九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
砂利採取鉱山の廃棄物を用いた土壌改良材の開発と その採掘跡地緑化への利用
加藤, 正剛
http://hdl.handle.net/2324/2236218
出版情報:九州大学, 2018, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
砂利採取鉱山の
廃棄物を用いた土壌改良材の開発と その採掘跡地緑化への利用
平成 31 年 1 月提出 工学府地球資源システム工学専攻
加藤 正剛
i
目 次
第1章 緒論 1
1. 1 我が国の骨材資源の現状と問題点 1
1. 2 骨材資源 2
1.2.1 骨材の分類・定義 2
1.2.2 日本における骨材資源の分布と開発 2
1. 3 千葉県における骨材資源の開発と生産 5
1.3.1 概要 5
1.3.2 千葉県の地質 6
1. 4 細骨材資源開発および生産工程 9
1. 5 山砂・山砂利採取跡地の緑化 13
1.5.1 緑化計画の策定と実施 13
1.5.2 既往の経験と知見 15
1. 6 結言 17
参考文献 18
第2章 砂利採取鉱山の採掘跡地の緑化の現状と課題 19
2. 1 緒言 19
2. 2 山砂・山砂利採取鉱山における植栽 20
2.2.1 概要 20
2.2.2 採取跡地の整備および覆土 21
2.2.3 改良植栽基盤の深度 22
2.2.4 植栽基盤の物理化学的土壌条件 25
2. 3 採取跡地に適する植栽種 31
2.3.1 概要 31
2.3.2 ヤトロファ・クルカス 31
2.3.3 ヤシャブシ、ハンノキ、他 37
2. 4 採取跡地に適する植栽工法 39
2.4.1 概要 39
2.4.2 植栽期
2.4.3 マウントの形成 2.4.4 植栽作業の手法 2.4.5 植栽後の管理 2. 5 結言
39 39 41 42 43
参考文献 45
ii
第3章 採掘跡地の土壌改良を目的とした土壌改良材の開発 46
3. 1 緒言 46
3. 2 脱水ケーキを利用した土壌改良材の開発 47
3.2.1 脱水ケーキの性状と開発の目的 47
3.2.2 各調査、各試験の概要 48
3. 3 森林土壌、脱水ケーキおよび造粒物の成分調査 51
3.3.1 目的と材料 51
3.3.2 測定方法および結果 51
3.3.3 結果の考察 51
3. 4 脱水ケーキを用いた土壌改良材の造粒 53
3.4.1 造粒方法の調査および比較検討 53
3.4.2 予備試験での造粒機の選定と検証試験 63
3. 5 脱水ケーキの造粒試験 65
3.5.1 概要 65
3.5.2 ペレガイヤ・60Lによる第1回造粒試験と結果 65
3.5.3 アイリッヒミキサ-による第2回造粒試験と結果 67
3.5.4 ペレガイヤ・60Lによる第3回造粒試験と結果 70
3.5.5 まとめ 72
3. 6 造粒物を用いた植物の生育確認試験 73
3.6.1 試験の概要 73
3.6.2 試験方法 73
3.6.3 試験結果および考察 74
3. 7 結言 参考文献
79 81 第4章 砂利採取後の最終人工斜面の安定性に関する数値解析的検討 82
4. 1 緒言 82
4. 2 モデル鉱山概要 83
4. 3 原位置試験による力学的特性値の把握 84
4.3.1 試験概要と結果 85
4.3.2 数値解析と検討 87
4. 4 室内試験による力学的特性値の把握 89
4.4.1 概説 89
4.4.2 定圧一面せん断試験 89
4.4.3 一軸圧縮試験 91
4. 5 有限要素法による斜面の安定解析 93
4.5.1 解析手法、解析条件等 93
4.5.2 解析結果と評価 94
iii
4. 6 結言 101
参考文献 103
第5章 植栽のフィールド試験 104
5. 1 緒言 104
5.1.1 目的 104
5.1.2 既往の知見 104
5. 2 実験圃場の造成と植栽 105
5.2.1 土壌改良材の作製 105
5.2.2 実験圃場の造成 105
5.2.3 植栽 107
5. 3 土壌改良材効果の検証 108
5.3.1 検証のための各種測定 108
5.3.2 検証結果および考察 108
5. 4 結言 114
参考文献 115
第6章 結論 116
謝辞 121
1
第1章 緒 論
1.1 我が国の骨材資源の現状と問題点
我が国の天然骨材資源は、国土の保全や社会基盤整備のため、構造物の骨格を成す コンクリートの材料として開発が行われてきた。特に千葉県は、日本でも有数の山砂・
山砂利資源を有しており、コンクリート需要の旺盛な首都圏への主要な供給源として、
従来から山砂・山砂利の採取が盛んに行われてきている。天然骨材資源は、我が国経 済の健全な発展のために欠くことのできない貴重な資源であり、現在「脱コンクリー ト」等と言われつつもその重要性は依然として変わらない。
一方で我が国は人口減少時代の到来により、社会基盤整備の進展がほぼ収束すると ともに、少子高齢化により、今後の活力低下と生産年齢人口の減少による労働力不足 が懸念される、いわゆる人口オーナス期へ移行し、経済の停滞、活力の低下による国 内市場の縮小が深刻化しつつある 1)。このような低位収束となる骨材需要の背景にあ っても、高強度コンクリート・超高強度コンクリート等への高品質・高信頼性天然骨 材の安定供給は、今後も重要視されている。
しかしながら、川砂・川砂利や丘陵地帯での砂、および海砂・海砂利を含めた天然 骨材資源の枯渇化、自然環境への関心の増加、採取規制の強化等の要因により、我が 国における天然骨材の採取量は減少を続けている 2)。全国一の骨材生産量を誇る千葉 県においても 3)、山砂・山砂利の開発は、自然環境に与える影響が大きいとの反対意 見もあり、長期的かつ安定的な供給は厳しくなりつつある。
併せて低炭素社会の到来により、骨材生産鉱山においても地球温暖化防止に向けた 操業形態の変革が必要である。特に、CO2の吸収源である森林を伐採、採掘する山砂・
山砂利採取鉱山には、操業の高効率化や採取跡地の早期緑化等、更なる環境負荷を低 減した高効率化事業が求められている。千葉県の山砂・山砂利採取鉱山では、120 箇 所で全国の山砂・砂利採取量の62.5%、約15,674千m3の生産量4)であることから、環 境負荷低減型高効率砂利採取鉱山モデルの構築を千葉県の山砂・山砂利鉱山に適用す ることは社会的に意義を持つと考える。
2 1.2 骨材資源
1.2.1 骨材の分類・定義
骨材とは、モルタルまたはコンクリートを作製する上で、セメント、水と練り混ぜ る砂、砕砂、砂利、砕石、スラグ骨材、その他類似の材料等の総称であり、コンクリ
ート中の65~80%の容積を占める、いわばコンクリートの骨組みの役割を果たしてい
る。粒度によって5mm篩に質量で85%以上留まる粗骨材と10mm篩を全部通り5mm 篩を質量で 85%以上通る細骨材に分類される。また、骨材には、図 1.1 に示すように 天然骨材、人工骨材および再生骨材があり、天然骨材では採取場所により、川砂・川 砂利、陸砂・陸砂利、山砂・山砂利、海砂・海砂利に分けられる。
その他、その比重により、天然骨材や砕石等で比重が 2.50~2.80の普通骨材と軽量 コンクリートを作製する目的で使用される比重が2.50以下の軽量骨材、主として放射 線遮蔽用として重いコンクリートを作製する目的で使用される比重が 2.80 以上の重 量骨材に分類される。
