凍結食品中の氷結晶の再結晶化挙動に関する研究
萩 原 知 明
東京海洋大学海洋科学部食品生産科学科
Recrystallization of Ice Crystals in Frozen Foods
Tomoaki H AGIWARA
Department of Food Science and Technology, Tokyo University of Marine Science and Technology, 4-5-7 Minato, Konan, Tokyo 108-8477, Japan
Recrystallization of ice crystals causes deterioration during storage and distribution in frozen foods. Therefore, the recrystallization process has been considered as an important phenomenon which should be controlled and predicted for optimal storage and distribution of frozen foods.
However, a systematic understanding of the recrystallization is far from what we have expected because of its simultaneous change of size, shape, and number of ice cr ystals. Also, the time- consuming storage experiment to investigate the recrystallization behavior is another reason for preventing a systematic understanding of the recrystallizaton since it makes difficult to accumulate the recrystallzaiton experiments. As for the first problem, we succeeded at numerical estimation of change of ice crystal shape by using the concept of fractal. For the problem of time-consuming storage experiments, we showed that the diffusion coefficient of the water molecules in a freeze- concentrated matrix is a useful parameter for predicting recrystallization of ice crystals in model frozen foods; that means, knowing the water diffusion coefficient in a freeze-concentrated matrix would engender prediction of recr ystallization rate of ice cr ystals and save time-consuming storage experiments. These results would help for systematical understanding of recrystallzation of ice cr ystals in frozen food, which may contribute to solving the global food problem and geoenvironmental issue.
Keywords: recrystallization, ice crystals, frozen foods, frozen storage and distribution
1.緒 言
食品冷凍技術は,数ある食品の保存技術の中で,食 品本来の品質をそのままに近い状態で長期間保存でき る点で優れた保存技術である.凍結温度帯として国際 的に推奨されている-18℃以下では,微生物の生育はほ とんど起こらない.また,酸化や変色などの化学的劣 化反応の進行もかなり抑制可能である.また,凍結時 の氷結晶生成による食品組織の破壊といった問題も,
急速冷凍や超低温保存などの新技術の導入により,改 善が進んでいる.一方で,ほとんど手つかず状態の問 題がある.それは氷結晶の再結晶化(Recrystallization) である.
再結晶化(Recrystalliation)の正確な定義は,「結晶 固化完了後の結晶の数(number),大きさ(size),形 状(shape),方向性(orientation),完全性(perfection) の度合いの変化」[1]とされる.凍結状態の食品に関し ては,凍結完了後の貯蔵および流通の過程において,
①氷結晶の平均サイズの増大, ②氷結晶の数の減少, ③ 氷結晶の平滑化という形態で現れる.Fig. 1に再結晶化 の例を示す.これは,-20℃で貯蔵したマグロ魚肉の光
(受付 2010年10月12日,受理 2010年11月17日)
〒108-8477 東京都港区港南4-5-7
Fax: 03-5463-0402, E-mail: [email protected]
◇◇◇ 解説
(2009 年度日本食品工学会奨励賞)◇◇◇
Fig. 1 Example of recrystallization of ice crystals in frozen foods. Sample; tuna meat. White part represents ice crystals.
学顕微鏡写真である.白い部分が氷結晶に相当する.
貯蔵時間が増すにつれ,氷結晶が大きくなっているこ とに加え,②,③の傾向も明白である.再結晶化過程は,
結晶の表面自由エネルギーが自発的に減少していく結 果によると説明されている.結晶表面に存在する分子 は,結晶内部の分子と比較して,高エネルギー状態に ある.このような分子の数を減らそうと,分子が自発 的に移動し,結晶の表面積を減らす過程(①~③)が 進行する.
