• 検索結果がありません。

平成15年度 技術基準等の整備と民間規格調査に関する報告書

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "平成15年度 技術基準等の整備と民間規格調査に関する報告書"

Copied!
65
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)
(2)

本報告書は、独立行政法人 原子力安全基盤機構が実施した事業 の成果をとりまとめたものです。

(3)

要 約

原子炉施設等の安全性の確認及び確保に係る法令、規格及び基準類について、今後我が国にお いて必要となる基準等の整備に貢献できるよう、米国原子力規制委員会(NRC)における民間規格 適用に際してのプロセスや米国機械学会(ASME)コード・ケースへの対応及び米国機械学会運 転・補修(ASME OM)規格の内容の把握・整理について調査を行った。主な結果は以下の通りである。 (1) NRC は、ASME の各種委員会及びワーキングに積極的に参加しており、コード・ケース がASME により承認された後、NRC の原子力規制研究局及び原子炉規制局のスタッフによ る検討を行っている。この検討には、材料工学、機械工学、化学工学、システム安全、確率 論的安全解析等の広範囲の技術スタッフが参加している。また、重要なコード・ケースの場 合には、国立研究所等の外部のスタッフが参加する場合もある。 但し、コード・ケース検討の判断基準が確立されておらず、ASME での承認から NRC に よる容認まで約6 年を費やしている場合もある。NRC は、産業界からの要望に答えて ASME 規格及びコード・ケースを 10CFR50.55a「規格及び基準」に取込む際の検討期間を短縮し た新しい適用プロセスを運用している。 (2) ASME OM 規格は、原子炉の安全停止、安全停止状態の維持、あるいは事故影響の緩和に おける特定の機能を遂行するために必要となる、ポンプ、弁、圧力逃し装置、及び動的レス ト レ イ ン ト ( ス ナ バ ) の 供 用 前 及 び 供 用 期 間 中 試 験 を 対 象 と し て お り 、4 つ の 章 (Subsection―ISTA、ISTB、ISTC 及び ISTD)とそれを補足する付録(強制力のある 2 件と 強制力のない 8 件)で構成されている(スナバについては供用期間中検査も含まれる)。 また、2003 年 6 月時点で規格の代替であるコード・ケースが 14 件作成されており、更に、 「ASME/ANSI OM-1987, Part1「圧力逃し装置の供用中パフォーマンス試験に関する要件」 の周辺温度及び試験媒体要件に関する代替規則」及び「スナバのIST 間隔延長に関する要件」 の2 件を追加することが検討されている。現在、既存の OM 規格及び安全上の重要度が低い ポンプ及び弁の取扱いに関するリスク情報に基づく供用期間中試験規格を、ASME OM Code ISTE(ドラフト)として統合する作業を進めている。

(4)

平成 15 年度技術基準等の整備と民間規格に関する調査

目 次 1.序論 --- 1-1 1.1 目的 --- 1-1 1.2 実施内容 --- 1-1 1.2.1 NRC における ASME 規格適用に際してのプロセス等の調査--- 1-1 1.2.2 ASME OM-2001 規格(運転・補修)に関する調査--- 1-1 2. NRC における ASME 規格適用に際してのプロセス等の調査--- 2-1 2.1 NRC における ASME コード・ケース適用に際しての一般的なプロセス --- 2-1 2.2 NRC による ASME 規格及びコード・ケースの容認の効率化--- 2-3 2.3 選定した 5 件のコード・ケースの ASME における審議プロセス、NRC の容認状 況、事業者での適用状況 --- 2-3 2.3.1 N-504-2「クラス 1、2 及び 3 のオーステナイト鋼配管の修繕に関する代 替要件」 --- 2-5 2.3.2 N-516-2「水中溶接」 --- 2-5 2.3.3 N-577-1「クラス 1、2 及び 3 の配管に関するリスク情報に基づく手法」 - 2-6 2.3.4 N-20-4「クラス 1 の SB-163 の補足要件を満足する SB-163 の冷間加工 USN N08800 または SB-163 の UMS N06600、N06690 及び N08800 の適用」--- 2-6 2.3.5 N565「クラス 1 容器に対するノズル接続の代替手法」 --- 2-7 2.4 今後の NRC による ASME 規格あるいはコード・ケースの容認の動向 --- 2-7 3. ASME OM-2001 規格(運転・補修)に関する調査 --- 3-1 3.1 ASME OM 規格(運転・補修)の概要 --- 3-1 3.2 ASME Section XI と OM 規格の住み分け --- 3-3 3.3 ASME OM 規格の構成 --- 3-3 3.3.1 Subsection 及び付録の概要 --- 3-3 3.3.2 ASME OM コード・ケース --- 3-6 3.4 NRC の容認状況 --- 3-6

(5)

3.5 ASME OM 規格の改訂動向及び今後の課題 --- 3-7 3.5.1 ASME OM 規格の開発状況 --- 3-8 3.5.2 ASME OM コード・ケースの開発状況 --- 3-9 3.5.3 実際の事象を受けて作成された ASME OM コード・ケース --- 3-12 3.6 米国代表プラントでの運用状況 --- 3-13 3.6.1 IST プログラム作成ガイダンス --- 3-13 3.6.2 Oyster Creek の IST プログラム --- 3-15 3.6.3 Fort Calhoun の IST プログラム --- 3-17

4. 結論 --- 4-1 4.1 NRC における ASME 規格適用に際してのプロセス等の調査--- 4-1 4.2 ASME OM-2001 規格(運転、補修)に関する調査--- 4-2

(6)

表件名一覧

表 2.1 産業界が示した NRC による ASME コード・ケース承認迅速化のオプション -- 2-9 表 2.2 調査対象案とした ASME Code Section Ⅲ及び XI コード・ケース一覧 --- 2-10 表 2.3 ASME Section Ⅲ及びX コード・ケース調査結果概要 --- 2-12 表 2.4 N-577 の事業者での適用状況(2004 年 1 月時点)--- 2-14 表 2.5 炉容器ヘッドの暫定検査要件(EA-03-009)(2003 年 2 月 11 日付命令) ---- 2-15 表 3.1 ASME OM コードの構成(ISTE ドラフト版を含み付録は除く)--- 3-20 表 3.2 ASME OM コード・ケース一覧(2003 年 6 月時点)--- 3-21 表 3.3 10CFR50.55a に記載されている ASME OM 規格適用の際の条件 --- 3-22 表 3.4 FV 重要度及び RAW 重要度 --- 3-23 表 3.5 Davis-Besse の事象に関係して発行された NRC の規制関連文書の概要 --- 3-24 表 3.6 PWR の IST プログラムにおける典型的な系統・機器 --- 3-25 表 3.7 BWR の IST プログラムにおける典型的な系統・機器 --- 3-27

(7)

図件名一覧 図 2.1 ASME におけるコード・ケース発行プロセス --- 2-19 図 2.2 NRC における ASME コード・ケース容認プロセス --- 2-20 図 2.3 (産業界が提案した)NRC による ASME コード・ケースの承認プロセス --- 2-21 図 3.1 ASME OM コードの成立経緯 --- 3-32 図 3.2 ASME OM 組織図(2003 年 6 月時点) --- 3-33 図 3.3 ASME Code Section XI と ASME OM コードの関係 --- 3-34 図 3.4 ASME SecⅢと Sec XI/ASME OM Code の体系 --- 3-35 図 3.5 Regulatory Guide 1.174 に示されている CDF 及び LERF の許容基準 --- 3-37

(8)

略語集

ACRS Advisory Committee on Reactor Safeguard 原子炉安全諮問委員会

ANS American Nuclear Society 米国原子力学会

ASME American Society of Mechanical Engineers 米国機械学会 CDF Core Damage Frequency 炉心損傷頻度 FCA flow-assisted corrosion 流体加速腐食

