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原料情勢 平成 24 年 月の配合飼料の価格改定と原料情勢について ( 平成 24 年 9 月 21 日発表 ) 主原料 主原料である米国産トウモロコシは 9 月 12 日米国農務省の需給予想において 2012 年産の生産量は 107 億 2,700 万ブッシェル (2 億 7,248

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カウ・ベル 全酪連購買事業情報紙

カウ・ベル 全酪連購買事業情報紙

全酪連酪農セミナー2012

No.

125

2012 秋季

No.

125

2012 秋季

“牛”を科学し、

飼料特性を活かす

栄養管理

酪農セミナー特集号

酪農一口メモ解説

分娩前後のDMI(乾物摂取量)が減少

“牛”を科学し、

飼料特性を活かす

栄養管理

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平成24年10〜12月の配合飼料の価格改定と原料情勢について (平成 24 年 9 月 21 日発表)

▶▶主原料

 主原料である米国産トウモロコシは、9 月 12 日米国農務省の需給予想において 2012 年産の生産 量は 107 億 2,700 万ブッシェル(2 億 7,248 万トン)、単収は 122.8 ブッシェル / エーカー、総需 要量 112 億 5,000 万ブッシェル(2 億 8,576 万トン)、期末在庫 7 億 3,300 万ブッシェル(1,862 万トン)、在庫率 6.5% と発表されました。  米国中西部は、大干ばつに見舞われ、とうもろこしの生産量は大幅な減少が確実となっています。需 給逼迫を受けてシカゴ定期は史上最高値圏で推移しており、前期比で大幅な上昇となっております。

▶▶副原料

 大豆粕についても、干ばつによる大豆の減産を受けて、シカゴ大豆粕相場は史上最高値を更新する など、市況は前期比大幅な値上げとなっています。また、菜種粕等も大豆粕に連動して大幅な値上げと なっています。  糟糠類については、ふすま・グルテンフィードの発生量が当初の予想を下回っており、需給は締まり つつあります。先行きも需給は更に逼迫すると推測され市況は強含みで推移しています。

▶▶脱脂粉乳

 脱脂粉乳については、オセアニア地域の生乳生産量が増加する時期になるため供給量の増加が期待 されています。一方、EU 地域の天候不順や米国の干ばつによる飼料高騰等の影響から生乳生産量の減 少が見込まれており、市況は横ばいで推移することが予想されます。

▶▶海上運賃

 海上運賃については、原油価格は上げ基調ですが、石炭、鉄鉱石の需要が緩和傾向にあり横ばいで推 移しています。

▶▶

外国為替

 外国為替については、欧州債務危機、米国の追加金融緩和政策の動きから引き続き円高基調で推移 しておりますが、赤字となっている日本の貿易収支、通貨当局による追加金融緩和政策や為替介入へ の警戒感から先行きは不透明な情勢となっております。 ─────────────────────────────────────────────────  以上のことから、現状の原料情勢を総合的に判断し、平成 24 年 10 〜 12 月の配合飼料の供給価格につ きましては、以下のとおりと致しましたので、ご了承の程お願い申し上げます。

原料情勢

1. 全国全銘柄平均(工場渡し価格)     (1)配合飼料    トン当たり 4,500 円値上げ     (2)哺育飼料    トン当たり 15,000 円値下げ 2. 適用期間 平成 24 年 10 月 1 日から平成 24 年 12 月 31 日までの出荷分

㈳全国畜産配合飼料価格安定基金からの価格差補てん金(平成 24 年度第 3 四半期分)は、トン当たり 5,450 円交付されます。 また、今 期に限り、加入生産者の年末資金需要に資するため、補てん金の一部を年内に交付する予定です。

(3)

Feed Ingredients

配合飼料の価格上昇への対策について(農水省発表)

 

配合飼料価格の上昇が酪農・畜産経営に及ぼす影響を緩和することを目的と

して、下記のとおりの対策が講じられることが農林水産省より発表されました。

講じられる措置

(9 月 21 日農水省発表内容より)

(1)配合飼料価格安定制度の安定運用

①考え方  配合飼料価格安定制度については、通常補てん基金の運営に補てん財源の確保が必要 となっており、とうもろこし主産地である米国における 1956 年以来最悪の干ばつと いった状況も踏まえ、異例の措置として、異常補てんの発動基準を引き下げ、補てんを増 額し、通常補てん基金からの補てんを軽減します。これに関し、来年度以降、畜産農家や 飼料メーカー等に対して飼料自給率向上のための取組の強化をお願いしていきます。ま た、本措置を講じてもなお不足する額については、異常補てん基金から通常補てん基金 に無利子貸付を行います。 ②仕組み  ア . 異常補てん基金の発動基準の引下げ  平成 24 年度第 3 四半期及び第 4 四半期に限り、異常補てんの発動基準を 115% から 112.5% に引き下げます。  イ . 通常補てん基金への無利子貸付  貸付限度額 : 異常補てん基金の財源の範囲内において、平成 24 年度第 3 四半期及 び第 4 四半期における通常補てん基金の財源不足額を基本に算定します。   償還期間 : 平成 27 〜 29 年度(3 年間)   貸付条件 : 無利子

(2)その他の措置

◦飼料用小麦の輸入予定数量の拡大 ◦備蓄飼料穀物の貸付限度数量の拡大

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▶▶米国内の旱魃の状況(西海岸 ; 雨当たり ⇔ 中西部 ; 旱魃)

 以下の図は、米国内の旱魃(Drought)の状況について示したもので、「9 / 4 時点でどれだけ旱魃・日照りと なっているか」 を示しています。現在トウモロコシ相場は歴史的な高値で推移しており、その主産地である中西 部では、極めて(Extreme)ひどい旱魃、あるいは異常なほど(Exceptional)ひどい旱魃となっていることが、こ の図からも分かります。一方で、輸出向け乾牧草の主産地であ る西海岸のワシントン州(本土の一番北西の州)やオレゴン州 (その南の州)、カリフォルニア州(その南の一番南西の州)で は、あまり旱魃傾向ではない状況となっています。アルファル ファやチモシー、スーダングラス、クレイングラスなど、ほと んどの草種で収穫時期に雨当たり被害が発生する未曽有の事 態となっています。  日本の輸入飼料にとっては、雨が降ってほしい地域(中西 部)に降ってほしい時期に降らず、雨が降ってほしくない地 域(西海岸)に降ってほしくない時期に降ってしまっているの が、産地米国での現状です。

▶▶インペリアルバレー(エルセントロ)降雨被害の状況

 輸出向けスーダングラスとクレイングラスおよびバミューダの主産地であるインペリアルバレー(エルセン トロ)で、7 / 30 から 31 にかけて、当地では季節はずれの非常に 激しい降雨がありました。このため、収穫中のスーダングラスにつ いては甚大な雨当たり被害が発生しています。その後、8 月中旬に も雷雨があり、状況はさらに悪化しています。  各サプライヤーとも復旧作業は概ね終わりましたが、集荷済みの スタックにもダメージが発生しています。今後も想定以上にロスが 発生することと、先々の船積みでカビの頻発が懸念されます。

▶▶北米コンテナ船情勢

 WTSA(Westbound Transpacific Stabilization Agreement)加盟の船会社により 10-12 月分の BAF (Bunker Adjustment Factor 燃料費調整係数 : 燃料価格変動に対して調整される割増運賃)について、$84 値 下げが発表されましたが、GRI(General Rate Increase: 基礎レート)については 10 月 1 日付けで $200 値 上げ実施の発表がされています。  輸入量が輸出の増加量に追いついていない PNW では、引続き空コンテナが不足しています。今後もデリバ リーについては注意が必要です。

▶▶米国の乳価動向

 米国の乳価(右記グラフ参照 : クラスⅢ チーズ向け)は、米国内の景気に影響されて 弱含みで推移していましたが、乳製品の相場 価格上昇にともない、6 月から徐々に値上が りで推移しています。飼料コストも値上がり しているので、米国内酪農家は引続き厳しい 経営を強いられていますが、アルファルファ の産地価格・情勢にも影響があるため、米国 の酪農情勢・乳価動向については今後も引続 き注意が必要です。 エルセントロ サプライヤー集荷積みスタックのダメージ 左:8/2撮影 右:8/30撮影

粗飼料情勢

$22 $21 $20 $19 $18 $17 $16 $15 $14 $13 $12 $11 $10 $9 PER CWT.

