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7陸Red Data Book of Wakayama Prefecture 産貝類 淡水産貝類

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陸産貝類・淡水産貝類

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陸産貝類・淡水産貝類の概要

和歌山県の貝類相の解明は比較的に進んでいるといっても過言ではない。本県のレッ ドデータブック登載の貝類は、海産の貝類を除く、陸産貝類、淡水産貝類(汽水域を含 む)が対象であるが、これらは開発等による環境破壊によって、その生息状況が厳しい 状態におかれているのが現状である。2001年に刊行された「和歌山県レッドデータブッ ク」を基礎にして、その後の現地調査・文献調査を実施して、陸産貝類と淡水産貝類を 本県のカテゴリーの定義によって、絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN):11種(2001年版:3種)、 絶滅危惧Ⅱ類(VU):11種(2001年版:2種)、準絶滅危惧(NT):5種(2001年版:6種)、 情報不足(DD):3種、学術的重要(SI):21種、総計51種を和歌山県の保全上重要な種 として選定した。2001年版の本県の「レッドデータブック」においては、カワネジガイ を「絶滅種」として選定していたが、その後の文献情報と現地調査により再確認された ので、本種を絶滅種から削除して絶滅危惧Ⅰ類に新たに選定した。また、環境の変化に よって絶滅危惧Ⅰ類や絶滅危惧Ⅱ類が大幅に増加したことも特徴である。陸産貝類と淡 水産貝類の選定・現状を下記に解説する。

陸産貝類

本県の陸産貝類相の研究は明治時代の末期に平瀬與一郎の採集人らによって比較的良 く調査をされていて本県は全国的にも著名な地域である。陸産貝類相は北部地域よりも 南部地域の方では種類が多く、また模式(タイプ)産地も多く知られている。「絶滅危 惧Ⅰ類」 として8種を指定した。2001年版ではナチマイマイとカスガコギセルの2種だっ たが、新規にマルクチコギセル、ヒラマキビロウドマイマイ、ケハダビロウドマイマイ、 カタマメマイマイ、ニクイロギセル、サナギガイの6種を追加した。ナチマイマイは那 智山とその周辺でしか生息していない種で、最近では人的撹乱(採取)などによって個 体数の激減がみられる。カスガコギセルは樹上性の種類で、紀北での1ケ所しか確認さ れていない。マルクチコギセルはカスガコギセルと同様に樹上性のキセルガイ科貝類で あるが、生息地域における特定樹が台風等の影響で枯死したりして生息環境が著しく悪 化してきているのが現状である。ヒラマキビロウドマイマイとケハダビロウドマイマイ のビロウドマイマイ類とニクイロギセルは元来個体数の少ない種類であるが、生息地域 における朽ち木や倒木の減少が、その生息を一層厳しくさせている。最近、本県から報 告のあったカタマメマイマイとサナギガイも生息環境の激変(開発と農耕地の放置など) でその生息は危機状況にある。「絶滅危惧Ⅱ類」は11種を選定したが、2001年版の2種に 比べて大幅に種類数が増加した。ベニゴマガイ、コンゴウクリイロベッコウ、ミツクリ ギセル、クロズギセル、シリブトギセルなどは2001年版の準絶滅危惧からの変更である。 これらの種は南部地方の固有種であって、その分布域は狭く、しかも生息個体数が極め て少ないものである。また環境省によって“絶滅のおそれのある地域個体群(LP)”に 指定されていた北方系のパツラマイマイも、本県の山岳地帯の一部から見出されたので、 陸産貝類・淡水産貝類

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南限分布の個体群と考えられるので新たに加わった。「準絶滅危惧」としてはクチマガ リマイマイ、ヒメタマゴマイマイ、ホソヒメギセルなど5種が指定されたが、いずれも その分布域が狭く、個体数が僅少である。「情報不足」の3種(サドヤマトガイ、ハベキ ビ、キイキビ)は、本県での生息域の確認が遅れ、これらの情報収集が遅れている種類 である。さらに2001年版でも選定したが、本県の保全上重要な陸産貝類の中で多くの種 類数を「学術的重要」として21種を選定した。これらの種は現状において絶滅の危険は ないが、本県が模式(タイプ)産地であったり、分布上から重要種ということから今回 も選んだものである。

淡水産貝類(汽水域を含む)

淡水貝類相は急峻な地形の中を流れる河川とその河口域、小さな池・沼が生息環境で あるが、本県では全体的に貧弱な貝類相である。2001年の本県の「レッドデータブック」 ではカワネジガイを「絶滅種」として指定した。しかし、2001年に岩出市のため池で確 認されたものの、その個体数は極めて僅少であった。過去に有田市地蔵堂、かつらぎ町 笠田で記録があったが、洪水で環境が変化したために生息場所が特定できず、本種を「絶 滅種」としていただけに、再確認は朗報であった。また、ワカウラツボも絶滅に瀕して いる本県に縁のある汽水域の種であるが、詳細な調査によって辛うじて模式(タイプ) 産地で再確認されていることもうれしいかぎりである。本種は近年において広川町でも 確認された。分布的にみて重要種として、ホラアナミジンニナ(タニガワミジンニナ)、 ウミゴマツボ、タケノコカワニナ、マツカサガイを「学術的重要」として選定した。       (湊  宏・池辺 進一) 陸産貝類・淡水産貝類

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陸産貝類・淡水産貝類の掲載種

情報不足(DD)

 

サドヤマトガイ

 

ハベキビ

 

キイキビ  

学術的重要(SI)

 ホラアナミジンニナ  ウミゴマツボ  イノウエヤマトガイ  タケノコカワニナ  キイゴマガイ  ソウジマミジンマイマイ  キイツムガタギセル  コハゲギセル  コスジギセル  ジェイギセル  シロバリギセル  カギヒダギセル  イトカケギセル  ヒロクチコギセル  オオヒラベッコウ  ムロマイマイ  アラハダヒロベソマイマイ  キイオオベソマイマイ  タシナミオトメマイマイ  シゲオマイマイ  マツカサガイ

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

 ワカウラツボ  ツブカワザンショウガイ  カワネジガイ  サナギガイ  ニクイロギセル  マルクチコギセル  カスガコギセル  ケハダビロウドマイマイ  ヒラマキビロウドマイマイ  カタマメマイマイ  ナチマイマイ

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

 フネアマガイ  ベニゴマガイ  ノミガイ  ミツクリギセル  クロズギセル  シリブトギセル  コンゴウクリイロベッコウ  パツラマイマイ  アナナシマイマイ  ツヤマイマイ  ヒメビロウドマイマイ

準絶滅危惧(NT)

 ヤマトキバサナギガイ  ホソヒメギセル  キヌツヤベッコウ  ヒメタマゴマイマイ  クチマガリマイマイ 陸産貝類・淡水産貝類

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ワカウラツボ

Iravadia

(

Fairbankia

)

sakaguchii

(Kuroda & Habe, 1954)

ニナ目(中腹足目) カワグチツボ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 1954年に和歌浦(三葛)産として記載されたが、長い間確認されなかった。しかし、熱 心な研究者によって近年、同地において再確認された。また広川町からも記録された。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻高5㎜)、紡錘形状、堅固。殻皮は小豆色や橙褐色、時には黄白色、黒褐 色など変異がある。体層は殻高の60%を占める。伊勢湾から瀬戸内海、有明海の干潟、 内湾、河口域に生息する。 分 布 状 況 模式産地(和歌浦)のほか、広川町広川でのみ確認されている。 生 息 条 件 内湾干潟、河口域(汽水域)の泥や砂泥に半ば埋まる岩、または堆積したゴミの下など に付着している。 学術的価値 記載された当時は新亜属Wakauraiaが使用された。かつては、ワカウラツボ科に所属され たことがあった。 減少の原因 内湾干潟とそれに続く河口域の環境悪化(汚染)による生息地の減少。 特 記 事 項 最初の発見地「和歌浦」を和名に冠する本県を代表する汽水産貝類。 文 献 番 号 4、6、7、8、13、16、48

