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DSpace at My University: 大学一年生を対象とする学習スキル教育とキャリア教育の融合 : 大阪女学院大学「自己形成スキル」の試みから

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大阪女学院大学「自己形成スキル」の試みから

手嶋 英貴・川  千加・小松 泰信

Integrated Program of the Academic Skills and the Career

Development for University Freshers:

A Report on the Course "Skills for Self Establishing" at Osaka Jogakuin College

Hideki Teshima, Chika Kawasaki, Yasunobu Komatsu

抄      録

 本稿は、2008 年度4月から、大阪女学院大学国際・英語学部で新たに一年次全員必修科目として設置された「自己形成ス キル」の教育概要を報告するものである。第1節では、本科目構想の背景や授業の具体像を述べる。その際、とりわけ、最 近の大学教育界に共通する新たな課題といえる「初年次カリキュラムにおけるキャリア教育の在り方」に関する試み、つま り「学習スキルとキャリア教育の融合」の実際を紹介することに重点を置いた。次いで、第2節では、一学期間に複数実施 した「学生による授業評価アンケート」の結果数値を分析し、そこから窺える教育活動の効果を検討している。続く第3節 および第4節では、コース全体の運営を効率化し、また多角的なコミュニケーションを可能とする e ラーニング手法について、 それを導入する意義と具体的なシステム運用を述べる。ちなみに、上記のうち第2節は、「自己形成スキル」におけるアンケー ト結果を幅広く提示し、様々な教育要素を含む同科目の教育効果を多面から分析することに重点を置いている。それを踏ま えた上で、「学習スキル教育とキャリア教育の融合」に関わるアンケート項目の分析は、第5節(「まとめ」)の中で改めて行 うこととする。なお、執筆分担は、第1節・第5節が手嶋、第2節が川 、第3節・第4節が小松となっている。 キーワード: 初年次教育、自己形成、学習スキル、キャリア教育、図書館教育、情報リテ ラシー、eラーニング (2008 年 9 月 30 日受理)

Abstract

This paper reports on the outline of the course "Skills for Self Establishing" (SSE), a compulsory subject for first year students, newly founded 2008 at Osaka Jogakuin College. In the first part we will explain the background of planning of the course and how this plan has been realized in the classes. Especially we will focus on the idea and practice of the integrated program of academic skills and career development for first year university students, and propose a new style of career education suitable for the first year curriculum at a four-year university. In the second part we analyze questionnaires from students and investigate what is the fruit of the SSE program. In the third and fourth parts it will be explained how we have applied an e-learning system to the course management and to facilitating the multiple communications among students and teachers. And in the fifth part we will summarize results and points to be improved for the SSE program.

Key words : education for first year university students, self establishing, academic skills, career guidance,

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1. 「自己形成スキル」の概要

1. 1 科目構想の背景:初年次教育の新たな課題

 大学カリキュラムにおいて、一年生への教育プログラムには年々新たな形式が導入され つつある。「初年次教育」と呼ばれるそのプログラムには、各大学の教育方針やその特色 に応じて、様々な授業が盛り込まれる。一般的には、基礎演習やフレシャーズ・ゼミといっ た、二年次以降の学びを自立的に進めていくための基礎的な能力・知識を身につける演習 形式の授業を初年次教育の柱とすることが多い。また演習か座学かを問わず、学科・コー スの専門分野を学ぶための準備的知識を、中等教育で教えられているものまで含めて教授 する、いわゆる「リメディアル教育」の要素を含むプログラムも散見される。以上に挙げ たタイプの初年次教育プログラムは、一括りにしていえば「学習スキル教育」と名づけて 良いものであり、当然ながら、大学進学者の学力の多様化に応じてその存在感を増してき た教育要素である。  ところが近年、上記のプログラムに加えて、また別の性格を持つ授業が初年次教育に盛 り込まれるようになってきた。そのうちの一つが「キャリア教育」である。つまり、就職・ 就業をメインとする卒業後の社会生活へと円滑に進んでいくための能力・知識を身につけ る授業を、一年生の段階から受講させる大学が増えてきているのである。これは、IT 技 術の発達と業務の国際化による産業構造の変化や、1990 年代から続いた長期不況の影響 による非正規雇用の増大など、学生が将来参入していく産業社会・労働市場が急激に変化 したことに対応する動きだといえる。またそれは、少子化が進む中、入学者の安定的な確 保に繋がる施策として、キャリア系科目の新設や就職課の改組によるキャリアセンター設 置など「目に見える対策」を受験生や保護者に示すよう、諸大学が取り組んでいることの 現れでもある。  こうして、大学の初年次教育は目下、四年間の教育プログラムを順調に進めていくため に、二つの課題、つまり学習スキル教育という学部教育の「入口」の円滑化と、キャリア 教育という「出口」の円滑化の両方に目配りすることが求められつつある。大学は自立的 な理念・方針の元に高等教育を実現する機関であると同時に、その教育を通じて社会の向 上・発展に寄与すべき組織であるから、こうした要請を正面から引き受けることは自然な ことであろう。

1. 2 学習スキル教育とキャリア教育の融合

 しかし問題は、学部教育の「入口」と「出口」両方への配慮を、初年次カリキュラムの 枠内でいかに実現するかである。とくにキャリア教育の扱いをめぐって、主に二つの課題 がある。  一つ目は「教育内容の適切な設定」である。いわゆる就職活動がスタートするのは三年 生の後半以降であり、大学一年生にとって「まだ先」のことと感じられやすい。そうした 時点でのキャリア教育は、ややもすると、多くの学生にとってモチベーションを持ちにく

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いものとなる。そうした中で、学生に主体的な参加意識を生み出すためには、その大学の 一年生が持つレディネスや関心傾向を見極め、それにマッチしたキャリア教育の内容を設 定しなければならない。  二つ目は「カリキュラムへの統合」である。初年次カリキュラムは、多くの大学ですで に教育改革の重点的対象となっており、密度の濃い内容となっている。いわば自大学の特 性にカスタマイズされた、一定の完成度をもつ初年次教育がすでに存在している。そこへ、 キャリア教育という新たな要素を盛り込む場合、カリキュラム全体のフォルムを崩さずに、 どちらかと言えば「付加」する手法を取りがちである。例えば、ゲストスピーカーの講演 を主とする連続講義的な授業であったり、就職部スタッフによる情報提供を含む研修的な ものであったり、あるいは一般的なキャリア・コンサルティングの手法を応用した啓発セ ミナー的なものであったりする。またこれらの授業を、実質的に外部業者へ委託すること も少なくない。しかし、こうした「付加」的なキャリア科目は他の初年次科目との繋がり が薄く、元々キャリア意識のある学生には有意義であるが、そうでない学生には積極的な 意味が理解されにくい。そこで、キャリア教育の要素を、初年次カリキュラム全体と「統 合」していくことが必要となる。  これら二つの課題を同時に解決するために、大阪女学院大学の「自己形成スキル」では キャリア教育の要素を初年次教育のうち、(1)安定した人格形成に必要な自己理解・自己 省察をねらいとする「自己形成教育」、(2)文章読解・表現力の向上を目指した「リテラシー 教育」、および(3)資料探索の技術を主とする「図書館活用教育」という三つの要素と有 機的に結び付け、一科目として充分な統一性を実現することを試みている。ここに挙げた 三つの教育要素は、従来のカリキュラム中にそれを扱う既存科目があり、「自己形成スキル」 はそれらと相互に補完しあいながら、初年次教育の密度を高める役割を果たす。次項では、 2008 年度春学期に行った「自己形成スキル」のうち、こうした「学習スキル教育とキャ リア教育の融合」に関わる側面を主としながら授業の具体像を報告する。

