理 学療 法 学 第37巻 第1号 22
・
−
28頁 〔2010年) 研 究 論 文パ ー
キ
ン ソ
ン
病
患
者
に
対 す
る
ト
レ
ッド
ミ
ル
後 進 歩行
運
動
が
平
地
歩 行
能力
に
及
ぼ
す 即 時効 果
*一
クロ スオ ー
バー
デ ザイ
ンを
用
い た検
討
大 森
圭貢
1)#鈴 木
誠
2)堀
田宗 文
3〕長 澤
弘4) 笹
益
雄
’) 要 旨 【目 的】本 研 究の 凵 的 は,
パー
キン ソ ン病 患 者に対 する トレ ッ ドミ ル後 進 歩 行が平地歩 行 能 力に及ぼす 即 時 効 呆を クロ スオー
パー
デザ インに よっ て検 証 するこ とである。
【方 法】Hoehn
&Yahr 分 類がllと皿 の パー
キ ンソ ン病 患 者6名 を無 作 為に 「前 進 歩 行開 始群 」,
「後 進 歩 行 開始 群」に割り付 け,
ト レッ ドミ ル で の前 進 歩 行,
トレッ ドミ ル後 進歩 行 を行っ た。
トレ ッ ドミル歩 行は傾 斜3%を設 け,
快 適 歩 行 速 度で5
分 間実 施し た。
平地歩 行能 力 は 10m 最大歩 行 速 度と歩数 を指 標とし,
介 人 前,
前 進 歩 行 後,
後 進 歩 行 後に 測定し た。
【結 呆】最大歩 行 速 度は介 入 前 トレ ッ ドミ ル 前 進 歩 行 後に比べ て,
トレッ ド ミル後 進 歩 行後が 有 意に速 かっ た.
: 歩数は介 入 前,
トレッ ドミ ル 前進 歩 行 後, トレッ ド ミル後進 歩 行 後の間で有意 差 は な か っ た。 【結 論 】パー
キン ソ ン病 患 者に対 する トレ ッ ドミル 後 進 歩 行は 歩幅を 小 さ く する こと な く,
最大 歩 行 速 度は高め る ことか ら,
平 地歩 行能 力 を 即 時 に 改 善 す る 効 果 を も ち,
有 用 な 運 動 と考 え ら れ た.
:
キー
ワー
ド パー
キン ソ ン病患 者, ト レッ ド ミル歩行,
歩 行能力 は じ め に パー
キ ンソン病 は,
安 静 時 振 戦,
筋 固 縮,
寡 動,
姿 勢 保 持 障 害を特 徴とする慢 性 進 行 性の神 経 変 性 疾 患で あ りi},
罹 病 者 数の 増 加が予 想さ れ る2)疾患で ある。
パー
キ ン ソ ン病 者に対し て現 在の症状を尋ねた場 合,
「歩 きにくい」 と訴 える者は多 く,
臨 床におい ても,
歩 き づ ら さを 主 訴 とする者は多い。
またパー
キン ソ ン病 者は 転 倒し やすい こ と が報 告’
15]
・
さ れており,
パー
キン ソ ン病 者の歩 行 障 害は歩 行 活動の減 少 に 加 え,
社 会参加の半
The F.
ffect{,f the B〜lckw }」1
闇
d Trcadmill Excrcise on thc GaiI八bility in the T
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Over [)csign1〕聖マ リア ン ナ医 科大学 横 浜li∫曲部病 院 リハ ビリ テ
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ショ ン音1〜〔〒2410811 神奈川県横 }兵 市旭区矢 指町11971}
Y〔}shitsしLgu O[n〔♪ri
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YDkoh田na City S巳ibu Hospital
2,川崎市
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多摩病院 リノ 、ビ リ テー
ション科Makoto Suzuki
,
OTR :Department of Rchabilitatic〕n.
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aL3 ) 堀田内 科 医院
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ショ ン学 科 Ilireshi Nagt」sawEt,
RPT: SclLod {〕f RehabTliLatio/l Faculty of Flctalrh nnd S〔,dal W〔,rk Kanaga−’
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ac.
jp〔受 付目 2008年9月22冂 /受 理目 2009年9月21[, 制限 や
QOL
の低 ドを もた ら すと考え ら れ る.
このた め, パー
キン ソ ン病 者の歩 行 能 力 改善に向けた効 果的 な介入 が 必 要であ る。
パー
キン ソ ン病 者の歩 行 能 力 改 善 を 目的と し た介 入 は,
さ ま ざ ま な方 法が報 告4.
