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豪州における助産師教育の現状と課題

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*1愛知県立大学(Aichi Prefectural University) *2聖隷クリストファー大学(Seirei Christopher University)

2015年3月11日受付 2015年8月3日採用

総  説

豪州における助産師教育の現状と課題

—学士課程での助産師教育開始前後の調査から—

The status and tasks of midwifery education at Australia:

From reports about starting bachelor of midwifery education

大 原 良 子(Ryoko OHARA)

*1

久保田 君 枝(Kimie KUBOTA)

*2 抄  録 目 的  豪州での助産師教育は大学院のみで行われていたが,2002年より学士課程でも行われるようになった。 これに伴う助産師教育の現状と課題についての知見を得て,2005年より大学院での助産師教育も開始さ れた日本の助産師教育に示唆を得ることを目的に文献レビューを行った。 方 法

 1995年から2014年までの文献をPubmed,CINHALを用い,「Australia」,「midwifery」,「undergraduate」,

「postgraduate」,「education」のキーワード検索及びハンドサーチし,61件を収集した。 結 果  助産師教育の現状を具体的に記してある23件を使用した。得られた文献は,看護師免許をもたない 助産師教育であるダイレクトエントリー(DE)に関するものがほとんどであった。文献を,「学士課程教 育準備期」,「DE教育の開始直後」,「DEの卒業生排出以降」の3つの時期に分けた。「学士課程教育準備期」 では,全国助産師教育基準が策定され,共同でDEのカリキュラムを作成する大学もあった。また,大 学院でも,助産師としての高度実践者教育へと変更が必要となり,その為の研究がなされた。「DE教育 の開始直後」では,DEには社会人入学生と退学者が多いという特徴と,臨床経験のない学生への実習 指導の困難さなど課題を抱えることとなった。「DEの卒業生排出以降」ではDE教育を振り返り,共同カ リキュラムによる教育の改善,全国助産師基準の改善が行なわれていた。また,全国助産師教育基準は DE学生だけしか遵守していない現状から,関連団体にもこの基準の内容,DE以外の助産師教育基準 についての意見を求めていた。 結 論  国際的水準の助産師教育を目指した教育基準は課題が多く,国に合った基準へと改善が続いていた。 また,学士課程教育導入により,大学院で教育を受けた助産師は,第三次医療施設での合併症妊婦の管 理など高度実践助産師としての役割が試行されていた。本論文は,豪州の全助産師教育の現状と課題を 研究対象としたが,DEについての報告が主となり,偏ったものとなった。

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Key word:豪州,助産師教育,文献レビュー,ダイレクトエントリー,最少経験要求例数

Ⅰ.諸   言

 豪州では,1977年に看護師教育の管轄が厚生省か ら文部省へと移行し,1993年には全看護師教育が大 学で行われようになった(舟島,杉森,定廣他,1996, p.39)。これに伴い助産師教育は,看護師免許を取得 した大卒者が対象となり,准修士・修士課程の大学 院で行われるようになった(Leap, Barclay & Sheehan, 2003, p.7)。  准修士課程は教育年限が半年または1年で,日本の 大学専攻科に似ているが,大学院に位置づけられてお り,修士課程に編入できる点で大学専攻科とは異な る。1995年の豪州の助産師養成機関は,半年の准修士 課程4校,1年の准修士課程22校,修士課程5校(Glover, 1999, p.19)と准修士課程が主であった。  しかし,1990年代に助産師不足が深刻となり,そ の主な原因は,「助産師教育が大学院で行われる為, 助産師になるまでに時間と費用がかかりすぎる事」 (Glover, 1999, p.19; Tracy, Barclay & Brodie, 2000, p.82)

