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10代女性が妊娠を継続するに至った体験

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Academic year: 2021

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全文

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原  著

10代女性が妊娠を継続するに至った体験

Experience of teenagers in their decisions

to continue pregnancies

小 川 久貴子(Kukiko OGAWA)

*1

安 達 久美子(Kumiko ADACHI)

*2

恵美須 文 枝(Fumie EMISU)

*2 抄  録 目 的  本研究は,10代女性が妊娠を継続するに至った体験がどのような意味をもっていたのかを探求し,そ の特徴を明らかにすることである。 対象と方法  研究協力の承諾が得られた10代で妊娠した女性8名を対象に,半構成的面接を3∼4回(①妊娠30週以 降,②産褥入院中,③産後1ヶ月)行った。得られたデータの逐語録を,現象学的研究方法を参考にし て質的記述的に分析した。 結 果  10代女性が妊娠を継続するに至った体験は,Aは「苦労した生い立ちからの早期脱却と,結婚出来な くても母親になりたいという強い願望」,Bは「過去の中絶の後悔から今回は産むという決意の元,両親 の祝福も受けた価値ある妊娠」,Cは「出会い系(IT)で知り合った相手との予定外妊娠に対する困惑と 共に,実父の承認を得るための学業への前向きな取り組み」,Dは「過去の中絶の後悔から,今回は義母 の猛反対や経済的に困難な状況下でも産むという決意」,Eは「彼の家族との繋がりにより新しい家庭を 築く喜びと共に,医療者による中絶や母親役割を前提にした関わりへ反発」,Fは「予定外の妊娠による 心身の辛さと共に,合格大学を退学したくないため学業との両立を決意」,Gは「困惑した予定外妊娠に もかかわらず周囲の後押しがあり,友人から疎外された中でも新しい家庭へ希望を抱く」,Hは「過去の 中絶の後悔から,猛反対の両家を説得する決意と共に,妊娠や母になるための準備に価値を見出す」で あった。また,妊娠継続に至る体験の特徴では『中絶体験の後悔』,『新しい家庭を築く憧れ』,『周囲の 受け入れ』,『自分の意志を貫く強さ』,『医療従事者の否定的対応』の5点が明らかになった。 結 論  予定外妊娠が多い10代女性は妊娠を継続させるために,学業の両立や家族関係の調整など多面的な 体験を多くしており,それぞれに固有の意味が存在していた。また,8例の体験の特徴として,5つの事 項を取り出すことが出来た。 キーワード:10代妊娠,思春期妊娠,妊娠の体験,妊娠継続,現象学的研究 *1

東京女子医科大学看護学部(Tokyo Women s Medical University School of Nursing) *2

首都大学東京健康福祉学部(Tokyo Metoroporitan University Faculty of Health Science)

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Abstract Purpose

We described the experience of pregnant teenagers who decided to continue pregnancies and classified their decision making factors.

Subjects and Method

We conducted 3 to 4 semi-structured interviews (30 weeks after pregnancy, during admission, 1 month after deliver) to 8 pregnant teenagers who gave their informed consents. By using phenomenological research method, we analyzed verbally obtained data in a qualitative manner.

Result

The experiences of continued pregnancy among the teenagers are summarized as follows: {Case A} “Even though I cannot get married, I wish to end the agony in life by becoming a mother”. {Case B} “I regret my last abor-tion and with this pregnancy I am able to receive approval from my parents.” {Case C} “The unexpected pregnancy with my counterpart brought great agony but with his permission to continue pregnancy, I am able to positively tackle my studies.” {Case D} “From my past bitter experience of abortion, I decided to continue this pregnancy even under the extreme opposition of his mother and my financial difficulties.” {Case E} “I decided to continue the pregnancy because of the joy I can anticipate with a new family and because of my opposition towards the idea of abortion within healthcare”. {Case F} “I intend to cope with this unexpected pregnancy along with my university studies and my psychological troubles.” {Case G} “I could get enough support and hope for a new future family even though I am isolated by friends.” {Case H} “I could find my own values and prepare myself to become a new parent after defending myself against the severe oppositions from both sides of the parents.”

The above comments characterized the teenagers’ experiences into “regret from previous abortion”, “anxious to build a new family”, “acceptance from others”, “demonstration of own strong will”, and “opposition towards the denial by healthcare givers”.

Conclusion

Most of the teenage pregnancies are unexpected. The teenagers experienced problems such as attempting a balance between studies and pregnancies or juggling for family adjustments. Each case described presented indi-vidual meaning and we derived 5 factors that influenced the decision making of continued pregnancies among teen-agers.

Key words : teenage pregnancy, adolescent pregnancy, continuation of pregnancy, decision making, phenomeno-logical research.

Ⅰ.は じ め に

 東京都幼小高心性教育研究会が行った調査によれば, 2005年の初交経験者率は,中学3年女子で9.1%,高校 3年女子が44.3%と報告され,10代の性行動は次第に 活発化の様相を示している。一方,10代における人工 妊娠中絶(以下,中絶)件数は,2001年の46,511人をピー クに2004年には34,745人へと減少の傾向にあり(厚生 労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課, 2005a),分 娩件数も20,920人(2001)から18,591(2004)人へと若 干の減少の兆しを示している(厚生労働省雇用均等・ 児童家庭局母子保健課, 2004; 2005b)。しかし,前述 の初交経験率から考えると,10代で妊娠する女性は今 後も減らない事が予測される。  従来の研究では,10代女性の妊娠は中絶防止に関す る視点から多くの調査が行われ,それに対する様々な 見解が提示されており,妊娠の継続が困難な理由とし て,経済的負担や教育を優先とする考え方が主流を占 めてきた(渡辺他, 2003)。また,妊娠を継続し母親に なる人達も少数ながら存在しているが,この人達につ いての研究は少なく,更に,その人達の妊娠後の経過 や問題状況についての具体的な視点を深めた研究はそ れ以上に少ない状況にある。  研究者らが,これまでの10代妊婦に関する国内の 文献調査を行った結果(小川他, 2005/2006a)からは, 「望まない妊娠」という側面からの社会医学的な研究 が多く行われていることが分かった。しかし,最近で は,10代の妊娠判明時の受け止め方に「ショック」が 減少し,「うれしかった」という人達が増加しているこ とが明らかにされている(廣井他, 1997)。また,海外 の研究では,若年妊娠の15%が計画的な出産である (Montgomery, 2002)ことや,妊娠という生活体験の 経過を経ることによって,規範意識が養われ,他者と の相互作用を通してその人のアイデンティティを高め