9)さ れてい る。 歩 行を用 いた方 法とし て は,
体重支 持下で の ト レ ッ ド ミ ル前進歩 行8〕や リ ズム音 刺 激 を行いな が らの歩 行 練 習91 が あ り,
いずれも歩 行 速 度や歩 幅の 増 加が得 られ た と してい る。
我々 はパー
キン ソ ン病 者 を対象に トレッ ドミル上の 後 進 歩行を行い , 歩 容の 改 善が 即 時 に 得 ら れ たこと1ω,
6
ヶ 月 後に最 大 歩 行 速 度や重 複 歩 距 離,
6分 聞 歩 行 距離の増 大や じPDRS 運 動ス コア の改 善が得ら れ たこ とll 〕/2}を 報 告し た。 これ らの報 告は9
’ 刺 激 装 置や体重支 持 装 置を 必要とせ ずに実 施卩∫能 な 歩行能力改 善の介 人 方法と して 高い 汎 用 性が考え ら れ る。
しか し,
トレ ッ ドミル後進 歩 行 トレー
ニ ング効 果を検 証し た こ れ まで の研 究 は前 後比 較 研 究デザ インを 用い て行わ れてお り,
介人結果 が時 間 効 果やテ ス ト効 果な どの時 間 依 存性 交 絡の 影 響 を受けた 可 能性が考え ら れ るu 本研究の 目 的 は,
パー
キ ン ソ ン病 者に対 する トレッ ド ミル 後 進 歩 行が平地 歩 行 能 力 に 及ぼす 即 時 効 果につ い て,
時 間依存性 交絡 を制 御 することが できる クロ スオー
パ
ー
キン ソ ン病 患音 に対 する トレッ ドミ ル後 進 歩 行運 動効果 23 表1 対 象 者の 身体 特性と処 方 薬 剤 年 齢 身 長 BMI *1 Yahr 対 象 番 号 性 別 (歳) 〔〔皿L} 〔kg〆m2 ) 分 楽貞 罹 病 期 間 〔年 〕 L−
dQpa含 有 製 剤 処 方量Cmg
,’day>.
123456 性 性 性 性 性 性 女 女 女 男 男 男■
a26237 776676 148.
0143 ρ ⊥42.
Ol56.
0169.
8169.
4 ドパ ミ ン受容 体 刺 激 薬処 方 量 C.
mg,
’day) 介 人 23,
72LO22.
820,
521.
220,
7 皿 皿 皿 皿 H 皿 8.
OlO.
03.
52.
52、
02,
0 400.
0300.
0300.
0200.
0100.
D200、
D *2 15.
O Bl.
O C*
3 2.
O C*3 0.
5 P *4 2.
O C*3 2.
O C*/s 前 進歩 行 開 始群 前 進 歩 行 開 始群 後進歩 行 開 始 群 後 進歩 行 開 始群 前 進 歩 行 開 始群 後 進 歩行開 始群 マエ B 、d。 M、s , 1。d、。,
・ ・ ,, 。m。 、,rip、i。 、,
… C、b。 ,、。h。e,
*4’
Pergolide バー
デザ インを用いて検 証 する こ と で あ る、
、
対 象 対象者は,
当院 神経内科でパー
キン ソ ン病と診 断 され た外 来 患 者6名で あ る。
6名の 内訳 は女 性 3名, 男性3 名で パー
キン ソ ン病の重 症度を表すHoelm
&Yahr
の分 類 似 下Yahr 分 類)はH も しくは皿 で,
全対象者が在 宅で 生 活 して い た。 年 齢の 中 央 値は69.
5歳 (四分 位 数 :65.
0
一
73.
5
)で,
罹 病 期 聞の中 央 値は3.
0年 (PLI
分 位 数 :2D〜 8.
5),
L−
dopa 含 有 製 剤 量 の 中 央 値 は 250.
Omg /d1
(四 分位数 :175,
0 〜325.
0
), ドパ ミン受 容 体刺激 薬量の中央値は2,
0mg /d1
(四分 位 数 :0.
9〜
5.
3) で あっ た (表1)。
な お,
対.
象者 に は 荷 重関節の 整 形 外 科 疾 患,
片 麻 痺,
認 知 症のある者はいなかっ た。 本研 究 は,
神 奈川 県立保 健 縮 祉 大 学の研 究 倫理審 査 委 員 会の承 認 (承 認番号 15−
006)を受けた後, 担 当 医およ び理学 療 法士か ら,
本人へ 研究の 凵的と課題を 説明 し,
文書に よ る同 意 を 得て実 施 し た.
