九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
コンクリート充填角形鋼管柱の耐力および変形性能 の評価法に関する研究
中原, 浩之
Graduate School of Human-Environment Studies, Kyushu University
https://doi.org/10.11501/3150874
出版情報:Kyushu University, 1998, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
‑216‑
第
5
章 繰り返し等曲げおよび曲げせん断性状9 5 . 1
序本章では,第4章で行った一方向加力の曲げ挙動解析法を繰り返し曲げおよび曲げせん断を受ける柱 に対して適用する解析的な研究について述べる。前章まででは,提案した充填コンクリートおよび鋼管 の応力一ひずみ関係を用いた解析により,実験の荷重一変形関係を精度良く評価できることが示された が,本章では除荷および再負荷も含めた応力一ひずみ関係を用いて繰返し荷重を受ける部材の荷重一変 形関係を解析により得る方法を示す。充填コンクリートおよび鋼管の応力一ひずみ関係の除荷および再 負荷則について検討するために,まず第
3
章で示した一定軸力下の繰り返し等曲げ実験の結果に対応す る解析を行う。ついで,繰り返し等曲げ解析に用いた応力一ひずみ関係の履歴モデルを繰り返し曲げせ ん断力を受ける角形C
Ff柱の解析に適用する方法を示し,実験結果と比較することでその精度につい て検討する。解析対象とする曲げとせん断力を受ける角形
C
Ff柱の試験体は,文献5 . 1 5 )
に示されるものと日米 共同研究において実施された試験体5.16)‑5.20)で 試験体数はそれぞれ5体と12体である。これらのうち,前者は,角形CFr柱の耐震性能の改善法に関する研究で,充填コンクリート内に円形鋼管を埋設する ことにより補強する方法を検討した実験を纏めた研究であるが,本章ではこの文献で報告されている試 験体のうち,補強がなされていない試験体について解析を行っている。また,文献
5 . 1 5 )
の実験では第3
章の実験と同じく鋼管に残留応力除去焼鈍が施されており,曲げせん断実験としてはこの実験に対す る解析を始めに行う。一方,後者の実験に対する解析は,日本建築学会大会学術講演梗概集に結果が示 されている試験体のデータを用いた。曲げせん断実験の概要は5.3節に示す。曲げとせん断を受ける部材の解析に関しては,前述のように,曲げモーメント勾配の影響および加力 冶具等からもたらされる拘束の影響を考慮に入れる必要がある。本章では,文献収集により得た92体 の角形CFf柱の曲げせん断実験について,これらの最大耐力と前章で提案した終局曲げ耐力式により 得られる最大耐力との対応を調べ,加力治具等の拘束の影響や破壊領域の局所化,さらには曲げモーメ
ント勾配の影響などを調べ,前章までに示した曲げ解析を曲げせん断解析に適用する際の手法について も示している。
本章で行う,繰り返し荷重を受ける部材の解析には応力一ひずみ関係の履歴モデルを必要とするので,
これに関する既往の研究について以下に示す。
鋼材の履歴モデルは,文献
5 . 1 )
~5 . 6 )
などにおいて提案がなされているが,本論で取り扱う耐力劣 化を伴う応力一ひずみ関係の履歴モデルに関する提案としては,文献5.7)と文献5.8)が挙げられる。 文献5.8)のモデルは,角形鋼管の繰り返し軸方向加力実験の結果を基に定式化したもので,圧縮により座屈が生じ,耐力が低下した角形鋼管が引張力を受ける際,その過程において剛性が上昇する現象を
‑217‑
