平成24年度 現場ニーズ等に対する技術支援事業
チタン鉱床開発のための鉱物分離・回収プロセス
の検討に関する共同スタディ
報告書
(公開版)
平成25年3月
独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
住友商事株式会社
は し が き 近年、世界的な鉱物資源の需要拡大による原料確保のための権益獲得競争の動きが一 層活発化する中で、環境保全対策や循環型社会構築への積極的な対応が求められるなど、 我が国の金属資源産業が置かれている状況は大きく変化している。一方で資源開発の現 場は、採掘対象の低品位化、探査ターゲットの奥地化や潜頭化など、より技術的リスク の高い鉱床の開発へと移行しており、より効果的な選鉱・製錬等の生産技術が求められ ている。こうした状況に対応する技術の有無が資源開発企業の競争力を左右しているの が現状である。 このような背景のもとに、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構では、我が 国企業による資源権益確保や我が国の資源供給活動の競争力強化に資することを目的 として、我が国の金属資源産業が抱える技術課題等を把握し、我が国企業が関与する操 業現場における技術課題への対処や鉱山開発・F/S評価における生産技術の検討に対す る技術支援を行うために、「現場ニーズ等に対する技術支援事業」制度の本格運用を平 成18年度より開始している。 本報告書は、平成24 年度の提案公募において採択した支援事業のうち、「チタン鉱 床開発のための鉱物分離・回収プロセスの検討」に関する共同スタディの成果をとりま とめたものである。本共同スタディで対象となっているチタンは軽く、強く、錆びない ことやアルミ、錫等と合金にすると引張強さを比重で割った比強度が実用金属中で最も 高いため、純チタンは発電所や化学プラントなどに、チタン合金は航空宇宙関係を中心 に使用されている。他にも医療材料などの機能材料としても使われ、最近では酸化チタ ンが光触媒として脱臭、防汚、抗菌等の用途に利用されている。 本共同スタディは、日本企業がその全量を輸入に頼らざるを得ないチタンの新規原料 供給源となり得る可能性を検討すべく、ベトナム南部のチタン鉱床開発で障害となる赤 土とチタン鉱物を分離するプロセス及びその設備の検討のための調査・開発を実施した。 本報告書が、関係各位の参考になれば幸甚である。 平成25年3月 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 金属資源技術部
目 次
1. 共同スタディの概要 --- 1 1.1. 背景・目的 --- 1 1.2. 実施内容 --- 1 1.3. 実施鉱区 --- 1 1.4. 実施期間 --- 2 1.5. 実施従事者 --- 3 2. 共同スタディの調査内容及び結果 --- 3 2.1. 赤土解析を実施するための追加ボーリング --- 3 2.2. ボーリングサンプルの分析 --- 5 2.3. 鉱区内の赤土量・分布の解析及び 3D モデル化 --- 13 2.4. 採掘・選鉱時の赤土インパクトの分析 --- 16 2.5. 量産ベースでの設備を用いた分離プロセスの確立 --- 17 3. 結論 --- 20図表一覧
図1 Ninh Thuan 鉱区の所在地 --- 2 図2 Ninh Thuan 鉱区の詳細 --- 2 図3 2010 年と 2012 年のボーリング実施箇所 --- 5 図4 2010 年及び 2012 年のサンプル作成方法の概略図 --- 7 図5 オリジナルとツインホールの分析結果比較(イルメナイト) --- 9 図6 オリジナルとツインホールの分析結果比較(赤土) --- 9 図7 異なるサンプル作成法にて処理したオリジナルサンプルの分析結果比較 (イルメナイト) --- 10 図8 異なるサンプル作成法にて処理したオリジナルサンプルの分析結果比較 (赤土) --- 10 図9 