な お,
研 究 期 間 中 は,
い ず れの 対 象 者 も訪 問リハ ビ リテー
シ ョ ンやデイ サー
ビス な どの リハ ビ リテー
シ ョ ンサー
ビスは受 け ず,
患者 自 身に よ る 新た な運 動や活 動の開 始は行わない ように した。 方 法 1.
研究 デ ザ イン と手順 研 究 デ ザ イン は, クロ ス オー
バー
デ ザ イン を 用い た。
対象者 は 無 作為に 2群 に割 り付け,.
一
方を 「前進歩 行 開 始 群 (n=
3)」,
他 方 を 「後 進 歩 行 開 始 群 (n≡3
)」と し た。
「前 進 歩 行開始 群 」に対して は,
第1期に トレ ッ ドミ ル前 進 歩 行,
トレ ッ ドミ ル後 進 歩 行の順 に 実施し, 第2
期に トレッ ドミ ル後 進 歩 行,
トレッ ドミル前 進歩 行の 順 に実 施 した。
ヲ∫,
「後進 歩行 開 始 群」に 対 し て は,
第 1期に トレッ ドミ ル後 進 歩 行,
トレッ ド ミル前 進歩 行の 順に実 施し,
第2期に トレッ ドミル前 進 歩 行,
トレ ッ ド ミル 後 進 歩 行の順に実 施し た。 両 群とも各 期に おける歩 行 トレー
ニ ン グ直 後に平 地 歩行 能 力 を評 価し た。
1
)平 地 歩 行 能 力 平地 歩 行能力 は,
室 内10m の 直 線 路の最 大 歩 行 速 度 と歩 数を指 標と し た。
測定は,
1m の 助 走路を設けた室 内10m
の距 離 をで きる だけ 速 く歩 くよう教 示し,
測定 開始ライ ンを超 えた接 床か ら101n先の ライン を 超 え た 接 床ま での歩 行時間 をス トッ プウォ ッチに よっ て 100分 の 1秒単位で計 測 した.
歩 行 時 間の測 定は2
回 実 施 し,
短い記録か ら歩 行速度 (m /sec)を算出 した。
また, 歩 行 時 閊の測定時に所 要 歩数 (歩)を計測し た。
2) トレ ッ ドミ ル歩 行トレッ ドミ ル前 進 歩 行 及び後 進 歩 行は
,
先 行 研 究1〔}一
一
12) を参 考に それ ぞれ傾 斜 を3
% 設 け,
対 象 者 が快 適 とする 速 度 で5分 間 実 施 し た (図L2
)。
快 適 速 度の設 定 は,
研 究の 開 始に先立 ち,
2日あ るい は3目問に わ たっ て ト レッ ドミ ル前 進お よ び 1・
レ ッ ドミ ル後 進 歩 行を行い,
そ れ ぞ れ O.
8km /hか ら徐々 に慣 ら し L⊥〜
1,
6 km /llの 問 で自覚 的に 「楽である」 と感じ ら れ る速 度 を採 用した。 3) 研 究 手 順 (図1,
2) 第1期,
第 2期と も,
on−
off現象に よ るH
内変動の 影 響を除 外 する た め,
介入 お よ び評 価の実 施は医 師も しく は理 学 療 法士が on の状 態である こ と を催 認し て行っ た。 またwearing offの影 響 を除 外 する た め,
通 常の服 薬 を 確 認し,
かつ 第1期,
2期 と もに 同一
の 時間 に介入 お よ び評 価を行っ たtt 第1期 (図1> 対 象 者は介 入 前の平 地 歩 行 能 力の 評価 後,
「前進 歩行 開 始 群 」は トレッ ドミル前 進 歩 行 を実 施し, 「後 進 歩 行 開 始 群 」は トレッ ドミル後 進 歩 行 を実 施し た。
トレッ ド ミル歩 行 終 了 直 後 に は,
介 入 後の平 地 歩 行 能力を評 価し た。
平 地歩 行 能 力 評 仙の後に は15分 間の回 復 時 間 を設 け た、
,
回復 時 問の後に は,
「前 進 歩 行開始 群 」は トレ ッ ドミル後 進 歩 行 を 実施し,
「後 進 歩 行 開 始 群 」は トレッ ドミル前進 歩行を実 施し た。
それぞれの トレッ ドミ ル歩 彳1’
終 了 直 後には,
改 めて介入後の平地歩 行 能 力を 評仙し た。
第2期 (図2) 第2期は第1期の 7日後に行っ た。 第2期は,
トレッ24 理学療 法 学 第37巻 第1 号 平 地歩 行 能 力 評 価 介 入 (トレッドミル歩 行 )
⇒
撫
前 進 歩 行 開 始 群 前 進 歩行 平 地歩行 能 力 評 価 介 入 (αA1
) (トレッドミ ル歩 彳予)1
慰
1
後 進歩 行 平地 歩 行能力評 価 (βA1)1
辮
平地 歩行 能 力 評 価鑾
1
盤
画
群 介入 (トレ ッドミ丿レ歩 彳テ) 後 進 歩行 平 地歩行 能 力評 価 (βB1)1
辮
1
介入 (トレ ッドミル歩行) 躍 が } 鋒 前 進 歩 行 平 地 歩 彳予豢髭力 言平価 (αB1)1
.盤
図 1 各 トレ ッ ドミ ル歩 行と第1期の ヂ順 トレッ ドミ ル歩行は前 進,
後 進 歩 行と も両 側の手 す りを把 持 し,
傾 斜3%,
速度1.