IEEE Institute of Electrical and Electronics 電気・電子技術者協会 Engineers

IGSCC intergranular stress corrosion cracking 粒界応力腐食割れ

ISI Inservice Inspection 供用期間中検査

IST Inservice Testing 供用期間中試験

LERF Large Early Release Frequency 早期大規模放出頻度 MIC microbiological corrosion 微生物による腐食 NRC Nuclear Regulatory Commission 原子力規制委員会 NRR Office of Nuclear Regulation 原子炉規制局

OM Operation and Maintenance 運転及び補修

RES Office of Regulatory Research 原子力規制研究局 SDO Standard Developing Organization 規格開発会議

SG Subgroup 小委員会

Tech.Spec. Technical Specifications 技術仕様書

UFSAR Updated Final Safety Analysis Report 最終安全解析書の更新版

(9)

1.序 論 1.1 目的 原子炉施設等の安全性の確認及び確保に係る法令、規格及び基準類について、今後我が国にお いて必要となる基準等の整備に貢献できるよう、米国原子力規制委員会(NRC)における民間規 格適用に際してのプロセスや米国機械学会(ASME)コード・ケースへの対応及び米国機械学会 運転・補修(ASME OM)規格の内容の把握・整理について調査を行った。 1.2 実施内容 1.2.1 NRC における ASME 規格適用に際してのプロセス等の調査

NRC では 10CFR50.55a (Code of Federal Regulation)で ASME 規格及びアデンダを規制に取 り入れている。ASME では、規格発行後に顕在化する規格が適用できない特別の事例に関して、 コード・ケースを発行している。またNRC でもその個々のコード・ケースについて規制として 認証するかどうかの判断をRegulatory Guide を発行して明確にしている。 ASME における原子力に関する主要な規格である Section Ⅲ「原子力発電所機器の製造基準」 及びXI「原子力発電所機器の供用期間中検査基準」の中から、最近の代表的な ASME コード・ ケースを5 件選定し、それらのコード・ケースがどのよう背景で提案され、ASME 内でどのよう に審議、承認、発行されているか、またNRC がコード・ケースの ASME 内での検討にどのよう に関係し、NRC の規制にどのように取り込まれているかの状況を調査した。 1.2.2 ASME OM-2001 規格(運転・補修)に関する調査

10CFR50.55a で引用され、運転保守規制及び管理に適用されている ASME OM-2001 規格(運 転・補修)について、成立経緯、対象範囲、適用制限、容認基準、及び参照文献について整理、 把握するとともにNRC における安全規制への OM 規格及びコード・ケースの容認状況、事業者 における運用状況(PWR、BWR 各1プラント)と OM 規格の改訂動向と今後の課題(リスク情 報の取り扱い等)について調査した。また、実際のトラブルに応じたOM 規格の有無や改訂状況 も合わせて調査した。

(10)

2. NRC における ASME 規格適用に際してのプロセス等の調査 NRC における民間の規格適用に際してのプロセスについて、ASME コード・ケースを例にして 調査した。 2.1 NRC における ASME コード・ケース適用に際しての一般的なプロセス NRC は、多くの原子力に関する民間規格の作成作業を統括する規格開発機構(SDO)の委員会 に参加している。 民間規格を作成している委員会、小委員会、ワーキンググループ等に NRC スタッフが参加する 目的は、検討されている規格に対するNRC の見解を示すことである。但し、NRC スタッフが規格 の検討作業に参加することと規格が作成・発行された後に NRC がその規格を容認することとの間 に関連性はない。 2003 年 8 月 1 日時点で、NRC は、272 の米国の規格作成団体(ASME 等)の関係委員会に 135 名の職員を参加させており、ASME の Boiler and Pressure Vessel(BPV)、Section Ⅲコード、 Section XI コード及び運転・補修(OM)コードの 63 の委員会、小委員会、ワーキンググループ等 に31 名を参加させている(1 名で複数の SG や WG に参加している場合がある)。 SDO に参加した NRC スタッフは、参加者及び検討内容をまとめた報告書を作成する。この報告 書を通じて、SDO に参加していない NRC スタッフに規格の検討に関する情報が提供される。 NRC は、個々の規格が当該の機関(ASME、米国原子力学会(ANS)、電気・電子技術者協会(IEEE) 等)により承認された後、その規格の内容を評価し、NRC として容認するかの検討を開始する。 以下に、ASME のコード・ケースを例として NRC における評価及び検討プロセスについて示す。

NRC の原子力規制研究局(RES:Office of Regulatory Research)のエンジニアリング技術工学 部(DET:Division of Engineering Technology)は、ASME のコード・ケースが ASME により承 認された後、検討に参加したNRC スタッフによる投票結果も含む ASME での検討に関する履歴を まとめた報告書を作成する。この報告書は、NRC でのコード・ケースの検討に関連するスタッフ あるいは部門に配布される。 通常、ASME の BPV に関するコード・ケースの場合、以下の部門の NRC スタッフが参加する。 NRC では、ASME の BPV のコード・ケースの検討に従事するスタッフを特定している。これは、 NRC の見解に矛盾が生じないようにするためであると考えられる。なお、当該スタッフが局、部、 あるいはブランチ間を移動した場合でもコード・ケースの検討には従事することとなる。このため、 ASME の BPV のコード・ケースの検討に参加する各局、部あるいはブランチからのスタッフ数を

(11)

特定することはできない。 ◎ 原子炉規制局(NRR)

エンジニアリング部(DE:Division of Engineering)

• 材料及び化学工学ブランチ(EMCB:Materials and Chemical Engineering Branch) • 機械及び土木工学ブランチ(EMEB:Mechanical and Civil Engineering Branch) システム安全及び解析部(DSS)

• 確率論的安全解析ブランチ(SPSB)(リスク情報に基づくプロセスの評価が必要な場合) ◎ 原子力規制研究局(RES)

エンジニアリング技術部(DET:Division of Engineering Technology) • 材料工学ブランチ(MEB) • エンジニアリング研究応用ブランチ(ERAB) なお、上記NRC スタッフ以外に、国立研究所等の外部のスタッフが参加する場合もある。但し、 重要なコード・ケースの検討に限定されているようである。(図2.1 及び図 2.2) NRC は、コード・ケースを検討する際の基準(容認、条件付き容認、あるいは非容認)を確立 していない。但し、一般に、以下の検討が行われている。 • 既存の NRC の規制要件との整合性。 • コード・ケースの安全及び品質レベルとコードのレベルとの整合性(コード・ケースの大部分 はコードの代替として作成されているため)。 • 過去に認可取得者から申請され、NRC が承認した申請内容との整合性。 • リスク情報に基づいた内容の場合は、Regulatory Guide 1.174「プラント固有の認可ベースの 変更のリスク情報に基づく意志決定において確率論的リスク評価を使用するアプローチ」との 整合性。 NRC スタッフによる検討が終了すると、コード・ケースに対する見解を示した Regulatory Guide のドラフト版が作成され、NRR、RES 及び原子炉安全諮問委員会(ACRS)を通じて、パブリック コメントを求めて公表される。寄せられたコメントの処理後、コード・ケースに対する NRC の最 終的な見解がRegulatory Guide として公表されることとなる。

ASME Code Section Ⅲ及び XI のコード・ケースの NRC による容認状況は以下の通り。 • 「ASME Section Ⅲ:設計、製造及び材料に関するコード・ケースの適用性」Regulatory Guide

1.84, Revision 32(2003 年 6 月公表)(1974 年 6 月に初版が公表され、その後、70 年代は年 に3~4 回、80 年代は年に 2 回、90 年代は 2 年に 1 回の頻度で改定されている。なお、Revision