PJ Robbins 及び MCGD によるツインホールサンプルの分析結果比較 (イルメナイト) --- 11 図10 PJ Robbins 及び MCGD によるツインホールサンプルの分析結果比較 (赤土) --- 11 図11 2010 年の赤土分析方法の比較 A --- 12 図12 2010 年の赤土分析方法の比較 B --- 12 図13 2010 年の赤土分析方法の比較 C --- 13 図14 赤土の量及び含有率 --- 14 図15 イルメナイトの量及び含有率 --- 15 図16 赤土の含有率が高い領域( >19.5%) --- 15 図17 赤土の含有率が低い領域( <6.5% ) --- 15 図18 イルメナイトの含有率が高い領域( >0.75% ) --- 16 図19 イルメナイトの含有率が低い領域( <0.4% ) --- 16 図20 B 社の既存量産設備 --- 17 図21 水洗分離設備の概略図 --- 18 図22 振動分離設備の概略図 --- 18 表1 業務実施期間 --- 3 表2 2010 年と 2012 年のボーリング内容の比較 --- 4 表3 間隔毎のボーリング本数 --- 4 表4 サンプル作成方法比較 --- 8 表5 B 社の既存設備のイルメナイト成分 --- 19 表6 比重選鉱プロセス改善後のイルメナイト成分 --- 19 表7 比重選鉱+振動分離プロセス追加後のイルメナイト成分 --- 201.共同スタディの概要 1.1. 背景・目的 ベトナムは、イルメナイトの2011 年の生産量が世界第 5 位で、我が国の 2010 年の 輸入でチタン鉱石の第3 位であるため、チタン原料供給における重要な国と言える。 現在、進行中のチタン鉱床開発プロジェクトの大部分がアフリカで、日本から遠いだ けでなく、採掘と選鉱のみで付加価値の低いチタン原料の生産しか行わない。 一方、本件は、日本に近いと言う地理的優位性以外に、日本のチタンスポンジメー カーが必要としている加工度を高めたチタンスラグを生産する計画である。 ベトナム南部に位置するチタン鉱床は全体的に10-15%の赤土を含有しており、開 発 を 進 め る 上 で 一 般 的 に 大 き な 問 題 と な っ て い る 。 赤 土 が 多 く 分 布 す る と CAPEX/OPEX が高くなるばかりでなく、最悪赤土が分離できず、目的とする鉱物を 採掘又は選鉱できないという事態を招く。 本スタディでは、対象鉱区における赤土量・分布の解析及び探鉱・選鉱時の赤土の インパクトの分析を含む分離プロセスを検討し、適用することにより、チタン鉱山を 効率的に開発することを目的としている。 1.2. 実施内容 チタン鉱物と赤土を分離するプロセス及びその設備の検討を行う為に、以下の項 目について調査・開発を行う。 (1) 赤土の解析を実施するための追加ボーリング調査 (2) ボーリングサンプルの分析 (3) 鉱区内の赤土量・分布の解析及び3D モデル化 (4) 採掘・選鉱時の赤土インパクトの分析 (5) 分離プロセスの検討及びその設備提案 1.3. 実施鉱区 ◆ 鉱区所在地 : ベトナム南部ニントゥアン(Ninh Thuan)省 ◆ 鉱区エリア : 11km2 ◆ 推定資源量 : 4,800 千トン
図1 Ninh Thuan 鉱区の所在地
図2 Ninh Thuan 鉱区の詳細
1.4. 実施期間
(1) (2) (3) (4) (5) 1.5. 2. 