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ていく経過にも成りうることが報告されている(Lee, 1998)。研究者らの上記の研究(2005/2006a)からも10 代妊婦への支援は,学業継続の困難さや相談機関の少 なさとその活用不足が明らかであった。我が国の若年 妊婦に接する機会の多い医療機関や保健所では,手探 りの状況で支援を行なっているのが実状であり,必ず しも10代の特徴に沿った支援が充実しているとはい えない事が考えられる。  そこで,本研究の目的は,10代女性が妊娠を継続す るに至った体験には,どのような意味があったのかを 探求し,その特徴を明らかにすることとした。  なお,本研究の「妊娠を継続するに至る」という語は, 「自分自身だけでなく,本人を取り囲む人々の不確か さにも折り合いをつけながら,妊娠継続に至るまで」 を意味することとする。

Ⅱ.方   法

1.研究デザイン  10代女性が妊娠を継続するに至るまでの体験を, 本人の語りを通して探索する,質的記述的研究である。 2.研究協力者  現在,妊娠している19歳以下の女性で,研究者ら が関わっている10代の出産準備クラスに参加してい る人,及びその参加者から紹介された人で,研究協力 の承諾が得られた8名とした。研究協力者(以下,協 力者)の概略は,表1に示す。 3.データ収集の方法  10代妊婦は人と関わる力が育まれていない傾向に あるため(リウ真田, 1998),施設責任者および関係ス タッフの承諾を得て,研究者は協力者の妊婦健診に同 席したり,10代の出産準備クラスにメンバー補助とし て参加しながら関係性を築き,思いを表出しやすいよ うに努めた。その経過の中で,対象との信頼性が十分 に深まったと思われる時点と考えられる, 妊娠30週以 降に1∼2回, 出産後の入院中および 産後1ヶ月以降に 1回の計3∼4回,半構成的面接を行った。面接場所は, 対象者のプライバシーを十分に確保できる産科外来や 協力者の自宅等で行った。また,1回の面接時間は原 則として1時間以内とし,相手の希望に従って場所や 日時を設定した。更に,産後1ヶ月の面接では,協力 表1 対象者の概略 対象 (初・経産)年 齢 背    景 体    験    内    容 A 17(経) 高2で,妊娠判明後に中 退し,入籍 実母が離婚して苦労が多かった。予定外妊娠のために結婚出来なくても,母親になりたい願望が強く,一人でも産む決心をする。新しい家庭を築くこと に希望を抱き,自分で彼の両親に働きかけて,妊娠継続の承諾を得た。 B 19(初) 高卒。就職後,入籍直前 に妊娠判明し,退職 中絶を後悔し,今回は望んだ妊娠。前回は,未入籍の為に親が反対したが,今回は祝福される。医療従事者から,中絶を前提にした対応をされ,嫌な体 験をした。 C 18(初) 高2で,妊娠判明し,転 校措置後に入籍 出会い系サイトで知り合った相手と,予定外の妊娠。彼や彼の母親が妊娠継続に賛成したが,実父は学業中断を心配して中絶を勧めた。転校措置などの 調整を経て入籍し,妊娠継続を可能にした。 D 18(初) 高1で中退。その後,妊 娠して入籍 彼の母親が世間体を理由に中絶を勧めたが,自らの中絶体験を後悔して,今回の妊娠継続の承諾が得られるように説得した。彼が怪我により休職したた めに財政難になり,住居や出産費用前借等の支援制度に自ら申請した。 E 17(初) 高1で,妊娠判明のため に休学。未婚 実母が離婚したため,温かい家庭に憧れる。予定外妊娠であったが,彼の親から喜んで受け入れられた。医療従事者の母親役割の押し付けを不愉快に感 じて反発した。 F 19(初) 大学入学直後,妊娠判明 し,入籍。今後,休学予 定 憧れの彼との間に生じた予定外の妊娠。周囲や彼の意見に後押しされ,妊娠 継続を決断した。大学入学後で,相談相手が居ずにつわり等で心身共に苦し い時期があったが,大学を辞めずに両立予定。 G 17(初) 高2で,妊娠判明し,転 校措置後に入籍 予想しない妊娠の結果に恐怖を感じ,妊娠を受け入れられずにいた。しかし,彼と家族の励ましにより妊娠継続を決意した。周囲からの偏見に孤独に過ご した時期もあったが,彼との新しい家庭を築ける事に希望を抱く。 H 17(初) 高3で,妊娠判明のため に中退。未婚 中絶経験を後悔し,今回の予定外妊娠は一人でも産むという強い決意がある。両家の猛反対にも関わらず,自分で説得して妊娠継続の了承を得る。妊娠し たことへの喜びを日々感じており,母になるための準備に価値を見出している。

