Instructions for use
T itle
契約責任決定規範の多元性(1) : アメリカ契約法におけるfaultの発見を端緒としてA uthor(s )
木戸, 茜C itation
北大法学論集 = T he Hokkaido L aw R eview, 68(6): 1-62Is s ue D ate
2018-03-30D oc UR L
http://hdl.handle.net/2115/68630T ype
bulletin (article)F ile Information
lawreview_ vol68no6_ 01.pdf
目
次
序
章
第
一
節
問
題
意
識
論
説
契
約
責
任
決
定
規
範
の
多
元
性
(
一
)
─
─
ア
メ
リ
カ
契
約
法
に
お
け
る
fault
の
発
見
を
端
緒
と
し
て
─
─
木
戸
論 説
北法68(6・2)1326
第
二
節
考
察
の
対
象
と
分
析
の
視
角
第
三
節
本
稿
の
構
成
第
一
章
ア
メ
リ
カ
契
約
責
任
法
理
の
形
成
と
転
換
第
一
節
は
じ
め
に
第
二
節
ア
メ
リ
カ
契
約
法
の
発
端
第
三
節
形
式
主
義
的
契
約
観
第
四
節
厳
格
責
任
の
確
立
第
五
節
ア
メ
リ
カ
契
約
責
任
法
理
の
転
換
第
六
節
小
括
(
以
上
、
本
号
)
第
二
章
ア
メ
リ
カ
契
約
法
に
お
け
るfault
の
発
見
第
三
章
ア
メ
リ
カ
の
裁
判
例
に
お
け
る
契
約
責
任
決
定
規
範
第
四
章
日
本
法
に
お
け
る
契
約
責
任
法
理
の
展
開
第
五
章
日
本
の
裁
判
例
に
お
け
る
契
約
責
任
決
定
規
範
終
序
章
第
一
節
問
題
意
識
契
約
当
事
者
は
な
ぜ
契
約
責
任
を
負
う
の
か
。
契
約
に
お
け
る
合
意
に
反
し
た
こ
と
が
契
約
責
任
の
根
拠
と
な
る
こ
と
は
、
自
明
で
あ
る
か
に
思
わ
れ
る
。
ア
メ
リ
カ
契
約
法
に
お
い
て
は
、pacta sunt servanda
(
契
約
は
履
行
す
べ (
1
)
し
)
の
法
諺
の
通
り
、
各
人
は
自
ら
の
約
束
を
守
り
実
行
せ
ね
ば
な
ら
な
い
と
さ
れ
る
。
例
え
ば
第
二
次
契
約
法
リ
ス
テ
イ
ト
メ
ン
ト
に
お
い
て
、「
契
約
責
任
は
厳
格
責
任
で
あ
る
。pacta
sunt
servanda
は
承
認
さ
れ
た
格
言
で
あ
る
」
と
の
記
述
が
あ (
2
)
る
。
一
度
成
立
し
た
契
約
は
履
行
さ
れ
ね
ば
な
ら
ず
、
契
約
に
よ
っ
て
引
き
受
け
た
こ
と
を
履
行
し
な
い
当
事
者
は
、
そ
の
こ
と
を
も
っ
て
た
だ
ち
に
契
約
責
任
を
負
わ
ね
ば
な
ら
な
い
。
わ
が
国
の
契
約
法
に
お
い
て
も
、
一
九
九
〇
年
前
後
か
ら
、
契
約
違
反
に
基
づ
く
損
害
賠
償
責
任
の
正
当
化
根
拠
を
「
契
約
の
拘
束
力
」
に
求
め
る
見
解
が
有
力
と
な
っ
て
い (
3
)
る
。
そ
こ
で
は
帰
責
根
拠
は
、
債
務
者
が
契
約
に
お
い
て
約
束
し
た
こ
と
を
履
行
し
な
い
こ
と
に
求
め
ら
れ
る
。
こ
の
考
え
方
は
広
く
受
け
入
れ
ら
れ
、
近
年
の
債
権
法
改
正
作 (
4
)
業
に
お
け
る
検
討
の
結
果
、
二
〇
一
七
年
五
月
二
六
日
に
成
立
し
た
改
正
債
権
法