JAN FEB MAR APR MAY JUN JUL AUG SEP OCT NOV DEC 2012

2008 2009 2010 2011

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▶▶ビートパルプ

《米国産》   輸出向けビートパルプの主産地であるミネソタ州とノースダコタ州(ともに中西部の北でカナダ国境に接 する州)は、あまり旱魃傾向ではなかったため、生育は概ね順調に推移し、8 月中旬から 12 年産の収穫が始ま りました。冷涼な気候が続いて収穫が遅れた昨年 11 年産よりも 3 週間早い進捗となっています。  作柄は昨年よりも順調と伝えられていますが、穀物相場が高騰しているため、米国内酪農家からのビートパ ルプの引合いが増えてくることが懸念されています。ビートパルプの産地価格は弱含むことなく、引続き高値 で推移することが予想されています。

▶▶アルファルファ

《ワシントン産》   ワシントン州コロンビアベースンでは、1 番刈の 60% 程度が雨当たり被害を受け、2 番刈の 50-60% 程度 が雨当たり被害を受けました。プレミアム品の発生量は、ともに限定的となっています。また、産地では 3 タ イの発生量が大きく減少し、生産効率の高い BIG ベールでの生産が大半となっています。 産地では 3 番刈の収穫が終盤を迎えています。降雨被害はほとんど無かった模様ですが、全体的に茎が細めの 仕上がりとなっています。早い圃場では 4 番刈の収穫が始まっていますが、約半分の生産農家が 3 番刈まで で収穫を終えると予想されています。  ワシントン産アルファルファは、輸出向け主産地ではありますが大半が米国内向けの生産となっています。 穀物相場が高騰しているため、米国内酪農家からのアルファルファの引合いが増えてくることが懸念されて いるため、産地価格については弱含むことなく、このまま高値で推移することが予想されています。 《オレゴン産》   クリスマスバレーでは、7 月下旬から 2 番刈の収穫が始まり、8 月下旬までにはほぼ収穫が終了しました。 1 番刈の収穫進捗がやや遅れ気味だったため、2 番刈を早めに収穫される圃場と、生育の進捗を待って収穫さ れる圃場に分かれているため、収穫スケジュールにバラつきがある模様です。クラマスフォールズでは、7 月 中旬から 2 番刈の収穫が始まり、8 月下旬には収穫が終了しました。早い圃場では 3 番刈の収穫が始まって いる模様です。  両産地ともワシントン産の状況を受けて、12 年産も引合いが強まっています。11 年産の繰越在庫もない ため、産地価格も引続き強含みで推移することが予想されています。また近年の傾向通り、生産効率を考えて BIG ベールでの収穫が増えており、12 年産もますます 3 タイのプレミアム品の確保が難しくなっています。 《ネバタ産》   産地では、7 月上旬から 2 番刈の収穫が始まりましたが、30-40% 程度の雨当たり被害が発生している模 様です。40-50% 程度の雨当たり被害が発生した 1 番刈に続いて、良くない作柄となりました。  中西部旱魃と穀類高騰の影響から、ネバタ産アルファルファはコロラド州などの他州の酪農家からの引合 いが強くなっていると一部で伝えられています。11 年産の繰越在庫もないため、産地価格も引続き強含みで 推移することが予想されています。 《ユタ産》   産地では、7 月上旬から 2 番刈の収穫が始まりましたが、多くの圃場で雨当たり被害を受けた模様です。全 ての圃場で雨当たり品を生産することとなった生産農家もいる模様で、非常に厳しい状況が伺えます。3 番刈 は 8 月下旬から 9 月中旬にかけて、収穫が開始される予定です。  ネバタ産と同様に、中西部旱魃と穀類高騰の影響から、ユタ産もコロラド州などの他州の酪農家からの引合 いが強くなっていると伝えられています。11 年産の繰越在庫もないため、産地価格も引続き強含みで推移す ることが予想されています。 《カリフォルニア産》   インペリアルバレーでは、6 番刈の収穫がほぼ終了し、早い圃場では 7 番刈の収穫が始まっています。産地 を襲った 7 月末の激しい降雨はアルファルファにも影響を与えていますが、一般的に成分・品質が落ちる 「サ

HAY Business

平成24年9月10日

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マーヘイ」 と呼ばれるアルファルファの発生が中心となっているため、日本向けについては大きな影響はない と考えられています。しかしながら、産地価格もようやく軟化し始めて UAE 向けが徐々に買付けに力を入れ 始めた、と言われていた矢先の降雨だったため、今後は UAE・中国向けの動向次第では、他産地も含めてアル ファルファ全体で間接的に影響を受ける可能性もあり、注意が必要です。

▶▶チモシー

《米国産》  米国産チモシーの 1 番刈は、エレンズバーグでは 60-70% 程度が、コロンビアベースンでは 40-50% 程 度が雨当たり被害を受けたと言われており、近年まれにみる厳しい状況となっています。雨当たり被害を免れ た圃場も適期に刈取れず、刈遅れ気味となったスタックも多い模様で、ハイグレード品の発生量は非常に限定 的となっています。絶対的なハイグレード品不足のため、酪農向けプレミアム品、中間グレード品も馬向けに 向けられているため、酪農向けのチモシーは中間グレード品でさえも、確保が極めて困難な状況となっていま す。そのため、産地価格についても堅調に推移し、また 11 年産の繰越在庫もないため、特にハイグレード品は 非常に高値で推移しています。  産地では 2 番刈の収穫が始まっていますが、穀物相場の高騰を受けて、転作が進められる圃場も多い模様で す。そのため 2 番刈の作付面積については、前年対比で 50% 以上も減少すると一部では予想されています。 また、クレイングラスやバミューダの状況を受けて、韓国向けからの引合いが強くなっているとも伝えられて います。11 年産の繰越在庫もないため、産地価格も引続き強含みで推移することが予想されています。 《カナダ産》  レスブリッジ(南アルバータ)では、1 番刈の収穫が 7 月中旬から始まりましたが、収穫時期に雨当たり被 害が発生したため、ハイグレード品は 1% 以下となり、中間グレード品以下が中心の作柄となっている模様で す。ドライランド(中央アルバータ)では、1 番刈の収穫が 7 月下旬から始まりましたが、ここでも雨当たり被 害が発生したため、ハイグレード品の発生量は限定的となっている模様です。  両産地とも米国産 1 番刈の状況を受けて、12 年産は強い引合いでスタートしています。米国(ワシントン州) のサプライヤーも、自社での馬向けハイグレード品の不足分を補うために、買付けに来ているとも伝えられて います。まだ集荷が始まったばかりですが、11 年産の繰越在庫もないため、特にハイグレード品の産地価格に ついては非常に高値で推移している模様です。

▶▶スーダングラス

《インペリアルバレー産》  12 年産は早播きスーダングラスの作付面積の減少やスーダンの種子価格高騰を受けて、茎細のハイグレー ド品については発生量が限定的となっています。どのサプライヤーも、買付け進捗は近年まれにみる悪さと なっており、茎細ハイグレード品は需要に対して大きく不足すると見込まれています。  産地では早播きの 2 番刈や、小麦収穫後に播種する遅播きのスーダングラス(アフターウィート)の収穫 が待たれていましたが、7 月末の激しい降雨により事態は急変し、8 月中旬のまとまった降雨によって事態 がさらに悪化しています。これ以上の茎細ハイグレード品の発生が難しくなるだけではなく、中間グレード 品やローグレード品の発生量について も、予想よりも減少する見込みとなって います。  12 年産スーダングラスは、わずかに 残ったハイグレード品だけではなく、か ろうじて雨に当たっていないか軽く雨に 当たったスタックにもグレードを問わず 引合いが集中しているため、産地価格に ついては昨年よりもさらに高騰して推移 しています。 インペリアルバレー スーダングラス 雨当たり品スタック (8月収穫・本会はどちらもリジェクト)左:8/10撮影 右:8/23撮影

