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Vol.16 No.1 原子力バックエンド研究

巻頭言

地層処分場サイト選定に向けて

平成 20 年度バックエンド部会長 九州大学 出光一哉

2000年10月18日にNUMOが設立されて既に9年の歳月が流れ,2002年12月19日から高レベル放射性廃棄物の処 分地の公募制での選定作業が始まった。この間,いくつもの地域が話題にのぼったが,公募申請に至ったのは2007年1 月25日の高知の東洋町のみであった。東洋町も町長選挙の末,反対派町長の当選に伴い公募撤回となった。これらの社 会現象は必ずしも技術的なものを原因としてはいない。しかしながら,技術的な安全性,安全を保証する技術システムに ついて,公募を検討した地方自治体の住民によく伝わっていなかったことは否めない。まずは話を聞いてもらえる環境を 作っていくことが必要である。

専門家は安全性を強調しその部分をより詳細に説明する傾向がある。しかし,説明を受ける地域住民は,そもそも高レ ベル放射性廃棄物がどの程度危険なものなのかを知らないため,安全であるという実感を持つことができない。誤解を与 えることを怖れず,高レベル放射性廃棄物の潜在的危険性を説明し,その害を受けないようにどのような手段を講じてい るのかを丁寧に説明していくことが必要である。例えば,高レベルガラス固化体が目の前にあれば我々は10秒と生きて はおれない。だから,充分な遮へいを持つ施設で遠隔で取り扱う。これは,時速100 kmで走る車に跳ねられれば即死す るので,車道と歩道を分け,必要であればガードレールを設置することと同じである。大きな違いは,車は目で見て危険 と判るが,放射線は目に見えないことである。ならば,放射線を見える(知覚できる)ようにする努力をし,放射線/放 射能に馴染んでもらうことが理解につながると考える。

また,電気を使うことによって必ず放射性廃棄物を生み出しており,全国民の共通の問題であることを認識してもらう 必要がある。1 kWhの発電により生み出される高レベルガラス重量は約0.3 mg(2MBq:原子力の発電割合を25 %として)

である。これは,二酸化炭素排出量約400 g,石炭焼却灰約6 g(0.1 Bq/g程度のウランを含む)に比べ,重量/体積は遥 かに少ない。残るは放射能をいかに閉じ込めるかが課題であり,そのことを国民が認識することが重要である。

原子力バックエンド研究は,日本原子力学会バックエンド部会の研究誌であり,技術や研究についての発表の場である ことは間違いない。しかし,一部の専門家同士だけの専門誌としてのみ利用するのはもったいない。本号には,技術志向 の論文としての新技術を用いた分配係数の測定法だけでなく,他分野の専門家への説明という観点の論文も載せられてい る。

さらに,本誌は2009年度から電子化され,査読を通過した論文はWEB上で先行公表されている。いち早く成果を公 表するための画期的な試みであり,バックエンド部会ならではの仕組みとして誇れるものである。

今後はさらに広くの方に読まれる学術研究誌として発展することを祈念し巻頭の挨拶としたい。

(2009年12月)

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原子力バックエンド研究 December 2009

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