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看護師の感情規則の測定尺度の開発

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(1)

看護師の感情規則の測定尺度の開発

著者 北野 華奈恵, 長谷川 智子, 上原 佳子, 礪波 利圭 , 出村 佳美

雑誌名 福井大学医学部研究雑誌

巻 18

ページ 11‑19

発行年 2018‑01‑19

URL http://hdl.handle.net/10098/10344

(2)

Abstract:

Objective: The purpose of this study was to develop a feeling rules scale for nurses and to examine its reliability and validity.

Methods: The original feeling rules scale for nurses was developed based on an interview study and a comprehensive review of the literature. A revised version was developed based an examination of the content validity of the original scale. Subsequently, the revised questionnaire was distributed to 617 registered nurses who were employed in general hospitals to examine its reliability and validity.

Results: Exploratory factor analysis by principal factor method with promax rotation was performed. The following three factors comprised of 35 items were finally extracted: ―“perfectibility,”“familiarity” and “equality.” The reliability of the scale was confirmed by a Cronbach’s alpha of 0.95, and a test–retest reliability coefficient of 0.73. The criterion-related validity was confirmed by the three scales.

Conclusion: The reliability and validity of the feeling rules scale for nurses were confirmed.

Key Words: feeling rules, emotional labor, nurse, scale development

要旨:

目的:本研究の目的は,看護師の感情規則測定尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討することである。

方法:看護師の感情規則測定尺度原案はインタビュー調査と文献レビューに基づいて作成し,内容妥当性の検討を行い 修正したものを原案とした。その後,修正した調査票で,総合病院に勤務する617人の看護師に本調査を実施し,その 信頼性と妥当性を検討した。

結果:プロマックス回転を用いた主因子法による探索的因子分析を行った結果,3因子35項目が抽出され,「仕事遂行」

「親密性」「平等性」と命名された。尺度の信頼性はCronbachsα0.95であり,再テスト法では0.73の相関が得られた。

また,基準関連妥当性は3つの尺度によって確認された。

考察:看護師の感情規則測定尺度の信頼性と妥当性が確認された。

キーワード:感情規則,感情労働,看護師,尺度開発

看護師の感情規則の測定尺度の開発

北野華奈恵,長谷川智子,上原佳子,礪波利圭,出村佳美 看護学科 基礎看護学講座

Development of the Feeling Rules Scale for Nurses

KITANO, Kanae, HASEGAWA, Tomoko, UEHARA, Yoshiko, TONAMI, Rika, DEMURA, Yoshimi Department of Fundamental Nursing, Division of Nursing,

Faculty of Medical Sciences, University of Fukui

(3)

北野華奈恵,長谷川智子,上原佳子,礪波利圭,出村佳美

− 12 −

Ⅰ.緒言

 感情労働とは,自分の感情を誘発したり抑圧 したりしながら,相手の中に適切な精神状態を 作り出すために,自分の外見を維持すること(1) である。加えて,感情労働と呼ぶのは職業と して課せられる感情コントロールの事である(1) とも言われている。つまり,感情労働とは,職 業として相手が期待する感情に沿うよう,自 己の感情をコントロールし表現する行動であ る。看護師は疾患を抱えた患者が精神的な安 定を図れるよう,また円滑な治療を受けなが ら前向きに生活できるよう支えていく働きを 担っている。患者や他の医療職者との相互関 係を築きながらケアを提供していく看護師に とって,感情労働とは欠かすことのできない 業務のひとつであり中心ともいえる。

 しかし,過剰な感情労働は自己欺瞞,自己 乖離,バーンアウトを引き起こす危険性があ

[1-3],看護師の感情労働による精神的負担感

は大きいことが明らかになっている(4)。看護師 が自らの力で感情労働による精神的負担感を 軽減しバーンアウトを防ぎ,より良い人間関 係を築くためには,感情労働の教育の重要性 と必要性があり[5-7] ,感情労働の可視化を試み ている研究がいくつかみられるが(2)(8)(9) 具体的 な介入方法は確立されていない。