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HAY Business

▶▶クレイングラス

(クレインは全酪連の登録商標です)  1 番刈と 2 番刈は昨年 11 年産に比べて良品の発生が多い傾向で、順調に推移してきましたが、3 番刈は 7 月末の激しい降雨により、大きな被害を受けました。雨当たり被害を免れた圃場も適期に刈取れず、刈遅れ気味 となったスタックも多い模様で、その後の降雨も影響して湿度が高い気候が続いたため、品質の劣化が進んで いると伝えられています。今後発生する 3 番刈以降は、茎が硬め・太めで、茶葉が多めな品質傾向となることが 予想されています。収穫スケジュールが大幅に遅れたため、4 番刈で収穫を終える圃場も出てくる見込みです。  早くから 11 年産の在庫もなく、また 3 番刈以降の作柄が良くない状況下で、韓国と日本向けに強い需要が 今後も続くと見込まれているため、12 年産クレイングラスの産地価格は引続き堅調に推移しています。

▶▶バミューダ

 バミューダヘイ、バミューダストローともに、7 月末の激しい降雨により雨当たり被害を受けました。特にスト ローについては、酷く被害を受けている模様です。早くから 11 年産の在庫もなく、バミューダの種子価格が高騰 し生産コストも上昇している状況下で、国内向け、輸出向けともに強い需要が 12 年産も続くと予想されているた め、今後も引続きタイトで、産地価格も弱含むことなく推移することが予想されています。

▶▶ストロー類(フェスキュー・ライグラス)

 12 年産について、フェスキューストローは 7 月中旬から、ライグラス(ペレニアル種)ストローは 7 月下 旬から収穫が始まりましたが、一部で雨当たり被害が発生している模様です。早くから 11 年産の在庫もなく、 年々減少している作付面積は今年もやや減少すると言われており、加えて韓国向けからの引合いも強くなっ ているため、12 年産以降もストロー類は引続きタイトで、産地価格も弱含むことなく推移することが予想さ れています。

▶▶豪州産オーツヘイ

《西豪州》  西豪州では、播種が終了しています。7 月は記録的な降雨不足に見舞われたため旱魃傾向となっていました が、8 月に入ってからは降雨が何度かあり、生育進捗も少し回復している模様です。一昨年の旱魃のときより も降雨量はあり、生育も一昨年の 10 年産ほど悪くはない見込みですが、収量は例年よりも少なくなることが 予想されています。  旱魃の影響で極端に収量が少なかった 10 年産に続き、11 年産は雨当たり被害により輸出向けオーツヘイ を生産さえできない圃場も多く、生産農家は厳しい経営を強いられています。安定した収入が見込める穀類へ の転作が多いと予想されるため、12 年産の作付面積は 15% 以上も減少することが予想されています。 《南豪州》  南豪州でも、播種が終了しています。西豪州とは違い、7 月にも産地では例年並みの降雨があったため、生育 は順調と伝えられています。西豪州からシフトしてきた旺盛な 11 年産の引合いを背景に、12 年産オーツヘ イの作付面積は昨年と同程度か、少し増えることが予想されて います。 《東豪州(ヴィクトリア州)》  ヴィクトリア州でも、播種が終了しています。南豪州と同様 に 7 月にも例年並みの降雨があったため、生育は順調と伝えら れています。この地域は豪州国内で最大の酪農・肥育の生産州 で、放牧草の生育が良くない模様と一部で伝えられています。 オーツヘイのローグレード品の引合いが強くなる可能性もあ り、注意が必要です。南豪州と同様に、西豪州からシフトしてき た旺盛な 11 年産の引合いを背景に、12 年産のオーツヘイの 作付面積は増えることが予想されています。 豪州 2012年8月を対象に平均降雨量と比較した図西豪州主産地の8月の降雨量は、とても少なく(Very Much Below Average)、赤くなっている。

(8)

▶カレンダー 11-12月の「酪農一口メモ」と併せてご覧ください。  分娩前に太った牛は分娩後に食 欲が上がらず、ケトーシスになる ということは、多くの酪農家が経 験していることです。  分娩した乳牛は、分娩後の乳量 の上昇に基づくエネルギー要求量 の急激な立ち上がりに対して、乾 物摂取量の立ち上がりが追いつ かず、その不足を補うために体に 蓄えた脂肪を利用しようとしま す。特に太った牛では、飼料を摂 取してそれを消化してエネルギー として利用する効率より、蓄えた 脂肪を燃焼させてエネルギーと する効率のほうが高いため、エサ を食べない傾向が強くなります (図 1)。  通常の分娩牛で、エネルギーの 要求量の立ち上がりに対して乾物 摂取量の立ち上がりが遅れる理由 については、まだ確立されたもの はありませんが、血中カルシウム 濃度の低下が原因ではないかとい うのが有力な説です。カルシウム は一般的には骨を構成するミネラ ルとして認識されていますが、最 近は神経への影響や筋肉の収縮へ の関与が注目されています。人間 ではカルシウムが不足するとイラ イラする傾向が高まり、睡眠も安 定しないということが分かってき ています。

■ 血中カルシウム濃度が

低下すると

 乳牛でカルシウム不足が神経 および筋肉の収縮に影響する典 型的な例としては、乳熱がありま す。乳熱は、分娩後の泌乳開始に より、多量のカルシウムが牛乳中 に放出されることによって起こ ります。牛乳中に放出されたカル シウムは、飼料からの補充だけで なく、骨に保管されていたカルシ ウムによって補充される仕組みに なっています。しかし、その機能 がうまく作動しないと血中のカル シウム濃度が低下し、四肢の筋肉 の収縮が阻害されるために立て なくなるという症状になって現 れます。  それと同様の機序により、この 血中カルシウム濃度の低下は、第 一胃を動かしている平滑筋の活動 低下を伴い、それによって乾物摂 取量が立ち上がらないのではない かと考えられています。ちなみに、

分娩前後のDMI(乾物摂取量)が減少

全酪カレンダー連動企画

酪農一口メモ

解説

図 1 泌乳曲線と乾物摂取曲線 乾物摂取曲線 栄養要求曲線 泌乳曲線 体重曲線 21日 分娩 30日 90日 乾乳

泌乳曲線と乾物摂取曲線

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このカルシウム濃度の低下による 平滑筋の収縮不全は、第四胃変位 や子宮の回復遅れの原因ではない かと考えている人もいます。

■ 体脂肪を使って

エネルギー補給

 エネルギーの要求量と乾物摂取 量のギャップを埋めるために、体 に蓄えた脂肪を使うこと はいずれの分娩牛にも 起こっています。蓄えら れた脂肪は遊離脂肪酸 (NEFA)と な っ て 血 中 に放出されます。この脂 肪酸は、通常であればア セチル CoA という物質 を介してエネルギーを生 産する TCA サイクルと いう回路に運ばれ、乳牛 に必要なエネルギーを生 産します。しかし、この 処理を行う肝臓の機能が 低下していたり、あまり に多量の遊離脂肪酸が運 ばれてくると、処理しき れなかった脂肪は肝臓に 溜まって脂肪肝となります。また、 過剰の脂肪酸はアセト酢酸を経 て、アセトンとβ - ヒドロキシ酪 酸に分解され、尿あるいは乳中に 排出されます。これがケトン体と 呼ばれるもので、これが過剰にな るとケトーシスと呼ばれる症状を 呈するようになります。  分娩後だけでなく、分娩前にも 潜在性のケトーシスが起こってい るのではないかということも言わ れています。分娩前には急激に成 長する子牛に第一胃が圧迫され て、物理的に乾物摂取量(DMI)が 減少します。この結果、エネルギ ーのマイナスが発生して、血中遊 離脂肪酸が分娩前一週間で急速に 上昇していることが観察されてい ます(図 2)。

■ 移行期の DMI 減少を

最小限に

 これらのことから、移行期と呼 ばれる分娩前後を通して、乾物 摂取量の低下によるケトーシス の危険に曝されていると考えら れ、それへの対処が求められてい ます。  このような移行期のエネルギー マイナスを予防するためには、乾 乳になる前に BCS を管理して過 肥の牛を作らないこと、乾物摂取 量を上げるために良質の飼料を給 与すること、エネルギー濃度の高 くかつバイパス蛋白の豊富な飼料 を給与することなどの対処が必要 となります。 図 2  図 3 ケトーシスの発生機序 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 分娩日に対する日数 遊離脂肪酸 ︵ N E F A︶ μM 乾物摂取量 ︵ D M I︶㎏ / 日 Grummer, 1993 25 20 15 10 5 1000 800 600 400 200 乾物摂取量 遊離脂肪酸 家畜共済 診療指針より(改変) クエン酸 アセチルCoA サタシニルCoA オキザロ酢酸 蓄積脂肪 遊離脂肪酸 酢 酸 尿・牛乳 呼 気 酪 酸 アセト酢酸 クエン酸回路 β-ヒドロキシ 酪酸 アセトン ケトン体 NADH プロピオン酸 ブドウ糖