(12)

31 の公表は 1999 年である。)

• 「ASNE Section XI, Division 1:供用期間中検査に関するコード・ケースの適用性」Regulatory Guide 1.147, Revision 13, reprint(2004 年 1 月公表)(1981 年 2 月に初版が公表され、約 1 年ごとに改定されている。なお、Revision 12 の公表は 1999 年である。)

• 「使用が容認されていない ASME コード・ケース」Regulatory Guide 1.193, Revision 0(2003 年6 月公表) 2.2 NRC による ASME 規格及びコード・ケースの容認の効率化 産業界が規格あるいはコード・ケースを適用するには、個々の認可取得者が NRC に対して適用 申請を行わなければならず、かつNRC による ASME 規格及びコード・ケースの容認に要する期間 が長いため、産業界は、不必要な負担を強いていると懸念を示していた。これに対しては、NRC 委員会も同様の懸念を持っていた。 2002 年 2 月 20 日に行われた NRC とのミーティングで産業界は、「コード・ケースを取り込む迅 速承認プロセス」の提案をNRC に提出した。この提案では、NRC は適用可能なコード・ケースを Regulatory Guide にまとめるプロセスと並行して(緩和申請がなくても産業界全般を対象とした) 審査を行うことが提案された(図 2.3)。また、産業界は考えられる代替オプション(表 2.1)を示 した。 このような経緯から NRC スタッフは、規則改定手順をわずかに変更し、検討期間を短縮した新 しいASME コードの適用プロセスを 2003 年 5 月から運用を開始している。NRC による評価では、 10CFR50.55a「規格及び基準」の改定頻度(新版及び新アデンダの取込み)は、従来の 3~4 年か ら2~3 年程度に短縮されると見積もられている。 また、コード・ケースの容認を効率化するために、2003 年 7 月 8 日に 10CFR50.55a「規格及び 基準」を改定し、従来のコード・ケースの脚注での参照から本文での参照に変更し、参照する Regulatory Guide の発効日及び Revision に関する情報を追加した。今後は、Regulatory Guide の 定期的な改定後、速やかに改定したRegulatory Guide を参照するための 10CFR50.55a の改定が行 われる。

NRC は 2004 年 1 月 7 日付の官報で、ASME コードの 2001 年版、2002 年アデンダ、2003 年ア デンダを取り込む10CFR50.55a 改定案を、コメントを求めて公表した。

(13)

適用状況

ASME における審議プロセス、NRC の容認状況、事業者での適用状況を調査するため、ASME Code Section Ⅲ「原子力発電所機器の製造基準」及び XI「原子力発電所機器の供用期間中検査基 準」コード・ケースから以下の条件を考慮して10 件のコード・ケースを選定した(10 件の詳細を 表2.2 に示す)。 • Section Ⅲ及び XI の各々のコード・ケースを含める。 • NRC が容認している、条件付きで容認している、あるいは容認していないコード・ケース を含める。 • なるべく、事業者が利用を申請しているコード・ケースを含める。 • 今後の我が国の規制において参考となる可能性のあるコード・ケースを含める。 更に、上記10 件のコード・ケースから以下の条件を考慮して 5 件を選定した。 • 事業者が利用している SectionⅢのコード・ケースが少ないため、配付資料に示した全ての コード・ケースを対象に選定する(表2.2 の No.1「N-20」及び No.6「N-565」)。 • 維持規格に相当する欠陥のある配管の継続供用に関するコード・ケースを対象に選定する (表2.2 の No.3「N-504」)。 • リスク情報に関するコード・ケースを対象に選定する(表 2.2 の No.8「N-577」)。 • NRC が条件付で容認しているコード・ケースを対象に選定する(表 2.2 の No.4「516」)。 選定した5 件のコード・ケースに対する調査から以下が明らかになった。 NRC は、ASME の各種 WG 及び SG に積極的に参加しており、各委員が投票権を持ち、各 コード・ケースの提案から審議、承認に至るまで参加している。 ASME での承認から NRC による容認の決定まで、早いもので約 2 年半、遅いもので約 6 年 の歳月が費やされている。

ASME Code Section XI のコード・ケースである N-577-1「クラス 1、2 及び 3 の配管に関 するリスク情報に基づく手法」のNRC による検討には、アイダホ国立工学研究所(INEL) 及びパシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNL)のスタッフが参加していた。 非容認以外のコード・ケースは、適用、あるいは適用することを申請していることが確認さ れ、コード・ケースが有効に利用されていることが確認された。 選定した5 件のコード・ケースの概要、ASME における審議プロセス及び NRC の容認状況を表 2.3 に示す。選定した 5 件のコード・ケースに対する調査結果を以下に示す。

(14)

2.3.1 N-504-2「クラス 1、2 及び 3 のオーステナイト鋼配管の修繕に関する代替要件」 Section XI, Division 1 のコード・ケースである。

欠陥のあるクラス 1、2 及び 3 のオーステナイト鋼配管を IWB-3640「オーステナイト鋼配管の 欠陥の評価手順及び許容基準」の代替手法に基づいて継続して供用可能かを判断する手法を示した ものである。N504 は 1992 年 5 月 30 日付で ASME の承認を受けている(504-2 は 1997 年 3 月 12 日付で再承認)。ASME では、ASME Section XI 小委員会、溶接及び特別な修繕プロセス WG において、1988 年 3 月~1992 年 5 月にかけて検討された。コード・ケースを提案したのは、構造 健全性協会のDave Pitcairn(元 Nutech)で、提案当時、BWR 再循環配管の暫定的な修繕方法と して溶接部のオーバーレイが認められていたが、NRC の方針が変わったため、この修繕方法を代 替手法として容認するコード・ケースを提案する必要性が生じたため提案された。1992 年から当該 WG は Section XI コードへの格上げを働きかけているが実現していない。NRC は、ASME での検 討作業に参加しており、1994 年 10 月付で公表した Regulatory Guide 1.147, Revision 11 でその使 用を容認している。なお、NRC での検討期間は約 2 年半である。N-504-4 は、少なくとも 13 の認 可取得者から免除を伴った適用申請がNRC に出されている(N-504-2 は多くの BWR プラントで 適用されている)。

2.3.2 N-516-2「水中溶接」

Section XI, Division 1 のコード・ケースである。

ASME Code Section II「材料」の Part D「特性」に示されている P-No.1、P-No.8 及び P-No.4X 材料の補修または交換時の規定 IWA-4000「補修及び交換」の代替として使用して良いとする見解 を示したものである(用語や定義について、ANSI/AWS D3.6-89「水中溶接の仕様」を使用するこ とが言及されている)。N-516 は、1993 年 8 月 9 日付で ASME の承認を受けている(516-2 は 2000 年1 月 17 日付で再承認)。ASME では、ASME Section XI 小委員会、溶接及び特別な修繕プロセ スWG において、1991 年 1 月~1993 年 8 月にかけて検討された。コード・ケースを提案したのは、 John Tobin(炉心支持 SG。元 WH 社社員)で、炉心支持構造物及び他の炉内構造物の修繕には水 中溶接が必要となる可能性があるが、当時水中溶接に対する明確な要件がなかったため提案された。 WG では、NRC が付帯している条件を解除するための改定を検討している。NRC は、ASME での 検討作業に、NRR の DE 及び EMCB から 2~4 人及び RES のスタッフを参加させていた。なお、 国立研究所のスタッフは参加していないと思われる。NRC は、1999 年 5 月付で公表した Regulatory Guide 1.147, Revision 12 でその使用を条件付きで承認している(照射済み材料の水中溶接は除外)。

(15)