1−
1.
6km /hの間で の快 適 速 度で の歩 行 を5分 冏実 施 平地 歩行 能 力 評 価 介入 (トレ ッドミル歩行 )糶
蘢
慰
攤
籬
後 進歩行 平 地歩行 能 力 評 儺 介 入 (βA2) (トレッドミル歩 行 )雌
ヨ 賦
1
前 進 歩 行 平地 歩行能力 評 価 (αA2)1
鰹
平地 歩 行 能力評 髄篷
1
鰻
1
群 介入 (トレッドミル歩行 ) 前 進 歩 行 平 地歩行 能 力 評 価 介入 (αB2) (トレッドミル歩行 )1
.構
1
後 進 歩 行 平地歩好能力 評 価 (βB2)1
慰
図2 第2期の手順 第2期は各群 と も介入 と し て行 うトレッ ド ミル歩行の順序を第1期と は 逆 に して実 施.
ドミ ル歩 行の順 序 を,
「前 進 歩 行 開始 群 」と「後 進 歩 行開 始 群 」の間で換 えて行っ た。 す なわち,
「前 進 歩 行 開始 群1
は最 初に ト レッ ドミ ル後 進 歩 行 を 行い,
15分 間の 回復 時 間の後に トレ ッ ドミ ル前 進 歩 行 を 行っ た。一
方,
「後 進 歩 行 開 始 群 」はトレッ ドミ ル前 進 歩 行を行い,
15 分 問の 回復 時 問の後に ト レ ッ ド ミ ル後 進 歩 行を行っ た。
全 対 象 者からは,
そ れぞ れの トレッ ドミ ル歩 行 後の感 想 を聴 取し,
分 類 して記 録 した。2.
分析 方 法 分 析は最 初に第1期と第2期閭の持 ち越 し効果を検討 する た め,
第1期と第2期そ れ ぞ れの介入前の歩 行 速 度 および歩 数 を比 較した。 次に 口内での 持 ち 越し効 果 を検 討した (図1,
2)。 後 進 歩 行の持ち越し効 果の検 証は,
後進歩 行に先1’
tlつ 前 進 歩 行 後の平 地 歩 行 能 力 (αAl + αB2)と後 進 歩 行に続 く前 進 歩 行 後の平 地 歩 行 能 力 (αBl + αA2)を 比較しパ
ー
キン ソ ン病 患 者に対 する トレッ ド ミル後進 歩 行運 動 効 果 25 表2 対象者の平 地 歩 行 能 力 対 象者 番 号 介 入* ベー
スライン 歩行 速 度 歩 数 (歩)Cm
/sec) 前進 歩 行後 歩 行速度 歩 数 〔歩〉 (m /sec) 後 進 歩 行 後 歩行速 度 歩 数 (歩 ) (宝D !sec ) 1 2 3 4「
D 6 前進 前 進 後 進 後 進 前 進 後 進 第1期 第2期 第1期 第2期 第⊥期 第2期 第1期 第2期 第1期 第2期 第1期 第2期 1.
401.
341.
631、
471、
611.
611.
27 ⊥.
36L68L681.
・
19 ⊥.
52 18.
0019 ρ017 ρOl7.
DO16.
oo16.
0023.
0018.
00 上5,
0015.
OO17.
0017.
00 1.
40 ].
381.
54L371.
49 ユ.
571,
391.
39 工.
52L771.
30「 /.
60 19.
0019.
0017.
0〔} 18.
〔}017.
00 ユ6.
0017.
OO17.
00 /5.
001S.
eo18.