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“牛”を科学し、

飼料特性を活かす

栄養管理

全酪連酪農セミナー2012

特 集

 全酪連酪農セミナーの講師として全国6ヶ所を回り、酪農家 さんや日本酪農を支えている皆さんに直接話をする機会を持つ ことができました。セミナーに来てくださった方々、セミナー を企画しサポートして下さった全酪連スタッフの方々に大変感 謝しております。今回のセミナーでは “牛を科学し飼料特性を 活かす栄養管理”というテーマでお話しましたが、皆さんに「牛」 と「飼料原料」への理解を深めるきっかけにしていただければ と思い講演を準備しました。第一部では、移行期の代謝障害が 起こる生理的メカニズムについて考え、ケトーシス、乳熱、アシ ドーシスなど栄養管理に起因すると考えられている代謝障害を 中心に説明いたしました。第二部では、泌乳前期の栄養管理で エネルギー摂取量を最大にするためにはどうしたら良いかにつ いて考えました。油脂やデンプンはエネルギー密度の濃い栄養 素ですが、乳牛の代謝生理を考えて臨機応変な利用を考えるこ との大切さを強調しました。  今はカナダの大学で働いていますが、一日本人として日本の 酪農に少しでも貢献できればと考えています。次回、皆様にお 会いできる日を楽しみにしています。

[はじめに]

 「高泌乳牛の繁殖成績は悪くて 当然か ?」という考えた方から、乳 量を追求していくと牛がダメにな るといった考え方に陥ることが ある。  過去 50 年間の乳量と繁殖の関 係(米国牛群検定データより)を みると、1950 年代には泌乳牛の受 胎率は 60% 以上あったが、2010 年には 40% 位まで落ち込んでお り、乳量と繁殖成績は反比例の関 係で推移してきている【スライド 3】。低泌乳牛と高泌乳牛の「発情 持続時間」「1 日の乗駕回数・時間」 を比較したデータをからも、明ら かに高泌乳牛の方が繁殖に与える 影響が大きいことが示唆されてい る【スライド 4】。  繁殖成績に与える要因には、一 般的に以下の内容が考えられる。 ◦高乳量の追求による遺伝子 レベルでの繁殖能力低下 ? ◦分娩後に発情のサイクルが 始まっているか ? ◦発情をきちんと発見できた か ? ◦人工授精のタイミング ? ◦受精後に受胎しているか ? 1988-1990年 北海道・ニュージーランド・長野県で酪農場勤務 1990-1992年 青年海外協力隊でシリアへ 1995年 アイオア州立大学農学部酪農学科卒業 1998年 ミシガン州立大学修士課程終了(乳牛栄養学) 2002年 ミシガン州立大学博士課程終了(乳牛栄養学) 2002-2004年 メリーランド大学研究員、非常勤講師 2004-2008年 アルバータ大学 乳牛栄養学助教授 2008-現在 アルバータ大学 乳牛栄養学准教授 カナダ・アルバータ大学 乳牛栄養学准教授

大場 真人

博士

講師挨拶

略 歴

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 そして、このような「繁殖管理」 「飼養管理」に様々な方々が関わ っており、受胎が良くない場合に は、“高泌乳牛は受胎率が悪くて 当然だ”“これだけ乳量が出てい れば、受胎しなくても仕方がない” といった結論に落ち着くケース が見受けられる。これは、「牛のせ いにすれば、誰も傷つかない」と いった言い訳に使われることが 多い。ところが、これらは統計デ ータに振り回されていることが多 く、高泌乳牛は、繁殖成績が悪く ても淘汰されず、低泌乳牛は、繁 殖成績が悪いと優先的に淘汰され 統計データに集計されない。  高乳量と高繁殖成績は、両立さ せるものと考えたい。飼養管理技 術が優れた農場であれば、①移行 期管理の代謝障害が少ない②分娩 後の DMI 立ち上がりが良い③エ ネルギー状態が良いことが実行さ れている。このセミナーでは、高泌 乳と高繁殖成績は、二者択一ではな く両立させようという考え方をベ ースとして、話を進めていきたい。

[第 1 部]

分娩移行期の代謝障害と

栄養管理

 25% の牛が分娩後 2 ケ月以内 に淘汰されている。その淘汰理由 の大半は、代謝障害(ケトーシス・ アシドーシス・乳熱)によるもの である。そして、この分娩移行期 の問題は「淘汰率の低下」「生乳生 産量のアップ」「繁殖成績の向上」 に直結するため、まずは、それぞ れの代謝メカニズムを正しく理解 することが大切である。 ●低カルシウム血症  カルシウムは、筋肉の収縮には 必要なミネラルである。顕著な症 状となる乳熱(起立不能)などは 氷山の一角であり、第四胃変位・ 子宮炎・乳房炎などの引き金とな る潜在性のカルシウム血症が大き な問題となる。  まずは、Ca 恒常性を維持する メカニズムを理解したい。血液中 の Ca 濃度が低下した場合、Ca 代 謝を調整するホルモン(副甲状腺 ホルモン、以下 PHT)が分泌され る。そして、骨・腎臓への働きかけ によって、骨からの Ca 動員、尿へ の放出を抑制、ビタミン D の活性 を促すことによって、小腸からの

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 全酪連は、平成 24 年 2 月にカナダ・アルバータ大学 乳牛栄養学准教授 大場真人博士を招聘し、『全酪連酪 農セミナー 2012』を帯広・仙台・東京・名古屋・岡山・熊本の全国6会場にて開催致しました。酪農家をはじめ、 会員職員・公的機関研究員・獣医師など総勢 1,000 名を超える多くの方々にお越しいただきました。  今回のセミナーでは、「“牛”を科学し、飼料特性を活かす栄養管理」と題し、乳牛の代謝メカニズムを正しく 理解することで、酪農現場で起こる様々トラブルを乗り切るためのヒントを提供せさて頂きました。そして、副 題でもある「~これからの日本酪農を支える方々へのメッセージ~」のとおり、今回は、先進的な酪農技術の発 信ではなく、酪農後継者の方々に“牛を科学”する知識を身につけていただくための一助となる基礎的な内容を 丁寧に解説して頂きました。  受講された方々へのアンケート(満足度調査)からも高 い評価と多くの反応を頂き、またセミナー会場では多く の質問が寄せられました。このセミナー特集号では、数多 く頂いた質問への回答(カテゴリー別に分類)を中心にセ ミナー内容の要約と合わせて掲載します。 ■セミナー日程と会場 2月 8日 帯広セミナー 十勝NOSAI会議室(帯広市) 2月 15日 東京セミナー 品川プリンスホテル(港区) 2月 16日 岡山セミナー 岡山国際交流センター(岡山市) 2月 21日 熊本セミナー グランメッセ熊本(上益城郡) 2月 22日 名古屋セミナー 名鉄グランドホテル(名古屋市) 2月 27日 仙台セミナー 仙台国際センター(仙台市) PTH ビタミン ビタミン ビタミン ビタミンD PTH Caの恒常性を維持するメカニズム 尿 尿 尿 尿 骨 骨 骨 骨 小腸 小腸小腸 小腸 血液中Ca PTH: PTH: PTH: PTH:副甲状腺副甲状腺副甲状腺ホルモン副甲状腺ホルモンホルモンホルモン(Ca(Ca(Ca(Ca代謝代謝を代謝代謝ををを調整調整調整)調整))) 15 乳熱 乳熱 乳熱 乳熱・・低・・低低低CaCaCaCa血症血症の血症血症のののメカニズムメカニズムメカニズムメカニズム X X X X X X X X X X X X X XX X ビタミン ビタミン ビタミン ビタミンD PTH PTH 尿尿尿尿 骨 骨 骨 骨 小腸 小腸小腸 小腸 血液中Ca 17 スライド15 スライド17 受胎率と乳量 1950 1950 1950 1950 1970197019701970 1990199019901990 2010201020102010 60 60 60 60%%%% 50 50 50 50%%%% 40 40 40 40%%%% 10000 10000 10000 10000 kgkgkgkg 8000 8000 8000 8000 kgkgkgkg 6000 6000 6000 6000 kgkgkgkg 4000 4000 4000 4000 kgkgkgkg 3 乳量 乳量 乳量 乳量 受胎率 受胎率 受胎率 受胎率 受胎率 受胎率 受胎率 受胎率 年代 年代 年代 年代 乳 量 乳量が繁殖に与える影響 (Lopez et al., 2004) 低泌乳牛 高泌乳牛 平均乳量(kg/日) 33.5 46.4 データ収集時の泌乳日数(日) 95.8 90.9 発情の持続時間(時間) 10.9.2 1日の乗駕許容(回数) 8.8.3 1日の乗駕許容(秒) 28.2 21.7 4 スライド3 スライド4

