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平成26年度厚生労働科学研究委託費

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Academic year: 2021

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平成26年度厚生労働科学研究委託費

(地球規模保健課題解決推進のための研究事業)

委託業務成果報告(業務項目)

地球規模モニタリングフレームワークにおける各種指標の検証と 科学的根拠にもとづく指標決定プロセスの開発

「包括的な最終アウトカム指標の方向性の提案」

担当責任者  森臨太郎(国立成育医療研究センター研究所  政策科学部部長)

研究要旨

  近年、コクラン共同計画など系統的レビューや医療技術評価、さらには世界の疾病負担研 究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study,GBD)などの地球規模での疾病構 造の調査など、質調整生存年(QALY)など医療介入のアウトカム指標を推定する研究が急速に 発達し、現在まで定着してきた。これらの蓄積は、科学的根拠に基づいた政策決定過程のツ ールとして医療資源の配分の最適化にこれまで大きな役割を果たしてきた。ところが、伝統 的な功利主義(utilitarianism)の系譜を引き継ぐ質調整生存年などの費用便益分析の蓄積を増加 させるほどに、世界保健機関の指摘するところのウェル・ビーイング(well-being)の概念、す なわち身体的のみならず精神的な充足を包摂したより包括的な健康・ウェルネスという概念 との間の乖離が大きくなることが考えられる。本研究では、そのような乖離が今後加速的に 大きくなる可能性があることを指摘し、費用便益分析を蓄積することの限界を説明すると同 時に、今後の疫学研究の方向性への提言を与える。

研究協力者

Jesse Bump (Georgetown University) 大西香世(国立成育医療研究センター政 策科学部)

A. 研究目的

本研究は、質調整生存年(Quality Adjusted Life Years: QALY)などに代表さ れる医療介入の費用便益分析という科学 的根拠に基づく指標の開発が、現在の方 向性で継続された場合に、世界保健機関 による健康定義、あるいはウェル・ビー イン(well-being)の本来的に目指すべき方 向性との間の乖離が大きくなる可能性が あることへの危惧から、その乖離の存在 の可能性を指摘すると同時に、新しい指 標の開発の必要性を主張することを目的 とする。また、科学的根拠にもとづく指 標が内在的に持つ方法論的問題点も指摘 することを目的とする。

 

B. 研究方法

  既存研究レビュー/二次文献調査。

C. 研究結果

経済学者のアマルティア・セン(1992) は、伝統的な厚生経済学が、所得の増加 が自動的に効用(utility)の増加をもたら すと主張していることに疑問を呈し、「ケ イパビリティ(capability)」=潜在能力と いう指標を提示して人間の貧困に対する ケイパビリティ論を展開させた。A・セ ンによれば、人間は、年齢・性別・身体 的あるいは精神的能力、病気への抵抗力 などすべて異なる多様な存在である。し たがって、人々の福祉(well-being)を単一 的な所得・富・幸福という変数にのみ着 目して表わすという伝統的なアプローチ は個人間の差異を無視する、と考える。

言い換えると、センの言うケイパビリテ ィとは、個々人が価値を見出し、選択す ることのできる「機能(functioning)」の集

(2)

合体として捉え、伝統的功利主義 (utilitarianism)

A・センのケイパビリティ論からみる と、質調整生存年

資源の配分の最適化とは、社会全体の幸 福を最大化することを最善とする伝統的 な功利主義の系譜を引き継ぐ医療資源の 配分決定過程であると考えられる。今日、

最も一般的な方法論であり、かつ市民権 を得た科学的根拠に基づいた医療資源の 配分をめぐる意思決定とは、

年(QALY)

のことこそが医療の目指すべき到達点で あると考え、医療資源の配分の意思決定 ツールとして用いてきた。(図1)

【図1】科学的根拠に基づく手法の二 本の柱

ところが、まさに

を最大にすることこそが社会全体の幸福 を最大化することであるとは「仮定」で しかなく、多様な個人が共通して包摂し ている価値を過小評価しているところに 問題点がある。そのように考えた場合、

質調整生存年

に顕れる領域は、緩和医療や途上国にお けるリプロダクティブ・ヘルス

おける意志決定である。世界保健機関の 定義によると、

病気・病弱ではない状態であるだけでな く、身体的・精神的・社会的に良好な状 態であることを指すが、

することが必ずしもウェル・ビーイング を追求するものになるとは限らない【図 合体として捉え、伝統的功利主義 (utilitarianism)を批判するものである。