 看護師が感情労働を行う背景には,看護師 自身が持つ感情規則が存在する。感情規則と は,“私が感じること”と“感じるべきこと”

の“感じるべきこと”であり,感情規則は相 手が期待するその場において当然感じるとさ れるべき感情のこと(10)である。感情規則と感 情労働とは,相手が看護師に期待する感情に 沿うように看護師が感じる感情が感情規則で あり,感情規則を規範とし感情労働を行って いる関係にある(11)。看護師の感情規則はいく つかの研究で検討されており,看護師の感情 規則の中には,患者に対する思いやりや共感 を求める「感情性」と,組織的な秩序を維持 する冷静さと患者との距離感を求める「合理 性」の二側面が存在することが明らかになっ

ている[12-13]。しかし,それを可視化したもの

は見当たらない。感情労働によるバーンアウ

トや精神的負担感は,看護師自身が抱く感情 と感情規則の狭間で葛藤し感情のコントロー ルが不安定になることが要因のひとつと考え られる。そのため,看護師の感情労働からく る精神的負担感の軽減に繋がる方法を見出す には,感情労働の基盤となっている感情規則 の可視化が重要であると考える。

 そこで本研究では,感情労働の基盤となって いる感情規則の構成要素を抽出した上で,感 情規則の程度を測定する尺度を開発し、その 信頼性・妥当性を検討した。

Ⅱ.用語の定義

感情規則:対象者自身が看護師として,この ように感じなければいけない,行動しなけれ ばいけないと考えている規範や価値観とする。

Ⅲ.研究方法

 尺度の作成は,1.アイテムプールの作成,2.

内容妥当性の検討と尺度原案の修正,3.本調 査の手順で行った。

1.アイテムプールの作成

 A県内の総合病院に勤務する看護師18名に 半構成的面接法を実施したところ,看護師の 感情規則と判断できる29のサブカテゴリーが 抽出され,これをアイテムプールとした。次 に文献検討により抽出した51項目を加え合計 80項目から成る尺度原案を作成した。

 

2.内容妥当性の検討と尺度原案の修正

 臨床経験20年以上の看護師および教育研究 者など計6名に対し,尺度原案の適切性を問 う自由記述の質問紙調査を実施し内容妥当性 を検討し,言語の変更・追加・削除等を行った。

 加えて量的に内容妥当性の検討も実施した。

量 的 内 容 妥 当 性 の 測 定 に はContent Validity Index(CVI)(14) の手法を用い,質問紙の回答 形式を「1.適切ではない」から「4.適切で ある」の4件法とした。適切性の判断につい ては,3以上をつけた人数の割合を項目毎に算 出し,83%以上得られた場合を適切であると する。適切性が得られなかった項目は削除も

(4)

しくは文章表現の修正を行い,最終項目は合 計75項目(CVI 88.7%)となり,これを看護 師の感情規則測定尺度原案とした。

3. 本調査 1)対象者

 A県内の総合病院に勤務する看護師617名 とし,そのうち150名に対しては再テスト法 を1回目の調査から4週間後に実施した。また,

調査は入職の時期であったため,働きながら 培われるであろう感情規則について回答を求 めることはバイアスがかかると考え,新規採 用の看護師は対象より除外した。

2)質問紙の構成

(1)対象者の属性(性別,年齢)

(2)看護師の感情規則測定尺度原案

 回答形式は「0.全くない」から「3.とて もある」の 4件法とした。

(3)感情労働尺度

 この尺度は,荻野ら(2) によって開発された 感情労働の実施程度を測定する尺度であり、得 点が高いほど感情労働が多いと判断する。【患 者へのネガティブな感情表出】,【患者への共 感・ポジティブな感情表出】,【感情の不協和】,