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吸収を高めようと働く。このよう にして、血液中の Ca 濃度を一定 レベルに保つよう作用されるわけ である【スライド 15】。ところが、 分娩直後急激に泌乳量が増加した 場合、PHT の作用が遅れ、骨・腎 臓とのコミュニティー不足が一時 的に起こることがある【スライド 17】。乳牛は、骨からカルシウムを 再吸収できるため、本来カルシウ ム不足となることはない。乳熱に 陥る本当の原因は、“カルシウム 動員反応”の若干の遅れにある。  カルシウム不足への迅速な対応 として、以下 2 つの基本的なアプ ローチがある。 ◦乾乳期間中のカルシウム給 与量を制限し、Ca に対して ハングリー(不足した)状態 を作ることでいつでも骨か らの Ca 動員が行われるよ うに準備する。 ◦骨には PTH を認識する受 容体があり、その受容体が PTH に反応しやすいように 血液の pH を少し下げた状 態(軽い代謝性アシドーシ ス状態)にする。そのために は、「Na、K の摂取量の制限」 「Cl などの陰イオン塩を給 与」する方法がある。  まず、分娩前の Ca 給与量を制 限するアプローチの注意点は、Ca の要求量以下の給与量に抑える必 要があり、30g /日以下を目標と している。これは、Ca を添加しな くても、粗飼料が飽食状態であれ ば、満たされてしまう値であり、 コントールするのは極めて難し い。また、乾乳期前期・後期で群管 理を行う場合は、全乾乳期間に亘 る Ca 制限はリスクが大きい。  続いて、陰イオン塩添加物を利 用するアプローチの注意点は、半 強制的に血液の pH を下げるた め、牛に代謝上の違和感を与える 事にもなり、DMI を低めるリスク がある。また、尿 pH を定期的に モニタリングしながら、その反応 を正しくチェックする必要があ る。ついては、低 DCAD の際には、 Ca の新陳代謝が良くなっている ため、尿への Ca 排泄が増え、本当 の Ca 不足にならないよう Ca 給 与量を増やす必要がある(1.1 〜 1.5%)。  【スライド 22】は、全酪連と共同 研究を行った「マイルド低 DCAD チモシー」の給与効果を調査した 結果である。低 DCAD チモシー を給与した牛群の分娩直後の血中 Ca 濃度は、下がらずに維持した 値で推移した。これらから、粗飼 料を使った低カルシウム血症の予 防は、技術的に可能であることが 証明された。  低カルシウム血症を予防する方 法としての基本は、①カリ含量の 低い粗飼料を給与する②陰イオン 塩添加を利用しない場合、カルシ ウムの摂取量を制限する③必要に 応じて、陰イオン塩添加物を利用 して、DCAD 値を下げ、Ca を添加 する。 ●ルーメン・アシドーシス  ルーメン・アシドーシスには、2 種類のタイプのアシドーシスがあ る。一つは、分娩移行期に代謝障 害となり、乳酸を多く発生する“急 性アシドーシス”である。これは、 避けなければならないアシドーシ スである。これに対してもう一つ は、“潜在性のアシドーシス”であ り、上手く付き合っていかなけれ ばならない乳牛の「職業病」のよ うなものである。その理由は、高 泌乳牛のエネルギー要求量を充足 させるためには、多くの穀類を給 与しなければならなく、アシドー シスと紙一重のところで上手にマ ネジメントすることが求められる からである。  まず、急性(乳酸)アシドーシス のメカニズムを解説する。通常の ルーメン発酵では、揮発生脂肪酸 (以下、VFA)が生成されて吸収さ れるが、急激な発酵が起こった場 合、乳酸が生成される。この乳酸 は pH4 まで下げようとする、やや 酸度の高い酸である。しかし、こ

全酪連酪農セミナー2012

特 集

マイルド低DCADチモシーの給与効果 高DCAD 低DCAD Na(%) <0.01 <0.01 K(%) 1.28 1.48 S(%) 0.12 0.11 Cl(%) 0.15 1.07 DCAD(meq/100g DM) 21.7 1.36 22 スライド22 帯広セミナー

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の乳酸を VFA に変えるバクテリ アも存在し、通常のルーメン状態 であれば、乳酸の影響を受けない まま利用される【スライド 29】。  ところが、乾乳期のルーメンは、 穀類の摂取量が少ない状態なの で、乳酸が生成されることは少な く、乳酸を処理するバクテリアも ほぼ消滅している。しかし、分娩 後、発酵度の高い飼料が急激に多 給された際、乳酸の生成と、乳酸 を消費するバクテリアの再増殖の 間に時間差が生じる。この間に乳 酸が溜まっていく状態となる【ス ライド 31】。急性ルーメン・アシ ドーシスを予防する方法は、急激 な飼料給与内容の変化を避ける 事につきると思われる。そして、 発酵度の高い TMR を給与する前 に、ルーメン微生物とルーメン壁 に必要かつ十分な馴致期間を与え ることが大切である。 ●脂肪肝・ケトーシス  はじめに、肝臓がどのような働 きをする臓器なのかを確認した い。乳牛の体内では、その全血流 の 1 / 4 が肝臓を常に通過する。 消化管に流れた血液は、心臓に戻 る前にセキュリティーチェック機 能として働く肝臓を通過した後、 他の器官に運ばれる。脂肪肝・ケ トーシスとは、エネルギーバラン スが悪い牛は、体脂肪を分解して、 血液中に遊離脂肪酸(NEFA)を 放出する。この NEFA は、肝臓で 代謝されてエネルギー源となるル ートと、リポ蛋白(VLDL)に変え て、他の体器官が利用できるよう にするルートに別れる【スライド 39】。この 2 つのルートで上手く利 用されていれば良いのだが、処理 能力以上に体脂肪の分解が起きる と、脂肪が蓄積するようになる。こ れが、“脂肪肝”である。脂肪肝とな った牛の 2 次災害として、以下の 障害が発生する。 ◦プロピオン酸から血糖を作 る能力が低下する ◦アンモニアを解毒する能力 が低下する ◦免疫機能が低下する ◦健康一般に関する問題が増 える ◦生産性が低下する  もう一つのルートとして、処理 しきれなかった脂肪は、血液中に ケトン体として運ばれる。これが、 “ケトーシス”である。脂肪を燃焼 させるには、炭水化物系の燃料(血 糖・プロピオン酸)が必要であり、 炭水化物が不足すると、不完全燃 焼しケトン体となる。ケトーシス の症状には、DMI の低下・エネル ギーバランスの悪化があり、更に は、蹄葉炎のリスクを高め、受胎 率を低下させる。  ケトーシスには、体脂肪の「不 完全燃焼」が原因となって、脂肪 が多すぎる場合の「産褥ケトーシ ス」と炭水化物が足りない場合の 「泌乳ケトーシス」の 2 種類に分 かれる。泌乳ケトーシスへの対応 は、炭水化物系のエネルギーを補

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乳酸アシドーシスのメカニズム 発酵 VFA 乳酸 乳酸 乳酸 乳酸 通常のルーメン発酵 S. bovis Lactobacillus M. elsdenii S. Bovis 29 乳酸アシドーシスのメカニズム 発酵 VFA 乳酸 乳酸 乳酸 乳酸 S. bovis Lactobacillus M. elsdenii S. bovis 急に濃厚飼料を多給すると・・・

X

乳酸 乳酸 乳酸 乳酸をををを消費消費消費消費するするするする微生物微生物微生物微生物がががが 再増殖 再増殖 再増殖 再増殖するにはするにはするにはするには数日必要数日必要数日必要数日必要 31 ケトーシス 体脂肪 肝臓 遊離脂肪酸(NEFA) 脂肪が蓄積 ケトン体になる 代謝され、エネ ルギー源になる 脂肪肝 ケトーシスケトーシスケトーシスケトーシス VLDLになり、他 の体器官が利用 39 スライド29 スライド31 スライド39 小谷購買部長挨拶(東京セミナー)