取り入れていることが特徴として挙げられる。しかしながらこのモデルにおいては,鋼材のパウシン ガー効果による剛性の低下を表現できない点が問題として挙げられる。
一方,文献5.7)のモデルは上記の剛性が上昇する現象は取り入れることができないが,鋼材のパウ シンガー効果による剛性の低下をRamberg‑Osgood関数を用いて表現している。本論の第3章で示した 繰り返し等曲げ実験の結果を参照すると,明らかにパウシンガー効果の影響と考えられる剛性の劣化挙 動が観測されている。よって,本論では,鋼管の応力一ひずみ関係の履歴性状を文献5.7)のモデルを 用いることとした。また,このモデルは,応力一ひずみ関係のスケルトン部の形状を圧縮側と引張側に おいて任意に設定できるため,前章までに示した鋼管の応力一ひずみ関係モデルをそのまま履歴モデル のスケルトン部分として利用できる。
以下に,文献5.7)のモデルについて説明する。
図5.1は,圧縮側のスケルトン部に座屈現象を反映した劣化型の応力一ひずみ関係を,引張側のスケ ルトン部に鋼材のひずみ硬化現象を反映した硬化型の応力一ひずみ関係を用いて,文献5.7)の履歴モ デルを例示したものである。図に示すように,文献のモデルは,応力一ひずみ関係におけるスケルトン 部分とパウシンガ一部分とを分離して,載荷点の経験する塑性変形量s弓の V倍分だけ反対側のスケル トンを移動させるとしている所に特徴がある。ここで,'Pの値を零とするとスケルトン部分以外は通常 のRamberg‑Osgoodモデル5.1)となり,¥1'の値を lとすると,加藤・秋山モデル5.2)に一致し,スケルト ン部は載荷点が経過した塑性変形量の全値を移動させることになる。文献5.7)では,実際の鋼部材の 履歴はこの両極端の中間に位置すると考えられ,このようなモデルが提案されている。また,図5.1に
は,圧縮側の部分で小振幅の繰り返しを示している。文献5.7)においては,この図に示すように載荷
点がスケルトン部を移動しない場合は,塑性量は累積しないと考えられており,載荷履歴上の目標値は 移動しないとされている。また,文献5.7)に用いられているRamberg‑Osgood関数について以下に示 す。Ramberg‑Osgood関数は,任意の
2
点を曲線で結ぶ際に有効な関数であり,ここでは荷重pと変形8
の関係として次式で表される。(p‑Pu)[ a+b Ip‑Pulr‑J
] =
δ一 九
(5.1 )ここで, Puと
d
uは曲線の始点を示しており ,aとbは係数である。Ramberg‑Osgood関数の特徴は,式 (5.1 )中の指数Yの変化によって曲線の丸みを変えることができることにある。式 (5.1)において,両 辺を 8に関して微分すると式 (5.2)が得られる。dp
一 一 一 一
1必 α+by│p‑Purl (5.2)
この式は,曲線の接線剛性いを示していることになる。式 (5.1)において,始点における初期勾配 kωと曲線の目標点PrとdTを決定すると,係数aとbは,以下の式のように示される。
(5.3)
•
•• •
• •
• •
• •
•
• •
• •
•
• •
• •
• •
•
• •
•
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•
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• •
•
• . ....
.
日
c o m p r e S S
lOn
. . . . 1
・4
・・・・・・ーー ここで, k目は,始点と目標点を結ぶ割線剛性で以下の式 (5.4)で得られる。t e n s
lOn
k
一 企 2 ι
昨一 δ~-ou (5.4)
式 (5.3)を式 (5.2)に代入すると,曲線の接線剛性ドは式 (5.5) として得られる。
ピ k
J t ) < .
