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新春誌上座談会 食品安全認証の活用による食品マーケティングの新たな展開 食品の安全と認証制度 東京海洋大学大学院食品安全流通管理専攻教授 ゆ湯 かわ川 ごう剛 いち一 ろう郎 1. 認証制度とは (1) 製品認証とマネジメントシステム認証商品を購入しようとするとき, その商品が果たして代価に見合う品

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1.認証制度とは

(1)製品認証とマネジメントシステム認証 商品を購入しようとするとき,その商品が果た して代価に見合う品質を備えているかどうか,消 費者が確認することは難しい。専門家に聞いてみ ればわかるかもしれないがそんな都合のよい専門 家が身近にいるとは限らない。このようなとき, 認証制度に基づく適合証や,わかりやすい等級表 示があれば,消費者の商品選択にとって貴重な手 がかりとなる。 JIS 17000:2005「適合性評価 用語及び一般原 則」では,「認証(certification)」について「製 品,プロセス,システム又は要員に関する第三者 証明」と定義している。さらに,「証明」につい ては「レビューに従った決定に基づく,規定要求 事項の充足が実証されたという表明の発行」と, 「レビュー」については,「適合性評価の対象が, 規定要求事項を満たしていることに関する選択活 動及び確定活動,並びにこれらの活動の結果の適 切性,十分さ及び有効性の検証」と定義している。 要するに,認証とは,製品,サービス等が,規 定要求事項を満たしていることを第三者が確認し, それを表明することである。 認証の手法には大きく分けてマネジメントシス テム認証と製品認証がある。食品に関する代表的 な認証制度である JAS 制度についてみると,制 度発足当初は製品が基準を満たしているかロット ごとに検査を行うという製品認証であったが,生 産量の拡大,技術の進歩とともに,生産工程が決 められたとおりに機能するとともに管理のミスを 工程の改善に結びつけているかを確認するマネジ メントシステム認証の考え方が取り入れられるよ うになってきた。既に廃止された制度である生糸 検査制度や輸出検査法に基づく検査制度ではロッ トごとの抜き取り検査により合否を判定しており, マネジメントシステムの考え方は含まれていなか った。こうした経緯から考えると , 二つの認証シ ステムの中では製品認証がより長い歴史を有して いるといえる。 ところで,マネジメントシステム認証は,「仕 組み」に関する適合性を評価するものであり,そ こから得られる製品の規格適合を検査するもので はない。一方,製品認証は,消費者,規制当局, 業界等に対し,製品が規定要求事項に適合してい ることを保証する確立された適合性評価手法であ る。顧客や消費者にとって,製品が第三者証明を 取得しているという信頼のもとに取引条件として 事業者に認証を要求する事例が一般的であり,製 品認証の考え方は,安心 ・ 安全な製品の購入判断 の根拠となっている。 (2)製品認証の種類 先に述べたとおり,製品認証の基本は製品(ま たはロット)について検査を行い,証明書を発行 することであるが,実際の製品認証制度ではサン プリング誤差や検査のすり抜けを可能な限り少な くするため,マネジメントシステムの考え方を組 み合わせた方式が採用されることが多い。 製品認証スキームの詳細な条件については ISO/IEC 17067:2013(JIS 17067:2014)「適合性 評価-製品認証の基礎及び製品認証スキームのた めの指針」に記載されている。この中で製品認証

 川

かわ

 剛

ごう

 一

いち

 郎

ろう  東京海洋大学 大学院食品安全流通管理専攻 教授

食品の安全と認証制度

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の目的の一つに「自身の製品が規定要求事項を満 たしていることが公平な第三者機関によって証明 されたことを,供給者が市場に示すことができる ようにする」ことが挙げられている。これは製品 が基準を満たしていることを,認証マーク等を製 品に表示することにより消費者に直接訴えること ができることを示しており,認証を受ける組織に とってはマネジメントシステム認証にはない魅力 となっている。 ISO 17067には,認証スキームのタイプが示さ れている(第1表)。すべてのタイプが,選択, 特性の確定,レビュー,決定及び証明を含んでお り,これらの工程が製品認証に必須の工程といえ る。ISO 17067にはこれらの工程の他に,市場や 工場からのサンプルの試験によるサーベイランス, マネジメントシステム監査と組み合わせた製品認 証スキームのタイプも示されている。製品認証と マネジメントシステム認証は対立するシステムで はなく,相互に組み合わせることにより製品が要 求水準を満たしている可能性を一層高めることが できる手法である。