【感情への敏感さ】の4下位尺度で構成されて おり,信頼性・妥当性は検証されている。感 情労働は感情規則による規範によって行われ ているため,感情規則測定尺度の測定概念と 感情労働の下位尺度とは正もしくは負の相関 があると考えられる。

(4)情動的共感性尺度

 この尺度は,加藤ら(15) によって開発された 他者の情動や感情に対する共感性を測定する 尺度であり、得点が高いほど下位尺度が表す 共感性が高いと判断する。【感情的暖かさ】,【感 情的冷淡さ】,【感情的被影響性】の3下位尺 度で構成されており,信頼性・妥当性は検証さ れている。患者への思いやりや共感を求める

「感情性」の感情規則測定項目と【感情的暖か さ】とは正の相関,秩序や冷静さを求める「合 理性」の感情規則測定項目と【感情的冷淡さ】

とは負の相関があると考えられる。

(5)コミュニケーションスキル尺度(ENDCOREs)  この尺度は,藤本ら(16) によって開発され た言語および非言語による直接的なコミュニ ケーションを適切に行う技能を測定する尺度 であり、得点が高いほどコミュニケーション が得意と判断する。【自己統制】,【表現力】,【解 読力】,【自己主張】,【他者受容】,【関係調整】

の6下位尺度で構成されており,信頼性・妥 当性は検証されている。感情労働もコミュニ ケーション技術のひとつであるため,自己に 存在する感情規則を基にコミュニケーション を行っていることが考えられるため,感情規 則測定尺度とは正の相関があると考えられる。

3)調査実施期間   2014年4月~6月

4)質問紙の配布および回収方法

 質問紙の配布は研究協力の同意を得られたA 県内の総合病院4施設に依頼し,個別返送に よる回収とした。

5)分析方法

 統計ソフトIBM SPSS Advanced Statistics 22 を使用し,以下の方法で分析した。

(1)項目分析

 天井効果とフロア効果,I-T分析,G-P分析,

各項目間相関分析を行った。

(2)因子分析

 項目分析で整理された項目をプロマックス 回転を用いた主因子法による探索的因子分析 を行った。

(3)信頼性の検討

 因子分析で抽出された尺度全体と各因子の

Cronbach’s α 係数を算出した。また,尺度の

安定性を確認するために約4週間の間をおい て再テストを実施し,1回目の因子得点との

Spearman相関係数を算出した。加えて,上下

位群の得点の比較をMann-Whitney U検定にて 行った。

(4)妥当性の検討

 基準関連妥当性として,感情規則測定尺度 との関連が予測される,感情労働尺度,情動

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北野華奈恵,長谷川智子,上原佳子,礪波利圭,出村佳美

− 14 − 的共感性尺度,コミュニケーションスキル尺 度(ENDCOREs)の得点とのSpearman相関係 数を算出した。

6)倫理的配慮

 福井大学医学部倫理審査委員会の承認(倫 審25第19号)を得て実施した。

 質問紙は無記名自記式とし,研究目的,概要,

研究協力は自由意思であること,不利益は被 らないこと,中断は可能であること,情報は ID化して取り扱い情報の保護を厳守すること などを書面に記載し,質問紙に回答し返送す ることで研究への同意とすることを明記した。

 再テスト対象者を連結可能匿名化にするた めのID番号の取り扱いとして,1回目用,再 テスト用質問紙には対象者の携帯番号下4桁 の記載を依頼した。返送後,ID化し,携帯番 号記載ページは速やかにシュレッダーにて廃 棄処分を行った。