ツブカワザンショウガイ

Angustassiminea estuarina

(Habe, 1946)

ニナ目(中腹足目) カワザンショウガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 準絶滅危惧(NT) 国 - 選定の理由 本県の那智勝浦町浦神の湾奥が模式産地であるが、その狭い生息地が著しく変わり、生 息地が破壊されてしまった。また、他の生息地でも河口域の環境が悪化して本種の絶滅 が危惧される。 種 の 概 要 貝殻は微小(殻高2㎜)、カワザンショウガイの幼貝と混同されるが、本種は明らかに臍 孔があることで、識別される。 分 布 状 況 模式産地(那智勝浦町浦神)のほか、広川町和田、有田市箕島から記録がある。 生 息 条 件 河口の汽水域の砂地、岸辺などで生息する。 学術的価値 本種は最初に本県で見つかった種(模式産地)であるが、生息地が多くなく、絶滅に瀕 している汽水域の貝である。 減少の原因 汽水域の環境が悪化して、本種の生息地が消えつつある。 文 献 番 号 5、6、16、43

カワネジガイ

Camptoceras hirasei

Walker, 1919

モノアラガイ目(基眼目) ヒラマキガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 絶  滅(EX) 国 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 選定の理由 本県では2、3の場所で記録されていた。過去の洪水などによる環境悪化でその後確認が できず、「絶滅」と認定していたが、2002年に新しい生息地がみつかった。 陸産貝類・淡水産貝類

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分 布 状 況 本県では過去に2ケ所で記録されていたが、洪水で生息地を失った。しかし、紀北地域で 新たに生息地が確認されたものの、その環境も悪化して生息が厳しい。 生 息 条 件 水に生育する植物の枯れ茎や落ち葉に付着しているが、極めて少ない。 学術的価値 全国的に13都府県から記録があるが、絶滅に瀕している。個体群の消長が激しい種である。 本県では絶滅と判定していたが、近年に岩出市で再発見された。 減少の原因 都市化のよる生息地の環境悪化、本県では自然災害により生息地が失われた。また、希 種のために人為的な乱獲による減少。 文 献 番 号 6、15、16、29、46

サナギガイ

Pupilla

(

Gibbulinopsis

)

cryptodon

(Heude, 1882)

マイマイ目(柄眼目) サナギガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 - 国 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 選定の理由 中国(模式産地:江蘇省)、朝鮮半島などの大陸にも分布している。わが国では西日本の10 県から記録がある。海浜性植物群落などに生息するが、生息地の破壊で絶滅に瀕している。 種 の 概 要 貝殻は微小(殻高3.5㎜、殻径1.7㎜)、円筒形状、薄質だが堅固。螺層は約5.5層。殻口外 唇の内部には一対の円錐形状の小突起がある。また、内唇の内側に2個、さらに軸唇の奥 まった部分にも突起がある。臍孔は開くが狭い。 分 布 状 況 本県では2ケ所(由良町白崎、白浜町瀬戸)から記録があるが、採取された個体数は、そ れぞれ極めて少ない。 生 息 条 件 砂浜の草地や海岸域の海浜性植物群落の落ち葉層に生息している。 学術的価値 大陸遺存型の本種は、わが国では西日本に点々と分布する。本県では近年、白崎の石灰 岩地で確認された。 減少の原因 海岸地域における開発による生息地の破壊(白崎の場合は石灰岩の採掘)。 特 記 事 項 大陸遺存型分布をする種である。 文 献 番 号 44、49

ニクイロギセル

Placeophaedusa expansilabris carnea

(Kuroda & Abe, 1980)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 - 国 - 選定の理由 かつて本県ではチビギセルの小型として報告されていたが、近年に再検討された結果、 徳島県山岳地帯から記載されたニクイロギセルであることが報告された(湊, 2009)。本 県の高野山~大塔山系に分布するが、個体数は極めて少ない。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻高10 ~ 14㎜)で比較的堅固な紡錘形状。殻表の成長脈はごく細かく、新 鮮な個体では和名のように赤褐色(肉色)。下板は前面観では殻口からは見えにくい。主 襞のほかに、傾いた月状襞は上腔襞と下腔襞と連結して「エ」字形となる。 分 布 状 況 高野山、護摩壇山系、果無山系、大塔山系などの山岳地帯(ブナ林)に分布。 生 息 条 件 ブナ林などの林下の朽ち木などに付着しているが、極めて少ない。 学術的価値 本県ではチビギセルの小型として取り扱われていたが、模式産地の徳島県の山岳地帯に 分布する本種に同定された。近隣の奈良県の山岳地帯にも点々と生息している。 陸産貝類・淡水産貝類

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減少の原因 もともと生息個体数が少ない上に、生息地の広葉樹林の減少による朽ち木の不足、森林 環境の荒廃など複合的な要因による。

文 献 番 号 31、39

マルクチコギセル

Pictophaedusa holotrema

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 国 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 選定の理由 本県を模式産地(那智)とする樹上性のキセルガイで、生息地が限定され、極めて希産 である。かつてブナ林などに多く生息していたが、過去には伐採等により生息地の自然 環境が悪化して絶滅に瀕している。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻高13 ~ 14㎜)、その殻表には細かい成長脈が走るが、螺層の上部は淡黄 白色の縞模様をめぐらして、下部の褐色の部分と対比して美麗である。上板が欠如して いるので、和名(マルクチ)のように殻口は円い。 分 布 状 況 山岳地帯の那智山系、大塔山系、果無山系、護摩壇山系から記録がある。 生 息 条 件 本種はブナ、トチノキ、サワグルミなど古木(樹幹)のコケの間や樹の割れ目などにお いて生息する。乾燥期にはその中に隠れるので見つけにくい。 学術的価値 主に紀伊半島(和歌山県・奈良県)・九州中部(熊本県・宮崎県)の山岳地帯に分布する。 襲速紀要素型分布をする種類。 減少の原因 山岳地帯の自然林の伐採による生息地域の縮小。人為的撹乱(乱獲)。 文 献 番 号 25、30、31、34、46

カスガコギセル

Pictophaedusa holotrema

(Moellendorff, 1882)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 国 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 選定の理由 奈良県春日山を模式産地とするが、関西地方の各地でも点々と生息地が知られている。 樹上性の本種は生息する樹木も限られるので、どこにもいるという種類ではない。夏季 には樹幹に付着しているのが、絶滅に瀕している地域も少なくない。 種 の 概 要 貝殻が小形(殻高11 ~ 13.5㎜)のキセルガイ。殻表は黄褐色を呈し、各螺層の上部は淡 黄色系の縞模様をめぐらす。殻口が洋梨形状で、その上板は不完全であるが、わずかに 膨れる。 分 布 状 況 本県においては唯1ケ所、紀美野町の一部に限って生息する。 生 息 条 件 樹幹にコケ類が繁茂している古木が理想的な生息環境である。 学術的価値 生息地域が極端に少ない上に、近年は樹上性のキセルガイ類が著しく減少して、絶滅に 瀕している。全国的に生息域が少ない。 減少の原因 台風などの自然災害による古木の倒壊と森林内の環境の悪化と荒廃。乱獲。 特 記 事 項 大阪府との県境の和泉山系の岩湧山、和泉葛城山などのブナ林にかつては生息していた が、近年は確認できておらず、絶滅の可能性が高い。 文 献 番 号 25、30、34、43 陸産貝類・淡水産貝類

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ケハダビロウドマイマイ

Nipponochloritis fragilis

(Gude, 1900)