氷結晶の再結晶化は凍結食品の貯蔵および流通過程 における主要な劣化要因である.なぜなら,氷結晶の 再結晶化がおこると,大きく成長した氷結晶により,
食品の組織破壊が生じ,食品の品質が損なわれるため である.マグロなどの刺身食材を考えて頂きたい.生 食用の刺身食材は,氷結晶生成による細胞組織への損 傷を小さくするために,凍結時には,急速凍結などの 方法を用いて,できるだけ小さな氷結晶を生成させる 工夫がなされている.しかしながら,貯蔵および流通 中に温度上昇や温度変動など不適切な温度管理がなさ れていると,再結晶化により氷結晶が大きく成長し,
細胞組織に損傷が生じる.その結果,食感の低下やド リップ損失が引き起こされる.また,アイスクリーム は氷結晶の再結晶化がより直接的に影響する食品であ る.アイスクリーム中の水の大部分は氷の状態で存在 している.しかしながら,かき氷と異なって,通常は アイスクリームを食しても,氷の粒々感を感知するこ とはない.これは,アイスクリーム中の氷結晶は,我々 の口腔がその存在を感知できない程度まで小さいため である.これが,アイスクリーム特有の滑らかさの由 来である.ところが,氷結晶の再結晶化により,氷結 晶の平均サイズがある閾値を超えると,氷結晶の存在 を感知できるようになる.具体的には粒々感,ジャリ ジャリ感を感じる.こうなっては,滑らかな食感は失 われ,商品として不適となってしまう.
高品質な凍結食品実現のためには,凍結,解凍過程の みならず,再結晶化の進行挙動の把握とその予測・制 御も欠かすことができない.しかしながら,凍結や解凍 過程と比較して,系統的な検討は進んでいない.その理 由は,①凍結食品中の再結晶化は,氷結晶の形状・大 きさ・数が同時に変化する複雑な過程であり,その定量 的な把握が困難であること,②きわめてゆっくり進行す る過程(数日~数カ月のオーダー)であり,実験が長期 間にわたるため実験データの蓄積が少ないことによる.
筆者らは,①に関して,フラクタル解析を用いるこ とで,再結晶化過程における氷結晶の形状変化を定量 的に評価することに成功した.また,②に関して,凍 結状態にある食品の凍結濃縮相に存在する未凍結状態 の水の運動性(拡散係数)と,再結晶化の進行速度と の間に強い正の相関関係があることを見出し,長期間
の貯蔵実験をすることなく,再結晶化の進行速度の大 小を予測する可能性を示した.本報では以下,それぞ れの概要について述べる.
2.フラクタル解析による再結晶過程における 氷結晶の形状変化の定量的評価[2-4]
Fig. 1にみられるように,凍結食品中に存在する結晶
の粒々は,一見すると複雑かつ不規則な形状をしてい ることが多い.このような不規則形状を定量的に評価 しうる手法として,フラクタル解析がある.「フラクタ ル(Fractal)」とは,Mandelbrotによって創り出され た自己相似性の構造体の呼称である[5].ここでの「自 己相似性」とは,構造の一部を拡大すると,元のもの と同等の構造が見えてくるような性質を指している.
Fig. 2に典型的なフラクタルのコッホ(Koch)曲線を
示す.コッホ曲線は厳密な手続きによって作られる数 学モデル的なフラクタルであるが,自然界に存在する 一見不規則な構造,例えば雲の形,岩の表面積,植物 の分岐構造,海岸線,コロイド凝集体などがフラクタ ルであることが示されている[5,6].食品中の構造にも,
粉体の表面構造[7-10],タンパク質凝集体[11,12]など フラクタルとして認識可能なものが存在することが,
近年明らかになっている.
こうしたフラクタルな構造を定量的に評価する際に 用いられるのが,フラクタル次元(Fractal dimension) とよばれる値である.直線における1次元,平面にお ける2次元などの経験的次元は全て整数であるのに対 して,フラクタル次元は非整数の値を取りうる.例え ばFig. 2のコッホ曲線はlog34≒1.2628の値をとる.
筆者らは,フラクタルの概念を用いて,凍結食品中 の氷結晶の形状を定量的に評価することを試みた.食 品としては,マグロおよび豆腐を用いた.凍結置換法 により顕微鏡切片を作成し,光学顕微鏡で氷結晶の画 像を得た.次に,顕微鏡観察画像上の氷結晶に関して,
個々の氷結晶の面積Spと輪郭線の長さLpの関係を調 べ,以下の関係式より,氷結晶の輪郭線のフラクタル 次元dpの算出を試みた(Fig. 3).
(1)
円や正方形などの単純な図形では,dp=1となる.しか しながら,輪郭線の形状が複雑で自己相似性を有する
Fig. 2 Koch curve, a typical example of fractal.
場合には,dpは1~2の間の非整数の値をとる.一般に dpの値が大きくなるほど輪郭は複雑な形状になると考 えてよい.
