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別除権協定の解除条件に関する合意の内容と協定失 効後の効果

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別除権協定の解除条件に関する合意の内容と協定失 効後の効果

著者 石橋 英典

雑誌名 同志社法學

巻 67

号 5

ページ 2405‑2427

発行年 2015‑09‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015618

(2)

    同志社法学 六七巻五号五五九二四〇五

平成二六年六月五日最高裁第一小法廷判決(平成二四年(受)第八八〇号、第八八一号、第八八二号配当異議事件、破棄自判)、民集六八巻五号四〇三頁

           

【事実の概要】

  平成一四年三月に再生手続開始の決定を受けた株式会社Aには、その当時、同社の工場などの土地建物(以下、﹁本件各不動産﹂とする)につき、B社(後に

Y

が承継)、C社(後に1

Y

が承継)、2

)。Aぞそ、で間のとらYはて別けかに月〇一らか月九れれ除本るすと﹂定協権除権各件別、﹁締協下を定結した(以 て年四一成平。たいれるすはたま権当抵さと抵者利権を)るすと根当ら権定設が)るすと﹂保権担各件本、﹁下以(﹂

Y

Y別社(以下、各除﹁権者をまとめて3

  本件各別除権協定では、①別除権の目的である本件各不動産の受戻価格がそれぞれ定められ、本件各担保権の被担保債権の額よりも減額された当該各受戻価格が被担保債権の額であることを確認する旨、②AはYらに対し、本件各受戻

( )

(3)

    同志社法学 六七巻五号五六〇二四〇六

価格の額を分割弁済する旨、③Aは本件各不動産を継続使用できるが、二回以上分割弁済を怠った場合は本件各不動産を明け渡し、Yらが本件各担保権を行使することに異議を述べない旨、④Aの分割弁済が完了すれば、本件各担保権が消滅することを確認する旨、⑤別除権によって担保されないこととなった被担保債権の減額分を別除権予定不足額として、本件各別除権協定書記載の金額とする旨、⑥本件各別除権協定は、再生計画認可の決定の効力が生じないことが確定すること、再生計画不認可の決定が確定することまたは再生手続廃止の決定がされることを解除条件とする旨などが定められていた。

  平成一四年九月、Aの再生計画認可の決定がなされ、その後確定し、平成一七年一〇月には、同決定が確定した後三年を経過したとして再生手続終結の決定がなされた。本件各別除権協定締結後、Aは受戻価格の分割弁済および上記⑤の別除権予定不足額につき、再生債権としての再生計画に従った弁済を続けていたが、それらの履行完了前に、Aの取締役が破産手続開始の申立てをしたことで、平成二〇年一月、破産手続開始の決定を受けることとなり、その破産管財人としてXが選任された。

  配当期日において、執行裁判所によって作成された本件各担保権にかかわる配当実施額は、本件各別除権協定の受戻価格の残金を超えるものであった。そこでXは、当該超過部分についてYらの配当受領権は存在しないと主張して、配当表の取消しを求める配当異議の訴えを提起した。

  原々審(松山地裁平成二三年三月一日判決・民集六八巻五号四二七頁)は、﹁本件各別除権協定は、再生債権である別除権の被担保債権のうち、別除権で担保されない部分⋮⋮を確定する合意(民事再生法八八条ただし書)を含むものであるから、これにより、⋮⋮再生債権である別除権の被担保債権のうち、別除権で担保される部分が当該物件ごとの受戻価格相当額に減額されるとの実体法的効果が生じたことになる﹂とし、また、この効果は、﹁別除権協定に基づく

(4)

    同志社法学 六七巻五号五六一二四〇七 再生債務者の弁済の不履行を理由に別除権者が同協定を解除したとしても、⋮⋮再生計画ないし再生手続が存続する限り、維持ないし固定されるものと解するのが相当である﹂とした。しかし、﹁このような実体法的な確定は、再生計画に基づく弁済のための手段に過ぎない﹂のであり、﹁再生計画の履行完了前に再生債務者に対する破産手続開始決定がされた場合には、⋮⋮もはや別除権で担保されない部分(別除権不足額)及び担保される部分(受戻価格相当額)を実体法的に確定しておく必要が失われているといえる﹂点、また、﹁別除権者としては、再生計画の履行完了前に再生債務者に対する破産手続開始決定がされた場合にまで、別除権協定による担保権の被担保債権の減額という実体法的な効果が維持ないし固定されることを想定して、別除権協定の締結に応じているとは考えにく﹂く、さらに、同効果が維持ないし固定されるとすると、﹁別除権者が別除権協定の締結に応ずることに躊躇する可能性がすくなくなく、かえって、再生債務者の事業継続及び再生計画の履行を困難にするおそれも否定できない﹂として、本件各別除権協定は当然に失効するため、Xの請求には理由がないとして棄却した。Xはこれに対し控訴した。