マイマイ目(柄眼目) ニッポンマイマイ科

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 - 国 準絶滅危惧(NT) 選定の理由 本県での生息域が北部の山岳地帯のみであること、個体数が極めて少ないことが種的な 特徴。森林環境の変化によって安定した生息環境が少なくなってきている。 種 の 概 要 貝殻は殻高1.2㎜、殻径1.8㎜で殻質は薄い。螺塔が低く、体層が大きい。殻表は短毛で覆 われ、毛間の密度は粗い。臍孔が狭く開く。殻口縁は薄くて、肥厚しない。生殖器の鞭 状器は極めて小さい。 分 布 状 況 近畿地方に広く分布するが、本県では和泉山系、高野~護摩壇山系、果無山系などの山 岳地帯でのみ記録されている。 生 息 条 件 広葉樹林内の朽ち木の下などに付着し、潜んでいることが多い。 学術的価値 主に近畿地方を中心に分布するビロウドマイマイ類であるが、どの地域においてもその 個体数が少ない。湿った朽ち木などに生息する。 減少の原因 生息環境が限定されるので、そのような環境が少なくなっている。 特 記 事 項 本種の模式産地は京都。 文 献 番 号 33

ヒラマキビロウドマイマイ

Nipponochloritis hirasei

(Pilsbry , 1902)

マイマイ目(柄眼目) ニッポンマイマイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 古座川町蔵土を模式産地とする本種は、もともと生息地域が極めて少ない上に個体数も 少ない種である。本県の固有種。 種 の 概 要 貝殻は殻高9㎜、殻径18㎜、低平で薄質、平巻き状に螺層が巻く。殻頂部はかすかに窪む。 殻表には殻毛が規則的に配列し、その間隔が広いために殻毛の密度の状況は粗い。殻口 縁は薄くてかすかに反曲する。臍孔は殻長径の1/5を占める。 分 布 状 況 県南部に限って生息しているが、個体数は多くはない。 生 息 条 件 森林下の朽ちた木の下や岩陰などにおいて生息している。 学術的価値 低平な貝殻を有していること、広い臍孔をもつことで、日本産ビロウドマイマイ類の中 では特異な種類である。 減少の原因 もともと個体数が少ないうえに、生息地である森林環境の変化による。 文 献 番 号 24、31、33

カタマメマイマイ

Lepidopisum conospira

(Pfeiffer, 1851)

マイマイ目(柄眼目) オナジマイマイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 - 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 全国的にも記録の少ない種で、18都県から記録されている。その生息地は飛び地的であ ること、個体数が少ないこと、生息環境が草地であることが特徴。本県では有田市初島 町・地ノ島で、わずか1個体しか採取されていない(湊 ほか, 2009)。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻高5.2㎜ , 殻径5.9㎜)、球状の円錐形で、螺層は5.5層。新鮮な個体では殻 表は麟片状の殻皮で覆われるが、多くははげ落ちていることが多い。九州の北部、中国、 関西、中部、関東西部から記録がある。 陸産貝類・淡水産貝類

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分 布 状 況 有田市初島町・地ノ島のみでしか、確認されていない。 生 息 条 件 海岸地域、河川敷のいわゆる草地。初島町の地ノ島では耕作放棄畑の一角。 学術的価値 殻表に麟片状の殻皮をもつこと、生殖器に矢嚢を欠くことなどが特徴。 減少の原因 常時一定の場所で生息が維持しないことが多く、時には個体群が消滅することがあるが、 その原因は不明である。謎の多い種群である。 特 記 事 項 本種は海外の朝鮮半島(平壌)、中国(安東)でも記録されている。 文 献 番 号 44

ナチマイマイ

Euhadra nachicola

Kuroda, 1929

マイマイ目(柄眼目) オナジマイマイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)

旧県 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 国 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 選定の理由 模式産地は那智。極めて狭い地域に種分化したマイマイ属の固有種である。収集家によ る採取によってその生息状況が厳しく、かつ個体数が減少傾向にある。 種 の 概 要 貝殻は大形(殻高20.5㎜ , 殻径50㎜)のマイマイ。殻表は濃赤褐色、平滑で光沢がある。 火炎彩模様はない。軟体部に黒褐色の斑点模様が点在する。夜行性のために、日中にお いては観察することが困難である。 分 布 状 況 那智山とその周辺でのみ生息。 生 息 条 件 森林下の巨岩の岩陰や古い石垣の窪みなどに隠れている。 学術的価値 極めて狭い地域で分化した種で、和名に“ナチ”を冠する本県の固有種。 減少の原因 生息している石垣の改修などの環境変化と収集家による乱獲。 特 記 事 項 「那智」を和名に冠する。美麗な色艶から、人気の高いマイマイ属である。 文 献 番 号 31、34、43

フネアマガイ

Septaria porcellana

(Linnaeus, 1758)

オキナエビス目(原始腹足目) フネアマガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 選定の理由 本種は屋久島以南では多く分布し、普通にみられるが、本州での記録は少ない。本県で は偶発的に見つかるが、極めて少ない。 種 の 概 要 貝殻は笠型、殻径20 ~ 25㎜。黄褐色の殻皮は黒褐色の網目や放射帯がある。殻は扁平で、 その殻口は大きい。蓋は足の中に埋没している。 分 布 状 況 日置川、富田川、南部川、広川町唐尾で記録されている。 生 息 条 件 河口の汽水域に生息するが、南方系の種類であるために、冬季の低温時に死滅する時が ある。 学術的価値 本県は本類の北限分布域である。 減少の原因 冬季に低温になる場合は死滅していることがある。個体数は少ない。 特 記 事 項 かつて、日高川河口域で類似種・ベッコウフネアマガイが記録されている。 文 献 番 号 6、9、16、19、22、43、50 陸産貝類・淡水産貝類

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ベニゴマガイ

Diplommatina

(

Benigoma

)

pudica

Pilsbry, 1902

ニナ目(中腹足目) ゴマガイ科

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 準絶滅危惧(NT) 国 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 選定の理由 那智が模式産地になっていて分布地域も局限されるとともに、いずれの地域においても 個体数が少なく生息密度は高くない。 種 の 概 要 貝殻は殻高3㎜と微小で赤褐色を呈する。螺層には細かい成長脈が走っているが、次体層 から上部の2 ~ 3層ではその間隔は広い。腔襞を欠く。 分 布 状 況 那智を中心にして、本種の分布・生息地はそう多くはない。 生 息 条 件 安定した自然林やスギの大木の繁る森が必要である。 学術的価値 ベニゴマガイ亜属(Benigoma)の主要分布域は奄美諸島~沖縄諸島であるが、紀伊半島~伊 豆半島にも飛地的に分布し、種分化の過程からも興味深い。 減少の原因 減少の原因については不明であるが、もともと個体数が少ない種である。 特 記 事 項 伊豆半島産はオオヤマベニゴマガイとされたが、本種とは同種である。 文 献 番 号 1、31

ノミガイ

Tornatellides boeningi

(Schmacker & Boettger, 1891)

マイマイ目(柄眼目) ノミガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 学術的重要(SI) 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 ノミガイ属は太平洋に広く分布する熱帯性の陸貝。本県では田辺湾の神島を含めて離島 で4カ所しか記録がなかったが、近年は由良町白崎で死殻が確認された。 種 の 概 要 貝殻は微小(殻高3㎜)、円錐形状で褐色。体層は大きい。殻口の外唇は単純で鋭い。内 唇の内部に伸びる螺状板がある。 分 布 状 況 九龍島、双島、神島、鹿島、白崎から記録がある。 生 息 条 件 夏季にカズラなどの植物に登るが、大半はその根元の落ち葉堆積中にいる。 学術的価値 熱帯系の種で本県は北限的生息地である。海岸地域のみに生息記録がある。 減少の原因 もともと個体数の少ない微小種で、減少の度合いについては不明。 特 記 事 項 かつて、神島で多産したが、環境が悪化して生息が危惧される。 文 献 番 号 11、20、27、35、36、42