2.食品の安全と製品認証

(1)HACCP とは 食品の安全を確保するためのシステムのうち代 表的なものは HACCP システムである。HACCP は Hazard Analysis and Critical Control System の 頭文字を並べたものであり,「危害要因分析及び 重要管理点」と訳される。農林水産省による 2017年版食料 ・ 農業 ・ 農村白書では,HACCP システムを「原料受入れから最終製品までの各工 程で,微生物による汚染,金属の混入等の危害の 要因を予測(危害要因分析:Hazard Analysis) した上で,危害の防止につながる特に重要な工程 第1表 製品認証スキームのパターン

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(重要管理点:Critical Control Point,例えば加 熱・殺菌,金属探知機による異物の検出等の工 程)を継続的に監視・記録する工程管理のシステ ム」と定義している。

この手法は,国連食糧農業機関(FAO: Food and Agriculture Organization)と世界保健機関 (WHO: World Health Organization)の合同機 関であるコーデックス委員会から示され,各国に その採用が推奨されている。 HACCP の考え方が商業ベースで最初に導入 されたのはアメリカであり,低酸性缶詰の適正製 造基準(GMP)に HACCP に基づいた衛生管理 が取り入れられ,各国でも考え方が広まりだした。 わ が 国 で も1990 年 に「 食 鳥 処 理 場 に お け る HACCP 方式による衛生管理指針」が策定され, 1996 年には食品衛生法による総合衛生管理製造 過程承認制度が一部の業種によりスタートした。 食品の安全管理について各国で様々な取組が進 む中で,コーデックス委員会が1993年に HACCP 適用のガイドラインを発表し,各国において HACCP に基づいた衛生管理が進められるようになった。 また,2003 年にはガイドラインが改定され,小 規模な事業者に配慮した柔軟な導入が推進される こととなった。 (2)HACCP を含む食品安全マネジメントシステム HACCP は特定の病原菌や異物の混入をコント ロールするための技術ではなく,適切なコントロ ール手段を見いだすための考え方のステップであ る(第2表)。 ISO 22000:2005「食品安全マネジメントシス テム-フードチェーンのあらゆる組織に対する要 求事項」は HACCP の考え方をマネジメントシス テムで管理し,失敗が少なく,失敗してもそれを 再発させない組織の実現をめざしたものである。 規格のコンセプトは第1図に示すとおりであり, 下部のコントロールのサイクルを上部のマネジメン トのサイクルで継続的に改善する形になっている。 ISO 22000は ISO 9001「品質マネジメントシ ステム-要求事項」などと同じマネジメントシス テム規格であり,組織が認証を取得しても製品 個々の品質が要求水準を満たしていることを保証 するわけではなく,製品にも製造工場が認証を受 けている旨を表示することは認められない。 しかし,HACCP には製品検査の性格を強く有 するステップが含まれている。HACCP では, 製造する食品の危害要因を分析し,安全性の確 保に重要な影響を持つ工程を特定し,管理基準 (CL:Critical Limit)を設定し,条件が満たされて いるか否かモニタリングを行い,満たされていな い場合には,該当する製品またはロットを次工程 に送らない。これは,製造中の製品について,一 定の基準(HACCP の場合は管理基準(CL)という 加工等の条件)を遵守しているか試験(HACCP の場合はモニタリングによる CL を満たしている か否かの判定)を行い,レビュー(モニタリング 結果の確認),認証の決定(次工程への送付など の判断)を行っていることに相当する。特に HACCP における CCP は,モニタリングの頻度 に応じたロットの設定などにより製品のすべてを カバーするよう定められるため,製品認証に限り なく近い性格を持つといえる。なお,HACCP の 場合,検査に該当する CL のモニタリングは第三 者ではなく製造者が行うが,JAS 制度でも試験を 行い JAS 規格への合否判断を行うのは登録認定 第2表 HACCPの7原則12手順 □危害要因分析のための準備段階 手順 1:HACCP チームの編成 手順 2:製品についての記述 手順 3:意図する用途の特定 手順 4:製造工程一覧図の作成 手順 5:製造工程一覧図の現場での確認 □危害要因分析,HACCP プランの作成 手順 6:危害要因の分析(原則1) 手順 7:重要管理点(CCP)の決定(原則2) 手順 8:管理基準の設定(原則3) 手順 9:モニタリング方法の設定(原則4) 手順 10:改善措置の設定(原則5) 手順 11:検証方法の設定(原則6) 手順 12:記録の保持(原則7)

