健康保険組合に加入の皆さまには、平
素より格別のご高配を賜り、厚くお礼申
し上げます。
健康保険組合は、事業主と加入者が連
携し、自主・自立の精神で運営を行うな
かで、民間の創意工夫をもとに加入者の
健康保持・増進、疾病予防に取り組んで
きました。最近では特定健康診査(特定
健診)や診療報酬明細書(レセプト)な
どのデータを活用し、より効果的な保健
事業を実施するデータヘルス計画にも着
手するなど、その活動はさらに広がりを
みせており、世界に誇るわが国の国民皆
保険制度の「けん引役」として、重要な
役割を果たしてきております。
しかしながら、この健康保険組合が今、
危機的な状況に陥っています。2017 年
度全組合の平均保険料率は 10 年連続で
上昇し、被保険者 1 人当たりの保険料は
10 年間で約 10 万円増えるなど、事業主
と加入者の皆さまの負担が、年々増大し
ております。これは、高額薬剤の保険収
載や高齢化の進展などによる医療費の増
加もありますが、高齢者医療への拠出金
負担の大幅な増加が主な要因であること
は明白です。
このため健康保険組合連合会では、高
齢者医療の負担構造改革、医療費の適正
化に資する施策の推進など、大胆な改革
を実行し、国民が真に安心・納得できる
医療保険制度の構築をめざし、活動して
まいります。
皆さまにおかれましては、今後とも一
層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い
申し上げます。
2017 年 6 月
健康保険組合連合会
会長
大塚 陸毅
健康保険組合に加入の皆さまへ
健康保険組合の直近の状況を見ると、2017 年度の平均保険料率は 9.168%で、10 年連続して
上昇しています。被保険者 1 人当たりの保険料負担額は、10 年間で 98,978 円増加しています。
この理由は高齢者医療費に対する拠出金が年々増えているからです。拠出金負担のため、保険
料率を 2017 年度に引き上げた健康保険組合は、214 組合にのぼります。
14 年度、15 年度は経常黒字に転じましたが、この要因は、保険料率の引き上げによる増収と、
過去の拠出金の精算による過払い分の戻りによるものです。拠出金の増加傾向には変化はなく、実
質的には厳しい財政状況が今後も続くと見込まれます。
最近の健康保険組合の状況を教えて下さい。
1人当たりの保険料負担額は、
10年間で98,978円増加
1人当たりの年間保険料負担および平均保険料率の推移
経常収支状況と保険料率引き上げ組合数の推移
(円)
510,000
490,000
470,000
450,000
430,000
410,000
390,000
370,000
0
(億円)
8,000
6,000
4,000
2,000
0
−2,000
−4,000
−6,000
−8,000
(組合数)
800
600
400
200
0
−200
−400
−600
−800
(%)
9.5
9.0
8.5
8.0
7.5
7.0
0.0
○10 年間で1人当たり保険料負担は
98,978 円の増加(25.80%)
1人当たり保険料負担 保険料率
2007
7.308 7.380 7.450
7.672
7.987
8.343
8.674
8.882
9.035 9.100 9.168
383,612 386,038
376,476 392,473
416,983
439,660 461,598
475,503 484,342 479,276 482,590
08 09 10 11 12 13 14 15 16 17年度
2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17年度
経常収支差引額 料率引き上げ組合数
600
109
212 228
417
570 609
565
387
313
190 214
634 1,278
−3,189
−5,234
−4,156 −3,497
−2,973
−1,154
−1,372
−3,060
(注1)2007∼14 年度までは決算、15 年度は決算見込、16 年度は予算、17 年度は予算早期集計の数値。
(注2)保険料率引き上げ組合数は、2007∼15 年度までは前年度決算、16 年度は 15 年度決算見込との比較。
17 年度は予算データ報告組合(1,375 組合)と 16 年度予算との比較である。
Q
A
健康保険組合についての
Q
&
A
Ⅰ
健康保険組合から高齢者医療費への拠出金は、後期高齢者医療制度への支援金と前期高齢者医
療への納付金があります。
直近10 年間の推移を見てみると、標準報酬月額と標準賞与額は横ばい、あるいは減少している
一方で、加入者の医療費などに充てる法定給付費は約 1.2 倍の伸び、高齢者医療費への拠出金は
約 1.5 倍の大きな伸びを示しています。この負担増が組合財政に大きな影響を与えています。
2017 年度予算早期集計によると、健康保険組合全体の保険料収入の 44.54%が高齢者医療費
への拠出金に充てられています。
なかでも、拠出金の占める割合が 50%以上となっている健康保険組合は 331 組合もあり、保
険料の半分以上が加入者以外の費用に使われることは、保険制度の意義を揺るがす大きな問題で
あるといえます。
Q
A
健康保険組合からの高齢者医療費への負担状況は、
