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Microsoft Word - 2.予備実験 藤岡.doc

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4.二酸化炭素圧入予備実験について (財)石炭エネルギーセンター 資源開発部 CO2 炭層固定 CBM/ECBM グループ長 藤岡 昌司 1.はじめに 経済産業省の「二酸化炭素固定化・有効利用技術等対策事業」の一環として平成 14 年 8 月から開始した「二酸化炭素炭層固定化技術開発」は全体システムの実用化・事業 化を検討することを目的とした我が国で最初の CO2-ECBM 試験であり、平成19年度を最 後に終了する。本事業によって我が国の炭層メタンガス開発や CO2炭層固定化開発に必 要な基礎データが得られ、また、CO2-ECBM において克服しなければならない課題が明ら かになった 2.ECBM メカニズムと特徴 石炭の構造はクリートと呼ばれる天然亀裂と、クリートを挟むマトリックスと呼ばれ る非常に微細な空隙の集合体からなっている。このマトリックスの空隙により石炭は膨 大な表面積を持ち、ガスの吸着剤となっている。石炭層内のメタンガス(以下 CH4とい う)は大部分がマトリックス内に吸着した形で貯留されている。CH4はダルシー則に従っ て圧力勾配によってクリート内を移動し孔井から産出される。クリート内の CH4濃度(圧 力)が低下するとマトリックスに吸着して いる CH4は濃度勾配によってクリートへ移 動(拡散)する。1980 年代の初頭において、 CH4 産出が不活性ガスの炭層への圧入によ って増進されるとの提案があった。これは、 石炭に貯留されている CH4量は全圧よりも CH4 の分圧に依存すると言う原理に基づい ている。炭層へ圧入する不活性ガスとして 窒素(以下 N2という)と二酸化炭素(以下 CO2という)を使用した商業的 ECBM が 1990 年代に米国サンファン炭田で実施された。N2と CO2は CH4の分圧を低下させ、CH4の生産 レートと回収率の両方を増加させる。吸着力の弱い N2はクリートを通じて素早く広い範 囲へ拡散し、早期の CH4増産効果をもたらすが、吸着力が弱いため CH4と一緒に産出ガス に混入する。CO2は吸着力が CH4より強いため、CH4に替わってマトリックス内へ吸着貯 留されるので、産出ガスへの混入は極めて遅い時期となる。このため、温暖化効果ガス である CO2を炭層へ吸着貯留させることができる。図1の CO2-ECBM のメカニズムにクリ ート内でのガス移動状況とマトリックス空隙に表面に吸着するガス状況を示している。 図1 CO2-ECBM のメカニズム