骨材
天然骨材
人工骨材
再生骨材
川砂・川砂利 陸砂・陸砂利
山砂・山砂利 海砂・海砂利
砕砂・砕石 高炉スラグ
人口軽量骨材
図1.1 骨材の採取場所、製造方法による分類
1.2.2 日本における骨材資源の分布と開発 1)骨材資源の分布
日本列島の東部には、陸砂・陸砂利や山砂・山砂利を多く含む、第四紀の堆積岩類 がやや広く発達し、陸砂・陸砂利、山砂・山砂利の開発が続けられている。しかし経 済的な開発区域の減少傾向に伴い、骨材生産量は先細りの傾向が見られる 4)。一方、
大阪以西の西日本では、第四紀の堆積岩類の発達は不良で、陸砂・陸砂利、山砂・山 砂利の分布は殆ど見られない。海砂・海砂利は日本近海の各地や瀬戸内海に分布して いる。しかし、開発条件に恵まれた瀬戸内海や九州近海では採掘が進み、今後の新規
3
開発は望めない 5)。また、近年の環境問題対策として、海砂・砂利の採取を禁止する 県が多くなり、代替の骨材資源の確保が急務となっている。
一方、砕石資源に関しては、日本列島には中・古生代に形成された砂岩・頁岩・石 灰岩、中生代末期に形成された流紋岩類、新第三紀~第四紀に形成された安山岩・玄 武岩など、硬質で砕石資源に適した岩石が広く分布している。
2)骨材資源開発の過去と現状
戦後の高度経済成長に伴って急増する骨材需要を満足するために、陸砂・陸砂利、 山砂・山砂利、海砂・海砂利、および砕石などの資源開発が進められた。それまでは、 川砂・川砂利が骨材供給のほとんどを占めていたが、生産量の増加に伴い、橋脚の洗 掘等の問題が生じ、川砂・川砂利の採掘は規制されるようになった6)。図 1.2に骨材供 給量の推移および出自を示す。この図に見るように、1990年に骨材供給量は 9億4,900 万トンとピークに達したが、バブル経済崩壊とともに骨材需要は減少して 2016 年実
績で約 3 億 6,800万トンが消費 7)され、ほぼ横這いの状態が続いている。その内、約
1/3が天然骨材で占められているが、近年では過去の骨材大量消費の結果として、良質 砂の不足が懸念されている4)。
図1.2 日本における近年の骨材供給量の推移
また、環境対策の推進の一環として、海砂・砂利の採取の禁止があり、代わって再 生骨材の利用も進められているが需要を満たすには充分ではない。さらに、これまで 増加する骨材需要に主に対応してきた砕石は、硬岩質の破砕に高いエネルギー消費を 伴うことや、破砕によって発生する微粉処理の問題を抱え、開発条件に恵まれた地区 の採掘の進行、国土保全意識の向上などの問題も加わり、長期的かつ経済的な開発が 可能な砕石資源は少なくなってきている。一方、輸入骨材は、近隣諸国の中国、韓国、
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
1973 1977 1981 1985 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015
百万トン
年度
その他 海砂・海砂利 陸砂・陸砂利 山砂・山砂利 川砂・川砂利 砕石
4
台湾を中心として、関西国際空港第二期工事での地盤改良材や骨材用として使用され た実績があるが、運搬コストや中国の天然砂輸出禁止措置等、今後の増加は見込めな い状況にある8)。
このように、良質の骨材資源が乏しくなるとともに需要が減少傾向にある日本の骨 材資源開発の現状にあって、今後、高強度コンクリートや高層ビルの更なる耐震性の 向上と軽量化からCO2削減に寄与すると期待されている超高強度コンクリートの開発 により、高品質な骨材が求められることが予想されており 9)、技術開発促進による再 生骨材の供給量増加や、各天然骨材の環境に調和した効率的資源開発と高度な品質管 理による高品質骨材の安定供給が最重要課題となるであろう。
5 1.3 千葉県における骨材資源の開発と生産 1.3.1 概要
図1.3に日本における2016年度の地区別天然骨材生産量を示す。関東地区の骨材生 産量が最も多く、日本の骨材生産量の約34%を占めている。その生産の拠点となって いるのが千葉県である。図 1.4 に関東内都県別天然骨材の採取状況を示すが、千葉県 の生産量が突出して大きい。
図1.3 地区別天然骨材生産量(単位:千m3)
千葉県はコンクリート需要の旺盛な首都圏を中心に、関東地区一円に主要な供給源 として従来から山砂・山砂利の開発が盛んに行われてきた。表 1.1 に示すように、千 葉県で天然骨材資源として賦存するのは概ね山砂・山砂利であり、日本の砂・砂利採 取量75,422千m3のうち8,475千m3を85の稼働鉱山で生産しており3)、山砂・山砂利 生産量は全国一である。
千葉県の川砂・川砂利は利根川流域で賦存・採取されているが、その量は僅かであ る。また、砕石資源も房総半島南部や銚子付近で古第三紀層の玄武岩や蛇紋岩がごく 少量分布するのみであり、生産量は少ない。
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000
北海道 東 北 関 東 中 部 北 陸 近 畿 中 国 四 国 九 州
6
図1.4 首都圏内都県別天然骨材の採取状況(単位:千m3)
表1.1 日本および千葉県の天然骨材生産状況
1.3.2 千葉県の地質
千葉県の地質は、図 1.5 に示すように県南の房総丘陵、県央から県北の下総台地、
県東太平洋岸の九十九里平野に大別される10)。房総丘陵の北西部には新第三紀~第四 紀の堆積層があり、新第三紀堆積岩は砂岩、泥岩、礫岩を含み、骨材資源となる砂岩 と礫岩は山砂・山砂利として掘削されている。その中にコンクリート用細骨材として 比較的粒度が粗い良質な砂層である市宿砂層と万田野砂層がある。
図 1.6に本研究の対象とした地区周辺の地質図を示す11)。この地区の地質は、新第 三紀中期鮮新世~第四期前期更新世の上総層群万田野層(MD)と市宿層(Ij)で、万田野
0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000 8,000,000 9,000,000
茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 その他
海砂・海砂利 陸砂・陸砂利 山砂・山砂利 川砂・川砂利
採取地別
全国 千葉県
採取場数 従業員 採取量m3 採取場数 従業員 採取量m3 川砂・川砂利 644 2,467 6,673,864 4 16 37,674 山砂・山砂利 381 964 15,948,095 73 363 7,686,823 陸砂・陸砂利 1,201 1,765 21,956,156 1 5 39,866 海砂・海砂利 134 513 9,471,085 0 0 0
その他 372 1,817 21,392,826 4 15 710,200
合計 2,732 7,526 75,442,026 82 399 8,474,563
7
砂礫層、市宿砂層とも呼ばれ笠森層の下部を構成する。層相としては、古期岩円礫を 煩雑に含む粗粒砂岩が主体で、浅海性の堆積を示す単位層の厚さ 3m 以下の大型斜交 葉理が発達している。この斜交葉理が示す古流向は、ほぼ北東の向きを示す。また、