ミツクリギセル

Megalophaedusa mitsukurii

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 準絶滅危惧(NT) 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 大塔山系の富里を模式産地とする大形のキセルガイ科貝類。本県南部に限って分布し、 現在まで20ケ所しか生息地が確認されていない。本県の固有種。 種 の 概 要 貝殻はキセルガイ科貝類の中では大形(殻高27 ~ 34㎜)。新鮮な個体では紫褐色を呈す るが、主として礫など堆積中に生息するため、老成すると殻皮が剥げ落ちている個体が 多い。オオギセルに比較して小形である。 分 布 状 況 県南部に点々と分布している。同所的にオオギセルと混棲する。 陸産貝類・淡水産貝類

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生 息 条 件 自然林やスギ林の繁る林内の斜面の礫堆積地、落ち葉堆積中に生息する。 学術的価値 本種は形態的にはオオギセルに近似する。同所的に両種が生息し、混棲している場合、 ミツクリギセルは個体数が多い。紀南地域の固有種。 減少の原因 生息場所である自然林やスギ林などの伐採による生息環境の破壊。 特 記 事 項 オオギセルとは生殖器の形態比較で識別できる(湊, 1966)。 文 献 番 号 17、23、24、30、34、41

クロズギセル

Mundiphaedusa

(

Mundiphaedusa

)

kurozuensis

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 準絶滅危惧(NT) 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 分布域が狭く、さらに生息環境が礫間に限定される。しかし、その様な環境が極めて少 ない。そして個体数も多くはない。本県南部の固有種。 種 の 概 要 貝殻は中形(殻高17 ~ 20㎜)、紡錘形状、その殻頂は鈍くて短太である。殻色は灰白色で、 生息環境(礫間)のために、殻表が腐食していることが多い。 分 布 状 況 古座川流域を中心に串本町、古座川町の10ケ所で記録された。 生 息 条 件 スギ林などの林床の礫が堆積している所に生息する。 学術的価値 模式産地・蔵土(くろず)を学名・和名にしている。 減少の原因 スギ林などの伐採による林床の乾燥化と人為的撹乱(乱獲)。 特 記 事 項 日本産キセルガイ科貝類の中でも、生息分布域が狭く、しかも礫堆積の深い所に生息す る特異なキセルガイである。 文 献 番 号 24、30、34、43

シリブトギセル

Mundiphaedusa

(

Mundiphaedusa

)

pachyspira

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 準絶滅危惧(NT) 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 生息地が礫堆積地という環境。このような環境があまり多くはなく、分布地が限られる。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻高13 ~ 15㎜)、棍棒形状、殻頂は大きくて鈍いので「シリブト」の和名になっ ている。殻色は淡黄白色を呈する。 分 布 状 況 熊野川流域(新宮市)から、奈良県南部、三重県の一部に分布。 生 息 条 件 森林内の礫が堆積している斜面の中に生息する。 学術的価値 模式産地は新宮市熊野川町宮井。クロズギセルと同様に礫堆積中に生息する紀伊半島固 有亜種。 減少の原因 生息地が道路の工事などによって破壊され、個体数が減少した事例がある。 特 記 事 項 生息環境がクロズギセルと類似しているが、分布域はそれぞれ離れていて、本種との生 息競合が確認されていない。 文 献 番 号 24、30、34、43 陸産貝類・淡水産貝類

(12)

コンゴウクリイロベッコウ

Japanochlamys crenata

Kuroda & Azuma, 1982

マイマイ目(柄眼目) ベッコウマイマイ科

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 準絶滅危惧(NT) 国 情報不足(DD) 選定の理由 個体数が少なく、しかも分布情報も少ない種。調査にいってもすぐ採集できるような種 ではない。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻径7㎜)、低い円錐形状、殻表は平滑で光沢が強い。殻色は角褐色。臍孔 は小さく、外へ拡がった軸唇によって半分程度がおおわれる。 分 布 状 況 本県では山岳地帯(護摩壇山系、果無山系)でのみ確認されている。 生 息 条 件 ブナ林の落ち葉堆積中や朽ち木の下などの湿度が常に保たれていること。 学術的価値 模式産地は大阪府金剛山のブナ林。紀伊半島の山岳地帯に点々と生息していると思われ るが、生息情報は極めて少ない。 減少の原因 もともと個体数の少ない種のために、生息などの詳細については不明である。 特 記 事 項 6種いるクリイロベッコウ属の1種として記載されたが、今後においては近縁種との再検 討が必要であると考えられる。 文 献 番 号 14

パツラマイマイ

Discus pauper

(Gould, 1859)

マイマイ目(柄眼目) パツラマイマイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 - 国 - 選定の理由 北方系(シベリア~千島)の陸産貝類。わが国では本州の中部以北に広く分布するが、 関西地方の山岳地帯には点々と分布が知られ、本県でも2ケ所から記録がある。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻高3.5 ~ 4㎜、殻径6.5 ~ 8㎜)、円錐形状、殻表に細かい縦肋が顕著であ る。殻色は暗褐色。体層周縁はやや角ばる。殻口縁は薄くて反曲しない。臍孔は広く開き、 殻径の1/3を占める。 分 布 状 況 関西地方では紀伊半島の山岳地帯。本県では高野山、大塔山に分布。 生 息 条 件 ブナ林などで倒木の樹幹、樹皮に付着している。時には多産する。 学術的価値 本県の生息地を含めて関西以西の個体群は、北方系の本種の南限個体群として極めて貴 重である。 減少の原因 北方系種であるために、高野山や大塔山では個体数が極めて少なく、減少の要因などは 解明されていない。 特 記 事 項 関西以西における分布記録は、中国地方では大山、四国では剣山山系の甚吉森で記録さ れているのみである。 文 献 番 号 38

アナナシマイマイ

Satsuma

(

Satsuma

)

cristata

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) ニッポンマイマイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 学術的重要(SI) 国 準絶滅危惧(NT) 選定の理由 那智を模式産地とする本種は、紀南地方に広く分布するものの、生息密度が高くない。 紀伊半島南部の固有種。 陸産貝類・淡水産貝類

(13)

種 の 概 要 貝殻は小形(殻径16㎜前後)、殻底の臍孔は完全に閉じるので和名の由来になっている。 体層周縁は円くて淡褐色の色帯を巡らしている。  分 布 状 況 県南部の海岸地域から内陸まで広く分布するが、個体数は多くはない。 生 息 条 件 よく繁った森林の林床の湿った落ち葉層や下草の間に生息する。 学術的価値 本県の南部域に限って生息する臍孔の閉じるニッポンマイマイ属の固有種。 減少の原因 具体的に減少していることは把握していないが、相対的に個体数は少ない。 特 記 事 項 本県南部産の同じニッポンマイマイ属のツヤマイマイに比べて、光沢が鈍いこと、臍孔 が閉じることで識別される。 文 献 番 号 24、31、36、43

ツヤマイマイ

Satsuma

(

Satsuma

)

selasia

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) ニッポンマイマイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 学術的重要(SI) 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 アナナシマイマイとともに本県を代表する固有種だが、杉林の伐採などによって生息環 境が悪化しており、個体数も減少傾向にある。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻径17㎜前後)で、低い円錐形状を呈する。色帯は認められない。殻底の 臍孔は明瞭に開く。琥珀色の殻表には光沢がある。 分 布 状 況 本種はアナナシマイマイよりも分布域が狭く、海岸地域よりも内陸部に生息している。 生 息 条 件 豊かに繁ったスギ林等の林床の礫や落ち葉堆積地に生息している。 学術的価値 那智を模式産地とする本県の固有種。 減少の原因 安定したスギ林等の伐採によって環境が大きく変化した。 特 記 事 項 臍孔が明瞭であることによってアナナシマイマイとは識別される。 文 献 番 号 24、31、43

