑一般に
非構造的な内部労働市場をもち︑﹁市場志向型﹂の一雇用制度を
特色としてきた機械工業の労働市場に関する研究に苓づいてな
されていることである︒
ここには完全一雇用を基調として︑戦後イギリスの労使関係が
インフォーマル・システムへの傾斜を強めていった事態にたい
する論理的枠組が自ずから呈示されているようにおもわれる︒
つまり労働条件がますます工場︑職場レベルで決定されていく
過程の中で︑制度要因が競争的経済市場要因にたいして﹁非競
一 一
一
現代イギリス内部労働市場論
争的︑障害的諸力﹂として働き︑経済市場が均衡を実現するこ
ハ3
)
とを妨げることを意味している︒そしてこの制度要因のウェイ
トの増大は︑経済的関係U市場システムとしての労使関係にた
いする政治的関係日政治システムとしての労使関係の優位を端
的に示している︒つまり︑労使関係の市場システム
1
交換関係にたいする政治システムH権力・支配関係の優位を表現してい
( 4V
そしてこの労使樹係の職場レベルの比重の増大︑端的には権 る ︒
力・支配関係としての側面の比重の増大によって︑勤続年数と
キャリアーの概念によって構成される労働力の﹁継続的雇用﹂
の特徴は︑たとえ現時点では内部労働市場が非構造的であった
としても︑その職場内定着的性格(企業内定着的性格ではな
い)を強めてけくと推論することは理論的に可能である︒しか
しとはいっても︑内部労働市場の裂が一様でないことから︑労
働力の﹁継続的一雇用﹂のあり方も一様でないことはいうまでも
ない︒したがって次項では︑内部労働市場の四つのモデルをふ
まえて︑そこでの工場内労使関係にみられる労働力の﹁継続的
一一
雇用
﹂の
具体
的形
態を
みて
いく
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生 産 シ ス テ ム と 内 部 労 働 市 場
一生産システムと労働市場の内部化
前項一でみた内部労働市場の型は︑実はそのままですでに生
産工程の技術的特徴を反映している︒
画一的な管理運営を説く伝統的な組織管理論を批判して︑組
織の効率的運営に関心を示したイギリスの産業社会学者J‑ウ
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ドは︑企業の組織的特質は企業規模︑産業分類および企業規模とは直接的には関係なく︑生産技術と因果関係にある
ととを実証的に明らかにした︒そしてウッドワ!ドは︑組織の
特徴を生産工程の技術的特徴と関連させて生産システムを三ハ1﹀つのカテゴリーに分類した︒
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小規模パッチまたは単品生産
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そしてこのウッドワlドの生産システムの概念と内部労働市
場の類型に対応する生産技術の特徴とは重なりあう︒そこで以
下は︑この生産システムと内部労働市場との相互に規定しあう
関係が︑具体的にいかなる展開をみせるかについて︑特に労働
力の﹁継続的雇用﹂の有り様に注目して検討していく︒
分析のために選んだ各生産システムに属する産業は次の五つ
である︒装置生産システムとしては︑鉄鋼業と石油化学工業︑
大量生産システムとしては︑自動車工業と消費財生産部門の機
械工業︑単品生産システムとしては︑生産財生産部門の機械工
業である︒なお単品生産システムに関しては資料的制約もあ
り︑本項の三で大量生産のケlスと共にまとめて議論する︒
( 1 )
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︑第
三章
︒ 二 装 置 生 産 の
ケ
i
ス石油化学工業は︑最も機械化の進んだ生産システムであり︑
連続処理装置による生産をその技術的特徴としている︒アメリ
カの産業社会学者
R
・ブラウナI
は︑アメリカの連続処理工程による工場の特徴を次のように述べている︒この工場は﹁型ど
おりの工場とは全く異なる︒それと分る機械類があるわけでは
ないし︑労働者もごくわずかしかみあたらない︒:::生産され
る化学製品や精製される石油製品は︑連続ヱ程の一つの段階か
らもう一つの段階へとパイプを通して流れていくのであり︑通
常は労働者が手をくだすことはまずない︒:::自動制御は︑連
現代イギリス内部労働市場論 続工程の初発に原料を投入し︑最後の段階で多量の生産物が連ハ1﹀続的に流れ出るという連続処理を可能にする︒﹂