に
お
い
て
採
用
さ
れ
た
。
改
正
後
民
法
四
一
五
条
一
項
の
本
文
は
「
債
務
者
が
そ
の
債
務
の
本
旨
に
従
っ
た
履
行
を
し
な
い
と
き
又
は
債
務
の
履
行
が
不
能
で
あ
る
と
き
は
、
債
権
者
は
、
こ
れ
に
よ
っ
て
生
じ
た
損
害
の
賠
償
を
請
求
す
る
こ
と
が
で
き
る
」
と
規
定
す (
5
)
る
。
帰
責
根
拠
を
契
約
違
反
そ
の
も
の
に
求
め
る
立
場
は
、
債
務
者
に
契
約
の
不
履
行
が
あ
れ
ば
(
不
履
行
の
理
由
を
問
わ
ず
)
責
任
が
発
生
す
る
と
い
う
、
一
見
明
快
な
責
任
判
断
構
造
を
採
用
し
て
い
る
。
ア
メ
リ
カ
契
約
法
の
歴
史
を
見
て
も
、
客
観
的
に
明
確
で
予
見
可
能
な
論 説
北法68(6・4)1328
式
的
ル
ー
ル
の
要
請
か
ら
、
厳
格
責
任
主
義
が
採
用
さ
れ
る
に
至
っ
た
こ
と
は
後
述
す
る
通
り
で
あ (
6
)
る
。
と
は
い
え
実
際
に
は
、
契
約
の
不
履
行
が
帰
責
根
拠
と
な
ら
な
い
場
合
が
生
じ
る
こ
と
は
否
定
で
き
な
い
。
例
え
ば
、
わ
が
国
で
は
自
然
災
害
や
戦
乱
と
い
っ
た
不
可
抗
力
に
よ
る
免
責
を
認
め
て
い (
7
)
る
。
厳
格
責
任
主
義
を
採
用
す
る
ア
メ
リ
カ
契
約
法
に
お
い
て
も
、
非
常
に
限
定
さ
れ
た
場
合
で
は
あ
る
が
、force
majeure
(
不
可
抗
力
)
に
基
づ
く
履
行
義
務
の
減
免
が
認
め
ら
れ (
8
)
る
。
ま
た
、
第
二
次
契
約
法
リ
ス
テ
イ
ト
メ
ン
ト
で
は
、supervening
impracticability
(
後
発
的
実
行
不
能
)
の
場
合
─
─
す
な
わ
ち
、「
あ
る
出
来
事
の
生
じ
な
い
こ
と
を
基
本
的
前
提
と
し
て
契
約
が
締
結
さ
れ
て
い
る
場
合
に
、
契
約
締
結
後
に
、
そ
の
よ
う
な
出
来
事
が
生
じ
た
こ
と
に
よ
り
、
当
事
者
の
一
方
の
履
行
が
、
そ
の
者
の
過
失
(fault
)
に
よ
ら
ず
し
て
実
行
不
能
と
な
っ
た
と
き
」
─
─
に
は
、
当
該
履
行
義
務
は
消
滅
す
る
と
規
定
さ
れ
て
い (
9
)
る
。
こ
れ
ら
の
場
面
で
は
、
債
務
者
が
契
約
に
お
い
て
約
束
し
た
こ
と
に
反
し
た
と
し
て
も
、
債
務
者
の
責
任
が
否
定
さ
れ
る
こ
と
と
な
り
、
契
約
違
反
が
た
だ
ち
に
帰
責
根
拠
と
な
る
わ
け
で
は
な
い
。
さ
ら
に
、
契
約
違
反
が
帰
責
根
拠
と
な
ら
な
い
場
面
は
、
不
可
抗
力
の
事
案
だ
け
で
は
な
い
。
近
年
の
ア
メ
リ
カ
契
約
法
に
関
す
る
議
論
か
ら
は
、
不
可
抗
力
の
事
案
に
限
ら
ず
、
契
約
違
反
が
あ
っ
た
と
し
て
も
債
務
者
の
責
任
を
否
定
す
る
こ
と
で
妥
当
な
紛
争
解
決
を
導
く
場
合
が
あ
る
こ
と
が
指
摘
さ
れ
て
い
る
。
と
り
わ
け
、
締
結
時
に
契
約
内
容
の
す
べ
て
を
決
定
す
る
の
で
は
な
く
、
あ
る
程
度
長
期
に
渡
る
契
約
期
間
の
な
か
で
状
況
に
応
じ
て
契
約