この地層には一部に泥質層が含まれる。この泥質層は固結した砂質シルト~シルト質 細砂からなり、不透水層となっている。万田野層および市宿層は、比較的軟弱で掘削 しやすいことより、この区域では、従来から山砂・山砂利の採取が盛んに行われてい る。万田野層および市宿層での走向はN56°Eで北に5°傾斜しており、上部より概ね泥 質砂層(層厚20m)、中粒砂層(層厚 40m)、砂礫層(層厚 10m)、細粒砂層(層厚20m)とな っている12)。
山砂・山砂利の採取区域には硬岩層が賦存しないため、採掘には発破を必要とせず、
殆どの鉱山がパワーショベルとブルドーザーで山頂から作業場に落とす、所謂山頂型 ベンチカット方式を採用している。図 1.7 に山砂・山砂利採掘を行っている切羽状況 の一例を示す。
図1.5 千葉県の地質と山砂・山砂利採掘区域
東京湾
太平洋 利根川
館山
鴨川 君津
銚子
東金
茂原
凡例 堆積岩類
沖積世 洪積世 新第三紀 その他の岩石
古第三紀 玄武岩、蛇紋岩 主な山砂利・砂
採掘地区 0 10 20Km
九 十 九 里 平 野
下総台地
房総丘陵
8
図1.6 研究対象地区周辺の地質図(万田野層、市宿層)
図1.7 山砂・山砂利採取切羽の状況例
9 1.4 骨材資源の開発および生産工程
山砂・山砂利採取事業開発は概ね表 1.2の工程を経る。主な適用法令は昭和 43年か ら施行されている砂利採取法であり、山、陸および海の砂と砂利は経済産業省管轄で、
川の砂と砂利は国土交通省の管轄となっている。以下、本研究の対象とした千葉県君 津市、市原市にて骨材の採取事業を行っている㈱デイ・シイの生産工程、品質管理等 を例として概説する13)。
表1.2 山砂・砂利採取事業開始までの工程(千葉県)
No 内 容 関係先
1 地質調査、鉱区設計 地権者 2 設定鉱区土地買収、砂・砂利買収 地権者 3 市財産(赤道)所有権移転申請 市(管財) 4 埋蔵文化財所在の照会 市(教育委員会) 5 農地一時転用認可申請 市(農業委員会) 6 開発区域の林地開発認可申請 県(森林課) 7 砂利採取認可申請 県(保安課)
㈱デイ・シイは、昭和 40 年より鉱区を第四紀更新世に堆積した万田野層内に設定 し、コンクリート用骨材向けに砂礫層を掘削している。万田野層は砂礫層が豊富なこ とや傾斜が緩やかなことが特徴で、品質の良い原料が比較的容易に掘削できる。稼行 対象層は、上部より現場呼称で表土、山砂層、含軽石砂層、原砂層、岩盤層、原石層 および下部原砂層(細原砂層)である。これら各層の特徴を表1.3に示す。また、同社Y 鉱山の各層の状況を図1.8に、採掘状況を図1.9に示す。
表1.3 稼行対象各層の特徴
層 骨材良否 特 徴
表土層 × 採掘跡の埋戻し材として使用
山砂層 △ 泥分が多いため、製品にはあまり使用できない
含軽石砂層 ○ 中粒砂であるがパミスを含み、密度、吸水率が劣る原料 原砂層 ○ 密度、吸水率は良いが細粒原料砂
岩盤層 × 板状の固い泥岩層で埋戻し材使用
原石層 ○ 礫を含む粗粒原料砂
細原砂層 ○ 密度、吸水率は良いが上層の原砂層よりさらに細粒
10
山砂層 含軽石砂層
原砂層 岩盤層
原石層
図1.8 各層(山砂層、含軽石砂層、原砂層、岩盤層、原石層)の状況
開発は、掘削区域の樹木を伐採・抜根後、パワーショベルとブルドーザーで剥土を 行い、対象層別原料に選別して掘削を行う。掘削原料は場内専用ダンプトラックに積 込み、所定堆積場に原料種別毎に堆積する。各原料管理は製品の品質に大きな影響を 及ぼすため、異物混入防止等の管理が重要である。洗浄・選別工程では、堆積場から 運ばれた原料をホイルローダーで各原料ホッパーに投入する。また、粒度調整混合用
11
として砂利破砕機と破砕砂利用ホッパーも設置している。図1.10にプラントの全景を、
図1.11に洗浄・選別プラントのフローを示す。
図1.9 稼行中の採掘切羽の各層
図1.10 コンクリート細骨材製造プラント全景 表土層
山砂層 軽石層 原砂層 岩盤層 原石層
原砂層(細)
12
図1.11 コンクリート用細骨材洗浄・選別プラントフロー
このプラントでは、生産する製品の品位毎に原料供給量を可変周波数速度制御ベル トフィーダーで調整・混合し、コンベアにて原石用振動篩(上網目幅 40mm、下網目幅
9mm)、および原砂用振動篩(上網目幅 25mm、下網目幅4×5mm)に運搬加水し選別を行
う。篩下分は分級機にて微粒分・泥分を除去し細目砂として製品を回収している。ま た、9mm超の砂利等は破砕機で破砕され、砕砂としてホッパーへ再投入される。原料 洗浄時に発生する汚濁水は、高分子凝集剤を添加してシックナーで凝集沈降濃縮処理 後、フィルタープレスで脱水処理を行う。脱水処理された泥分ケーキは場内の埋め戻 し材として利用し、また、清水は洗浄水として再利用する完全循環方式を取っている。
廃石
原料砂用 ホッパー
ス ク リ ー ン
ス ク リ ー ン
廃石
分級機
分級機 分級機
細目砂
SS1 シックナ
洗浄水 脱水ケーキ フィルタープレス
砕砂用 ホッパー
クラッシャ
ス ク リ ー ン 洗 浄
細骨材ヤード 粗目・中目他
13 1.5 山砂・山砂利採取跡地の緑化 1.5.1 緑化計画の策定と実施
山砂・山砂利採取鉱山では、森林法で緑化が義務付けられている民有林を開発する 場合がほとんどであり、また、山砂・山砂利採取事業に対する地域社会の理解を得る ためにも、採取跡地の緑化は必須の課題であり、これへの対応が無ければ現代では持 続的な操業は不可能である。
山砂・山砂利採取鉱山における緑化計画の策定と実施は、通常図 1.12に示すような 過程で実施される。この図の(1)、(2)項目を山砂・山砂利採取着手前に行い、山砂・砂 利採取と並行して(3)~(6)項目を進める。以下、この図の(1)~(6)項目について概説す る。
(1)緑化のための事前の調査 (2)緑化計画の策定
・緑化目標の設定
・緑化植物の選定
・植栽及び播種
・緑化植物の管理
(3)植栽基盤の造成(緑化基礎工)
(4)植栽基盤造成後の調査
(5)植栽及び播種(植栽工)
(6)緑化植物の管理(植生管理工)
図1.12 緑化計画の策定と実施フロー
1)緑化のための事前の調査
緑化計画を策定するため、山砂・山砂利採取予定地周辺の土地利用の状況や植生、
施工により生じる法面の勾配や土質、土地所有者の要望などについて既存の資料によ る調査および現地調査を実施する。この調査は、自然的調査項目と社会的調査項目に ついて行う。
2)緑化計画の策定
事前の調査の結果に基づき緑化計画を策定する。緑化計画は以下の①~⑦の項目構 成を基本とする。
①緑化目標の設定;緑化目標および目標タイプを設定する。
14
②緑化植物の選定;緑化目標を確実に達成でき、山砂・砂利採取予定地周辺の気象 条件や土地条件に適合している緑化植物を選定する。この場合、地権者や周辺住 民の植栽希望種をも考慮する。なお、緑化植物の不適合は、生育不良の大きな要 因となるため、緑化のための事前の調査結果と施工後の状況が異なる場合には、
使用する緑化植物の見直しを行う必要がある。
③緑化基盤の造成;選定した緑化植物に適した植栽基盤の造成方法を以下のⅰ)~
ⅵ)の項目を参考に計画する。
ⅰ)植栽基盤の厚さ;緑化植物の樹高に応じて有効土層を植栽基盤として確保する。
また、有効土層の底部に透水性が不良な層がある場合には、有効土層の下に排 水層を整備する必要がある。