0017,
00 659733706327 4 コ 4b7 £ 凶 β β 7b。
6 111111111111 888666735467/ 11111111 ] 11 * 前 進 ;前 進歩行 開始 群,
後 進;後 進 歩 行 開 始 群 た。
前 進 歩 行の持 ち越し効 果の検証は,
前進 歩 行に先 立 つ後 進 歩 行 後の 平地 歩 行 能 力 (βBl +βA2
)と 削 進 歩 行 に続 く後 進 歩 行 後の平 地 歩 行 能 力 (βAl + βB2)を 比較 し た。
最 後に介人 が 歩行速度お よ び歩 幅に及ぼす 効 果とし て,
介 入 前,
トレ ッ ドミ ル前 進歩行後,
トレッ ド ミル後 進 歩 行 後の歩 行 速 度と歩 数の そ れ ぞ れの差 を 比 較 し た。
統 司’
的 予 法はWilcoxon
の符 号 付 順 位 検 定を用い,
有 意確率は正 確 確 率 法に よっ て求めた。
統 計 的 有 意 水 準は,
持ち 越 し 効 果の検証に は危 険 率5% 未 満とした。 介入が 平地歩 行能力に 及 ぼ す効果の検証 に は, 各 介 入 間の比 較 にお ける第 1 種の 過 誤を もた らす危 険 性 を 考 慮 し⊥3),
ボン フェ ロー
二 法に よる修正 p値を統 計 的 有 意 水 準と し て採 用 した。 す なわち危 険 率5% を比較 検 討し た数であ る3
(介人前と前 進 歩 行 後 間,
介人前と後 進 歩 行 後 問,
前 進歩行 後と後進 歩 行 後問)で 除 し た値の近 似 値である 危険率 1.
7%未満を統 計的有意水 準とし た。
統 計解析ソ フ トはSPSS Ver.
1/,
0Jを 用い た。
結 果 研 究 期 間 巾に薬 剤の処 方に変 更があっ た者はい なか っ た。 全 対 象 者が歩 行 速 度1.
ユ〜
1.
6kmfh
問で の5
分 問の ト レッ ドミ ル歩 行 を 完 遂 で き, 介入 前後の 平 地歩 行能力が 評価で き た (表2
)。
歩行速 度や歩 数 は,
そ れ ぞ れ 中 央値 (四分位 数 )で示 す。 介 入 前の歩行速 度 は,
第1期1.
55 (1.
37−
1.
64)m /sec,
第 2期 1.
49 (1.
35−
1.
63)mfsec であ り,
有 意 差 は な かっ た (p=
1,
00)。 同様に 介入前の 歩 数 は, 第 1期 17,
00 (15.
75−
1925) 歩,
第2
期17.
00
(15.
7E−・
18.
25
)歩 で あ り,
有 意 差はなかっ た 〔p=
1.
00
)。
1.
90 1、
80 嘩.
70 歩 1・
601Sllso
!
(m、
ノsec } 噸.
40 1.
50 〔137−
L63〕L
L
、
T
P=
0.
Gl5 1.
45Cl.
35−
t56)T
:
1
:
1
−_ .
t
、璽 一 中央 値 1 個 分 位 数 ) 1.
61 く148−
167) T[
L一
P≡
o.
OQZ 介入前 (s=
12冫 前進歩行後(n#2) 後 進歩行 後 〔n⇒2)ー
一
図3 介 入 前,
前 進 歩 行 後,
後 進 歩 行 後の10m 最 大 歩 行 迷 度 後 進 歩 行に先立つ 前進歩 行後の歩 行速度,
歩 数は そ れ ぞ れL44
(1,
37−L60
)m /sec,
17.
00
(16,
50一
ユ8.
25) 歩,
後 進 歩 行に続 く前 進 歩 行 後の歩 行 速 度,
歩 数 は それぞれ 1.
46 (1.
38−
1.
58)mf’
sec,
17,
00 (15.
75−
18、
25) 歩であ り,
歩 行 速 度,
歩 数とも有 意差 は な かっ た (p=
1.
OO,
p=
LOO)。
前進歩 行に先立つ 後 進 歩 行 後の歩 行 速 度 歩 数は それ ぞ れ 1.
60 (L47−
1.
66)m /sec,
16.
50 (15.
75−
1725) 歩,
前 進 歩 行に続 く後 進 歩 行 後の歩 行 速 度,
歩 数はそ れ ぞ れ ユ.
61
(1,
48−1.
73)mfsec,16,
00
(13.
75−
18.
00
) mfsec で あ り,
歩行速度,
歩 数と も有 意差 は な か っ た (p=0.
56,
p=
0,
63)ロ
介入前,
ト レッ ド ミ ル前進 歩 行 後,
ト レッ ドミ ル後 進 歩 行 後の歩 行 速 度は,
そ れ ぞれ1.
50
(1,
37−1.
63
)m,
i’
sec,
1.
45 (1.
38−
1.
56)m /sec,
1,
61 〔1.