Ⅳ.結果

1.対象者の属性

 対象者617名のうち,回収数554名(89.8%), 有効回答数518名(84.0%)であった。

  平 均 年 齢30.8±9.4歳, 男 性36名, 女 性 466名,不明16名であった。平均臨床経験年 数は8.9±8.7年で最長42年であった。

2.項目分析

 天井効果では,平均値±SDが3.0以上を示 す項目が7項目あり,削除項目とした。フロ ア効果では平均値±SDが1.0以下の項目が3 項目あったが,ヒストグラムは正規に近い分布 を示しており,削除不要と判断した。I-T分析 においては,基準値を0.4とし(17),それ以下の 数値を示した4項目を削除した。また,G-P分 析では,全ての上下群において有意差(p<0.01) が認められた。項目間相関分析では,r=0.7以 上を示した項目のなかで,相関し合う1項目 を削除対象とし,11項目を削除した。しかし,

r=0.7以上を示した「72.同僚の自尊心を傷つ

けない」と「73.患者の自尊心を傷つけない」

はどちらか削除するには判断がつかなかった

ため削除は見合わせ,因子分析の結果で検討 することとした。結果,項目分析では合計22 項目を削除した(表1)。

3.探索的因子分析と因子の命名

 項目分析の結果,残った53項目をプロマッ クス回転を用いた主因子法による因子分析を 行った。因子数の決定は,第3~4主成分で 累積寄与率が50%を超えることから3因子で 検討した。

 因子負荷量0.4以上を採択の基準とし,0.4 未満の質問項目を削除した。また,複数の因 子に高い負荷量を持つ項目も削除した。さら に,尺度の簡便性を高めるため,主因子法を 繰り返し,項目数が最小限になるよう整理し ていき,35項目3因子を採用し,看護師の感 情規則測定尺度とした。

 第1因子は14項目であり,仕事を円滑にミ スなくこなすために必要となる感情や態度を 表している感情規則であり,他の医療職者と の連携を遂行するために求められる内容を含 むため,「仕事遂行」と命名した。第2因子は 11項目であり,相手に共感し寄り添うときに 必要となる感情や態度を表す感情規則であり,

患者との親しい距離感を求める内容のため「親 密性」と命名した。第3因子は7項目であり,

相手と親しくなりすぎず教育や管理する立場 としての距離感や組織の秩序を保つために必 要な感情や態度を表す感情規則であり,患者 を特別視せず誰しも同様に接することを求め る内容であるため「平等性」と命名した。

4.信頼性の検討 1)内的整合性

 尺度全体と各下位尺度のCronbach’s α係数 を求めたところ,尺度全体はα=0.95,「仕事 遂行」はα=0.94,「親密性」はα=0.91,「平 等性」はα=0.84であり,内的整合性が確認さ れた(表2)。

2)再テスト法

 対象者150名のうち,回収数91名(60.7%), 有効回答数61名(40.7%)であった。

 各因子得点と合計得点の正規性を確認する

(6)

1 看護師の感情規則測定尺度原案の項目分析の結果

(7)

北野華奈恵,長谷川智子,上原佳子,礪波利圭,出村佳美

− 16 − ため,Shapiro-Wilkの検定を行ったところ,「仕 事 遂 行 」p=0.09,「 親 密 性 」p=0.05, 合 計 得

点p=0.07と正規性が認められたが,「平等性」

はp<0.01と正規性を認められなかったため,

Spearman相関係数を使用して関連性を検討し

た。尺度全体得点と各下位尺度得点の相関係 数を算出したところ,尺度全体ではr=0.73,「仕 事遂行」ではr=0.71,「親密性」ではr=0.62,「平 等性」ではr=0.67となり,いずれも有意差が

みられ(p<0.01),概ね尺度の安定性があるこ とが確認された。

3)上下位群との比較

 因子分析後の各下位尺度内の信頼性を再度 検討し精度の高さを確認するために,各下位 尺度の高い得点から75%を上位群,低い得点

から25%を下位群とし,上下間の比較をした

と こ ろ, 全 て の 下 位 尺 度 で 有 意 差(p<0.01)

が認められた。

5.妥当性の検討

 基準関連妥当性に使用する尺度の正規性を 確認するためShapiro-Wilkの検定を行った。感 情 労 働 尺 度 はp=0.010, 情 動 的 共 感 性 尺 度 はp<0.01, コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス キ ル 尺 度 ENDCOREsはp<0.01であり,いずれも5%未 満であり,正規性の分布ではないことを確認し たため,Spearman相関係数を使用して関連性 を検討した(表3)。感情規則測定尺度の下位 尺度と感情労働尺度の【患者への共感】とで はr=0.32~0.46(p<0.01)の中程度の相関が