ⅱ)有効土層として使用する客土の確保;客土は林地の表土など腐食に富んだもの が望ましいため、山砂・山砂利の採取を行う際には可能な限り表土をストック しておき、客土として使用する。また、客土の物理性を改善する場合は、バー ク堆肥や木炭等の土壌改良材を混入する。強酸性地や塩類堆積地などにおいて は、中和剤を混入する。なお、中和剤の効果は永続しないため追加混入する。
ⅲ)客土の施工;平坦地に客土を行う場合は、重機類による転圧は避けられないた め対策を行う。すなわち、覆土等が粘質土である場合は砂土等とよく混合・耕 耘し、粘質土だけの層を作らない。表層がすでに固結状態にある場合はミニバ ックホウで2~3回深く耕耘し砕土する。その後、トラクターによるロータリー 耕耘を行い、土塊をより細かくし、併せてバーク堆肥や木炭等の土壌改良材を 混入する。
ⅳ)排水不良の対策;植栽地が集水地形とならないように土砂等の採取工法を計画 することが必要であるが、植栽予定地の有効土層の下層部に雨水等が滞水し、
緑化植物に影響をおよぼす恐れがある場合には対策が必要である。すなわち、
残土の埋立等の盛土施工地では暗渠排水施設を設置し、有効土層の下に固結層 がある場合には集水溝や浸透溝を設置する。
ⅴ)小段植栽のための植栽基盤の整備;勾配が45°未満の法面の小段には、原則と して木本類の植栽を行う。また、斜面が岩盤で基材吹付工等により法面の緑化 を行わない場合には、小段につる類を植栽し法面を被覆する。
ⅵ)小段植栽の場合の留意点;小段部の土壌硬度が25mm以下で土中への根系の進 入が可能な場合には、 小段部に植穴を掘り客 土して植栽を行う。土 壌硬度が 26mm 以上で地山の土質が固い場合には、柵工などの緑化基礎工を併用するな どし、植栽のための生育基盤を整備する。また、植栽により小段部を崩壊させ ないためには小段に萱(ススキ)株工を施工し、地表流下水を分散させるなどの 工法(筋工)や、地表流下水を基層に浸透させないための水路工の設置などが考 えられる。この水路工設置の際には、浮き水路や目地からの水漏れがないよう 適切な施工と、水路内の土砂上げなど定期的な維持管理が必要であり、これら が可能な場合に水路工を設置する。
15
④植栽基盤造成後の調査;植栽基盤の造成完了後、策定した緑化計画どおりに植栽 緑化することができ、かつ当初の緑化目標を確実に達成できる状況であるか否か を確認するため、継続的な調査を実施する。調査の結果、生育阻害要因等問題点 が明らかになった場合には、植栽基盤の再造成や策定した緑化計画の変更を行う。
⑤苗木植栽および播種の選択;森林の有する公益的機能を早期に回復させるため、
緑化植物および生育基盤に応じたⅰ)苗木植栽工14)、あるいはⅱ)播種工15)につい て検討して選択する。
ⅰ)苗木植栽工;養生苗木やポット苗木等を植栽する工種で、土壌硬度25mm以下 の軟らかい土壌に適用され、養分条件、水分条件が不良な場合には、植栽工の 実施に併せて、施肥、客土、土壌改良材などを用いる。また、植穴を掘り苗木 を植栽する場合には、苗木の規格に合わせた植穴(50cm 以下の苗木では、大凡
直径 30cm、深さ 30cm 以上)を掘り、植穴内で苗木の根を十分に広げる。さら
に、植栽地の傾斜が35°以上の箇所では、将来倒れて崩落を誘発する危険性が あるので、高木性樹木の植栽は避ける。傾斜が 30°未満の傾斜地(主に盛土斜 面)の箇所では、植栽木が成長するまでの間、地表流下水により斜面が侵食され る恐れがあるので、斜面の被覆のため植栽に併せて種子散布工や植生シート工 などにより草本類の導入を併用する。
ⅱ)播種工;通常、斜面傾斜が30°以上の場合に採用される。45°未満の切土法面 においては、風化等による斜面の崩落を防止するため、植生シート工または客 土吹付工などにより斜面を被覆し早期緑化を図る。また、45°を超える切土法 面においては、植栽マット工または基材吹付工により緑化を図るものとする。
なお、播種工による斜面の被覆を行わない場合は、小段へのつる類の植栽によ り緑化を図るものとする。
⑥植栽及び播種の時期
植栽および播種の時期は、植栽基盤造成が完了する時期を考慮し、選定した種類 で推奨されている時期に計画するものとするが、一般には3~4月が最も適して いる。
⑦緑化植物の管理(植生管理工)
植栽および播種後の管理は、植物の生育状況に合わせて、緑化目標が達成される よう植生管理工を計画する。植生管理工には、初期段階で行う追肥、補植、追播 (種)、除草・下刈り等、緑化目標が達成される過程で行う補植、下刈り、つる切り、
除伐等、緑化が達成された後に行う下刈り、つる切り、除伐、芽かき等、がある。
1.5.2 既往の経験と知見
㈱デイ・シイでは、本研究対象鉱山を含めた数カ所の操業において、採掘跡地の早 期緑地化や山林への復元を図った対策に関して、堺ら16)は種々の課題を抽出して検討 を加えている。その結果の要点をまとめると、以下のようである。特に⑤は、終掘後 の跡地管理において留意すべき重要事項と考えられる。
16
①採掘跡地は貧栄養地で、一般的な森林土壌や造園等の植栽土壌基盤目標値を大きく 下回っており、このままでは植栽土壌としては不適である。このような採掘跡地で 森林への早期復元を図るためには、植栽する土壌の改良を行う必要がある。すなわ ち、透水性や土壌硬度の改善、更には土壌の肥沃性向上のための施肥が必要である。
②植栽種は、地権者や近隣住民の要望ではヒノキやスギであるが、採掘跡地における ヒノキやスギは成長が非常に遅い。例えば、ヒノキの地際直径の成長は、約 1.5 年 で 1cm 程度、植栽地に有機質コンポスト系改良材を施した土壌でも約 1.5 年で4~
5cm程度である。
③現在主に植林されている 50 年~70 年物のスギやヒノキの根系発達状況調査による と、根系の発達範囲は、概ね直径1,000mmm、深度1,500mm、体積1.18m3程度であ ることから、植栽土壌の改良・整備範囲はこの程度が目標となる。
④植栽種を自由に選べるとすれば、採掘跡地のような貧栄養地でもハンノキやヤシャ ブシはスギやヒノキに比べて生育に優れる。
⑤緑化事業は見栄えだけの緑を増やすことでは無い。苗木を単に植える安易な緑化工 事を行うと、長期間人間の管理が必要な自立できない緑になる可能性が高いため、
自然の自己回復力を引き出す工法を導き出すことが肝要である。
17 1.6 結 言
本研究は、骨材資源開発の現状と今後の見通し、および近未来に向けた課題の整理 を行い、採掘跡地の森林への早期復元を念頭に置いて、環境負荷低減型高効率砂利採 取鉱山モデル構築に資する山砂・砂利採取跡地緑化の検討を行い、その対応策を提示 したものである。
本論文は、緒言、結言の他に 4章により構成されており、以下に各章の内容につい て概要を示す。
第2章では、千葉県の砂利採取鉱山を対象に、山砂・山砂利採取跡地緑化の現況に ついての調査を行った。すなわち、植栽基盤として整備すべき深度、面積を明らかに するため、開発前に自生していたヒノキ、スギの根系発達状況の調査を行い、同時に 採取跡地の土壌条件を把握するため、土性、透水性、土壌硬度等の土壌物理性、pH、
EC等の土壌化学性について調査、分析を行った。また、千葉県の気象条件を調査し、
採取跡地に適合すると推定される植栽種と植栽工法について検討した。