そしてイギリスの産業社会学のD
・ウ
ェダ
パ
1
ンらがイギリスの化学ヱ場を調査したさい︑そこでの装置生産の特徴は︑こ
のブラウナ
i
の連続処理工程にたいする定義と完全に一致する( 2 )
と報告している︒
ここで直接生産に従事する生産労働者は︑オペレーターであ
るが︑彼らの労働は︑連続処理という生産工程の技術的特質に
(3
﹀規定されて︑次のような特徴をもっている︒まずオペレーター
は︑半熟練の範鳴に属しているのであるが︑自動車工業や機械
ヱ業など大量生産システムにおける半熟練労働者(例えば組立
工など)が︑一般に自己の職務を他の目的のための単なる手段
としてしかみなしていないのに比べて︑オペレーターは︑自ら
の職務自体に関心を抱いている︒その理由は︑オペレーターが
課業遂行のべlス︑時間について一定の責任と自由裁量一権を保
持しているためである︒そしてオペレーターと末端管理者であ
るフォア
i
マンとの課業遂行上の関係は︑協力的なものであり︑フォアlマンの職務は監視︑監督というより助言者的なも
ので
ある
︒
つまりオペレーターの労働は︑監視労働と集団作業を特徴と
している︒装置の監視︑ダイヤルや図表の読みとりと記録︑パ
ルプや化学炉の調整といった作業がその主なものである︒した
がって彼らの職務は︑機械の運転というよりは装置を調整管理
一一
五
現代イギリス内部労働市場論 するための的確な状況認識と判断力が要求される知的労働であ る︒またオートメーションは︑作業の連続的処理を必要とする ために作業は集団作業となり︑チーム・ワl
クと責任感が要請
される︒ここには徒弟制は存在せず︑技能の沼得は﹁職務につ
きながら習得する﹂(DP50す
σ
可白 山口 山口
loJTの方法が一巴
般的となる︒そのうえオートメーション化の度合は︑企業︑工 場︑職場によって異なるために生産装詮を探作するために必要 な技能は職場内閉鎖的性格をもっ︒ここにオペレーターを内部 昇進タイプの労働力とする必然性がある︒そして
OJT
による
キャリアーの形成と勤続年数を婚すこと︑つまり年功を基準と
して昇進し︑賃銀も上昇するという﹁広義の年功制﹂的一雇用制
度の特徴がここに現われている︒
第二表は︑石油精製工場のオペレーターの職務序列と賃銀を
示したものであるが︑石油化学工業の生産労働者にとっては︑
このような職階制
( ] Dぴ匂包宙開)は一般的である︒この職階制 度こそは︑労働力の﹁継続的雇用﹂を具体的に表現したもので ある︒そしてこの職階制度は︑職場の労使による交渉事項であ ることはいうまでもない︒但し右油化学工業の場合︑この職階 制に基づく内部昇進の方法は︑鉄鋼業のごとく先任権によらず
(4 )
マネジメントによる職務考査による方法が支配的である︒つま
り内部昇進の制度的規制は労使間に存在せず︑それだけここで
の内部昇進の方法は不安定である︒
次に鉄鋼業の場合であるが︑生産技術の特徴は︑そこに連続
処理工程が採用さ
れている限り︑さ
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インの事例によっ
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明すれば次のごと'
くである︒即ち
管1 v
理者(生産部や技 術調査部)の立案 になる日課表に従
って機械装置をセ
ットし︑計量盤を
読み︑レバーを操 作し︑ボタンを押 して機械を制御す
る監視労働がオペ
レーターの主な作 業である︒ここで も生産労働者の労
働は︑知的労働︑
オペレーター(石油精製工場〉の職務序列と賃銀
(1962)
第 二 表
一一
六 チ
リ
装 置 リ ー 夕 、
‑A
装 置 リ ー グ‑ B
上級オペレーター
オ ベ レ ー タ ーI
オベレナタ‑1I オペレータ一助手
d. 4 (129.8) 10
2 2 2 (100.0) S.
13 15 9 9 8 明 pv
つ 白 内 リ q u Q U
ウt
‑ o り ん っ
1 ι 1 よ 句
i
序
Process Leader A Process Leader B Senior Operator Operator 1 Operator II Assistant Operator 務
青議
不
〔出所
J A .
Flanders,
The Fawley Pγoduclivity Agγeements, 1964,
p. 288,
p. 342.