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泥岩、シルト岩 極細粒砂岩~極粗粒砂岩 石炭、炭質頁岩、黒色頁岩 742.00 ~ 743.75m 851.20 ~ 853.70m 890.08 ~ 896.30m 地層名 分布深度 (区間長) 岩 相 幌内層 0.00 ~ 678.00m (678.00m) 夕張層 678.00 ~ 916.20m (238.20m) 上 層 本 層 下 層 (主要炭層) 泥岩 中粒砂岩~粗粒砂岩 見掛厚(1.75)、真厚(1.52) 見掛厚(2.50)、真厚(2.35) 見掛厚(6.22)、真厚(5.64) 幌加別層 916.20 ~ 932.60m (16.40m) 灰色泥岩 (Cap rock) 泥岩、シルト岩 極細粒砂岩~極粗粒砂岩 石炭、炭質頁岩、黒色頁岩 742.00 ~ 743.75m 851.20 ~ 853.70m 890.08 ~ 896.30m 地層名 分布深度 (区間長) 岩 相 幌内層 0.00 ~ 678.00m (678.00m) 夕張層 678.00 ~ 916.20m (238.20m) 上 層 本 層 下 層 (主要炭層) 泥岩 中粒砂岩~粗粒砂岩 見掛厚(1.75)、真厚(1.52) 見掛厚(2.50)、真厚(2.35) 見掛厚(6.22)、真厚(5.64) 幌加別層 916.20 ~ 932.60m (16.40m) 灰色泥岩 (Cap rock) 742.00 ~ 743.75m 851.20 ~ 853.70m 890.08 ~ 896.30m 地層名 分布深度 (区間長) 岩 相 幌内層 0.00 ~ 678.00m (678.00m) 夕張層 678.00 ~ 916.20m (238.20m) 上 層 本 層 下 層 (主要炭層) 泥岩 中粒砂岩~粗粒砂岩 見掛厚(1.75)、真厚(1.52) 見掛厚(2.50)、真厚(2.35) 見掛厚(6.22)、真厚(5.64) 幌加別層 916.20 ~ 932.60m (16.40m) 灰色泥岩 (Cap rock) 表2 地質層序 3.二酸化炭素圧入予備実験の概要 本技術開発は、㈱環境総合テクノ スが補助事業者となり、石狩炭田に ある夕張市で実施した。JCOAL は実 施体制の中で現場予備実験を担当し、 深度約 900m の炭層を対象とした CO2 固定化と CH4産出試験を行った。 現場予備実験の概念は図 2 に示す ように、垂直孔井である圧入井(以 下 IW-1 という)と CH4と炭層間隙水 を回収する傾斜孔井の観測井(以下 PW-1 という)の2孔井からなっている。 3.1 現場予備実験工程 表1に平成 14 年度のサイト選定から始まって平成 19 年度 10 月の埋孔作業で終了 した現場予備実験の工程を示している。2つの孔井掘削後に主要な試験である圧入試 験と産出試験を実施した。 3.2 地質概要 試験対象となっている夕張夾炭層は古第 三紀に属し、夕張夾炭層の上位層である幌内 層は全層均質な泥岩からなり、キャップロッ クとして重要な役割を担っている。IW-1 にお いて3炭層が確認された。表2に IW-1 におけ る地質層序を示している。炭層傾斜は約25 度であり、3層の見掛け総厚さは 10.5mにな る。試験評価を簡単にするために、最下部の 最も厚い下層(見掛け厚さ 6.22m、正味厚さ 5.64m)を試験対象とした。 表1 予備実験工程 図2 現場予備実験概念 ガ 昇 CO 2 CH4 H2O C O2 C O2 C H4 C H4 C H4 C H4 H2O H2O 水タンク 液化炭酸貯槽 気化装置 圧入井 観測井 上 層 (炭層) 本 層 (炭層) 下 層 (炭層) 気液分離器 揚水ポンプ 2002 2003 2004 2005 2006 2007 サイト選定 試験内容 年度 圧入井掘削 観測井掘削 コア試験 キャニスター試験 吸着特性試験 孔井試験 ハフパフ試験 ガス産出試験 CO2圧入試験 N2圧入試験 N2ブレークスルー サージフラック(水圧破砕) ステップレート試験 埋孔作業 ● ● ● ● ● ● ● ● ●

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3.3 孔井状況 IW-1 はセメンチング仕上げで、炭層と孔井の導通を得るために炭層深度 890-895.5 m間にパーフォレーションを打っている。PW-1 の炭層部では約24 度の傾斜掘削によ って孔井が貫通されている。PW-1 井での炭層部は裸坑仕上げで、ストレーナーを吊り 下げた形で仕上げている。図3に2孔井のケーシングプロファイルを示す。観測井の 位置は地形的な制約で IW-1 に最も近くて比較的平坦な場所となったが、炭層を貫通 する場所はブレー クスルーに必要な CO2 必要量を最小 にし、石炭のボー リング掘削面積を 最大にするため傾 斜 孔 井 に よ っ て IW-1 の 貫 通 炭 層 部から約 67m 離れ た位置とした。図 4の下層のストラ クチャーコンター図 (小断層を除く)に 2孔井の孔跡を示している。 図4 下層ストラクチャーと孔跡 図3 ケーシングプロファイル PW-1 IW-1 7” (0.05~ 854.21m) ケーシング径 (ケーシング挿入深度) 掘削孔径 9-5/8” 掘 削 深 度 : 420m 掘 削 長 30m毎 に 2度 傾 斜 掘 削 深 度 : 777m傾 斜 終 了 ・4-1/2” (864.90~ 927.50m) ・ストレーナ 833.98~ 944.29m 864.90~ 916.51m ・12-1/4” 孔 (311.2㎜ ) ・掘 削 深 度 : 0~ 106.5m 遮水セメント ・8-1/2” 孔 (215.9㎜ ) ・掘 削 深 度 : 106.5~ 856m ・掘 削 深 度 : 930m ・垂 直 深 度 : 907.02m ・最 終 傾 斜 : 24.17° ケーシング径 (ケーシング挿入深度) 掘削孔径 GL 0.32m 9-5/8” (0.86~ 58.2m) 7” (0.32~ 663.98m) 4-1/2” (610.00~ 932.60m) ・12-1/4” 孔 (311.2㎜ ) ・掘 削 深 度 : 60m ・8-1/2” 孔 (215.9㎜ ) ・掘 削 深 度 : 667m ・6-1/4” 孔 (158.8㎜ ) ・掘 削 深 度 : 932.60m コアリング 遮水セメント