48−
1.
67)m /secであ り,
後 進 歩行 後の最大歩 行 速 度は介 入 前 〔p=
0.
0工6),
お よ び前進歩 行 後 (p≡
0.
002)に比べ て有 意に大 きかっ た (図3),
,
介 入 前,
トレ ッ ドミ ル前進歩 行 後,
トレッ ドミ ル後 進26 理 学 療 法 学 第37巻 第1号 20
.
OO 18.
OO 歩 数 16.
GO 〔歩 } 1400 12.
。oi 一1
「
日
一
「
.
.
.
1
−
11、
00 “6.
00−
1S.
OO) ρ』 141噛
望
蒔 (1625−
1呂00) 中 央値 〔四分 位数 〕 16、
00 〔1525一
ヨ7 フ5}コ
一 P=
0365 [.
一
.
」 P=
e.
047 介入前 〔n=
12) 前 進 歩行 後 (n=
12) 後進 歩 行後 〔n=
12〕 図4 介 入 前,
前進 歩 行 後,
後 進 歩 行 後の ⊥Om 所妛歩 数 歩 行 後の歩 数は,
順に そ れ ぞ れ 17.
00 (16.
00−
18.
00)歩,
17.
00q6 .
25−18.
00
) 歩,16,
00
(L5.
25−
17,
75) 歩 で あ り,
有 意 差が な かっ た (図4).
J トレ ッ ドミ ル前進 歩行 後の感 想は脚が出しづ らい,
大 腿が硬 くなる,
前 か がみ になる,
歩 きづ らいであ り,
ト レ ッ ドミル 後 進 歩 行 後の感 想は身 体の調 了 が よい,
歩き 易い , 脚 が 伸 び る,
で あっ た。
考 察 木 研 究は,
パー
キン ソ ン病 者に対 する トレッ ドミ ル後 進 歩 行が平 地 歩 行 能 力に 及 ぼす即時効 果につ い て,
クロ ス オー
バー
デ ザ イン を 用いて検証し た。
パー
キン ソ ン病 者に対 する トレ ッ ドミ ル後進歩 行は,
歩 容の改 善,
最 大 歩 行 速 度や重 複 歩 距 離,
6分 間 歩 行 距 離の増 大,UPDRS
運 動ス コ アの改 善が得ら れ たこ とが 報tr
・
10−
12/・
さ れて いる。
しか し,
これ らの報 告は,
酊 後 比較デザ インによ る 検 討で あ り,
時 問 効 果 やテス ト効 果 などの時 間 依 存 性 交 絡の影 響によりトレー
ニ ング効 果は 明 ら か と はい えない。
クロ ス オー
バー
デザイン は,
研 究 に 必 要 な 対象者 数が少なく,
時間効果や テ ス ト効 果な ど の時 間 依存 性 交絡の 制 御が 可能であること か ら,
トレ ッ ドミル後進 歩 行の効 果 が 明 ら か に な ると考えられた。
今 同 用い たクロ ス オー
バー
デザ インは第1期と第2期 か ら構 成 した。
第1期は同 目内に2つ の群が 15分 間の 回復時 間 を 設 け2つ の 異なる介 入を行っ た。
第2期は第 1期 の 7日後に 設 け, そ れ ぞ れの群が第 1期と異 なる順 序で介入 を行っ た。
クロ ス オー
バー
デ ザ インは持ち越し効 果が問題になる こ と が あ る13)。
持 ち 越し効 果の 除 外に は回 復 時 間や回 復 期間を 長 く設 ける こ と が有 効で ある。
しか し,
早期パー
キ ン ソ ン病者に対 する 運動 療 法は推 奨さ れてお り,
回 復期問を 長 期に設 けた場 合,
対 象 者に不 利益 が 生 じ得る こ と,
またパー
キ ン ソ ン病は進行 性 疾患であり長 期 間 に わた り同一
の 介入 を彳」二っ た場 合,
症 状の変 化 が 生 じ る 対 象 者が 出 現 する可能 性がある こと,
を考 慮して回復期 間 を7囗問と定め た.