集団性︑連続性︑および自由裁量権の保持に特徴がある︒
電気メッキ・ラインの坐産労働者の職場集団は︑九人で構成
されている︒いま職務序列に従い下位の︑グレードの職務から列
挙すれば︑電解工(色︒
2 5
‑ 3
0
白押
芯口
仕え
)二
名←
堆積
ヱ(
立ぽ
吋)
←送給機工
Q g
念︒←勢新工助手(田町出
E E D
門的
吉田
吋門
戸田
口﹀
←
検査工
C E
司叩
nH
吋﹀二名←努断工(印尽き﹀←オペレーターO
ZR
守口
白
ES
円﹀の合計九人の職場集団である︒ここでも職階制度は確立しており︑職場への入職口は︑最下位の電解ヱのグレード
にあるだけであり︑昇進はこの職務序列に従つてなされる︒
鉄鋼業では︑職場を単位として先任権が組合規制として存在
しており︑一旦離職すれば先任権に基づく既得権の一切が喪失
する︒同一企業内といえども職場開移動の慣行は︑原則として
ない︒このことは︑鉄鋼業の内部労働市場の構造的で垂直的な
怯裕︑さらには労働者による職場独占的性格をよく表現してい
る︒第一二︑第四表は︑高炉ヱの勤続年数︑賃銀と職務序列との
関係を示したものであるが︑これがイギリスにおける﹁広義の
年功制﹂的な内部昇進制の典型的な塑である︒
鉄鋼業における先任権による内部昇進制の成立起源は︑十九へ
6) 世紀末つまりイギリスの独占成立期に遡る︒ジョン・ホッヂ
c c
v
ロ岡市)の率いる熔鋼工公呂町}おるの組合︑﹁英国熔鋼
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工組合﹂(回号
ZF
ω 広忠
ω自
由
‑ Z 3 .
﹀ 回目 ︒ 円 山
田 門 戸
C P
AKTA lBIS今日の の母体)は︑一八八六年に結成されたが︑一八八八
年の第一回大会には早くも組合規制として先任権による昇進制
現代イギリス内部労働市場論
(1968‑69)
高炉エ
L
鉄鋼業〉の職務序列と勤続年数第三表
勤続年数 炉 前 班 長
第1鉱浮処理方
第2鉱浮処理方
第3鉱
i
宰処理方鉱
i
宰処理・助手第 3 助 手
第 4 助 手
雑 役 夫
17年 16 12 12 7 6 5 3 齢
56歳 37 39
43
54 33
34
37
列 年
Keeper 1st Slagger 2nd Slagger 3rd Slagger Slagger Helper 3rd Helper 4th Helper Labour
序 務 職
一一
七
間宏「イギリスにおける工場内労使関係一製鉄所の事例研究
‑J
調査研究報告第4集, 1972.7, 136‑137頁.
〔出所〉
高炉エの職務序列と賃銀 第 四 表
現代イギリス内部労働市場論
(1968‑69) 収
d.
o
(126.5)1 9 4 (100.0)
均 実
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班 長 助 手
3鉱浮処理方
4 助 手 序 務
炉ー 前
第 1
第1
,
2,
第 3
,
職
間宏「イギリスにおける工場内労使関係」調査研究報告第4集, 1972.7,
136頁.