  原審(高松高裁平成二四年一月二〇日判決・民集六八巻五号四五四頁)は、原々審と同様に、別除権協定の締結によって被担保債権の額が受戻価格に減額された場合、実体法的にこれが確定するとしたが、本件各別除権協定の⑥に掲げる事由に本件は直接該当せず、これを例示と解すべき明確な根拠も見出しがたい点、いったん実体法上確定した別除権で担保される部分が変動するとすることは、民再法八八条、一八二条に定める不足額確定主義や、別除権不足額については再生計画に基づく支払いを受けてきていることなどの事実とそぐわない点、別除権不足額に相当する債権が担保されないものとされたのは、本件各別除権協定によってであり、再生計画によるものではないため、民再法一九〇条一項の適用はなく、また、民再法一九〇条の趣旨を、同規定とは根拠や趣旨を異にする別除権協定に基づく変更についてまで当然に及ぼすべきとする根拠に乏しい点などから、原々審の判断を取り消し、Xの配当異議を認めた。これに対し、

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    同志社法学 六七巻五号五六二二四〇八

Yらが上告した。

【判旨】

  破棄自判・控訴棄却。﹁前記事実関係によれば、本件各別除権協定書には、本件各別除権協定の解除条件として、再生計画認可の決定の効力が生じないことが確定すること、再生計画不認可の決定が確定すること又は再生手続廃止の決定がされることという記載(本件解除条件条項)がある一方で、その再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定がされることは明記されていない。しかし、本件各別除権協定の内容からすれば、本件各別除権協定は、再生債務者であるAにつき民事再生法の規定に従った再生計画の遂行を通じてその事業の再生が図られることを前提として、その実現を可能とするために締結されたものであることが明らかであり、そのため、再生計画の遂行を通じて事業の再生が図られるという前提が失われたというべき事由が生じたことを本件解除条件条項により解除条件としているのである。本件のように、再生計画認可の決定が確定した後三年を経過して再生手続終結の決定がされたが、その再生計画の履行完了前に破産手続開始の決定がされる場合は、もはや再生計画が遂行される見込みがなくなり上記の前提が失われた点において、再生手続廃止の決定がされてこれに伴い職権による破産手続開始の決定がされる場合(民事再生法一九四条、二五〇条一項参照)と異なるものではないといえる。また、本件各別除権協定の締結に際し、本件のように再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定がされた場合をあえて解除条件から除外する趣旨で、この場合を解除条件として本件解除条件条項中に明記しなかったものと解すべき事情もうかがわれない。

  そうすると、本件解除条件条項に係る合意は、契約当事者の意思を合理的に解釈すれば、Aがその再生計画の履行完

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    同志社法学 六七巻五号五六三二四〇九 了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定を受けた時から本件各別除権協定はその効力を失う旨の内容をも含むものと解するのが相当である。﹂

。﹂たこもれずいは額施実配れをさ載記に表当配件本、りれ当超けええいとるあに位地る得る受、をいからなYは配当ら よ計画お除件び本各別再生け、のでまる受を定決始開協権釈定評なに額たし除控を]注者に:さ基いてなづれた弁済額 2の締結前の額から前記A⑷の弁済額[協が破産手続定権、のてその結果、本各担保権件被は別担各件本除額の権債保 手本、らか時定決始開件続産破件本、は定協権除別除解っ条たしそ。るあできべういと件件失を力効のそりよに項条各   ﹁本了決の止廃続手生再に前完を行履の画計生再のそは定経、をらかるあでのもたけ受定ず決始開続手産破件本にA

。﹂こ審一第たし却棄をれ、決なが由理はに求請の判くは訴正るあできべ却棄をす控のX、らかるあで当 いてしそ。棄なれ免を破以、ば上説示したところによれ、X決は判趣もは上記の原旨をいうの論として理由があり、旨   ﹁断判の審原たし容認求を上請の人告上被、りな異とはに以、か。るあが反違の令法なら判明がこすぼ及を響影に決と