上述の調査、検討から、千葉県の砂利採取跡地において早期緑化可能な植栽基盤を 整備するためには、採取跡地に土壌改良を施す必要があるが、現在植栽基盤の整備に 用いられている表土は、運搬と一時保管する際の経済的負担が大きく、また予期せぬ 豪雨や大規模の地震が発生した場合、鉱区外への流出事故の懸念がある。一方で、砂 洗浄プラントにおいて微粒汚泥分を処理するために用いられているフィルタープレス から発生する脱水ケーキは採取跡地に埋め戻さざるを得ず、埋め戻しの深度によって は緑化に最重要な透水性を著しく阻害する要因の一つとなっている。このような背景 から、第3章では、負の産物である脱水ケーキを利用した土壌改良材の開発を試み、
その有効性について検討を行った。
また、砂利採取跡地を森林へ早期復元させるには、前章までに検討した早期緑化可 能な植栽基盤の整備に加えて、砂利採取後の最終人工斜面が安定し、斜面崩壊や斜面 浸食等により植栽基盤を破壊、埋没しないことが必要である。そこで、第4章では、
実操業中の現場をモデルとして、二次元弾塑性応力プログラムPhase2を用いて人工斜 面の安定性についての解析的検討を行った。
さらに、開発した土壌改良材を植栽基盤の整備に実際に用いるためには、土壌改良 材と跡地土壌の混合比率、添加剤の種類、植栽基盤形状が植物の成育に与える影響を 確認する必要がある。そこで、第5章では、植栽実験圃場を設定して数種の植物を植 栽し、その生長を観察して有効な植栽基盤の整備方法について検証した。
第6章では、第2章から第 5章までに得られた結果を総括し、結論とした。
18 参 考 文 献
1) 大塚尚寛:今後の骨材業界の動向, 骨材資源,Vol.166, 2010 2) 鳥谷部茂:骨材受給と環境問題, 広島法学31巻2号, 2007
3) 経済産業省製造産業局, 国土交通省河川局:平成28年度砂利採取業務状況報告書 集計表,2018
4) 須藤定久:日本の骨材資源, 砂利時報, 2002
5) 独立行政法人産業技術総合研究所地圏資源環境部門:骨材資源調査報告書, 2004 6) 須藤定久:統計資料から見た日本の砂利資源, 2002
7) 経済産業省製造産業局:骨材需給表, 2011
8) 鍵本広之:堆砂有効利用に関連した土砂骨材の需給状況とその因果関係,環境水理 部会研究集会, 2010
9) 桝田佳寛:骨材品質が高強度コンクリートの性能に及ぼす影響, 建築雑誌,Vol.104, No.1284, 1989
10) 千葉県文書館行政資料室資料, 1993
11) 地質調査所:日本地質図体系,関東地方, 1991
12) 楡井久:関東前面弧盆地, アーバンクボタ, No.27, 1988
13) (株)デイ・シイ:資源事業本部生産部事業紹介, 2011
14) 北山敬三ほか:資源循環型緑化工法と苗木植栽工を組み合わせた法面樹林化実験 の追跡調査,日緑工誌,第34号,第1巻, 2008
15) 吉田寛:播種工による法面緑化とモニタリング手法,日緑工誌,第30号,第3巻, 2005 16) Y. Sakai et al.: Journal of MMIJ, Vol.128, pp.225-231, Present Situation of Aggregate
Resources in Japan and Engineering and Environmental Issues at an Aggregate Quarry, 2012
19
第2章 砂利採取鉱山の採掘跡地の緑化の現状と課題
2.1 緒 言
本章では、千葉県の砂利採取鉱山を対象に、その終掘後の採取跡地の緑化の現況に ついて調査して整理を行うとともに、早期緑化を目的とした課題の把握を行った。す なわち、植栽基盤として整備すべき深度や面積を明らかにするため、開発前に自生し ていたヒノキ、スギの根系発達状況の調査を行い、次に採取跡地の土壌条件を明らか にするため、土性、透水性、土壌硬度等の土壌物理性、pH、EC等の土壌の物理化学性 について調査、試験を行った。また、千葉県の気象条件を調査し、採取跡地に適合す る植栽種と植栽工法について検討するとともに簡単な植栽試験を行った。
20 2.2 山砂・山砂利採取鉱山における植栽 2.2.1 概要
砂・砂利の掘削、生産が完了した跡地は、砂利採取法 1)、森林法2)に基づき、認可時 の開発計画に従って埋戻し、整地、排水対策や法面、小段等の整備を行った後、斜面 は植生マットの張り付け、平地はスギ、ヒノキ、雑木などの苗木を適期に植栽してい る。第四紀更新世堆積岩層の採取跡地は、貧栄養地で風化や浸食がし易く、植栽物生 成には厳しい環境下にあり、山林への復元、および開発前の生態系回復には相当な年 月を要することが予想される3)。例えば図2.1、図2.2に見るように、採掘跡の植栽緑 化地におけるヒノキの生長は非常に遅く、植栽緑化地に有機質コンポスト系改良材を 施した土壌でも約 1.5年で 45mm程度であり、また両者には大きな差異が認められる
4)。
図2.1 ヒノキの植栽土壌による伸長量比較
図2.2 ヒノキの植栽土壌による伸長比較 50
40 30 20 10
0 100 200 300 400 500 採取跡地
改良土壌
(日)
成長(mm)
改良土壌
山砂
21
このヒノキの例に見るように、植栽土壌が植物の生長を左右することは明らかで、
植物の早期育成には土壌基盤の改良が必要である。しかし、全面的な緑化対象地の土 壌改良は工法上、また経済上も現実的に困難であることから、簡易な早期緑化法で採 取跡地に最適化させるべく、植栽基盤の整備、植栽土壌の改良、植栽樹種の選定等の 観点から課題の抽出と解決策の検討を行う必要がある。
2.2.2 採取跡地の整備および覆土
採取跡地は計画標高まで埋め戻される。基本的には開発時の表土のすべてを覆土、
または他開発区域から客土することにより、植栽の生育基盤整備が始まる3)。しかし、
剥土した表土を採取跡または一時保管用堆積場への運搬、その覆土使用までの管理に は広大な敷地を必要とし、多大な経済的負担となる。また、予期せぬ豪雨や大規模の 地震が発生した場合等、表土の堆積場崩壊や鉱区外への流出事故等の懸念から、剥土 表土の全量を覆土、客土することは事実上困難な状況下にある。その他、整地を行う 際、20t クラスのブルドーザー(接地圧 62kPa)や 40t クラスのパワーショベル(接地圧
80kPa) を使用するため、微小粒径の砂・砂利が転圧されることも植栽基盤に影響を及
ぼしていることが推察される。
したがって、現実的な意味で緑化可能な植栽基盤にするためには、埋め戻し整備時、
または現状の埋め戻された採取跡地を、必要最小限の範囲で図 2.3 に示す条件 5)を満 足する植栽物生育に最適な植栽基盤に改良して、有機物が蓄積され易く、植物、土壌 微生物、動物等の自然生態系が自己回復するベースを確立することが肝要であると考 える。
図2.3 植栽基盤に具備する条件5)
22 2.2.3 改良植栽基盤の深度
植栽された植物が正常に生長できる標準的植栽基盤の有効土層厚を参考に 5)、林地 開発前に植生していたヒノキ、スギを植栽する場合に必要な改良植栽基盤の深度と面 積を把握すべく、採掘予定地において伐採後のヒノキ(樹齢71年、No.1~No.5)とスギ (樹齢51年、No.1~No.5)を抜根し、根系発達状況調査を行った。
調査の状況を図 2.4~図2.6 に示す。また根系発達状況を観察・数値化するために、
3 次元測量で使用されている地上形レーザースキャナ 6)を用いてスキャニング後、ト リミングし、1mm3 空間に 1 点を残してフィルター処理をするという方法で表した根 系発達状況図の2例を図2.7、図2.8に示す。これらの調査結果を表2.1に示す。