どうなっているのでしょうか。
保険料のうち 50%以上の負担をしている
健康保険組合は 331 組合
1人当たり月額、賞与額、法定給付費および拠出金の推移
保険料収入に対する拠出金の割合別組合数
150.0
140.0
130.0
120.0
110.0
100.0
90.0
80.0
50%以上の組合は
331 組合(24.1%)
支援金・納付金等
60%∼70%
66 組合(4.8%)
70%以上
12 組合(0.9%)
40%未満
390 組合(28.4%)
40%∼50%
654 組合(47.6%)
50%∼60%
253 組合(18.4%)
(注1)2007∼14 年度までは決算、15 年度は決算見込、16 年度は予算、17 年度は予算早期集計の数値である。
(注2)2007 年度を「100」とした被保険者1人当たりの伸び率の推移である。
法定給付費
平均標準報酬月額
平均標準賞与額
100.0 99.9
98.0 97.5 98.0 98.3 98.9
99.5 100.0 99.4 99.6
116.3
101.3
97.6
84.8 87.8
90.2 90.4
94.4 95.7
90.8 90.7
88.7
104.4 108.9
111.7 113.3 114.1 115.4
118.4 122.4 124.0
116.5 114.7
124.9
136.0
142.1
141.5 140.5
139.3
146.0
2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17年度
(注)2017 年度予算データ報告組合
1,375 組合の数値である。
財政的に厳しい健康保険組合ですが、加入者に対する健康づくりや疾病予防といった「保健事業」
をより充実強化するため、全ての健康保険組合では「データヘルス計画」を作成し、それをもと
に取り組んでいます。
データヘルスは、健保組合が持つ加入者の疾病・診療情報や健診情報などのデータにもとづい
た保健事業計画を作成し、PDCA サイクルで効率的・効果的な保健事業を実践する取り組みです。
この取り組みにより、健康づくり、疾病予防、重症化予防など多様な保健事業を実施します。
国としても健康寿命の延伸に向けた国民的な取り組みを重要な政策の柱と位置付けており、健
康保険組合としても、これまで以上に充実した保健事業の展開に努力しています。
Q
A
今後の健康づくりなどの取り組みを教えて下さい。
データヘルスなど
事業主との緊密な連携で優位性を発揮
健康保険組合
データの分析
データヘルス計画策定
Plan(計画)
Act(改善)
Check(評価)
Do(実施)
PDCA サイクルによる事業展開
レセプトデータ 特定健診データ
健康課題の分析
保健事業の企画 保健事業の実施
保健事業の修正 保健事業の検証
医療費適正化
健康度・健康意識
の向上
健康保険組合・健保連の主張
高齢者医療費の負担構造改革
1
○2017 年度の保険料収入に占める高齢者医療費の負担割合は約 45%ですが、2025 年
度には 50%を超えると見込まれます。保険制度の仕組みの下で、保険料の半分以上を
組合加入者以外のために使用することは不合理であるといえます。
○拠出金の負担率に上限を設定するなどの改革を行い、上限を超えた部分については、全
て国費で負担するよう求めています。
※現行制度では、一部、拠出金の上限を設定していますが、国費の投入はわずかで、上限を超え
た部分を全ての保険者間で再按分し、負担しています。
健康保険組合からの高齢者医療費への拠出金負担は、もはや限界に達しています。2017 年
度では約 3.5 兆円の拠出金負担は、2025 年度にはさらに 1 兆円程度増えると見込まれていま
す。また国民医療費全体の約 60%を高齢者医療費が占めると予測されています。高齢者医療
費を国民全体でどのように負担するかということが、世界に誇るわが国の国民皆保険制度を維
持する上で最大の課題です。以下の改革に取り組む必要があると考えます。
86
361
533
354 382
492
462
359
267 258
331
0
100
200
300
400
500
600
2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17年度
(組合)
(注)2007∼14年度までは決算、15年度は決算見込、16年度は予算、17年度は
予算早期集計の数値。
保険料収入に占める拠出金の割合が 50%以上の組合数
Ⅱ
医療費の適正化
2
○国民医療費は、2015 年度現在約 42 兆円ですが、2025 年には 50 兆円をはるかに超
えると見込まれ、この約 60%は高齢者医療費です。少子高齢化による人口減少が進む
なか、現役世代の負担を少しでも軽減するため、限られた医療資源を効率的に活用し、
医療費の適正化を進める必要があります。
○現在各都道府県では、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」に分けられている医
療機関の病床について、2025 年時点での必要病床数について検討しています。健康保
険組合は保険者代表としてこの検討に参画し、地域の実情を踏まえ、機能に応じた病床
の再編、在宅医療の強化など、効率的・効果的な医療提供体制へ見直すよう求めています。