みられたが,全体ではr=0.15(p<0.01)と弱 い相関であった。また,感情規則測定尺度の「親 密性」とでは【患者へのネガティブな感情表出】

でr=-0.28(p<0.01)の負の相関がみられた。

 情動的共感性尺度の【感情的暖かさ】とで はr=0.12~0.32(p<0.01)の弱い正の相関が みられ,【感情的冷淡さ】とはr=0.18~-0.29

(p<0.01)の弱い負の相関がみられた。

 コミュニケーションスキル尺度ENDCOREs とは,r=0.15~0.24(p<0.01)の弱い正の相 関がみられた。

2 看護師の感情規則測定尺度の因子構造

(8)

3 看護師の感情労働測定尺度との基準関連妥当性

Ⅴ . 考察

1.感情規則測定尺度の信頼性と妥当性

 信頼性の検討において,内的整合性では0.9 以上の信頼性係数が得られたこと,再テスト 法では0.6~0.7の有意な強い相関が得られた こと,各下位尺度得点の上位群と下位群で有 意差が確認されたことから,尺度の信頼性は 保証されたと考える。

 妥当性の検討においては,尺度原案の作成 段階での内容妥当性を質的・量的を併用し検 討した。質的な検討だけでなく量的妥当性を 検討したことにより,各項目の適切性の判断 における客観性を確保することが出来た。

 また,感情労働尺度,情動的共感性尺度,

コミュニケーションスキル尺度ENDCOREsな どの外的基準との有意な相関が得られ基準関 連妥当性が確認された。しかし,いずれの結 果も有意差はあるものの数値は低く,弱い相 関であったことから,妥当性に関するさらな る検証が必要であると考える。そのなかでも 今回の結果で本尺度の特徴を示すものとして,

感情規則測定尺度の相手に共感し寄り添うと きに必要となる感情や態度を表す「親密性」と,

その反対の内容を測定する感情労働尺度の【ネ ガティブな感情表出】や情動的共感性尺度の

【感情的冷淡さ】との間には,予測通り負の相 関がみられており,感情規則測定尺度の妥当 性を保証する結果であった。

 以上のことから,本尺度の信頼性と妥当性 は確認できたと考えられる。

2.感情規則の構成要素

 看護師の感情規則測定尺度を構成する因子 として,【仕事遂行】【親密性】【平等性】の3 因子が抽出された。

 緒言でも述べたように,看護師の感情規則 には「感情性」と「合理性」の相反する規則 が存在している[12-13]。看護師には患者が安心 して療養生活を過ごし治療に専念できるよう な関わりが求められる。そのため,武井は(4)“患 者に共感する”や“優しく親切にする”といっ た気配りや配慮の規範を表す「感情性」の感 情規則があると述べている。本研究でも“患 者に接するときはにこやかにする”“患者に優 しい”“患者に寄り添える存在でいる”など患 者に気遣い寄り添い,信頼関係が築けるよう な感情と態度の規則が11項目抽出され【親密 性】と命名した。

 また,“看護師は患者に特別な感情を抱いて はならならず均一で公平な関わりが求められ る”(18),“怒ったり大笑いしたり感情を出して はいけない”(4)といった患者との親密さとは反 する,距離を保ち,個人を特別視することな く平等に援助する規範を表す「合理性」が存 在しており,本研究では“患者・看護師の立 場を崩さない”“患者に対して個人的な感情は 持たない”“患者と一定の距離を保つ”など7 項目が抽出され【平等性】と命名した。

 しかし,先行研究にある「感情性」と「合理性」

のどちらの要素も含みつつ,どちらにも属さ ない,仕事を円滑にミスなくこなすために必 要となる感情や態度を表している感情規則が

(9)