と報告され,学士課程での助産師教育が検討される事 になった。  英国,ニュージーランドは,看護師教育を受けてい ない学生に助産師教育を行うダイレクトエントリー (Direct Entry:以下DE)を導入しており,豪州もそ れら2か国と同じく学士課程教育が3年間と短い事か らDEの導入が検討された(Cutts, David, McIntyre, et al., 2003, p.179)。Leap(1999, p.15)は,「安全な臨床実 践には看護師免許を取得した上で助産師教育を受ける 事が望ましいが,DEは途上国だけでなく欧州でも導 入されている実績があり,ほとんどの正常妊産褥婦は, 助産師教育のみを受けた者で十分に支援ができる」と 助産師としての支援を限定する事で,問題はないとし ている。しかし,看護師の免許はやはり必要である という意見もあり,修業年限を1年延長して,看護師 ・助産師の免許を取得する教育(Double Degree:以 下DD)も検討された(Cutts, David & McIntyre, et al., 2003, p.182)。Leap(1999, pp.13-14)はDDについて「助 産師になる為の教育であり,看護3年・助産1年では なく,看護2年・助産2年のカリキュラムにするべき である。しかし,看護師教育を省略した者に看護師免 許を与えるかは検討すべき点」との見解も述べている。  豪州助産師会(以下ACMI)は,DEとDDの両方の 学士課程教育に肯定的で,政府も導入に向けて,コー ス発展委員会,地元及び国際的な準拠集団,予算検討 委員会などを立ち上げ(Cutts, David, McIntyre, et al., 2003, p.182),2002年より開始となった。  日本の助産師教育は,厚生労働省と文部科学省の両 方が管轄しており,多様な教育課程がある。学士課程 での助産師教育は1964年に開始され(日本看護系大学 協議会看護実践能力検討委員会,2003),看護系大学 の増加に伴い2014年には全助産師教育課程の中で最 多の96校(専攻科・別科を除く)となった。  また,2005年には修士課程での助産師教育も開始さ れ,2014年には30校に増加した。修士課程では,助 産師としての専門教育に加えて大学院の機能である 「創造性豊かな優れた研究・開発能力を持つ研究者 等」,「高度な専門的知識・能力を持つ高度専門職業 人」,「確かな教育能力と研究能力を兼ね備えた大学教 員」,「知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養 のある人材」の養成を1つ以上担う事が求められてい る(高等教育局大学振興課大学改革推進室, 2010, p.1)。 助産師教育を行う修士課程の教育機関は,この要求を 満たす為に試行錯誤をしている(久保田,大原,寺口他, 2013, p.11)。  日本の助産師教育は,学士課程に修士課程が加わる という豪州とは逆の流れであるが,基礎教育と上級教 育の2つの教育課程があり,両方での教育が開始され てから約10年が経過している点で同じである。この為, 豪州の助産師教育の現状を知る事は,日本の助産師教 育,特に試行錯誤の続く大学院での教育にも示唆を得 られるのではないかと考えた。  そこで,豪州の学士課程教育導入に伴う助産師教育 の現状と課題についての知見を得て,日本の助産師教 育,特に大学院での助産師教育について示唆を得る事 を目的に文献レビューを行った。

Ⅱ.用語の定義

DE:Direct Entry(ダイレクトエントリー)の略。看 護師免許を持たず助産師教育を受け,助産師のみの 学位と免許取得が可能な学士課程教育を指す。 DD:二重学位,Double Degree(ダブルディグリー) またはDual Degree(ヂュアルディグリー)の略。本 文では看護師・助産師の学士課程教育を指す。DE

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よりも教育年限が1年長い。

准修士課程:修士課程の一つで半年と1年のコースが あり,修士課程への編入が可能である。

大学院:Postgraduate Degree,本研究では准修士及 び修士課程を指す。

最 少 経 験 要 求 例 数:Minimum Experience

Require-ments,ミニマム・エクスペリエンツ・リクワイア

メンツ。

ACMI:The Australian College of Midwives incorpo-ratedまたはAustralian College of Midwivesの略。豪 州助産師協会法人または豪州助産師協会で同一の団 体。

ANMF:The Australian Nursing and Midwifery Fed-erationの略。看護師,助産師,准看護師が加盟する 豪州の職能団体。

ANMAC:The Australian Nursing and Midwifery Ac-creditation Councilの略。豪州の看護師・助産師教 育認定機関協議会。 コンソーシアム:本研究では大学間で協働して授業を 行う事を指す。

Ⅲ.研 究 方 法

 研究方法:1995年から2014年までの文献をPubmed, CINHALを用い,「Australia」,「midwifery」, 「undergrad-uate」,「postgraduate」,「education」をキーワードに検 索し,46件の文献を得た。また,豪州の助産学の学術 雑誌である「Women and Birth」,「Australian Health Re-view」,「Australian Journal of midwifery」をハンドサーチ し,関連する6件の文献を収集した。DEについての理 解を深める為,豪州と関わりの深い英国とニュージー ランドの文献6件も収集した。また,助産師教育の現 状を知る上で有効と思われる団体の文書や官庁のデー タベースもハンドサーチし公文書3件を収集した。

Ⅳ.結   果

 得られた文献の中から,助産師教育の方針・カリキ ュラム・授業評価など具体的に記述している文献23 件に絞り使用した(表1)。対象となった文献はDEに ついての文献がほとんどであり,DDと大学院教育に ついては,DEとの比較で記述されている程度で,具 体的な現状の把握には限界があった。この為DE教育 の流れを軸に文献を整理し,「学士課程教育準備期」, 「DE教育の開始直後」,「DEの卒業生排出以降」の3つ の時期に分類した。これら結果は,DEについてだけ ではなく,他の教育課程についても含めて記述する。 1.学士課程教育準備期  この時期は,学士課程教育が開始される2001年ま でで,国内の助産師教育の現状を調査し,課題の把握 と対策として全国助産師教育基準が作成され,DEで 教育を行う大学は開校準備を,大学院も教育の変更に 向けた準備を行っていた。 1 ) 全国助産師教育基準の作成  Leap(2002, pp.16-19)は2001年に,大学院の助産師 教育機関を対象に教育の実態調査を行った。教育年限 は,1年間19校,1.5年間8校であった。授業形態は,16 校が学内教育,7校は通信教育,6校はその両方,また 6校は長期履修学生制度のみ,2校は通常の修業年限の み,19校は両方で教育を行っており,在学生は長期履 修生563名,通常年限履修生375名であった。全講義 ・演習時間の差は大きく,174時間∼2160時間で19校 は400時間以下であった。実習時間は,500∼1824時 間で,16校は1000時間以下であった。就労している長 期履修生の正規勤務時間を実習時間に含めている学校 7校,アルバイト等も実習時間に含める学校が5校あ った。中には,看護師業務の労働時間も助産の実習時 間に含めていた。Leap(2002, p.15)は,「国全体で統一 した教育基準がない為教育にかなりの差がある」と問 題を指摘している。  その後,ACMIは学士課程教育の開始に先駆け,「西 洋諸国のように全国で統一した卒業時の到達度を明確 にする指標が必要」,「世界的教育基準を満たした助産 師養成を行い,国際的な信頼を得る必要がある」とし て,2001年に欧州やICMのグローバルスタンダードを 参考に最少経験要求例数を含む全国助産師教育基準を 作成した(Brodie & Barclay, 2001, p.103)。具体的な内