なお、NRC での検討期間は約 6 年である。N-516-2 は多くの BWR プラントで適用されている

2.3.3 N-577-1「クラス 1、2 及び 3 の配管に関するリスク情報に基づく要件、手法」 Section XI, Division 1 のコード・ケースである。

クラス1、2 及び 3 の配管に対する IST 要件(ASME Code Section XI, Subsection IWB、IWC あるいはIWD の追加要件)の代わりにリスク情報に基づく要件の使用を認めるものである。N-577 は、1997 年 9 月 2 日付で ASME の承認を受けている(577-1 は 2000 年 3 月 28 日付で再承認)。 ASME では、供用期間中検査小委員会、リスク情報に基づく検査の実施 WG において、1988 年 終わり~1997 年 9 月にかけて検討された。コード・ケースを提案したのは、ASME のリスクベー スの検査に関する研究タスク・グループで、配管検査対象配管の選定にリスク情報を取り入れるこ とで、リスク上重要な溶接及び配管が選定でき、結果として安全性が増加し、試験費用も削減でき るため提案された。現在、Section XI のコードの強制力のない付録 X として格上げすることが検討 されている(ドラフト版は作成済み)。NRC は、ASME での検討作業に、NRR の DE、NRR の DSSA 及び RES の ERAB から少なくとも 15 人のスタッフを充てていた(これらのスタッフは、 同時期に進められていたRegulatory Guide の作成、WH 社オーナーズ・グループが実施していた パイロット・プラントへの適用にも参加している)。また、アイダホ国立工学研究所(INEL)及び パシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNL)のスタッフも検討作業に加えている。NRC は、 2003 年 6 月付で公表した Regulatory Guide 1.193 で、粒界応力腐食割れ(IGSCC)、流体加速腐 食(FCA)、微生物による腐食(MIC)及び穿孔(Pitting)などが扱われていないため、その使用は 容認できないとしている。表2.4 に N-577 の事業者での適用状況を示す。 2.3.4 N-20-4「クラス 1 の SB-163 の補足要件を満足する SB-163 の冷間加工 USN N08800 または SB-163 の UMS N06600、N06690 及び N08800 の適用」 Section Ⅲ, Division 1 のコード・ケースである。 追加の6 要件(設計応力、降伏強度等)を満足するのであれば、標記材料をクラス 1 機器の製造 に使用しても良いとする見解を示したものである。N-20 は、1979 年 8 月 30 日付で ASME の承認 を受けている(20-4 は 1999 年 2 月 26 日付で再承認され、Section Ⅲコードに格上げされたため 2001 年 8 月 14 日に取り消されている。)。ASME では、ASME Section XI 小委員会、材料、製造 及び検査SG において、1976 年 8 月~1979 年 8 月にかけて検討が行われた(N-20 は、元々、1484 という名称で 1970 年代初めに作成されていた。現在利用可能情報では、1976 年 8 月に 1484 の

(16)

Revision 3 が ASME で承認されており、その後、N-20 に名称変更されたことが確認されているた め、1976 年 8 月を N-20 として提案された時期であるとしている。)。コード・ケースを提案したの は、PWR の炉容器ベンダー(提案者を特定する情報はない)で、熱交換器管状材料に用いる Alloy 600 の SB-163 バージョンで降伏強度が高められたため、許容応力を増大させることを提案した。 後に対象が拡大され、Alloy 690 及び 800 も含まれることとなった。本コード・ケースは、2001 年 8 月に Section Ⅲコードに格上げされている。NRC は、ASME での検討作業に参加しており、1982 年4 月公表した Regulatory Guide 1.85, Revision 19「ASME Section Ⅲ, Division 1:材料に関す るコード・ケースの適用性」(2003 年 6 月に公表された Regulatory Guide 1.84, Revision 32 に取 り込まれた。)でその使用を条件付きで承認している(Alloy 690 は対象外)。なお、2003 年 6 月に 公表したRegulatory Guide 1.84, Revision 32 では、使用に対する条件をなくし、無条件で承認さ れている。なお、NRC での検討期間は約 2 年半である。N-20-4 は、大部分の PWR で適用されて いる。 2.3.5 N-565「クラス 1 容器に対するノズル接続の代替手法」 Section Ⅲ, Division 1 のコード・ケースである。 5 項目の条件付で、NB-3337「ノズル及び他の接続の連結」で認められているノズル接続手法の 代わりに、NPS 2 及びそれ未満のノズルはねじで容器に接続して良いとする見解を示したものであ る。1999 年 12 月 3 日付で ASME の承認を受けている。ASME では、ASME Section Ⅲ小委員会、 設計SG において、1996 年 2 月~1999 年 12 月にかけて検討された。コード・ケースを提案した のは、B&W Nuclear Technology 社(Entergy 社と協同)で、通常運転時に破損した小ノズルの交 換を行えるようにするため、ASME Code Section Ⅲ容器の小ノズルの溶接後の熱処理に代わる手 法としてねじで接続することを提案した。NRC は、ASME での検討作業に参加していたが、2003 年6 月付で公表した Regulatory Guide 1.193 で、ねじで接続した場合に溶接した場合と同等の健 全性に相当することが実証されていないため、その使用は容認できないとしている。 2.4 今後の NRC による ASME 規格あるいはコード・ケースの容認の動向 2002 年に Davis-Besse など多くの PWR プラントで当該部が劣化していたことを受け、NRC は 2003 年 2 月 11 日付で当該部の検査要件を規定した命令(EA-03-009)を発行した(即時発効)。 命令に示された暫定検査要件を表 2.5(仮訳)に示す。また、4 月 11 日には、「貫通部のクラッ ク評価ガイドライン」を公表した。NRC は、長期的には ASME コードの改訂及びそれを

(17)

10CFR50.55a に取り込むことにより本問題が解決されると考え、それまでの暫定的な枠組みとし て前述の命令を発行した。 その後、NRC は、2002 年 8 月 19 日に ASME の供用期間中検査小委員会の委員長に宛てたレタ ーの中で、Davis-Besse での炉容器上部ヘッド劣化問題から、ASME に対して PWR 炉容器上部ヘ ッド貫通部(制御棒駆動機構(CRDM)貫通部等)に対する ASME XI の検査要件の改定を検討す るよう要請した。ASME では、NRC の要請を受け、炉容器ヘッドの追加検査及びホウ酸腐食の管 理に関する既存のコード・ケースの改定及び新しいコードの開発を進めている。なお、ASME では、 炉容器ヘッドの追加検査要件については2004 年度中、ホウ酸腐食の管理については 2005 年度中を 目標としている。NRC は、ASME 規格が作成された後、規格の内容を検討し、容認可能であれば 10CFR50.55a で参照することを予定している。なお、ASME の規格開発予定が明確でないため、 NRC による 10CFR50.55a への参照時期については未定である。 ASME での炉容器ヘッドの劣化に関するコードの開発状況を以下に示す。 • 供用期間中検査の小委員会の下の Alloy 600/182/82 問題のタスク・グループは、電力研究所 (EPRI)の材料信頼性プログラム(MRP)と共同で拡大検査としてコード・ケースを開発し た。このコード・ケースは、Section XI, Division 1 のコード・ケース N-694「PWR 炉容器上 部ヘッド貫通部ノズルの評価手順及び許容基準」として公表されている(2003 年 6 月 17 日付 でASME により承認されている)。現在、コード・ケースの改定及び新たなコードの開発を進 めている。新たなコードでは、VT-5 の目視検査、定期的な体積及び表面検査、最初の検査、 連続検査及び追加の検査に関する要件が盛り込まれる。ASME は、このコードを 2004 年 2 月 の BPV コード会議で取り上げて検討し、5 月に小委員会、8 月に委員会、10 月に原子力スタ ンダード及びコード議会(BNCS)で承認する予定である。 • NRC からの要請により設立された供用期間中検査の小委員会の供用期間中検査最適化 WG の ホウ酸腐食のタスク・グループで対応策が検討されている。ホウ酸腐食のタスク・グループで は、漏洩が発見されたときの対応措置及びホウ酸システムにおける漏洩検出能力の改善に焦点 を当てた検討を進めており、蓄積したホウ酸の除去及び腐食影響の可能性がある区域へのVT-3 目視検査を要求するコードの開発について検討している。これらの要件の追加は、2005 年後半 に行われる予定である。 • Section XI の修繕方法としてのメカニカル・ノズル・シール・アセンブリ(MNSA)の承認が ある。このコードのドラフト版は、2003 年 12 月に SectionⅢ及び XI の小委員会に提出されて おり、2004 年のコード会議で取り上げられる予定である。