【批評】

1   は じ め に

  民事再生手続では、本件でも問題となった抵当権は別除権として扱われ、再生手続によらず行使することができる(民再法五三条)。しかし、別除権の目的となる財産は、再生債務者の事業再生にとって不可欠な財産であることが多く、手続外で別除権が行使されれば再生が困難となる場合が多い。そこで、民事再生法は、担保権実行手続の中止命令(民再法三一条)や担保権消滅請求制度(民再法一四八条以下)を用意しているが、前者は﹁相当な期間﹂という期間的な

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    同志社法学 六七巻五号五六四二四一〇

制約があり、後者は担保目的価額の一括弁済が前提とされているため、別除権の実行を止めるのは容易ではないとされている。そこで、再生手続外での別除権の行使を止めるために用いられているのが、いわゆる別除権協定である。別除権協定とは、別除権者と再生債務者などとの間で、別除権の基礎となる担保権の内容の変更、被担保債権の弁済方法、順調に弁済されている間の担保権実行禁止と弁済終了時の担保権の消滅などを定める合意のことであり、当該協定の締結如何が再生手続の成否を握るものであるとされている

)1

。ただし、民事再生法上、別除権協定については明文の規定が置かれていないため、その内容については、別除権者と再生債務者との合意によって自由に決めることができるとも考えられるが、別除権付再生債権も再生債権である以上、民事再生法上の諸原則との関係のもとで、その内容は判断されなければならないものとなる。

  このような別除権協定について、本判決で問題とされたのは、再生計画の履行完了前に破産手続が開始されるに至った場合の別除権協定の効力の帰趨についてである 2

。すなわち、本件各別除権協定において定められた協定の解除条件条項(本件各別除権協定⑥条項)には、破産手続開始決定が一つの事項として含まれていなかったことから、この場合においても本件各別除権協定が失効するのか否かが問題となった。また、この問題と関連し、特に、原審および原々審では、別除権協定が失効した場合における、同協定によって減額合意された被担保債権の額面が協定締結前の額面に戻るか否かも問題となっていた 3

  本件最高裁が主に問題としたのは、別除権協定の失効の成否に関する個別の契約の解釈の問題であることから、本判決を事例判決としてその射程を限定的に捉える見解もある 4

。しかし、本件は、別除権協定の効力の帰趨について初めて争われた事例であり、また、本件解除条件条項は、当時から公刊されていた代表的な書式集 5

と同様の文言が用いられている点や 6

、被担保債権の額面の帰趨についても言及している点などから、理論的・実務的に重要な意義を有する判例で

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    同志社法学 六七巻五号五六五二四一一 あるといえよう。

  そこで、本評釈では、別除権協定の効力に関する問題についての議論状況を概観しつつ、本判決の立場について検討していきたい。

2   別 除 権 協 定 失 効 後 の 被 担 保 債 権 の 帰 趨

⑴   学 説

  本件各別除権協定のように、別除権協定の締結によって、担保目的物の受戻価格(被担保債権の価額よりも下回る価額)が設定され、被担保債権を当該受戻価格まで減額することが合意された後に、再生計画の履行完了前に破産手続に移行するなどして同協定が失効した場合、減額合意された被担保債権の額は、別除権協定失効後も減額合意されたまま維持されるのか(固定説) 7

、それとも、別除権協定締結前の元の価額に戻るのか(復活説 8

)が問題となっており、両見解は鋭く対立している 9

。本件原審および原々審でも、この点が問題となっていた。

  両説は主に、ⅰ被担保債権の減額分(以下、﹁別除権不足額﹂とする)の確定をどのように捉えるか、ⅱ別除権協定が失効した後、どのような処理になるか、ⅲ別除権者と他の再生債権者の利益をどのように調整するか、という点で対立している。以下では、これらの点における両説の理解について整理していきたい。

ⅰ  別除権不足額の「確定」の趣旨   別除権協定では、被担保債権を受戻価格まで減額する条項と併せて、別除権によって担保されないこととなった被担

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    同志社法学 六七巻五号五六六二四一二

保債権の減額分を別除権不足額として確定する条項を設ける場合がある。これは、民事再生法では、別除権の行使によって弁済を受けることのできない債権の部分が確定した場合に限り、再生債権者としての権利行使が認められており(不足額責任主義、民再法八八条および一八二条)、再生手続開始後に担保されないこととなった場合にも、当該部分について再生債権者としてその権利を行使することができるとされていることから(同法八八条但書)、被担保債権につき、担保されないこととなった部分を確定することで、別除権不足額について、再生債権として再生計画に基づく弁済を受けるためであるとされる ₁₀