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3.4 工業分析と吸着特性 炭層 の ガ ス吸 着 特 性を 把握 す る ために IW-1 で回収したコアを使っ たキャニスター試験と吸着等温試験 を実施した。キャニスター試験と吸 着等温試験から、炭層はガス飽和状 態にあり石炭ランクから推定される よりも遙かに高いガス包蔵量を持っ ていることが判明した。図5に CH4、 CO2そして N2に関する吸着等温線図 を示しているが、貯留層圧力におけ る CH4、CO2そしてN2の吸着能力はそれぞれ 23.8m3/t、40.2m3/t そして 13.3m3/t であ る。CO2/ CH4の吸着能力割合は 1.69 である。IW-1 で採取された炭層ガスの平均組成 は、CH46.6%、CO22.03%、(エタン+プロパン)0.75%、N20.57%、そして n/i-ブタン 0.04%であった。この他に、物理検層として電気検層、密度検層、中性子検層、自然 ガンマ線検層、孔径検 層、音波検層、温度検 層の 7 種目を IW-1 掘 削後に実施した。表3 に キ ャ ニ ス タ ー 分 析 に よ る 包 蔵 ガ ス 量 推 定 結 果 と 工 業 分 析 結 果を示している。 3.5 貯留層特性 CO2圧入量や CH4産出 量 の ポ テ ン シ ャ ル を 評 価 す る 上 で 重 要 と な る 貯 留 層 特 性 値 を 掘 削 終 了 直 後 の 孔 井 試験で推測した。その 結果、IW-1 井での絶対 浸透率は 1.0md、貯留 層圧力 10.2Mpa、クリ ート開口圧力 15.8Mpa、 ク リ ー ト 閉 口 圧 力 図5 吸着等温線図(京大 田門教授) Isotherm (DAF) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 0 20 40 60 80 100 120 140 160 Pressure (Bar) S to ra ge C ap ac it y (m l/ g) CO2 CH4 N2 Parameter Unit Lower Yubari 1 Lower Yubari 2 Lower Yubari 3 Lower Yubari 4 Lower Yubari 5 Lower Yubari 6 Lower Yubari 7 Lower Yubari 8 Ave. or Total Top Depth m 890.08 890.23 891.57 892.33 892.75 893.25 895.50 896.00 Bottom Depth m 890.23 890.50 891.72 892.50 892.95 893.47 895.62 896.15 Thickness m 0.15 0.17 0.15 0.17 0.20 0.22 0.12 0.15 1.33 Sample Weight g 895.0 1,132.0 946.0 911.0 1,211.0 978.0 897.0 958.0 991.0 Measured Gas Volume cm3/g 13.0 15.6 13.4 15.6 12.1 11.0 16.2 16.3 14.2