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充すれば解決するため、比較的容 易である。しかし、産褥ケトーシ スは、栄養管理で対応する事は困 難であり、ボディーコンディショ ン(以下、BCS)の管理(牛を太ら せない)が最大の予防となる。そ れでは、過肥牛の BCS を調整す るのはいつが良いのだろうか ? 泌 乳後期では、分解された体脂肪は、 最終的に乳脂肪の形で体の外へ出 ていく。しかし、乾乳期では、分解 された体脂肪は、行き場を失って しまい、さらに肝臓に負担がかか り(乾乳中に脂肪肝を作ってし まう)、事態を悪化させることに なる。  ケトーシスを予防する方法を纏 めると以下のとおりである。 ①牛を太らせない(これに尽 きる) ②穀類からのエネルギーをし っかり給与する ③ VLDL(リポ蛋白)として肝 臓の外へ出す  “ コ リ ン( ビ タ ミ ン B 群 )”が VLDL の生成に必要とされている ため、コリンを添加剤として給与 することは、一つの予防法として 注目されている。

[第 2 部]

泌乳前期の栄養管理

 泌乳曲線に対してエネルギー 摂取量のピークが遅れる時期が、 エネルギーバランスが負となり、 BCS が低下する時期である。それ に対して、泌乳中・後期は、エネル ギー摂取量がエネルギー要求量を 上回り BCS が回復する時期とな る【スライド 52】。一般的に泌乳開 始 100 日を超えたあたりの時期に 人工授精を行うわけだが、分娩後 数週間の負のエネルギーバランス の時期がその後の繁殖成績に大き なインパクトを与える。BCS の低 下が 0.5 以下の場合は、初回人工 授精での受胎率が 65% と高いデ ータである。また、BCS の低下が 1.0 以上の場合の初回人工授精で の受胎率は 17% と大変低いデー タとなっている【スライド 51】。  泌乳初期の負のエネルギーバラ ンスを改善するには、エネルギー 摂取量を上げることが重要となる が、「DMI を高める」方法と「エネ ルギー濃度を高める」方法の 2 つ のアプローチがある。 ●油脂サプリメントの  上手な使い方  エネルギー濃度を高める方法と して、「油脂サプリメントの利用」 がある。油脂サプリメントを使用 した場合の受胎率への影響を報告 した研究には、賛否両論がある。  まず、油脂の給与量は、乾物中 5 〜 6% が経験上の上限値である。 DMI が 20kg の場合の油脂給与 量が 1.0 〜 1.2kg /日となる。分 娩後の BCS3.0 から 2.5 になった (24 日間)場合、1.0kg /日の体脂 肪動員が予測される(NRC)。分娩 直後の乳牛は、すでに血液が“油 ぎっている”ため、さらに油脂給 与をすることは、むしろ逆効果で あり、油脂給与による BCS 低下 を防ぐことはできない。油脂給与 には、その中身よりも給与タイミ ングが重要である。油脂給与の乳 量への影響を表した研究【スライ ド 66】では、油脂サプリメントを 添加した試験区では、泌乳ピーク

全酪連酪農セミナー2012

特 集

エネルギー・バランス 0 100 200 300 泌乳曲線 泌乳曲線 泌乳曲線 泌乳曲線 エネルギー エネルギー エネルギー エネルギー摂取量摂取量摂取量摂取量 BCS BCS BCS BCS低下低下低下低下 BCSBCSBCSBCS回復回復回復回復 ( (( (人工授精人工授精人工授精人工授精)))) 泌乳日数 泌乳日数 泌乳日数 泌乳日数 52 スライド52 分娩後のエネルギーバランスが繁殖に与える影響 BCS BCS BCS BCS低下低下低下低下 BCSBCSBCSBCS低下低下低下低下 BCSBCSBCSBCS低下低下低下低下 0 0 0 0....555以下5以下以下以下 0000....5555--1--111....0000 1....0111000以上以上以上以上 初回排卵 初回排卵 初回排卵 初回排卵までにまでにまでにまでに要要要要したしたしたした日数日数日数日数 27272727 31313131 42424242 初回発情 初回発情 初回発情 初回発情までにまでにまでにまでに要要要要したしたしたした日数日数日数日数 48484848 41414141 62626262 初回人工授精 初回人工授精 初回人工授精 初回人工授精までのまでのまでのまでの日数日数日数日数 68686868 67676767 79797979 初回人工授精 初回人工授精 初回人工授精 初回人工授精でのでのでのでの受胎率受胎率受胎率受胎率((((%%%%)))) 65656565 53535353 17171717

(Bulter & Smith, 1989)

51

スライド51

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を迎えるまでの補正乳量に変化は なかったが、泌乳ピークを迎えた 後は、補正乳量に大きな影響があ った。油脂からのエネルギーは、 停滞している状態を底上げするの ではなく、動いている状態を加速 させるためのイメージで捉えて いる。  近年、油脂サプリメントは、単 なるエネルギー源としてではな く、脂肪酸の機能性を考える研究 へ向いている。オレイン酸・ステ アリン酸は体脂肪に含まれる脂肪 酸であるが、リノール酸・リノレ イン酸は、繁殖機能に必要な必須 脂肪酸として注目されている。例 えば、リノール酸は PGF2αの前駆 物質となる“アラキドニン酸”に 変化し、1)卵胞の発育と黄体機能 にプラスの影響を与える、2)卵巣 中の IGF-1(栄養と繁殖を繋げる ホルモン)濃度を高める、3)肝臓 でのエストロゲンとプロゲステロ ンの分解を抑制する、の機能があ る。このリノール酸は、大豆・ひま わりの種に多く含まれている。  “オメガ 3 脂肪酸”と呼ばれて いる脂肪酸として、リノレイン 酸、それから魚油に多く含まれる EPA・DHA がある。これらの働き は、PGF22α生成の抑制により早期 胚の死滅を防ぐ効果があると言わ れている。受胎率の実態を観察す る上で、受胎はしているが、早期 胚の段階で死滅していることが多 いことが、受胎率が低下している ことの大きな原因とされている。 ●デンプンを使いこなす栄養管理  DMI を高めてエネルギー摂取 量を上げるには、「デンプンを使 いこなす栄養管理」が大切にな る。まず、濃厚飼料(デンプン)の 給与量を上げるメリットを挙げて みる。 1)飼料設計のエネルギー濃度 を高める 2)微生物タンパクの合成量 を高める 3)エネルギー・バランスを良 くする 4)泌 乳 前 期 の BCS 低 下 を 最小限に抑える 5)受胎率を高める 6)乳量を高める と多くのメリットが考えられる が、全ての酪農家が実行されない のは、以下のデメリットも考えら れるからである。 1)飼料コストが上がる ??? 2)牛をダメにする ??? ◦発酵が早く、アシドーシ スのリスクを高める ◦脂肪率低下のリスクを高 める ◦蹄葉炎のリスクを高める ◦肝膿瘍のリスクを高める  飼料コストについては、上記メ リットを受けられるのであれば、 少々の飼料コスト UP は、酪農家 にとって本当の意味でのデメリッ トではないと思われる。やはり、 牛を“ダメ”にするリスクを第一 に考えてしまうであろう。  濃厚飼料の給与量を上げること は、ある時点まではエネルギーバ ランスが改善し、乳量 UP・繁殖成 績向上へと良いことが期待できる のだが、ある一線を超えると、ア シドーシス・蹄葉炎・肝臓への負 担と様々な障害が発生することに なる。そこで、「アシドーシスのリ スクを高めることなく、エネルギ ー摂取量を増やすことができるか ?」といった飼料設計上のジレン マとの闘いになる。  ルーメンでの発酵量と穀類の給 与量はイコールではない。発酵量 は、穀類の種類や加工の仕方によ って大きく異なる【スライド 81】。

Special

○ ○ ○ ○油脂油脂油脂油脂サプリメントサプリメントサプリメントサプリメントなしなしなしなし ( (( (油脂油脂油脂油脂3333.4444%)%)%)%) ● ● ● ●油脂油脂油脂油脂サプリメントサプリメントサプリメントサプリメントありありありあり ( (( (油脂油脂油脂油脂7777.0000%)%)%)%) (Jerred et al., 1990) 油脂給与の乳量への影響 泌乳週数 66 スライド66 岡山セミナー