。問題は、別除権不足額の﹁確定﹂とは、いかなる場合に確定したといえるのかという点である。

  固定説では、この﹁確定﹂の趣旨を厳格に捉えている。すなわち、別除権協定の失効後に被担保債権が復活すれば、その後の別除権行使の結果によって不足額が変動することとなるため、不足額が確定したとはいえず、この場合、別除権者は民再法八八条但書や同法一八二条による権利行使は認められないと解すべきとしている ₁₁

。そのため、別除権協定が失効した場合に復活することを予定しているのであれば、別除権不足額について再生計画に基づく弁済を受ける条項を設けたとしても、当該条項は民事再生法八八条に反する違法なものと解すべきとされる ₁₂

  また、別除権協定の締結による被担保債権の減額についての変更登記の要否について、立法担当者は登記を必要としていたことから、立法者の立場としても、別除権協定の存在を前提としたものではないものの、被担保債権の減額の効果は実体法的にも確定されるべきであるとする、固定説に親和的な立場をとっていたとみることができよう ₁₃

。なお、近時では、ここでの登記を不要とする見解が有力であるが、これは、登記せずともその減額について対抗することができるということが理由となっているのであって、復活説の立場をとることの帰結として登記不要説が導かれているのではない ₁₄

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    同志社法学 六七巻五号五六七二四一三   他方、復活説は、﹁確定﹂の趣旨を比較的緩やかに解している。そこでは、再生債務者が協定に従った受戻しのための弁済を続ける限り、減額合意された金額を超えて弁済を受けることはできないことから、その意味で不足額は確定したとみることができる点、さらに、再生計画が履行されず再生計画が取り消された場合、あるいは、再生計画履行完了前に破産手続開始決定がなされた場合、再生計画によって変更された再生債権は原状に復する(民再法一八九条一項二号・七項、同法一九〇条一項)として、民事再生法自体が将来的な変更の可能性を認めていることから、変更の可能性を残していたとしても不足額の﹁確定﹂とは矛盾しない点を根拠とする見解がある ₁₅

。また、固定説のように解し、協定に基づく履行が完了していない段階で、被担保債権の減額の実体法的効果が認められることは、担保権の不可分性を著しく制約することから、協定に基づく弁済が完了するまでは被担保債権全額が別除権で担保されていると解すべきであるとする見解がある ₁₆

。他にも、民事再生法は破産手続と異なり、再生計画履行期間の一定の継続が予定される点、当該期間中、別除権者は再生計画に基づく弁済可能性を失うことなく別除権行使時期を選択できる地位にある点(民再法一六〇条一項)、根抵当権について仮払いおよび過払いの場合の清算を認める規定の存在から(民再法一六〇条二項、一六五条二項)、別除権協定失効時においてもこのような仮払措置を可能と解しうる点から、不足額を終局的に確定する必然性は乏しいとする見解もある ₁₇

  なお、この問題に関しては、民事再生法一八二条の﹁確定﹂の趣旨については明文上の根拠がなく、将来的変動がないことを要件とする趣旨と解釈する根拠は見当たらないことから、条文の解釈からは、固定説ないし復活説のいずれをとるべきか導くことはできないとの指摘もなされている ₁₈

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    同志社法学 六七巻五号五六八二四一四

ⅱ  別除権協定失効後の処理   次に、別除権協定が失効した場面における固定説・復活説の見解についてであるが、ここでは以下の︻設例︼を用いつつ概観することとしたい。

  ︻設例︼   被担保債権が一〇〇〇万円の抵当権につき、担保権者と再生債務者の間で担保目的物の受戻価格を六〇〇万円として、被担保債権を当該受戻価格まで減額し、別除権不足額を四〇〇万円とした上で、受戻価格については五年の均等分割(年一二〇万円)とする別除権協定が締結された。別除権不足額については、再生計画に基づき、再生債権の二割を五年の均等分割(年一六万円)で弁済することが決められた。その後、受戻金および再生計画に基づく弁済を二回分した後に再生債務者が破産手続開始の決定を受けたことで、別除権協定が失効し、担保権が実行されるに至った。担保権実行時、担保目的物の評価額は六〇〇万円のままであった。