(18)

表2.1 産業界が示した NRC による ASME コード・ケース承認迅速化のオプション オプション 長所 短所 1. 法律を改正する。 不要かつ不確かであり、政治的 要素を含む。 2. 現行プロセスの迅速化(例: Regulatory Guide の改訂及びその 改訂版を取り込む規則改定を6 ヶ月 サイクルとする)。 現行規則のまま適用を早 くできる。 現実的でない。踏むべき手順が 多すぎる。 3. 大きな規則改定を行う(現行の 50.55a をリスク情報に基づく規則 に置き換える)。 ASME コード・ケースの 適用に対してリスク情報 に基づく概念を持ち込 む。現在リスク概念が適 用されている他の規則と の互換性が得られる。 長期的な作業となる。プロセス の変更が必要である。 4. 50.55a から ASME コードのどの版 /アデンダを参照するかを示した部 分を削除する規則改定を行う。 規則が単純になり、分か りやすくなる。 長期的な作業となる。プロセス の変更が必要である。 5. コードケースを参照する直接最終 規則(DFR)を定期的に発行する。 タイムリーで直接的であ る。目的を満足しうる。 重大な反対意見が避けられな い。対応の負荷が高い。 6. 50.55a(a)(3)を改定し、NRR 局長が コード・ケースを承認することを認 める。 産業界全般に対する承認 となる。 - 7. (コード・ケースの使用を逸脱せず に適用するのであれば認める) Regulatory Issue Summary を発行 する。 単純なアプローチであ る。 法律上の問題が考えられる。 注:長所短所とも各オプションに関する産業界の見解。結果としてオプション6 を産業界は NRC に 提案。

(19)

表2.2 調査対象案とした ASME Code SectionⅢ及び XI コード・ケース一覧(1/2) No. コードケース 名称 内容 状況 1 N-20-4 SectionⅢ Divison 1 Class 1 SB-163 の補足要件 S2 を満足す る SB-163 の冷間 加 工 UNS N08800 または SB-163 UNS N06600、N06690、N08800 適 用 設計応力、降伏強度等の追加要件を 満足するのであれば、標記材料をク ラス 1 機器の製造に使用しても良 いとする見解。 容認 2 N-494-3 Section XI Division 1 IWB-3514.2 の容認基準を超え る傷のあるクラス1 フェライト 鋼配管及びIWB-3514.3 の容認 基準を超える傷のあるクラス 1 オーステナイト鋼配管の評価 手順及び容認基準 IWB-3514.2 の容認基準を超える 欠陥のあるクラス 1 フェライト鋼 配管及び IWB-3514.3 の容認基準 を超える欠陥のあるクラス 1 オー ス テ ナ イ ト 鋼 配 管 の 各 々 を 、 IWB-3650 及び IWB-3640 の代替 要件に基づいて継続して供用可能 か判断する。 容認 3 N-504-2 Section XI Division 1 クラス 1、2 及び 3 のオーステ ナイト鋼配管の修繕に関する 代替要件 欠陥のあるクラス1、2 及び 3 のオ ーステナイト鋼配管を IWB-3640 「オーステナイト鋼配管の欠陥の 評価手順及び許容基準」の代替手法 に基づいて継続して供用可能か判 断する。 非容認 4 N-516-2 Section XI Division 1 水中溶接

ASME Code Section II「材料」の Part D「特性」に示されている P-No.1、P-No.8 及び P-No.4X 材料 の補修または交換時に、IWA-4000 「補修及び交換」の代替として使用 して良いとする見解。 条 件 付 き 容認 5 N-546 Section XI Division 1 VT-2 試験員の能力に関する代 替要件 実務及び訓練等の履歴に関する一 定の基準を満足する場合、VT-2 試 験 員 に 関 す る 参 照 基 準 (ANSI N45.2.6、ASNT SNT-TC-1A、あ るいはANST CP-189 等)で要求さ れる能力レベルを満足する必要は ない。 条 件 付 き 容認 6 N-565 Section Division 1 クラス1 容器に対するノズル接 続の代替手法 NB-3337「ノズル及び他の接続の 連結」で認められているノズル接続 手法の代わりに条件付で、NPS 2 及びそれ未満のノズルはねじで容 器に接続して良い。 非容認 7 N-567-1 Section XI Division 1 クラス 1,2,3 交換機器の調整要 件 交換機器が交換される機器より古 い 場 合 、5 項 目 の 条 件 付 で 、 IWA-7210 の調整要件に従わなく ても良い。 条 件 付 き 容認

(20)

表2.2 調査対象案とした ASME Code SectionⅢ及び XI コード・ケース一覧(2/2) No. コードケース 名称 内容 状況 8 N-577-1 Section XI Division 1 クラス 1、2 及び 3 の配管に関 するリスク情報に基づく要件、 手法A クラス1、2 及び 3 の配管に対する IST 要件(ASME Code Section XI, Subsection IWB、IWC あるいは IWD の追加要件)の代わりにリス ク情報に基づく要件の使用を認め る。 非容認 9 N-578-1 Section XI Division 1 クラス 1、2 及び 3 の配管に関 するリスク情報に基づく要件、 手法B クラス1、2 及び 3 の配管に対する IST 要件(ASME Code Section XI, Subsection IWB、IWC あるいは IWD の追加要件)の代わりにリス ク情報に基づく要件の使用を認め る。 非容認 10 N-640 Section XI Divison 1 P-T 限度曲線の作成における代 替参照破壊靭性 P-T 限度曲線作成における参照破 壊靭性(KIC)について、ASME Code Section XI 付 則 G の 図 G-2210-1 に代わりに付則 A の図 A-4200-1 を用いることを条件付き で認める。 容認

(21)

表 2.3 ASME Section Ⅲ及びⅩⅠコード・ケース調査結果概要(1/2) コー ド・ケー ス 番号 名 称 概 要 ASME の 承認状況 ASME の主要 検討小委員 会 WG、及び SG ASME の 検討期間 提案者 対象機 器 コード・ケース提案理由 XI コードへの格上げ NRC の容認状況 N-504-2 Section XI Division 1 クラス 1、2 及 び 3 のオース テナイト鋼配 管の修繕に関 する代替要件 欠陥のあるクラス 1、2 及び 3 のオーステナイト鋼配管を IWB-3640「オーステナイト鋼 配管の欠陥の評価手順及び許 容基準」の代替手法に基づい て継続して供用可能か判断す る。 1992 年 5 月 30 日 承認(504-2 は 1997 年 3 月 12 日承 認) ASME Section ⅩⅠ小委員 会、 溶接及び特 別な修繕プ ロセス WG 1988 年 3 月 ~ 1992 年 5 月 構造健全 性協会の Dave Pitcairn (元 Nutech) クラス 1、2、3 配管 当時、BWR 再循環配管の暫定的な修 繕方法として溶接部のオーバーレイ が認められていたが、NRC の方針が 変わったため、この修繕方法を代替手 法として容認するコード・ケースを提 案する必要性が生じた。 1992 年から WG は XI コー ドへの格上げを働きか けているが実現してい ない。 ASME での検討に NRC スタッフは参加して いる。