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者が児のことを気にせず話せるようベビーシッター役 割の看護者を随行した。  インタビュー内容は,10代女性が妊娠継続を決意し た思いやその決定を支える状況についてその人自身の 体験の語りが促されるように,「妊娠とわかったとき の気持ち」,「産むことを決意したきっかけ」,「周囲の 反応」,「妊娠中に辛かったこと」等の問いかけをきっ かけに自由に語ってもらった。また,面接内容は,協 力者の了承を得てテープ録音し,逐語録にしたものを データとした。データ収集は,一人一人の体験から見 出された特徴を発展させる更なる新しいデータがみつ からない状況まで行い,その反復を確認した結果8例 となった時点でその全てを分析の対象とした。 4.データ収集期間  平成17年6月∼平成18年3月 5.データの分析方法  本研究は,10代で妊娠継続した女性の主観的体験の 記述から,その体験の意味を明らかにすることを目的 としているため,現象学的研究方法(Giorgi, 2004)を 参考とし,質的記述的に分析した。現象学的研究方法 のゴールは,対象者の意識体験した世界を記述し,そ の中から最後に変換された意味単位を取り上げ,想像 自由変更を用いてその体験の構造を導き,体験の意味 を明らかにするものである。そのため,研究者は現象 学的還元の態度(いかなる枠も,先入観も持たずにデー タに近づく態度)をとることにした。  本研究では,その具体的方法として以下の手続きに よった。①各協力者の逐次記録を熟読し,それぞれの 全体の意味をとらえる。②各事例の妊娠を継続するに 至る過程に関わる状況を取り上げる。③それらを見て いきながら,意味の変化や移り変わりを確認する毎 に文章を区切る印をつけ,それを意味単位(meaning units)とする。④その意味単位ごとに,研究者が想 像自由変更(free imaginative variation)を用いながら, 心理学的意味を最もよく現す表現を考えて意味単位を 変換してそれを記述する。この操作をすべての意味単 位に対して行なう。⑤次に,協力者全員の変換された 意味単位を比較しながら,一人一人についての体験を 構成する要素(構成要素)を作成する。⑥そして,そ の構成要素のネーミングをする。⑦次に,一人一人の 体験を,時系列で構成要素ごとに協力者の語りを引用 しながら記述する。⑧そして,その人の全体の構成要 素を概観し,その体験の意味を端的に表現する。⑨最 後に,協力者全員の妊娠継続の決意に影響を及ぼして いる特徴を類型化する。  データ分析の際には,共同研究者である母性看護・ 助産学領域の研究者3名で検討を繰り返し,分析デー タと結果が研究者の偏見に歪められることなく,現象 をそのまま反映するように努めた。さらに質的研究方 法の専門家のスーパーヴィジョンを適宜受けて,分析 が適切に行なわれるように努めた。最後に,得られた 体験を,当事者である研究協力者に確認し,読み取り の不足している部分を補完した。  なお,協力者の記述は主観的体験であるため,記述 内では1人称を示すアルファベットの頭文字のみで表 記し,「 」は協力者の語りを引用した箇所,( )は研 究者が補った部分を表し,構成要素は太字で示した。 6.倫理的配慮  研究の協力依頼は,協力者である10代妊婦に,研 究の主旨・方法を口頭および文書を用いて説明した。 その際に,協力は自由意志に基づくものであり強制で はないこと,協力を途中で中断しても不利益は生じな いことを保証し,得られたデータは本研究以外に使用 しないこと,研究結果を発表する際には匿名性を厳守 することを説明し,同意書にサインをもらった。  本研究は,研究計画書の段階で,公立大学法人首都 大学東京 健康福祉学部研究安全倫理委員会の承認を 受けた(2005年6月29日承認:受理番号05017)。

Ⅲ.結   果

 まず,10代女性のそれぞれが妊娠を継続するに至っ た体験をその中心的な意味を示してから,時系列でそ の意味づけとなった体験を構成要素ごとに記述した。 そして,最後に,協力者の体験の特徴を挙げて類型化 し共通点を明らかにした。 1.Aさん(17歳・経産婦)の場合  Aにとって,10代妊娠を継続するに至った体験とは, 「苦労した生い立ちからの早期脱却と,結婚出来なく ても母親になりたいという強い願望」という意味があ り,それは以下の体験から形成されていた。 1)離婚した親への反発から,結婚出来なくても一人 で産む決意  Aは,生理が止まる前に「なんか,ここ(下腹部)に

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いるぞ」と,妊娠したことを第六感で察知して,妊娠 継続を瞬時に決意し,さらに彼への対応を考えた。そ れは,彼の周囲では,「中絶するのが普通という感じ」 と思ったからであり,「彼がフラフラした状態で,結 婚に気持ちが浮ついているので,入籍をしなくても, いい」という言動に表されている。この言葉の基盤に は,「自分の親みたいに離婚するのは嫌だ。私みたい な体験は。だから,絶対に生むけれど,籍入れず,子 どもには,あとでこっそりと会わせてもいいや……, とも思っていた」と述べ,一人でも子どもを産む覚悟 をしていた。  Aのこのような産む決意を支援するように,友人ら も,「Aは,今まで苦労してきたから,人並みに幸せ になる権利がある」や,「陰口をたたくやつがいたら, はったおしておくから」と言ってくれていた。 2)安易に中絶をする他の女の子たちと自分は違うと いうプライド  Aは,高校在学中に学級委員を務めており,教員や 友人からも信頼が厚い存在であった。そして,妊娠が 判明した時点で,「(彼の周囲では,)中絶するのが普通 という感じで……。私は,そんな人たちと,一緒にさ れるのは嫌だった。私は,違うぞ!」と,自分は他の 女の子とは異なる存在だという自分自身へのプライド で,今回の妊娠を継続しようともしていた。そのよう な彼女のプライドの高さは,彼の母親が彼に,「今度 の彼女の髪の毛は何色?」と問い正した際に,「黒!」 と答えた彼に,「どうするの!そんなお嬢さんに,手 を出して!」と,親を驚かせたエピソードを,研究者 に誇らしげに語った様子からも伺うことができた。 3)苦労した生い立ちからの早期脱却と新しい家庭を 築く希望  Aは,入籍出来なくても,妊娠を継続して出産する 決意をした。しかし,その反面で「母親が離婚してと ても苦労した上に,自分をストレス発散の対象にして, 辛かった」と感じ,「お父さんとお母さんが二人揃って, 一緒に暮らしていることは幸せなことだ」という強い 憧れも持っている。そして,「ふつうに,家族が揃っ て暮らすようになりたかったから,早く,家を出て幸 せになりたかった」と,実家からの早期の独立願望を もっていた。 4)彼の両親から妊娠の承認を得るための,積極的な 対処行動  Aは,一人でも産む覚悟をしつつも,理想の家庭を 築きたいという思いがあるので,周囲の人がこの妊 娠を承認してくれるような対処行動に出ている。Aは, 実母や祖母自身も若年で妊娠・出産をしていたので, 「祖母は『やっぱり』と予想していたようで,『〇〇(長 女)や△△(次女)も,早く妊娠して離れていくよ』と(祖 母から)言われた」と述べ,「私の妊娠には,(家族の誰 もが)何も反対できない」という思い込みもあり,自 分の家族側からは肯定的な受け入れと支援をすぐにと りつけていた。  最後に,問題となるのが,彼が自分を親に紹介して くれないことであった。そこで,Aは「もういい!私 の方から,相手の家に電話しよう!」と決意して行動 した。そして,彼の母親も,「Aの出産決意を聞き,早 く会いたがっている」ことを聞き,彼の家族側からも 受容と支援をとりつけるに至っている。  妊娠中は,病院待合室で自分の母親程の年齢の人と 一緒で居づらかったことや,自分のプライドを強く もっていたAであったが,一番大変だったのは,彼の 親に会うときだったと回顧していた。高校中退となっ たことに対しては,あまり気にしていなかった。 2.Bさん(19歳・初産婦)の場合  Bにとって,10代妊娠を継続するに至った体験とは, 「過去の中絶の後悔から今回は産むという決意の元, 両親の祝福も受けた価値ある妊娠」という意味があり, それは以下の体験から形成されていた。 1)過去の中絶の後悔から,今回は絶対に産むという 確固たる決意  Bは,現在の夫との入籍前にその彼の子どもを流産 しかかり,医師の勧めで中絶したことについて,「あ とになって,苦しかったし,辛かった。なんで,あん なことをしたんだろう……って。赤ちゃんに悪いこと をしてしまった」と悔やんでいた。そのような過去の 苦い体験があったために,今回の妊娠は入籍直前に判 明したため,「2人で子供を欲しいと願って出来たので, うれしかった」と妊娠を受け入れ,即座に妊娠の継続 と出産を決意していた。 2)前回の妊娠時には得られなかった両親の祝福  Bは,前回の妊娠は,「未入籍の妊娠では親がすご く反対し,険悪な雰囲気になったが,今回は祝福され た」と笑顔で述べ,「親が喜んでくれたことが,自分に もうれしかった」と,周囲から祝福された妊娠で自分 たちも幸せであることを述べている。