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機関ではなく製造者自身であり,試験や合否判定 が第三者によって行われることは製品認証の必要 条件ではない。筆者は,マネジメントシステムで あっても,消費者が直接摂取する食品のように高度 な安全性が求められる品目では製品認証に沿った考 え方が必要とされるのではないかと考えている。

3.JAS 制度の変遷

(1)JAS 制度の仕組み JAS 制度は「農林物資の規格化等に関する法 律」(なお,2017年の法律改正により「日本農林 規格等に関する法律」に改称される予定。改正法 の施行は2018年4月の見込み。以下,「JAS 法」 という。また,条文,用語等は改正前の法律によ る)に基づく製品認証制度である。JAS 制度が製 品認証制度であることは,JAS 法第17条の2第 1項第2号に登録認定機関が「国際標準化機構及 び国際電気標準会議が定めた製品の認証を行う機 関に関する基準に適合する法人であること」とし ていることから明らかである。現時点での JAS 制度の仕組みは第2図に示すとおりであり,製品 に対する検査は認定事業者により JAS 規格に基 づいて行われ,認定事業者が適切に製造,検査, 格付け,JAS マークの表示等を行っているかの確 認は,登録認定機関により品目ごとの認定の技術 的基準に基づき行われ,さらに登録認定機関の業 務が適切に行われているかは,農林水産大臣(実 際には独立行政法人農林水産消費安全技術センタ ー職員が実施)が ISO/IEC 17065(JIS Q 17065) 「適合性評価-製品,プロセス及びサービスの認 証を行う機関に対する要求事項」に基づき行って いる。 こうしたシステムからわかるように,JAS 認証 制度で最も重要な基準は登録認定機関が JAS 認 第1図 ISO 22000の概念図

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定事業者を監査する基準である認定 の技術的基準(第2図)である。こ の基準は農林水産大臣告示により公 表されている。なお,認定の技術的 基準は JAS 規格とは異なり,農林 物資規格調査会の審議事項とはされ ていない。 第3表は認定の技術的基準の例を 示したものである。簡略化されてい るが品質マネジメントシステムに求 められる基本的な事項(内部規定類 の制定,改正,周知,従業員に対す 第2図 JAS制度の概要 第3表 食料缶詰及び食料瓶詰についての製造業者等の認定の技術的基準(抜粋)

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る教育訓練,苦情処理,内部監査等)が含まれて おり,登録認定機関による認定事業者に対する監 査は基本的には品質マネジメントシステムの考え 方に沿って行われていることがわかる。 (2)JAS 制度へのマネジメントシステム導入 の経過 JAS 制度がマネジメントシステムの性格を有す るようになったのは,1999年7月の JAS 法改正 により,登録認定機関の認定を受けた新認定工場 が自ら格付検査を行って JAS マークを貼付する ことができるようにしたときからである。それ以 前は,製品の検査は登録検査機関が行い,検査結 果の通知を受けてから JAS マークを貼付すると いうロットごとの検査に基づく製品認証の建前で システムが運用されていた。 また,この改正では,有機食品の検査認証・表 示制度が創設された。有機食品は理化学的な検査 で真偽を確認することが難しく,生産過程におけ る記録の確認を行うマネジメントシステム監査の 手法でしか真偽を確かめることができない。この ため「有機農産物及び有機飼料についての生産行 程管理者及び外国生産行程管理者の認定の技術的 基準」では,格付けの実施方法として,生産行程 についての検査に関する事項,格付けの表示に関 する事項,格付け後の荷口の出荷または処分に関 する事項等に関する規定(以下,「格付規定」と いう)を具体的かつ体系的に整備し,格付規定に 従う業務の適切な実施,その結果,格付けの表示 の適切な実施,名称の表示の適切な実施が確実と 認められることとされている。認定事業者が自ら 行う「検査」は,これらが確実であったことを確 認した証拠として記録を残すことにより行われる。 なお,この法律改正では,農林水産大臣による 登録認定機関の監査基準として ISO/IEC 17065 が JAS 法条文中に明記され,JAS 制度が製品認 証に関する国際的な基準に基づき運用されること が明確にされた。 (3)新たな JAS 制度の展開 実質的なマネジメントシステム認証としての性 格を強めてきた JAS 制度であるが,2017年の改 第3図 JAS規格の国際化対応

