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第3回 情報化社会と経済学 その3

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Academic year: 2021

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第 10 回 情報格差(Digital Divide)とその克服(労働・企業)

1、IT と情報格差(Digital Divide)

IT 革命の象徴であるインターネットの利用は拡大し続けている。2011 年末の インターネット利用者数3 は、2010 年末より 148 万人増加して 9,610 万人(前 年比1.6%増)、人口普及率は 79.1%(前年差 0.9 ポイント増)となった(図表 4-3-1-2)。また、端末別インターネット利用状況をみると、「自宅のパソコン」 が 62.6%と最も多く、次いで「携帯電話」(52.1%)、「自宅以外のパソコン」 (39.3%)となっており、スマートフォンは 16.2%となっている。 また、「携帯電話・PHS1」及び「パソコン」の世帯普及率は、それぞれ 94.5%、 77.4%となっている。特に、「携帯電話・PHS」の内数である「スマートフォン」 は、29.3%(前年比 19.6 ポイント増)と急速に普及が進んでいる。

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『平成24 年度版 情報通信白書』より

一方、インターネットの利用には、情報機器の購入と利用に関する知識が必要 であるため、世代別、性別、地域別、年収別、さらに障がいの有無などの面で

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これはインターネット利用自体の格差であるが、情報化社会においてはインタ ーネットの利用が生活、労働、企業活動(ビジネス)、地域間など、さまざまな 分野で格差が広がっていく。インターネットの利用格差=情報格差(Digital Divide)はそのまま経済格差につながっていく。 一方で、IT を活用することによってこれらの格差を克服しようとする取組み もみられる。

2、IT 革命と SOHO・テレワーカー

IT 革命による生産過程・流通過程の情報化は生産のオンライン化、ネットワ ーク化と併行した生産単位の小規模化をもたらす。そこで登場してきた小規模 生産形態のひとつが 1990 年代後半から登場してきた SOHO(Small Office Home Office)であり、これは市場構造の変化に柔軟に対応する生産形態、雇用 形態として注目されてきた。 また、2000 年代に入ってからは、インターネットや携帯電話等の進展により、 在宅でも働きやすい環境が整備されることによる「テレワーカー」という勤務 形態も注目されている。IT 革命は女性の職場への進出を進めてきた。しかしな がらこれは男女間の賃金格差を利用するという側面もある。また、IT は急速な 技術進歩を伴うため、女性の場合は結婚や出産、育児によるキャリアや賃金水 準の非連続性を伴いやすい。 図13-6 年齢階級別にみた女性の労働力比率(2007年) 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 15-19歳 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳 45-49歳 50-54歳 55-59歳 60-64歳 (%) 日本 米国 韓国 ドイツ スウェーデン

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そこで、企業でキャリアを積みながらも様々な理由で職場を離れざるを得な くなった女性のために、仕事が在宅でも自らのキャリアを利用して仕事に結び 付けようとする取り組みや、そのための仕事を紹介するネットワークの取り組 みが見られる。インターネットの普及によって、情報化の進んだ地域ほど女性 の社会参加が高まる傾向が見られる。 国土交通省『平成17 年度テレワーク実態調査』より 図13-7 各国のテレワーカー比率 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 米 国 オ ラ ン ダ フ ィ ン ラ ン ド デ ン マ ー ク ス ウ ェ ー デ ン 英 国 ド イ ツ オ ー ス ト リ ア ア イ ル ラ ン ド ベ ル ギ ー 日 本 イ タ リ ア フ ラ ン ス ル ク セ ン ブ ル ク ス ペ イ ン ポ ル ト ガ ル (%) 図13-8 ICT競争力指数とテレワーカー比率の相関       (相関係数=0.74) 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 ICT競争力指数 テ レ ワ ーカ ー比 率 図13-9 百人当たりインターネット加入率とジェンダー・ エン パワーメント指数の相関 (相関係数=0.68) 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80 0.90 1.00 0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 50.00 百人当たりインターネット加入率 ジ ェ ン ダ ー・ エン パ ワ ーメ ン ト 指数 日本 日本