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3)医療者による中絶を前提にした関わり方に反発を 抱き,転院  Bは,前回に中絶をした病院で,今回の妊娠が判明 した際に,医師から「どうするんですか?」「産むんで すか?」と怪訝そうに言われ,「今回の妊娠を継続する ことを訝しく思われて,すっごく嫌だった」と述べて いる。そのために,Bは妊娠12週に入って,そのクリ ニックの受診を変更している。 4)夫や転院先のメル友の支援により,出産への前向 きな取り組み  妊娠中には,前述の医師の心ない接し方等で精神的 ダメージを受けたが,次の病院では「夫が立会い分娩 に参加してくれるし,妊婦のメル友が出来てよかった」 と支援者を得て,前向きな態度で出産に向かうことに なった。 3.Cさん(18歳・初産婦)の場合  Cにとって,10代妊娠を継続するに至った体験とは, 「出会い系(IT)で知り合った相手との予定外の妊娠と いう困惑と共に,実父から承認を得るための学業への 前向きな取り組み」という意味があり,それは以下の 体験から形成されていた。 1)出会い系で知り合った相手との予定外妊娠に対す る困惑  Cは,「定時制高校では,クラスの中で私1人が女子 で,学校にはあまり関心がなかった」と述べ,「互いの 友人が出会い系サイトでアクセスし,その関連で知り 合った」という経過の予定外の妊娠であった。当初は, 「すぐに妊娠する予定はなく,適当に遊んでと思って いたから,妊娠の判定結果を見て違う!と思った」と, 直ぐには妊娠を受け入れることが出来ない状況にあっ た。 2)妊娠継続への躊躇に対する義母の強い後押し  C自身は,妊娠継続にすぐにはふみきれなかったが, 「彼は,妊娠の知らせに一瞬は驚いたが,喜んでくれ た」,さらに「彼の母親は,妊娠を喜んでくれ,『両親 に反対されたら,うちに逃げておいで』と言ってもらっ た」と,彼の側からの強力な支援を受けて妊娠継続を 決意するに至っている。 3)実父から妊娠継続の承認を得るための転校という 積極的な対処  彼の家族側からの受けいれは順調であったが,離婚 して別居中の実父は,「自分は学歴がなくて苦労した から,高校は出ておけ」と言い,妊娠継続には反対の 態度であった。そこで,Cは,担任の先生の助言を得, 定時制高校から通信制高校に転校する手続きを自分 で行なった。クラスの男子に対しては「おめえらとは, さよならだよ!」と未練なく転校を決意している。こ のように,妊娠継続の条件として出された,学業を両 立させる為の代案を自らが提案したことにより,実父 の妊娠継続および入籍の承認を得られることになった。 4)将来の就業を見据えた,妊娠と学業の両立  Cは,「私,コツコツやるタイプでなくて,グワ∼っ て一気にやるタイプ。課題が大変だけど,子どもが生 まれるとさらに忙しくなるから,できるうちにやっ ちゃおう。……将来は,福祉関係の仕事に就きたいな」 と,妊娠継続や入籍の前提条件になった学業と妊娠の 両立を実現するために,将来を見据えて通信制高校の 課題を終らせるように取り組んでいる。このような前 向きな姿勢は,子どもを産みながらも学業を継続させ ている通信制高校の同級生の姿を見ることやそのよう な友人と交わることから影響を受けていた。  さらに,彼や彼の家族の応援のほかに,「看護師の (実)母と看護学生の姉が,出産に立ち会うので安心」 という言葉にもみられるように,専門的な知識がある 肉親の支援があることも大きく影響していた。 4.Dさん(18歳・初産婦)の場合  Dにとって,10代妊娠を継続するに至った体験とは, 「過去の中絶の後悔から,今回は義母の猛反対や経済 的に困難な状況下でも産むという決意」の意味があり, それは以下の体験から形成されていた。 1)過去の中絶の後悔から,今回は絶対に産むという 確固たる決意  Dは,高校1年で中退し,彼とアルバイト先で知り 合った。妊娠の判明後,すぐに彼に相談し,「17歳の 時に中絶しているので,今回は絶対に産もう」という 強い意志の元で決意をした。Dの両親は,「私が(若く して)妊娠し,産むと決めたことに,すぐに同意して くれた」と,肯定的に受け入れてくれたことを述べて いる。 2)猛反対の義母から妊娠継続の承認を得るため,半 年間別居するという妥協  彼の父親は離婚して一緒に住んでいないので存在が みえないが,義母は田舎の地主という立場があり「世 間体を気にして,結婚してから妊娠するなどの順序に こだわり」,妊娠の継続に強く反対した。しかし,D が,今回は絶対に産むという確固たる決意をしていた