Fig. 4は凍結マグロ魚肉中の氷結晶のSpに対するLp
の両対数プロットの例である.プロットは良好な直線 性を示し,(1)式に基づき,dp =1.28が求められ,氷結 晶の輪郭をフラクタルとして定量的に評価できた.
Fig. 5(a)は-50℃で凍結させた後,種々の温度で貯
蔵したマグロ魚肉のdpの値が貯蔵時間によってどのよ うに変化するかを示したものである.Fig. 5(b)には,
貯蔵時間中の氷結晶の平均半径の変化も示してある.
貯蔵時間の増大により平均半径が増加していることか ら,再結晶化が進行していることは明白である.また,
貯蔵温度が高いほどその進行は速いことがわかる.そ して,dpの値は貯蔵期間と共に減少し,また,貯蔵温 度が高いほどその減少速度が速い傾向にあった.この
結果は,フラクタル幾何学によれば,再結晶化に伴い,
氷結晶表面の起伏形状が平滑化していること,その平 滑化速度は貯蔵温度が高いほど速いことを意味するが,
これは,多くの既往研究で報告されている氷結晶の貯 蔵中における形状変化の定性的な特徴と一致した.こ れは,凍結マグロ魚肉のみならず凍結した豆腐でも,
同様であった.
以上の結果は,フラクタル解析を用いることで再結 晶化に伴う氷結晶の形状変化の定量的な把握が可能で あることを示しており,これまで定性的にしか言及さ れてこなかった再結晶化に伴う氷結晶の形状変化を定 量的に評価する道が開けたといえる.また,氷結晶の 形状変化を再結晶化による氷結晶の成長を記述するモ デル式に組み込むことで,再結晶化過程のより正確な 記述と予測も今後期待される.
3.再結晶化の進行速度を予測する試み
3.1 凍結濃縮相の水の運動性と再結晶化進行速度の関 連[13]
前述したように,凍結食品中の氷結晶の再結晶化の
Fig. 3 Schematic illustration of evaluation of fractal dimension dp from microscopic image of ice crystals.
Fig. 4 Double logarithmic plot of area of ice crystal Sp vs.
perimeter length Lp.
Fig. 5 Time courses of the fractal dimension dp (a) and average size of ice crystals (b).
進行は数日~数カ月のオーダーである.これは,凍結 食品の品質保持期限と比較すると決して無視できるよ うな速さではない.しかしながら,研究の対象として 実験を行う場合,この進行の速度が小さいことは,大 きな障壁となる.そのため,実験データの蓄積がほと んど進んでいない.そもそも,多種多様な凍結食品に 関して,様々な凍結貯蔵条件下での再結晶化の進行速 度を網羅しようとするのは,無理があると言わざるを 得ない.このような状況では,単に再結晶化速度のデー タを蓄積するのみならず,再結晶化の進行速度に影響 を及ぼす統一的な要因を把握することも必要である.
統一的な要因を把握できれば,長期間にわたる貯蔵実 験を行うことなしに再結晶化速度の予測と制御が可能 となろう.
前述の再結晶化の機構によれば,結晶を構成する分 子(氷結晶では水分子)の動きが再結晶化に関与して いることがわかる.筆者らは,凍結濃縮相の水分子の 動きに注目した.すなわち,凍結濃縮相の水分子の動 きが再結晶化速度に影響する大きな要因である可能性 があると考えた.水分子の運動速度が速いと,再結晶 化の進行速度も速くなるかもしれない.これまでに,
種々の食品およびモデル食品に関して,様々な貯蔵温 度で再結晶化速度の測定が行われてきた.しかしなが ら,再結晶化速度に違いが生じた場合,それが何によっ てもたらされたのか,合理的な説明はほとんどなされ ていない.水分子の運動性の違いによって,再結晶化 速度の違いが説明できれば,温度のみならず,食品種 類および両者各々が違う場合についても,再結晶化速 度の違いを統一的に説明できることになる.
そこで,筆者らは,凍結濃縮相の水の運動性と再結 晶化速度の関連を実験的に明らかにすることを試みた.
