九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Cardiothoracic Ratio and All-Cause Mortality and Cardiovascular Disease Events in
Hemodialysis Patients: The Q-Cohort Study
四枝, 龍佑
http://hdl.handle.net/2324/2236108
出版情報:九州大学, 2018, 博士(医学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
氏 名 : 四 枝 龍 佑
論 文 名 :Ca rd io tho ra c ic R a tio an d A ll-C a u se Mo rta lit y a n d C a rd io va sc u la r D ise a se E ve n ts in H e mo d ia lys is P a tie n ts: Th e Q -C o ho rt S tu d y
( 血 液 透 析 患 者 に お け る 心 胸 郭 比 と 総 死 亡 お よ び 心 血 管 疾 患 イ ベ ン ト:Q コ ホ ー ト 研 究 )
区 分 : 甲
論 文 内 容 の 要 旨
本 邦 の 血 液 透 析 患 者 の 死 亡 の 約 40% は 、心 不 全 や 心 筋 梗 塞 、脳 卒 中 を 原 因 と し て 発 生 し て い る と 報 告 さ れ て お り 、心 血 管 疾 患 は 透 析 患 者 の 主 要 な 死 亡 原 因 で あ る 。す な わ ち 、 心 血 管 疾 患 の リ ス ク 因 子 の 探 索 は 、 血 液 透 析 患 者 の 予 後 を 改 善 さ せ る た め に 重 要 な 課 題 で あ る 。
胸 部 レ ン ト ゲ ン 写 真 で 測 定 さ れ る 心 胸 郭 比 は 、 単 純 で 費 用 対 効 果 が 高 く 、 侵 襲 性 の 低 い 検 査 法 で あ り 、 血 液 透 析 患 者 に お い て 主 に 体 液 量 の 指 標 と し て 、 広 く 用 い ら れ て い る 。 心 胸 郭 比 高 値 は 、 左 室 肥 大 や 体 液 量 過 剰 と い っ た 、 透 析 患 者 に お け る 心 血 管 疾 患 の 重 要 な リ ス ク 因 子 と 密 接 に 関 連 し て い る と 報 告 さ れ て い る 。 す な わ ち 、 心 胸 郭 比 は 透 析 患 者 に お い て 心 血 管 疾 患 の リ ス ク の 評 価 に 有 用 で あ る 可 能 性 が あ る 。 し か し な が ら 、 こ れ ま で 血 液 透 析 患 者 の 心 胸 郭 比 と 臨 床 的 予 後 と の 関 連 に つ い て の 研 究 は 少 数 に 留 ま っ て お り 、 か つ 限 定 的 な 患 者 群 に お け る 研 究 結 果 が 多 く 、 十 分 に は 明 ら か に な っ て い な い 。 本 研 究 は 、 本 邦 の 血 液 透 析 患 者 の 大 規 模 多 施 設 前 向 き コ ホ ー ト で あ る Q コ ホ ー ト 研 究 の 一 環 と し て 、 心 胸 郭 比 と 総 死 亡 お よ び 心 血 管 疾 患 発 症 と の 関 連 に つ い て 検 討 し た 。
Q コ ホ ー ト 研 究 は 、 福 岡 県 ・ 佐 賀 県 の 39 透 析 施 設 で 2006 年 12 月 か ら 2007 年 12 月 の 間 に 患 者 登 録 が 行 わ れ 、18 歳 以 上 の 外 来 血 液 透 析 患 者 患 者 3598 人 が 参 加 し た 。患 者 背 景 デ ー タ と 評 価 項 目 に 欠 損 が あ っ た 者 は 除 外 し 3436 人 を 本 研 究 の 解 析 対 象 と し た 。 追 跡 期 間 は 4 年 間 で 、 評 価 項 目 は 総 死 亡 と 心 血 管 疾 患 イ ベ ン ト の 発 症 と し た 。 心 胸 郭 比 は 胸 部 レ ン ト ゲ ン 写 真 で 最 大 心 横 径 を 最 大 胸 郭 径 で 除 し て 計 測 し 、 観 察 開 始 時 に 各 透 析 施 設 に お け る 標 準 的 な 方 法 で 実 施 し た デ ー タ を 用 い た 。
4 年 間 の 追 跡 期 間 中 に 、 解 析 対 象 者 3436 人 の 内 、564 人(16.4%)が 何 ら か の 原 因 で 死 亡 し 、590 人(17.2%)が 心 血 管 疾 患 イ ベ ン ト を 発 症 し た 。 心 胸 郭 比 の 分 布 に 性 差 が 見 ら れ た た め 、 解 析 対 象 者 を 性 別 毎 の 心 胸 郭 比 の 中 央 値 と 4 分 位 数 を 用 い て 4 群 に 分 類 し