1. 3 「自己形成スキル」の具体像

 「自己形成スキル」は、大阪女学院大学国際・英語学部一年生(定員 150 名)の全員必 修科目の一つとして、2008 年度に新設された。授業期間は1学期であり、春・秋の両学期 のいずれかにおいて全員が履修する。授業は1時限 50 分で、1学期間に十四回実施されるが、 毎週1時限ずつ行うのではなく、隔週で2時限連続で行う(あいだに 10 分間の休み時間あ り)。実質的には 100 分授業を2週間に一度、1学期に七回受講する形になっている。この「自 己形成スキル」は、同様の形式で、大阪女学院短期大学英語科の一年生(定員 150 名)も 必修科目として履修している。あらかじめ、一学期全体の授業日程を表として示しておく。

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表 1:自己形成スキル 授業日程 1時限目 2 時限目 第1回 ・総合ガイダンス ・ 講義:「読書の質」を高めていくことの大切さ ・期初アンケート(Web 入力) ・第1ステップ課題「私が影響を受けた出来事」解説 ・ リーディング・プラクティス①:エッセイを読む ・課題 Web 提出の方法について 自習事項 ・ 「Web アンソロジー」Vol. 1 読解 →「コメント欄」入力; 課題作成 第2回 ・第1ステップのふりかえり ・講義: 「自己を言語化する」ことの意義     「ジョハリの窓」解説 ・第2ステップ課題「私の価値観・人生観」解説 ・ リーディング・プラクティス②:自己論述文を読む 自習事項 ・「Web アンソロジー」Vol. 2 読解 →「コメント欄」入力; 課題作成 第3回 ・講義: 一年生のためのキャリア講座①     自分にとっての幸せとは?; 「自己一致」     「目標中心の思考」と「欲求中心の思考」 ・ミニ・ワーク: プライベート・クロニクル ・リーディング・プラクティス③:自己論述文を読む 自習事項 ・「Web アンソロジー」Vol. 3 読解 →「コメント欄」入力; 課題作成 第4回 ・特別講座「マイ・ライブラリー」①:  図書館の「地理」を把握しよう(NDC分類);  ミニ・ワーク ・ 特別講座「マイ・ライブラリー」②(図書館実習):  図書の「資料特性」を見極めよう(事典・新書・一般書);  館内フィールドワーク 自習事項 ・ミニ課題 Web 入力 第5回 ・第3ステップ「マイ・ブックレビュー」解説:  ブックレビュー(書評)とは何か? ・講義: レビュー作成ガイダンス(図書選びについて)・リーディング・プラクティス:『日本の論点』を使う   (関心の焦点化、多様なテーマについての一般的知識) 自習事項 ・マイブックレビュー「導入部&前半部」作成 第6回 ・マイブックレビュー作成指導 ・特別講座「マイ・ライブラリー」③(図書館実習):   「関連文献」用資料探索→ APAスタイルでのリスト 作成   自習事項 ・マイブックレビュー最終稿作成 第7回 ・講義: 一年生のためのキャリア講座②     (一年次から卒業までのステップ構想;     大学のキャリアサポートについて) ・一学期のまとめ(修学事項の確認、今後の発展について) ・各種連絡(成績・単位認定ほか)、修了アンケート  こうした行程において、「自己形成スキル」では前項で述べた三つの初年次教育の要素 を、キャリア形成と有機的に結びつく形で盛り込んでいるが、その「連繋」・「融合」の流 れをより具体的にあらわしたものが下掲の「図1」である。この図では「1.読書の世界の 広げ」、「2.自己理解と自己表現」、「3.自己の将来を考える」、そして「4.図書館の活用 スキル」という四つの学習テーマが示されている。受講学生から見た「自己形成スキル」 とは、一学期を通じてこれらのテーマが絶えず交替的に前面化してくるような授業だとい える。ただし、各テーマは単に並列的に置かれるのではない。学習上の有機的な連関が各 テーマ間に生まれるよう配置されており、学期が進行するにつれ、前出の三つの教育要素 に関わる思考と表現が、らせん的に高次化していくよう企図されている。わけても、図中 の「2.自己理解と自己表現」から発展する「3.自己の将来を考える」がキャリア教育へ の主な導線である。これが最終講義「一年生のためのキャリア講座②」(大阪女学院大学キャ リア・サポートセンター職員よるガイダンス・レクチャーを含む)において、具体的なキャ リア形成への導入に結び付くこととなる。

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1. 4 三つの教育要素とキャリア教育の融合

 本節の最後に、前出「1.2」で挙げた三つの教育要素、つまり(1)「自己形成教育」、(2) 「リテラシー教育」、および(3)「図書館活用教育」が、どのような意味で学生のキャリア 形成に資するか、そして現行の「自己形成スキル」が各要素とキャリア教育とをどのよう な仕方で融合させるよう試みているかを大まかに述べておきたい。 (1)「自己形成教育」とキャリア教育の融合  学生が「自己」というものをよく省察し、理解することは、安定した人格形成のために 重要であるばかりでなく、キャリア形成の基礎的作業として必須である。職業やライフス タイルの選択、そしてその実現に向けた努力は、自らの特性を把握し、様々な欲求や意欲 の根源を理解することで、恒常的かつ着実なものとなる。逆に、自己理解が乏しく、目標 設定やそこに向かう意欲が不安定な状態では、たとえ多くの職業情報や支援的リソースを 提供しても、学生はそれを有効に用いることが難しい。キャリア形成の第一歩は、自己形 成とほぼ同義だといえる。  この点に着目し、「自己形成スキル」では、特に学期前半の授業で、一般的なキャリア・ コンサルティングの理論から、学生に自己省察や自己理解を促す要素をレクチャーやワー クの形で取り入れている。例えば、「ジョハリの窓」(第2週1時限目)や「自己一致」(第 3週1時限目)といった、自己のあり方を意識的に捉えるための概念や思考様式を解説し、 それを踏まえた上で「プライベート・クロニクル(自分年表)」(第3週2時限目)を作成さ せるという方法を取る。キャリア教育といっても、最初から就職活動の仕方やその準備方 法を話題にするのではなく、むしろ「自己」という誰にとっても最大の関心対象である存 在を、新たな眼で捉えなおす面白さや豊かさを実感させることから始める。こうした経験 の積み重ねを通じて、一学期の終わりには、将来設計に関わる具体的な話題を学生が主体 的に聞くように導くことが「自己形成スキル」でのねらいだと言える。 (2)「リテラシー教育」とキャリア教育の融合  前項(1)に述べた活動は、同時に「リテラシー教育」の主要な要素である「課題作文 の作成」と密接に連繋している。特に、1学期に三つ課す課題のうち、最初の二つは、「文 章作成を通じた自己省察」というべきものである。第1課題「私が影響を受けた出来事」は、 今の自分がどのような条件の下に形成されてきたかを考えるきっかけとなるテーマである が、同時に、作文のトピックを明確化し、過去の経験を具体的に記述し、かつそれが自分 にとってどのような意味合いを持つかを説明する。こうした多様な質の知的作業を含む課 題である。第2課題「私の価値観・人生観」は、相対的に抽象度を高めながら、やはり自 己のあり方を深く省察する課題であった。  また、書く力とともに、リテラシーの一方の柱である「読む」力の向上にも重点を置いた。 つまり、上に挙げた課題を作成するにあたり、学生に文章表現の要点をレクチャーするば かりでなく、授業内および授業外で、同じことをテーマとして書かれた多様なテクストを