実験試料には,モデル食品として複数の異なる糖溶 液(Table 1)を用い,様々な貯蔵温度で氷結晶の再結 晶化速度定数を測定した.なお,これらの試料は,再 結晶化時の試料中に存在する氷結晶の重量分率を揃え
てある.氷結晶の量も再結晶化の進行速度に影響する と考えられる.氷結晶が多数密に存在していると,氷 結晶の接合が頻繁に起こり再結晶化が早く進行する.
ここでは,まず凍結濃縮相の水の運動性との関連を明 らかにするため,氷結晶の重量分率を揃えることにし た.
各試料の貯蔵温度における凍結濃縮相の水の運動性 は,プロトン・パルス磁場勾配核磁気共鳴法によって 得られる水の自己拡散係数で評価した.
Fig. 6に貯蔵中における氷結晶の再結晶化の例を示
す.貯蔵時間の経過とともに氷結晶の数が減少しつつ,
大きく成長していることがわかる.このような画像か ら氷結晶の平均半径を求め,Ostwald ripeningに基づ く以下の式[14,15]を用いて再結晶化速度定数を算出し た.
(2)
R : 平均半径(個々の氷結晶の面積等価円半径の平均)
R0: 貯蔵時間ゼロの時の平均半径
k : 再結晶化速度定数 t : 貯蔵時間
Table 1 Sample sugar solutions.
Sample Temperature (℃) Freeze-concentrated
matrix conc. (wt%) Ice content (wt%)
21.8% maltose -4.4 40.0 45.4
22.45% sucrose -4.6 41.1 45.4
18.5% glucose -5.8 34.0 45.5
25.0% sucrose -5.8 45.8 45.5
22.45% fructose -8.0 41.1 45.4
28.6% sucrose -8.0 52.4 45.4
25.0% fructose -10.0 45.8 45.5
25.0% glucose -10.0 45.9 45.4
Fig. 6 Typical microscopic images of sugar solutions.
Sample; 28.6% sucrose at -8.0℃.
Fig. 7は再結晶化速度定数kを貯蔵温度に対してプ ロットしたものである.再結晶化速度定数は,測定温 度に一義的に依存せず,用いた糖の種類の影響があっ
た.Fig. 8は,温度の代わりに凍結濃縮相の水の自己拡
散係数に対して,再結晶化速度定数kをプロットした ものである.Fig. 7と異なり,良好な正の相関関係が得 られた.この結果は,凍結濃縮相の拡散係数がわかれば,
再結晶化速度定数の大小関係が予測可能であることを 意味している.すなわち,長期間の貯蔵実験を行わな くとも,凍結濃縮相の拡散係数を測定するのみで再結 晶化速度定数の大小関係がわかることを示唆している.
3.2 分子動力学法による分子シミュレーションを用い た凍結濃縮相の水分子の運動性の予測並びに再結晶化 進行速度の大小関係の予測[16]
プロトン・パルス磁場勾配NMRは,現時点で水分子 の拡散係数を精度よく実測できる優れた手法である.
しかしながら,本体価格およびランニングコストが極 めて高価であるのが難点である.そこで,凍結濃縮相 の拡散係数を安価に予測する方法として,分子動力学 法(Molecular Dynamics; MD法)による分子シミュレー ションの適用を試みた.分子動力学法とは,分子間お
よび分子内にはたらく力からニュートンの運動方程式 を数値的に解くことにより,対象とする分子の動きを コンピュータ上で再現するものである[17].得られた 分子の軌跡を解析することにより,対象とする系の静 的,動的安定構造や,動的過程についての情報を得る ことができる.分子動力学法に代表される分子シミュ レーションは,コンピュータの性能向上と計算手法の 進展に伴い,実験・理論に次ぐ第三の研究手法として,
近年あらゆる研究分野で普及が進んでいる.
筆者らは,水モデルとしてSPC/E[18],糖の力場モ デルとして,炭水化物に最適化されたOPLS-AA[19]を そ れ ぞ れ 用 い, 分 子 動 力 学 法 プ ロ グ ラ ム
GROMACS[20]で糖溶液の凍結濃縮相中の水分子の動
きを5nsシミュレーションし,水の自己拡散係数を求
めた.Fig. 9は,シミュレーションから求めた水分子の
自己拡散係数をプロトン・パルス磁場勾配NMRによ る実測値と比較を行ったプロットである.プロット中 の破線は,両者の値が一致するラインを示している.