Lost Gas Volume cm3/g 4.5 8.3 4.5 5.4 4.7 7.5 3.9 3.6 5.3

Residual Gas Volume cm3/g 2.4 3.1 2.6 2.8 2.6 2.7 2.7 3.4 2.8 In-Situ Gas Content cm3/g 19.9 27.0 20.5 23.8 19.4 21.2 22.7 23.3 22.2 Moisture wt frac 0.009 0.008 0.009 0.009 0.009 0.009 0.008 0.010 0.0089 Ash wt frac 0.148 0.045 0.044 0.016 0.056 0.038 0.027 0.018 0.0490 Volatile Matter wt frac 0.354 0.399 0.387 0.380 0.364 0.393 0.384 0.382 0.3804 Fixed Carbon wt frac 0.489 0.548 0.560 0.595 0.572 0.560 0.581 0.590 0.5619 Non-Combustible wt frac 0.0005 0.0004 0.0005 0.0004 0.0002 0.0003 0.0005 0.0002 0.0004 Combustible wt frac 0.0025 0.0024 0.0016 0.0019 0.0019 0.0017 0.0017 0.0028 0.0021 Total wt frac 0.0030 0.0028 0.0021 0.0023 0.0021 0.0020 0.0022 0.0030 0.0024 Air-Dry Calorific Value J/g 30,600 34,740 34,530 35,710 33,450 34,990 35,160 35,330 34,314 Mosit, Ash-Free Cal. J/g 35,592 36,086 35,794 35,964 35,115 36,045 35,847 35,618 35,758 Ash wt frac 0.1480 0.0450 0.0440 0.0160 0.0560 0.0380 0.0270 0.0180 0.0490 Carbon wt frac 0.7290 0.8320 0.8320 0.8520 0.8190 0.8360 0.8410 0.8550 0.8245 Hydrogen wt frac 0.0556 0.0656 0.0651 0.0665 0.0625 0.0647 0.0672 0.0647 0.0640 Oxygen wt frac 0.0491 0.0372 0.0385 0.0447 0.0429 0.0411 0.0452 0.0407 0.0424 Nitrogen wt frac 0.0158 0.0178 0.0188 0.0189 0.0177 0.0185 0.0179 0.0188 0.0180 Comb. Sulphur wt frac 0.0025 0.0024 0.0016 0.0019 0.0019 0.0017 0.0017 0.0028 0.0021 Vitrinite vol frac 0.851 0.894 0.898 0.900 0.928 0.898 0.906 0.926 0.9001 Exinite vol frac 0.044 0.053 0.044 0.061 0.027 0.050 0.065 0.041 0.0481 Inertinite vol frac 0.019 0.028 0.034 0.030 0.014 0.031 0.014 0.023 0.0241 Mineral-Matter vol frac 0.086 0.025 0.024 0.009 0.031 0.021 0.015 0.010 0.0276 Mean Vit. Reflectance % 0.75 0.74 0.75 0.79 0.81 0.75 0.78 0.80 0.77

Crusible Swelling Index - 7.0 7.5 8.0 9.0 8.5 8.0 9.0 9.0 8.3

Total Moisture wt frac 0.095 0.013 0.145 0.101 0.157 0.172 0.066 0.018 0.096 Moisture Holding Cap. wt frac 0.016 0.023 0.022 0.018 0.022 0.021 0.016 0.025 0.020 Equilibrium Moisture wt frac 0.012 0.012 0.013 0.013 0.013 0.011 0.012 0.011 0.012 True Density g/cm3 1.407 1.330 1.318 1.314 1.346 1.328 1.310 1.340 1.337

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10.9Mpa であると推測された。 3.6 圧入試験と産出試験 市販の CO2を気化器で超臨界状態にし て孔井内に圧入しているが、図6に示す ように地温によって CO2温度は低下し、 炭層へは液体 CO2状態で圧入している。 CO2 圧入試験は炭層深度での圧入圧力が クリート開口圧力である 15.8Mpa 以下に なるように圧入圧力を設定して実施し ている。ガス産出試験は、揚水ポンプに よってチュービングパイプを通して炭 層間隙水を地表タンクへ汲み上げ、ガス はケーシングとチュービング間のアニュラスを経由してセパレータに送り計測後に 大気放出している。図 7 に平成 16 年度からの年度毎の圧入量とガス産出量推移を、 図 8 に CO2累積圧入、ガスと水の累積産出量推移を示す。 図7 圧入試験とガス産出試験結果(平成 16 年度~19 年度) 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 11/1 7 11/2 7 8/26 9/59/159/25 10/5 4/14 5/145/24 6/3 6/136/23 7/37/137/23 8/2 8/12 8/22 9/19/1111/211/1 2 4/9 5/31 6/106/20 6/307/107/20 7/30 8/98/19 8/29 9/89/189/2810/8 月/日 圧 入 量 (k g ) 0 100 200 300 400 500 600 700 800 産 出 量 (N m 3) H16 CO2圧入量(kg) N2注入量(kg) CH4産出量(Nm3) H17 H18 H19 日換算10t/日 で圧入 図6 地温状況と圧入 CO2温度 200 0 80 温度 (℃) 深度(m) 0 温度(℃) 地温検層 60 40 20 400 600 800 1000 超臨界温度:31.1℃ 温度検層(圧入中チューブ内) 0~180m 670~875m サーマルチューブ サーマルチューブ