urk",
+ r
(km‑k",)1詰│
(5.5)図5.1 鋼管の履歴モデル5.7)
‑218‑
‑219‑
本章では,このRamberg‑Osgood関数を用いて応力一ひずみ関係を示すので,初期勾配を鋼材のヤン グ係数sEとし,曲線の丸みを変える指数yを決定することで応力一ひずみ関係の除荷および再負荷モデ ルとする。つまり,文献5.7)のモデルを利用するには,載荷点の経験する塑性変形量んに比例して反 対側のスケルトンを移動させる係数Vと,曲線の丸みを変える指数Yの
2
つを決定すれば,一義的に応 力一ひずみ関係の履歴モデルが得られることになる。具体的な係数 V とYの決定は次節の5.2で行う。次に,コンクリートの履歴モデルについて示す。これに関しても鋼部材と同様に文献5.9)~5.11) な ど,多数の提案があるが,本論で用いるモデルは,滝口ら5川の提案モデルと Iyengarら5.11)の提案モ デルを参考にして定式化した文献5.12)のモデルを用いる。
図5.2に,文献5.12)のコンクリートの履歴モデルを示す。図に示す応力一ひずみ関係の包絡線(ス ケルトン)は前章までに示した提案モデルである。また,図5.2に示す除荷曲線については文献5.12)に 以下の式 (5.6)で示してある口
文献5.12)では,除荷時に向かう目標点となる残留塑性ひずみんlの算定式は, Iyengarら5.11)の円形 横補強されたコンクリートの算定式である式 (5.8)を準用している。また,このんlの算定式は,文献 5.13)において,より簡略化した式 (5.9)の提案もある。本章の解析においても式 (5.8)ではなくよ
り簡単な式 (5.9)を用いる。
(5.8)
ε.=0.72ε
C pl C UIJ (5.9)
また,式 (5.7)に示されている除荷時の剛性
c E u
は式 (5.10)で表される口i σ 1 E =maxl E.一 ー ム よ!....I
c U ド C
ε 削ーん
I)(5.10)
AX‑X
2Y=l‑
1+(A‑2)X
(5.6)式 (5.6)のX,Y, Aは式 (5.7)で与えられる。
文献5.12)においては,再負荷時に向かうポイント
( ε u n 'c
(In )
は滝口ら5.10)の研究を参考に式 (5.11) のように決定されている。この値は,一般的にコモンポイントと呼ばれ,以降ではこの呼び名を使用す る。X=ι
ε‑ε 山 、 ,ε u n ‑ c ε
plY=̲L
σ
一一,C
σ
unε‑ε
,A = E
C UIJ C plC U
σ
C UIJ
(5.7)
c(Jnt = 0.9cι n (JuIJ
+
. 0...,.. 1"'c‑roσ
(5.11 )n o
F3 c d
e
r a
n r
o m
pu
再負荷のモデルに関しては,式 (5.11)で算定された目標点と除荷から再負荷にひずみが変化した 点を結ぶ直線で表現されている。
以上に,鋼管およびコンクリートの履歴モデルについて示したが,本章ではこれらのモデルと第4章 に示した応力一ひずみ関係を用いて一定軸力下で繰り返し等曲げと繰り返し曲げせん断力を受ける角形 C打柱の弾塑性挙動解析を行う。
s t r e s s
, .
.
.
‑( F p i
,O L ‑ ‑ . . .
Straint e n s i o n 1 0
図5.2 コンクリートの履歴モデル5.12)
‑220‑ ‑221‑
‑222‑
9
5.2 繰り返し等曲げを受ける短柱の弾塑性挙動解析本節では,第4章で行った一方向加力の曲げ挙動解析法を繰り返し曲げ実験に対して適用する解析的 な研究について述べるD 本節では,第
3
章で示した一定軸力下の繰り返し等曲げ実験の結果を用いて,充填コンクリートおよび鋼管の応力一ひずみ関係の除荷および再負荷則について検討する。これを行う ことで,加力冶具等の拘束やせん断力の影響が含まれない断面の曲げ履歴挙動を調べることができ,よ り基礎的な応力一ひずみ関係の履歴モデルの検討が可能となる。また,第3章で示した実験は,大振幅 一回繰り返しと漸増振幅繰り返し載荷法を採用しており 振幅の違いによる履歴モデルの適用について
も検討できる。
本節では,序で示した履歴モデルを用いる。鋼管のモデルに関しては,剛性の軟化度合いを決定する Ramberg‑Osgoodモデルの係数Yと反対側のスケルトンを移動させる係数Vの値を決定する必要がある。
また,文献5.12)のコンクリートの履歴モデルに関しては,これを充填コンクリートに適用した例がな いので,本節においてはコモンポイントの取り方に関して新たな提案を行う。
以下の5
ユ
1にコンクリートおよび鋼管の履歴モデルに関する考察と設定した値について示し, 5.2.2 において,実験値と解析値の比較を行う。‑223‑
(5.11 )を式 (5.12)のように変更する。この理由としては,拘束RC柱は,第2章で示したとおり,横 解析仮定
5.2.1
補強材が軸方向力を負担していないため載荷の初期段階からコンクリートの拘束に寄与している。しか 第3章で示した一定軸力下で等曲げを受けるB貼 4‑5‑4‑04とBRA4‑5‑4‑04‑Cの試験体の実験結果を比
しながら, CFr柱においては,弾性域において鋼管のポアソン比がコンクリートのそれよりも大きいた 較したものを図5.3に再掲する。実線が漸増振幅繰り返し載荷の試験体BRA4‑5‑4‑04‑Cで,点線が大振
め,充填コンクリートが弾性範囲内にあるとき,鋼管による拘束が
R c t .
