11 バルク乳・個体乳検査による黄色ブドウ球菌に対する
取り組みと性状検査
○吉崎 浩 岩倉健一 北村知也1) 要 約 黄色ブドウ球菌(SA)による乳房炎は伝染力が強く、治療が困難で農家に対する経済損失は甚大なも のがある。そこで、都内全農場のバルク乳検査を定期的に行い、検査成績に基づき個体乳・分房乳検査 を実施して、検査成績を還元、治療、牛のとう汰更新等の対策を行った。また、個体乳および分房乳か ら分離された SA について性状検査を行った。1) 薬剤感受性試験:一部の株でアンピシリン(ABPC)、ス トレプトマイシン(SM)、テトラサイクリン(TC)耐性株等が認められ、検査結果に基づく治療への活用 を行った。2) コアグラーゼ遺伝子型別:A 型9株、C 型 88 株、D 型6株、E 型 15 株、F 型 56 株、G 型 10 株、 H 型 13 株が確認され、同一農場で複数の遺伝子型が見られる事例もあった。複数の遺伝子型があった農 場において SA が確認されなくなった牛が再び SA を確認するようになり、遺伝子型が異なる株を分離す る事例があった。3) 毒素遺伝子の検出:197 株中 29 株で毒素遺伝子の保有が確認された。4) SA に対す る取り組みの効果:バルク乳検査、個体乳および分房乳検査を実施し、検査成績還元、治療、廃用指導 等の対策を実施したところ、SA 菌数の大幅な減少が認められた。取り組みに伴う農場における経済効果 は非常に大きいものがあると推察された。また、バルク乳検査により清浄であった農場が複数戸、急に SA 数が増加していたが、外部からの侵入と考えられ、1 頭の牛から複数の遺伝子型の異なる株が確認さ れる事例もあった。今後も定期的に検査と対策を継続していくことが大切と思われた。 は じ め に 黄色ブドウ球菌(SA)は乳房炎の重要な原因菌 であり、農家に多大な経済的損失を与えている。 また、本菌は伝染力が強く、感染初期はほとんど が潜在性感染牛となり把握が困難であり、気がつ かないうちに他牛にも感染するため、感染牛の把 握が重要となる。症状が明確になったときには、 抗菌剤等で治療しても回復が困難であり(難治性 乳房炎)、早期発見・早期対策が重要となる。 SA が産生するエンテロトキシン(SE)やトキ シックシンドロームトキシン(TSST-1)は公衆 衛生上ならびに臨床型乳房炎に関与する因子とし て注目されている。また、近年、薬剤耐性菌の出 現が大きな問題となっている。 そこで、SA による乳房炎の低減と SA の性状を 調べるため、都内全農場のバルク乳、個体乳およ び分房乳並びに保存菌株を用いて検査を実施した ので概要を報告する。 材料および検査方法 材 料:都内全農家のバルク乳 1,349 検体(平成 20 年 9 月から平成 25 年 11 月)、個体乳・分房乳 2,050 検体(平成 21 年 4 月から平成 25 年 11 月) を用いて SA の分離を行った。コアグラーゼ遺伝 子、毒素遺伝子検査については、保存菌株 197 株 を用いて検査を実施した。 1) 東京都農業共済組合検査方法:SA の分離は食塩卵黄寒天培地、血液 寒天培地を用いて分離を行い、分離株の同定は PS ラテックス栄研で選別、生化学性状をアピス タフで実施、SA に特異的な遺伝子である SAU1) の 増幅により同定した。薬剤感受性試験は、1 濃度 ディスク法によりアンピシリン (ABPC)、ペニシ リン (P)、ジクロキサシリン(DX)、クロキサシ リン(CX)、セファゾリン(CEZ)、セフロキシム (CXM)オキシテトラサイクリン(OTC)、ゲンタ マイシン(GM)、カナマイシン(KM)、エリスロマ イシン(EM)、ネオマイシン (N)、ストレプトマ イシン(SM)の 12 種類の薬剤について実施した。 毒 素 遺 伝 子 は SEA、SEB、SEC、SED、SEE、SEG、 SEH、SEI、SEJ、SEK、SEL、SEM、SEN、SEO、 SEP、SEQ、SER、TSSI の 18 種類について PCR 法2) にて実施した。