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ので,「妊娠を受け入れる代替に,彼の実家に同居す る話を出され,自分は嫌だった」と述べている。結局, 経済的に困窮しているために市営住宅への居住を申込 み,そこに引っ越すまでの半年間を別居してそれぞれ が実家で暮らす,という妥協案をとっている。 3)夫の休職による経済的困窮を緩和するため,公的 制度を積極的に活用  Dは,義母からの妊娠継続の承認をやっと得て,市 営住宅への居住申し込み手続きも済ませ,暮らしが順 調に進むかと思っていた。しかし,その矢先に「夫が, とび職の仕事中に目を怪我して,仕事ができなくな りお金に困った」,「夫の勤務中の怪我であったが,労 災が出ないことで,会社側と大変もめた」と述べてい る。このように経済的にとても困窮している状況の中 で,「出産費用を8割前借できる制度を自分で調べ,役 所に手続きに行った」というように,Dは妊娠継続の ための公的制度活用を自らで考えて行動化している。 4)困難な出来事が多々ある中での夫の未熟さの受け 入れ  上述のようにDは,義母の猛反対や彼の目の怪我に よる経済的困窮など,妊娠を継続する上で困難な出来 事が多い状況にあった。しかし,このようなDが,妊 娠中に一番辛かったことは,「夫が,自分の出産経過 などに興味がないことが不愉快で,夫は精神的に幼い」 と感じていたことであった。それにも関わらす,Dは, 現在の夫をパートナーとして受け入れ,妊婦健診時に も常に行動を共にし,子どもを生むという目的に向け て順調な経過をたどっていた。 5.Eさん(17歳・初産婦)の場合  Eにとって,10代妊娠を継続するに至った体験は, 「彼の家族との繋がりにより新しい家庭を築く喜びと 共に,医療者による中絶や母親役割を前提にした関わ りへ反発」という意味があり,それは以下の体験から 構成されていた。 1)避妊をしていなかった相手との予期していた妊娠 の喜び  Eは,「彼とは,避妊をせず,エッチをしていたか ら,いつかはそうなるって思ってた。わかったときは, やっぱりって」と,彼との付き合いの中で,妊娠する ことをどこかでは予期していた。妊娠を彼に報告する と,最初は驚いていたが,出産することに賛成してく れた。Eは,「彼の子どもができてうれしかった」と妊 娠・出産を予期し,自然にそれを喜んでいた。 2)彼の家族との繋がりによる,新しい家庭を築く喜び  Eの母親は病気がちであり,父親と離婚をし,Eが 小学生のころに再婚していた。このような背景からE は,「彼の母親や妹が,自分の妊娠をとても喜んでくれ た」と言い,「彼の母親が,本当のお母さんになってく れてすごくうれしい」と話し,自分に今までなかった 彼の家族との繋がりが出来たことをとても喜んでいた。 3)医療者による中絶や母親役割を前提にした関わり 方に対して反発,と同時に母親役割を自覚  Eは,最初に受診した診療所の医師や看護師の言動 から「中絶するって思っているような感じ」を受けた。 その後,Eが産むことを告げると,「(医療者に)親や彼 氏のことを色々と聞かれ,(私が)大人だったらそんな こと聞かないだろうに」と反発を感じた。さらに,こ とある毎に,「お母さんになるんだから」と言われるこ とにも,「自分が10代だから言われるんだ」と,特別 に問題視されている印象を受けていた。それに対して, Eは,心の中で「産むんだから,お母さんになるのは当 たり前,そのことはわかっている」と反抗しながらも, 既に子どもを産んでいる同級生の影響を受けつつ「私 は,母親になるんだ」という意識を次第に強めていった。 6.Fさん(19歳・初産婦)の場合  Fにとって,10代妊娠を継続するに至った体験とは, 「予定外の妊娠による心身の辛さと共に,合格大学を 退学したくないため学業との両立を決意」という意味 があり,それは以下の体験から形成されていた。 1)憧れの彼と性交渉できた喜びと,予定外妊娠に対 する困惑へ周囲の後押し  Fは,「部活に入ったときから,彼のことが好きだっ た。のりでエッチしちゃったけど,私は,すごくう れしかった」と,高校時代から憧れていた彼と性交渉 をもてたことを喜んだが,妊娠することは考えていな かった。  妊娠が判明した時には,どうしたらよいか混乱して いる時に,「お姉ちゃんはおろすのを反対した」や「彼 は,産んでいいよ」と言われ,周囲や彼の意見に後押 しされて,妊娠継続や出産を決意した。 2)大学入学直後の妊娠で,心身共に辛かった状況  Fは,「大学に入って直ぐだったから,友達にも,な かなか妊娠していることを話せなかった」という精神 的に辛い体験をしていた。また,「つわりが辛かった。 講義の途中でも吐きたくなったり,どうかなるかと 思った」や「早産になりかけてるって言われて薬を飲