・センのケイパビリティ論からみる 質調整生存年

資源の配分の最適化とは、社会全体の幸 福を最大化することを最善とする伝統的 な功利主義の系譜を引き継ぐ医療資源の 配分決定過程であると考えられる。今日、

最も一般的な方法論であり、かつ市民権 を得た科学的根拠に基づいた医療資源の 配分をめぐる意思決定とは、

(QALY)を最大限にすることであり、そ ことこそが医療の目指すべき到達点で あると考え、医療資源の配分の意思決定 ツールとして用いてきた。(図1)

【図1】科学的根拠に基づく手法の二 本の柱

ところが、まさに

を最大にすることこそが社会全体の幸福 を最大化することであるとは「仮定」で しかなく、多様な個人が共通して包摂し ている価値を過小評価しているところに 問題点がある。そのように考えた場合、

質調整生存年(QALY)

に顕れる領域は、緩和医療や途上国にお けるリプロダクティブ・ヘルス

おける意志決定である。世界保健機関の 定義によると、ウェル・ビーイングとは、

病気・病弱ではない状態であるだけでな く、身体的・精神的・社会的に良好な状 態であることを指すが、

することが必ずしもウェル・ビーイング を追求するものになるとは限らない【図 合体として捉え、伝統的功利主義

を批判するものである。

・センのケイパビリティ論からみる 質調整生存年(QALY)に依拠した医療 資源の配分の最適化とは、社会全体の幸 福を最大化することを最善とする伝統的 な功利主義の系譜を引き継ぐ医療資源の 配分決定過程であると考えられる。今日、

最も一般的な方法論であり、かつ市民権 を得た科学的根拠に基づいた医療資源の 配分をめぐる意思決定とは、

を最大限にすることであり、そ ことこそが医療の目指すべき到達点で あると考え、医療資源の配分の意思決定 ツールとして用いてきた。(図1)

【図1】科学的根拠に基づく手法の二

ところが、まさに質調整生存年

を最大にすることこそが社会全体の幸福 を最大化することであるとは「仮定」で しかなく、多様な個人が共通して包摂し ている価値を過小評価しているところに 問題点がある。そのように考えた場合、

(QALY)の限界が最も端的 に顕れる領域は、緩和医療や途上国にお けるリプロダクティブ・ヘルス

おける意志決定である。世界保健機関の ウェル・ビーイングとは、

病気・病弱ではない状態であるだけでな く、身体的・精神的・社会的に良好な状 態であることを指すが、QALY

することが必ずしもウェル・ビーイング を追求するものになるとは限らない【図 合体として捉え、伝統的功利主義

を批判するものである。

・センのケイパビリティ論からみる に依拠した医療 資源の配分の最適化とは、社会全体の幸 福を最大化することを最善とする伝統的 な功利主義の系譜を引き継ぐ医療資源の 配分決定過程であると考えられる。今日、

最も一般的な方法論であり、かつ市民権 を得た科学的根拠に基づいた医療資源の 配分をめぐる意思決定とは、質調整生存 を最大限にすることであり、そ ことこそが医療の目指すべき到達点で あると考え、医療資源の配分の意思決定 ツールとして用いてきた。(図1)

【図1】科学的根拠に基づく手法の二

質調整生存年(QALY) を最大にすることこそが社会全体の幸福 を最大化することであるとは「仮定」で しかなく、多様な個人が共通して包摂し ている価値を過小評価しているところに 問題点がある。そのように考えた場合、

の限界が最も端的 に顕れる領域は、緩和医療や途上国にお けるリプロダクティブ・ヘルス/ライツに おける意志決定である。世界保健機関の ウェル・ビーイングとは、

病気・病弱ではない状態であるだけでな く、身体的・精神的・社会的に良好な状

QALYを最大化

することが必ずしもウェル・ビーイング を追求するものになるとは限らない【図 を批判するものである。

・センのケイパビリティ論からみる に依拠した医療 資源の配分の最適化とは、社会全体の幸 福を最大化することを最善とする伝統的 な功利主義の系譜を引き継ぐ医療資源の 配分決定過程であると考えられる。今日、

最も一般的な方法論であり、かつ市民権 を得た科学的根拠に基づいた医療資源の 質調整生存 を最大限にすることであり、そ ことこそが医療の目指すべき到達点で あると考え、医療資源の配分の意思決定

【図1】科学的根拠に基づく手法の二

(QALY) を最大にすることこそが社会全体の幸福 を最大化することであるとは「仮定」で しかなく、多様な個人が共通して包摂し ている価値を過小評価しているところに 問題点がある。そのように考えた場合、

の限界が最も端的 に顕れる領域は、緩和医療や途上国にお

ライツに おける意志決定である。世界保健機関の ウェル・ビーイングとは、

病気・病弱ではない状態であるだけでな く、身体的・精神的・社会的に良好な状 を最大化 することが必ずしもウェル・ビーイング を追求するものになるとは限らない【図

1】。また、

いう結果に基づく配分を適正化するとい う帰結主義であるが、医療資源の分配に おいても、個々人のケイパビリティの差 異に着目することができないという限界 もある。さらに、

とした場合に、希少疾患を持つ

する治療方法や薬品の開発に関する経済 的誘因が小さくなるという問題もあるこ とが

D.