コアグラーゼ遺伝子型別は A ~ H 型について PCR 法3) 、PCR-RFLP 法3) にて実施し た。 SA 検査の仕組み SA 検査の仕組みは、SA 感染牛が存在する農家 を早期発見するため、四半期ごとにバルク乳検査 を実施した。バルク乳から SA が確認された農家 の中から個体乳検査農家を選定し、個体乳・分房 乳検査を行い、感染牛の早期発見を行うとともに 分離 SA 株ごとに薬剤感受性試験を実施し、結果 を還元し、獣医師による治療、搾乳衛生指導等の 対策を実施した。 また、農家、獣医師より乳房炎検査の依頼があっ た場合も個体乳・分房乳検査を行い検査結果の還 元と治療も含む対策を行った。これらのことは、 家保と都関係機関、獣医師、農家との連携により 行われた(図1)。農家では SA 感染牛の把握によ り、隔離、他牛への感染予防、計画的な淘汰更新 等を行った。 結 果 1 SA の感染状況 本取組み前の平成 20 年のバルク乳検査では都 内検査農家全体の約7割の農家で SA が確認され、 中には非常に多くの SA 菌数が確認される農家も あった(図 2)。また、取組み初期の平成 21 年 4 月の個体乳検査では、農家によって半数以上の牛 が SA に感染している状況がみられた(図 3)。 2 薬剤感受性試験成績 薬剤感受性試験成績は一部の株でストレプトマ イシン(SM)耐性株、テトラサイクリン(TC)耐 性株、アンピシリン(ABPC)耐性株等が認められ バルク乳検査 結果還元・対策 改善意欲のある農家㻌 繰り返しSAが確認される農家 急にSA菌数が増えた農家 SA菌数の多い農家 個体乳検査農家選定 個体乳・分房乳検査 結果還元・対策 乳房炎疑い(農家・獣医師) 感染農家の早期発見 感染牛の早期発見 薬剤感受性試験:治療への対応 状㻌 況㻌 把㻌 握 隔離・搾乳衛生・感染防止 治療・淘汰更新等対応 農家 都関係機関 家保 連携 獣医師 治 療 採材・還元 四半期毎 SA等検査成績 薬剤感受性成績 㻜 㻞㻜㻜 㻠㻜㻜 㻢㻜㻜 㻤㻜㻜 㻝㻜㻜㻜 㻝㻞㻜㻜 㻝㻠㻜㻜 㻝㻢㻜㻜 (CFU/ml) 各農家のバルク乳SA検出数 㻥 㻝㻣 㻠 㻠 㻥 㻝㻠 㻝㻡 㻞㻞 㻝㻤 㻞㻠 㻝㻟 㻢 㻜 㻡 㻝㻜 㻝㻡 㻞㻜 㻞㻡 㻟㻜 㻟㻡 A農家 B農家 C 農家 D農家 E農家 F 農家 㻡㻥㻚㻝㻑 㻟㻢㻚㻜㻑 㻡㻟㻚㻝㻑 㻞㻝㻚㻠㻑 㻝㻤㻚㻞㻑 㻝㻠㻚㻟㻑 (頭) 陰性 陽性 図1 SA検査の仕組み 図2 SAバルク乳感染状況(H20) 図3 SA個体乳感染状況(H21.4)
㻝㻣 㻝㻤 㻞㻝 㻞㻟 㻞 㻝 㻝㻞 㻝 㻡 㻞 㻜 㻟㻣 㻜 㻡 㻝㻜 㻝㻡 㻞㻜 㻞㻡 㻟㻜 㻟㻡 㻠㻜 㻭㻹 㻼 㻰 㼄 㻯 㼄 㻯 㻱㼆 㻯 㼄㻹 㻻 㼀 㻯 㻳㻹 㻷 㻹 㻱㻹 㻺 㻿㻹 353株
㻞㻞
㻠
㻟
㻜
㻡
㻝㻜
㻝㻡
㻞㻜
㻞㻡
1種類
2種類
3種類
戸 H23.2.21№①㻌 H
№②㻌 H
№③㻌 C
№④㻌 H
№⑤㻌 H
№⑥㻌 H
№⑦㻌 H
№⑧㻌 F
№⑨㻌 F
№⑩㻌 H
№⑪㻌 H
№⑫㻌 H
H23.4.5№⑬㻌 C
№⑭㻌 C
H23.1.17 㻌 㻌 320 H23.9.26№⑮㻌 F
№⑯㻌 C
H24.8.20 H24.9.3№⑰㻌 C
№⑱㻌 H
№⑲㻌 C
H23.9廃用 H25.4.23 H23.10廃用 H23.7完治 H23.7完治 H23.7完治 H23.9完治 H24.3完治 H23.7完治 H23.9廃用 H23.5廃用№⑳㻌 C
№
21C
№
22C
№
23㻌
C
H24.10廃用 H23.9完治 H23.9廃用 (CFU/ml) H23.7.26 㻌 㻌90 H24.7.25 㻌 㻌220 H25.7.23 㻌 㻌 㻌 0 H23.10.4 㻌 㻌 10 H25.4治療 H23.5廃用 〔バルク乳検査〕 H22.7.13 㻌 㻌 㻌 0 H24.10死亡牛
A
牛
B
牛
C
牛
D
牛
E
牛
F
牛
G
牛