主と比してそれ程期待できない。幅一回繰り返し載荷の試験体BRA4‑5‑4・04である。実線と点線を比較すると,前者の方が大変形時の除
即ち,載荷の初期段階において,圧縮側の充填コンクリートと鋼管の聞に肌離れが生じることで,履歴 荷時の軟化度合いが大きいことが観測される。また,実線で示す漸増振幅繰り返し載荷実験は無次元化
性能を劣化させる原因となっていると考えられる。この考察をふまえて本節では,文献5.12)の式(5.11) 曲率。Dが1.0X 1Q.2radの時に,繰り返しに伴って非常に大きい耐力低下を起こしていることが分かる。
を式 (5.12)とする事で,拘束RC柱よりもCFrの充填コンクリートの履歴性能の方が繰り返しによる これらの現象を表現するため,鋼管の繰り返しモデルの係数およびコンクリートのコモンポ
本節では,
劣化が激しい現象を表す。
イントを以下のように決定する。
(5.12) cσ‑ne=0.7a、σぃキm 0_..3σ-C~J 旬、
まず,鋼管の履歴モデルについて示す。文献5.7)のモデルにおいては,載荷点の経験する塑性変形 量
5 1 3
のv
倍だけ反対側のスケjレトンを移動させるとしているが,この係数を決定する必要がある。ま た, Ramberg‑Osgoodモデルに関しては,岡JI性の軟化度合いを決定する指数Y
を決定しなくてはならな以上で,鋼管およびコンクリートの履歴モデルが決定した。 しかしながら,図5.1に示すようにこれら 2つの係数は,双方が鋼管の剛性低下率,即ちRamberg‑
し)0
次に,繰り返し等曲げ解析の解析仮定および解析手順について述べる。 Osgoodモデルで表される除荷および再負荷曲線の曲率を変化させることが可能である。そこで,
y
はー定値であるとし,0/を変化させることで,大振幅一回繰り返しと漸増振幅繰り返しの軟化度合いを調節
1)断面形保持 することとする。具体的な値としては, yは4.5とし,係数Vは,振幅一回繰り返しで0.8,漸増振幅繰
2)平面保持 これらの値を決定するには角形鋼管の繰返し軸方向加力の実験に基づく
り返しでは0.6とする。本来,
3)コンクリートの圧縮側の応力一ひずみ関係は断面のひずみ勾配の影響を考慮した第4章の提案モ この方法の実験データが入手できなかったので,等曲げ実験の結果と解析が対応
ことが必要であるが,
デルを用いる するような値を数値的に調べることで上の係数を決定した。この点に関して詳しくは今後の課題とした
コンクリートの引張応力は無視する 4)
し)0
コモンポイントは式 (5.12)を用いて算す 5)コンクリートの履歴則は文献5.12)のモデルとするが,
コンクリートの履歴モデルについて示す。これに関しては,図5.3に示きれる繰り返しによる 次に,
の式 る 耐力低下が非常に大きい現象を表現するために,前出のコモンポイントを決定する文献5.12)
6)鋼管の圧縮側の応力一ひずみ関係は断面のひずみ勾配の影響を考慮した第 4章の提案モデルを用 いる
7)鋼管の引張側の応力一ひずみ関係は鋼管が 2軸引張状態となることを考慮した第 4章の提案モデ
のモデル用いる ルを用いる
8)鋼管の履歴則は本節で決定した係数YとVを用いた文献5.7)
次に,解析手順について示す。解析法は,前章の単調等曲げを受ける柱の解析に用いたものと同一で, 通常の断面分割法であり,以下の手順により,与えられた曲率に対する断面の曲げモーメントを算定す II!....
. .