CUMULATIVE Injection & Production (2004-2007)

0 25000 50000 75000 100000 125000 150000 1-Oc t-04 30-N ov-0 4 1-Se p-05 31-O ct-05 27-A pr-06 26-J un-06 25-A ug-06 24-O ct-06 6-Ma y-07 5-Ju l-07 3-Se p-07 Date P ro du c ti o n G as (m 3 ) 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 In je c ti o n C O 2 (t ), & W at e r P ro du c ti o n (m 3 ) Gas Volume (m3) CO2 Injected (T) Water Volume (m3/day)

図8 累積圧入・産出実績(CO2、ガス、水) (N m 3) (m 3)

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3.7 シミュレーション・モデル 上記の全てのデータを基本的な貯留層シミュレーション・モデルに組み入れ、孔井 周辺の炭層の産出性に関する可能性を評価する。このモデルにおいて測定出来ないパ ラメータは実際の圧入試験や産出試験結果に基づくヒストリーマッチングによって 推測し補完される。使用したシミュレータは COMET3 である。表4にシミュレーショ ン・モデルに使用されるパラメータを示す。 表4 シミュレーション・パラメータ 3.8 予備実験での試験フロー 予備実験の目的は我が国で 最初の CO2-ECBM 試験を通じ て、技術の事業化の見通しを 立てることであった。このた め、予備実験のデータに基づ いて地下ガス挙動の解析シミ ュレーション・モデルを構築 して、事業化検討に必要な経 済的要素を予測できる状態に することが必要である。経済 性検討の結果、事業化の可能 図9 予備実験フロー 探査・ パイロ ット試験フェー ズ ■地質情報の収集 ■探査試錐(コア): ☆貯留層特性 ☆地質状況 ■孔井試験:浸透率 ◆産出試験 ◆圧入試験 ◆ガス成分、孔井試験 ■基礎的なシミュレーショ ン モデルの構築 ◆ヒストリーマッチン グによ る モデル精度の向上: → パラ メータ推定、データ補完 ◆産出予測、圧入予測 経 済 性 検 討 ☆実証フェ ーズ :孔井間隔とパターン :孔井仕上げ パ ラ メ ー タ 情 報 ソ ー ス 石炭平均比重 (t/m3) コア工業分析 炭層深度 (m) 掘削データ 灰分 (%) 、水分 (%) コア工業分析 炭層厚 (m) 掘削データ 炭層傾斜 掘削データ クリート間隔 (㎜) コア観察 初期水飽和率 孔井観察と推定 絶対浸透率 (md) 圧力降下試験 初期ガス吸着量 (m3/t) キャニスター試験 初期貯留圧力 (kPa) 圧力降下試験 初期炭層温度 (℃) 温度検層 初期ガス成分 キャニスター試験 ヒストリーマッチングによるパラメータ推定 Langmuire体積 (m3/t): CH4、CO2、N2 室内実験 脱着時間 (dar): CH4、CO2、N2 ヒストリーマッチング(推定)

Langmuire圧力 (kPa) : CH4、CO2、N2 室内実験

スキンファクター 圧力解析マッチング(推定) 相対浸透率曲線 (Gash or Liner) ヒストリーマッチング(推定) 孔隙率 (%) ヒストリーマッチング(推定) 孔隙圧縮率 (1/kPa) ヒストリーマッチング(推定) マトリックス圧縮率 (1/kPa) ヒストリーマッチング(推定) 基礎データによるパラメータ取得