H
牛Ⅰ
牛
J
牛
K
牛
L
牛
M
牛
N
牛
O
牛
P
牛
Q
牛
R
牛
S
〔個体乳検査〕 H25.1.29 㻌 㻌 㻌 40 H25.4治療 H25.4治療 H25.4治療 H25.4完治 ★ ★ ★ ★ ★:導入牛○
○
○
H25.4治療 ★ ★ C:88(44.7%) A:9(4.6%) D:6(3.0%) E:15(7.6%) F:56(28.4%) G:10(5.1%) H:13(6.6%) 197株 図4 各種薬剤耐性菌株数 図5 SAコアグラーゼ遺伝子型別 図6 各農家のコアグラーゼ型別の保有状況 図7 A 農家 SA 対策事例た(図 4)。検査結果に基づき獣医師の治療に活 用した。 3 コアグラーゼ遺伝子型別 コアグラーゼ遺伝子型別では 197 株中 A 型 9 株、 C 型 88 株、D 型 6 株、E 型 15 株、F 型 56 株、G 型 10 株、H 型 13 株が確認され、C 型および F 型 の割合が多かった(図 5)。多くの農家では 1 種 類の遺伝子型だけであったが、同一農家で複数の 遺伝子型が見られる事例もあった(図 6)。 4 SA 対策事例 コアグラーゼ遺伝子型が H 型、C 型、F 型の 3 種類確認された A 農家での SA 対策事例を図7に 示した。もともと A 農家ではバルク乳検査で SA は確認されていなかったが、平成 23 年 1 月の検 査時に SA が 320CFU/ml 確認されたため、同年 2 月に個体乳検査を実施した。個体乳検査では 12 頭の牛が SA に感染していることが確認された。 そこで治療、廃用等を組み合わせた対策を行った ところ平成 23 年 7 月および 10 月のバルク乳検査 で SA 菌数は減少していった。しかし、平成 24 年 7 月のバルク乳検査では再び増えていた。その後 の個体乳検査では、SA が確認されなくなってい た牛も再び SA が確認される事例があった。分離 された SA のコアグラーゼ遺伝子型を調べた結果、 治療前の牛から分離された SA は H 型の株であっ たものが、治療後には一時期分離されなくなり、 その後再び分離された SA の遺伝子型を調べた結 果、C 型の株であることが判明した。新たな牛に も SA が確認され、コアグラーゼ遺伝子型は C 型 の株であった。コアグラーゼ遺伝子型を時系列で 見ると、当初は H 型の株が多かったが、後のほう では C 型の株が増えていた(図7・8・9)。新た に SA が確認された牛についても治療・廃用等を 組み合わせた対策を実施し、平成 25 年 7 月以降 バルク乳検査で SA は確認されなくなった。この ようにバルク乳検査で SA 菌数の多い農家の個体 乳・分房乳検査を実施して、SA の低減に努めて きた。 5 SA 清浄化事例・新たに SA が確認された事例 バルク乳検査で SA 数の多い農家について個体 乳・分房乳検査を実施して搾乳衛生・治療・廃用 指導等を実施し、SA の低減につとめてきた。比 較的短期間で清浄化された農家では、いずれも H㻌H㻌C㻌H㻌H㻌H㻌 H㻌 F㻌 F㻌H㻌H㻌 H㻌C㻌C㻌 F㻌C㻌 C㻌H㻌C㻌C㻌C㻌C㻌C㻌 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲ ⑳ ○21 ○22 23 ○ H㻌H㻌C㻌H㻌H㻌H㻌 H㻌 F㻌 F㻌H㻌H㻌 H㻌C㻌C㻌 F㻌C㻌 C㻌H㻌C㻌C㻌C㻌C㻌C㻌 ① ② ③ ④ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑫ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑲ ⑳ ○21 ○ 22 23 H㻌H㻌C㻌H㻌H㻌H㻌 H㻌 F㻌 F㻌H㻌H㻌 H㻌C㻌C㻌 F㻌C㻌 C㻌H㻌C㻌C㻌C㻌C㻌C㻌 ① ② ④ ⑥ ③ ⑤ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑫ ⑭ ⑪ ⑬ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑳ ⑲ ○21 ○22 23 ○ 630 H21.10.7 H22.4.26 0 B農家 1260 H20.12.9 H23.1.7 0 C農家 1600 H22.1.7 H22.7.13 0 D農家 400 H23.4.12 H24.10.4 0 E農家 1300 H21.7.14 H23.10.4 0 F農家 1060 H23.9.9 H24.1.17 0 G農家 1700 H21.2.10 H21.10.7 0 H農家 (CFU/ml) 2割強の農家は5年間 SAの侵入なし 800 検出なし H25.5.22 Ⅰ農家 270 H23.7.23 J農家 630 H21.10.7 K農家 検出なし 検出なし (CFU/ml) 事例1 事例2 事例3 バルク乳検査 㻌 㻌SA増加確認 個体乳検査 㻌 㻌17頭中4頭SA確認 㻌 㻌 㻌 (2頭A県導入牛) 分房乳検査 㻌 㻌SA保有牛うち4分房SA確認 SA保有牛:隔離・治療等対応 診療時乳房炎確認・検査依頼 2頭3分房SA確認(1頭A県導入牛) 同居牛全頭全房乳(56分房) SA検査⇒陰性確認(広がりなし) うち1頭2分房で毒素遺伝子保有確認 (SEC/SEG/SEI/SEL/tst 5種 ) SA保有牛:隔離・治療等対応 導入1ケ月後分娩、搾乳時乳房炎確認・検査依頼 分房乳検査 分房乳検査 B県より妊娠牛(経産)導入(2ケ月前) 分房乳検査 生化学性状及びコアグラーゼ遺伝子型(C・F型) の異なる株確認㻌 ⇒㻌 同時に2種類の異なる株の侵入 1頭2分房SA確認 SA保有牛:隔離・治療等対応 図8 A農場SAコアグラーゼ遺伝子型別(PCR) 表3 清浄農家での新たなSA感染の確認・対応事例 表1 SA改善事例(バルク乳) 表2 SA侵入事例(バルク乳) 図9 A農場SAコアグラーゼ遺伝子型別(PCR-RFLP)
SA 感染牛を早期に廃用としていた(表 1)。一方、 もともと SA が検出されなかった農家で、急に SA 菌数が増えたところもあり(表 2)、このような 農家についても個体乳・分房乳検査を実施して SA 低減に努めてきた。また、2 割強の農家は 5 年 間 SA が確認されなかった。 清浄農家で新たに SA が確認されたため対応し た3事例について表3にまとめた。事例1では、 バルク乳検査で SA が増加したため全頭検査を実 施した結果、17 頭中 4 頭の牛から SA が分離され た(内、2 頭は他県導入牛)。4頭の分房乳検査 を行い、SA に感染している4分房を確認し、隔離・ 治療等の対応を実施した。事例 2 では獣医師が診 療時に乳房炎を確認し、分房乳検査を依頼された ため、実施したところ、2 頭 3 分房から SA が分 離され、うち 1 頭 2 分房で 5 種類の毒素遺伝子 を持つ SA が確認された。本事例では、同居牛全 頭全分房(56 分房)の検査を行い、陰性(広が りのないこと)を確認し、SA 保有牛の隔離・治 療等対応をおこなった。事例 3 では他県より導入 された妊娠牛(経産)が、導入1ケ月後に分娩し、 その後乳房炎に罹患したため、分房乳検査を実 施したところ 1 頭 2 分房で SA が確認された。各 分房から分離された SA は生化学性状及びコアグ ラーゼ型別が異なっており、2 種類の異なる菌株 が同一牛の別々の分房に同時に感染したことが示 唆された。 6 毒素遺伝子の検出 保存菌株 197 株中 SEC/SEL 保有株 2 株 (2 戸 )、 SEG/SEO/SEM/SEN 保 有 株 2 株 (1 戸 )、SEG/SEI/ SEO/SEN 保有株 2 株 (1 戸 ) はじめ、合計 29 株で 毒素遺伝子の保有が確認された(図 10)。 