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骨粗鬆症治療の実際

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 681 ~ 682 頁(2015 年) 骨粗鬆症治療の実際. 681. 合同シンポジウム 6(日本骨粗鬆症学会). 骨粗鬆症治療の実際* ─検診,検査,治療の現状と課題─ 細 井 孝 之**. 骨粗鬆症検診の重要性. 平成 20 年度には老人保健法が高齢者の医療の確保に関する法 律に全面改正されたことに伴い,骨粗鬆症検診は健康増進法に. 骨粗鬆症の予防と治療における進歩,特に薬物療法における. 基づき市町村が実施する健康増進事業に衣替えされた。. 近年の進歩には目覚ましいものがあり,骨折予防をエンドポイ. この間,骨粗鬆症財団ならびに日本骨粗鬆症学会は骨粗鬆. ントに置いた薬剤の開発と実用化は今もなお進展している。高. 症検診に関する調査研究を随時行い,骨粗鬆症検診の実施を. 齢化が進む現在,高齢者の ADL・QOL を損なう骨粗鬆症性骨. サポートする資材としてマニュアル等の作成,出版を行って. 折予防の重要性がますます高まっており,これらの薬剤の適切. きた。. な使用とそれを支える栄養指導,運動指導の充実が望まれる。 一方,1,300 万人にも達すると考えられている我が国の骨粗鬆. 骨粗鬆症検診の方法. 症患者のうち,骨粗鬆症治療薬を処方されている割合は 20 ~. 骨粗鬆症は他の生活習慣病と同様に複数の遺伝的な素因と生. 30%の間であることが推定されており,薬剤の有用性が生かさ. 活習慣因子がその発症に関与する多因子疾患のひとつである。. れていないことがうかがわれる。. また,成長期における骨量の増加,中年期以降の骨量減少,そ. 骨粗鬆症はその合併症である骨折が発症するまではなんの自. して中高年期の骨折リスクの上昇といった時間軸と閉経に伴う. 他覚症状もなく,骨折発症を未然に防ぐためにはなんらかの. 急激な骨量減少という性差が骨粗鬆症予防におけるポイントと. 「きっかけ」が必要である。生活習慣病における骨折リスクや. なる。. 転倒リスクに関する啓発を介した骨粗鬆症診療のはじまりも期. 現在の骨粗鬆症検診は 40 歳からの節目検診であり,問診と. 待されるがそれらのアプローチは緒についたばかりといえる。. 骨量測定からなっている。このシステムは疾病の予防対策を大. 一方,我が国の骨粗鬆症検診はその前身も含めると 20 年余り. きくハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチに分. の歴史をもち,本症の予防啓発や早期発見を目的とする事業で. けて考えた場合,ハイリスクアプローチがとられていることを. あるが,いまだ受診率は低く,多くの課題が残っている。. 意味する。すなわち,予備群や罹患者を見出して,食事や運動. 我が国における骨粗鬆症検診. の指導を行い,必要に応じて医療機関受診を勧める事業である。 また,広く行われている後期高齢者健康診査や特定健康診査. 現在の骨粗鬆症検診は健康増進法のもとで行われており,主. における質問項目として,身長の低下や四肢の骨折の既往,転. 体は市町村である。歴史には,昭和から平成へと移る前後の. 倒履歴,などを加えることも骨折予防のチャンスを広げる手立. 「ねたきり老人ゼロ作戦」の展開を背景として平成 2 年に老人 保健事業における健康教育の中で重点健康教育として「骨粗 しょう症予防健康教育」が追加されたところにさかのぼること ができる。その後平成 6 ~ 8 年には「婦人の健康づくり推進事. てになろう。. 骨粗鬆症検診における骨量の判定基準と骨粗鬆症の診 断基準. 業」の一環として骨粗鬆症検診が実施され,平成 7 年からは老. 骨粗鬆症検診での骨量測定の結果は「要精検」, 「要指導」 「異. 人保健事業における総合健康診査のひとつとして「骨粗鬆症検. 常なし」のいずれかに判定されるが骨粗鬆症の診断を行ってい. 診」が追加された。平成 12 年には 40 歳と 50 歳を対象とする. るのではない。原発性骨粗鬆症の診断基準 1) では若年成人平. 節目検診として骨粗鬆症検診は独立し,さらに平成 17 年には. 均値(young adult mean:以下,YAM 値)の 70%未満を「骨. 対象年齢が 40,45,50,55,60,65 および 70 歳に拡大された。. 粗鬆症」としているのに対し,骨粗鬆症検診では YAM 値の. *. Clinical Practice of Osteoporosis; Current Status and Issues in Screening System, Diagnosis, and Treatment 医療法人財団健康院健康院クリニック 副院長 (〒 104–0061 東京都中央区銀座 6–7–4) Takayuki Hosoi, MD: Kenkoin Medical Corporation Foundation キーワード:骨粗鬆症,骨粗鬆症検診,診断基準. **. 80 未満を「要精検」としている 2)。 このように診断基準と検診における要精検のカットオフ値に 差が設けられている理由のひとつは,検診で用いられること が多い骨量測定が,踵骨の超音波法や橈骨の 2 重エネルギー X 線吸収度計(DXA)などによる末梢骨で行われることが多.

(2) 682. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. いため,“golden standard”である腰椎や大腿骨近位部といっ. 情報となる。この情報収集は二次骨折の予防に重要な事項とし. た躯幹骨の測定結果と必ずしも一致しないことから,“false. て,健診事業の中でも明確に捉えていくべきであろう。. negative”を極力避ける意味もあると考えられる。 また,Siris ら 3)は骨密度測定の結果,骨粗鬆症とされた群. 今後にむけて. の骨折率は骨量減少とされた群より高いが,骨量減少とされた. 骨粗鬆症の早期発見と早期治療,さらには骨折予防による. 群の絶対数が骨粗鬆症とされた群より多いことから,骨折発生. 要介護状態の予防には骨粗鬆症検診のさらなる充実あるいは. 数は骨量減少とされた群が多いことを報告した。このことから. 効率化がひとつの突破口につながると思われる。ハイリスク. も骨量減少者をスクリーニングする価値があると考えられる。. アプローチとポピュレーションアプローチのそれぞれがもつ特. さらに,骨量減少でも骨粗鬆症と同様かそれ以上の骨折リスク. 徴を生かして年齢層ごとに重点を変えるなどの工夫が必要であ. を有する場合には薬物治療を行うことが骨粗鬆症の予防と治療. ろう。. ガイドラン 2006 年版以来勧められており,この点からも骨粗 鬆症検診におけるカットオフ値を 1YAM の 80%とすることは 理に適っているといえよう。 2012 年版の原発性骨粗鬆症診断基準においては,脆弱性骨 折のうち,特に椎体骨折か大腿骨近位部骨折をすでにおこして いる場合には骨密度測定値の結果を問わず骨粗鬆症の診断を下 すことになった。これらの骨折については医療面接での情報収 集や,身長低下,脊柱の変形(後湾)などの身体所見が重要な. 文 献 1) 日本骨代謝学会 , 日本骨粗鬆症学会合同原発性骨粗鬆症診断基準改 訂検討委員会(編):原発性骨粗鬆症の診断基準(2012 年度改訂 版).Osteoporosis Jpn.2013; 21(1): 9–21. 2) 折茂 肇,細井孝之,他:骨粗鬆症検診・保健指導マニュアル. ライフサイエンス出版,東京,2014. 3) Siris ES, Chen YT, et al.: Bone mineral density thresholds for pharmacological intervention to prevent fractures. Arch Intern Med. 2004; 164: 1108–1112..

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