ヒメビロウドマイマイ

Nipponochloritis perpunctatus

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) ニッポンマイマイ科 和歌山県カテゴリー

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

旧県 - 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 生息密度は低く、個体数が少ない。採集などによって、さらに個体数が減じ、絶滅が危 惧される。本県でも広く生息しているが、これまでのところ、10ケ所程度しか確認され ていない。 種 の 概 要 本種の貝殻は極めて薄い。本属の他種と比較として、殻表に細毛が短くて細く密生する こと、臍孔がほとんど閉じられていること、生殖器の鞭状器の形態が極めて小さく痕跡 的などの特徴がある。 分 布 状 況 中部地方から近畿に分布。本県では広く分布する。 生 息 条 件 原生林的な広葉樹林下に生息し、主に倒木や朽ち木の下などに潜んでいる。 学術的価値 模式産地は奈良県十津川。本種は本属の多種に比べて、殻毛が短くて細く密生すること、 臍孔を閉じること、生殖器の鞭状器が小形であることによって相違する。 減少の原因 生息地の森林などの荒廃や伐採による環境の改変と採集圧による激減。 陸産貝類・淡水産貝類

(14)

ヤマトキバサナギガイ

Vertigo japonica

Pilsbry & Hirase, 1904

マイマイ目(柄眼目) キバサナギガイ科

準絶滅危惧(NT)

旧県 - 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 微小種のために全国的にも報告された記録が少ない。本県では海岸地域を中心にして、3 ケ所から記録がある。 種 の 概 要 貝殻は微小(殻高2㎜、殻径1㎜)、円筒形状、淡褐色。螺層は5層。殻口内に4歯(内唇に1、 軸唇に1、外唇に2)がある。 分 布 状 況 串本町双島、由良町白崎、新宮市熊野川町鎌塚でのみ記録があるだけである。 生 息 条 件 森林下の落ち葉層に生息するが、群棲しないので確認することが難しい。 学術的価値 本種は北海道、本州、四国と広域に分布するが、記録は多くない。 減少の原因 減少の度合いについては把握していない。個体数は少ない。 特 記 事 項 双島においては、過去にキバサナギガイと同定したが、再同定の結果、本種に変更され た(湊, 2007)。 文 献 番 号 18、35

ホソヒメギセル

Tyrannophaedusa

(

Aulacophaedusa

)

gracilispira

(Moellendorff, 1882)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

準絶滅危惧(NT)

旧県 - 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 小形のキセルガイで殻口の上部に小さな切れ込みがあるのを特徴として亜属名を提唱さ れた模式種。本県でも那智のほか、多くは確認されていない。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻高8 ~ 10㎜)、殻口の上板右側に1個の切れ込みがある。 分 布 状 況 県内に広く分布するが、記録が少ない。近畿~中国~九州北部。 生 息 条 件 古木の根元や朽ち木の割れ目や洞う ろなどに生息する。 学術的価値 本種の模式産地は神戸。貝殻の特徴から亜属を提唱された模式種である。 減少の原因 具体的に減少傾向は把握されていないが、生息する古木などの減少があってあまり確認 されていない。 特 記 事 項 本種に類似しているモリサキギセル近似種B(シロモリサキギセル)などが、最近に報告 されている。(湊・室原, 2011) 文 献 番 号 30、31、47

キヌツヤベッコウ

Nipponochlamys semisericata

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) ベッコウマイマイ科 和歌山県カテゴリー

準絶滅危惧(NT)

旧県 学術的重要(SI) 国 情報不足(DD) 選定の理由 本種が最初に採集された所が、古座川町蔵土(模式産地)である。この種をタイプとし てハクサンベッコウ属(Nipponochlamys)が提唱された。個体数が少ない。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻径5㎜)、赤褐色で絹肌のような光沢がある(和名の由来)。螺塔はやや低く、 体層の周縁は円い。殻底に明瞭な臍孔が開く。殻口の唇縁は薄い。 分 布 状 況 県内では点々と記録されているが、小さい個体のために見つけにくい。 生 息 条 件 広葉樹林やスギ林の林床の朽ち木や厚く積もった落ち葉層の中に棲む。 陸産貝類・淡水産貝類

(15)

学術的価値 属のタイプ種として重要。本州(西部)と四国に分布記録がある。

減少の原因 減少の度合いは不明であるが、生息環境の変化と樹木の伐採が影響するものと思う。 文 献 番 号 24、31

ヒメタマゴマイマイ

Satsuma

(

Satsuma

)

pagodula

(Ehrmann, 1900)

マイマイ目(柄眼目) ニッポンマイマイ科 和歌山県カテゴリー

準絶滅危惧(NT)

旧県 - 国 準絶滅危惧(NT) 選定の理由 近畿南部(主に和歌山県、奈良県)に分布。田畑、人家の周辺をめぐる林縁地域に生息 するが、土地造成などの開発によって近年は生息地が失われることが多い。 種 の 概 要 貝殻は中形(殻高14 ~ 18㎜)で円錐形状、淡黄褐色。常に色帯を欠く。体層の周縁は円い。 臍孔は閉じる。 分 布 状 況 県中・北部~奈良県南部(模式産地:五条市野原町)。 生 息 条 件 自然度の高い地域の人家・田畑の周辺の低木、草木の林床などで生息する。 学術的価値 本種はヤマタカマイマイに類似するが、それよりも小形で色帯を欠くので、識別される。 減少の原因 人家に近い所に生息地域があることが多いために、人間生活の影響(開発など)で生息 地が荒廃することが多い。 特 記 事 項 本県での確認されている南限域は田辺市本宮町。 文 献 番 号 8、46

クチマガリマイマイ

Aegista

(

Coelorus

)

cavicollis

(Pilsbry, 1900)

マイマイ目(柄眼目) オナジマイマイ科 和歌山県カテゴリー

準絶滅危惧(NT)

旧県 - 国 準絶滅危惧(NT) 選定の理由 オナジマイマイ科の中では、小形で殻口が下降し、その形態が特異である。本県では点々 と生息地が知られる。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻径6 ~ 7㎜)、黄褐色、円錐形状。螺管は密に巻く。殻表は細かい殻毛が ビロード状に覆う。殻口は下降している。臍孔は広くて深い。 分 布 状 況 近畿地方に分布し、田辺市以北で記録があるが、生息地は局限される。 生 息 条 件 田畑や神社、人家周辺の草むら、落ち葉堆積中などで生息している。 学術的価値 クチマガリマイマイ亜属の模式種で、近畿以西では4種が記録されている。 減少の原因 本種の生息地は森林地帯よりも人家周辺に多いので、宅地開発などで影響が出て、生息 地が狭まっている。 文 献 番 号 26

サドヤマトガイ

Japonia sadoensis

Pilsbry & Hirase, 1903

ニナ目(中腹足目) ヤマタニシ科 和歌山県カテゴリー

情報不足(DD)

旧県 - 国 - 陸産貝類・淡水産貝類

(16)

文 献 番 号 1、8

ハベキビ

Parakaliella habei

(Kuroda, 1944)

マイマイ目(柄眼目) ベッコウマイマイ科 和歌山県カテゴリー

情報不足(DD)

旧県 情報不足(DD) 国 - 選定の理由 田辺市神島(模式産地)で記載された殻径2.7㎜の微小貝。殻表は絹光沢を持ち、体層の 周縁は明瞭である。分類の難しいハリマキビ属に所属していること、微小な陸貝である ことから、模式産地以外からの情報が知られていない。要検討種。 文 献 番 号 11、24、27