2.1. (1) 及 業務項目 赤土解析を の追加ボー ボーリング サンプルの 鉱区内の赤 解析及び3 採掘・選鉱 インパクト 分離プロセ 及びその設 実施従事 独立行政 住友商事 業務委託 (1) 赤土解 Mid-C (2) ボーリ (3) 鉱区内 (4) 採掘 (5) 分離プ 共同スタデ 赤土解析 ) 背景 2010 年に 及び分析結 ・内容 を実施するた ーリング調査 グ の分析 赤土量・分布 3D モデル化 鉱時の赤土 トの分析 セスの検討 設備提案 事者 政法人 石油天 事株式会社 託先 解析を実施す Central Geolo リングサンプ 内の赤土量 ・選鉱時の赤 プロセスの検 ディの調査内 析を実施する に対象鉱区で 結果を活用で 表1 8 月 ため 査 布の 化 天然ガス・金 無機鉱産・ するための ogical Divisi プルの分析 ・分布の解析 赤土インパ 検討及び設備 内容及び結果 るための追加 でボーリング できれば、短期 業務実施 平成 9 月 10 金属鉱物資源 機能化学品 追加ボーリ ion(MCGD :MCGD、 析及び3D モ クトの分析 備提案:CP 果 加ボーリング グ調査が実施 期間かつ経 施期間 成 24 年 0 月 11 月 源機構 金 品部 ング調査: D、越) A 社(越)、 モデル化:M 析:Minarco M PG グ 施されてお 済的に赤土 12 月 属資源技術 CPG(豪) Minarco Min Mineconsulta り、その際 土を解析でき 平成25 1 月 2 月 術部 ) neconsultant ant(豪) の保管サン きる。そのた 5 年 3 月 (豪) プル めに、
追加ボーリング調査と次項のボーリングサンプル分析により、手法(ボーリング手 法、サンプル作成方法)を含めた過去調査サンプル及び分析結果の有効性を確認す る。本項ではまずボーリング調査の内容について述べる。 (2) 調査概要 保管サンプルの有効性を確認するために、今回ツインホールボーリングを実施 した。2010 年は 80m×400m 及び 40m×200m の間隔で 788 本のボーリング調査が行 われ、今回の追加ボーリング31 本と合わせ、合計 819 本、総延長 28,000m 分のボ ーリングサンプルとなる。表2 に 2010 年と 2012 年のボーリング内容の比較を、表 3 に間隔毎のボーリング本数を示す。 表2 2010 年と 2012 年のボーリング内容の比較 2010 年ボーリング調査 2012 年追加ボーリング調査 本数 788 本 31 本 総距離 26,000 m 2,000 m 方法 Single tube
with bead valve Double tube
内径 70 mm 72 mm リカバリー* 95~100 % 95~100 % 実施業者 A 社 MCGD *ボーリングコアの充填率 表3 間隔毎のボーリング本数 ボーリング間隔 40×200 m 80×400 m その他 ボーリング本数 334 本 458 本 27 本
(3) 掘削箇所 2010 年と 2012 年のボーリング実施個所をそれぞれ、緑色と青色で図 3 に示す。 今回のツインホールボーリングは、2010 年に実施したボーリング箇所の 1m 以 内で実施した。 図3 2010 年と 2012 年のボーリング実施箇所 (4) 掘削方法
GPS で位置確認を行った上で、内径 72mm の Double head tube の掘削機を用いて ボーリングを実施。なお、回収したボーリングコアから分析に必要な量を防水紙に 載せて空気乾燥させ、分取することでサンプリングを行った。 (5) 調査結果 今回の追加ボーリング調査では国際基準(JORC 基準)に則したボーリングとサ ンプリングを実施することができた。次節では2010 年のボーリング方法及びサン プル作成方法の正確性を検証し、2010 年ボーリング調査結果の活用の可否を評価 する。 2.2. ボーリングサンプルの分析 (1) 背景 2010 年の保管サンプルを適切な方法で再分析し、元の分析結果と比較すること で、当時の分析方法が適切であったかの確認を行う。また、前節で追加ボーリング により取得したツインホールのサンプルと、2010 年のオリジナルホールのサンプ