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性が高い場合には、設定された仮定条件を確認するための実証段階へ進むことが望ま れる。図9に予備実験のフローを示す。 4.夕張における圧入産出特徴 夕張において実施した圧入試験と産 出試験結果から特徴的な事象概要を年 度別に報告する。平成 16 年度からの年 度毎の圧入結果と産出結果を図 10 か ら図 13 にかけて示している。 4.1 平成 16、17 年度 平成 16 年度と平成 17 年度の圧入と ガス産出状況より、CO2圧入に対するガ ス産出の応答性は極めて敏感であり、 CO2 圧入によるガス増産効果が明瞭に 認識できる。例えば、平成 17 年度にお いて CO2圧入を停止したと同時にガス 産出量が減少している。しかし、この 高い応答性は平成 19 年度のデータを 見ると圧入停止時期とガス産出量減少 時期に相違が生じ始め、幾分鈍感にな ってきている。これは、予備実験開始 当初は炭層クリートが水飽和状態であり、且つ、吸着 CH4が吸着等温能力に等しい飽 和状態であったため、圧入圧力がピストン的にガス増産へ影響し、圧入圧力に敏感に 対応していたものと考えられる。平成 19 年度では PW-1 近傍において水飽和率やガス 飽和率が産出により低下したため、圧力応答性が鈍くなったものと考える。 4.2 平成 18 年度 平成 18 年度において、低い CO2注入性(3t/日)は、CO2吸着によってマトリックス 部分が膨潤してクリート幅を縮小させ浸透率を大きく低下させる膨潤が原因ではな いかと考え、吸着量の低い N2を圧入させ膨潤を軽減させる試験を実施した。5月 10 日から 10 日間の N2圧入期間で、N2圧入量は日々増加し、最終的には 7t/日(約 5,600Nm3) の N2が圧入できる程度の浸透率に高まった。N2圧入直後の CO2圧入レートも 6t/日を 越える状態となったが、CO2圧入再開5日目に 3.3t/日に低下した。これらの注入性の 増加原因は、CO2吸着量の増加により浸透率が低下していたが、N2圧入により石炭への 吸着量が低下し浸透率が大幅に高くなったためと判断される。しかし、CO2圧入再開に 伴い吸着による膨潤によって浸透率の低下が急激に悪化したため、N2圧入によって CO2 注入性を改善する効果は極めて短期的である。N2圧入による ECBM では、早期のブレー

2004 Injection & Production Results

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 10/1 10/31 11/30 Date C O 2 In je c te d (k g) / W at e r P ro du c e d (L ) 0 50 100 150 200 250 300 350 G as P ro du c e d (m 3 ) CO2 Injection (kg) Gas (m3) Water (L) 図 10 平成 16 年度 圧入産出 (N m 3)

2005 Injection & Production Results

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 7/31 8/30 9/29 10/29 11/28 Date C O 2 In je c te d (k g) / W at e r P ro du c e d (L ) 0 50 100 150 200 250 300 350 400 G as P ro du c e d (m 3 ) CO2 Injection (kg) Gas (m3) Water (L) 図 11 平成 17 年度 圧入産出 (N m 3)