:
そ の結 果,
第1期と第2期 間のベー
スライン の歩 行 能 力に有 意 差が な かっ た。
日内の持ち越 し効果 を 除 外 す る た めの 回 復 時 間 は,
パー
キンソン病 患 者で はwearing off現 象 などの 日内 変 動に伴 う変 化が介 人 お よ び帰 結 尺 度に影 響を及ぼす弊 害 を考 え,
短い 時 間 に介入及び測 定を終 了 する ことが必 要 と考 え15分 を 設 け た、
その結 果,
後 進 歩 行に先 立つ 前 進 歩 行後の歩 行速 度および歩 数と後 進 歩 行に続 く前 進 歩 行 後の歩行速 度 お よ び 歩 数 は,
そ れ ぞ れの 問に有 意 差がなかっ た。 同様に 前進 歩行に先立つ 後 進 歩 行 後の歩 行 速 度お よ び歩 数と前 進 歩 行に続 く後 進 歩 行 後の歩 行 速 度およ び歩数は,
そ れ ぞ れの 間に有 意 差は な かっ た。
こ れ らの こ と か ら,
本 研 究に 川いた クロ ス オー
バー
デザ イ ンは,
日問,
囗 内の持 ち 越 し効 果の検 証 が 行 え,
かつ 凵内,
凵間の持ち 越 し効 果が結 果に及ぼす 影 響が少ない,
妥 当 なノ∫法と考 えら れ た。
平 地 歩 行 能 力は,
10m 最 大 歩 行 速 度と所 要 歩 数 を用 いた。
最 大 歩 行 速 度は,
自Lh速 度での歩 行に 比べ歩幅や 歩行率の 変 動 が 少 な く,
妥 当 性 が 保 証 さ れてお り14〕,
歩行 障 害 者の 歩行 能 力の 改善,
維 持の 指 標であ る15)。
ま たパー
キ ン ソ ン病 者における歩 行 速 度や 歩 幅は,
Yabr 分 類と関 連が報 告さ れてい る15)。
こ れ らの こ とか ら,
パー
キン ソ ン病 患 者に おけるユOm
最 大 歩 行 速 度と 所 要 歩 数は,
平 地 歩 行 能 力の指 標 とな りうるもの と考 え ら れ た。
介入 前,
トレッ ドミ ル前進歩 行 後,
ト レッ ド ミル後進 歩 行 後の最 大 歩行 速 度を 比較し た結 果,
トレッ ドミ ル後 進 歩 行 後は,
介 入 前および前 進 歩 行 後に比べ,
有 意に速 い値であっ た。
歩 数に関し て は,
介入前,
トレッ ドミ ル 前 進 歩 行 後,
トレッ ドミル後 進 歩 行 後の 間で有 意差は な かっ た。
パー
キン ソン病 者は,
小刻み 歩行や す く み 足 と い っ た歩 行 障 害が 出現 するこ と,
「歩 き に くい 」と訴 え る者が多い こ と3},
転倒 しやすい こ と が 報 告4−
6} さ れて い る。 今 囘の検 討で は,
トレッ ドミ ル後 進 歩 行 後に最大 歩 行 速 度が速 く,
かつ 歩 数の増 加が な かっ た、
このこ と か ら, パー
キ ンソ ン病 者に対 する ト レッ ドミ ル後進 歩 行 は平地歩 行 時の歩 幅の減 少 を 引 き起こすことな く歩 行 速 度 を 高 め る 即 時 効 果 が あ り,
平 地 歩 行 能 力 を 改善する有 用な 運動と考え ら れ た。
後進 歩 彳丁の歩 行様 式は,
前 進 歩 行と は異 な り,
立脚 期 に前 足 部 か ら着 床 し,
遊 脚 期 には股 関節を伸展し て下肢 を 振 り 出 す。
ま た後 進 歩行 中の筋 活 動は,
着 床 初 期にハ ムス ト リングスや腓 腹 筋の筋 活 動が高まる こと が報告17: さ れて い る。
本 研究で は後 進 歩 行 中,
歩行 前後の筋 活 動 や姿 勢・
歩 行 分 析を評 価してお らず,
トレッ ドミ ル後 進 歩 行中 や その前 後の筋 活 動や姿 勢・
歩容に 及 ぼ す 影響は 明 ら かで はない。
し か しなが ら,
こ の ような前 進 歩行 とパ
ー
キン ソ ン病患者に対する トレッ ド ミル後 進 歩行運動効 呆 27 は異な る 歩 行 様 式で,
かつ異 な る 筋 活 動 での歩 行 を連 続 して繰 り返 すことが,
前傾 姿 勢の改 善,
歩 行 中の骨 盤 帯 や 股 関 節の伸 展 に作用 し,
歩 行 速 度の増 大に 関与 した と 考え ら れ た。
ト レッ ド ミル後 進 歩 行は1.