ルを分析比較することで、当時のボーリング方法の適切さを確認する。ボーリング 方法、分析方法共に適切と判断されれば、分析結果の補正により2010 年のボーリ ング分析結果を活用する事が可能となる。 (2) 検証概要 2010 年の調査サンプルと追加ボーリング調査サンプル、合計約 15,000 点のサン プルについて分析を行う。なお、赤土の分析のみでは、2010 年の分析結果の検証 を正しく行えないため、主鉱物であるイルメナイトについても考察した。 (3) 検証方法 2010 年の分析結果を活用するために、下記 4 点に関して検証した。 ① 2010 年のボーリング方法 ② 2010 年のサンプル作成方法 ③ ベトナムの分析方法 ④ 2010 年の赤土分析方法 以下において、これらの検証の詳細及び検証結果に関して記述する。 ① 2010 年のボーリング方法の検証
2010 年に Radioactive and Rare Earth Division (RREGD)が分析したオリジナル サンプルと、同じ方法でサンプル処理した2012 年のツインホールサンプルの 分析結果を比較することで、2010 年のボーリング方法が適切であったか検証 する。 ② 2010 年のサンプル作成方法の検証 2010 年のサンプル作成では、1mm の篩掛で異物を除去した後に、水洗によ り赤土を分離した。しかし、微粒子は選鉱工程で回収することが困難であり、 分析結果がサンプル作成の手順(水洗)による影響を受ける可能性が高くなる。 そのため、2012 年のサンプル作成では 1mm の篩掛の前に、45μm の篩掛を行 い、45μm 篩上のみ分析した。図 4 に上記 2 種類のサンプル作成の概略図を示 す。本検証では、同一サンプルを2 種類のサンプル作成方法で処理し、サンプ ル作成方法の影響について検証した。なお、原鉱石の粒径は基本的に100~250 μm であり、45μm 篩上に残る。
図4 2010 年及び 2012 年のサンプル作成方法の概略図 ③ ベトナムの分析方法の検証 今回、サンプル分析のコスト抑制を目的として、ベトナムの分析機関である MCGD を採用した。MCGD はベトナムでは、鉱物の分析に関して高い実績を 有しているものの、同機関の分析方法が国際基準に則しているか確認する必要 がある。そのため、MCGD と PJ Robbins(豪州にあるヘビーミネラルサンドの 国際的な分析機関)のツインホールサンプルの分析結果を比較することで、 MCGD の分析方法について検証した。 ④ 過去の赤土分析方法の検証 ①~③の調査結果の詳細は次項にて述べるが、上記①~③の比較分析におい て、主鉱物であるイルメナイトは全ての比較について高い相関性が見られた。 一方で、赤土は水洗によりサンプルを作成した際の分析では相関性が低い結 果となった。そのため、サンプル作成の影響を受けた可能性が高いと推測し、 本検証を実施した。本検証では表4 に示すように A~C の 3 種類の比較をする ことで、過去の赤土分析方法が適切であったか検証した。
表4 サンプル作成方法比較 サンプル 作成方法 年 分析 機関 サンプル 作成方法 年 分析 機関 A オリジナル サンプル 水洗 (Wash) 2010 RREGD 同一サンプル 45μm 篩掛 (Sieved) 2012 MCGD B 同一サンプル 水洗 (Wash) 2012 MCGD C ツインホール サンプル 水洗 (Wash) 2012 MCGD 同一サンプル 45μm 篩掛 (Sieved) 2012 MCGD 比較A : 2010 年の分析結果と 45μm 篩掛の処理を施した同一サンプルの分 析結果を比較し、2010 年の分析結果を活用することができるか検 証した。 比較 B : 異なる分析機関が同一サンプルを用いて、共に水洗により作成し た試料の分析結果を比較することで、分析機関が赤土分析に与え る影響を検証した。 比較C : 同一の分析機関がツインホールサンプルを水洗と篩掛の 2 種類の サンプル作成方法で作成した試料の分析結果を比較することで、 サンプル作成方法が赤土分析に与える影響を検証した。 (4) 検証結果 ① 過去のボーリング方法の検証 図 5 にイルメナイトに関して、図 6 に赤土に関して、2010 年に実施したオ リジナルサンプルの分析結果と2012 年に実施したツインホールサンプルの分 析結果を比較したグラフを示す。