本研究は、

療介入の健康アウトカム指標を開発し、

今後増加させていくことが、本来的な 人々のウェル・ビーイングと乖離する方 向にあるのではないかという問題点を指 摘した。すなわち、

大化することを最善とする伝統的な功利 主義の系譜を引き継ぐ

(QALY)

過小評価するという限界である。本研究 においては、

概念が望まれることを明らかにした。

【図2

[参考文献 Amartya Sen,

】。また、費用便益分析はアウトカムと いう結果に基づく配分を適正化するとい う帰結主義であるが、医療資源の分配に おいても、個々人のケイパビリティの差 異に着目することができないという限界 もある。さらに、

とした場合に、希少疾患を持つ

する治療方法や薬品の開発に関する経済 的誘因が小さくなるという問題もあるこ とが指摘できる。

考察・結論

本研究は、質調整生存年

療介入の健康アウトカム指標を開発し、

今後増加させていくことが、本来的な 人々のウェル・ビーイングと乖離する方 向にあるのではないかという問題点を指 摘した。すなわち、

大化することを最善とする伝統的な功利 主義の系譜を引き継ぐ

(QALY)は、多様な個々人の持つ価値観を 過小評価するという限界である。本研究 においては、QALY

概念が望まれることを明らかにした。

図2】健康アウトカム指標の限界

参考文献]

Amartya Sen, Inequality reexamined

費用便益分析はアウトカムと いう結果に基づく配分を適正化するとい う帰結主義であるが、医療資源の分配に おいても、個々人のケイパビリティの差 異に着目することができないという限界 もある。さらに、QALYの最大化を目的 とした場合に、希少疾患を持つ

する治療方法や薬品の開発に関する経済 的誘因が小さくなるという問題もあるこ

指摘できる。

考察・結論

質調整生存年

療介入の健康アウトカム指標を開発し、

今後増加させていくことが、本来的な 人々のウェル・ビーイングと乖離する方 向にあるのではないかという問題点を指 摘した。すなわち、社会全体の幸福を最 大化することを最善とする伝統的な功利 主義の系譜を引き継ぐ質調整生存年

は、多様な個々人の持つ価値観を 過小評価するという限界である。本研究

QALYに代わり得 概念が望まれることを明らかにした。

健康アウトカム指標の限界

Inequality reexamined

費用便益分析はアウトカムと いう結果に基づく配分を適正化するとい う帰結主義であるが、医療資源の分配に おいても、個々人のケイパビリティの差 異に着目することができないという限界 の最大化を目的 とした場合に、希少疾患を持つ患者に対 する治療方法や薬品の開発に関する経済 的誘因が小さくなるという問題もあるこ

質調整生存年(QALY)など 療介入の健康アウトカム指標を開発し、

今後増加させていくことが、本来的な 人々のウェル・ビーイングと乖離する方 向にあるのではないかという問題点を指 社会全体の幸福を最 大化することを最善とする伝統的な功利

質調整生存年 は、多様な個々人の持つ価値観を 過小評価するという限界である。本研究 に代わり得る新しい 概念が望まれることを明らかにした。

健康アウトカム指標の限界

Inequality reexamined 費用便益分析はアウトカムと いう結果に基づく配分を適正化するとい う帰結主義であるが、医療資源の分配に おいても、個々人のケイパビリティの差 異に着目することができないという限界 の最大化を目的 患者に対 する治療方法や薬品の開発に関する経済 的誘因が小さくなるという問題もあるこ

など医 療介入の健康アウトカム指標を開発し、

今後増加させていくことが、本来的な 人々のウェル・ビーイングと乖離する方 向にあるのではないかという問題点を指 社会全体の幸福を最 大化することを最善とする伝統的な功利

は、多様な個々人の持つ価値観を 過小評価するという限界である。本研究 る新しい 概念が望まれることを明らかにした。

(3)

Nueva York, Russell Sage Foundation;

Oxford, Clarendon Press, 1992

E. 研究発表 特になし

F. 知的財産権の出願・登録状況

1) 特許取得  なし 2) 実用新案登録  なし 3) 特許取得  なし 4) その他

(4)

 

参照

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