7 SA に対する取組み前後の比較 バルク乳等で SA が確認された農家に対して個 体乳・バルク乳検査を実施し、対策を行ってきた ところ、取組み前の平成 20 年 9 月にバルク乳中 の SA 検出数が 100CFU/ ml以上の農家は 17 戸 であったものが、取組み後の平成 25 年 11 月には 3 戸と減少していた。取り組み中に数値が増えて 対策をおこなった農家を含め実際は約 30 戸に対 応してきた。また、SA 検出平均数・SA 総検出数 についても取組み前に比較して大幅な減少が見ら 保有 :29(14.7%) 非保有 : 168 (85.3%) SEC/SEL 㻌 :㻌 1㻌(株数) SEG/SEO/SEM/SEN㻌 :㻌 2 SEG/SEI/SEO/SEN㻌 : 2 SEA/SEH/SEK/SEQ㻌 : 6 SEC/SEG/SEL/tst : 1 SEC/SEG/SEI/SEL/tst : 2 SEO : 2 SEG/SEI/SEN : 3 SEI : 6 SEI/SEN : 4 SEA/SHB/SEC/SED/SEE SEG/SEH/SEI/SEJ/SEK/SEL SEM/SEN/SEO/SEP/SEQ/SER TSSI/FemA/Fem B 197株:20種類の遺伝子 延べ3960項目 毒素遺伝子保有株: 毒 素 産 生 㻌 耐 熱 性 毒 素 㻝㻣 㻟 㻜 㻡 㻝㻜 㻝㻡 㻞㻜 㻝㻝㻠㻣㻜 㻝㻜㻡㻜 㻜 㻞㻜㻜㻜 㻠㻜㻜㻜 㻢㻜㻜㻜 㻤㻜㻜㻜 㻝㻜㻜㻜㻜 㻝㻞㻜㻜㻜 㻟㻡㻤 㻞㻞 㻜 㻝㻜㻜 㻞㻜㻜 㻟㻜㻜 㻠㻜㻜 SA検出農家戸数(100 CFU/ml 以上) SA総検出数㻌 SA平均検出数㻌 戸 (CFU/ml) (CFU/ml) 取組前 H20.9㻌 取組後H25.11㻌 取組前H20.9㻌 取組後H25.11㻌 取組前 H20.9㻌 取組後H25.11㻌 乳代損失㻌 㻌 : 8,000kg×0.1×90円×10頭 = 720,000円 治療時損失㻌 : 40kg×10日×90円×8頭 = 288,000円 廃用時損失㻌 : {8,000kg(1産)×90円-504,000円(えさ代)} 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ×2頭㻌 = 432,000円 治療経費㻌 㻌 : 15,000円×10頭 = 㻌 150,000円 1,590,000円/年/戸 3,975万円/年/25戸 25戸低減 3億9,750万円/10年/25戸 特殊疾病対策事業(都単独事業) 培地等経費:457,000円/年 957万円/10年 41.5倍 経 済 効 果 人㻌 件㻌 費㻌 :500,000円/年 957,000円/年 図10 SA毒素遺伝子保有状況 図11 SA取り組みによる効果 表4 SA取り組みによる経済効果
れた(図 11)。 8 SA に対する取り組みによる経済効果 SA に対する取り組みによる経済効果は、1 戸当 たり 10 頭の SA 感染牛を改善したと仮定すると乳 代損失、治療時損失、廃用時損失、治療経費等を 合わせて 1 戸当たり年間 159 万円ほど経済効果が あると試算される。これを都内の 25 戸の農場に 対して行ったと仮定すると、年間 3,975 万円ほ どの経済効果が期待される。さらに本対策を継続 していくことにより、SA の低減により生じる経 済効果は継続されると考えられる。仮に 10 年間、 SAの低減状況が継続できたとすると、3 億 9750 万円もの経済効果が試算される。一方、必要経費 は、培地等経費・人件費等で年間 95 万7千円か かるとして 10 年で 957 万円に留まり、費用対効 果は 41.5 倍と試算された(表 4)。 まとめ及び考察 SA は平成 20 年のバルク乳検査では、7 割ほど の農家で確認され都内農家に広範に入っているこ とが判明した。バルク乳検査で SA が確認された 農家で平成 21 年に個体乳検査を実施したところ、 農家によっては半数以上の乳牛が SA に感染して いる状況で対策が必要であった。SA はいったん 農家に侵入すると感染力が強く、難治性であるた め、飼養牛に広く広がってしまう。