竺宣子ττト・・・
‑ ‑ v
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BRA4‑4‑5‑04
B/t=47.l N/No=O.4 100
‑‑‑̲..,・
一・・・・'一
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u C H E E 0 2
る。 4
2 3
中D(X10・2rad)
‑2
。
‑3
ー100 ‑4
1)軸力Nを設定する 2)曲率。を与える 一定軸力下における繰り返し等曲げ実験の結果
図5.3
‑225‑
ー224‑
3)断面の重心軸ひずみらを仮定する
4)らと中より断面のひずみ分布を得る
5)断面分割した各点においてひずみから応力を算定する
6)断面分割した各点の応力から断面の負担軸力および曲げモーメントを算定する
7)設定軸力と負担軸力を比較し,この差が設定した計算誤差範囲内であれば手順8)へ,範囲外であ れば手順
3 )
へ進み,らを修正する8) 2)へ進み,新たな曲率。を与える
以上の手順を実験が行われた曲率まで繰り返すことでM一ゆ関係の解析値を得ている。
次節において,本節で示した解析と実験の比較を行う。
‑226‑
5.2.2 実験と解析の比較
図5.4に,曲げモーメント一曲率関係における実験値と解析値との比較を示すD この図の実験値は第
3
章で示した大振幅一回繰り返し載荷実験より得られたものである。実線が実験値で点線が解析値を示 している。また,図5.5には軸ひずみ一曲率関係を示しており,実線は実験値,点線が解析値を示して いる。第3
章において示したように,この実験においては軸ひずみは独立に3
通りの方法で算出できる が,ここでは巻き取り式変位計で測定した回転中心聞の変形量を材長6∞
m mで除した値を示している。 実験と解析を比較すると,試験体BRA4‑2‑5では,解析のほうが実験よりも若干脆性的であるが,全体 的には曲げモーメントー曲率関係と軸ひずみ‑曲率関係の双方に関して,解析値と実験値の対応はよい。次に,漸増振幅繰り返し載荷実験と解析の比較を行つ。図5.6は,実験より得られた曲げモーメント ー曲率関係で,図5.7はこれに対応する解析である。図5ム 図5.7より,軸力比が0.2の試験体に関し て,解析は実験よりもピンチングが顕著で,実験により得られたエネルギー吸収性能を過小に評価して いる。この原因としては 前節で設定した鋼管の履歴モデルの形状を決定する係数 V かもしくは
R a m b e r g ‑ O s g o o d
モデルの係数Y
の値を小さく見積もりすぎたことが考えられるが,更なる考察は今後 の課題とする。軸力比が0.4の試験体に関しては,耐力劣化の進行と大振幅における耐力が安定する現 象に至るまで,解析値は実験値を精度良く予測できていることが分かる。また,軸力比が0.4の試験体 のうち,最も幅厚比が大きいBRA4‑2‑5‑Cに関しては,実験よりもやや早い段階ではあるが,解析にお いても軸力を保持できなくなり,計算を終了している。また,図5.8は,実験の軸ひずみ一曲率関係で,図5.5と同様に巻き取り式変位計で測定した回転中 心聞の変形量を材長600mmで除した値を示している。図5.8に対応する解析結果を示した図5.9を比較 すると,軸方向ひずみの累積に関して,解析は実験の挙動を非常に精度よく評価できており,軸力比の 違いによる軸ひずみの累積の違いを明確に説明できている。
以上のように第4章のおいて提案した応力一ひずみ関係と前節までに示した応力一ひずみ関係の履歴 モデルを用いれば,解析は加力振幅,軸力比,鋼管の幅厚比を問わず一定軸力下における繰り返し等曲 げ実験の変形挙動を精度良く評価できることが分かった。
‑227‑
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BRA4‑2‑5 (B/t=98.0) ( c )
大振幅一回繰り返し載荷実験と解析により得られた重心軸ひずみー曲率関係の比較 図 5.5
大振幅一回繰り返し載荷実験と解析により得られた曲げモーメン卜一曲率関係の比較 図5.4
‑229‑
ー228‑
。
‑50
BRA4‑6‑5‑04‑C B/l=33.7 N/No=O.4
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50
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。
(E
︐Z U
A )
︼5
50 2 50
‑50
。
(E
︐Z
U5 E2 52
3 2