内
容
を
詰
め
て
い
く
よ
う
な
事
案
─
─
後
述
す
る
よ
う
に
、
ア
メ
リ
カ
に
お
い
て
は
必
要
量
購
入
契
約
に
関
す
る
議
論
が
盛
ん
で
あ
る
─
─
で
は
、
契
約
内
容
に
反
し
た
こ
と
に
と
ど
ま
ら
な
い
規
範
的
な
要
素
が
帰
責
根
拠
と
し
て
機
能
し
て
い
る
よ
う
で
あ
)
(1
(
る
。
確
か
に
、
債
務
者
が
契
約
に
違
反
す
れ
ば
そ
の
こ
と
を
も
っ
て
た
だ
ち
に
契
約
責
任
が
発
生
す
る
と
す
る
責
任
判
断
構
造
は
、
形
式
主
義
的
で
あ
る
が
ゆ
え
に
迅
速
か
つ
安
定
し
た
運
用
を
も
た
ら
し
得
る
。
し
か
し
一
方
で
、
そ
の
よ
う
な
処
理
を
文
字
通
り
徹
底
す
れ
ば
、
個
々
の
具
体
的
事
案
の
妥
当
性
へ
の
配
慮
に
欠
け
る
可
能
性
は
否
定
で
き
な
い
。
特
に
、
単
発
の
取
引
で
は
な
い
契
約
に
お
い
て
、
当
事
者
が
初
合
意
し
な
か
っ
た
こ
と
に
つ
い
て
紛
争
が
生
じ
た
場
合
、
契
約
責
任
の
決
定
に
あ
た
っ
て
合
意
に
反
し
た
か
否
か
の
み
を
重
視
す
る
の
は
現
実
的
で
は
な
い
よ
う
に
思
わ
れ
)
((
(
る
。
伝
統
的
に
厳
格
責
任
主
義
に
立
つ
と
さ
れ
て
き
た
ア
メ
リ
カ
契
約
法
に
お
い
て
で
さ
え
、
実
際
の
運
用
で
は
契
約
違
反
に
と
ど
ま
ら
な
い
規
範
的
な
帰
責
根
拠
が
考
慮
さ
れ
て
い
る
と
の
指
摘
が
あ
る
こ
と
も
、合
意
を
重
視
す
る
立
場
を
貫
徹
す
る
こ
と
の
困
難
の
証
左
で
あ
ろ
う
。
ま
た
、
わ
が
国
の
改
正
後
民
法
四
一
五
条
一
項
但
書
は
、「
そ
の
債
務
の
不
履
行
が
、
契
約
…
…
及
び
取
引
上
の
社
会
通
念
に
照
ら
し
て
債
務
者
の
責
め
に
帰
す
る
こ
と
が
で
き
な
い
事
由
に
よ
る
も
の
で
あ
る
と
き
は
、
こ
の
限
り
で
な
い
」
と
す
る
。
債
権
法
改
正
作
業
に
お
い
て
は
、
契
約
に
お
け
る
合
意
を
重
視
す
る
と
い
う
方
針
が
採
用
さ
れ
た
も
の
の
、
契
約
に
基
づ
く
損
害
賠
償
責
任
の
有
無
の
決
定
に
あ
た
っ
て
は
、「
契
約
」
と
と
も
に
「
取
引
上
の
社
会
通
念
」
が
考
慮
さ
れ
る
こ
と
に
な
)
(1
(
る
。
こ
こ
で
も
、
契
約
違
反
に
と
ど
ま
ら
な
い
帰
責
根
拠
を
観
念
す
る
余
地
が
あ
り
そ
う
で
あ
る
。
こ
の
よ
う
に
考
え
て
く
る
と
、
契
約
責
任
の
帰
責
根
拠
に
つ
い
て
は
、
具
体
的
事
案
の
実
質
的
検
討
の
積
み
重
ね
か
ら
論
じ
ら
れ
ね
ば
な
ら
な
い
よ
う
に
思
わ
れ
る
。
す
な
わ
ち
、
具
体
的
事
案
に
お
い
て
当
事
者
が
契
約
上
何
を
引
き
受
け
て
い
た
の
か
、
引
き
受
け
た
こ
と
に
な
ぜ
反
す
る
こ
と
に
な
っ
た
の
か
等
の
個
々
の
状
況
を
検
討
す
る
こ
と
で
、
契
約
責
任
が
い
か
に
決
定
さ
れ
る
か
が
明
確
に
な
ろ
う
と
考
え
)
(1
(
る
。
そ
こ
で
本
稿
で
は
、
契
約
責
任
の
帰
責