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「サンプル」として読むことも課題の一部とした。例えば、第1課題では、自らの作文づく りに入る前に、担当者である手嶋の自作サンプル「Kちゃんの生まれ変わり」、林望「運 命の力」と「私の御先祖主義」を授業内のコーナー「リーディング・プラクティス」で紹 介し、さらに同じ大学一年生が書いた「学生佳作」二編をプライベートの時間帯で読んで もらった。このうち「学生佳作」は、後出「4.1」で触れられるように Web 上の専用ブロ グで閲覧する形とし、学生が任意の時間にそれを読み、作品への感想コメントを入力投稿 する、という形をとる。単に「読むように」とテキストを渡すのではなく、「課題を仕上 げるため」に必要なステップとすることで、テキスト読解へのモチベーションが学生に生 まれる。こうして提示するサンプルは、はじめは易しい「経験エッセイ」から選び、次に 「論説エッセイ」、その後さらにオーソドックスな論説テクストへとレベルアップしていく。 これまで書物に触れる機会の少なかった学生でも、「自己形成スキル」の課題に取り組む 中で、徐々に大学での学びに必要なテキスト読解力が身に付くよう配慮した。 (3) 「図書館活用教育」とキャリア教育の融合  前項までで述べたように、学期の前半は、テキストの読み書きを通して学生の自己形成 を進展させる活動を中心とした。これに対し、学期の後半は、そうした知的な自己形成の サイクルが、各学生の今後の生活において恒常化していくための教育活動へと比重を移し ていった。  具体的には、大学図書館の効果的な活用法を着実に身に着けるため、「マイ・ライブラ リー」という特別講座を三時限挿入した(第4週1∼2時限目、第6週2時限目)。ここでは、 図書館における資料配置のシステムであるNDC(日本十進分類法)や、資料ジャンルと その特性に関する詳しい解説を行う。しかし、それは単に、学習用資料の効率的な探索力 を身に付けるためだけのガイダンスではない。大学図書館は、さらに広い意味で、大学生 にとっての重要な空間である。そこでは、小説やエッセイなど、趣味的なものを含めてい ろいろな書物に触れることができる。自らの関心のままに本を手に取ったり、書架を行き 来するうちに、しばしば新たな本の魅力を知り、読書の幅が広がってくる。そうした経験 を、プライベートな図書館利用を通じて積み重ね、徐々に幅広い知識と多様な思考方法を 獲得することは、大学生の自己形成に資するところが大きい。  こうして、図書館における自己形成の習慣化と、学習リソース活用力の向上という、や や質の異なる二つのねらいを、学期後半では第3課題「マイ・ブックレビュー」という一 つの取り組みに集約することを試みた。そこでは、各学生が自らの関心に即して、大学図 書館の所蔵図書から本を一冊選び、それについて書評を書くことを課した。書評という文 章ジャンルは、取り上げた図書の内容を客観的に紹介する要素と、本を読んだ上で抱いた 自己の受け取り方(理解・感情・経験の想起等)を述べる要素と、概ね二つの要素の組み 合わせである。この「マイ・ブックレビュー」により、他者の経験や思考を受け取った上で、 それを咀嚼し、自分固有の意見を文章化していく。このプロセスは、書物との対話的関係 によって進める自己形成の営みとも言える。そして、このマイ・ブックレビューには、取

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り上げた本の内容や、知識分野に関わる「関連図書」を5点、事典類の記事を中心に図書 館内で探索させ、稿末にその書誌データを付記してもらった(第6週2時限目)。このように、 学生は学期全体を通じてほぼ三回、課題作成に向けたワークとして大学図書館を歩き回り、 その書架構成や、資料ジャンル(文庫・新書・一般書等)に応じた利用法などを把握して いくことになる。  ちなみに、この第3課題「マイ・ブックレビュー」は、学生が平行して履修している「情 報の理解と活用」の最終課題(自己選択テーマによる論文作成)と同じテーマのものでも 良いということにした。この二つの授業で同じテーマを選択した学生は、「情報の理解と 活用」の課題作成に結び付く本を「自己形成スキル」での書評対象とすることで、前者に おける提出課題の質を高めることもできる。また、同じく「情報の理解と活用」で教える APAスタイルによる書誌データ記述方法を、「自己形成スキル」でも課題内の書誌表示 に応用してもらった。このように、両科目で論文作法に関する指導法を一貫させることは、 APAスタイルについての理解と活用を促進することに繋がる。  ここまで述べてきたように「自己形成スキル」は、「学習スキル教育とキャリア教育の 融合」という現代の大学初年次教育に求められつつある課題に対応する試みの一例であり、 同時に他科目との有機的な連繋をも可能な限り追求している。その結果、「図1」が明らか に指し示す通り、やや複雑なコース構成となることは止むを得ない。担当教員に高度な「交 通整理」能力を要求する面もある。しかし、次節で分析される学生の授業評価アンケート の結果を見る限り、授業の受け手である学生に混乱はほとんど見られず、この授業に設定 された複数の狙いがそれぞれ応分の評価を得ている。  経済・社会の状況変化に応じて、キャリア教育の要素を大学初年次カリキュラムに盛り 込むことは、今後の大学教育における一課題となっていくと予想される。しかしその課題 は、従来型の授業に目立つ「付加型」では充分にクリアすることが難しい。「自己形成スキル」 の実質的な教育成果の確定は客観的なデータの蓄積を待つ必要があるが、少なくとも「付 加型」のキャリア教育を刷新し、学習スキル教育と密接に融合したキャリア教育を実現す ることへの可能性について、ポジティヴな予見が得られたと考えている。

2. 授業評価アンケート分析

2. 1 アンケート実施概要

 本科目は学生の読む、書くというリテラシーの向上とキャリア形成としての自己省察を 目的とした。授業内容はさまざまな文章を読むことを通して、自己を見つめ表現するもの であり、学生のリテラシーの変化を把握するため、期初・中間・修了と三度の Web アン ケートを実施した。修了アンケートでは授業自体に対する評価項目も設け 21 問となった が、読解力や書く力といったリテラシーについては、期初・中間・修了ともに共通した設 問とした。三段階での変化を見るには、中間アンケートの回答率が低く、ここでは期初・

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修了アンケートでの変化を中心に分析を行うこととした。  なお、本稿自体は大阪女学院大学国際・英語学部における「自己形成スキル」を報告の 対象としているが、ここで提示するアンケート数値は、大阪女学院短期大学英語科で同じ 授業を履修した学生の回答を含んでいる。これは初年時の情報リテラシーについては四大 生、短大生に大きな差異はないと考えられ、当該科目については先述の通り四年制・短大 共に統一的な内容としていることなどから両者を併記することで、一定のサンプル数を確 保し客観的分析に有利となるよう配慮した。アンケート内容はリテラシー科目としての読 解、文章力の変化に重点を置いており、四年制と短大生との差異が窺われた場合に四年制 を中心に分析記述の中でそれを指摘することとした。

2. 2 学生の学習環境

 期初アンケートでは、学生の学習環境として WebCT を活用したことから、学生の PC 環境についてまず把握を行った。下記は、自宅での PC 保有状況(期初アンケート)と自 宅から課題の提出を行ったかどうか(修了アンケート)の割合を把握したものである。表2・ 表3に見るように、学生の PC 環境は、自宅に家族共有・個人いずれかでも PC を持ってい る割合は全体で 86%となっている。持っていないと回答した学生は全体で 14%あり、修 了アンケート における「質問 1 学外から課題を提出した」とする回答 87%、学内のみで 提出したとした回答 13%とほぼ相関している。 表 2:自宅に PC を持っていますか 四年制(45 人中) 短大(80 人中)  全体(125 人中) もっていない 7 (16%) 11 (14%)  18 (14%) 家族共有の PC がある 24 (53%) 56 (70%) 80 (64%) 自分個人の PC がある 14 (31%) 13 (16%) 27 (22%) 表 3:学外から課題を提出した四年制(47 人中) 短大(69 人中)  全体(116 人中) あった 43 (91%) 58 (84%) 101 (87%) 学内のみ 4 ( 9%) 11 (16%) 15 (13%)