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正ではさらにその性格を強めようとしている。今 回の JAS 法改正では,JAS 規格について海外取 引における JAS 規格の活用を念頭に置くほか, 生産方法,事業者による取扱方法,試験方法に関 する規格を制定することができるようにされたと ころである。2017年7月に開催された農林物資 規格調査会資料(第3図)には,国際的に通用し ているマネジメントシステム等に関する ISO 規 格について積極的に取り込む方針のほか,GFSI 承認規格の認証取得者については JAS 認証基準 を緩和する考え方が示されている。食品に関する ISO マネジメントシステム規格としては ISO 22000 が代表的な規格であり,今回の JAS 法改正により, JAS 制度が HACCP を含む ISO 22000との連携 も視野に入れた運用を考えていることをうかがわ せる。

4.認証制度の課題

2017年の後半に入り,大手自動車会社2社に よる完成検査工程の問題,大手鉄鋼メーカーによ る検査証明書データの書き換え等の問題が発生し た。鉄鋼メーカーの事案では子会社が銅管の JIS 表示認定取り消し処分が行われる事態となってい る。これまで,わが国の認証制度は,規制緩和の かけ声に押されながら,システムの自主管理,簡 素化を進めてきた。自動車会社の問題は型式指定 自動車の完成検査という認証制度にかかわる不正 であるが,鉄鋼メーカーの問題は法令規格への不 適合の問題のほか,顧客仕様への不適合の問題も 含まれており,すべてが認証制度の問題というわ けではない。しかし,法律に基づかない基準であ る顧客仕様についても顧客はメーカーが客観的に 実施した自主検査で適合したもののみを出荷して いると考えており,この前提に対する信頼が揺ら いだ場合,運用関係者の善意を前提としている認 証制度に対する信頼も大きく傷つく。 食品安全マネジメントシステム認証でも,東南 アジアの ISO 22000認証組織において監査の前 日に必要な記録を作成しているとの証言を聞いた ことがある。その組織では来訪した審査員は製造 現場のウォークスルーを30分程度で切り上げ, 残りの時間は会議室で文書類を中心に点検を行っ ていたとのことであった。正確な記録はマネジメ ントシステム認証の前提であるが,つじつま合わ せの記録作成のような行為を見抜くには,現場観 察,要員へのインタビュー,文書類の点検をバラ ンスよく組み合わせ,品質管理の実態を把握でき る力量を持った審査員の養成が不可欠である。 食品分野では,世界の大手食品流通 ・ 製造企業 が集まり , 食品の安全確保のための様々な課題へ の対応策を議論している GFSI において,意図的 な食品の汚染への対応である食品防御や経済的な 動機から製造者等が自ら手がける食品偽装への対 応が話題となっている。これらは組織内部の関係 者の協力が疑われる問題であり,組織が安全管理 に向けて積極的に努力することを前提としている マネジメントシステム監査では防げないのではな いか,ということが ISO 22000の改訂を議論す る場でも話題となった。GFSI のガイダンスドキ ュメントでは食品防御や食品偽装について組織の 弱点を評価し,対策を考えることが求められてい るが,具体的にどのような対策が有効であるかに ついては説明がない。 2017年2月に開催された GFSI 世界大会では, 会議参加者の関心は食品安全から,食品偽装や違 法労働,持続的でない方法によって生産された食 品をいかに排除するかという点に移っていたよう に感じた。 最近ではシステムを整えても発生するヒューマ ンエラーによるミスをどのように防ぐかについて も関心が高まっている。この問題には心理学的な アプローチも必要となってくる。 食品の認証制度は,こうした課題に対応し,絶 えず新たな手法を取り入れ,消費者に安全な食品 を供給できる生産環境を守ることが求められてい る。

参照

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