‑1 0 1 ttD (X 1Q‑2rad)
‑2
‑100
‑3
( b) BRA4‑4‑5‑C (B/t=47.1)
3
‑1
。
D(X 0 1O.2rad) 1 2‑2
BRA4‑4‑5・C(B/t=47.1)
︑︑l ' '
'h
U
Jfz︑
BRA4‑2‑5‑04・C B/I=98.0 N/No=O.4 100
50
。
(E
︐Z U
82A ) 冨U戸
BRA4‑2‑5‑02‑C B/l=98.0 N/NO=O.2 100
50
。
( g a Z
U 晶 )冨 U5 02 BRA4‑2‑5‑04‑C
B/l=98.0 NlNo=O.4 100
50
。
( ε
︐zuCMCUロ52 BRA4‑2・5‑02‑C
B/I=98.0 N川0=0.2 100
50
。
(g sZ
ぷ )
︼5 E5
︒
‑50
‑50
3
‑1 0 1 2 ttD (X 10‑2rad)
‑2
‑50
‑100
・3
3
‑1 0 1 2 ttD (X 1O‑2rad)
‑2
‑50
‑100 ‑3 3
2
‑1 0 1
。
D(X lO‑2rad)‑2
‑100
・3
3
‑1 0 1 2 ttD(XIO・2rad)
‑2
円J
n u
nu
‑
( c) BRA4‑2・5・C(B/t=98.0) BRA4・2・5・C(B/t=98.0)
( c )
漸増振幅繰り返し載荷実験に対する曲げモーメン卜一曲率関係の解析結果 図5.7
漸増振幅繰り返し載荷実験の曲げモーメントー曲率関係 図5.6
‑231‑
‑230‑
E﹁
︑
J司4dY R u n uα 0 0 0 ρ
o n
v
n v d n
叩
(g
EE
﹄E)
℃ 目O
HH
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£U 潟 三
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的
1.5 3.0
‑0.10 '‑
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‑1.5 0.0中D(XlO・2rad)
nu
nu
nu
(戸
邑告 白℃g)
H0・
おロ
UU
UZ
ご時 三
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e
0.001
‑0.02卜告・0.04 ト
; : : : [ 二 二
上3
。
D(X 10・2rad)E
ooOB 5
・0.02T
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コ 告・0.04U ιb
さ
‑0.06帽
.5 ・0.08 b 伺 Uヨ
‑0.02
ー0.04
‑0.06
‑0.08
‑0.10
・3.0 ‑1.5 0.0 1.5 3.0
q
,
D (X 10・2rad) 1.5 3.0( a) BRA4‑6・5・C(B/t=33.7) ( a) BRA4・6・5・C(B/t=33.7)
円v
n u
n u
(E
EE
)一巨 芝︒ uz uu uzご 伺
5 2
∞
‑0.02
7 2 4 6 8
α o o ο ρ
&
4 4 4 4
(g
EE E芝)
ob zu uu Lこ
:E
∞
‑0.04
ー0.06
‑0.08
‑0.10 ...……
‑3.0 ・1.5
。
D(X0.100 ・2rad) 1.5 3.0(b) BRA4‑4・5‑C(B/t=47.1)
2
・0.02~...i... ~
E ‑004ト
f . . . . . . . . . . . . . . . . . . . +
; ; j ; ;
[ 卜 卜......
...
...
〓. . . . . . . . . : . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 . . . . . . . .
‑3.ρo ‑1.5 0.0 1.5 3.ο O ゆD(X 10・2rad)
(b) BRA4‑4‑5‑C (B/t=47.1)
円u
nu
n u
(E
E E E H )
言︒ 担ロ
UUU
否 定
gEあ
n u
n u
n u
(g gE E)
言︒ 包
CUUUZご
2E
∞
o U 6
n u f t u f L n仏
門
v n v
( g g E E H )
言︒ 担 cu uu
£︼ 国ロ 沼お め
‑0.02 ‑0.02
‑0.04 守 •
白.
..
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J白 ' ' :.
..