容として「修業年限は3年間」,「理論と実習それぞれ 50%で構成」,「妊娠期から産褥期までの継続事例30例 (毎年10例)」,「分娩時支援40例」,「継続事例を含むそ れぞれ100例の産前訪問及び産後訪問(産褥期)」,「助 産学実習は地域と病院の両方を含む」,「緊急処置の実 習を含む」,「特別なケアが必要な新生児の実習を含

む」などがあげられていた(Pincombe, Thorogood & Kitschke, 2003, p.29)。しかし,これはDEの教育基準 であり,DDや大学院での教育は対象ではなかった。

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2 ) DE開始校の準備

 DEでの助産師教育の先駆けは,ビクトリア州にあ るモナッシュ大学,カソリック大学,ビクトリア大学 の3校で,開校に向けて「The Werna Nalooコンソーシ アム」を立ち上げ,助産師独自の理論,社会科学,女 性の健康に関する包括的な理論を土台として,3校の

全助産師学生が同じ授業を受講する事を前提にカリキ ュラムを作成した(Cutts, David, McIntyre, et al., 2003,

p.184)。10科目はオンライン授業で,現在の医療では 緊急時の応急処置も不可欠であると救急医療の実践 に必要な看護技術も教育する事にした(Cutts, David, McIntyre, et al., 2003, p.182)。 表1 学士課程教育開始に伴う助産師教育の現状に関する文献 著者(年) 研究の概要 データ収集 学 士 課 程 教 育 準 備 期 Glover(1999) 学士課程教育が開始された場合,大学院で育成されるべき助産師,高度実践助産師について 10名の臨床の助産師,管理者,教育者を対象としたファーカスグループインタビュー Leap(1999) 助産師教育の課題を明らかにしすると共にDE教育の有用性について 英国,ニュージーランド,カナダ,オランダのDEに関する文献レビュー Tracyら (2000) 出生数,助産師数等の動向を元に,助産師数不足の現状と改善の為に教育改正の必要性について 豪州の人口動態調査の結果を元にした総説 Brodieら (2001) 全国で統一した助産師教育基準の必要性について 豪各州の助産師教育に関する条例の比較と分析 Leap(2002) 豪州の助産教育の現状と課題についての全国調査 全助産師教育機関27校の教員にアンケート調査 Leapら (2003) 豪州の助産教育の現状についての全国調査,教育上の障害と困難について 27校の助産学実習の担当教員アンケートおよび面接調査 Cuttsら (2003) コンソーシアムによる共同カリキュラムを作成した過程と内容の紹介 カリキュラムを作成した3校の教員による体験の報告 Pincombeら (2003) 3基準作成の過程と内容についての報告年課程の助産師教育(DE)の為の全国助産師教育 基準の作成者3名による体験を元にした報告 D E 教 育 の 開 始 直 後 Seibold (2005) 豪州初のDE学生によるカリキュラムに対する評価の報告 2000年入学した1校の学生を対象に3年間縦断的グループインタビュー Stuhlmiller (2005) CSNの1つである精神看護師の教育を助産師同様DEへ移行する事の有用性について 英国でのDEによる精神看護師教育に関する文献レビュー McKennaら (2007) 共同カリキュラムによる5年間の教育を振り返り,現状と課題の報告 コンソーシアム2校の教員の経験を元に報告 Licqurishら (2008) DEついて考察学生の教育における体験と臨床指導者の役割に 8名の学生を対象に面接を実施 Carolanら (2011) DEに入学した学生の特徴と入学動機についての調査 DE1校の2008年度入学生32名に面接を実施 D E の 卒 業 生 排 出 以 降 Carolanら (2007) ついての報告ビクトリア大学のDE開始後の現状と課題,改善に 同大学の教員の経験を元に報告 Ryan(2009) 2009年に改正された全国助産師教育基準についての通達 公文書 Hickey (2011) DDの開校動機と助産師・看護師不足の改善にDDが有用性について 看護師数の動向のデータを元にしたDDについての総説 ANMAC (2012) 2012年に改正された全国助産師教育基準についての通達 公文書 Bogossianら (2012) 助産師教育のシミュレーション学習法についての現状調査 同学習法を導入している38校の教員にアンケート調査 Grayら (2012) 継続事例の体験,学び,価値についての量的研究 2007∼8年にアンケート調査し,DE学生93名が回答 Grayら (2013) 継続事例30例対する学生の見解についての質的研究 2007∼8年に28名のDE学生または卒業生に面接調査 McLachlanら (2013) 教育基準改定後に継続事例20例,事例1名につき20時間の実習について現状について調査 ビクトリア州内の全助産師教育機関を対象,学生401名,教員35名がアンケートに回答 Thomasら (2013) 助産師教育基準についてのANMACの見解 公文書 WHA(2013) 助 産 師 教 育 基 準 に つ い て のWomen's Healthcare Australiaの見解 公文書