Regulatory Guide 1.147, Revision 11 (1994 年 10 月)でその使用を容認してい

る。なお、NRC での検討期間は約 2 年半。

N-516-2 Section XI Division 1 水中溶接

ASME Code Section II「材

料」のPart D「特性」に示さ れている P-No.1、P-No.8 及び P-No.4X 材料の補修または交 換時に、IWA-4000「補修及び 交換」の代替として使用して 良いとする見解。 1993 年 8 月 9 日 承認(516-2 は 2000 年 1 月 17 日承 認) ASME Section ⅩⅠ小委員 会、 溶接及び特 別な修繕プ ロセス WG 1991 年 1 月 ~ 1993 年 8 月 John Tobin(炉 心支持 SG。元 WH 社社員) 指定さ れてい る材料 を使用 してい る全て の機器 炉心支持構造物及び他の炉内構造物 の修繕には水中溶接が必要となる可 能性があるが、当時、水中溶接に対す る明確な要件がなかったため提案さ れた。 格上げされていない。 なお、WG で条件を解除す るための改定が検討さ れている。 ASME での検討に NRC スタッフは参加して いる。

Regulatory Guide 1.147, Revision 12 で その使用を条件付き(照射済み材料の水 中溶接は除外)(1999 年 5 月)で容認。 NRC での検討期間は約 6 年。 N-577-1 Section XI Division 1 クラス 1、2 及 び 3 の配管に 関するリスク 情報に基づく 要件、手法 A クラス 1、2 及び 3 の配管に対 する供用期間中試験要件 (ASME Code Section XI, Subsection IWB、IWC あるい は IWD の追加要件)の代わり にリスク情報に基づく要件の 使用を認める。 1997 年 9 月 2 日 承認(577-1 は 2000 年 3 月 28 日承 認) 供用期間中 検査小委員 会、リスク情 報に基づく 検査の実施 WG 1988 年終 わり ~ 1997 年 9 月 ASME のリ スクベー スの検査 に関する 研究タス ク・グルー プ クラス 1、2、3 配管 検査対象配管の選定にリスク情報を 取り入れることで、リスク上重要な溶 接及び配管が選定でき、結果として安 全性が増加し、試験費用も削減できる ため提案された。 強制力のない付録 X とし て格上げすることが検 討されている(ドラフト 版は作成済み)。 ASME での検討に NRC スタッフは参加して いる。 粒界応力腐食割れ(IGSCC)、流体加速腐 食(FCA)、微生物による腐食(MIC)及び 穿孔(Pitting)が扱われていないため等 の理由から非容認。

(22)

表 2.3 ASME Section Ⅲ及びⅩⅠコード・ケース調査結果概要(2/2) コー ド・ ケース 番号 名 称 概 要 ASME の 承認状況 ASME の主要 検討小委員 会 WG、及び SG ASME の 検討期 間 提案者 対象機 器 コード・ケース提案理由 III コードへの格上げ NRC の容認状況 N-20-4 Section III Divison 1 Class 1 SB-163 の補足 要件 S2 を満足 する SB-163 の 冷間加工 UNS N08800 または SB-163 の UNS N06600、 N06690、 N08800 の適用 設計応力、降伏強度等の追 加要件を満足するのであれ ば、標記材料をクラス 1 機 器の製造に使用しても良い とする見解。 1979 年 8 月 30 日 承認(20-4 は 1999 年 2 月 26 日承 認。2001 年 8 月 14 日に 取り消し。) ASME Section ⅩⅠ 小委員会、 材料、製造及 び検査 SG 1976 年 8 月 ~ 1979 年 8 月 PWR の炉 容器ベン ダー(氏 名を特定 する情報 はない) クラス 1機器 熱交換器管状材料に用いるAlloy 600 の SB-163 バージョンでは屈服 強度が高められたため、 許容応力 を増大させることが提案された。後 に対象が拡大され、Alloy 690 及び 800 も含まれることとなった。 2001 年 8 月に III コー ドに格上げすることが 承認された。 ASME での検討に NRC スタッフは参加し ている。

Regulatory Guide 1.85, Revision 19 (1982 年 4 月)でその使用を条件付き (Alloy 690 は対象外)で容認。なお、 Regulatory Guide 1.84, Revision 32 (2003 年 6 月)では条件が外された。 NRC での検討期間は約 2 年半である。 N-565 Section III Division 1 クラス 1 容器 に対するノズ ル接続の代替 手法 NB-3337「ノズル及び他の 接続の連結」で認められて いるノズル接続手法の代わ りに条件付で、NPS 2 及び それ未満のノズルはねじで 容器に接続して良いとする 見解。 1999 年 12 月 3 日 承認 ASME SectionⅢ小 委員会、設計 SG 1996 年 2 月 ~ 1999 年 12 月 B&W Nuclear Technolo gy 社 (Enterg y 社と協 同) クラス 1 容器 通 常 運 転 時 に 破 損 し た 小 ノ ズ ル の 交 換 を 行 え る よ う に す る た め 、 ASME Code Section III 容器の小 ノ ズ ル の 溶 接 後 の 熱 処 理 に 代 わ る 手 法 と し て ね じ で 接 続 す る こ と を 提案した。 格上げされていない。 ASME での検討に NRC スタッフは参加し ている。 ねじで接続した場合に溶接した場合の 健全性に相当することが実証されてい ないため非容認。

(23)

表2.4 N-577 の事業者での適用状況(2004 年 1 月時点) プラント名 申請日 NRC による承認日 対象範囲(機器) Browns Ferry-2 1999/12/20 2001/1/12 クラス1、2、3 及び NNS Browns Ferry-3 1999/4/23 2001/2/11 クラス1、2、3 及び NNS Mc Guire-1&2 2001/6/26 2002/6/12 クラス1 及び 2 Millstone-3 2000/7/25 2002/3/12 クラス 1 North Anna-1&2 2001/4/26 2001/9/18 クラス 1 Sequoyah-1&2 2001/03 2001/10/19 クラス1 及び 2 Surry-1 1997/10/31 1998/12/16 クラス1、2、3 及び Surry-2 2000/4/27 2001/1/26 クラス 1 Turkey Point-3 2000/1/19 2000/11/30 クラス1 Watts Bar 2001/5/21 2002/1/24 クラス1 及び 2 注)NNS:非安全関連

(24)