キイキビ

Trochochlamys kiiensis

(Azuma, 1960)

マイマイ目(柄眼目) ベッコウマイマイ科 和歌山県カテゴリー

情報不足(DD)

旧県 情報不足(DD) 国 情報不足(DD) 選定の理由 新宮市熊野川町田戸を模式産地とするカサキビ属。貝殻は微小(殻径5㎜前後)で円錐形 状を呈し、体層の周縁の角は鋭くて明瞭である。南部の山岳地帯から時々採集されるも のの、個体数が少ない種である。 文 献 番 号 1、27

ホラアナミジンニナ

Moria nipponica

Mori, 1937

ニナ目(中腹足目) ヌマツボ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 洞窟や渓流などに生息するが、本県では渓流から確認され、亜種・タニガワミジンニナB. (M.) n. minatoi Habe, 1965として記載された。 種 の 概 要 貝殻は微小(殻高1.5㎜)、黄白色。本県産の亜種は基亜種と比べてやや大きいので識別さ れたが、今では基亜種のシノニムとされ現在に至っている。 分 布 状 況 富田川の支流・高瀬川奥地(タニガワミジンニナの模式産地)、田辺市深谷、五味、富里、 有田川町上湯川で記録されている。 生 息 条 件 山間地の小さな流れや湿地のコケの間(石の裏)などに生息。 学術的価値 ヒコサンミジンニナのように、紀伊半島での渓流で初めて採取された記念すべき微小淡 水貝。 減少の原因 山間地における生息地に適した渓流が、林道の工事などで生息場所が縮小された。 特 記 事 項 四国、九州北部、紀伊半島に分布するが、それぞれの個体群のDNA等による分子系統解 析が必要と考える。 文 献 番 号 6、7、16

ウミゴマツボ

Stenothyra edogawensis

(Yokoyama, 1927)

ニナ目(中腹足目) ミズゴマツボ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 選定の理由 河口、内湾干潟に広く分布するが、環境悪化により、本県では生息しなくなったところ もある。 陸産貝類・淡水産貝類

(17)

種 の 概 要 貝殻は微小(殻高2㎜)、殻口は狭まって小さくなる。殻表に微細な刻点列の螺溝がある。 本州(東京湾)から九州までの干潟泥底に生息する。 分 布 状 況 和歌山市中之島、紀の川、三葛、和歌川、和歌の浦、海南市船尾、田辺市文里湾から記 録がある。 生 息 条 件 河口域の汽水域、干潟の泥地に多い。 学術的価値 田辺湾種は小型で、ミジンウミゴマツボ S. tanabensis Kuroda, 1962 として記載されたが、 本種と同種である。 減少の原因 田辺湾文里の環境の悪化(干潟の減少等)によって、ミジンウミゴマツボは近年では生 息が確認されていない。 特 記 事 項 日本産の本類では最も小型である。別名はエドガワミズゴマツボともいう。 文 献 番 号 12

イノウエヤマトガイ

Japonia inouei

Kuroda & Habe, 1961

ニナ目(中腹足目) ヤマタニシ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 ヤマトガイ属の中でスプーン状の殻皮付属物をもつこと、分布域が広いにもかかわらず 生息密度が極めて低いことで希産種に数えることができる。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻径4 ~ 4.8㎜)、円錐形状で螺層は6層。体層では殻皮質の板状襞が走り、 その周縁に先端が広がった殻皮付属物が2列でている。 分 布 状 況 県内に広く分布するものの、全体的に個体数が少ない。 生 息 条 件 森林下の細かい礫と落ち葉堆積中に生息する。 学術的価値 模式産地は県境の大阪府阪南市山中渓。しかし、分布の中心は本県にある。 減少の原因 もともと個体数が少ない種のため減少の度合いについては不明。 特 記 事 項 種名は井上光雄(元県教育長)を記念して献名された。 文 献 番 号 21、31、40

タケノコカワニナ

Stenomelania rufescens

(Martens, 1860)

ニナ目(中腹足目) トウガタカワニナ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 - 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 本県では生息する河川は多くはない。河口の汽水域付近の砂・泥底に生息して泥の上を 這っていることが多い。汽水域全体には生息していなく、局所的である。 種 の 概 要 貝殻は大形(殻高50㎜前後)、殻頂部は浸食によって欠落していることが多い。殻色は濃 褐色~赤褐色で鈍い光沢がある。 分 布 状 況 紀の川、広川町西広、富田川、日置川の河口域で生息が確認されている。 生 息 条 件 流れが緩やかな泥底が生息地域である。 学術的価値 南方系のカワニナで、本県では限定された地域しか確認されていない。 減少の原因 都市化や河口域の環境の悪化による生息地の破壊。 陸産貝類・淡水産貝類

(18)

キイゴマガイ

Diplommatina

(

Sinica

)

kiiensis

Pilsbry, 1902

ニナ目(中腹足目) ゴマガイ科

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 選定の理由 那智を模式産地とするゴマガイ科貝類。豊かな自然環境をもつ森林に生息している。本 県の代表的なゴマガイ類である。 種 の 概 要 貝殻は微小(殻高3.3㎜)、円筒状の円錐形を呈する。螺層は6.5層。体層の内部にある腔 襞は非常に長い。 分 布 状 況 模式産地・那智を中心して、九龍島(湊, 2007)、紀伊大島(湊, 2009)の南紀の離島等に 広く分布する。 生 息 条 件 比較的安定した森林の落ち葉堆積中に生息。 減少の原因 減少の現況については不明。ただし、森林の伐採などの荒廃が要因と考えられる。 文 献 番 号 24、31

ソウジマミジンマイマイ

Vallonia pulchella

(O. F. Műller, 1774)

マイマイ目(柄眼目) ミジンマイマイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 選定の理由 和名のように双島が唯一の生息地で、日本各地においても確認されていない。 種 の 概 要 貝殻は殻径2㎜と微小。ミジンマイマイに似るが、殻表の細かい縦肋を欠く。殻表は平滑 で油光沢をおびる。 分 布 状 況 串本町田子の双島のみ分布が確認されている。 生 息 条 件 海浜性植物の生育する海岸の礫間に生息していて、石の裏面に付着している。 学術的価値 殻表が平滑なミジンマイマイ。双島は日本で唯一の生息地である。 減少の原因 海岸に生息地があるために、台風等によって海岸が荒廃すると減少する。 特 記 事 項 当初は V. excentrica Sterki, 1892 と同定した(湊, 1970)が、その後の再検討により、学 名が変更された(湊, 2005b)。 文 献 番 号 18、35

キイツムガタギセル

Pinguiphaedusa pinguis pinguis

(A. Adams, 1868)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 選定の理由 紀伊大島を模式産地とする基亜種で、別亜種であるツムガタギセルP. p. platyderaに比べ て著しく小形である。紀伊大島の固有亜種。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻高14 ~ 15㎜)、紡錘形で短太。月状襞があって、その下部は折れ曲がっ た下腔襞の中程に連結する。 分 布 状 況 串本町大島(紀伊大島)にのみ知られる。 生 息 条 件 倒木や朽ち木などがある林内が生息のための条件である。 学術的価値 紀伊大島で著しく小形化した基亜種で、別亜種とは貝殻の大きさや生殖器から識別され る。 減少の原因 生息地は狭い地域であるため、乱獲などによって減少してきている。 陸産貝類・淡水産貝類

(19)

特 記 事 項 那智などには小形でずんぐりした型が生息するが、生殖器の一部の形態は大島産とは異 なり、湊(2009)では基亜種は紀伊大島産にのみ適応されるとした。