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3 ) 大学院教育の変更の準備  学士課程教育の開始が決定すると,大学院での教育 は,これまでの助産師を専門看護師の1つとする概念 が適用されなくなり,助産師としての専門教育に加え て,高度実践能力者としての教育も必要となった。そ こで,Glover(1999, pp.21-22)は,この変更に向けて, 助産師の高度実践能力についての研究を行い,その要 素を,「経験」,「独立/自主的な実践」,「実践の為の理 論の統合」,「研究」,「臨床技術」の6つと報告している。 中でも「実践の為の理論の統合」は最も大切な要素と 述べ,科学的な根拠に基づいた実践は考察や分析に深 さを与え,高いアセスメント能力・コミュニケーショ ン技術・自己決定能力を導き,直観を磨くと述べてい る。  高度実践助産師に必要な臨床技術については,助産 師特有の技術だけでなく,高度なテクノロジーにも精 通し,それらの技術をケアリング理論に基づいて実践 するといった理論との統合であるとしている。  しかし,学生時代には実践が許可されない技術もあ り,大学院卒業直後から高度な実践ができるわけがな く,卒業時に基礎的実践能力が初心者レベルに到達し ていれば十分であり,卒業後の自己研鑽で高度実践助 産師になれるように素養を育成する事が大学院の助産 師教育であるとしている。 2.DE教育の開始直後  この時期は,DE学生の入学から卒業までの2002年 から2005年の間で,DE教育を開始してわかったDE 教育の困難が報告されている。 1 ) DE学生の特徴  2002年 にDE4校 とDD1校 の 計5校 で 学 士 課 程 で の助産師教育は開始された(Stuhlmiller, 2005, p.156)。 この年のDE4校の入学生は130名で,19名の定員に 対し1000人以上の応募があった大学もあった(Leap, Barclay & Sheehan, 2003, p.12)。

 Seibold(2005, p.10)は,入学生の特徴について「高 校新卒者は全体の1/3のみで,平均年齢が高い」と報 告している。この状況について「高校生は助産師を知 らず,認知度を上げる為の努力が必要」と述べている。 高校新卒者の入学生は「オランダ領からの移民である 母親の出産体験から,助産師のみの免許を持つ助産師 になりたい」とDEに強いこだわりをもち入学した学 生もいたが,大半は「私は常に赤ちゃんに関わる仕事 をしたい,DDだと1年間長いのでこちらにした」と看 護師の免許を持たない事を熟考した選択とは思えない 入学動機であった。

 同様にMcKenna & Rolls(2007, p.83)も「入学生の 平均年齢は41.4歳で学生間の年齢差が大きく,学生同 士の人間関係の構築が大変であった」と報告している。 またSeibold(2005, p.11)は社会人入学生について,「出 産経験のある学生が多く,その経験は女性への支援に 役立ったが,中には否定的な経験となっていたり,出 産に対する強い理想や主観的なイメージをもっていた りと認識を変えるのに苦労した」と報告している。し かし,高校新卒者は,理論を理解しても理論は理想で しかなく現実・実践とは別物という認識であったのに 対し社会人入学生は,助産師とは女性とパートナーシ ップを築き,継続したケアを保証する役割があると理 解し,女性に敬意を払い,良い関係を培ったと報告し ている。  また,退学者が2∼3割と多い事もDE学生の特徴と してあげられている。Carolan & Kruger(2011, p.143)

はその最大の原因について,「理論や専門知識を理解 するには自己学習の時間が必要であったが,1日の授 業時間が長い上に課題が多く,十分な予習復習の時 間が取れなかった事」と報告している。退学生からは, 「入学前に授業時間数・講義計画・コースの大変さを 詳細に分かり易く情報提供して欲しかった,入学後は 予習できるよう事前に授業資料を配布して欲しかった, 実習前に復習時間を設けて欲しかった,仲間同士で サポートし合うネットワークが欲しかった,何より成 長していると自信が持てるようなサポートが欲しかっ た」などの要望が出された。その他に,大学や実習施 設への移動費や教科書代・教材費が嵩んだ事,育児支 援者を見つけられなかった事も退学理由としてあげら れていた。 2 ) 実習の課題

 Leap, Barclay & Sheehan(2003, p.6)は,大学院での

助産学実習の課題について,「教育に適切な実習施設 を提供できない」,「学生の経済的な問題」,「学習の問 題」と報告している。適切な実習施設とは,「時代にあ った産科サービスを提供し,助産師のモデルとして理 想的な人がおり,開業助産師業務などの地域の助産師 役割も学べる施設」であるが,現実は「施設の助産師 は助産師教育に全く興味がない」,「モデルとなる助産 師が少なく,学生の中には合併症をもつ産婦にだけ介 入するのが助産師と認識した者もいた」,「助産師不足 で,指導を受けられない」,「産婦の前で答えられない