○医薬品は、高額医薬品への対応や後発医薬品の促進などを実施するとともに、軽度の疾
病の処方薬については、保険給付の範囲を見直すよう求めています。
※厚生労働省の公表数値(2017年5月10日 地域医療構想に関するワーキンググループ)
を単純集計したもの。
35.4
28.4
13.9 37.5
58.4 40.1
17.0
13.0
2016年度 2025年度
高度急性期
病床機能報告
124.8 必要病床数
119.1
急性期
回復期
慢性期
高齢化の進展によって、現在
の急性期中心の医療から、リ
ハビリや在宅復帰、社会生活
への参加を目指す回復期中心
の医療機能に転換するなどの
取り組みが求められます。
(万床)
機能別病床数のイメージ
健康保険組合全国大会の開催
1
全国の健康保険組合関係者など 3,500 人を集め「平成 28 年度健康保険組合全国大会」
を開催しました。大会では「改革の早期実現!次世代へ安心・納得の確保を!」を副呼
称に、①高齢者医療費の負担構造改革の早期実現、②皆保険の堅持に向けた健保組合の
維持・発展、③実効ある医療費適正化対策の確実な実施、④現役世代が納得できる介護
保険制度の実現─をスローガンに掲げ、健保組合・健保連の主張を内外にアピールしま
した。
2016
年度の健康保険組合・健保連の活動
Ⅲ
健康経営優良法人330法人を初認定
2
健康経営に優れた企業・団体を表彰する「健康経営アワード 2017」が開催され、今
回初めてとなる「健康経営優良法人」に 330 法人が認定されました。さらに 3 回目と
なる「健康経営銘柄」には経済産業省と東京証券取引所が共同で、24 社を選定しまし
た。事業主の健康経営に対する認識が広がり、健康保険組合とともに従業員への健康づ
くりに取り組む企業が増えています。
健康保険組合の取り組みを表彰
3
従業員の生活習慣病予防や健康管理に関し、事業主などと連携して優れた成果をあげ
た健康保険組合が政府から表彰されました。このうち「体力つくり優秀組織表彰」の文
部科学大臣賞をヤクルト健康保険組合が、「体力つくり国民会議議長賞」をボッシュ健
康保険組合がそれぞれ受賞しました。このほか「健康寿命をのばそう!アワード」の厚
生労働省大臣優秀賞に内田洋行健康保険組合が、厚生労働省保険局長優良賞にヤマトグ
ループ健康保険組合が選定され、それぞれ表彰されています。
●2017 年度の健康保険組合予算は 3,060 億円の経常赤字。赤字組合は全組合
の 7 割を超える1,015 組合
●平均保険料率は 9.168%で、10 年連続の引き上げ。10 年間で 1 人当たり
保険料負担は 98,978 円の増加
Ⅳ
2017
年度健康保険組合予算 ハイライト
2017 年度予算
(早期集計推計)①
組合数 1,398
被保険者数(人) 16,433,739
被扶養者数(人) 13,149,706
平均標準報酬月額(円) 368,588
平均標準賞与額(円) 1,066,532
平均保険料率(%) 9.168
経常収入総額(億円) 80,479
保険料収入(億円) 79,308
その他(億円) 1,171
経常支出総額(億円) 83,538
保険給付費(億円) 42,126
支援金・納付金等(億円) 35,323
その他(億円) 6,089
経常収支差引額(億円) ▲ 3,060
被保険者数
■被保険者数は短時間労働者の適用拡
大の満年度化などにより 36.9 万人
(前年度比 2.99%)大幅増加。
保険料収入
■被保険者数の増加により保険料収入
は 2,311 億円(前年度比 3.00%)増加。
保険給付費
■保険給付費は被保険者数の伸び率を
上 回 る 1,428 億 円( 前 年 度 比
3.51%)増加。
経常収支差引額
■健保組合全体の経常収支差引額は、
▲ 3,060 億 円 で、 前 年 度 よ り
1,688 億円の悪化。
●保険給付費は前年度比 3.51%、高齢者医療費に対する拠出金は同 7.23%と
大幅な伸び
●拠出金の保険料収入に占める割合は 44.54%、同割合が 50%以上の組合は
331 組合
2016 年度予算
② 増減数①-②
1,399 ▲ 1
16,065,188 368,551
13,273,588 ▲ 123,882
367,937 651
1,067,666 ▲ 1,134
9.100 0.068
78,158 2,321
76,997 2,311
1,161 10
79,530 4,008
40,698 1,428
32,941 2,382
5,891 198
▲ 1,372 ▲ 1,688
経常支出総額
■支援金・納付金等の負担が保険給付費に
迫る厳しい状況にあるが、加入者の健康
づくりのための保健事業費を確保。
支援金・納付金等
■高齢者医療への拠出金は 3 兆 5,323 億
円で、後期高齢者支援金などの全面総報
酬割導入の影響により、2,382 億円(前
年度比 7.23%)の大幅増。
※この資料は、2017 年度予算データの報告があった組合(1,375 組合)の数値を基に、2017 年 4 月 1日現在
存在する 1,398 組合ベースの 2017 年度予算状況を推計し、前年度予算と比較した結果をまとめたもの。
保健事業費
3,915億円
(4.7%)
その他
2,175億円
(2.6%)
保険給付費
42,126億円
(50.4%)
支援金・納付金等
35,323億円
(42.3%)