〔出所〕
を組合規約にもることを
決議している︒昇進規制
︹三
番手
( E 2 H E E
﹀は
一
年で二番手合
R
︒ ロ仏
E S
3
に︑ご番手は二年で一番手
2 2 E E
)
へ昇進︺を設けた意図は︑マネイジメ
ントが﹁ボスのお気に入
り﹂を昇進させることに
反対し︑選考と昇進序列
に客観的基準を確立せん
としたものであった︒
先任権は︑組合内では
クローズド・ショップ制
として働き︑職場では昇
進をマネイジメントの専
権から解放し︑職場集団
の自治によって昇進制を
公正に運営するものとし
て機能している︒つまり
鉄鋼業の先任権による昇
進制というまぎれもない
ルlルは︑装置生産の特
一一
八
徴としての生産の技術要因(オートメーション)と労働力要因
(自律的︑集団的︑連続的︑垂直的な労働力)との相互に規定
的な関係によって︑自動的にいわば自然過程として成立したも
のではない︒これは職場における労使の力関係のなかで︑労働
組合側の職場の権限として彼ら自らの力によって獲得︑維持し
てきた制限的慣行である︒
このことから判断すれば︑今日なお一般に石油化学工業に先
任権が定着していない理由の一端は︑鉄鋼業の労働組合に比べ
て石油化学工業の労働組合の職場でのカの弱さに起因してい
る︒石油化学工業では︑職場集団の自由裁量権はマネイジメン
トの指定する課業遂行の範囲内のことであり︑先任権規制によ
る労働力の自主的管理にまでは及ばない︒つまりオペレーター
の自由裁量権は︑あくまで生産の技術的関係の範囲内のことで
あり︑権力・支配関係の領域にまでは及んでいない︒但し︑石
油化学工業でも次のような場合には︑先任権の原理が適用され(7)
ている︒付内部昇進のためのマネイジメントによる考査のさ
い︑評価点が同点であった場合︑口雇用調整のさいには︑ラス
ト・イン・ファースト・アウトの原則が適用される︒
﹁職務中はチ
i
ムとして働くが︑金の話となれば敵(フォアlマンのことをさす│筆者)と味方である︒それは至極当然の(8 )
こと
であ
る︒
﹂
これはある化学工場のオペレーターの発言であるが︑ここに
は生産の技術的関係としての﹁課業遂行の関係﹂(当
Rwg
三 由
︒
では︑フォアlマンと労働者とは合意の関係にあるが︑賃銀な ど労働条件は﹁交渉の関係﹂(冨呂田
E 呂
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の問題であ
り︑労使関係を対立関係としてみる石油化学工業の生産労働者
(9
﹀の姿勢がうかがわれる︒石油化学工業の労使関係を調査したウ
ェダ
パ
lンらは︑生産労働者が課業遂行にあたってフォアlマ
ンとの密接な協力的関係にあるからといって︑さらにそこから
彼らが企業への積極的な忠誠心︑一体感を一不すような証拠は発
ハ叫山)見できなかったと報告している︒そして石油化学工業では︑先
任権に関しては金U賃銀の問題と同じく労使が争う交渉事項で
ある︒マネイジメントが課業考査による昇進制を主張するのに
たいし︑労働組合はイエス・マンに有利となりやすいマネイジ
メントによる考査の方法に反対し︑究極的には労働者規制とし
ての先任権の方法を主張して労使は対立しているのである︒
これまでの考祭から︑労使関係において権力・支配関係は︑
生産の技術的関係とは自律して機能する側面をもっていること
が分る︒つまり技術革新などによる生産の技術的関係の変化
は︑権力・支配関係の変化を必ずしも伴わず︑逆に生産の技術的
関係が不変であっても︑権力・支配関係は変化することはあり(U) うる︒もしそうでなければ︑たとえばイギリス鉄鋼業における
大規模パッチからオートメーションへの生産システムの変化に
もかかわらず︑職場には先任権が組合規制として依然として存
在し続けている理由が説明できないであろう︒
以上これまでの検討を通して︑装置生産システムの生産労働
現代イギリス内部労働市場論 者の内部労働市場は︑まずその生産の技術的関係か︑りして構造的な性格をもっているということができる︒そしてさらに労使関係の政治過程としての力関係の中で形成される諸制度ハ先任権︑マネイジメントの考査による昇進制など﹀は︑労働力の﹁継続的雇用﹂化と内部労働市場の構造的性格を特色あるものとする制度要因として作用している︒
戦後におけるイギリスの労使関係のインフォーマル・システ
ムとしての職場レベルのウェイトの増大は︑労使関係における
この制度要因の重要性を一層顕著なものとした︒そしてこの職
場レベルの優位は︑内部労働市場の性格をより職場内閉鎖的な
ものとしていったのである︒職務評価による職階制度や生産性
協定は︑この重要性をましてきた制度要因の具体的表現であ
る︒職階制度や生産性協定の成立は︑なによりもまず全国レベ
ル︑産業レベルにたいする職場レベルの交渉の優位を端的に示
して
いる
︒
装置生産システムでは︑すでになんらかの形で﹁広義の年功
制﹂的な慣行が制度として機能している︒したがって装置生産
の生産性協定は︑このすでに制度として機能している年功的な
慣行の垂直的性格を︑さらに一段と強めていくものとして作用
する︒つまり生産性協定は︑内部労働市場の構造化に︑したが
ワて労働力の﹁継続的雇用﹂化の促進に積極的に貢献してい
"
︒ ︒
このことを象徴的に示しているのが︑筋肉労働者をサラリー
一一
九