文 献 番 号 30、40

コハゲギセル

Pinguiphaedusa attrita infausta

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 選定の理由 基亜種・ハゲギセルP. a. attritaに近似するが、貝殻と生殖器の形態などから識別される。 模式産地は那智で、紀伊半島南部の固有亜種。 種 の 概 要 貝殻は中形から大形(殻高23 ~ 31㎜)、基亜種に比べて小形であること、殻口の唇縁に 下軸板が出現しないことで異なる。 分 布 状 況 紀伊半島南部に広く分布する。 生 息 条 件 林床の礫間と落ち葉堆積中に生息。 学術的価値 基亜種・ハゲギセルの紀伊半島南部で分化した亜種である。 減少の原因 森林の荒廃が大きな要因になると思われる。 特 記 事 項 串本町産で記載されたカンダギセルは本亜種のシノニム(異名)である。 文 献 番 号 24、30

コスジギセル

Tyrannophaedusa

(

Tyrannophaedusa

)

plicilabris

(A. Adams, 1868)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 準絶滅危惧(NT) 選定の理由 模式産地・田辺湾神島では極めて多く生息するが、他の地域では個体数が少ない。 種 の 概 要 貝殻は小形から中形(殻高14 ~ 16㎜)、紡錘形。殻表の成長脈は顕著で淡黄褐色を呈する。 上・下腔襞は月状襞と連結して「エ」字形となる。 分 布 状 況 県内では点々と分布している。生息地は多くない。 生 息 条 件 本種は朽ち木や倒木に付着していることが多いので、森林が生息条件となる。 学術的価値 Adamsの東洋航海の時に採集された種で、国の天然記念物に指定されている神島が模式 産地である。 減少の原因 台風等による森林の荒廃。 文 献 番 号 11、24、27、30

ジェイギセル

Tyrannophaedusa

(

Tyrannophaedusa

)

proba

(A. Adams, 1868)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 選定の理由 本類は腔襞の変異があり、その模式型(基本型)は紀伊大島に産する。 種 の 概 要 貝殻は小形から中形(殻高12 ~ 16㎜)、光沢のある黄褐色から褐色を呈する。 陸産貝類・淡水産貝類

(20)

学術的価値 紀伊大島が模式産地。腔襞に変異があるために、2、3のシノニム名がある。 減少の原因 具体的に減少している状況を把握していない。

特 記 事 項 和名はJay, J. C. [1808-1891]に由来する。 文 献 番 号 24、30、40

シロバリギセル

Mundiphaedusa

(

Mundiphaedusa

)

stenospira

(A. Adams, 1868)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 準絶滅危惧(NT) 選定の理由 模式産地が紀伊大島。紀伊半島に広く分布するが、それぞれの産地では生息密度が狭い うえに、個体数が少ない。 種 の 概 要 貝殻は小形から中形(殻高14 ~ 20㎜)、堅固で円筒形状。殻表に極微細な成長脈をめぐ らすが、ほとんどが平滑である。上腔襞と月状襞が連結する。 分 布 状 況 紀伊半島に広く分布するものの、個体数は多くはない。 生 息 条 件 礫まじりの林床で、落ち葉の堆積中に生息する。 学術的価値 Adamsが東洋の航海中に立ち寄った「紀伊大島」で採集・記載された種。 減少の原因 具体的に減少している状況は把握していないが、とにかく少ない種である。 文 献 番 号 10、30、40

カギヒダギセル

Mundiphaedusa

(

Mundiphaedusa

)

pilsbryi

Nordsieck, 1999

マイマイ目(柄眼目)キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 選定の理由 本県を模式産地(富里)とする本種は、本属の中では珍しく月状襞を有する種である。 本県の山岳地帯では広く分布する。 種 の 概 要 貝殻は中形(殻高24 ~ 26㎜)、腹太で紡錘形状、堅固である。殻皮は新鮮な個体では淡 黄褐色で光沢があるが、一般にははげ落ちていることが多い。 分 布 状 況 紀伊半島山岳地帯のブナ林帯に分布する。本県でも山岳地帯に点々と分布。 生 息 条 件 本種は倒木や朽ち木に依存して生息するため、朽ち木の堆積が好条件である。 学術的価値 田辺市富里が模式産地で、紀伊半島の山岳地帯の固有種。 減少の原因 森林の荒廃と人為的な撹乱(採取)。 特 記 事 項 かつての種名は、

heteroptyx

だったが、先取されていたために、改名された。 文 献 番 号 30、34、37

イトカケギセル

Phaedusa

(

Phaedusa

)

goniopoma

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 選定の理由 和歌山を模式産地とする本種は、白崎石灰岩地帯に極めて多産したが、石灰岩の採掘等 で著しく減少してきている。 種 の 概 要 貝殻は中形(殻高20㎜)、淡黄褐色の殻表に糸掛状の縦肋がある。やや短い主襞の下に 上・下の腔襞があって、上腔襞の方が少し長い。 陸産貝類・淡水産貝類

(21)

分 布 状 況 本県の北西部の海岸地帯等(御坊市亀山、白崎、和歌山城など)に点々と分布。 生 息 条 件 森林内の落ち葉堆積や雑草の間に生息する。 学術的価値 ナミギセルに類似するが、殻表に際立った縦肋をもつので識別される。  減少の原因 多産した白崎石灰岩地帯においては、石灰石の採掘とその後の整備等。 文 献 番 号 24、30

ヒロクチコギセル

Reinia variegate

(A. Adams, 1868)

マイマイ目(柄眼目) キセルガイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 選定の理由 東北地方南部の太平洋岸以南に点々と生息地が知られていたが、近年は環境の変化や人 為的な乱獲のために、生息地で絶滅したり、減少が目立ってきた。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻高10㎜)。殻表は茶褐色の地に黄白色の縞模様が表れる。上板が微小、殻 口が広くみえるために和名の由来となる。腔襞と閉弁を欠く。 分 布 状 況 本県では九龍島、双島、神島、鹿島など海岸地域からのみ記録がある。 生 息 条 件 樹上性(冬季は落ち葉の中)であるので、樹木の繁る森が必須条件である。 学術的価値 全国的に分布地が限定されることに加え、生息地が減少してきている。 減少の原因 神島などでは台風の影響で森林の荒廃が進み、生息地が影響を受けている。 特 記 事 項 日本海地域では京都府(若狭湾)冠島が最北分布地である(湊・川名, 2002)。 文 献 番 号 11、27、34、35、36、45

オオヒラベッコウ

Bekkochlamys dulcis

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) ベッコウマイマイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 情報不足(DD) 選定の理由 模式産地は那智。本県を代表するベッコウマイマイ科貝類で個体数は少ない。 種 の 概 要 貝殻は薄くて低平、中形(殻径15㎜)、黄褐色を呈し、殻表は光沢がある。殻口縁は単純 で肥厚せずに薄い。臍孔は狭く開く。 分 布 状 況 県内に広く分布するが、その生息密度は極めて低い。 生 息 条 件 森林下の湿った落ち葉堆積中に生息する。 学術的価値 本県を模式産地(那智)とする陸産貝類。ベッコウマイマイ科の中では大形。 減少の原因 もともと個体数の少ない種であるので、減少の度合い等については不明。 文 献 番 号 24

ムロマイマイ

Satsuma

(

Satsuma

)

japonica peculiaris

(A. Adams, 1868)

マイマイ目(柄眼目) ニッポンマイマイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 陸産貝類・淡水産貝類

(22)