この表に見るように、スギ、ヒノキ何れも根系発達状況に大きな差異は無いと言え る。スギ根系深度は約2,200mm、水平軸方向の広がりは少なく1,200mmである。一方、
ヒノキ根系深度は約1,800mmで細微な根系が横方向に発達しており、主根の広がりは
約1,900mmである。推定樹齢よりこれらの数値は、この根系の植生体積の最大値と判
断される。このことから、樹高約500~700mmの3年生苗木を植栽するとすると、生 長に伴う土壌微生物等による育成土壌の生成を考慮して、概ね直径 1,000mm、深度
1,500mm、体積1.18m3で充分であると判断される。
図2.4 ヒノキの伐採切株(左No.2、右No.5)
図2.5 スギの伐採切株(左No.1、右No.3)
23
図2.6 抜根したスギNo.3(奥)とヒノキ No.4(手前)
図2.7 スギ(No.3)の根系発達状況
-1000 -500 0 500 1000
2200
φ1200 0
-500
-1000
-1500
-2000
-2500
直径 (mm)
深度(mm)
24
図2.8 ヒノキ(No.4)の根系発達状況
表2.1 砂・砂利採掘予定地内のヒノキとスギの根系発達状況 採掘予定地 伐採No 樹高
(m)
根系深度 (mm)
水平方向広がり (mm)
スギ 市原市 I鉱山
1 18.5 2,030 1,130
2 19.0 2,220 1,190
3 19.5 2,220 1,220
4 19.5 2,380 1,270
5 18.5 2,110 1,100
平均 19.0 2,192 1,182
ヒノキ 君津市 T鉱山
1 16.0 1,720 1,810
2 16.5 1,740 1,890
3 16.5 1,810 1,990
4 17.0 1,930 2,080
5 16.5 1,690 1,560
平均 16.5 1,778 1,866
直径 (mm)
-1000 -500 0 500 1000 0
-500
-1000
-1500
-2000
深度(mm)
φ1900 1800
25
したがって、採取跡地を埋め立て緑化する際には、最終基盤面から深度 1.5mはブル ドーザーやパワーショベルの転圧効果が発生しないように工事を工夫するか、または 最終基盤面整備後の緑化工事前に耕耘工事を全面、もしくは部分的に実施することが 必要となる。なお、スギ、ヒノキ以外の植栽種を選別する場合は表 2.2 を参考にする ことができる7)。
表2.2 樹高別必要有効土層厚指標7) 樹高 (m) 低木 高木
3以下 3~7 7~12 12以上
有効土層 (m) 0.5~0.6 0.6~0.8 0.8~1.0 1.0~1.5
2.2.4 植栽基盤の物理化学的土壌条件
緑化土壌で植栽生育に影響を及ぼす主要な物理的項目としては土性と透水性が挙 げられる 7)。土性とは土壌の粒径組成を言い、簡易な調査方法として日本農学会法に よる指頭法7)がある。これでは表 2.3に示すように、土壌を砂土、砂壌土、壌土、砂埴 土および埴土の5種に分類している。植栽基盤としては砂壌土や壌土が望ましいとさ れているが、採取跡地の植栽土性は埋め戻された土砂や基盤の性質に支配される。透 水性の不良は過剰水分を生じさせ、根系への酸素供給が減少するだけでなく、嫌気性 微生物の働きにより有害物質が生成される。そこで、植栽基盤の透水性や硬度等の物 理的土壌条件や化学的土壌条件を調査し、植栽基盤の基礎資料を把握した。
26
表2.3 日本農学会法による指頭法土性の判定 7)
土 性 基 準 紐状にした場合の 試料の形状
各性能 透通
性
保水 性
保肥 力
砂土 転がしても粒状のままで固まら
ない +++ + -
砂壌土
多少固まりになるが、転がして も 紐 状 に 伸 ば す こ と が で き な い 。 転 が し て 伸 ば す と 太 紐(> 3mm)になるが、さらに細かくし ようとすると切れてしまう。
++ ++ +
壌土
転 が し て 伸 ば す と 紐(3mm)に な るが、さらに伸ばしたり、曲げ たりすると切れてしまう。
++ ++ +
砂埴土
転 が し て 伸 ば す と 細 か い 紐(< 3mm)になるが、さらに伸ばした り、曲げたりすると切れてしま う。
+ + ++
埴土
転 が し て 伸 ば す と 細 い 紐(< 3mm)になり、曲げるときれいに 輪になる。
- - +
1)物理的土壌条件
透水性に関して、透水性不良は過水分により根系への酸素供給が減少するだけでな く、嫌気性微生物の働きにより有害物質が生成される 3)。そこで、Y および I 鉱山の 各2箇所((a)~(d))の緑化地や緑化予定地の透水性を計測した。計測には植栽基盤の透 水性について一般的に使用されている長谷川式簡易現場透水試験器を用いた。この試 験器や計測の様子を図2.9、図2.10に、計測結果を図 2.11に示す。なお、この簡易透 水試験結果からの判定基準は表2.4に示すとおりである7)。
27
図2.9 長谷川式簡易現場透水試験器
図2.10 計測の様子
スケールロッド (60cm,100cm)
フロートスケール・
ガイド(60cm,100cm)
読取位置
ホールカバープレート (径33cm)
フロート
水頭10cm
h
約15cm h : 植穴の深さ
28
表2.4 簡易透水試験結果による判定基準7)
最終減水能 (mm/h) 10以下 10~30 30~100 100以上 判 定 不良 やや不良 良 優良
図2.11 透水試験結果
Y の(a)箇所は、埋め戻した採取跡地(b)の上に、試験的にマウント形状を持たせ、ヒ ノキの生長が著しい有機質コンポスト系改良材を施した改良土壌箇所である。ここの
深度300mmでは、試験が成立しないほどの透水性があり、深度 600mmでも良判定の
透水性を見せるものの、マウントの最下部付近である深度900mmでは不良となる。こ れから下部は元の埋戻し部であり、(a)箇所から約 15m の位置の(b)箇所の表層部分の 状況と同様であることが推測される。一方、I の(c)箇所は、植栽前に小型のブルドー ザーで勾配を修正し表層部分のみが整備された箇所である。したがって、透水性は深
度 300mm 部分では良判定であるが、深度 600mm 以下は Y の(b)箇所と同様に不良判
定となる。この透水性改善を目的に、(c)箇所の約 2m横で、直径約1.0m、深度 1.5mの 範囲でパワーショベルにて耕耘し埋め戻した (d)箇所の透水性は、深度600mm以下で 約2ヶ月後では30mm/h以上の良判定に改善された。
採取跡地の多くが、ブルドーザーやパワーショベルの転圧効果を受け、固く締まっ た状態であることが想像される。植物の根は細胞分裂により伸長しており、固い土壌 では根が伸びることができないため、枯死または生育不良となる。透水性不良ととも に枯損原因で多いのが固い植栽地盤とされている。そこで、根系発達に影響を及ぼす
29
土壌硬度を調査した。計測は上述の(c)と(d)箇所で行い、計測機器は土壌調査で一般的 に使用されている図2.12に示す山中式土壌硬度計を用いた。また、表2.5に山中式土 壌硬度計による判断基準を示す7)。
図2.12 山中式土壌硬度計
表2.5 山中式土壌硬度計による判断基準7)