プロットはこのライン上にほぼ位置していることから,
シミュレーションから求められた水の自己拡散係数は,
実測値とほぼ一致していることがわかる.そして,実 測値の拡散係数と同様に,シミュレーションから求め た水分子の自己拡散係数と再結晶化速度定数との間に は,良好な正の相関関係があった(Fig. 10).ここでシ ミュレーションに用いた計算機は,一般的なPCで十分 であった.以上の結果は,高価な実験装置を用いずとも,
安価にMD法で再結晶化速度の大小関係の予測が可能 であることが示唆するものである.
本報で紹介したのは比較的シンプルな糖溶液につい
Fig. 7 Plots of recrystallization rate as a function of storage temperature.
Fig. 8 Plots of recrystallization rate as a function of water diffusion coefficient measured by NMR. Solid lines represent result of linear fitting.
Fig. 9 Plots of diffusion coefficients evaluated using the molecular dynamics (MD) simulation as a function of the value measured using NMR. The broken line represents points where the measured diffusion coefficients are equal to the simulated ones.
てのシミュレーションであった.実際の食品のように もっと多成分かつ複雑な分子からなる系についてのシ ミュレーションは可能であろうか?原理的には,同様 の方法で可能であるが,計算機のメモリーと演算速度 により,現実に取り扱うことのできる系は制限を受け る.細胞組織のシミュレーションなどは,中に含まれ る原子数が膨大な数となるため,現代のスーパーコン ピュータをもってしても困難である.しかしながら,
コンピュータの技術の進歩は日進月歩である.いずれ 近い将来に,丸ごとの食品をシミュレーションできる 時が来るだろう.もっともその時には,氷結晶の再結 晶化過程そのものを直接シミュレーション可能となっ ているかもしれないが.
4.お わ り に
以上,凍結食品中の再結晶化に関して,フラクタル 解析による氷結晶の形状変化の定量化,氷結晶の再結 晶化速度の予測の試みについての筆者らの研究を述べ てきた.冷凍技術はエネルギーを多く消費する.それ ゆえ,その使用に当たっては,地球温暖化など地球環 境保全に対する対応を常に考えざるを得ない宿命にあ る.一方では,食糧の有効利用のための保存技術とし て今後も不可欠な技術であるのも確かである.氷結晶 の再結晶化現象の理解と制御を通じて,シェルフ・ラ イフの的確な設定による高品質な凍結貯蔵と,効率的 な装置運用を実現し,広い意味で地球環境保全と食糧 問題解決に寄与することを期待したい.
謝 辞
本研究は,東京水産大学(現東京海洋大学)水産学 Fig. 10 Correlation between the recrystallization rate and simulated diffusion coefficient. Solid lines represent result of linear fitting.
部食品生産学科において高井陸雄教授(現東京海洋大 学名誉教授)・鈴木徹教授にその契機を与えて頂き,そ の後は両先生に加えて,渡辺尚彦教授,㟢山高明教授,
米国ウィスコンシン大学ハーテル教授にもご指導とご 支援を頂きながら発展させてきたものです.上記の先 生方に対し,深く感謝申し上げます.また,本研究に 関して様々な視点から議論を頂きました研究者・技術 者の方々,そして本研究に携わって頂いた学生諸氏に 心より感謝申し上げます.
引 用 文 献
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要 旨
氷結晶の再結晶化は凍結食品の貯蔵および流通時に おける品質劣化の原因であり,高品質な凍結食品実現 のためには,その進行挙動の把握と予測・制御は不可 欠である.しかし,再結晶化過程の系統的な検討は進 んでいない.その理由は,①再結晶化は,氷結晶の形状・
大きさ・数が同時に変化する複雑な過程であり,その 定量的な把握に困難が伴うため,②ゆっくり進行する 過程であり実験が長期間に渡るので,データの蓄積が 少ないためである.筆者らは,①に関して,フラクタ ル解析を用いることで,再結晶化過程における氷結晶 の形状変化を定量的に評価することに成功した.また,
②に関して,凍結濃縮相の水の運動性(拡散係数)と 再結晶化の進行速度との間に強い正の相関関係がある ことを見出し,長期間の貯蔵実験をすることなく,再 結晶化の進行速度の大小を予測する可能性を示した.
以上の結果は再結晶化挙動の系統的な理解の進展に寄 与するものと考えられた.