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3、IT 革命と格差克服の取り組み

(1)IT 革命と女性の取組み 別紙資料に見られるように、IT 革命は女性の職場への進出を進めてきた。し かしながらこれは男女間の賃金格差を利用するという側面もある。また、IT は 急速な技術進歩を伴うため、女性の場合は結婚や出産、育児によるキャリアや 賃金水準の非連続性を伴いやすい。そこで、企業でキャリアを積みながらも様々 な理由で職場を離れざるを得なくなった女性のために、仕事が在宅でも自らの キャリアを利用して仕事に結び付けようとする取り組みや、そのための仕事を 紹介するネットワークの取り組みが見られる。 (2)IT 革命と高齢者の取組み ニューメディアやマルチメディアに代表される地域情報化政策の中でIT が情 報発信や新しい地域活性化政策として位置づけられてきたが、その中で登場し た最新の情報インフラや情報機器が地域の活性化に活用されてきたとは言い難 い(第7 回参照)。一方、ニューメディアの実験の「最先進地」であった三鷹市 では、最新のインフラや情報機器を利用するのではなく、パソコンの普及やパ ソコン利用の講習などを高齢者中心に行い、「パソコン講習」や企業を退職した 高齢者のノウハウなどを活かした仕事、事業展開を目指した取組みを始めた。 「団塊の世代」の退職に伴い、同様の事業が全国各地で行われている。 女性の在宅ワーク支援ネットワーク 「ハーストーリー」http://www.herstory.co.jp/ 女性の声を商品の企画・開発に結びつける 「キャリアマム」http://www.c-mam.co.jp/

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(3)IT 革命と障がい者の取組み 現代のIT 革命を象徴するユビキタス・ネットワークは「いつでも、どこでも、 なんでもつながるネットワークであるが、それは「だれでも」が、女性でも高 齢者でも、そして障がい者でも使えるものでなければならない。そこで、IT を 利用した障がい者のための福祉機器の開発は進められている。 一方、障がい者自身がIT を活用して、仕事や就労に結び付け ようという取組みも注目される。ナミねえ、こと竹中ナミ代表が 主 宰 す る 「 プ ロ ッ プ ス テ ー シ ョ ン 」) は 、 障 が い を 持 つ 人 (challenged: チャレンジド)の自立と社会参加、とりわけ就 労の促進や雇用の創出を目的に活動する社会福祉法人が代表的 である。 シニアの社会参加、就労支援とまちづくり 「シニアSOHO三鷹」http://www.svsoho.gr.jp/ ITによる障がい者就労支援組織 「プロップステーション」 http://www.prop.or.jp/

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4、IT 革命と中小企業ネットワーク

(1)IT 投資と企業間格差 経済低迷が長期化する中、特に中小企業の不況は深刻である。一方で、IT(情 報技術)は格段に進展し、多くの企業はIT 投資、IT 導入を進めている。 IT 専門調査会社の IDC Japan が発表した国内中堅中小企業ユーザーに関す る調査結果(2009 年 9 月 16 日、2009 年 7 月に実施)によると、従業員数 999 人以下の中堅中小企業において、43.6%が、2009 年度 IT 投資予算が前年度か ら「減少する」(前年度比97%未満)と回答、また、41.4%が、2010 年度の IT 投資予算が「減少する」と回答した。 前回2009 年 2 月の調査の結果(2009 年度 40.9%、2010 年度 35.8%)と比 較すると、「減少する」と回答した企業がさらに増加している。 一方、大企業では、2009 年度、2010 年度ともに IT 投資予算の前年度から の増減の回答結果は改善しており、中堅中小企業と大企業間で、IT 投資回復で 格差が拡大している。 パソコンやインターネットの出現により、大規模で高価なコンピューターシ ステムも高度な専門的知識も不要となり、パソコンでインターネットに接続し、 他の企業や個人とアクセスし取引もできるようになった。このような近年の IT 革命により、中小企業でも大企業と対等に取引を行うことができるようになる とも言われている。ところが、企業の情報化=IT 投資は情報格差~経済格差の 克服につながっていないのが現実である。 (2)IT 投資と中小企業ネットワーク 一方で、中小企業同士が独自のネットワークを作って注文、取引を拡大し、さ らに製品開発と新市場拡大につなげようとする試みもある。中小企業ネットワ ークとして代表的なのNC ネットワークの事例について調べてみよう。 NC ネットワーク

参照

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