バルク乳検査 によるモニタリングと個体乳検査の取り組みによ り、農家の SA に対する意識も高まり、個々の牛 の搾乳衛生・治療・廃用等の対策が取りやすくなっ た。 SA による乳房炎は難治性ではあるが、感染初 期であれば、治療効果はあると思われた。症状が 進んでいる場合は廃用による対策が有効と考えら れた。薬剤感受性試験成績では、多くの薬剤に感 受性であったが、一部薬剤耐性の株もあった。成 績還元で獣医師に活用してもらった。 コアグラーゼ遺伝子型は多くの農家では 1 種 類だけであったが、1 農家で複数の種類のコアグ ラーゼ遺伝子型が確認された事例があり、複数の 株が侵入していた可能性も考えられる。複数のコ アグラーゼ遺伝子型が認められた農家における SA の取組み事例で、当初はコアグラーゼ遺伝子 型が H 型の株が分離されていたが、治療後いった ん分離されなくなり、その後 C 型の株が分離され る事例があった。これは、H 型の株が治療により なくなった後に、他の牛が保有していた C 型の株 に再感染したものと推察された。 SA による乳房炎が難治性といわれる理由とし て、SA が乳腺内に微細膿瘍を形成するようにな り、治療しても薬剤が到達せず難治性となる8) こと以外にも、SA の再感染による乳房炎も含ま れている可能性が示唆された。SA は感染力が強 いため一度侵入すると次々に牛に広がり、さらに 再感染する可能性もあるので、SA 感染牛の把握 とともに搾乳衛生が非常に重要と思われた。また、 導入牛から複数の種類の SA 株が分離される事例 もあり、1頭の導入牛が複数の種類の SA を持ち 込んでしまう可能性もあると考えられた。毒素遺 伝子保有株は比較的少なかったが、公衆衛生上問 題も生ずるので今後も SA を低減することが必要 である。SA に対するバルク乳・個体乳検査の継 続的な取り組みで大幅な改善効果を認めることが できた。SA 低減による費用対効果は非常に大き いと推察される。SA の早期発見・早期対策が経 営改善につながると思われた。一方、清浄な農家 等への新たな SA 侵入も確認された。このような 場合は早期発見・早期対策をとることが広がりを 防ぎ、経済的損失を防ぐことができると思われる。 今後も、複数の培地による定期的なバルク乳検 査によるモニタリング、個体乳検査による現状把 握、都関係機関、団体、獣医師と連携した対策の 継続が必要と思われる。 引 用 文 献 1) Hata,E.,Katsuda,K,Kobayashi,H.,Ogawa, T,Endo,T.and Eguchi,M.:Characteristics
a n d e p i d e m i o l o g i c g e n o t y p i n g o f Staphylococcus aureus isolates from bovine mastitic milk in Hokkaido,Japan. J.met.Med.sci,68,165-170 (2006)
2) 秦英司ほか:Staphylococcus aureus による 牛乳房炎、家畜衛生研修会抄録(病性鑑定:細 菌部門)第 26 号 33-37 (2002)
3) Hookey,J,V.,et al.:Molecular Typing o f S t a p h y l o c o c c u s a u r e u s B a s e d o n P C R R e s t r i c t i o n F r a g m e n t L e n g t h P o l y m o r p h i s m a n d D N A S e q u e n c e Analysis of the Coagulase Gene,J.Clin. Microbiol,36,1083-1089 (1998)
8) PHILPOT WN :Mastitis Management 1-72 Babson Bros.co.(1978)