種 の 概 要 貝殻は小形(殻径17㎜前後)、円みをもった円錐形状を呈する。殻色は黄褐色で、個体に よっては周縁に不規則な色帯を巡らす。臍孔は明らかに開く。 分 布 状 況 神島、みなべ町鹿島、すさみ町江須崎に限って分布し、他の分布地は少ない。 生 息 条 件 安定した森林の存在。 減少の原因 台風による森林など生息環境の変化。 特 記 事 項 ニッポンマイマイは本州では広く分布するために、各地で個体変異がある。 文 献 番 号 11、27、32

アラハダヒロベソマイマイ

Aegista

(

Aegista

)

proba proba

(A. Adams, 1868)

マイマイ目(柄眼目) オナジマイマイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 選定の理由 紀伊大島を模式産地とする固有亜種で、地理的変異の多い本類としては基準となる基亜 種として重要である。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻径15㎜前後)、低平な螺塔をもち、殻表は微細な鱗片状で覆われる。殻口 唇縁は多少反曲する。臍孔は広く開く。 分 布 状 況 本県の南部を中心に分布するが、個体数は多くない。 生 息 条 件 森林下の礫や落ち葉の堆積中に生息する。 学術的価値 本類は地理的変異が著しく、分類が難しい。紀伊大島を模式産地とする本亜種は基亜種 として分類上重視される。 減少の原因 生息密度が高くないうえに、生息環境の悪化。 特 記 事 項 それぞれの亜種間での分類学的検討が進んでいない。 文 献 番 号 10、40

キイオオベソマイマイ

Aegista

(

Aegista

)

tumida cavata

(Pilsbry, 1902)

マイマイ目(柄眼目) オナジマイマイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 準絶滅危惧(NT) 選定の理由 田辺市富里を模式産地として、本県南部に分布する固有亜種である。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻径15㎜前後)で、低い円錐形状。臍孔は広く開く。殻口の唇縁は白色で 肥厚して多少外に向かって反曲する。 分 布 状 況 県南部の海岸地域から内陸部まで広く分布する。 生 息 条 件 礫混じりの落ち葉の堆積中に生息する。 学術的価値 キイを冠して和名がつけられているように、本県南部の固有亜種。 減少の原因 森林伐採や林道の開設などによる生息環境の悪化。

特 記 事 項 基亜種はフチマルオオベソマイマイA. (A.) t. tumida (Gude, 1901)。 文 献 番 号 23、31、40

(23)

タシナミオトメマイマイ

Trishoplita collinsoni collinsoni

(A. Adams, 1868)

マイマイ目(柄眼目) オナジマイマイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 準絶滅危惧(NT) 選定の理由 “田た子”が模式産地とされるオトメマイマイ属の美しい種。比較的に本県の海岸地域におこ いて多く生息している。 種 の 概 要 貝殻は小形(殻径10 ~ 12㎜)、円みをおびた円錐形状。殻口唇縁は反曲する。体層周縁 の上部と縫合上に褐色の色帯を巡らす。臍孔が開く。 分 布 状 況 県南部に分布し、内陸部よりも海岸地域において高密度に分布する。 生 息 条 件 樹上性で、乾季には樹幹に付着しているので、広葉樹林が必要。 学術的価値 Adamsの東洋航海の時に、“田た子”で採集されたもので、今日では串本町田こ た子ではないかこ と推察されている。 減少の原因 台風などの襲来による森林の荒廃。 文 献 番 号 23、31

シゲオマイマイ

Euhadra sigeonis

Kuroda, 1944

マイマイ目(柄眼目) オナジマイマイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 学術的重要(SI) 国 - 選定の理由 県南部に一般的にみられる樹上性のマイマイ属で、模式標本は田辺湾神島。神島産は小 形であるが、那智山などの個体は本種としては大きい。 種 の 概 要 貝殻は中形(殻径30 ~ 40㎜)、色帯を欠く個体、色帯をもつ個体、赤褐色や黄褐色の火 炎彩をもつ個体など変異が大きい。 分 布 状 況 県南部に分布し、比較的に海岸地域の方が生息密度が高い。 生 息 条 件 樹上性のため、広葉樹林の森林が必要である。 学術的価値 模式型は田辺湾神島に生息するが、むしろこの型は離島の矮小型である。本県南部では 模式型よりも大形が分布する。 減少の原因 森林の荒廃と採集圧。 特 記 事 項 シゲオマイマイはマイマイの研究者・江村重雄 [1901-1982] に因む。 文 献 番 号 11、24、27、31、40

マツカサガイ

Inversidens japanensis

(Lea, 1859)

イシガイ目 イシガイ科 和歌山県カテゴリー

学術的重要(SI)

旧県 - 国 準絶滅危惧(NT) 選定の理由 全国的に分布する淡水二枚貝であるが、本県では分布域は狭く、記録された河川(用水路) も少ない。 種 の 概 要 殻長40 ~ 60㎜、殻幅は多少小さく、殻長との比は30 ~ 40%程度。貝殻に細長い個体もあり、 かなり変異するために多くの異名がある。殻頂付近から後部に漣波状の模様がある。 分 布 状 況 北海道~本州~九州に分布。本県では和歌山市、海南市でのみ記録された。 陸産貝類・淡水産貝類

(24)

減少の原因 用水路の改修等による環境の改変。 特 記 事 項 淡水魚類のタナゴ類の産卵に利用されている。 文 献 番 号 2、3、6、16 (陸 産 貝 類:湊   宏) (淡水産貝類:池辺 進一)

参考文献一覧

1 東 正雄.1960:北山峡陸産貝類について.Venus,21 (1),4-10. 2 土井 浩.1994:田や用水にすむ動物と自然保護-和歌山市,かつらぎ町-.紀州生物, (23),11-15. 3 土井 浩.1996:和歌山市の池や水路にすむ生物 2.紀州生物,(25),17-22. 4 福田 宏・前田和俊・河辺訓受.1990:ワカウラツボの瀬戸内海での産出と種名.南紀生物, 32 (2),103-108. 5 波部忠重.1946:汽水産貝類新種Assiminea estuarinaツブカワザンショウ.Venus,14 (5-8), 217-218. 6 波部忠重.1973:軟体動物 Mollusca.In:川村多實二原著:日本淡水生物学,309-341pp. 北隆館,東京. 7 池辺進一.1975:和歌山市の陸産貝.In:橙藻(和歌山大学末松四郎教授退官記念誌),138-141. 8 池辺進一.2008:和歌山県の貝類.94pp.自刊,和歌山. 9 黒田徳米.1932:標本同定余録 (1),紀伊産(?)のフネアマガヒ類,Venus,3 (2),115-117. 10 黒田徳米.1941:紀伊大島にてアダムスの採集せし陸産貝類.貝類雑誌(Venus),10 (3・4), 157-166. 11 黒田徳米.1944:田辺湾神島産陸貝.Venus,13 (5-8),313-316. 12 黒田徳米.1962:日本並びに隣接地域産ミズゴマツボ類に就いて.Venus,22 (1),59-69. 13 黒田徳米・波部忠重.1954:日本産水棲新巻貝.Venus,18 (2),71-79. 14 黒田徳米・東 正雄.1982:日本産陸産貝類3新種1新亜種.Venus,41 (1),10-19. 15 Marui, H. 2002:A new locality of the endangered freshwater snail Camptoceras hirasei        (Gastropoda : Pulmonata : Planorbidae) in Wakayama Prefecture. Japan. The

Yuriyagai, 8 (2), 83-85. 16 増田 修・内山りゅう.2004:日本産淡水産貝類図鑑②,汽水域を含む全国の淡水貝類. 240pp.ピーシーズ,東京. 17 湊  宏.1966:ミツクリギセルの解剖知見と地理的分布(予報).南紀生物,8 (1),23-27. 18 湊  宏.1970:

Vallonia

属の日本未記録種ソウジマミジンマイマイ(新称)について. 南紀生物,12 (1),16. 陸産貝類・淡水産貝類

参照

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