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クスルーと早期のガス産出量増産効果が報告されているが、夕張においても N2圧入開 始後 12 日目の 5 月 21 日に PW-1 での産出ガス成分中の N2濃度が上昇し始め、その後 も 10%近くまでの N2濃度が上がり、N2のブレークスルーが確認できた。また、ガス産 出量は N2圧入前には約 100Nm3/日であったものが 5 月 23 日には約 700Nm3/日に増産し、 早期の増産効果を確 認できた。圧入する 不活性ガスの性状に より増産効果の時期 や大きさが異なるこ とが証明できた。こ のように N2 圧入に よって吸着量に依存 する浸透率の変化を 現場確認することが できたが、N2圧入後 の CO2注入性を見る と注入性が安定時点 で圧入レートは 3t/日程度であり、N2圧入前に達成した 4t/日前後を越える程度に回復 していない。この事象には更なる研究や調査が必要であるが、吸着量の変化によるマ トリックスの膨潤と収縮がクリート形状やパスの状態に何らかの悪影響(微粉炭の混 入等)を与えことが可能性として考えられる。平成 18 年度には N2と CO2を12 時間~ 24 時間毎に交互に圧入する N2間隙圧入試験を 8 月 18 日から 8 月 26 日まで実施した。 N2圧入装置が不適切であり注入性改善において十分な成果を得ることが出来なかった。 4.3 平成 19 年度 注入性の改善を目的として 5 月 16 日に水圧破砕工事を IW-1 において実施した。IW-1 の設計時には水圧破砕工事を施工する考えはなかったため、孔口装置やケーシング強 度等は通常の水圧破砕工事に対応できるものではなかったため、サージフラック工法 と言うジェット噴射によって亀裂形成を促す方法を採用した。この工法ではチュービ ングパイプ内への圧力は非常に高くなるが、ケーシングや孔口装置への負荷は極めて 少なく IW-1 においても水圧破砕が可能であると判断した。また、同工法ではパッカ ーや櫓を使用しないので、工費も通常の水圧破砕に比べ低く押さえることができる。 結果的には、サージフラックによって注入性改善に寄与できる亀裂を造成することが 出来なかった。理由として、パーフォレーション部の石炭が既に破砕状態にありジェ ット噴流によってジェット穴が穿孔される代わりに破砕石炭がパーフォレーション 孔から孔井内に侵入して石炭部へ空洞を生じさせ、高圧が石炭部へ適用出来ない状態 になったものと考える。

2006 Injection & Production Results

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 4/11 5/11 6/10 7/10 8/9 9/8 10/8 11/7 Date In je c ti o n G as (k g) / W at e r P ro du c ti o n (L ) 0 100 200 300 400 500 600 700 G as P ro du c ti o n (m 3 ) CO2 Injection (kg) N2 Injection (kg) Gas (m3) Water (L) 図 12 平成 18 年度 圧入産出 (N m 3)

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CO2 圧入試験は水 没した IW-1 におい て 5 月 29 日から開始 した。他の年度でも 観察したように CO2 圧入量が徐々に増加 していく傾向が特に 顕著に認められる。 この注入性の改善傾 向の理由として、① 孔井近傍の水飽和率 の変化による相対性 浸透率、②圧入圧力 が極めて高いため応力依存性を持つクリートが広がり浸透率が改善、③孔井近傍のス キンファクターが徐々に改善、④石炭破砕等の理由が考えられる。 図 13 に示すガス産出挙動より、冬季シャットイン期間から井戸を開放した時に非 常に大量のガス産出が見られ、その後、ガス産出量はノーマルなレベル(90~100Nm3/ 日)まで低下した状態が認められる。これは、孔井近傍にガスを貯留できる空間(ク リート内の水飽和率が低下等)の存在が考えられる。CO2圧入に伴いガス産出量は 6 月 15 日頃から増加するが、明らかに CO2圧入に対する反応は鈍ってきている。最終的 には 500Nm3/日近くまでガス産出 量は増加するが、この理由として は、CO2圧入による増産効果と水飽 和率 減 少 によ る ガ ス相 対浸 透 率 の増加が考えられる。図 14 に示 す PW-1 での水産出量推移と孔底 内に 設 置 して い る 圧力 ゲー ジ に よる水位計測(圧力)結果より、 圧力 に 変 化が 無 く 水産 出量 が 低 下していることが認められる。こ れより、PW-1 近傍での水飽和率が 減少し、ガス産出量増加の一要因となったことが分かる。 現場予備実験の最終試験として IW-1 においてステップレート試験(以下 SRT とい う)を実施した。IW-1 掘削直後に実施した SRT では図 15 に示す通り、クリート開口圧 力が 15.8MPa と推測された。平成 19 年度に実施されたサージフラックの結果から、 クリート開口圧力の上昇が示唆されたため9月末に CO2圧入装置を使用して SRT を実

Water Production & BHP

200 400 600 800 1000 1200 4 /2 6 5 /1 0 5 /2 4 6/ 7 6 /2 1 7/ 5 7 /1 9 8/ 2 8 /1 6 8 /3 0 9 /1 3 9 /2 7 Date W at er P ro du c ti on (L /d ) -B H P (k P a ) BHP (kPa) Water (L) 図 14 PW-1 井:水産出量と水位(BHP) 2007 Injection & Production Results

