厚生労働科学研究費補助金(労働安全衛生総合研究事業)
分担研究報告書
4.〜労働者を対象とした保健指導の手引」の作成〜
分担研究者:
只野 祐
(公社)全国労働衛生団体連合会 専務理事
全国労働衛生機関団体連合会 (全衛連):保健指導手引作成委員会
小林祐一
産業医科大学・産業生態科学研究所・産業保健経営学 非常勤講師
櫻木園子
一般財団法人京都工場保健会 医療次長
永田智久
産業医科大学・産業生態科学研究所・産業保健経営学 助教
喜多村紘子
産業医科大学・産業生態科学研究所・作業関連疾患予防学 助教
1 平成26年度研究方針
・厚生労働科学研究「中小企業用産業保 健電子カルテの開発とそれによる効果 的・効率的な産業保健手法に関する検討」
の研究計画 2 年目に当たり、25 年度研究 を踏まえ、26 年度においては 25 年度報 告書の提言の 2 で示された「労働者を対 象とした保健指導の手引」の作成に取り 組むこととした。
・26 年度においては、保健指導の手引を 完成させ、計画 3 年目の 27 年度において は、本研究の主目的である PHR の推進の ため、保健指導の内容のコード化につな げていくことを目指すこととした。
・しかしながら、平成 26 年 6 月、労働安 全衛生法の改正が行われ、平成 27 年 12
月 1 日からストレスチェックが施行され ることとなり、厚生労働省は、労働安全 衛生法施行規則改正の改正、ストレス指 針の策定、関連通達の発出等の作業を現 在続けており、保健指導の実施において メンタルヘルス対応も非常に重要である ことから、本年度研究においては、当初 計画を変更し、保健指導の手引き暫定版 の作成に留め、平成 27 年度研究において 引き続き検討を行うこととした。
・したがって、本報告書添付の保健指導 の手引(別添資料 2)は暫定版であり、
27 年度において見直し検討されるもの であることを最初にお断りする。
(参考)平成25年度厚生労働科学研究における提言
平成25 年度厚生労働科学研究において、次の事項について整備する必要がある旨提 言された。
1 周知活動の一層の推進
健康確保対策に関する法令、行政指導、各種制度が円滑に実施されるためには、事 業場、とりわけ中小・零細規模事業場に対する一般健康診断の事後措置としての保健 指導に関する啓発活動、労災保険二次健康診断等給付制度の周知活動が重要である。
2 保健指導の実施の促進
労働安全衛生法第 66 条の 7 に基づく保健指導の実施の促進のため、次の事項を行 政指導通達又はマニュアル等に盛り込む必要がある。
なお、マニュアル等の作成については、関係団体にこれを行わせる方法もある。
(1)保健指導の対象とすべき労働者の選定基準(明確な基準が示されることが望まし いが、少なくとも考え方を示す必要がある。)
(2)保健指導の標準的な実施方法、内容等
(3)労働安全衛生法の改正も視野に入れたメンタルヘルスに関する保健指導実施の要 領
(4)保健指導結果に基づく事業場・職場単位の分析とフィードバック、産業医活動へ の反映
(5)保健指導の実施に際して必要な「一般健康診断結果(過去情報を含む。)」、「事後 措置の履歴(保健指導の履歴とその内容を含む。)」、「就業制限に関する情報」、「過 去の労働時間・過重労働等の情報」などの情報の提供のためのルール
(6)健康診断の実施後、保健指導を実施すべき時期の目安
(7)プライバシーの保護の観点から保健指導を実施する場所の必要な要件
(8)保健指導のフォローアップの実施に関する目安、手法等
(9)個人情報の保護に関する留意事項その他必要な事項 3 労災保険二次健康診断等給付制度の活用の促進
労災保険二次健康診断等給付制度の周知徹底が重要であるほか、現行の対象者選定 基準の拡大について検討する余地がある。
4 産業医、産業保健職の活動
健診機関の医師による産業医活動及び小規模事業場における産業医活動に準ずる 活動は、重要な一翼を担うようになっており、一層の促進のための施策の展開が望ま れる。具体的には、健診機関から意見のある「助成金の創設」について検討すること が望まれる。
産業保健職については、能力向上のための研修制度の確立、衛生管理者とは異なる 専門職としての位置付け等の要望あることを検討課題として取り組むことが望まれ る。
2 労働者を対象とした保健指導の手引(別添資料 2)の作成
(1)手引作成に当たって
・労働安全衛生法第66条の7は「事業 者は、健康診断の結果、特に健康の保持 に努める必要があると認める労働者に対 し、医師または保健師による保健指導を 行うように努めなければならない。」とし