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んで,薬を飲むとまた気持ち悪くなった」と,身体的 にも辛い体験をしていた。 3)合格した大学を退学したくないために学業との両 立を決意  Fは,「学生課の人が,休学や履修のことなどをいろ いろ教えてくれた。せっかく合格した大学だから,絶 対に辞めたくない」と本来の強い願望の実現のために, 心身共に辛い大学生活の開始時期に,妊娠と学業の両 立を求めて周囲に働きかける努力をしていた。 7.Gさん(17歳・初産婦)の場合  Gにとって,10代妊娠を継続するに至った体験とは, 「困惑した予定外妊娠にもかかわらず周囲の後押しが あり,友人から疎外された中でも新しい家庭へ希望を 抱く」という意味があり,それは以下の体験から形成 されていた。 1)妊娠判明の事実に対する恐怖と否定する気持ち  Gは,月経が遅れていることを自覚しながらも,「結 果が恐くて,なかなか検査ができなかった」と語り, 「(妊娠がわかったとき)どうしようと,真っ白になっ た」と,妊娠したことに対して強い否定的な気持ちを もっていた。そして,検査薬で妊娠反応が出た後も, 「間違いはある」と,なかなか妊娠を受け入れられず にいた。 2)困惑した予定外妊娠にもかかわらず,彼や家族の 後押し  妊娠をなかなか受け入れられないGであったが,「お ろすのは,妊娠したことより恐かった」と考えていた。 しかし,「(彼が)『産む?』って聞いてくれた。『どう する?』じゃなくて」や,「お父さんは(出産に)反対し たけど,お母さんも,おばあちゃんも,産みたかった ら産んでもいいよって」と言ってくれたという身内の 励ましと彼の理解により,妊娠継続と出産への決意が できた。 3)友人からの疎外と周囲の蔑視による孤立感  Gは,妊娠したことによって高校を休学した。学校 の友人のことを,「友達は,(妊娠したことがわかると) ちょっとひいてた。高校の友達とは,もうつきあわな いと思う」と語っていた。また,その後は,「誰とも話 すことがなかった。病院に行くと,他の人から,『こ の子?妊婦?』みたいに見られて,母親学級にも無理 矢理参加させられ,早く終わればいいとずっと思って いた」と話し,妊娠中には,友人や妊婦同士の交流が 全くなく,孤立感を強めていた。 4)新しい家庭を築くことへ希望を抱く  Gは,これまでの友人や病院で出会う人々との疎外 感を味わう一方で,彼に対して,「彼は,親と離れて いる。縁を切っているっていうか。それで,家族で動 物園とかに行きたいみたい」と言い,「早く,赤ちゃん と3人で出かけたりして,彼との新しい家族を作りた い」と,彼との新たな家庭を築いていくことへの希望 を強くもっていた。 8.Hさん(17歳・初産婦)の場合  Hの10代妊娠を継続するに至った体験とは,「過去 の中絶の後悔から,猛反対の両家を説得する決意と共 に,妊娠や母になるための準備に価値を見出す」と言 う意味があり,それは以下の体験から形成されていた。 1)過去の中絶の後悔から,今度は絶対に産むという 揺るぎない決意  H は,中絶を1回経験しており,そのことから常 に,「もしも,今度,妊娠したら絶対に産む」という強 い覚悟をしていた。今回の妊娠が予想されたときも, 「(彼に)妊娠していたら産む,一人でも産むから」と 伝えていた。Hにとって,妊娠=出産という揺るぎな い決意があった。 2)中絶体験や自分の思いを語って,猛反対の両家の 親を説得  彼の両親や自分の両親は,Hが学生の立場である等 の理由から入籍できる状況ではないために,中絶する ことを懇願した。何度も,話し合いをしていく中で, それまで家族には話していなかった中絶体験が,H自 身にとって,どんなに苦しいものであったかを話し, 「今回は絶対に中絶したくない」という強い意志を両 親たちに伝えた。Hは,自分の思いを率直に何度も伝 えることで周囲を納得させ,最終的に妊娠継続して出 産することに同意を得ることができた。 3)妊娠や母になる準備に価値を見出す  Hは,妊娠判明後に高校を中退したが,そのことは あまり重要ではないと考え,それよりも赤ちゃんが生 まれることの方に,大きな喜びを感じていた。「いろ いろ準備をすることが楽しい」と雑誌を読んだり,手 作りの赤ちゃん用品を準備していたりした。つわりに より,これまでの体重が5kg減るような体験も,「辛 いことではない」と語った。Hにとって妊娠,出産は, これまでの何よりも価値あるものになっていた。

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9.8名の10代妊娠を継続するに至った体験の特徴  上述の結果のように,予定外妊娠が多い10代女性 は妊娠を継続させるために,それぞれの意図する方向 に向かって,各自の課題に対処しているという共通性 があった。  そして,その女性たちの妊娠継続の決意に影響を及 ぼしている構成要素の特徴を類型化したところ,①「過 去の中絶の後悔から,今回は絶対に産むという確固た る決意」という『中絶体験の後悔』,②「前回の妊娠時 には得られなかった両親の祝福」や「妊娠継続への躊 躇に対する義母の強い後押し」という『周囲の人によ る受け入れ』,③「医療者による中絶を前提にした関 わり方に反発を抱き,転院」のような『医療従事者の 否定的反応』,④「新しい家庭を築くことへ希望を抱く」 という『新しい家庭を築く憧れ』,⑤「実父から妊娠継 続の承認を得るための転校という積極的な対処」や「中 絶体験や自分の思いを語って,猛反対の両家の親を説 得」という『自分の意志を貫く強さ』,という5点を共 通点として明らかにすることができた。