図5 に示すように、イルメナイトに関しては、オリジナルサンプルとツイ ンホールサンプルの分析結果の間に高い相関性が見られた。従って、2010 年の分析結果は補正することで、使用可能であることが分かった。また、2010 年のリカバリー率が 95~100%と高いこと並びに相関性が高いことから、 2010 年のボーリング方法が適切であったことが示唆された。 一方、図6 に示すように、赤土に関しては、分析結果間の相関性が低い。 ツインホールサンプルもオリジナルと同様に 2010 年のサンプル作成方法を 適用しているが、この方法は、選鉱工程で回収が困難である 45μm 以下の 微粒子を除去することなく、水洗処理のみを行っており、その影響を受けた 可能性がある。そのため、②において、過去のサンプル作成方法についての 検証を行った。 図5 オリジナルとツインホールの分析結果比較 (イルメナイト) 図6 オリジナルとツインホールの分析結果比較
② 過去のサンプル作成方法の検証 図7 にイルメナイトに関して、図 8 に赤土に関して、2010 年並びに 2012 年のサンプル作成方法を用いて処理したオリジナルサンプルの分析結果を比 較したグラフを示す。 図7 に示すように、イルメナイトに関しては、サンプル作成方法に関わら ず、高い相関性が見られた。従って、45μm 以下のイルメナイト鉱石はほぼ 存在しないこと、サンプル作成方法の影響をほぼ受けないことが分かった。 また、2010 年の分析結果は補正することで、使用可能であることが確認され た。 一方、図8 に示すように、赤土に関しては、分析結果間に相関性が見られ るものの、バラつきが多いことから、サンプル作成工程の影響を受けること が確認された。 図7 異なるサンプル作成法にて処理したオリジ ナルサンプルの分析結果比較(イルメナイト) 図8 異なるサンプル作成法にて処理したオリジナ
③ ベトナムの分析方法の検証 図9 にイルメナイトに関して、図 10 に赤土に関して、MCGD と PJ Robbins のツインホールサンプルの分析結果を比較したグラフを示す。 図9 及び図 10 に示すように、イルメナイト及び赤土に関して、高い相関 性が見られた。従って、MCGD の分析方法は国際基準に則していることが確 認された。 上記①~③の検証結果より、下記4 点が確認された。 ・ ベトナムのボーリング方法は適切であること。 ・ ベトナムの分析方法は適切であること。 図9 PJ Robbins 及び MCGD によるツインホール サンプルの分析結果比較(イルメナイト) 図10 PJ Robbins 及び MCGD によるツインホール サンプルの分析結果比較(赤土)
・ イルメナイトに関しては、全ての比較分析において高い相関性を示してい るため、2010 年のボーリング分析結果を補正することで活用できること。 ・ 赤土に関しては、分析結果がサンプル作成工程の影響を受けるため、赤土 の分析方法に関して更なる検証が必要であること。 さらに、④「2010 年の赤土分析方法の検証」を実施することで、2010 年の 赤土の分析結果を活用することができるか検証した。 ④ 2010 年の赤土分析方法の検証 図11 に比較 A を、図 12 に比較 B を、図 13 に比較 C を示す。 図11 2010 年の赤土分析方法の比較 A 2010 年の分析結果と 45μm 篩掛の処理を施した同一サンプルの分析結果を 比較したところ、図11 に示すように、相関性があることが確認された。従っ て、赤土に関して、2010 年の分析結果は補正することで活用できることが分 かった。 図12 2010 年の赤土分析方法の比較 B