硬度(mm) 固さの表現 植栽基盤としての判定 判定 27以上 固結 多くの根が侵入困難 ××
24~27 硬い 根系発達に阻害あり ×
20~24 締まった 根系発達阻害樹種あり △
11~20 軟らか 根系発達に阻害なし ○
11以下 膨軟過ぎ 〃 (支持力低下、乾燥) △
(c)箇所を耕耘改良前、(d)箇所を耕耘改良後として両測定結果を表 2.6に示す。表2.5
の判断基準によれば、改良前の表層深度 300mm では植栽土壌に適合して根系発達に 障害はないが、600mm および 900mm では根系発達に阻害がある、もしくは根系の侵 入が困難な不良地盤と判定される。一方改良後は、各深度において根系発達に阻害は ないものの、膨軟過ぎで乾燥し易くなる傾向にあることが分かる。今回の改良は単に 耕耘のみに依ったものであったが、これでも多少良い方向に向けることができる。し かし、より良い改良のためには、土壌改良材の付加等の何らかの施策が必要であるこ とが示唆される。
硬度指数目盛 土貫入円錐体
突き当てツバ 遊動指標
支持力目盛
30
表2.6 測定深度別硬度と判定
注) 硬度測定値は3点の平均値
以上から、適切な透水性と土壌硬度の維持が必要であることが解る。その他、保水 性は透水性や土壌硬度と異なり、植栽物が即枯死するものではないが、採砂鉱山のよ うに山砂が主体の土壌基盤では、夏場の晴天が続く日等は土壌が乾燥し、植栽が枯死 する恐れがある。したがって、土壌改良材の添加や、土壌表面の乾燥を防止する植栽 と育成が競合しない耐乾性のグラウンドカバー播種等の施工が必要であると考える。
2)化学的土壌条件
緑化事業における植栽基盤の化学的条件で阻害要因となるのは、強酸性やアルカリ 土壌と塩基過剰が考えられる 5)。想定対象となる土壌としては臨海地域と土丹、およ び海生堆積土がある。緑化対象地域の新第三紀中期鮮新世~第四期前期更新世堆積層 中の市宿砂層と万田野砂層内には貝殻の混入等があり、土壌中の陽イオン量が過剰と なり、塩基濃度が高くなるアルカリ土壌となる場合も予想される 7)。そこで、緑化対 象のひとつであるY鉱山の植栽土壌の化学分析を行った。結果を表2.7に示す。
表2.7 緑化対象地土壌の化学分析 pH
H2O
EC mS/m-1
TC
%
TN
%
CEC Cmol(+)kg-1
可給態リン酸 mgP2O5kg-1
乾土
Y鉱山土壌 7.55 1.32 0.026 0.006 4.8 4.8
目標値6),7) 4.5~7.5 1~10 4~15 0.1以上 20~40 10 以上
この表から、水素イオン濃度指数(pH)、電気伝導度(EC)以外の全炭素(TC)、全チッ 素(TN)、陽イオン交換容量(CEC)および可給態リン酸について、一般的森林土壌や造園 等の植栽基盤目標値から大きく下回っていることが判る。したがって、苗木の活着を 第一として、その後の旺盛な生長を促すためには、土壌の肥沃性向上として肥料の3要 素(チッ素、リン酸、カリウム)について、元肥、追肥にかかる施肥設計施工の検討が必 要である。また、可能であれば深根性残留根によるものも含めた団粒構造形成を促す 肥料であることも望ましいと思われる8)。
(c);改良前 (d);改良後
深度mm 硬度 mm 判定 硬度 mm 判定
300 15.0 軟らか ○ 8.0 膨軟過ぎ △
600 25.7 硬い × 10.0 膨軟過ぎ △
900 29.3 固結 × 8.5 膨軟過ぎ △
31 2.3 採取跡地に適する植栽種
2.3.1 概要
これまで、採取跡地に植栽する植栽種は土地所有者の要望、あるいは指定もあり、
図2.13 に示すようなヒノキやスギの3年生苗木が植栽されてきた。しかし、前節まで に種々調査・検討してきたように、植栽緑化予定地の採掘跡地は、ヒノキやスギも含 めての植栽物の生育土壌としては適切とは言えない土壌と言える。したがって、勿論 植物多様性影響評価を行い土地所有者や近隣住民等の承認を得てのことであるが、貧 栄養地で風化や浸食がし易く植栽物生育には厳しい環境下の採取跡地にも耐え得る新 たな植栽種の選択についての検討も必要であると思われる。そこで本節では、これら について種々検討し、採取跡地への適合性を調査した。
図2.13 ヒノキの苗床(3年生植木)
2.3.2 ヤトロファ・クルカス
荒地や耐環境性に優れているとされている植栽種を種々調査の上、ヤトロファ・ク ルカス(和名;タイワンアブラギリ)を選択してみた9)。これは燃料併産型としても優れ ているとされている。
1)ヤトロファ・クルカスの概要9)-12)
枝を折るとストローのような空洞があり、吹けばシャボン玉ができることより、シ ャボン玉の木と呼ばれたりしているヤトロファ・クルカスは、熱帯アメリカ原産の落 葉低木で、高さ5m前後に生長して径3~4.5cmの果実をつけ、種子に多量の油を含ん でいる。概ねどのような土地にでも育ち、砂利や砂、塩分を含んだ土地,石だらけの 土壌でも生長するとされている。また、元々生えているものを抜いて別の土地に植え つけても簡単に増殖し、冬の落葉は基部の周りに根覆いを形成する。さらに、油分が
32
多いところから、戦前に日本軍が研究して栽培を検討したこともある。現在でも石鹸 の材料として使用され、油分を絞りとった後の残渣も有機肥料として使用が可能であ る。日本では観葉植物として販売されている。表2.8および図2.14に概要を示す。
表2.8 ヤトロファ・クルカスの概要 項 目 摘 要
学 名 Jatropha curcus
和 名 タイワンアブラギリ(別名;ナンヨウアブラギリ) 科 名 ヤトローパ・クルカス
属 名 ヤトロファ・クルカス属
性 状 落葉低木
原産地 熱帯アメリカ
図2.14 ヤトロファ・クルカスの林と観葉市販物
2)特徴
ヤトロファ・クルカスは、古来から半乾燥地域や亜熱帯地域では薬効作用のある植 物としてよく認識されている。その特徴は、種子や葉に毒性があることから野生動物 に食べられることもなく、土地を守るための防御用植物として利用されてきた。また、
害虫や病原体に強い耐性を持ち10)、非常に耐乾性のある品種で、不毛および半不毛の 土地にも充分適応し、熱帯地域では森林植生プログラムへの利用が増加している 11)。 現在の植生分布からすると表2.9のような環境に該当する。
ヤトロファ・クルカスは,植樹してから 1年後でも種子をつけ、種子の収穫量が最 大になるのは3~5年後であり、その後の30年間収穫が可能である。この種子の油分 が近年の地球温暖化対策により、カーボンニュートラルである非食用植物のバイオ燃 料として注目を浴び、バイオディーゼル油として各分野で研究されている 9)。参考の
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ため、種子から製造されるバイオディーゼル油の概念フロー図を図2.15に、また得ら れるバイオディーゼル油の性状を表2.10に示す 7),13)。
表2.9 ヤトロファ・クルカスの植生環境
項 目 摘 要 備 考
年間降雨量 300~1,000 mm 熱帯地方の乾燥した地域に良く繁殖している。
高 度 0~500m 少々霜が降りるような土地でも生育可能
年間平均気温 20℃前後
その他の環境 ・通気の良い場所 ・水はけの良い土地 ・栄養のない土地
図2.15 ヤトロファ・クルカスからバイオディーゼル油の製造フロー
表2.10 ヤトロファ・クルカスバイオディーゼル油、他の油の性状