Ⅳ.考   察

 10代女性の妊娠継続に影響をもたらした5つの特徴, 『中絶体験の後悔』,『周囲の人による受け入れ』,『医療 従事者の否定的反応』,『新しい家庭を築く憧れ』,『自 分の意志を貫く強さ』,に沿って考察する。 1.『中絶体験の後悔』  B,D,Hの3名は,それぞれに過去の中絶を悔やみ, その辛い体験を基盤にして今回の妊娠継続へ強い決意 をしている。Bの場合は,社会人で入籍も目前の望ん だ妊娠であり,何も困難なことがあったようには見ら れなかった。しかし,妊娠37週に入り研究者との信 頼関係が強くなった頃,前回の中絶行為で胎児の生命 を一方的に絶ってしまった自責の念からの辛さを切実 に語り,その体験があったからこそ今回の望んだ妊娠 に至ったという経緯が判明した。  そして,DやHの場合にも,世間体や入籍と妊娠の 順番を気にする周囲の人々の猛反対を押し切り,一人 でも産む覚悟をした根底には,やはり中絶体験の後悔 が存在していた。このように生命に対する畏敬の念か らもたらされる中絶体験の後悔が,今度の妊娠こそは 継続させて児を産みたいと願う気持ちになり,ひいて は,10代女性の妊娠継続に対する揺ぎない決意につな がるという実態が1つ明らかになった。  先行研究では,葛藤がありながらも中絶を実施した 場合には,術後にその現実を受容出来ずに妊娠・中絶 を繰り返す問題が指摘されている(小笠原, 2003;北 村, 2000)。止むを得ない事であったとしても,彼女 らが1回目の中絶体験をどのように内面化していくの か,その悲嘆のプロセスを健全にたどれるように支援 し,今回の対象者のように「今度の妊娠こそは,絶対 に産みたい」と,前向きな方向を目指せる働きかけが, 妊娠中絶後の女性に対しては重要なことといえる。 2.『新しい家庭を築く憧れ』  本研究では,A,E,Fでは,「ふつうに,お父さん, お母さんが二人揃って,一緒に暮らしていることは 幸せなことだ」と感じ,「早く,家を出て幸せになりた かった」と,新しい家庭を築くことに期待して,妊娠 継続の決意をしていた。  さらに,Hは,妊娠したことに喜びを感じ,母にな るための準備に,これまでにない価値を見出している。 このように,彼女らは,自らの複雑な家庭背景からの 脱却や愛情の欠落を埋めるために,父母の揃った温か い家庭を築くことに憧れて希望を抱くことにより,若 年での妊娠継続や出産を決意することが明らかになっ た。 3.『周囲の人による受け入れ』  10代妊婦の周囲の人による受け入れは,対象者全 員に見られた体験である。 1)彼(夫)の受け入れ  先行研究によると,妊娠確定後,最初に相談した人 は,「相手の人」が6割を超えることが全国調査(玉田他, 1990;廣井他, 1997)で明らかにされている。本研究 においても,最初に相談した人物は,「彼」が8名中の 7名であった。そして,彼らの反応は,一瞬は躊躇し ていたが,その後すぐに妊娠継続を快く受け入れてい た。この彼の温かい妊娠の受け入れが,妊婦の妊娠継 続を決意させる大きな要素となっていることが,今回 の事例の明らかな特徴といえる。  しかし,彼(夫)の支援について,Aは,「いつまで も彼が両親に合わせてくれない」不満を抱き,Dは, 「自分の出産経過などに興味がない」様子を大変に不 愉快に思い,夫を精神的に幼いと感じている。10代妊 娠の相手男性の父性意識の低さは,先行研究(椎名他, 1999)でも指摘されていることであるが,本研究でも それを確認することができた。男性側の精神的な未熟

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さや心もとなさは,将来設計の見通しがあまいことに も関連していると考えられ,彼女らの妊娠継続の決意 を受け入れる際にも安易な同意になっていることも推 測できる。10代女性が安心して出産・育児を行なって いくには,相手男性の成長を見守りつつ,妊娠・分娩 や経済面に関する実践的な情報提供や支援を継続して いくことが必要である。 2)親・家族の受け入れ  親・家族の受け入れについては,本研究では肯定的 な場合と,否定的な場合に分けられた。肯定的な事例 として,Aは実母や祖母自身が若年出産を体験し,F の場合には彼の母親が若年出産をしていた。このよ うに,家族から肯定的な受け入れを得られる場合に は,10代妊婦を取り巻く人々の若年出産体験が大きく 関連していることが明確になった。本邦では,若年 妊娠の世代間伝承についての実証的な研究はないが, AMERICAN ACADEMY OF PEDIATRICS (2001)の 報 告では,若年妊娠は世代間で繰り返すことが多いとい われている。  一方で,家族による肯定と否定の両方の受け入れを 体験する事例も多かった。例えば,Bの場合には,未 婚時代の妊娠では両親が猛反対であったが,今回の入 籍直前の妊娠では祝福してくれ,その両親の温かい受 け入れがさらに本人の肯定的感情を強める要因につな がっていた。Cの場合には,実母や義母は肯定的な受 け入れであったが,実父が学業中断を気にするあまり に否定的であった。Dの場合には,自分の両親は賛成 するものの,義母が世間体や対面を気にして妊娠の受 け入れに否定的であった。このような事例が示すよう に,親が若年妊娠に否定的な態度をとる際には,「未 婚での妊娠」や「世間体」「学業中断の心配」という要 素が存在することが明らかになった。「結婚」という社 会的規範が10代妊娠の受け入れの障壁となっている ことは,田島(1996)や町浦(2000)の研究でも明らか にされてきたが,特に本人や相手の男性にとってでは なく,両家の親が結婚にこだわることが一層明らかに なった。  また,従来の研究では,「親」の受け入れといえば実 父母のことを示し(野末, 2000;片桐, 2001),妊娠の 継続が承諾されないときには,実父母を家族の誰かが 諭すような解決策が提示されていた(町浦, 2000)。し かし,本研究では,C,E事例のように「彼の親」が積 極的に妊娠継続や出産を支持し,その支援によって, 本人が実の親を説得するという解決策も判明した。こ のような解決策は,本人は産む意志があり義母などが 支援しているのに,実親の圧力により中絶選択を余儀 なくされている事例(小笠原, 2003)の際に活用できる ことを,関係者も知っておくべきであろう。 3)学校関係者の対応  10代妊婦8名の内,当時学生であった人は7名であっ た。そのうち学校関係者から肯定的支持を得ていた人 は,A,C,F,Gの4名と,比較的多いことが明らか になった。そのうちのCは,実父の学業継続案に対し て,担任の先生に相談して定時制高校から通信制高 校へ転校の措置を講じている。Gも,担任の先生に相 談し,単位制高校を紹介されて転校措置をとっている。 このように高校生の対象者の中には,本人が同一の学 校に在籍することに固執せずに転校をしながらも学業 継続が可能なことが見出せた。このことは,学生と妊 婦の両方の役割を担っていくことが困難とされた町浦 (2000)の研究を,さらに発展させた結果となった。  さらに,従来の研究(片桐, 2001;小笠原, 2003)では, 「妊娠しても退学にならいようなシステム」や「妊娠・ 育児をしながらも継続できるような教育システムの考 案」が提案されていたが,実際の教育現場では,通信 制や単位制という多様な単位履修方法の普及によっ て,10代妊婦の学業継続ニーズが満たせるように教育 環境が変化していることも伺うことができた。そして, 現場の教員たちがこのような転校措置を用いながら, 肯定的に彼女らを支援している実態も明らかになった。  このような教育システムの充実とその活用が,10代 妊婦の低学歴の解消やその後の安定した就労につなが ると考えられる。 4)友人の受け止め方  先行研究によると,妊娠確定後,最初に相談した人 物は「彼」であり,次に多いのが「友人」であった(玉 田他, 1990;廣井他, 1997)。本研究で,友人が肯定的 に妊娠を受け止め,支援をしてくれた妊婦は,8名中 の3名であった。そのうちのAは,学級委員で信頼を 得ていた人柄もあり,「今まで苦労してきたから,人 並みに幸せになる権利がある」や,「陰口をたたくやつ がいたら,はったおしておくから」と,友人からの強 い支援を受けていた。CとEは,通信制高校や定時制 高校という学習環境下で,同級生に子どもを産んだ経 験のある人がおり,彼女らからの直接および間接的な 支援を得ていた。このように,友人からの肯定的な支 援を受けることが多い反面,Gのように,友人から蔑 視され疎外感を味わっている者もいることが明らかに