  この場合、固定説によれば、別除権協定によって被担保債権の減額はその後の事情に左右されず確定するため、協定失効時の被担保債権額は六〇〇万円のままであり、担保権を実行した場合、担保権実行によって残額の三六〇万円を回収することができ、回収総額は六三二万円となる。他方、復活説であれば、別除権協定の失効によって、被担保債権額は一〇〇〇万円に復活し(残額は既払分を控除した七二八万円)、担保権実行によって六〇〇万円全てを回収することができ、回収総額は八七二万円となる。また、担保権実行時の担保目的物の評価額が八〇〇万円であった場合、固定説の総回収額は変わらず六三二万円となるが、復活説は担保権実行によって七二八万円回収し、総回収額として、一〇〇

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    同志社法学 六七巻五号五六九二四一五 〇万円全てを回収することができることとなる。

  このことから、固定説からは、復活説によった場合、再生計画履行中は再生債務者の一般財産を原資とする弁済を受けつつ、協定失効時には、担保権実行による担保目的物の交換価値の全額の弁済を受けることとなるが、これは二重取りを意味する点、また、別除権によって担保されているにもかかわらず、再生計画に基づく弁済を受けていたこととなるが、ここでの再生計画に基づく既払分の弁済額をそのまま受領するための説明に窮する点から、困難な問題が多いとの批判がなされている ₁₉

  この批判につき、特に、別除権協定失効時までの既払分をどのように扱うかについて、復活説ではいくつか応答がなされている。まず、民再法一九〇条一項を類推適用し、再生計画履行中における債務者からの弁済は、破産手続における中間配当として構成すべきであり、このように解したとしても、通常、競売価格は受戻価格よりも低額であり、競売により確定する別除権不足額は協定の約定で定めた債権額よりも大きくなるために支障はないとする見解がある ₂₀

。他には、別除権協定が失効した際に、清算をすることで、過剰に回収することを防ぐ見解がある。そこでは、担保目的物の処分代金とこれを前提に算定される別除権不足額に対する再生計画に基づく弁済による総回収額を算出し、この額が、別除権協定と担保権の実行による総回収額よりも低い場合には、当該余剰分を不当利得として破産管財人に返還すべきとする見解 ₂₁

と、根抵当権における仮払い・清算措置を定める民再法一六〇条二項および一六五条二項を、別除権一般においても類推し、別除権協定が失効した場合には当該清算措置を行うことを合意することで、既払分を受領できるとする見解がある ₂₂

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    同志社法学 六七巻五号五七〇二四一六

ⅲ  別除権者と他の再生債権者との利益の調整   固定説と復活説は、別除権協定において、別除権者と他の再生債権者の利益をどのように捉えるかについても見解の相違がみられる。

  固定説では、他の再生債権者の利益を重視しているといえる。すなわち、別除権協定の締結によって別除権不足額が確定することで、当該不足額については、再生債権者として権利を行使することができるようになり(不足額責任主義)、また、破産手続に移行するなどした場合、再生計画に基づく弁済の効力はその影響を受けないことから(民再法一九〇条一項但書)、別除権不足額の多寡は、他の再生債権者の議決権や再生計画に基づく弁済の額面に直接影響を及ぼすため、将来的に変更されるとなれば、他の再生債権者の利益を害しかねないため固定説を採用すべきとの指摘がある ₂₃

。また、再生計画履行中は一般財産から弁済を受け、別除権協定が失効し、別除権を実行することで担保目的物の売却額を全て回収してしまった場合、他の再生債権者の取り分はゼロとなる場合が考えられるが、これは明らかに不公平であるという指摘も存在する ₂₄

。このように、固定説は、復活説によった場合、他の再生債権者の権利が不当に害されることとなるため、手続的な公序の観点から、復活説によるべきではないと主張する。

  他方、復活説は、別除権者の立場を重視しているといえる。そこでは、当事者の意思の観点から、別除権者は、協定が履行されることを前提として利害得失を検討し、これを締結しているのであり、協定が履行されない場合、その責任は債務者にあるのであるから、別除権者が協定に不利に拘束されるのは当事者の意思に反すると解すべきであり、これは、一般の契約に関する社会通念にも合致するとの指摘がなされている ₂₅