異なる分析機関が同一サンプルを用いて水洗により作成した試料の分析結 果を比較したところ、図 12 に示すように、相関性があることが確認された。 しかし、近似直線の傾きが0.7 程度と低いことから、2010 年の水洗が不十分で あったことが推測される。 図13 2010 年の赤土分析方法の比較 C 同一の分析機関がツインホールサンプルを水洗と篩掛の2 種類のサンプル 作成方法で作成した試料の分析結果を比較したところ、図 13 に示すように、 非常に高い相関性があり、分析結果がほぼ一致することが確認された。この ことから、45μm 以下の赤土はほとんど存在しないこと並びに水洗を適切に 実施することで、赤土を全て分離できる可能性があることが示唆された。 上記①~④の検証結果より、下記2 点が確認された。 ・ 2010 年のイルメナイト及び赤土の分析結果は、補正することで活用できる こと。 ・ 水洗により、赤土を全て分離できる可能性があること。 補正することで、2010 年のボーリング調査結果を活用できることが確認でき たため、2010 年の分析結果を基に、赤土及びイルメナイトの量・分布を解析し、 3D モデル作成をした。その詳細を次節に記載する。また、量産ベースの設備 において、サンプル作成における水洗は水流を用いた比重選鉱となり、篩は振 動分離となる。 2.3. 鉱区内の赤土量・分布の解析及び3D モデル化 (1) 背景 本鉱区で探鉱・選鉱する際の赤土インパクトを分析・考察する上で、鉱区内の
赤土の総量、含有率及び分布を把握することが必要となる。これらのデータ解析 及び3D モデル化の結果をもって、赤土インパクトの考察を行なう。 (2) 調査概要 全ボーリング調査の分析結果を基に、外注予定先の持つ解析ソフト(ブロック モデル)を利用し、赤土の存在量及びその分布を把握するとともに、3D モデル化 を行う。 (3) 調査結果(量・分布) 本鉱区における赤土の量及び含有率を東西方向にプロットした結果を図14 に、 イルメナイトの結果を図15 に示す。 図14 赤土の量及び含有率
図15 イルメナイトの量及び含有率 赤土の平均含有率は13%であり、総量は 81 百万トンであった。また、イルメ ナイトの平均含有率は0.6%であり、総資源量は 4 百万トンであった。 (4) 調査結果(3D モデル化) 図16、図 17 にそれぞれ本鉱区において赤土の含有率が高い領域と低い領域 を示す。また、図 18、図 19 にそれぞれイルメナイトの含有率が高い領域と低 い領域を示す。 図16 赤土の含有率が高い領域 ( >19.5%) 図17 赤土の含有率が低い領域 ( <6.5% )
図16~19 に示すように、主鉱物であるイルメナイトと赤土の含有率に関して、 相関性は見られなかった。そのため、赤土を回避して採掘するといった採掘プラ ンを作成する事が困難であることが分かった。従い、本鉱区のイルメナイトを採 掘する上で、赤土を分離することが重要となる。 2.4. 採掘・選鉱時の赤土インパクトの分析 (1) 調査概要 鉱区内の赤土量・分布の解析/3D モデル、ボーリングサンプル分析の結果及び 外注先の知見に基づき、当該採掘鉱区において、赤土が採掘及び選鉱の際に及ぼす 影響を評価する。 (2) 調査結果 本鉱区の赤土の含有率は平均13%であり、体積ベースでは 20%を超える。また 3D モデルからも赤土を避けての採掘は出来ない。 一方で、赤土の分離はある程度可能であり、ボーリングサンプル分析で考察し た通り、本鉱区の赤土は適切な水洗により、篩掛と同程度に赤土を分離できること が確認されている。 従って、選鉱の際に赤土インパクトは避けられないものの、適切な設備を導入 する事でインパクトを最小限に抑えられる可能性がある。なお、量産ベースでは、 水洗による分離は水流を用いた比重選鉱設備、篩による分離は振動分離設備を用い る事となる。 次節で量産ベースの設備を用いた赤土分離プロセスの確立を目指す。 図18 イルメナイトの含有率が高い領域 ( >0.75% ) 図19 イルメナイトの含有率が低い領域 ( <0.4% )