北野華奈恵,長谷川智子,上原佳子,礪波利圭,出村佳美

− 18 − 14項目抽出された。崎山は(13) 経験を重ねた看 護師には,患者の気持ちに共感しながらも敢 えて冷たさを表出し,患者の自律を促す働き かけを行うといった「感情性」の規則を意識 しながらも「合理性」の規則へと変換してい く技法を身につけていくことを示唆している。

本研究での“いつも冷静さを保てる”“話しや すい雰囲気をつくる”“患者のニーズを的確に 判断する”“患者に急変など何かあったとして も他の患者に配慮する”などが相応している と考える。加えて,看護師は患者だけではなく,

他の医療職者との連携が不可欠であり,そこ でも感情労働を行っており,感情規則が存在 している。円滑で安全な職場の環境作りに必 要な感情規則の存在があることが示唆された。

3.研究の限界と今後の展望

 本研究では,信頼性と妥当性の検討を行っ てはいるもののまだ十分とは言い難い。因子 分析においては,探索的因子分析は実施した が,共分散構造分析による検証的因子分析は 実施できていないため,モデルの適合度が不 明である。また,妥当性の検討では,内容妥 当性と基準関連妥当性による既存尺度との検 証のみとなっているため,異なる対象者で比 較する構成概念妥当性や弁別的妥当性の検証 が必要である。

 感情労働には,表層演技と深層演技と呼ば れる2種類の演技が求められる(1)。表層演技は 実際の感情とは異なる感情を抱いたように振 る舞うことであり,深層演技は感情そのもの を変化させ,自発的にそう感じたと思い込ま せようとするものである(1)。つまり,表層演技 は実際に感じた感情を対象に悟られないよう 表情や身振り手振りで演技をすることであり,

深層演技は感じた感情そのものを違う感情に 自ら置き換えることである。これらの演技が バーンアウトを促進する要因になることも示 唆されている(9)。演技を行う際には,看護師で いる時はこうしなければならない,こうした ほうがいい,という自身に課した感情規則が 根底にあり,規則の度合いにより感情労働が 変化することが考えられ,それによる精神的

負担感の度合いも変化することが推測される。

 本研究では,感情労働の基盤となる感情規 則の可視化を目的に尺度を開発した。今後は,

尺度の精度を上げるとともに,看護師の感情 労働,および精神的負担感との関係性を明ら かにし,どの時点でどのような介入が必要と なるのか,その援助方法を検討するよう研究 を進めていく。

Ⅵ.結語

 今回,看護師の感情規則の測定尺度の開発 を試みた。その結果,3因子35項目が抽出さ れた。因子は,第Ⅰ因子【仕事遂行】,第Ⅱ因 子【親密性】,第Ⅲ因子【平等性】と命名され,

尺度の信頼性と妥当性が確認された。

謝辞:本研究にご理解とご協力を賜りました 対象者の皆様に心より感謝申し上げます。な お, 本 研 究 は,2012~2014年 度 科 学 研 究 費 助成事業学術研究助成基金助成金若手研究B

(24792389)の助成を受けたものである。また,

第18回日本看護医療学会学術集会にて発表し た一部を修正・加筆したものである。

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表 1  看護師の感情規則測定尺度原案の項目分析の結果
表 3  看護師の感情労働測定尺度との基準関連妥当性 Ⅴ . 考察 1.感情規則測定尺度の信頼性と妥当性  信頼性の検討において,内的整合性では 0.9 以上の信頼性係数が得られたこと,再テスト 法では 0.6 ~ 0.7 の有意な強い相関が得られた こと,各下位尺度得点の上位群と下位群で有 意差が確認されたことから,尺度の信頼性は 保証されたと考える。  妥当性の検討においては,尺度原案の作成 段階での内容妥当性を質的・量的を併用し検 討した。質的な検討だけでなく量的妥当性を 検討したことにより,各項目の

参照

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