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ような難しい質問をして恥をかかせ,いじめと取れる 事や学生には高すぎる要求をする」など指導者の問題 が多く報告されている。さらに,実習施設の確保も困 難で,「学校間で実習施設を競合する」,「1勤務に1名 の学生しか受け入れない施設もある」,「学生も教員も 実習準備段階から歓迎されず,時として敵意さえ感じ る事もある」など大学院生の実習であっても,大変な 苦労が報告されている。  DE学生の実習については,「看護師教育がベースに ない為臨床力が全くなく,実習開始前に多くの技術を 一から教えて習得させなければならなかった」

(Caro-lan, Kruger & Brown, 2007, p.129),「臨床スタッフは,

DEでの助産師教育には否定的で,学生が知識不足で

学内補習をしなければ実習を受け入れてくれなかった。 臨床側からの学生への要求は高く,その要求に応える 為の補習等で高額な費用を要した」(McKenna & Rolls, 2007, p.83)などさらなる課題を抱える事となった。ま た,「妊産褥婦がおらず実習が突然中止になった,長 期に同じ実習施設にいても疎外感があった」(Seibold, 2005, p.13)と,看護師の免許を持たない事で実習に制 限があり,臨床の助産師からもDEの学生は新種の助 産師で,仲間ではないと認識されていた。助産師とは 専門看護師の一種であり,看護師教育を受けた後1年 間の教育を受けるべきという臨床助産師が多く,DE 教育には否定的であった(Leap, Barclay & Sheehan, 2003, p.7)。  学生にとって肯定的な実習体験とは,良い指導者に 出会えた事が大きな要因であり,DE学生の思う良い 指導者とは「指導者の役割に前向きで,質問に公平に 回答し,フィードバックを通して自分の知識を学生と 共有し,実習がやりやすいように配慮し,学生の間違 いを許容する肯定的な助産師であり,学生にケアを 行う機会を与え,学生が助産における責任を持つ事 や意思決定する事を支えてくれる人たち」(Licqurish & Seibold, 2008, p.484)と報告している。一方,全く 手助けにならない指導者は,「ビジネスライクなケアを 行う指導者,学生に実践させず自分で実施する指導者, 他の指導者や学校で学んだ事とはかけ離れた助言をす る指導者,学生に挫折感を与え自信を失わせる指導 者」(Licqurish & Seibold, 2008, p.484)と報告している。 3.DEの卒業生排出以降  この時期は,DEで初めて教育された学生が卒業し た2005年以降,2013年までである。DE教育を振り返 り,共同カリキュラムによる教育の改善,全国助産師 基準の改善,DEのみならずDD・大学院教育の改善 は必要かといった事が議論されている。 1 ) 共同カリキュラムによる教育の改善

 Carolan, Kruger & Brown(2007, p.129)は,共同カ

リキュラムを振り返り,「オンライン授業は不合格者 が多く対策が必要だった」と報告している。「理論等の 講義科目は,理解が困難であるにも関わらず質問でき なかったとの意見が出た,演習科目はチュートリアル とロールプレイだけでは技術の習得が困難で急きょ実 技演習を行なった,実習施設から臨床技術と薬理の知 識が不足していると指摘された」と報告している。一 方で,同じカリキュラムを行った他の2校は,「学生全 員が理論等の授業には満足している」(Seibold, 2005, p.15)「改善しなければならない点も多いが,コン ソーシアムによる共同カリキュラムは成功であった」 (McKenna & Rolls, 2007, p.84)と肯定的な評価であっ

た。しかし,「3校の学生の教育レベルには差があり, 同じ教育方法では学生に支障が出ており,実習施設 の都合で実習形態も同じにできず,3校で全く同じ教 育はできなかった」とも報告している(Seibold, 2005, p.15)。  Carolanらの大学ではこの結果を踏まえて,学生の 学習能力に配慮した教育が必要だとコンソーシアムを 脱退し,新たに救急処置・産科緊急の科目を追加した 独自のカリキュラムで教育する事となった(Carolan, Kruger & Brown, 2007, p.129)。人数の少ない助産学 の教員の負担を軽減する為に複数の大学で同じ授業を 行ったが,大学間で学生の学力に開きがあり,却って 負担が増える大学もあり,複数の大学で全く同じ授業 を行うと不都合が生じた大学もあった。

 McKenna & Rolls(2007, p.83)の大学では,学生の 満足度・到達度は高かったが,根本的な教育方法の改 善が必要になった。助産師教育の理想を追求すると, 助産学教員の授業時間数があまりにも多く,非常勤雇 用費と演習費も莫大となり,これらを改善する為に看 護学の教員に授業を担当してもらう事になった。看護 学教員は助産学を理解する為の学習が必要となり,そ の事が負担になったと報告している。 2 ) 全国助産師教育基準の改正  学生・教員を対象に全国助産師教育基準の評価も 行われた。継続事例30例を受持った学生に対する教 員の評価は「女性を取り巻く現実を深く理解でき,対 象への強い責任感が培われた」(Gray, Leap, Sheehy, et