。また、別除権協定による被担保債権の減額は、再生債務者の事業継続を前提としたいわば﹁犠牲﹂であって、本件のように破産手続に移行した場合には、再生債務者に協力する前提を欠くことから、被担保債権も復活させるべきであるとする見解もある ₂₆

。さらに、本件原々審も指摘す

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    同志社法学 六七巻五号五七一二四一七 るように、別除権協定が失効したとしても、被担保債権の額が減額されたまま固定されると解した場合、別除権者が別除権協定の締結に躊躇する可能性があり、別除権協定締結の成否が再生の可能性を大きく左右する以上、かえって再生債務者、ひいては他の再生債権者の不利益となりうることも指摘されている ₂₇

⑵   判 例 ― ― 原 審 ・ 原 々 審 の 立 場

  本件で問題となったような、別除権協定失効後の効力に関する最高裁の裁判例はこれまで公表されたものの中にないようであり、本件が最初の裁判例となった ₂₈

。そこで、ここでは、原審および原々審がどのような判断を下したかについて検討する。

  まず、原々審は、不足額責任主義の趣旨から、別除権不足額について再生計画に基づく弁済を受けるためには、﹁実体法的に確定することを要する﹂とし、協定に基づく債務の不履行によって別除権者が協定を解除したとしても、被担保債権の減額についての実体法的効果は固定されるとする。しかし、﹁このような実体法的な確定は、再生計画に基づく弁済のための手段にすぎないといえる﹂ことから、破産手続開始決定がされた場合には再生計画は当然に失効し、これによる権利の変更の効果も失われ、再生債権は原状に復することから、もはや、協定による実体法的な確定の必要性は失われているといえるとした。また、破産手続に移行しても、被担保債権の減額が維持されるとすれば、別除権者に別除権協定締結を躊躇させ、かえって再生債務者の再生を困難にする点、破産手続開始決定によって再生計画が失効している以上、再生計画が履行された場合との回収額の多寡を比較すること自体に意味はない点も指摘している。

  このように、原々審は復活説の立場をとっているといえる。しかし、別除権協定が解除されたとしても、被担保債権の減額の効果は、再生計画ないし再生手続が存続する限り維持されるとして、部分的に固定説を採用していることから、

(15)

    同志社法学 六七巻五号五七二二四一八

従来の復活説とは異なっており、独自の立場を示したと評価することができる。このことから、原々審の立場としては、被担保債権の減額の効果は﹁実体法的効果﹂というよりも、﹁手続法的効果﹂というべきとの指摘もなされている ₂₉

。ただし、原々審が指摘する、再生計画ないし再生手続が存続する限り減額の効果が維持されるとするのは、別除権者による解除の場合であるので、協定が失効した場合にも、その減額の実体法効果が維持されるかは明らかでない点には注意が必要である。

  これに対し、原審は、別除権不足額は実体法的に確定しているとした点については原々審と同様の見解に立ちつつも、実体法上確定した担保権で担保される部分が変動することは、民再法八八条、一八二条に定める不足額責任主義や再生計画に基づく弁済を受けてきたことなどの事実にそぐわない点、民再法一九〇条は、別除権協定によって減額された被担保債権が復活する趣旨を含むものではない点などを挙げ、Yらの主張を退けている。このことから、原審は、従来からの固定説と同様の立場に立っていると評価できよう。

3   本 判 決 の 立 場

⑴   本 判 決 の 位 置 づ け

  本件最高裁は、まず、本件解除条件条項は、﹁再生計画の遂行を通じて事業の再生が図られるという前提が失われたというべき事由が生じたことを本件解除条件条項により解除条件としている﹂こと、﹁再生計画の履行完了前に破産手続開始の決定がされる場合は、⋮⋮再生手続廃止の決定がされてこれに伴い職権による破産手続開始の決定がされる場合(民事再生法一九四条、二五〇条一項参照)と異なるものではない﹂こと、また、﹁再生計画の履行完了前に再生手

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    同志社法学 六七巻五号五七三二四一九 続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定がされた場合をあえて解除条件から除外する趣旨で、この場合を解除条件として本件解除条件条項中に明記しなかったものと解すべき事情もうかがわれない﹂ことから、契約当事者の意思を合理的に解釈することで、本件各別除権協定は失効するとした。

  このことから、本件最高裁によって、別除権協定における契約条項の解釈のあり方としては、当事者の合理的意思を解釈することで判断するということを示したものとして捉えることができよう。