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下写真のコーンと大麦の顕微鏡写 真を見比べると、デンプンを囲ん でいる蛋白の壁が、大麦の方が明 らかに脆い構造になっており、微 生物が容易に壊しやすいことが想 像できる。同様に、圧ペン加工前 と後とでも微生物にとっての発酵 度が大きく違う【スライド 83】。し たがって、ルーメンでの発酵度速 度の遅いデンプンを取り入れる こと(バイパス・デンプンに給与 技術)でトータルのデンプン摂取 量を上げることにより、アシドー シスのリスクを高めずにエネルギ ー摂取量を高めることが期待さ れる。  それでは、このバイパス・デン プンの給与技術は、どのようなケ ースでプラスの効果が得られるの であろうか ? DMI にムラがあっ たり、乳脂率が低下していたり、 蹄葉炎の牛が多かったりとルーメ ン発酵が過剰でアシドーシス状態 が疑われるが、エネルギー摂取量 や乳量を低くしたくないケース。 それから、ルーメン発酵が最大で バランスが取れているが、穀類の 給与量をさらに高めたい。しかし、 アシドーシスのリスクを最小限に 留めたいといったケース。これら のケースでは、バイパス・デンプ ンの給与技術のアプローチが有効 であると考える。  デンプンを使いこなす栄養管理 は、穀類の給与量とルーメンでの 発酵量は同じではないため、ルー メンでの発酵速度が異なる穀類を 2 種類使うことで、ルーメン発酵 の調整をフレキシブルに行うこと をお薦めしたい。  【スライド 80】は、牛の行動と ルーメン pH の関係を示したグラ フである。採食後 pH が下がり、 反芻して pH が上がる。これは、 唾液の中に重曹成分が含まれる ためである。NDF 源が咀嚼時間 に与える影響も異なってくる。ま た、粗飼料の切断長も大きく影響 する。  したがって、ルーメン pH を決 める要因として、ルーメン発酵と 発酵酸の吸収並びに唾液による中 和のバランスが大切となる。  デンプン濃度を高めてもアシド ーシスにしないためには・・・ 穀類のタイプ・加工方法を 考える ◦ルーメンでの発酵速度が 遅い穀類を利用する ◦ルーメンでの発酵速度が 遅い加工方法を利用する ◦ルーメンでの消化されな かったデンプンは小腸で も消化される 粗飼料センイの十分な給与 ◦ルーメンでの発酵量に見 合った粗飼料センイを給 与する ◦唾液の分泌を促進して、 発酵量を中和する ◦中和が十分であれば、ア シドーシスにならない        

[第 3 部]

トラブルを乗り切る栄養管理

●クロース・アップ期の栄養管理  乾乳期の管理については、乾乳 前期・後期に分けて栄養管理する ことが、ルーメンにも配慮し、肝 臓にも配慮した管理としてスタン ダードな考え方となっている。し かし、最近の北米の研究者の中に は、クロースアップ期の栄養管理 は必要なく、乾乳期を通して栄養 濃度の低い餌で管理した方が良い のではないか ? との概念が主流に なっている。ルーメン派と肝臓派 の研究者によって、どこの臓器を

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特 集

デンプンの発酵速度(%/時) Herrera-Saldana et al., 1990 オーツ オーツオーツ オーツ 小麦小麦小麦小麦 大麦大麦大麦大麦 コーンコーンコーンコーン マイロマイロマイロマイロ 81 ( (( (エンエンエンエン麦麦麦麦)))) 加工前の大麦 蒸気圧ペン後の大麦 83 電顕像100倍 ルーメンpHの変化 (Allen, 1997) 80 残滓量 残滓量 残滓量 残滓量(kg)(kg)(kg)(kg) ルーメン ルーメン ルーメン ルーメンpHpHpHpH 残滓量 残滓量 残滓量 残滓量 咀嚼 咀嚼咀嚼 咀嚼 給餌後 給餌後 給餌後 給餌後ののの時間の時間時間時間のののの経過経過(経過経過(((時間時間時間時間)))) 全酪連購買部1 スライド81 スライド83 スライド80 コーン 大麦

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大事にするかによって、考え方が 異なってくる。  乾乳牛のエネルギー過剰給与へ の視点から行った様々な研究より、 分娩後のマイナスの影響について 以下の内容を結論付けている。 ◦分娩後の血中 NEFA、ケト ン体濃度が高くなる ◦分娩後の四変とケトーシス が増える ◦分娩後のエネルギー摂取量 が減る ◦分娩後の BCS ロスが増える ◦乳量へのプラスの効果はない ◦乳脂率が高くなる ◦空胎日数が長くなる  それでは、エネルギーの過剰給 与を避けるための給与管理とし て、エネルギー濃度の高い TMR を制限給与する方法が考えられる が、これは分離給与による飼養管 理であれば、コントロール可能だ が、グループ管理での給与では困 難である。したがって、エネルギ ー濃度の低い TMR の飽食がより 現実的な給与管理となる。  エネルギーの過剰給与を避ける ことは、「エネルギーの制限給与 ではない」ことを留意すべきであ る。このことを裏付けしたグラフ を解説する【スライド 106・107】。 ヒートストレスを受けた牛に比 べ、暑熱対策を受けた牛の方が、 乾乳期の乾物摂取量は高くなるわ けだが、これが、エネルギーの適 正給与なのか、それとも過剰給与 なのかを検討すると、暑熱対策を 受けた牛の方が明らかに分娩後の 生産性が上がったことから、暑熱 対策を受けた牛は分娩前の適正給 与となり、ヒートストレスを受け た牛は、分娩前の制限給与となっ たと言える。 ●ヒートストレス下での栄養管理  牛の体温を上げる要因には、気 温や湿度の上昇に加え「ルーメン 発酵」「栄養分の代謝(乳生産・運 動)」の影響が大きい。体の表面へ の血流量を増やしたり、汗をかい たり(気化熱を利用)、浅速呼吸(パ ンティング)をして体温を一定に 保とうとするが、それ以上に気温・ 湿度が高くなると、体内の熱が放 散しにくくなることによってヒー トストレスを受けることとなる。  ヒートストレスを受けた乳牛の 受胎率が低くなる原因は、受精〜 AI 後 3 日間の卵が熱に弱いこと と、代謝熱放出による体温調節が 困難(泌乳牛は乾物摂取量が高く、 ルーメン発酵熱を多く産生)なこ とによる。牛は生産性を維持して 受胎率を高めるためには、きちん とエネルギーを摂取しないといけ ないのだが、エネルギーの摂取が ヒートストレスを高めるというジ レンマに苦しむことになる。ヒー トストレス対策には、発酵熱を抑 えるやり方と体熱を外に放出する やり方の二通りの方法がある。  カウ・コウンフォートの充実が 最も重要であるが、ルーメンでの 発酵熱を抑えるための工夫(飼料 設計)も必要である。中でも、油脂 はルーメン内で発酵しないため、 炭水化物よりも油脂を使った方が ヒートストレス対策に効果がある と言えるが、実際の研究データに は、どれ程体温を下げたかを裏付 けする報告はない。  また、最近の興味深い知見では、 「ナイアシン」の添加によって、皮 膚への血流量を増やし体温を下げ る効果が期待されている。カルフ ォルニアで行われた試験(バイパ スナイアシン 19g /日、7g が小腸 へ)では、早朝の呼吸数が減少し、 体温が低下したとの報告がある。

Special

ヒート・ストレスによる乾物摂取量低下の影響 106 分娩日を基点とした日数 ■ ■ ■ ■暑熱対策暑熱対策あり暑熱対策暑熱対策ありありあり ○ ○ ○ ○ヒートヒート・ヒートヒート・・・ストレスストレスストレスストレス (Tao et al., 2011) (((( kg / d kg / d kg / d kg / d)))) ヒート・ストレスによる乾物摂取量低下の影響 107 泌乳週数 ■ ■ ■ ■暑熱対策暑熱対策暑熱対策暑熱対策ありありありあり ○ ○ ○ ○ヒートヒートヒートヒート・・・・ストレスストレスストレスストレス (Tao et al., 2011) (((( kg / d kg / d kg / d kg / d)))) スライド106 スライド107 仙台セミナー