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al., 2013, p.402),「16名の全学生が卒業時に新人レベ ルに到達しており,実習施設からも問題解決能力・ コミュニケーション能力が高く,女性中心の支援が 素晴らしいと肯定的な評価を受けた」(Seibold, 2005, p.13)と報告している。継続事例30例に対する学生か らの意見は,「とても良い体験ではあったがとにかく 例数が多過ぎて,質より量のケアとなった。1年次か ら継続事例を受持たなければならず,学生自身で対象 者を見つけ実習の受け入れを交渉しなければならな い事が負担だった。時間管理が大変だった」(Seibold, 2005, p.12)と否定的な意見が多かった。継続事例の受 け入れ交渉は学生が行う事を基本としており,101名 中42名の学生は,誰からの支援もなく自分だけで交渉 したと回答した(Gray, Leap, Sheehy, et al., 2012, p.260)。 2007年に行なわれた継続事例数の全国調査では,学 生数101名中,30例81名,40例8名,10例10名であった。

NSW州の助産師教育機関は,州の条例で10例と定め

ている為,この条例に準じて10例のみの分娩介助を 行っていた(Gray, Leap, Sheehy, et al., 2013, p.403)。  実習記録については「記録物が多すぎて不必要な煩 雑さを招いている,継続事例の記録をどこまで書くか についても施設・学生・教員間で問題となった」と報 告している(Gray, Leap, Sheehy, et al., 2012, p.260)。  McKenna & Rolls(2007, p.83)は,最大の問題は,30 例の継続事例よりも「40例の正常分娩者への支援」で, ビクトリア州の母子保健の現状・分娩例数からこれを 達成するのは非常に困難であると述べている。この基 準を満たす為に,学生1人あたり1200時間の実習延長 と1500時間の移動時間を費やしたと述べ,これは看 護の規定実習時間数を超えており,これだけの時間が あれば看護の免許も取得できると報告している。時間 外の施設使用料が大学財政を圧迫し,大学の経営責任 者と教育責任者を巻き込んだ議論が起きた事も報告し ている。  2009年に全国助産師教育基準は改正され,分娩を 含んだ継続事例は20例に減数され,DE学生のみでな く,全ての助産師学生がこの基準の達成を求められる 事となった。一方で「1例に対し分娩時20時間のケア を行う」という規定も加わった(Ryan, 2009, p.19)。  全国助産師教育基準改正の翌年の2010年に,全国 の助産師養成校27校38コースを対象に実態調査が行 われ,継続事例の教育課程別平均例数は,DE30例, DD13例,准修士課程7例,修士課程6例であった(Bo-gossian, McKenna, Higgins, et al., 2012, p.90)。最少経

験要求例数を遵守しているのはDEだけで,DEの学生 78%は他の教育課程に対し不満を感じていると回答し て い る(McLachlan, Newton, Nightingale, et al., 2013,

p.176)。また,「分娩時20時間の支援を行う」に対し て,学生の90%以上が20時間では終わらないと回答し, 「オンコールの為予定が立てられず講義や実習に支障 が出た,プライベートにも影響が出た,多大な時間を 要したなど半分以上の学生がこの条件を最後までや り抜くのは困難」と述べている(McLachlan, Newton, Nightingale, et al., 2013, pp.176-178)。  全国助産師教育基準の最少経験要求例数を達成する 事が卒業の必須条件となると,大学院生の98%,DE ・DD学生の77%が卒業は大変難しくなると回答して いる。「一人の女性を継続してケアする事は大切」と学 生の68.2%,教員82%が「強くそう思う」と回答して いるが,「学生にとって肯定的な経験である」について は,「非常にそう思う」と肯定的な回答をした者は,学 生23.1%,教員15%と必ずしも高い値ではなかった。  2007年以降,全国助産師教育基準の策定は,豪州 助産師協会のACMIから,看護師・助産師教育認定機 関協議会であるANMACへ引き継がれ,看護師と共に 策定する事となった。ACMIは2012年(pp.2-5)に,「継 続事例など統一した最少経験要求例数の設定は各大学 で決定すればよい」,「分娩時のケアは1例10時間でよ い」,「妊娠期・産褥期の訪問はそれぞれ50例とする」, 「分娩時のケア40例は多過ぎるので20例とする」,「合 併症をもった妊産婦のケアは20例以下とする」,「特別 なケアが必要な新生児の支援は引き続き必要」と教育 基準の変更を発表した。2013年6月に更なる改正案を 作成し,関連する団体にも意見を求めた。特に焦点に なっているのは,最少経験要求例数及びDE以外の教 育課程の教育年限についてである。

 Women's Healthcare Australia(以下WHA)という女 性の健康サービスに関わる医療職で作られた団体は, 最少経験要求例数は必要であるとし,「継続事例は15 例が適切」,「1例につき分娩時20時間のケアではなく, 妊娠期から産褥期までのケアに変更」,「妊娠期・産褥 期の訪問は50例でよい」,「分娩時のケアの例数はこの まま40例で大学院は30例とする」,「合併症をもった 妊産婦40例のケアも存続させ,特別なケアの必要な 新生児への支援は,知識不足の助産師が多く臨床で問 題となっているのでもっと強化すべき」との意見であ った(WHA, 2013, pp.2-6)。また,分娩時の女性のケア 40名については,「この定義では,必ずしも児を取り