表2.5 炉容器ヘッドの暫定検査要件 (EA-03-009) (2003 年 2 月 11 日付命令) A. 必要とされる検査を決定するため、各運転サイクル終端の実効劣化年(EDY)により表される炉容 器ヘッドの一次冷却材応力腐食割れ(PWSCC)に対する感受性カテゴリを計算すること(計算式 略)。計算では、各運転サイクル終端における各パラメータを最適評価すること。計算した EDY に従って感受性カテゴリ及び燃料交換停止における適切な検査を決定すること。 B. 設置者は、炉容器ヘッドを対応する PWSCC 感受性カテゴリに分類するに当たって以下の要件を 使用すること: 高 (1)EDY が 12 を超えるプラント、または(2)貫通ノズルまたは J 溶接に PWSCC によるク ラックを経験した炉容器ヘッドを有するプラント 中 EDY が 8 以上 12 以下、かつ高と分類すべき過去の検査知見がないプラント 低 EDY が 8 未満、かつ高と分類すべき過去の検査知見がないプラント C. 以下の技術及び頻度で炉容器ヘッドの検査を実施すること。 (1) カテゴリ高のプラントでは、以下の技術を用いて燃料交換停止毎に炉容器ヘッド及び貫通ノズル 検査を行うこと。 (a) 炉容器ヘッド表面(各炉容器ヘッド貫通ノズルの周り 360°を含む)の 100%に対する母材金 属目視試験、及び (b) 以下のいずれか (i) 各貫通ノズルについて、J 溶接の 2 インチ上からノズル下端までの超音波試験及び漏洩が境 界フィット領域に発生していないかの評価、または (ii) 各 J 溶接及び J 溶接の少なくとも 2 インチ上までの母材の濡れ表面に対する渦流探傷試験ま たは浸透探傷試験 (2) カテゴリ中のプラントでは、各燃料交換停止で少なくとも(2)(a)または(2)(b)の要件を実施する炉 容器ヘッド及び貫通部検査を行うこと。これに加え、2 燃料交換停止の中で少なくとも 1 回(2)(a) 及び(2)(b)を実施すること。 (a) 炉容器ヘッド表面(各炉容器ヘッド貫通ノズルの周り 360°を含む)の 100%に対する母材金 属目視試験 (b) ((1)(b)に同じ) (3) カテゴリ低のプラントでは、炉容器ヘッド及び貫通部検査を以下のように行うこと。(3)(a)に適 合する検査を少なくとも3 燃料交換停止または 5 年のいずれか早い方毎に完了すること。本命令 の直後の燃料交換停止中に(3)(a)に適合する検査を行わない場合、それを本命令から 2 回目の燃 料交換停止以内に実施すること。(3)(b)に適合する検査は、本命令から 5 年までに少なくとも一 度実施し、以降少なくとも4 燃料交換停止または 7 年のいずれか早い方毎に完了すること。 (a) 炉容器ヘッド表面(各炉容器ヘッド貫通ノズルの周り 360°を含む)の 100%に対する母材金 属目視試験 (b) ((1)(b)に同じ) D. 各燃料交換停止中に、炉容器ヘッド上部の圧力保持機器からホウ酸漏洩がないかを特定する目視検 査を行うこと。本命令による検査中またはそれ以外で炉容器ヘッド表面または断熱材にホウ酸堆積 物が発見されたプラントは、その発生源にかかわらず、運転再開までに、当該箇所及び貫通部の健 全性を検証するため、当該表面及び貫通部の検査を実施すること。 E. 上記 C 項で必要とされる各検査に対し、設置者は運転再開から 60 日以内に検査結果の詳細を示し た報告書を提出すること。上記 D 項で必要とされる各検査に対し、漏洩またはホウ酸堆積物が発 見された場合は運転再開から60 日以内に検査結果の詳細を示した報告書を提出すること。 F. 本命令に対応し、(1)要件のいずれかに適合できない、または(2)要件の適合が不要なものがある場 合はNRC に通知すること。本命令から逸脱したいとする設置者は、所定の手順に従って緩和申請 を行うこと。

(25)

規格適用上の問題発生 ① 規格通りに実施できない。 ② 規格の合理化が必要。 ③ 規格に適用該当部がない。 ④ 規格の解釈が多様にとれる。 ⑤ プラント不適合事象関連でNRCより規格上の問題点指摘あり、など 事業者、メーカ及び規制側からの規格の 変更提案、新規格の提案

ASMEの対応

ASME規格適用上の問題 2.コードケース発行及び発行後の見直し ◇ 承認されたコードケースは、3ヶ月毎(年4回)サプリメントとして発行。 ◇ 3年毎のコード改訂に合わせ、継続・コードへの取り込み・廃止を確認。 コードケース発行プロセス ASMEコード ◇ 3年毎に改訂(エディション) ◇ 追加・改訂は年1回(アデンダ) ASMEコード ◇ 3年毎に改訂(エディション) ◇ 追加・改訂は年1回(アデンダ) Sec.Ⅲ Sec.ⅩⅠ コードケースの位置付け ◇ コードケースは強制ではなく、その使用は任意である。

約2年~9年

OM コードケースの発行で対応 開発/検討 (技術的)承認 発行手続き 1.迅速な対応とするために暫定的な処置を実施 ◇ 規格を待たずに緊急に規定を作成する必要あり。 ◇ 特別な条件下での代替要件を設定する必要あり。 SG or WG SG or WG SG or WG Subcommittee on Nuclear Power (原子力発電小委員会) Subcommittee on

Nuclear Inservice Inspection (原子力供用中検査小委員会)

Subcommittee on OM Code

Standards and Guides

Main Committee Main Committee Main Committee Council on Codes & Standards (コード・基 準理事会) Boiler & Pressure Vessel Committee (BPVC;ボイラ・圧 力容器コード委員 会) 2-19

(26)

■ Reg Guide発行状況

Reg Guide 1.84

, Rev32「ASME Section III: 設計、製造及び材料に関するコード・ケース の適用性」(2003年6月)

Reg Guide 1.147

, Rev13「ASNE Section XI, Division 1:供用期間中検査に関するコード・ ケースの適用性」(2004年1月)

Reg Guide 1.192

, Rev0「容認されている ASME OMコード・ケース」 」(2003年6月) ・

Reg Guide 1.193

, Rev0「使用が容認されて

       NRCにおけるコードケースの検討 規制側(NRC)の対応 10 CFR 50.55aにReg. Guide改訂版 を引用し規 定 原子力規制研究局(RES: Office of Regulatory Research)ASMEでの検 討経緯等をまとめた文書 を作成 コードケース容認プロセス NRCがコードケースの発 行状況をウォッチングし、 NRCにて採否の検討を行 う。 ■原子炉規制局(NRR) ○エンジニアリング部(DE)  ・材料及び化学工学ブランチ(EMCB)  ・機械及び土木工学ブランチ(EMEB) ○システム安全及び解析部  ・確率論的安全解析ブランチ(SPSB) (リスク情報に基づくプロセスの評価が必要な場合) ■原子力規制研究局(RES) ○エンジニアリング技術部(DET)  ・材料工学ブランチ(MEB)  ・エンジニアリング研究応用ブランチ(ERAB) Reg. Guideで容 認、容認 不可等を 明示 スタッフを特定 コード・ケースの容認の可否を判断する基準を確立していない。但し、一般に、技術内容を含む以下の検討が行われている。 ・既存のNRCの規制要件との整合性。 ・コード・ケースの安全及び品質レベルとコードのレベルとの整合性。 ・過去に認可取得者から申請され、NRCが承認した申請内容との整合性。 ・リスク情報に基づいた内容の場合は、Reg Guide 1.174との整合性。 国立研究所等の外部のスタッフ ASME OM CodeCase 容認可 46% 条件付 46% 容認不 可 8% 13件 ASEM SecⅩⅠ CodeCase

差替え 19% 破棄 条件付 容認可 37% 容認不 可 13% 約170件 ASME SecⅢ CodeCase

破棄 60% 条件付 1% 容認可 13% 容認不 可 1% 差替え 25% 約540件

約2年半~6年

2003/5/30より、ルールメイキング計画 (処置の迅速化計画)がスタート。<約 48ヶ月→約25ヶ月> 2-20

(27)