項 目 ヤトロファ・クルカス
バイオディーゼル油 パーム原油 欧州標準油 軽油(JIS) 比重(20℃) 0.879 0.91~0.92 0.920 0.830
発火点 191 248 101 80 セタン価 57~62 65.0 51.1 51.0 粘土(40℃) 4.20 -- -- --
発熱量 32.8 36.5~39.4 -- 42.6~45.0
ヨウ素 95~106 -- 120 --
硫黄分(%) 0.014 0.01以下 0.020 1.0~1.2 残留炭素 0.025 -- 0.30 -- 遊離脂肪酸 0.4 0.9~1.5 -- --
種子
圧搾機
原料油
フィルタ
バイオディーゼル油
シードケーキ 肥料
残渣 石鹸
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現在得られている結果によると、本バイオディーゼル油の収液量について、1ha に
約1,600 本のヤトロファ・クルカスを植樹した場合、種子が 1本あたり 5kg収穫する
として年間約 8tの原材料重量となり、搾油率を約 33%とした場合は 2.6kL/ha が得ら れるとしている14)。ヤトロファ・クルカス事業への投資団体は、インドネシアでのケ ースで植樹に係るコストは、600ha を 1 単位として、初年度 166,000 円/ha・年であ り、以降この約1/3のコストとなると呼びかけている。
3)植栽予定地の気象条件および土壌条件への適用性
千葉県の植生は、元来全域がシイ、カシ類を優占種とする照葉樹域にあり、スダジ イ、アカガシ、タブノキ、コナラ等などが見られる15)。Y 鉱山およびI鉱山の採掘跡 地にヤトロファ・クルカスを植林する場合、年間気温の変動推移と降水量および前述 した透水性、保水性等々の植栽土壌への適応性について検討する必要がある。
先ず、植生の基本条件となる気温と降水量について千葉県の概況を図 2.16 に示す。
また、日本で観葉植物として販売されているヤトロファ・クルカスの育て方 16)では、
耐寒温度を5℃以上と記載している。
図2.16 千葉県の気温(1月、7月)と降水量(年平均)分布
(○印はY鉱山、I鉱山付近)
次に、Y および I 鉱山の近隣地である君津市の市民環境部環境保全課が公表してい る俵田観測局の気温(最低,最高)および降水量の月平均値と、前述のヤトロファ・クル カス事業として実施を開始しているインドネシアのスラバヤのそれらを比較すると、
図 2.17および図 2.18 に示すようである。俵田では 12 月~3 月の最低気温が 5℃未満 となっており、この冬季の最低気温時に耐え得るかが課題となるが、最高気温は約
10℃以上であるため、数日間単位で連続的に 5℃未満に曝されることは無いと思われ
る。降水量については、俵田のそれはスラバヤに平均的には優っており、問題はない と考えられる。したがって、気温や降水量は、生育の速度に影響はあるものの問題は 少ないと判断される。
1月の気温分布 7月の気温分布 年平均降水量分布
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図2.17 俵田とスラバヤの月別最低・最高気温(℃)の比較
(スラバヤのデータは世界気象機関)
図2.18 俵田とスラバヤの月間降雨量の比較
(スラバヤのデータは世界気象機関)
保肥性の低い砂質土壌である砂利採掘後の緑化地帯でのヤトロファ・クルカスの生 育について現況の緑化地状況を考慮すると、前述のような過度の透水性や透水性不良、
および土壌硬度の改善を図って、砂質と粒度の異なる粘土質、もしくは代替の材料の 客土が考えられる。客土にあたっては、原土(砂質土)と客土用材としての粘質土が極 端に異なる粒度の場合、降雨により流亡することもあり得るので粒度分布には注意が 必要である。コスト面を考慮すると、浄水汚泥等を利用した培養土や、農業用肥料と
0 5 10 15 20 25 30 35 40
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 月
俵田 平均 最低気温 俵田 平均 最高気温 スラバヤ 平 均最低気温 スラバヤ 平 均最高気温
0 50 100 150 200 250 300 350
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3
月
俵田 スラバヤ
気温℃ 降雨量mm
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して使用が認められている石炭灰(フライアッシュ・クリンカアッシュ)の混合利用が 効果的と考える。
石炭灰は微粉炭燃焼灰として、1960年にフライアッシュが、1992年にクリンカーア ッシュが特殊肥料の指定を受けている。特にクリンカーアッシュは主成分が一般土壌 とほぼ同じで、大半がSiO2とAl2O3であり植物の生育に適している。また、無数の細 孔を有し保水性が良いため、肥料の効果を永続でき、形状は砂に似ており透水性も同 程度であるため、ゴルフ場の芝生土、排水不良箇所の改善、農地土壌改良などに利用 されている17)。石炭灰を混合使用した植生比較試験の一例を図 2.19に示す。
図2.19 石炭灰を混合使用した植生比較試験例(右;石炭灰使用)
以上の調査・検討結果から、ヤトロファ・クルカスは砂利採取跡地の緑化植栽用植 物材としての適応性は高いと考える。ただし、耐寒温度5℃以上を担保できない12月
~3月期の育成について確認するために、試験植栽等を行って検証する必要がある。
最後にヤトロファ・クルカス植生の二次的なメリットとして、前述のようなバイオ 燃料源としての利用も可能であるため、Y および I 鉱山に植栽した場合のバイオ油収 液の試算を行ってみる。この試算の結果を表 2.11 に示す。130 kL 程度の油量が得ら れるとの結果であるが、鉱区面積による植栽適用面積が狭く、この採油事業の実施を 行う場合には、初期投資および生産・維持費との比較を精査しなければならない。
表2.11 ヤトロファ・クルカスからの採油量試算
項目 事業所
鉱区面積 ha
植栽適用面積 (想定) ha
ヤトロファ・
クルカス植樹数 (1,600本/ha)
バイオ油収液量 kL
Y 鉱山 70 35 56,000 91
I鉱山 31 15 24,000 39
計 101 60 80,000 130
37 2.3.3 ヤシャブシ、ハンノキ、他
前項のヤトロファ・クルカス以外の植栽種の調査の結果、ハンノキやヤシャブシは ヒノキと比較して枯死も少ない植栽種で、かつ短期間で高生長が望める植栽種である ことが判明した18)。そこで、Y 鉱山の採取場跡地の同じ土壌条件下で耕耘とマウント を形成(後述)して、ヒノキとヤシャブシの植栽試験を行い、これらの生長状態を調査 した。
図2.20にこの植栽試験の状況を示す。植栽試験は、図 2.21に示すような規格で各々 36本の苗木を植え、その生長状況を130日間観察した。この結果、図2.22に示すよう に、130日後の枯死数は 36本中でヒノキが 24本、ヤシャブシが 6本であり、ヤシャ ブシがヒノキに比べて優れていることが実証される。
図2.20 採取跡地土壌条件下での植栽試験(左;ヒノキ、右;ヤシャブシ)
10m 盛土 0.5m
1.4m
1.4m
ヒノキ ヤシャブシ