2.5. 量産ベースでの設備を用いた分離プロセスの確立 (1) 調査概要 A 社のグループ会社である B 社の量産設備を用いて「比重選鉱プロセスの改善」 並びに「振動分離プロセスの追加」により、赤土を除去できるかを検討した。 図20 に B 社の量産設備を示す。本設備ではドレッジャーで採掘をした後に、ス パイラル選鉱機を用い、比重選鉱により赤土及び珪砂を除去している。その後、磁 力選鉱、静電選鉱の工程を経て、イルメナイト、ルチル、ジルコンを分離している。 本調査では、この工程の比重選鉱プロセスを改善した上で、振動分離プロセスを追 加した。 図20 B 社の既存量産設備 比重選鉱プロセスの改善では、スパイラル比重選鉱機にクリーナースパイラルを 追加した上で、スパイラルによる比重選鉱では分離することができなかった珪砂及 び赤土を、更に水洗分離(比重選鉱)するため、新たに水洗分離設備を導入した。 水洗分離設備を図21 に示す。 (水と共に原鉱石を螺旋状の流路に流下させること で、比重の軽いSiO2や赤土と比重の重いヘビーミネ ラルサンドを分離する設備)
図21 水洗分離設備の概略図 振動分離プロセスの追加では、ベトナムでは一般的ではない振動分離設備を導入 した。振動分離設備は図22 に示す。 図22 振動分離設備の概略図 (2) 調査方法 本調査では前項の通り B 社の量産設備の改善及び追加設備導入により、赤土分 離効果の確認テストを実施した。ベトナムではチタンスラグまで生産するため、原 料のイルメナイトに付着した赤土残存量を評価する必要がある。そこで下記の条件 で赤土を分離したイルメナイトを分析した。
① 既存設備による赤土分離 ② 比重選鉱プロセス改善後の設備を用いた赤土分離 ③ 比重選鉱プロセス改善に加え、振動分離プロセス追加後の設備を用いた赤 土分離 次項にてイルメナイトの分析結果の比較及び試験設備の効果について検証する。 (3) 調査結果 表5 に①の分析結果を、表 6 に②の分析結果を、表 8 に③の分析結果を示す。ま た、イルメナイト中において、赤土の主成分はカルシウム分やリン分等であるため、 それらを合計し、Clay と表記している。 表5 ①B 社の既存設備のイルメナイト成分 TiO2 49.7 % Al2O3 0.89 % SiO2 3.25 % Clay 2.16 % B 社の量産設備による選鉱では、TiO2分が50%以下、Clay の含有率が 2%以上で ある事を確認した。 表6 ②比重選鉱プロセス改善後のイルメナイト成分 TiO2 50.9 % Al2O3 0.7 % SiO2 2.33 % Clay 1.35 % 比重選鉱プロセスを改善した結果、TiO2分が1%増加、Clay の含有率が 0.8%減少 した。比重選鉱プロセス改善によりのイルメナイトの品質は改善したものの、Clay の含有率が1%以上あり、赤土の分離が十分であるとは言えない。しかし、大型分 離設備でなくとも、赤土を更に分離できることが確認できた。
表7 ③比重選鉱+振動分離プロセス追加後のイルメナイト成分 TiO2 52.3 % Al2O3 0.55 % SiO2 1.05 % Clay 0.07 % 比重選鉱プロセスの改善と振動分離プロセスの追加を行った結果、既存設備に よる選鉱結果と比較して、TiO2分が3%増加、Clay の含有率が 2%減少した。絶 対水準としてもClay の含有率が 0.1%以下、TiO2分が52%以上となっており、他 国のイルメナイトと比較しても全く遜色ない水準となった。従って、本鉱区の赤 土量は多いものの、比重選鉱プロセス改善及び振動分離プロセスを追加すること で容易に分離できることが確認できた。 3.結論 本スタディでは、対象鉱区の赤土量及びその分布を解析し、量産ベースにおける 分離プロセスを検討することで、対象鉱区のチタン鉱床を効率的に開発できるか検 討した。 その結果、ベトナム南部のチタン鉱床に含まれる赤土の特性を把握し、分離方法 及び設備フローを確立することができた。また、その分離設備への大型投資も必要 なく、経済的なインパクトが殆どないことも確認できた。