2. 3 学生のリテラシーの向上

 次に、本科目における目的の一つである学生の読む力・書く力の醸成を中心に、期初 及び修了アンケート結果からその変化について見て行く。まず、学生が元もと読む習慣 を備えているかどうかについて、期初アンケートでは「質問 2 日頃から本を読む習慣が ありますか」を設けた(表4)。その結果、そう思わない・全くそう思わないとする回答 が 66%と半数を超え、そう思う・強くそう思うを合わせた 34%を大きく上回った。では、

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終了後に学生の「本を読む習慣」がどのように変化したかを修了アンケートから見てみる。 修了アンケートでは「この授業によって、本を読む習慣が身についた」かどうかを問うた。 その結果、図2に見るように修了アンケートでは、そう思わない・全くそう思わないとす る回答が 40%に減少し、そう思う・強くそう思うとした回答は 60%となった。少なくと も学生にとっては自分なりに読むことが身に付いたと感じていることがわかる。 表 4:本を読む習慣 (期初・修了時の変化) 期初アンケート 修了アンケート 四年制 (45 人中) (80 人中)短大 (125 人中)全体 (47 人中)四年制 (69 人中)短大 (116 人中)全体 強くそう思う 4 ( 9%) 5 ( 6%) 9 ( 7%) 2 ( 4%) 8 (12%) 10 ( 8%) そう思う 15 (33%) 19 (24%) 34 (27%) 24 (51%) 36 (52%) 60 (52%) そうは思わない 18 (40%) 36 (45%) 54 (43%) 21 (45%) 23 (33%) 44 (38%) 全くそう思わない 8 (18%) 20 (25%) 28 (23%) 0 ( 0%) 2 ( 3%) 2 ( 2%) 図 2:本を読む習慣 期初・修了比較  次に、現在の学生達がどのようなジャンルの本を読んできたのかを把握するため、期初 時に質問「今までどのような本をよく読んできましたか」の設問を設けた。またその変化 を把握するため、修了アンケートでは「現段階で、今後もっと読みたいと思う本はありま すか」と問い、学生の興味や読書の幅の変化を把握した(表5,図3参照)。これは複数回 答としたため、漫画・学習書を除くすべての項目において修了アンケートの方が増加し ており、「読みたい」という意欲、本を読めるようになったことからくる興味の広がりを 表しているとも考えられる。現段階では一般的な文芸作品の増加が 37%の増加と最も大 きいが、新書やノンフィクションといった社会的、時事的テーマを扱ったものについても 30%以上の増加が見られる。また表4に見るように、期初アンケートでは 2 番目に多かっ た漫画が 4 番目に、3 番目に多かったケータイ小説・ネット小説は 5 番目に順位を落とし ている。一方でこのケータイ小説の比率は予想以上に高く、学生のメディア環境が変化し ていることを示唆しているとも言える。

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表 5:読書に対するジャンルの変化 期初アンケート(読んできた) 修了アンケート(読みたい)   四年制 短大 全体 比率 四年制 短大 全体 比率 1. 一般的な文芸作品(小説、エッセイなど) 34 63 97 50% 38 63 101 87% 2. 新書(岩波新書、中公新書、講談社現代新 書、ちくま新書など) 13 17 30 14% 19 33 52 45% 3. ノンフィクション(文化、社会、人間関係、 時事問題など) 21 24 45 19% 27 33 60 52% 4. 学習書(英語関連、受験関連、資格試験など) 25 28 53 22% 7 19 26 22% 5. 古典、哲学・思想書 5 5 10 4% 14 14 28 24% 6. ライトノベル・ファンタジー小説 15 24 39 19% 14 16 30 26% 7. ケータイ小説・ネット小説 34 39 73 31% 13 28 41 35% 8. ビジュアル作品(写真集・絵画集など) 11 10 21 8% 13 12 25 22% 9. 漫画(単行本・雑誌の両方を含む) 32 61 93 49% 16 30 46 40% 10. とくになし 1 2 3 2% 3 1 4 3% 図 3:読んできた本・読みたい本  なお、期初アンケートでは質問 6 で「興味のあるテーマやジャンルで、それに関する本 を読んでみたいと思うもの」を自由に書き出してもらった。この自由記述を KH Coder注 1) によって分析を行った。その結果、四年制と短大の 125 件の自由記述内容から、最も多 かったジャンル名は「小説」で、28 件(四年制 10 件、短大 18)がカウントされた。そこ には恋愛小説 8 件、推理小説 6 件、歴史小説 5 件、ミステリーおよびホラー各 1 件が含ま れ、携帯小説という記述も 2 件含まれる。その他に具体的な作品名をあげたものが4件(ハ リーポッター、遠野物語、源氏物語、浮雲)、作家名をあげたものが 7 件(内 2 件は小説 の 28 件に含む)、フィクション 1 件、ファンタジー 7 件、おとぎ話・童話各 1 件などがあ り、これらを含めるといわゆる読み物的なものは 47 件(38%)となる。なお作家名では、 夏目漱石、芥川龍之介、司馬遼太郎、村上春樹、藤沢周平、東野圭吾、村山由佳、江戸川 乱歩があがっていた。さらに、ノンフィクションの記述が 10 件あり、これらは興味のあ るテーマとしてあげられた社会的なものとも関連すると思われる。社会的なテーマとして

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は、国際問題、環境問題、人権や戦争、女性、エイズ、ストレス、教育、食生活、法律や 経済といったものがあげられた。その他に、ファッションや映画、スポーツなど趣味的な もの、検定試験や資格に関するもの、哲学などの記述がなされた。  上述のように、文学的作品に親しんできた学生は多いものの、大学における学習、研究 に求められる社会的論述文に触れる機会はそう多くはなかったことが読み取れる。本科目 では授業でエッセイ的なものから論述文まで幅広い文章に親しみ、様々なジャンルの資料 を読む力を付けることも重視していた。期初時において、「論理的な文章(新聞記事、論説文、 各種解説書など)を理解する力がありますか」という質問を行った。その結果は表6のと おり「全くそう思わない」15%、「そうは思わない」51%を合わせると 66%が論理的な文 章を理解する力がないと回答していた。  修了アンケートでは「この授業によって、論理的な文章を読む力が成長したと思う」か どうかを問い、その変化を把握した。その結果「そう思う」「強くそう思う」の合計が 67%に増加し、「そう思わない」「全くそう思わない」は 33%へと逆転した(表6・図4参照)。 本科目以外の「情報の理解と活用」など他の科目でも社会的論述文や新聞の活用などが進 められていることもあり、他の科目との相乗効果も含めて考える必要があるが、授業で論 述文や新書本などを紹介し、社会的なテーマについても触れる機会を増やすことで、今ま で読まなかったジャンルのものも読む機会が増えたことが一定の効果をもたらしたのでは ないかと考える。 表 6:論理的な文章の理解力 期初アンケート 修了アンケート 四年制 (45 人中) (80 人中) 短大 (125 人中)全体 (47 人中)四年制 (69 人中)短大 (116 人中)合計 強くそう思う 1 ( 2%) 2 ( 3%) 3 ( 3%) 2 ( 4%) 0 ( 0%) 2 ( 2%) そう思う 17 (38%) 22 (28%) 39 (31%) 25 (53%) 51 (74%) 76 (65%) そうは思わない 22 (49%) 42 (52%) 64 (51%) 19 (41%) 18 (26%) 37 (32%) 全くそう思わない 5 (11%) 14 (17%) 19 (15%) 1 ( 2%) 0 ( 0%) 1 ( 1%) 図 4:論理的文章の読解  なお、多くの学生がレポートや論文に適切な資料をうまく探せていないと考えられ、資 料を選択する際のスキルについても若干の指導を行った。資料の内容把握のスキルについ ては、修了アンケートにおいて、「この授業で、図書資料の内容や特性を的確に把握でき