て 解 析 を 行 っ た 。 観 察 開 始 時 の 患 者 背 景 を 心 胸 郭 比 の 群 間 で 比 較 す る と 、心 胸 郭 比 が 高 値 であるほど、高 齢 で、透 析 歴 が長 く、脳 梗 塞 、脳 出 血 と心 疾 患 を含 む心 血 管 疾 患 の既 往 歴 が多 く、収 縮 期 血 圧 が高 値 であり、血 清 C 反 応 性 蛋 白 は高 値 であった。対 して、心 胸 郭 比 が高 値 であるほど、血 清 アルブミン、ヘモグロビン、Kt/V は低 値 であった。4 年 間 の 総 死 亡 お よ び 心 血 管 疾 患 イ ベ ン ト の 発 症 率 は 、 心 胸 郭 比 が 高 値 で あ る 群 ほ ど 有 意 に 悪 化 し て い た 。 心 胸 郭 比 が 最 小 で あ る 群(第 1 四 分 位)と 比 較 し て 、 総 死 亡 の 多 変 量 調 整 ハ ザ ー ド 比 は 、 第 2 四 分 位 、 第 3 四 分 位 、 第 4 四 分 位 そ れ ぞ れ で 順 に 0.89 (95%信 頼 区 間 0.66-1.20)、1.41 (1.08-1.86)、1.52 (1.17-2.00)で あ っ た 。 同 様 に 、 心 血 管 疾 患 イ ベ ン ト 発 症 の 多 変 量 調 整 ハ ザ ー ド 比 は 、 第 2 四 分 位 、 第 3 四 分 位 、 第 4 四 分 位 そ れ ぞ れ で 順 に 1.00 (95%信 頼 区 間 0.77-1.31)、1.18 (0.92-1.53)、1.37 (1.07-1.76)で あ っ た 。 多 変 量 調 整 に は 、 年 齢 、 性 、 透 析 歴 、 末 期 腎 臓 病 の 原 因 、 心 血 管 疾 患 の 既 往 歴 、 降 圧 薬 の 使 用 の 有 無 、収 縮 期 血 圧 、ア ル ブ ミ ン 値 、ヘ モ グ ロ ビ ン 値 、C反 応 性 蛋 白 、ボ デ ィ マ ス イ ン デ ッ ク ス と 標 準 化 透 析 量 を 用 い た 。制 限 3 次 スプライン曲 線 を用 いて、心 胸 郭 比 と総 死 亡 と心 血 管 疾 患 イベント発 症 の多 変 量 調 整 ハザード比 の連 続 的 な関 係 性 を評 価 し たと ころ、心 胸 郭 比 が高 値 で あるほど 、総 死 亡 と 心 血 管 疾 患 イ ベント発 症 のリスク が単 調 増 加 していた。層 別 解 析 で は 、 血 圧 低 値(収 縮 期 血 圧<140 mmHg、 拡 張 期 血 圧<90 mmHg)の 患 者 群 の 方 が 、 血 圧 高 値 の 患 者 群 と 比 べ て 、 心 胸 郭 比 が 高 値 で あ る と 心 血 管 疾 患 イ ベ ン ト の 発 症 の リ ス ク が よ り 顕 著 に 増 加 し て い た 。
本 研 究 で は 、 心 胸 郭 比 高 値 が 総 死 亡 お よ び 心 血 管 疾 患 発 症 の 高 リ ス ク と 関 連 し て い る こ と が 示 さ れ た 。 こ の 結 果 を も た ら し た メ カ ニ ズ ム に つ い て 考 察 す る と 、 心 胸 郭 比 高 値 が 、 体 液 過 剰 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ る 動 脈 硬 化 進 展 の 負 荷 を 反 映 し て 不 良 な 予 後 と 関 連 し た 可 能 性 が あ る 。 ま た 、 心 胸 郭 比 高 値 が 、 う っ 血 性 心 不 全 と 心 機 能 低 下 を 反 映 し て 不 良 な 予 後 と 関 連 し た 可 能 性 が あ る 。 本 研 究 の 限 界 は 、 調 査 項 目 が 全 て 単 回 測 定 で あ る 点 、 心 機 能 に 関 連 し た 調 査 項 目 の 収 集 が 十 分 で は な か っ た 点 な ど で あ る 。
結 論 と し て 、 本 研 究 で は 心 胸 郭 比 高 値 が 、 総 死 亡 お よ び 心 血 管 疾 患 イ ベ ン ト 発 症 の 高 リ ス ク と 関 連 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。 今 後 の 課 題 と し て 、 心 胸 郭 比 を 低 下 さ せ る よ う な 臨 床 的 ア プ ロ ー チ が 実 際 に 血 液 透 析 患 者 の 予 後 を 改 善 さ せ 得 る か と い う 研 究 や 、 心 胸 郭 比 の 至 適 範 囲 に つ い て の 研 究 が 必 要 で あ る と 考 え ら れ る 。