  次に、原審・原々審でも争われた、協定失効後の被担保債権の減額の効力に関する問題については直接判断を下してはいない。しかし、別除権協定が解除条件成就により失効する帰結として、Yらの被担保債権の額は、協定締結前の額から別除権協定および再生計画に基づく弁済を控除した額となるため、Yらは執行裁判所の配当表に基づく配当を受ける立場にあるとして、Xの請求を棄却した原々審を正当として原審を破棄している。

  このことから、この点に関して、本判決をどのように位置づけるかについては見解が分かれており、被担保債権の額に関する最終的な帰結から、復活説の立場に立った判例と位置づける見解 ₃₀

がある一方で、その立場は未だ明らかではないとする見解もある。

  後者の見解の中には、本件は解除条件を定めた条項の解釈に関する事例判決であって、固定説・復活説の議論に直接影響しないとする見解や ₃₁

、本件最高裁は事実の概要において、本件各別除権条項⑤の別除権によって担保されないこととなる被担保債権の減額分を、﹁別除権予定不足額﹂とし、民再法九四条二項における額を意味するとしている点に着目し、同規定は不足額責任主義とは直接の関係を有しないことから、被担保債権減額の合意の時点では、不足額確定の趣旨を含まないものとして捉えることができるため、固定説とは必ずしも矛盾しないとする見解がある ₃₂

  このように、本判決をどのように位置づけるかについては見解が分かれているが、別除権協定の解除の効果として、

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    同志社法学 六七巻五号五七四二四二〇

被担保債権が復活することを結論として示している点、および、原審に差し戻すのではなく、破棄自判している点からも復活説に極めて親和的な立場に立っていると評価できよう。

  また復活説に立っているとした場合、その後の処理、すなわち、別除権協定および再生計画に基づく弁済の既払分の取り扱いについても最高裁の立場を読み取ることができる。前述のように、復活説に対する固定説からの批判として、被担保債権の復活を認めると、別除権協定履行中における再生債務者の一般財産からの弁済と協定失効後における別除権の行使による担保目的物の交換価値による弁済の二重取りを許すことになり、他の再生債権者の利益を害するとの指摘がなされ、復活説はこれに対し、清算による調整などによってこの問題への対処を試みていた。しかし、本判決は清算などの必要性については言及することなく、別除権協定および再生計画に基づく弁済を受けたまま、担保目的物の交換価値も受けることができるとしていることから、清算による調整などは必要ないとしたと捉えることもできよう。

⑵   残 さ れ た 問 題

  直前で述べたように、本判決が復活説の立場に立ったと言えるのか否か見解が分かれているところではあるが、復活説の立場を採用したと解したとしても、なお明らかでない点は多い。

  まず、本判決は結論として原々審の判決を正当としている点について、前述のように、原々審は、別除権協定が解除されたとしても、再生計画ないし再生手続が存続する限りは被担保債権減額の実体法的効果は維持ないし固定されるとの立場を示していたが、このことに関し最高裁がいかなる立場をとるかは明確ではない。

  また、別除権協定の失効と被担保債権の復活を担保権の不可分性との観点からどのように解すべきかについても明らかにはされていない。すなわち、別除権協定の締結時点で被担保債権は減額し、協定の失効によって被担保債権が復活

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    同志社法学 六七巻五号五七五二四二一 すると捉えるのか、それとも、別除権協定締結後も被担保債権額は締結前と変わらず、協定に基づく弁済が完了した時点ではじめて減額分の被担保債権が消滅すると捉えるのかは明らかではない。

  さらに、別除権協定および再生計画に基づく弁済の既払分について清算による調整などの必要はないと判断したと解するとしても、当該既払金を別除権協定失効後もそのまま保持できる根拠についても明らかではない。それゆえ、再生債務者からの不当利得返還請求の可能性は残されたままであり ₃₃

、固定説が指摘する二重取りの問題をいかに解決するかも、問題として残されたままである。

4   お わ り に

  別除権協定に関する問題について初めて判断を下した本判決が実務に与える影響は少なくないと思われる。   本判決を契機として、今後締結される別除権協定においては、解除条件をより明確にする必要性や、協定失効後の被担保債権額の帰趨についても明示する必要性が認識されることとなるであろう ₃₄

。しかし、別除権協定の締結の際には、別除権者が有利な立場にあり、また、本判決も別除権者に有利な判断を下したことから、他の再生債権者の利益とのバランスを考慮した協定が締結されるか否かは、再生債務者サイドの交渉力に依存することになりそうである。