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るようになった」と思うかどうかを尋ねたところ、83% が把握できるようになったと回答 した(表7)。内容把握には目次や前書き、あとがきなどの情報からその資料のテーマ、著 者の主張や観点を自分の中で要約する力が求められ、学部学生にとっての基礎的なスキル といえ、資料の批判的読み、読解へと繋がるものである注 2) 表 7:図書資料の内容や特性を的確に把握できるようになった四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 4 ( 9%) 6 ( 9%) 10 ( 9%) そう思う 33 (70%) 53 (77%) 86 (74%) そうは思わない 10 (21%) 9 (13%) 19 (16%) 全くそう思わない 0 ( 0%) 1 ( 1%) 1 ( 1%)  「書く」ことについては修了アンケートにおいて「この授業によって、文章を作成する 力が成長した」と思うかどうかを質問した。その結果、表8に見るように 75%が「強くそ う思う」「そう思う」と回答し、「そうは思わない」「全くそう思わない」の 25%を大きく 上回る結果となった。自己省察を含めた2つのエッセイとブックレビューという3つの課題 作成を通して、学生自身が書く力が向上したと感じた結果である。次節では図書館利用に 対する変化について検討する。 表 8:文章作成能力の成長四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 5 (11%) 6 ( 9%) 11 ( 9%) そう思う 23 (49%) 53 (77%) 76 (66%) そうは思わない 18 (38%) 10 (14%) 28 (24%) 全くそう思わない 1 ( 2%) 0 ( 0%) 1 ( 1%)

2. 4 図書館活用への効果

 学生の「読み」の向上には図書館の活用が欠かせないと考えられ、まず期初アンケート において「今まで学校や地域の図書館をよく利用してきましたか」の設問により、過去の 図書館利用状況を把握した。その結果、表9のとおり「そう思う」「強くそう思う」と回答 したのは 43%で、「全くそう思わない」「そうは思わない」が 57% と若干上回るものとなっ た。

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表 9:過去の図書館利用状況四年制(45 人中) 短大(80 人中) 全体(125 人中) 強くそう思う 8 (18%) 7 ( 9%) 15 (12%) そう思う 14 (31%) 25 (31%) 39 (31%) そうは思わない 19 (42%) 29 (36%) 48 (39%) 全くそう思わない 4 ( 9%) 19 (24%) 23 (18%)  当科目では授業時間内に 2 度図書館に行き、図書館の地図を把握し、より幅広いジャン ルへの関心を高めることを目指した。その結果、修了アンケートでは「この授業によって、 図書館をより利用するようになった」と思うかどうかについて、表 10 のとおり、「全くそ う思わない」「そうは思わない」が 14% となり、「強くそう思う」「そう思う」は 86%とな り、図書館利用の機会が増加したことが窺える。これも他科目との相乗効果があっての結 果であると考えられるが、授業の中で行った図書館の資料配置の把握、図書資料の内容把 握に対するスキルについても若干の向上が見られた。 表 10:図書館を利用するようになったか四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 8 (17%) 28 (41%) 36 (31%) そう思う 31 (66%) 33 (48%) 64 (55%) そうは思わない 7 (15%) 8 (11%) 15 (13%) 全くそう思わない 1 ( 2%) 0 ( 0%) 1 ( 1%)  表 11 は「この授業によって、学習に必要な資料を図書館でうまく探せるようになった」 かどうかを尋ねたもので、92%の学生が「そう思う」「強くそう思う」と回答している。 他の教養科目である「情報の理解と活用」では、小論文のために資料を読み始めなければ ならない段階で特別講座「マイ・ライブラリー」が3時限挿入されることで、各自の関心 領域と関連する資料群の配置を知り、資料を実際手にとって読む機会を得ることになる。 またNDCを知ることにより個々の関心領域がどの分野に属する事柄なのかを意識するこ とができ、より適切な資料を探す手がかりを得る。そのことは図書館利用に対するある種 の近づきにくさ、難しさを解消し、利用の促進にもつながるものと考えられる。 表 11:学習に必要な資料を図書館でうまく探せるようになった四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 6 (13%) 14 (20%) 20 (17%) そう思う 37 (79%) 50 (73%) 87 (75%) そうは思わない 4 ( 8%) 5 ( 7%) 9 ( 8%) 全くそう思わない 0 ( 0%) 0 ( 0%) 0 ( 0%)

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2. 5 授業全体への評価についての考察

 最後に、修了アンケートでの自由記述項目に対するコメントの分析を通して、この科 目全体のリテラシーへの効果について検討する。修了アンケートの 21 問目の設問として 「「自己形成スキル」の授業への感想や提案」について自由記述を求めた結果、回答のあっ た 116 名中 108 名から何らかのコメントが記載された。各コメントを KH Coder を使用し、 記述された語を抽出した上位 15 件が表 12 である。 表 12:授業への感想に使用された語上位 15 抽出語 出現数 授業 84 思う 76 自分 63 読む 54 本 52 文章 35 書く 29 課題 24 先生 24 機会 22 考える 21 楽しい 19 今 18 作文 16 増える 16  以下は、このうち、特に授業内容に関する感想等に関連するコメント内容を分析した。 ( )内の%はコメントがあった 108 名中の割合である。  「自分」という言葉は 42 名(38.8%)から 63 件がカウントされた。その内、35 件は「自 分を見つめる時間になった」「自分のことを振り返ることができた」「自分の将来を考える 機会になった」「自分の体験や考えを文章にすることよって自分自身を整理することがで きた」などの記述であり、これらは課題作文やキャリア講座を通して感じたこととして述 べられたものであった。また自分のことを表現することは難しかったとしながらも、自分 自身を振り返り自分の考えを表現することは、自分自身や自分の将来にとって必要、役立 つとした記述も9件見られた。  このことは修了アンケートでの「この授業を通じて、自己の個性をより明確に捉えられ るようになった」及び「自己の将来像やそれに向かうステップを、より具体的に考えるよ うになった」の設問からもその効果が把握できる。「自己の個性をより明確に捉えられる ようになった」かについて、「そう思う」「強くそう思う」を足すと 66%がそう思うと回 答した(表 13)。