構
造
に
関
す
る
立
法
史
、
学
説
を
概
観
し
た
う
え
で
、
契
約
違
反
に
基
づ
く
責
任
追
及
が
な
さ
れ
て
い
る
事
案
─
─
特
に
、
継
続
的
な
取
引
に
お
い
て
契
約
締
結
時
に
当
事
者
が
明
示
的
に
合
意
し
た
こ
と
以
外
の
要
素
に
よ
っ
て
責
任
判
断
が
な
さ
れ
得
る
場
面
─
─
を
分
析
し
、
そ
れ
ら
の
事
案
に
お
け
る
実
質
的
な
責
任
判
断
の
検
討
か
ら
、
契
約
責
任
を
決
定
す
る
規
範
的
要
素
を
確
定
す
る
こ
と
を
試
み
る
。
さ
ら
に
、
結
論
を
先
取
り
し
て
い
え
ば
、
こ
う
し
た
規
範
が
、
契
約
責
任
の
有
無
だ
け
で
な
く
、
責
任
内
容
─
─
す
な
わ
ち
、
最
終
的
な
損
害
賠
償
の
額
の
調
整
─
─
に
も
か
か
わ
る
多
元
性
を
有
す
る
も
の
で
あ
る
こ
と
を
示
)
(1
(
す
論 説
北法68(6・6)1330
(
1
)
同
法
諺
は
「
約
束
は
守
ら
な
け
れ
ば
な
ら
な
い
」
と
も
訳
さ
れ
る
(
田
中
英
夫
『
英
米
法
辞
典
』
東
京
大
学
出
版
会
(
一
九
九
五
年
)
六
一
六
頁
)
他
、「
約
束
」
で
は
な
く
「
契
約
」、
「
合
意
」
と
の
語
も
用
い
ら
れ
る
(
小
山
貞
夫
『
英
米
法
律
語
辞
典
』
研
究
社
(
二
〇
一
一
年
)
七
九
八
頁
)。
(
2
)Restatement
(Second)
of
Contracts
ch.11,
introductory
note,
at
309-12
(1981).
ま
た
、Farnsworth
は
、「
契
約
法
は
そ
の
本
質
的
な
構
想
に
お
い
て
厳
格
責
任
の
法
で
あ
る
」
と
説
明
す
る
。E.
ALLAN
FARNSWORTH,
CONTRACTS
§
12.8,
at
761
(4
th
ed.
2004).
わ
が
国
で
も
、ア
メ
リ
カ
法
に
お
け
る
契
約
責
任
は
厳
格
責
任
で
あ
る
と
紹
介
さ
れ
て
い
る
。
樋
口
範
雄『
ア
メ
リ
カ
契
約
法〔
第
二
版
〕』
弘
文
堂
(
二
〇
〇
八
年
)
六
七
頁
。
(
3
)
森
田
宏
樹
『
契
約
責
任
の
帰
責
構
造
』
有
斐
閣
(
二
〇
〇
二
年
)
四
六
頁
以
下
、
潮
見
佳
男
『
債
権
総
論
〔
第
二
版
〕
Ⅰ
─
─
債
権
関
係
・
契
約
規
範
・
履
行
障
害
』
信
山
社
(
二
〇
〇
三
年
)
二
六
九
頁
以
下
、
同
『
債
権
総
論
〔
第
四
版
〕』
信
山
社
(
二
〇
一
二
年
)
五
五
頁
以
下
。
ま
た
、
契
約
責
任
の
帰
責
根
拠
を
「
契
約
の
拘
束
力
」
に
よ
っ
て
基
礎
づ
け
る
学
説
を
概
観
す
る
も
の
と
し
て
、
小
粥
太
郎
「
債
務
不
履
行
の
帰
責
事
由
」
ジ
ュ
リ
一
三
一
八
号
(
二
〇
〇
六
年
)
一
一
七
頁
以
下
。
(
4
)「
民
法
の
一
部
を
改
正
す
る
法
律
案
」
内
閣
提
出
法
律
案
第
六
三
号
、
及
び
「
民
法
の
一
部
を
改
正
す
る
法
律
の
施
行
に
伴
う
関
係
法
律
の
整
備
等
に
関
す
る
法
律
案
」
同
六
四
号
は
、
二
〇
一
六
年
一
一
月
一
六
日
の
一
九
二
回
国
会
に
お
い
て
審
理
が
開
始
さ
れ