  また、前述のように、本判決は固定説・復活説に関する問題について直接判断してはおらず、その射程を限定的に解する見解も多いことから、固定説・復活説の対立は今後も存続することになろう。

  固定説・復活説ともに解決すべき問題はいくつか残っている。例えば、固定説では、別除権協定によって減額された被担保債権が固定される根拠として、民再法八八条の不足額責任主義を挙げている。しかし、別除権協定によって被担

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    同志社法学 六七巻五号五七六二四二二

保債権が減額された場合、特に、︻設例︼のように、被担保債権の額を目的物の評価額にまで減額した場合、民事再生法八八条が要求する不足額が存在するのか否かが問題となりうる。すなわち、民再法八八条が要求する不足額とは、被担保債権と目的物の評価額との差額であると通常は考えられるが、別除権協定によって被担保債権を目的物評価額まで減額し、これが実体法的に確定したとする場合には、その差額がゼロとなるため、民再法八八条の適用範囲外になるとも考えられるのである。そうすると、民再法八八条により不足額が確定される裏返しとして、被担保債権が減額され、固定されると説明することができるかどうか疑問の残るところとなろう。

  この点に関しては、明確に被担保債権が減額されるとはせず、条項の文言を﹁担保される債権の範囲を担保目的物の評価額に相当する金額に限る﹂とする、あるいは、不足額の確定のみを条項にすることで、被担保債権額はそのままとなるため、民再法八八条にいう不足額を観念することは可能となろう ₃₅

。しかし、この場合、被担保債権は実体法上減額されていないことになるので、別除権協定が失効した際に、被担保債権が減額された額になることを説明することが難しくなると思われる。これを回避するため、協定の条項に、協定が失効した後も、協定によって確定した不足額については別除権によって担保されないままとなるといった条項を加えることで、固定説の目指す帰結を導くことが可能となると考えられる ₃₆

。ただし、これは、いかなる合意をするかという問題であるといえる。それゆえ、本件のように、固定説・復活説のいずれの立場に立つか明らかでない状態で協定を締結した場合にまで、協定の失効後も被担保債権は減額されたままであるということを、民再法八八条によって根拠づけることができるか否かについてはさらに検討する必要があろう。

  他方、復活説については、固定説からの批判、すなわち、別除権者に対する過大な弁済をいかに回避すべきかの問題が常に残ることとなる。過大な弁済について清算することでその問題が回避できるとしても、当該部分を不当利得と構

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    同志社法学 六七巻五号五七七二四二三 成した場合には、別除権者から残債権との相殺がなされた場合、これを防ぐことができるのか否か問題となりうる。また、根抵当権に関する仮払い・清算制度を類推する場合についても、これを協定締結時に合意しなければならないとすれば、結局は合意の問題であって、別除権者が応じない場合、あるいは、本件のように、失効後の効果まで意識せず協定が締結された場合には類推できないこととなり、過大な弁済を許してしまうこととなろう。

  また、固定説・復活説は、それぞれが想定する民事再生法における別除権協定のあるべき姿が異なっているということができそうである。すなわち、固定説においては、他の再生債権者との実質的平等を考慮することで、担保消滅請求制度の分割弁済版 ₃₇

、さらに言えば、更生担保権制度と同種のものを、別除権協定のあるべき姿と捉えているのに対し、復活説では、別除権協定締結の可否が再生の成功の鍵を握る以上、別除権者にとって締結しやすいような協定をあるべき姿として想定していると考えられる。

  冒頭でも述べたように、別除権協定に関する規定は民事再生法上には存在せず、担保権実行手続の中止命令(民再法三一条)や担保消滅請求制度(民再法一四八条以下)などの存在から、別除権といえども一定の制約を受けるものの、基本的には別除権として構成されている以上、これを強力にコントロールするためには、民再法八八条や手続上の一般原則だけでなく、やはり、明文上の規定が必要であり、立法によって解決されるべき問題であると思われる。

  このような観点で本判決を見ると、最高裁としても、別除権協定に関する法律上の規律がない以上、契約当事者の合理的意思の解釈が問題になるとして判断を下していると捉えることができることから、やはり、復活説に親和的な立場を示したと評価することができよう。

  ただし、前述したように、理論的には多くの問題が残されている以上、今後の同種の事件における最高裁の判断が待たれるところである。

参照

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