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表 13:自己の個性をより明確に捉えられるようになった四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 2 ( 4%) 5 ( 7%) 7 ( 6%) そう思う 26 (56%) 44 (64%) 70 (60%) そうは思わない 18 (38%) 20 (29%) 38 (33%) 全くそう思わない 1 ( 2%) 0 ( 0%) 1 ( 1%)  また表 14 の「自己の将来像を具体的に考えるようになった」についても、「そう思う」 「強くそう思う」とする回答は6割を越す結果となった。しかし、自己の将来については四 年制と短大を比較すると四年制では「そう思う」「強くそう思う」とした回答が 51% と低 い結果となっている。将来を考えるまでに4年間の猶予がある四大生にとって、1年次での キャリア意識の醸成の難しさを現している。しかし、修了アンケートの記述項目には、四 大でも4名ではあるが「将来について具体的に考える時間が与えられてよかった。キャリ アサポートの話はすごく役立った」、「将来のことを考えるときにこの授業のことを役立て ることができたらいい」「自分の夢も言葉にしてみると前よりもハッキリとしたイメージ を掴む事ができた」「自分の将来やりたい仕事の、ステップ講座が役にたった」とする記 述も見られ、当科目が大学生活全体とキャリア意識を結びつける端緒として機能したもの と思われた。また、キャリア意識の低さの要因は卒業までの猶予期間の長さだけに求める のではなく、キャリア形成に対するニーズ、学生の興味や関心、就学状況なども含め多面 的に把握することも課題と考えられた注 3)。なお、キャリア形成に関する教育効果につい ては第5節で改めて省察する。 表 14:自己の将来像をより具体的に考えるようになった四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 5 (11%) 10 (15%) 15 (13%) そう思う 19 (40%) 38 (55%) 57 (49%) そうは思わない 23 (49%) 21 (30%) 44 (38%) 全くそう思わない 0 ( 0%) 0 ( 0%) 0 ( 0%)  次に「文章」についての記述が 32 名(29.6%)からなされ、「文章」は 35 件カウントされた。 その記述内容を表15に示した。なお32名の記述には「作文」「感想」「論文」「ブックレビュー」 を書く等も、「文章」と同様に使用されており、これらを含めれば 44 件の記述となる。32 名の記述の内 11 名(10.1%)は「文章を書く力」「文章力」が向上したことを述べたものであっ た。その他には「文章を書くのが苦手」や「大変だった」とする記述が9名(8.9%)、逆に「楽 しかった」「得意」「好き」といった肯定的な記述も9名(8.3%)からなされた。大変だっ たとする記述には、マイ・ブックレビューや論文調(である体の文体など)、自分のこと

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を表現する難しさが述べられていた。 表 15:「書く」「作成」の言葉が含まれる記述 マイブックレビューの作成が少し大変だった。 1000字って結構多いなと思っていたけど、意外と書くことができた。 文章を書く力がすこしついたと思います。 書くのが苦手で この授業の課題は正直すごく嫌でした。 作文を書くことによって自己を見つめ直すこともできた 文章を書くことが好きなので、作文の課題はすごく楽しんで取り組めました。自分の価値観を書 く作文では、普段文章にしないことなのですごく良い経験になりました。今現在の自分自身のこ とが、ほんの少しだけかもしれないけどわかれたような気がして嬉しかったです。 これから就職するにあたり、文章を書くことが増えると思うので、よかったです。 作文を書くことで文章力がついた。 自分が影響をうけたこと、生きている中で大事にしていることなどの文章を書くことにって、自 分がどういった人なのかということが再発見できてよかった 文章を書く能力も上がったと思う。 興味のある B 型本を読んで、 文章を書けたことがとても楽しかったし、 自分について書けたこと は、本当に面白かった 文章を書くことが多かったので、英語ばっかりの授業のなかで楽しかった授業の1つでした。 課題の作文を作成するのはとても大変でしたが、本を読んだりして作文を書くことは、今後に大 きく役に立つことだと思いました ただの自分の感想を書くのは今まで書く機会があったので何も思いませんでしたが、論文口調で まとめることはこの授業が初めてだったので大変でした。 文章を書く力がつきました。 文章を書く力が前よりかは、ついたと思います。 生の価値観という、今まで考えたこともないようなテーマで文章を作成するのにはとても苦労し ました。 でも、それを書いたことで自分を見つめて色々発見することが出来たと思います。 価値観についての作文など、ふだん深く考えないようなことがテーマだったので、書きあげるの にすごく時間を費やしました。でも、書き終えてもう一度読み直してみると、自分はこんな経験 をしたんだなあと思い起こすことができました。 少しでも文章を書く力をつけることができてよかったと思います。 難しかったけど文章を書くのが好きなので楽しかったです 普段、私の思ってることなんて理解してもらえんやろ∼って 思っている事だって、文章にして みたら、意外と書けて、 たしかに表現とかは難しかったけど、 文章をつくる楽しさを知れました。 文章を書くことはそんなに苦手ではなかったし、 文章を書くのが得意なので全く苦痛を感じず、普通に楽しめましたぁ。 感想を書くのがまだまだ苦手だなぁと思った。 論文の書き方が分かってとても有効に使えたと思う。 ブックレビューも、著者の言いたいことを的確に書き出し、まとめるのは難しかったです。 本の読み方や自分の意見の伝え方を学ぶ事ができたと思います。  書くことの楽しさを含め、授業全体への評価として「楽しい」「楽しかった」「おもしろ かった」という言葉は 30 件 24 名(22.2%)見られ、教員の経験を聴けたり、自己を振り

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返る機会となる授業内容そのものが楽しかったとした記述であった。また本との出会いや 本を読むことが楽しかったとする記述も6名(5.5%)からなされた。またこの授業を通し て得たものとして 46 件の記述があり、上述の「文章力がついた」、「読む力がついた」と いったもの以外に、「自分の言葉で考えていることを的確に伝えることの大切さ」や「将 来のことを考えるきっかけになった」、「本を読んでじっくり考えることをしたのは良いこ とだった」「図書館を利用したくさんの 本を読むようになった」「図書館での本の探し方 が分かった」「 他の授業の関連があって役に立つことが多かった」などの効果が記述され た。  当科目では学生の「読む」「書く」能力が求められる他の教養科目との関連を意識し、「情 報の理解と活用」のテーマに則した資料の読みが求められ始める段階で、「マイ・ライブ ラリー」講座や論述文の読みが組み込まれるなど、小論文作成のための資料収集、APA スタイル、文体などを学生が何度も確認できる機会となるよう構成していた。そのため他 の科目との関連性について「この授業は、他科目とも内容面でつながりがあり、効果的だっ た」という設問によって学生の意識を把握した。その結果、表 16 のとおり、「そう思う」 「強くそう思う」はそれぞれ 15%、64%で 79%の学生が他科目との関連性を指摘した。四 年制では 70%、短大では 84%が他科目との関連性による効果を評価している。 表 16:他科目とのつながり四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 5 (11%) 12 (17%) 17 (15%) そう思う 28 (59%) 46 (67%) 74 (64%) そうは思わない 13 (28%) 11 (16%) 24 (21%) 全くそう思わない 1 ( 2%) 0 ( 0%) 1 ( 0%)  しかし、四大で「そうは思わない」「全くそう思わない」とする回答が 30% となってい ることは、キャリア意識との関連も考えられるが、四大のみの記述項目からいくつかの授 業への不満が見いだされる。授業が土曜に開講されることへの不満(3名)、隔週開講の運 営についての意見(2名)、文章作成などが大変だった(2名)、「自己形成スキルの意味が わからなかった」(2名)、などが挙げられた。  また「この授業の課題は多かったか」の設問では、「強くそう思う」17%、「そう思う」 47%、「そうは思わない」36%、「全くそう思わない」0%であった。しかし四年制だけを 見ると 94% が「そう思う」「強くそう思う」と回答しており、他の科目と提出日が重なる ことなどによってより負担感が増すものと考えられた(表 17)。