、
二
〇
一
七
年
五
月
二
六
日
に
参
議
院
本
会
議
に
お
い
て
可
決
・
成
立
し
、
平
成
二
九
年
六
月
二
日
法
律
第
四
四
号
と
し
て
公
布
さ
れ
た
。
二
〇
二
〇
年
四
月
一
日
の
施
行
が
予
定
さ
れ
て
い
る
。
(
5
)
本
稿
第
四
章
で
後
述
す
る
が
、
わ
が
国
の
伝
統
的
通
説
は
、
契
約
違
反
に
基
づ
く
損
害
賠
償
責
任
の
要
件
と
し
て
、(
ⅰ
)
債
務
の
本
旨
不
履
行
、(
ⅱ
)
債
務
者
の
故
意
・
過
失
ま
た
は
信
義
則
上
こ
れ
と
同
視
す
べ
き
事
由
を
掲
げ
て
お
り
、
過
失
責
任
主
義
を
採
用
し
て
い
た
。
こ
れ
に
対
し
て
、
法
制
審
議
会
民
法
(
債
権
関
係
)
部
会
で
は
、
契
約
違
反
に
基
づ
く
損
害
賠
償
責
任
の
帰
責
根
拠
を
「
過
失
責
任
の
原
則
」
か
ら
「
契
約
の
拘
束
力
」
へ
と
転
換
す
る
方
針
で
あ
る
こ
と
が
説
か
れ
た
。
民
法
(
債
権
法
)
改
正
検
討
委
員
会
編
『
詳
解
債
権
法
改
正
の
基
本
方
針
Ⅱ
契
約
お
よ
び
債
権
一
般
(
一
)』
商
事
法
務
(
二
〇
〇
九
年
)
二
四
四
、二
四
六-
二
四
七
頁
。
ま
た
、内
田
貴
『
債
権
法
の
新
時
代
─
─
「
債
権
法
改
正
の
基
本
方
針
」
の
概
要
─
─
』
商
事
法
務
(
二
〇
〇
九
年
)
八
二
頁
以
下
、
森
田
宏
樹
『
債
権
法
改
正
を
深
め
る
─
─
民
法
の
基
礎
理
論
の
深
化
の
た
め
に
─
─
』
有
斐
閣
(
二
〇
一
三
年
)
二
三
頁
以
下
も
参
照
。
(
6
)
本
稿
第
一
章
参
照
(
7
)「
不
可
抗
力
」
と
い
う
概
念
は
多
義
的
で
あ
る
が
、
わ
が
国
で
は
、
異
常
な
事
変
、
予
見
不
可
能
な
自
然
災
害
の
ほ
か
、
戦
乱
等
の
人
為
的
状
況
を
も
含
む
。
な
お
、
不
可
抗
力
は
免
責
事
由
で
あ
る
が
、「
無
過
失
(
債
務
者
に
過
失
が
な
い
こ
と
)」
と
は
同
一
視
さ
れ
な
い
こ
と
が
多
い
。
後
者
は
「
債
務
者
が
社
会
生
活
に
お
い
て
必
要
と
さ
れ
る
平
均
的
な
注
意
を
尽
く
し
た
こ
と
」
を
意
味
し
、
前
者
よ
り
も
広
い
概
念
で
あ
る
と
さ
れ
る
。
奥
田
昌
道
編
『
新
版
注
釈
民
法
(
一
〇
)
Ⅱ
債
権
(
一
)』
有
斐
閣
(
二
〇
一
一
年
)
一
七
〇
頁
以
下
〔
北
川
善
太
郎
=
潮
見
佳
男
執
筆
部
分
〕。
(
8
)
ア
メ
リ
カ
で
は
、
契
約
の
締
結
に
あ
た
っ
てforce majeure clause
(
不
可
抗
力
条
項
)
を
設
け
て
免
責
事
由
・
範
囲
を
広
げ
る
こ
と
が
一
般
的
な
慣
行
に
な
っ
て
い
る
た
め
、
契
約
文
言
上
こ
れ
を
規
定
し
な
い
場
合
に
は
却
っ
て
履
行
義
務
の
減
免
・
猶
予
が
狭
く
解
釈
さ
れ
る
傾
向
が
あ
る
。
平
野
晋
『
体
系
ア
メ
リ
カ
契
約
法
』
中
央
大
学
出
版
部
(
二
〇
〇
九
年
)
五
〇
二
頁
以
下
。 ( 9 )Restatement (Second) of Contracts § 261 (1981).