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なった。  以上のように,10代女性の妊娠継続の決意を支えて いるキーパーソンは,「彼」や「親や家族」が中心であ ることが浮き彫りになった。それと同時に,学校関係 者や友人からも彼女らが励まされ,支えられていると いう実態が明らかになった。 4.『自分の意志を貫く強さ』  妊娠継続に際し,対象者全員が困難な状況が発生す る度に,それぞれが意図する方向に向かって打開策を 考えて対処していた。例えば,結婚できなくても母親 になりたいAであったが,彼が自分のことを親に紹介 してくれない状況に困り,自ら電話連絡を取ることに よって彼の両親と対面する段取りをつけていた。Cの 場合は,実父からの妊娠継続および入籍の承認を得る ために,その前提条件である「妊娠と学業の両立」を 実現するように転校して課題レポートに励んでいる。 このように,彼女らは,親の離婚や別居などの複雑な 家庭背景の中で成育して苦労してきたがゆえに,困難 な状況に遭遇しても挫折せずに,温かい家庭を築くこ とや将来の夢を実現する希望の元に,自分なりの解決 策を考えて対処する姿が見出せた。  また,Dは,夫の怪我による休職で経済的に困窮し た状況に陥ったが,自らが市営住宅優遇制度や出産費 用前借制度を調べて申し込み,出産に向けて積極的に 準備を行なっていた。Eの場合には,医療者による中 絶を前提にした関わりや母親役割を強制する言葉に対 して反発心を抱きながらも,母親への認識を深めてい た。  一般的に,若年妊婦は,高い自己否定感と低い自己 評価があり,疎外感や孤立感・劣等感を抱いていると 言われてきたが(Kaplan, 1979;Nelson, 1986),近年 では,10代妊婦が,妊娠や親になることを通してより 高い自己概念を抱くように変容していることも報告さ れている(Rojann, 1998)。本研究での10代妊婦たちも, 若年がゆえに体験する経済的困窮や偏見視などの社会 的に困難な状況に当惑しながらも,その状況に適応し て妊娠継続できるように,意志を貫きながら取り組ん でいた。 5.『医療従事者の否定的反応』  本研究の対象者の中で,医療従事者の言動によって 傷つく体験をした人は,B,E,Fの3名であった。そ の1つ目は,BとEが産む決意をして受診をした際に, 医療者から中絶を前提にした対応をとられて非常に傷 つけられている。一般的に,若年妊婦への対応は偏見 を取り除き,柔軟な態度で充分に傾聴することが必要 であると言われている(リウ真田, 1998)が,このよう な基本的な信頼関係の築き方すら実践されていない臨 床現場の実情が明らかになった。  2つ目は,EとFが,医療従事者から「お母さんにな るんだから」というステレオタイプな母親像の押し付 けや,そのために必要な出産準備教育に無理矢理に参 加させられたことである。これに対し,EとFは,非 常に強い反発を感じている。10代妊婦を特別な存在と してみすぎるが故に生じてしまう過度な母親役割の期 待や,一般の妊婦と同様に扱おうとする保健指導の実 施がかえって10代妊婦を傷つける結果になることに, 今後はさらなる工夫が必要であろう。  また,医療従事者の否定的な対応の結果,Bは,妊 娠12週に入って,受診先の病院を変更している。先 行研究(廣井他, 1997)では,若年妊婦ほど,初診時の 妊娠週数が遅く,そのために妊娠期の自己管理が遅れ て貧血や妊娠性高血圧症などの異常を招きやすいこと が問題視されている。本研究で明らかになったように, 妊婦側が知識不足なために初診時期が遅れる事例ばか りではなく,医療者側のパターナリズムな対応に反抗 して受診先が変更されたために,届け出の妊娠週数が 遅れてしまう現状にも理解を示していきたい。 6.体験の共通点の関連性  本研究で導き出された体験の共通点を,図1のよう に関連性を示した。即ち,予定外妊娠が多い10代女 性が妊娠を継続させるためには,彼女らの内面にある 「中絶体験の後悔」や「新しい家庭を築く憧れ」という 心理基盤に,「周囲の人による受け入れ」が影響を及ぼ す。そして,その心理基盤や周囲の人の支援を受けて, それぞれの妊婦が「自分の意志を貫く強さ」を増して, 各自が意図する方向に存在する社会的に困難な状況に 対処をし,さらに「自分の意志を貫く強さ」で妊娠継 続の決定に至ると考えられる。そのプロセスには,彼 女らを取巻く外的な要素である「医療従事者の否定的 対応」や社会の偏見視なども影響を及ぼしていること が明らかとなった。

Ⅴ.結   論

 本研究では,予定外妊娠が多い10代女性が妊娠を

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継続させるために,学業の両立や家族関係の調整など 多面的な体験をしており,それぞれに固有の意味が存 在していた。また,8例の体験の特徴として,5つの事 項を取り上げることが出来た。 謝 辞  本研究にご協力くださいました研究協力者の皆様と, 施設責任者およびスタッフの皆様に心より感謝申し上 げます。  尚,本研究は,平成17年度日本助産学会学術奨励 研究助成金の交付に基づいて行われたものである。ま た,文部科学省科学研究費基盤研究(C)(課題番号: 17592278)の一部としても行なわれた。本研究は,第 16回日本保健科学学会学術集会において発表した。 引用文献

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参照

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