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表 17:この授業の課題は多かった四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 14 (30%) 6 ( 9%) 20 (17%) そう思う 30 (64%) 24 (35%) 54 (47%) そうは思わない 3 ( 6%) 39 (56%) 42 (36%) 全くそう思わない 0 ( 0%) 0 ( 0%) 0 ( 0%)  その他については「わかりやすかった」といった評価がなされ、表 18・19 に示すように「こ の授業で学んだことは今後役立つと思うか」の設問には、93%が「そう思う」「強くそう思う」 と回答した。満足度についても 89%が「そう思う」「強くそう思う」と答え「そうは思わ ない」は 11%、「全くそう思わない」は0% であった。 表 18:この授業で学んだことは今後役立つと思うか四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 9 (19%) 17 (24%) 26 (22%) そう思う 34 (72%) 48 (70%) 82 (71%) そうは思わない 4 ( 9%) 4 ( 6%) 8 ( 7%) 全くそう思わない 0 ( 0%) 0 ( 0%) 0 ( 0%) 表 19:全般的にみてこの授業には満足したか四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 5 (11%) 7 (10%) 12 (10%) そう思う 37 (78%) 54 (78%) 91 (79%) そうは思わない 5 (11%) 8 (12%) 13 (11%) 全くそう思わない 0 ( 0%) 0 ( 0%) 0 ( 0%)

2. 6 アンケート分析のまとめ

 期初アンケートと修了アンケートを中心に当該科目による学習効果、授業内容の評価に ついて検討した。当科目の目的の 1 つであるリテラシーの向上については、学生による自 己評価では概ね効果を得たと言える。学生の多くが論述文を読む力が向上し、読むことの 楽しさも経験できたと思われる。さらに文学作品から社会的論述文等へと読書の幅の広が りが確認できた。また、文章力についても多数の学生が書く力がついたと感じていること がわかった。自己省察においても読むことや書くことを通して自己を見つめ、自身を表現 する必要性と楽しさを感じたとする回答も見られ、初年時におけるリテラシーの向上に何 らかの効果をもたらす可能性が示唆された結果となった。  また、これらの分析結果からは読み、書くといったリテラシーに関する個々人の意識は

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四年制、短大共に大きな差異はないことも示唆された。しかし今回の調査では四年制の回 答率が低い点、全体としては四年制の方に低い評価が目立ち、キャリア意識の面や授業構 成などに課題を残すこととなった。また将来への展望が描ききれない四年制へのキャリア 意識の向上には、キャリア形成に関する動機付けだけではなく、大学生活全体でのモチベー ションも含めて検討する必要があると思われ、今後受講状況や個々の興味・関心領域など も踏まえた多面的な学生像の分析が求められるのではないだろうか。

3. e ラーニング手法の導入

3. 1 初年時教養教育科目における学習項目の関連

 大阪女学院大学における教養教育のねらいは、「自己の役割や在り方を社会との関係の 中に位置づけて認識し、豊かな人間性をはぐくむとともに、自分の生き方により高いもの をめざす資質を育成」し「現代社会における複合的な諸課題の因果関係や発生過程などの 構造を理解し、卒業後、社会において見識ある活動を行うことができる知の基盤を培う」 ことにある(大阪女学院 , 2007)。現在「自己の形成」「現代の課題」「研究・調査の方法」 の3つの科目群から構成され、「自己形成スキル」は、自己の形成群に属し「ことばによる 表現力や将来希望する職の探求力を育成し、自己形成を図るスキルを身につける」をめざ している。関連する教養教育科目注 4)では、「ことばによる表現力」を前提として小論文 の作成等の論理的文章による表現を求める課題が提示されている。近年、入学者の変貌に 伴い、基礎的な読解力の低下に対応することが吃緊の課題となってきた。こうした課題は、 単一教科のみの学習によって解決されるものではなく、1 年次に平行開講される関連教科 が、様々な学習資源を活用し組織的な学習過程を構成して取り組んでこそ効果をあげる。

3. 2 科目形態と学習管理システム利用の意義

 本科目は、各週 100 分計6回の隔週開講という授業形態を取っている。講師は、各講義 終了後の時間外に個別対面相談に一定時間応じるデスクを設ける。学生は講義間の2週間 の内に時間を要する読み物に取り組むことになる。しかしながら、隔週開講ゆえの講師と の関係は、毎週開講される教科に比べて疎になることは否めない。それを補うために、e ラーニング手法を用いて、学習教材に学内外からアクセスできる環境を構築した。また、 講師とのコミュニケーションが常時図れるよう学習管理システム(以下 LMS)注 5)上にコー スを開設した。

3. 3 LMS 上のコース構築と学習項目の配置

 本科目のコースを LMS 上に開設する意義は、科目としての性質と他教科との役割強化 という大きくふたつの側面がある。 1)LMS を介した常時教材提供とコミュニケーションを促進する。

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2)他教科との学習項目の連動と一元管理を実現する。  コースコンテンツは、各週ごとに分け、当該の週に提供される教材および課題が集約さ れる構造とした。それとは別に講師および学生間でのコミュニケーションを図るための、 メール・掲示板・チャットといったコミュニケーションツール群を集めた。また課題の提 出後の採点結果は、講義間の2週間の間にも逐次進められ講師のコメントと合わせてリア ルタイムで学生に伝えられる。また授業アンケートを授業開始時、中間時、授業終了時の 3期に渡って Web 上で継続的に実施した。この常時実施されるリアルタイムアンケートに よって、学生の状況および授業評価は、授業期間中も形成的なコースの調整変数として機 能することを目指した。 図 2:コースメニュートップ  また、初年次教育科目の内、「デジタルネットワーク基礎」及び「情報の理解と活用」 が全学統一で LMS 上において実施されている。そのため各学習項目は、学期スケジュー ル上のそれぞれの位置に配置されると共に、教科を超えて全体としての学習順序を設計す ることが可能である。具体例を上げてそのプロセスを述べるならば、本科目では、読書の 促進のためも具体的学習活動をおこなう図書館を重要な場として位置づけている。他方で 「情報の理解と活用」でも図書館を論文作成のための調査活動をおこなう場として位置づ けている。「情報の理解と活用」では、第2∼3週に渡って組織的な図書館における調査演 習を行い受講者全員が参考資料を手に取ることになる。これを踏まえて本科目では、第4 週から図書館を利用した演習に入り、資料配置や分類について館内を散策することで資料 アクセスの全体像を体感する演習:マイライブラリーが実施される。そうした諸活動を前 提に学期後半では、本科目では、読書活動を論理的な文章にまとめる最終課題に書評の作 成を求めた。他方「情報の理解と活用」では、文献調査による小論文作成が課せられる。

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これら教科間で科される課題は、各学習者の学習プロセスを鳥観するように、それぞれの 時期に課題提出がおこなわれるように設計配置されている。

4. システムを通じた学習コミュニティ作り

4. 1 コミュニケーションシステムの設定

 本科目では、学生の読書環境および今日的メディア環境を考慮に入れて、多様な環境下 での読書が実施できる仕組み作りを考案した。ひとつは学生の携帯電話利用の恒常化を視 野に入れて携帯を通じた読書の機会を提供した。また読書行動と合わせた Web 上で双方 向のコミュニケーション過程を実施できるように考慮した。  学生の携帯電話利用は、電子メールを初めとして、Web システムの利用も増えている ため、旧来の読書形態に囚われずこうした教育上の働きかけも有効であろう。携帯から閲 覧できる Web コンテンツは、通学時間等にも自由に閲覧できることから多様な学習機会 を容易に提供できるものと考えられる。今期は、本科目で課題とした読み物を携帯から閲 覧できると共に、各コンテンツの投稿および提示期間等の管理を各教員がそれぞれの学習 進捗に合わせて実施できるようにコンテンツ管理システム注 6)上に構築した。  2008 年度春学期は、4点の Web アンソロジーを2期に分けて講師が投稿し、各記事を読 んだコメントを Weblog 上に残すことを課した。 図 3:読解教材に付加されていくコメント