以
降
、
第
二
次
契
約
法
リ
ス
テ
イ
ト
メ
ン
ト
の
翻
訳
は
、
松
本
恒
雄
「
第
二
次
契
約
法
リ
ス
テ
イ
ト
メ
ン
ト
試
訳
(
一
)
~
(
五
・
完
)」
民
商
九
四
巻
四
号
一
一
一
頁
以
下
・
同
五
号
一
一
五
頁
以
下
・
同
六
号
一
一
五
頁
以
下
・
同
九
五
巻
一
号
一
三
六
頁
以
下
・
同
二
号
一
三
九
頁
以
下
(
い
ず
れ
も
一
九
八
六
年
)
に
よ
る
。
(
10
)
本
稿
第
二
章
、
及
び
第
三
章
参
照
。
(
11
)
こ
の
点
に
関
連
し
て
、
事
情
変
更
の
原
則
を
契
約
当
事
者
の
リ
ス
ク
配
分
の
場
面
と
し
て
と
ら
え
る
見
解
が
あ
る
。
吉
政
知
広
『
事
情
変
更
法
理
と
契
約
規
範
』
有
斐
閣
(
二
〇
一
四
年
)。
こ
れ
は
、
契
約
に
お
け
る
合
意
を
重
視
す
る
立
場
で
あ
り
、
契
約
責
任
の
帰
責
根
拠
を
合
意
の
違
反
の
み
に
求
め
る
立
場
と
親
和
的
で
あ
る
よ
う
に
思
わ
れ
る
。
し
か
し
、
と
り
わ
け
継
続
的
な
取
引
に
お
い
て
は
、
契
約
締
結
時
に
想
定
し
な
か
っ
た
事
態
が
出
来
す
る
こ
と
は
当
然
に
想
定
さ
れ
る
の
で
あ
り
、
合
意
の
時
点
で
対
応
し
な
か
っ
た
リ
ス
ク
は
負
う
べ
き
と
す
る
考
え
方
が
必
ず
し
も
妥
当
す
る
と
は
い
え
な
い
。
(
12
)
こ
こ
で
「
取
引
の
社
会
通
念
」
と
い
う
表
現
が
用
い
ら
れ
た
こ
と
に
つ
き
、
潮
見
は
、
免
責
事
由
が
契
約
当
事
者
の
主
観
的
意
思
の
み
に
よ
っ
て
定
ま
る
の
で
は
な
く
、
当
該
契
約
の
性
質
、
契
約
を
し
た
目
的
、
契
約
締
結
に
至
る
経
緯
そ
の
他
の
事
情
を
も
考
慮
し
て
定
ま
る
こ
と
が
あ
り
得
る
こ
と
を
示
す
た
め
で
あ
る
と
説
明
す
る
。
潮
見
佳
男
『
新
債
権
総
論
Ⅰ
』
信
山
社
(
二
〇
一
七
年
)
三
八
九-
三
八
〇
頁
。
も
っ
と
も
潮
見
自
身
は
「
取
引
の
社
会
通
念
」
と
い
う
表
現
に
つ
い
て
、
契
約
規
範
の
内
容
が
契
約
を
離
れ
て
確
定
さ
れ
得
る
と
の
誤
っ
た
印
象
を
与
え
る
と
危
惧
し
て
お
り
、
免
責
事
由
は
あ
く
ま
で
「
契
約
内
容
の
趣
旨
に
照
ら
し
て
定
ま
る
」
と
強
調
し
て
い
る
。
(
13
)
わ
が
国
に
お
い
て
も
、
契
約
の
拘
束
力
か
ら
帰
責
根
拠
を
導
く
場
合
、
単
純
に
当
事
者
が
契
約
に
お
い
て
明
示
的
に
引
き
受
け
た
こ
と
に
論 説
北法68(6・8)1332
第
二
節
考
察
の
対
象
と
分
析
の
視
角
本
稿
は
、
契
約
違
反
に
基
づ
く
救
済
の
一
場
面
に
お
け
る
実
質
的
な
責
任
判
断
ル
ー
ル
の
分
析
を
通
じ
、
契
約
責
任
の
有
無
や
責
任
内
容
を
決
定
す
る
規
範
を
い
か
に
と
ら