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●乳脂率の低下を防ぐ栄養管理  まず、乳脂率が低下するメカニ ズムを整理する。植物性の油脂に は「不飽和脂肪酸」が多く含まれ る。この不飽和脂肪酸がルーメン 内で水素添加され、飽和脂肪酸に 変化する過程で、ルーメンでの過 剰発酵や物理的有効センイ不足に より、ルーメン内 pH が低い状態 に陥ると、中間物質である「トラ ンス脂肪酸」というものが溜まる ことになる。このトランス脂肪酸 が乳腺での乳脂肪生成を阻害する ことになる【スライド 125】。  油脂を給与する場合に考慮すべ きことは、①飼料設計中の上限値 5 〜 6% ②脂肪酸のタイプ(不飽 和脂肪酸 or 飽和脂肪酸) ③物理 性(バイパス油脂 or 綿実 vs. 加熱 大豆)である。  油脂給与は、乳脂率にも良い、 繁殖にも良い、DMI も低下させな いなどと全てに対して同時にプラ スの効果を示すものではないの で、それぞれの脂肪酸の特徴を理 解して、農場ごとの弱点を補うよ うにケース バイ ケースの上手な 使い方が望まれる。  重曹などのバッファー添加が乳 脂率に与える効果も重要である。 次のスライドは、粗飼料 60% と粗 飼料 20% の試験区にそれぞれバ ッファーを添加した場合としない 場合の比較をした研究データであ る。粗飼料の少ない設計にバッフ ァーを添加すると、ルーメン pH の低下並びにトランス脂肪酸の生 成が抑制され、乳脂率の低下が抑 制された報告である。乳脂率低下 を防ぐ対策として、基本はどれだ け反芻させるかが大事な管理とな るが、ヒートストレスを受ける時 期で粗飼料の摂取量に制限を受け る時は、安全性(保険的な意味合 い)を鑑みて、バッファーを TMR に添加することは、ルーメン pH が極端に下がらないようにするア プローチとして大切である。   ま た、ル ー メ ン pH を 考 え る 時に意識したいことは、「3 つの TMR」である。 ◦コンピュータ上で設計され た(机上の)TMR ◦実際に給与される TMR_ 粗 飼 料 DM と NDF の 変 化、 計量ミス . コミュニケーシ ョン不足 ◦実際に牛が食べる TMR_ ソ ーティング、スラッグフィ ーディング  TMR のソーティング(選り食 い)も乳脂率の低下を招く大きな 要因となるため、十分なパーティ クルサイズ考慮した飼料給与技術 が必要とされる。【スライド 129】 は、TMR パーティクルサイズが 乳脂率に与える影響を示したデー タである。一番反芻を刺激するは ずの TMR(粗飼料が長い)の乳脂 率が低くなっている。これは、濃 厚飼料の選び食いが起こりやす く、実際に摂取したセンイは少な くなってしまったことが原因であ る。さらに、水分含量が 40-50% 程 度になるように TMR へ加水する だけで選り食いを減らせることも

全酪連酪農セミナー2012

特 集

不飽和脂肪酸 飽和脂肪酸 トランス脂肪酸 乳脂率 乳脂率 乳脂率 乳脂率のののの 低下 低下 低下 低下 低ルーメンpH • ルーメンでの過剰発酵 • 物理的有効センイの不足 125 バッファー添加が乳脂率に与える効果 粗飼料 粗飼料 粗飼料 粗飼料606060%60%%% 粗飼料25粗飼料粗飼料粗飼料252525%%%% 対照区 対照区 対照区 対照区 バッファーバッファーバッファーバッファー 対照区対照区対照区対照区 バッファーバッファーバッファーバッファー ルーメン ルーメン ルーメン ルーメンpHpHpHpH 6666.13131313 6666.15151515 5555.83838383 6666.02020202 トランス トランス トランス トランス脂肪酸脂肪酸脂肪酸脂肪酸、g、g、g、g/日日日日 61616161 57575757 120120120120 66666666 乳脂率 乳脂率 乳脂率 乳脂率(%)(%)(%)(%) 4444.09090909 4444.22222222 3333.42424242 3333.91919191 (Kalscheur et al., 1997) バッファー バッファー バッファー バッファー添加添加添加(TMR添加(TMR(TMR(TMR中中中中ののDMののDMDMDM比比比比)))) 重曹 重曹 重曹 重曹 1111.5555%%%% 酸化 酸化 酸化 酸化マグネシウムマグネシウムマグネシウムマグネシウム 0000.5555%%%% スライド125 ルーメン内pHを安定化させ、 飼料摂取量の維持、増大を図ることを目的に、 ルーメンpH調整飼料を給与しましょう! 牛用混合飼料

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注目すべきアプローチである。  さらに、最近では、デンプンの 代わりとなる“糖”が注目されて いる。糖はデンプンに比べ、ルー メンでの発酵速度が高いにも関わ らず、ルーメン pH を低下させに くい効果を持っている。この理由 は、糖とデンプンでは、発酵パタ ーンが違うからだと考えられてい る。デンプン給与で増えるプロピ オン酸は、ブドウ糖一つに対して 酸を 2 つ生成するが、糖給与で増 える酪酸は、ブドウ糖一つに対し て、酸を一つしか作らないからで ある。したがって、乳脂率が下が りやすい夏季は、消化率も高く、 ルーメン pH を下げにくい「糖」 は、大変利用価値のある炭水化物 であると思う。そして、糖含量の 高い飼料原料として考えられるも のは、“良質の乾草・糖蜜・シトラ スパルプ・ホエー”などがある。農 場ごとの粗飼料基盤によって、 糖給与の余地が変わるかもしれ ない。 ●「粗飼料の質」を定義する  粗飼料に対する考え方をコメ ントしたい。良い粗飼料とはどう いうものかを問われた場合、それ ぞれの飼料設計のアプローチに よって変わってくると思われる。 【スライド 138】乳量 20kg で飼料 設計をする場合、低い NDF% で も高い NDF% でも、かなり広い 幅の中で対応可能であるが、乳量 30kg → 40kg → 50kg を維持しよ うとすると、対応可能な NDF 含 量の範囲がどんどん狭くなる。そ して、飼料設計をする場合、2 つの アプローチがあり、このグラフの 左側で合わせるか、右側で合わせ るかによって粗飼料に求めるも のが変わってくる。例えば、多く の粗飼料で設計しようとする場 合、粗飼料からのエネルギー供給 に偏ることになるため、粗飼料に 対して高い“消化性”を求めるこ とになる。それに対して、アシド ーシスぎりぎりのラインで設計し ようとする場合、エネルギーは穀 類からの供給で十分に補っている ため、粗飼料に求めるものは、消 化性よりもルーメン発酵を安定さ せるための「物理性」が重要とな る。また、クロース・アップ牛に必 要な粗飼料の質を考えるのであれ ば、ミネラル組成が重要な要素と なる。 粗飼料NDFの質 乳量 乳量 乳量 乳量 25% 60% 飼料設計中 飼料設計中 飼料設計中 飼料設計中のののNDFのNDFNDFNDF含量含量含量含量 乳量 乳量 乳量 乳量20 kg/d 粗飼料粗飼料粗飼料粗飼料NDFNDFNDFNDFのののの消化率消化率消化率消化率 アシドーシス アシドーシス アシドーシス アシドーシス の の の のリスクリスクリスクリスク 乳量 乳量 乳量 乳量30 kg/d 乳量 乳量 乳量 乳量40 kg/d 乳量 乳量 乳量 乳量50 kg/d 粗飼料 粗飼料 粗飼料 粗飼料NDFNDFNDFNDF含量含量含量含量 粗飼料 粗飼料 粗飼料 粗飼料ののののDMDMDMDM分析分析分析分析 粗飼料 粗飼料 粗飼料 粗飼料ののののパーティクルサイズパーティクルサイズパーティクルサイズパーティクルサイズ 138 スライド138 熊本セミナー TMRのパーティクル・サイズが乳脂率に与える効果 短 短-中 中-長 長 パーティクルサイズ(PSPS) > 19.0 mm 2.9 6.7 11.1 15.5 8.0 – 19.0 mm 57.5 55.7 53.2 50.3 1.18 – 8.0 mm 35.3 33.8 31.9 30.3 < 1.18 mm 4.2 4.0 3.9 3.9 乳生産 乳量(kg/日) 41.3 42.3 41.5 41.1 乳脂率 乳脂率 乳脂率 乳脂率((((%%%%)))) 3.7 3.9 4.0 3.7 (Kononoff et al., 2003) 129 スライド129

Special

参照

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