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あげると定義していない為,間接介助・緊急帝王切開 ・急速遂娩等への支援も含み,学生は正常分娩だけで なく分娩中の緊急事態への対応能力を養う必要もあり 継続する」と回答している。 3 ) DD及び大学院教育の改善  学士課程教育での助産師養成は,DEについての研 究報告がほとんどで,DDの具体的な教育法について は報告されていなかった。しかし,DDで教育を受け た助産師の増加に伴い,ANMAC(2013, p.1)は,「DD の教育課程には,教育年限やカリキュラム構成などの 規定はないが,本団体だけで規定の作成をすべきか決 定しかねる為,関係団体との検討が必要」との見解を 示した。

 Thomas & Chaperon(2013, p.3)は,看護師助産師

職能団体であるANMFの見解として,「助産師のみの 免許取得者は,看護師の免許も持つ助産師に比べ就職 先が限られ,就職後も施設や州の看護師の新人プロ グラムへの適応が困難」と発表し,看護師の免許を持 たない助産師に否定的であった。さらに「労働力確保 の為にDEが開始になったが,看護師と助産師の両方 の免許取得者の方が医療者としての労働力の確保に有 益」とも述べている。また,同団体は,これまでの全 国助産師教育基準はDE教育に特化したものとの認識 で,看護を含むDDの教育基準を助産師だけで作成す る事や,DD教育に国で統一した教育基準を設定する 事自体に反対している。また,WHA(2013, pp.9-10) も,「今までDDの教育基準が無くても卒業生に問題が なかった事,多くの規定を作ると講義時間が増え実習 時間が少なくなる可能性がある為,DDコースに特別 な教育基準を設ける必要はない」としている。しかし, 同じ学士課程教育でありながら,DEだけに厳しい教 育基準が適応されるのであれば,DE学生のみならず 教員も不平等さを感じずにはいられないであろう。

Ⅴ.考   察

 豪州における学士課程での助産師教育導入による助 産師養成の現状と課題についての文献レビューを行っ た。結果は日本には導入されていないDEの教育に偏 ったものとなったが,豪州に限らず多くの国で採用さ れているDEついて知る機会になった。また,学士課 程であるDEを導入した事により全国助産師教育基準 が作成され,それまで助産師教育を行っていた大学院 も教育の変更が必要になるなどの影響があった。考察 では,DEでの助産師教育,最少経験要求例数,高度 実践者としての大学院での助産師教育に焦点を絞り, 日本への示唆について検討する。 1.DEでの助産師教育  2012年6月に発表された助産師数の動向は増加に転 じており,学士課程教育導入の目的は果たされている (The Nursing and Midwifery Board of Australia, 2013,

pp.2-3)。しかし,詳細を見ると看護師免許を持たな い助産師は,20代153名,30代約700名,40代約550名, 50代約700名と全体的に年齢が高く,20代は少ない現 状にある。これは,DEは社会人入学生が多く,40歳 以上も少なくないというDE入学生の特徴を反映して いる。日本では看護専門学校に社会人入学生が増加 しており(柴田,2009, p.105),手に職を付けたい再就 職希望者に人気である。豪州では,DEがこのような 状況なのであろう。しかし,65歳を定年とした場合の 就労可能な年数は,DE入学時の年齢が40歳の場合は 22年,18歳の場合は44年と2倍の開きがある。今後も DE学生の年齢の高い状況が続けば,長期的な助産師 不足の改善には向かないであろう。  しかし,2013年の看護師・助産師の両方の免許保有 者は,20代が約17000名と最も多く,これは30代の約 2倍,40代の約2.5倍であった。若い世代では看護師免 許を持つ助産師が増えており,2つの免許を取れると いう教育課程は,年齢的なゆとりのある若者に人気で あり,助産師不足のみでなく看護師不足の改善にも役 立っている。  様々な課題が明らかとなった豪州のDEの状況を考 えると,助産師数が増加傾向にある日本では,現状の 看護師免許を持つ助産師の養成だけで十分であろう。 多くの大卒以上の助産師は,第三次医療施設や婦人科 との混合病棟に就職する事が少なくない為,合併症を もつ妊産褥婦や婦人科患者への看護も必要であり,看 護師の免許は必要不可欠である。しかし,世界的に DEでの助産師教育が普及した事で,看護師とは全く 別であるという助産師のアイディンティティの確立や 助産師独自の役割について見直す動きを生み出し,そ の流れは日本にも影響を与えたと言えよう。 2.最少経験要求例数  世界的水準を満たす助産師の養成と教育の質を担保 する事を目的に,最少経験要求例数を含む全国統一の 基準が設定されたが,実習は過酷であり,特に妊娠か