え
る
べ
き
か
を
問
う
も
の
で
あ
る
。研
究
の
手
法
と
し
て
ア
メ
リ
カ
契
約
法
と
の
比
較
法
研
究
を
選
択
し
、
特
に
、
ア
メ
リ
カ
契
約
法
に
お
い
て
近
年
盛
ん
に
議
論
さ
れ
て
い
るfault
に
関
す
る
研
究
と
、
関
連
す
る
裁
判
例
を
参
照
す
る
。
そ
の
う
え
で
、
わ
が
国
に
お
け
る
契
約
責
任
─
─
と
り
わ
け
、
契
約
違
反
に
基
づ
く
損
害
賠
償
責
任
─
─
の
規
定
と
そ
の
起
草
過
程
、
学
説
の
状
況
、
関
連
す
る
裁
判
例
の
分
析
を
通
じ
、
わ
が
国
の
契
約
責
任
法
理
を
理
解
す
る
に
あ
た
り
一
定
の
示
唆
を
得
る
こ
と
を
試
み
る
。
本
稿
の
検
討
対
象
及
び
位
置
づ
け
を
明
確
に
す
る
た
め
、
以
下
で
は
、
課
題
の
設
定
に
あ
た
っ
て
選
択
す
る
ア
プ
ロ
ー
チ
に
つ
い
て
、
ま
し
た
か
否
か
が
問
わ
れ
る
わ
け
で
は
な
い
と
言
及
さ
れ
て
い
る
。
む
し
ろ
、
当
事
者
が
契
約
に
お
い
て
何
を
引
受
け
て
い
た
の
か
、
契
約
解
釈
の
作
業
を
通
じ
て
確
定
す
る
こ
と
が
き
わ
め
て
重
要
と
な
る
と
の
指
摘
が
あ
る
。
小
粥
(
二
〇
〇
六
年
)・
前
掲
注
3
・
一
二
四
頁
。
小
粥
は
さ
ら
に
、
新
理
論
が
帰
責
根
拠
の
問
題
を
契
約
内
容
確
定
問
題
と
と
ら
え
た
後
に
、
そ
の
問
題
解
決
の
ツ
ー
ル
と
し
て
結
果
債
務
・
手
段
債
務
(
あ
る
い
は
、
与
え
る
債
務
・
な
す
債
務
)
の
類
型
区
分
が
持
ち
出
さ
れ
た
こ
と
は
必
然
で
あ
っ
た
と
述
べ
る
。
な
お
、
結
果
債
務
・
手
段
債
務
の
区
別
及
び
新
し
い
契
約
責
任
論
に
つ
い
て
は
、
本
稿
第
四
章
参
照
。
(
14
)
こ
の
点
に
関
連
し
て
、
長
野
史
寛
『
不
法
行
為
責
任
内
容
論
序
説
』
有
斐
閣
(
二
〇
一
七
年
)
は
、
不
法
行
為
に
基
づ
く
損
害
賠
償
責
任
の
内
容
を
確
定
す
る
規
範
─
─
「
責
任
内
容
画
定
規
範
」
─
─
を
検
討
す
る
も
の
で
あ
る
。
こ
こ
で
は
、
不
法
行
為
法
の
制
度
目
的
で
あ
る
「
権
利
の
保
障
」
を
基
準
と
し
た
責
任
内
容
の
算
出
が
試
み
ら
れ
る
。
こ
れ
は
、
不
法
行
為
法
に
お
け
る
「
権
利
の
保
障
内
容
」
と
は
何
か
解
釈
す
る
こ
と
に
他
な
ら
ず
、
契
約
違
反
に
基
づ
く
損
害
賠
償
の
場
面
に
お
い
て
合
意
内
容
を
─
─
個
々
の
契
約
の
背
景
を
考
慮
し
な
が
ら
─
─
解
釈
す
る
こ
と
で
契
約
責
任
を
決
定
す
る
考
え
方
と
重
な
る
と
こ
ろ
が
大
い
に
あ
る
よ
う
に
思
わ
れ
る
た
、
本
稿
に
お
い
て
扱
わ
れ
る
い
く
つ
か
の
重
要
な
概
念
に
つ
い
て
、
あ
ら
か
じ
め
整
理
し
て