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 4/6 5/6 6/5 7/5 8/4 9/3 10/3 Date C O 2 In je c te d (k g) / W at e r P ro du c e d (L ) 0 100 200 300 400 500 600 G as P ro du c e d (m 3 ) CO2 Injection (kg) Gas (m3) Water (L) 図 13 平成 19 年度 圧入産出 (N m 3)

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施した。その結果、クリート開口圧 力 を 示 す 圧 力 上 昇 傾 向 の 変 化 が 19MPa まで認められなかった。残念 ながら、装置能力から 19MPa 以上の 圧力で SRT を実施出来なかったが、 明らかに IW-1 近傍でのクリート開 口圧力が初期に比べ非常に大きくな っていると認識された。この理由と して、①膨潤により IW-1 近傍におい て高応力ゾーンが形成された、②圧 力が作用する炭層面がザクザクに破 砕され亀裂開口圧力が適用されなか った、等が考えられる。通常の CO2圧入圧力は初期クリート開口圧力より低い 15.6MPa 程度であったが、SRT で確認した 19MPa まで圧入圧力を上げて圧入した結果、10t/日 のレートでの圧入を行うことができた。 5.二酸化炭素圧入予備実験の成果 5.1 石狩モデル 我が国最初の CO2-ECBM 試験において得られた貯留層特性や吸着特性等の全データ は産出性ポテンシャルを評価するシミュレーション(石狩モデル)に組み込まれ、産 出や圧入試験のヒストリーマッチングより精度の高いものとなった。これにより、事 業化を踏まえた経済性検討を実施することができた。 5.2 二酸化炭素貯留と CBM 増産効果 本事業目的である我が国の炭層への CO2固定化の可能性を極めて単純な孔井におい て確認することができた。各年度のガス産出量と CO2圧入量推移から明らかなように CO2圧入により CH4産出量は増大される。孔井の配置パターンによって増産効果はこと なるが、5スポットの孔井パターンではラングミュアの吸着能力に等しい割合の置換 効率が期待できる。また、不活性ガス圧入による増産効果は観測井でのスキンファク ターに関係なく期待できる。 5.3 膨潤作用と N2による浸透率改善 N2圧入によってマトリックス内の吸着量を低下させて浸透率を改善する現場試験を 世界で初めて実施し、膨潤作用に依って CO2注入性が大幅に低下することが明確にな った。そして N2圧入により浸透率が大幅に改善し CO2圧入量の増加となった。しかし、 浸透率改善効果は短期間であり、CO2 圧入再開に伴い浸透率は急激に低下した。この CO2圧入による膨潤が CO2-ECBM 事業化の最大なる課題と考える。 図 15 平成 15 年実施の SRT 結果

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5.4 示唆 明確な解析結果は得られていないが、以下の事象が夕張での試験より示唆される: 1) 浸透率のヒステリシス現象 CO2圧入と N2圧入を繰り返すことでクリート形状やクリート内の状況が変 化し浸透率が回復しない場合がある。 2) 水増産効果 多くのシミュレーションでは、不活性ガスの圧入により CBM の増産だけで なく水の増産も予測されるが、夕張においては顕著な水産出量の増加は認め られなかった。 3) クリート開口圧力の上昇 クリート開口圧力の上昇が見られる場合には、圧入圧力を上げることがで きるので、CO2注入性を大幅に改善できる可能性がある。 6.結び 冬季期間での予備実験を実施できない環境ではあったが、CO2 の注入性を向上させる 様々な試験を実施し、膨潤効果に対するオプションとしての N2圧入成果を確認すること ができた。しかし、操業上の問題も多々発生し、試みたテストの多くでは準備不足や設 備能力の不十分さにより十分な成果を上げることが出来なかった。夕張での実験結果を 礎にして、更なる事象の解析や研究を通して経済的な CO2-ECBM が事業化されて行くこと を望む。 以 上

TABLE 1. Gas Content and Characterization Data 表3 下層工業分析結果と包蔵ガス量

参照

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