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ら産褥までの分娩介助を含む継続事例の多さは達成 が困難で,例数を遵守していたのはDEだけであった。 DEで教育を受けた助産師は,看護業務ができず,病 院での勤務よりも助産院と地域で正常妊産褥婦・新生 児への助産ケアが主な業務となり,これらの業務を卒 業後早い段階から自立して実施できなければならない 為であろう。豪州では施設内出産の場合,産後の入院 日数が約1∼3日と短く,退院後は助産師が褥婦の自 宅で支援を行う。妊娠期から産褥期の母子保健サービ スも保健師ではなくコミュニティ助産師が提供するな ど地域での活躍の機会が多い。このような地域での支 援は,Caseload Midwiferyという同じ助産師が妊娠か ら産褥まで一貫して支援する方法で,助産師1名が年 間約40-45例の女性を担当している(The NSW Depart-ment of Health, 2008, p.17)。この為,分娩介助だけで なく妊娠から産褥までを継続して支援ができるように 教育している。最少経験要求例数を満たした学生は確 かに高い評価を得ているが,他の授業に出席できない, 退学者が多いなどの弊害がある事も事実であり,教育 機関・地域・国にあった例数の見直しに加えて,卒後 教育と連携しながらゆとりのある教育の検討が望まれ る。  日本でもグローバルスタンダードを助産師教育にど う反映させるか検討されているが(久保田,大原,寺 口他,2013, p.11),そのままの目標ではなく日本の母 子保健の現状に合った目標へと適用させたものでなけ れば,学生も教員も疲弊するだけになりかねない。ま た,看護師教育を受けた後の助産師教育である為,看 護師教育の現状も反映させる必要がある。  DEで養成される助産師は,正常な妊産褥婦への支 援に限定されているが,現代の医療では分娩時の産婦 や胎児の急変に伴う応急処置は必要不可欠との見解で, 講義と演習だけでなく「緊急時の実習を含む」という 要求がなされている。日本でも高齢出産や妊産婦の体 重増加など異常へ移行するリスクを持つ妊婦は増えて いるという現状から,緊急時の対応についての実践教 育も必要である。 3.高度実践者としての大学院での助産師教育  大学院での助産師養成についてGlover(1999, pp.21-22)は,「高度実践助産師としての素養をもつよう教育 する事が必要」と述べているが,具体的な教育法につ いての文献を見つけ出す事はできなかった。

 学士課程教育の開始後7年目にHaxton & Fahy(2009,

pp.123-126)は高度実践能力をもつ助産師の活躍とし て,外来でリスクをもつ妊婦への検査指示,入院か自 宅療養かの判断も行うという新しい取り組みを報告し ている。このような助産師の業務拡大で,医者からは 「医学的な説明が必要な時だけの介入で済むようにな り,煩雑だった外来業務から開放された」と高い評価 を得ている。Smith, Leap & Homer(2010, pp.118-119) も「正常な妊産褥婦の支援だけでなく,施設内出産に おける高い判断能力と合併症産婦の管理ができる助産 師こそ現代に求められる高い実践能力を持つ助産師で ある」と助産師が第三次医療施設にも勤務するという 時代背景やそのような施設においてこそ大学院で教育 を受けた助産師の本領が発揮されるとしている。  1∼2年間という限られた大学院の教育の中で,こ のような能力を発揮できる助産師を養成するには,最 少経験要求例数の達成に多大な時間をかけるより,卒 業後に臨床経験を積む中で根拠を持って支援を行い, 探求する姿勢をもち,助産理論を発展させ,さらに助 産師の専門技術だけでなく瞬時にその場に即した対応 をマネージメントできる管理能力も培い,助産師とし て新たな役割を見出せるような高度実践能力者として の基盤の養成に時間をかけるべきであろう。  日本の大学院での助産師教育は,少数精鋭の学生に 対して,時間と労力をかけて養成している。正常分娩 において安全・満足な出産体験の提供はもちろんの事, 異常を回避し,助産師の裁量で正常に導く事ができる ような臨床での管理能力を培う事も必要である。その 為には,異常を予知できる能力,予防,適切な判断と 対応が必要であり,科学的な根拠に基づいた思考や研 究能力を培う必要がある。  日本においても,ナースプラクティショナー等看護 師への裁量が拡大されれば,助産師にも新たな裁量権 が与えられる可能性が期待できる。合併症の管理や緊 急時の対応等医師との協働と連携を取りながら,助産 師としての独自の技量と役割を発展させる必要がある。

Ⅵ.結   語

 今回の文献レビューでは,大学院やDDについての 文献が少なくDE教育に偏った報告となった。日本の 助産師教育に近い看護師免許の取得者に対する助産師 教育の情報が得られれば,更なる示唆を得られたであ ろう。  豪州の授業時間数の多さ,実習での困難さなどは,

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日本の助産師教育の抱える課題と類似していた。臨床 経験が全くないDE学生の実習は,教員にとって多大 な負担であろうと想像するが,日本の看護師教育を受 けている学生であっても,臨床力低下により看護技術 の再教育が必要な事や,実習中に学生のそばを離れら れないなど教員の負担が大きく似た状況である。この 事からも,海外の状況を知る事は,単に全く違う世界 を知る事ではなく,同じ仲間として苦労を共感し,類 似した課題への取り組みなど助産師教育についての示 唆も得られる。  豪州では,学士課程教育で養成された助産師は正常 な妊産婦の支援,大学院で養成された助産師は第三次 医療施設で合併症等高度医療が必要な妊産婦の管理と 両者の役割に違いをもたせる試みが始まっている。今 後日本では,大学院で教育を受けた助産師の増加が予 測され,高度実践助産師として,実践で得られた経験 知と研究によって得られた根拠を統合させ,時代と共 に変化する女性のニーズに合わせて助産師の役割を適 応させ,よりよい助産ケアを開発するリーダーシップ の担い手となり,海外の助産師の動向にも目を向ける 存在となる事を期待する。 文 献

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