ている。
・「特に健康の保持に努める必要があると 認める労働者」について、法令、通達は 特に言及していないが、労働安全衛生法 の趣旨、これまでの行政施策の展開等か ら、職業性疾病の予防にとどまらず、脳・
心臓疾患、メンタル不調及びその他の作 業関連疾患の予防を含むと考えられるこ とから、これらに対応できる保健指導の 手引とする。
・労働安全衛生法第66条の7に基づく 保健指導を実施するに当たっては、「事業 場における労働者の健康保持増進のため の指針」(平成元年)、「労働者の心の健康 の保持増進のための指針」(平成 18 年)
のほか、関連通達等を踏まえる必要があ る。
・40 歳以上の労働者に対しては、平成 20 年度から高齢者医療確保法に基づく 特定保健指導、平成26 年度からデータ ヘルス計画に基づく保健指導、介入指導 が行われている。「特に健康の保持に努め る必要があると認める労働者」と、高齢 者医療確保法に基づく特定保健指導対象 者、あるいはデータヘルス計画に基づく 保健指導、介入指導対象者とは必ずしも 同一ということにはならないが、多くの 場面で重複する面もあり、保健指導の実 施に当たっては医療保険者の実施する施 策と十分に連携する必要がある。
(2)労働の視点を加味した保健指導
・労働衛生機関に所属する保健師等は平 成 20 年度から実施されている特定保健 指導に大きく関わっており、一方、労働 安全衛生法に基づく保健指導については その需要が少ないこともあって、保健指 導と言えば特定保健指導を指すほどにな っている。
・一般健康診断の結果、労働者の有所見 率は50%を超え、とりわけ血中脂質、血 糖に関する所見が多く指摘されており、
保健指導に当たっては特定保健指導の手 法により対処すべき点が多いと言える。
しかし、所定外労働により深夜の食事に ならざるを得ない場合等もあり、労働の
視点を考慮しないわけにはいかない。
・すなわち、労働者に対する保健指導の 実施に当たっては、個人の生活習慣の改 善だけに求めるのではなく、所見の背景 にある職場環境、就労環境等の事情にも 着目することが重要である。
・特定健診、特定保健指導制度により、
職域においても労働衛生機関の保健師等 は、厚生労働省等から示されている特定 保健指導のツールを活用し、職場単位あ るいは労働者個人単位に特定保健指導が 実施されている。特に、生活習慣改善指 導のためのツール(「保健指導における学 習教材集」国立保健医療科学院ほか)は 充実しており、労働安全衛生法に基づく 保健指導にあっても積極的に活用すべき である。
・以上のことから、手引の作成に当たっ ては、労働者に対する保健指導を実施す るに当たって、特定保健指導の分野で開 発された生活習慣改善指導のツールの他 に加えるべき情報、すなわち職場環境、
就業環境等に関連した情報の概要あるい は情報の所在等を整理して示す必要があ る。
・また、25 年度研究において、「労働安 全衛生法第66条の7に基づく保健指導 の実施の促進のため、次の事項を行政指 導通達又はマニュアル等に盛り込む必要 がある。」としており、手引の作成に当た ってはこの内容を盛り込む。
① 保健指導の対象とすべき労働者の 選定基準
② 保健指導の標準的な実施方法、内 容等
③ 特に、メンタルヘルスに関する保 健指導実施要領
④ 保健指導結果の分析とフィードバ ック、産業医活動への反映
⑤ 保健指導の実施に際して必要な情
報の提供のためのルール
⑥ 健康診断の実施後、保健指導を実 施すべき時期の目安
⑦ プライバシーの保護の観点から保 健指導を実施する場所の必要な要件
⑧ 保健指導のフォローアップの実施 に関する目安、手法等
⑨ 個人情報の保護に関する留意事項 その他必要な事項
(3)手引きの内容
・前述のとおり、特定健診の導入により、
職域においても厚生労働省等から示され ている特定保健指導のツールを活用し、
職場単位あるいは労働者個人単位に特定 保健指導が実施されている。一方、労働 安全衛生法に基づく保健指導については 特定保健指導のようにツールが体系化さ れてはいない。このような事情も手伝っ て、労働安全衛生法に基づく保健指導の 普及に労働衛生機関側も必ずしも積極的 に取り組まれていない。
・手引の作成に当たっては、労働者に対 する保健指導を実施するため、特定保健 指導の分野で開発された生活習慣改善指 導のツールに加えるべき、職場環境、就 業環境等に関連した情報あるいは情報の 所在等を整理して示す必要がある。