お
く
。
一
ア
メ
リ
カ
契
約
法
に
お
け
るfault
論
ア
メ
リ
カ
法
に
お
い
て
契
約
責
任
は
伝
統
的
に
厳
格
責
任
で
あ
る
と
さ
れ
て
き
た
。
す
な
わ
ち
、
債
務
者
が
契
約
に
よ
っ
て
引
き
受
け
た
こ
と
に
反
す
れ
ば
、
そ
の
こ
と
を
も
っ
て
契
約
責
任
が
生
じ
る
こ
と
に
な
る
。
こ
れ
は
、
契
約
の
拘
束
力
を
重
視
す
る
わ
が
国
の
近
年
の
議
論
に
お
け
る
責
任
判
断
構
造
と
一
見
同
じ
構
造
を
採
用
し
て
い
る
か
の
よ
う
に
思
わ
れ
る
。し
か
し
近
年
の
ア
メ
リ
カ
契
約
法
学
を
み
る
と
、
契
約
責
任
を
厳
格
責
任
と
す
る
伝
統
的
法
理
に
動
揺
が
見
ら
)
(1
(
れ
、
学
説
上
の
議
論
が
続
い
て
い
)
(1
(
る
。
こ
こ
で
は
、
契
約
責
任
が
生
じ
る
か
ど
う
か
を
判
断
す
る
際
、
契
約
上
の
明
示
の
義
務
に
違
反
し
た
こ
と
の
み
に
着
目
す
る
の
で
は
な
く
、
そ
れ
以
外
の
何
ら
か
の
規
範
的
判
断
が
な
さ
れ
て
い
る
の
で
は
な
い
か
、
あ
る
い
は
な
さ
れ
る
べ
き
で
は
な
い
か
と
の
指
摘
が
な
さ
れ
て
い
)
(1
(
る
。
近
年
の
議
論
に
お
い
て
は
、
契
約
法
に
お
け
る
一
種
の
規
範
的
判
断
がfault
と
し
て
語
ら
れ
る
。fault
と
い
う
語
は
「
過
失
」
と
訳
さ
れ
る
こ
と
が
あ
る
)
(1
(
が
、
近
年
のfault
論
の
文
脈
で
は
、
い
わ
ゆ
る
注
意
義
務
違
反
と
し
て
の
過
失
を
意
味
す
る
も
の
と
し
て
論
じ
ら
れ
る
わ
け
で
は
な
い
。
こ
こ
で
は
、
債
務
者
が
契
約
責
任
を
負
う
根
拠
が
論
じ
ら
れ
、
と
り
わ
け
、
当
事
者
が
契
約
上
の
明
示
の
合
意
に
反
し
た
こ
と
以
外
の
帰
責
根
拠
がfault
と
し
て
扱
わ
れ
)
(1
(
る
。
契
約
責
任
の
有
無
の
判
断
に
あ
た
っ
て
は
、当
事
者
が
な
ぜ
そ
の
よ
う
な
行
動
を
と
っ
た
の
か
、
ど
の
よ
う
な
行
動
を
と
る
こ
と
が
合
理
的
に
期
待
さ
れ
て
い
た
か
が
検
討
さ
れ
る
。
わ
が
国
の
契
約
法
学
と
比
較
し
た
場
合
、
fault
論
は
、
損
害
賠
償
責
任
を
肯
定
す
る
要
件
と
し
て
債
務
の
不
履
行
に
加
え
て
債
務
者
の
過
失
を
要
求
す
る
、
わ
が
国
の
伝
統
的
通
説
で
あ
る
過
失
責
任
主
義
と
は
異
な
る
も
の
で
あ
)
11
(
る
。
ま
た
、fault
論
に
お
い
て
は
、
契
約
に
違
反
し
た
債
務
者
のfault
と
共
に
、
債
権
者
のfault
に
つ
い
て
も
言
及
が
な
さ
れ
て
い
る
点
に
注
意
が
必
要
で
あ
る
。
こ
こ
で
は
、
契
約
違
反
の
発
生
や
損
害
の
発
生
、
拡
大
に
つ
い
て
、
債
権
者
に
何
ら
か
の
寄
与
が
あ
る
場
合
が