i
常 慣れ親しんだ歩 行 様 式で は ないた め,
運 動の 導 人 や 遂 行 が 困 難 に な る な どの 問 題 が考 えら れる。
後 進 歩 行で は前 傾 姿 勢を と ることで,
下 肢の振 出しの際の股 関 節 伸 展の代 償 として作 用 し,
前 傾 姿 勢 を伴いやすい パー
キンソ ン病 患 者では, 後 進 歩行時 の下 肢の振出 しが容易に な る と考え られ る。
ま た全対 象 者が トレッ ドミ ル後 進 歩 行を完 遂で き,
歩 行 後の感 想は 体 調や歩 行の改 善の 自覚 を示 す もの であっ た。 これらの こ と から,
トレッ ドミ ル後 進 歩 行は トレー
ニ ング と し て 用い る 際の導 入 や 継 続 とい っ た 而 に おいて も 良 好 なrl丁能 性が考え ら れ た。
本 研究 は,
対 象 者が Yahr 分 類H と皿 のパー
キ ン ソ ン 病 者であ り,
他の分類のパー
キ ンソ ン病 者に対 する効 果 につ いて さ らに検 討 する必 要がある。 また, 効 果の持 続 時 間 や 適 切 な介人 頻 度,
トレッ ドミル後 進 歩 行 が 平 地 歩 行 能力を改 善 する機序につ いて体 幹や下 肢の筋 活 動や姿 勢・
歩 行に関 する 空間 的な指 標を用い て のさ らなる検 証 が 必要と考え られた。
結 論 パー
キン ソ ン病者に対す る トレッ ド ミル後 進 歩行が’
lt
地歩 行能力に及ぼ す即 時 効 果につ い て,
クロ スオー
バー
デザ インを用い て検 証し た。
その結 果,
最 大 歩 行 速 度は 介 人 前,
トレッ ドミル前 進 歩 行 後に比べ て , ト レッ ド ミ ル後 進 歩 行 後が有 意に速かっ た。
歩 数は介入 前,
トレッ ド ミル前 進 歩行 後,
トレッ ド ミル後 進 歩 行後の間で有意 差 は な かっ たtt こ れ らの こ と か ら,
パー
キン ソ ン病 患 者 に対 する トレッ ドミ ル後 進 歩 行は歩 幅を小さくする こと なく,
最大 歩行速疫を高める こと か ら,
平 地 歩 行 能 力 を 即 時に改 善 する効 果 を持 ち,
有 用 な運 動と考 えら れ た。 文 献 1) 山 永 裕 明,
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<Abstract>
The
El}fect
of theBackward
Treadmill
Exereise on the Gait Abilityin
theParkinson's
Disease Patients: a Cross-Over DesignYoshitsugu OMORI, RPT.
Masuo
SASA,
MD
Department
ofRehabilitation,
St
Marianna UitiversitySchool oflhdicine,
Ybkohama
Cdy
Seibu
Ilbspital
Makoto
SUZUKI,
OTR
Department
of
Rehabilitation,KttwasahiMunicipal7Ztma
Hospital
Munetumi
HOTTA,
MD
Hbtta
Clinic
HiroshiNAGASAWA, RPT
School ofRehabilitation Faculty ofUlealth and SocialWbrk Kdnagawa
University
of
lluman
Services
Purpose: The purpose of this study was to examine the effect o'rthe backw・ardtreadmill exercise on the gaitability inParkinson'sdiseasepatients.
Methods/ The $ubject.s were six Parkinson's
djsease
outpaLients{median
age:69.5
years/
Hoehn
&
Yahr
sta.cre:ll
orM).
The
study made use of a crossoverdesign.
Subjects
were al]ocated at randorn to a"forward
waiking group"{n
=
3)and a "backward walking group"(n
=
3).
Treadmiliforward
walking and backward ",a]king were carried out by the respective groups on a treadmillfora duration of 5 rninutes at a comfortable speed
(1.1
・s-
1.6kmlh} on a3%
slope setting.aait
ability was evaluated
by
maximum speed{m./sec)
alld number of steps(steps)
over10
mResults:
The
median vaLues of pre-interventionwalking speed(quartiles)
was 1.50mlsec{1,37-1.63},
Post-intervention
walking speeds were asfotlows:
post.treadmi]1for",ard
walking speed 1.45m/sec{1,38-1,56);
and post treadmillbackward
walking speed 1.61 mlsec(1.48-1.67).
Post-lnt.ervention walking speed after treadmi]1 backward walking was significantly lasterthan at pre-interventionand post treadllw'Jlforward walking. The median values of walking steps
(quartiles)
were as foLlows: pre-intervention 17.00steps(16.00-18.00}i
post treadmillforward
walking 17.00steps(16.25-18.00}:
andposttreadmill
backward
walking 16.00steps(l5.25-17,75).
There
was no significantdifference
among these va]ues.Conclusion: Aceord{ng to the results of this study, treadmM backward walking forParkinson's