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4. 2 オンライン目録システムのコミュニケーションシステムへの組込み

 図書館サービスにおいて、オンライン目録システム(以下 OPAC)注 7)は、自館の所蔵 資料を学内外に示す重要な基幹システムである。これまで大阪女学院大学の所蔵資料の書 誌および所蔵情報を提供するのが同システムの役割であり、図書館サイドからの情報発信 的性質が強かった。ここに今回の学習成果物である「学生書評」を連動させることによっ て、所蔵資料がどのような学習成果を得ているかを示すと共に、他の学習者に資料利用時 の参考情報を提供することで双方向的コミュニケーションを図るように前述コミュニケー ションシステムとの統合を計った。

 大阪女学院では、OPAC を Campus Portal の統合認証下(以下 SSO)に組み入れることで、 利用者が図書予約から自分の資料貸出・延滞情報の閲覧までシームレスに提供できるシス テムになっている。他方で「学生書評」を前述コミュニケーションシステムの一環として Weblogで構築し SSO 下に組み入れ Campus Portal 内では自由に「学生書評」が閲覧できる。 さらに OPAC の書誌データベースに各データに外部システムとリンクづけるためにタグを 設け、各書誌に対応する書評一覧へとリンクを張り両システムの連動をおこなった。これ によって、各書誌データは、図書館サイドで構築され、それに関連する書評が発生すると ユーザサイドで自由に追加することができる。OPAC の利用者は、書誌検索結果に加え先 行する学習者が残した学習成果を同時に参照することで資料評価等の参考情報が閲覧でき る。このシステムは、Campus Portal 内で OPAC を軸にした双方向の交流を目指した学習 コミュニティ作りを図るものである。

5. まとめ:キャリア形成に関わる教育成果と今後の課題

 ここまでの考察を通して、「自己形成スキル」科目構想の背景およびその具体像の紹介(第 1節)、学生による授業評価アンケートの分析(第2節)、そして授業を効率的に運営するた めの e ラーニング手法の報告(第3・4節)を行ってきた。ただし、第2∼第4節は科目の教 育活動とその効果全般に関する考察を主としたため、本稿のタイトルが示す「学習スキル 教育とキャリア教育の融合」に特化した記述は含んでいない。そこで本節では、従前の報 告を踏まえた上で、再び本稿の主題に戻り、授業評価アンケートのうちキャリア教育に関 わる評価項目を取り上げ、現時点での教育効果と今後の課題を示しておく。

5. 1 キャリア形成に関わる教育効果

 第2節が考察したアンケート諸項目で、学生のキャリア形成に関わるものは、「2.5」に 示された二つの設問、つまり「この授業を通じて、自己の個性を明確に捉えられるように なった」(表 13)と「自己の将来像やそれに向かうステップを、より具体的に考えるよう になった」(表 14)というものである。一般的なキャリア・コンサルティングのステップ に当てはめて言えば、前者は「自己概念の開発」という最初歩の取り組みについて問うも のであり、後者はその開発された自己概念を将来構想の中に「社会化」していく作業につ

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いて尋ねている。それぞれの結果を再掲しながら、簡単に考察を加えておく。  まず「自己の個性を明確に捉える」という取り組みについては、次のような数値が得ら れた。 表 13 (再掲): 自己の個性をより明確に捉えられるようになった四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 2 ( 4%) 5 ( 7%) 7 ( 6%) そう思う 26 (55%) 44 (63%) 70 (60%) そうは思わない 18 (38%) 20 (28%) 38 (33%) 全くそう思わない 1 ( 2%) 0 ( 0%) 1 ( 1%)  この項目では、短大生と比べれば、四年制学生の回答において「強くそう思う」と「そ う思う」を合わせた肯定的評価の割合が少ないものの、短大回答との差はどの項目でも 10% 以内であり、際立った差異は見られない。学生側の授業評価を尋ねる他の質問項目 (例えば前出「表7: 図書資料の内容・特性の把握力」や「表8:文章作成能力の成長」、「表 10: 図書館の利用頻度」などを参照)を見ると、いずれにおいても四年制の学生の肯定的 評価の数値は、短大生のそれより概ねマイナス 5% からマイナス 20% の間で推移している。 このことは、授業そのものに対する関心や積極性といった、基本的姿勢の差が各項目に大 なり小なり反映していると見てよいだろう。またそれは、「自己形成スキル」に関するい くつかの不満点が、特に四年制学生のコメントから見出される事実とも符号する(前出 「2.5」のうち「表 16」の分析記述を参照)。そうした回答全般に窺える傾向を考慮するな らば、上の表において、「自己概念の開発」に関わる教育効果は四年制・短大ともに比較 的順調に得られたと言えるのではないか。  これに対して、「表 14: 自己の将来像を具体的に考えるようになった」(下掲)の数値を 見ると、四年制と短大とで評価の違いがより明確化してくる。 表 14 (再掲):自己の将来像をより具体的に考えるようになった 四年制(47 人中) 短大(69 人中) 全体(116 人中) 強くそう思う 5 (10%) 10 (14%) 15 (13%) そう思う 19 (40%) 38 (55%) 57 (49%) そうは思わない 23 (48%) 21 (30%) 44 (38%) 全くそう思わない 0 ( 0%) 0 ( 0%) 0 ( 0%)  特に目を引くのが「そう思う」の項目で四年制・短大の間に 15% の開きがあり、「表 13」の同項目での 8% 差よりマイナス・ポイントがほぼ倍増している。短大生側の高い評 価は、当然ながら、四年制学生に比べ短大生の方が「卒業後」をより身近にとらえ、「自 己形成スキル」の授業進行とともにそのゴールへ向かう内在的関心や欲求が触発されたこ

表 1:自己形成スキル 授業日程 1時限目 2 時限目 第1回 ・総合ガイダンス ・ 講義:「読書の質」を高めていくことの大切さ ・期初アンケート(Web 入力) ・   第1ステップ課題「私が影響を受けた出来事」解説・ リーディング・プラクティス①:エッセイを読む ・課題 Web 提出の方法について 自習事項 ・ 「Web アンソロジー」Vol. 1 読解 →「コメント欄」入力; 課題作成 第2回 ・第1ステップのふりかえり ・講義:  「自己を言語化する」ことの意義     「ジョハリの窓」解説 ・  
図 1:「自己形成スキル」一学期間の授業の流れ
表 5:読書に対するジャンルの変化 期初アンケート(読んできた) 修了アンケート(読みたい)   四年制 短大 全体 比率 四年制 短大 全体 比率   1. 一般的な文芸作品(小説、エッセイなど) 34 63 97 50% 38 63 101 87%   2. 新書(岩波新書、中公新書、講談社現代新 書、ちくま新書など) 13 17 30 14% 19 33 52 45%   3. ノンフィクション(文化、社会、人間関係、 時事問題など) 21 24 45 19% 27 33 60 52%   4
表 9:過去の図書館利用状況   四年制(45 人中) 短大(80 人中) 全体(125 人中) 強くそう思う   8 (18%) 7 (  9%) 15 (12%) そう思う 14 (31%) 25 (31%) 39 (31%) そうは思わない 19 (42%) 29 (36%) 48 (39%) 全くそう思わない  4 (  9%) 19 (24%) 23 (18%)  当科目では授業時間内に 2 度図書館に行き、図書館の地図を把握し、より幅広いジャン ルへの関心を高めることを目指した。その結果、 修了
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