白... ‑
‑
守
‑
‑ 守
︐
守 ‑0.04
‑0.06 ‑0.06
ー0.08 ‑0.08
‑0.10
・3.0
‑0.10ーー…
‑3.0 ‑1.5 0.0 中D (X 10‑2 rad)
3.0
1.5 ‑1.5 0.0 1.5
ゆD(XIO・2rad)
3.0
( c) BRA4・2‑5‑C(B/t=98.0) ( c) BRA4‑2‑5・C(B/t=98.0)
図5.8 漸増振幅繰り返し載荷実験の重心軸ひずみー曲率関係
‑232‑
‑0.10
・3.0
二=‑‑ぷぷ
・1.5 0.0 1.5 3.0
中D(X 10・2rad)
ー0.10
‑3.0 ‑1.5
。
D(X0.IO0 ・2rad) 1.5‑0.04 ト一一一一 ! 一一一一一一一一一士胃』叫ζ
・0.08
r
… ………1一一一‑‑‑‑‑‑‑・0.10~ーー 込
・3.0 ・1.5 0.0 1.5 3.0
中D( X 10.2 rad)
図5.9 漸増振幅繰り返し載荷実験に対する重心軸ひずみー曲牽関係の解析結果
‑233‑
5.2.3 まとめ
本節では,第
3
章で示した繰り返し等曲げ実験の変形挙動を解析的に予測することを試み,曲げモーメントー曲率関係と重心軸ひずみー曲率関係の双方に関して,実験値と解析値との比較を行った。
解析に用いたモデルの特徴を纏めると以下の様に示される。
1)コンクリートの圧縮側の応力一ひずみ関係は,ひずみ勾配の影響を考慮した第4章の提案モデル を用いる。
2)コンクリートの引張応力は無視する。
3)コンクリートの履歴則は文献5.12)のモデルとするが,コモンポイントは式 (5.12)を用いて算 する。
cσm=0.7cσ聞 +0.3Cσm (5.12)
4)鋼管の圧縮側の応力一ひずみ関係は,ひずみ勾配の影響を考慮した第4章の提案モデルを用いる0 5)鋼管の引張側の応力一ひずみ関係は,引張側の鋼管が2軸引張状態となることを考慮した第4章
の提案モデルを用いる。
6)鋼管の履歴則は文献5.7)のモデル用いるが, Ramberg‑Osgoodモデルの曲線の丸みを決定する指 数yは一定値の4.5として,載荷点の経験する塑性変形量に応じて反対側のスケルトンを移動させ る係数Vを大振幅一回繰り返しで0.8,漸増振幅繰り返しでは0.6とする。
以上のモデルを用いた解析は加力振幅,軸力比,鋼管の幅厚比を問わず一定軸力下における繰り返し 等曲げ実験の変形挙動を精度良く評価できることが示された。特に,軸力比の違いによる軸ひずみの累
積の有無が,載荷方法を問わず,明確に説明できている点において,解析モデルが物理現象を反映した ものであると考えられる。
‑234‑
9
5.3 繰り返し曲げせん断を安ける柱の弾塑性挙動解析本節では,一定軸力下で繰り返し曲げせん断を受ける柱の荷重一変形関係を解析的に求める方法につ いて述べる。解析に用いる繰り返し応力一ひずみ関係は,前節で用いたそれと同じものである。
解析対象とする曲げとせん断力を受ける角形CFf柱の試験体は,文献5.15)に示されるものと日米 共同研究において実施された試験体5.16)‑5.20)で,試験体数はそれぞれ5体と12体である。これらのうち,
前者は,第
3
章で示した繰り返し等曲げ実験と同じく鋼管に残留応力除去焼鈍が施されており,この実 験に対する解析を初めに行う口一方 後者は,日本建築学会大会学術講演梗概集に示きれている試験体 のデータを用いて解析を行った。曲げとせん断を受ける部材の解析に関しては,材軸方向のモーメント勾配の影響および加力冶具等か らもたらされる拘束の影響を考慮に入れる必要があるので,文献収集により得た92体の角形CFf短柱 の曲げせん断実験の最大耐力と第4章で提案した終局曲げ耐力式より得られる最大耐力との対応を調べ,
加力冶具等の拘束の影響や破壊領域の局所化,さらには曲げモーメント勾配の影響などを定量的に評価 する方法を示す。
‑235‑