ASMEがコードの 新版を発行 (3年毎) 新版を10CFR 50.55aに取り込む 規則改定 ASMEに コードケースの 発行要求を提出 ASMEが コードケースを 承認・発行 NRCがコードケース を承認、条件付承 認、または却下 適用可能な コードケースを Reg.Guideに列挙 NRCが公衆のコメン トを求めてドラフ トReg.Guideを公表 NRCが改訂された Reg.Guideを公表 NRCがReg.Guideの 改訂版を10CFR 50.55aに取り込み 設置者はコード ケースを利用可能 (規則改定) 設置者がコード ケースの使用を 希望 10CFR50.55aに基 づき緩和または代 替を要求するプラ ント個別の申請 NRCはプラント個別 の安全評価を作成 設置者はコード ケースを利用可能 (プラント個別) プラント個別の承 認を求める新たな 一般的オプション 官報での通知 (一般的な安全評価 を公衆のコメント を求めて公表) コメントの解決、 または 官報を再公表 官報での通知 (設置者が参照でき る一般的な 安全評価) 一般的な安全評価 の適用を求めるプ ラント個別申請 官報で通知 (認可活動案をコメ ントを求めて公表) プラント個別の NRC承認レター 設置者はコード ケースを利用可能 (一般プロセス) 現行プロセス 新たなプロセス(案)

注:Reg.Guide は、Regulatory Guide を示す。

図2.3 (産業界が提案した)NRC による ASME コード・ケースの承認プロセス (NRC/産業界ミーティング(2002 年 2 月 20 日)において提案)

(28)

3. ASME OM-2001 規格(運転・補修)に関する調査 3.1 ASME OM 規格(運転・補修)の概要 ASME の OM 委員会(運転及び保守委員会)は、1975 年 6 月、N45 委員会(原子炉及びその保 守に関する委員会)の解散に伴い結成された 。OM 委員会の任務は、原子力発電所の安全で信頼性 のある運転及び保守に関する規格、標準及びガイドを作成、改訂あるいは維持することにある。全 ての委員はボランティアで、その背景や経験は、建設業界、設計会社、研究所、製造会社、発電所 所有者など原子力産業界の様々な分野及び政府機関にわたっている。グループ内では特定の団体の 関心事項が支配的にならないよう、その構成員のバランスには常に配慮されている。 委員会メンバーは、現在、年2 回米国の様々な場所で会合を持っている。同委員会は、ANSI(米 国規格協会)が承認した下記の二つの文書を維持している。 • 原子力発電所の運転及び保守に関する規格(ASME OM 規格) • 原子力発電所の運転及び保守に関する標準とガイド(ASME OM-S/G) 上記文書の最近の発行状況は、以下の通りである。 • 原子力発電所の運転及び保守に関する規格(2001 年版) • 原子力発電所の運転及び保守に関する規格(1998 年版) • 原子力発電所の運転及び保守に関する規格とアデンダ(2003 年版) • 原子力発電所の運転及び保守に関する標準とガイド(2000 年版) • 原子力発電所の運転及び保守に関する標準とガイドとアデンダ(2002 年版) なお、上記のほか、特定テーマ別にコード・ケースが作成されており、承認されれば既存の規格 要件の代替手法として使用が認められ、次のOM 規格の更新の際にコード中に取り込まれる。

設立当時のOM 委員会は、ASME Section XI の要件をレビューし、OM 規格によって代替できる 部分がないかを決定する責務を有していた。そして、XI 要件のうち Section IWP(ポンプの IST)、 Section IWV(弁の IST)については OM 規格の作成が適切と考えられた。1979 年には、Section XI のポンプ及び弁のサブグループがOM 委員会に移行され、パフォーマンス試験に関するサブグルー プの下のポンプ及び弁に関するO&M ワーキンググループができた。1984 年には、新しい Section XI、ポンプと弁に関するワーキンググループが結成され、ポンプと弁に関する OM 規格が Section XI として認められるかどうかレビューすることになった。 1981 年と 82 年に公表された 5 つの規格は、ASME/ANSI OM-1987 という一つの刊行物になっ て発行された。 ASME の専門部会の監督を行う「原子力コード及びスタンダードに関する委員会」(BNCS)は、

(29)

IST 要件を策定する上で OM 委員会が適切であると認識し、将来的には Section XI から IST を削 除することを最終的な目標として、OM 委員会が独自に OM 規格の作成を開始すること承認した。 その後、ASME/ANSI OM-1987(及び 3 つの追補版:ASME/ANSI OMa-1988、ASME/ANSI OMb-1989、及び ASME/ANSI OMc-1990)の以下の部分が ASME OM 規格 1990(原子力発電所 の運転及び保守に関する規格)に取り込まれた。 • Part 1「軽水炉における圧力逃し装置の IST」は OM 規格の付録 I • Part 4「軽水炉の動的レストレイント(スナバ)の供用前及び供用中検査と試験」は OM 規 格のISTD • Part 6「軽水炉におけるポンプの供用期間中試験」は OM 規格の ISTB • Part 10「軽水炉における弁の供用期間中試験」は OM 規格の ISTC 図3.1 に ASME OM 規格の成立経緯を示す。 ASME OM-S/G-2000 には、以下の標準及びガイドが示されている。 標 準 • Part 2「原子力発電所の閉冷却系のパフォーマンス試験に関する要件」 • Part 3「原子力発電所の配管システムに対する供用前及び最初の起動時の振動試験に関する 要件」 • Part 8「軽水炉の弁の電動モータ・オペレーターの試験」 • Part 12「軽水炉の Lose Part のモニタリング」

• Part 13「加圧器逃し弁(PORV)アセンブリの定期的なパフォーマンス試験及びモニタリン グ要件」 • Part 15「PWR の ECCS のパフォーマンス試験」 • Part 16「原子力発電所のディーゼル駆動の IST 及び保守 • Part 20「BWR の ECCS のパフォーマンス試験」 • Part 21「軽水炉の熱交換器の供用中パフォーマンス試験」 ガイド • Part 5「PWR の炉心支持バレルの軸方向の予荷重の供用中モニタリング」 • Part 7「原子力発電所の配管システムの熱膨張試験要件」 • Part 11「熱交換器の振動試験及び評価」 • Part 14「原子力発電所の回転装置の振動モニタリング」 • Part 17「軽水炉の計装空気システムのパフォーマンス試験」

(30)

• Part 19「軽水炉の空圧式及び油圧式作動弁アセンブリの供用前及び定期的パフォーマンス試 験」

図3.2 に ASME OM 委員会の組織図を示す。

3.2 ASME Section XI と OM 規格の住み分け

ASME OM 規格は、Section XI の IWV 及び IWP を基に作成されてきており、また、ASME OM 規格では規格の対象を供用前及び供用期間中試験(IST)と明確に示している。図 3.3 に、1983 年時 点のASME Code Section XI の構成と 2001 年時点における ASME Code Section XI 及び ASME OM コードの関係図を示す。また、ASME 規格と OM 規格との関係を図 3.4 に示す。

NRC は、供用期間中検査(ISI)プログラムを作成する際には ASME Code Section XI を、IST プ ログラムを作成する際にはASME OM 規格を参照できることを 10CFR50.55a に示している。ただ し、Section XI 及び OM 規格のいずれにおいても対象となる機器の定義は明確に示されていない。

このため NRC は、IST プログラムを作成するためのガイダンス(Generic Letter 89-04 及び NUREG-1482)を公表している。具体的な各プラントの IST プログラムは公開されている。

これらのIST プログラムは、ASME OM 規格に基づいて作成されている。また、対象となる機器 のリストが示されている。

このことから、Section XI は ISI、ASME OM 規格は IST を扱っていると考えられる。なお、支 持構造物については、Section XI では静的な支持構造物の ISI を、ASME OM 規格では動的な支持 構造物(スナバ)のISI 及び試験を対象としている。 3.3 ASME OM 規格の構成 ASME OM 規格は、章(Subsection)、章(Subsection)を補足する付録及びコード・ケースから構 成されている。 3.3.1 Subsection 及び付録の概要 表3.1 に Subsection の目次構成を示す。 Subsection ISTA:一般要件

ASME Code Section XI, Subsection IWA を基に作成されており、対象範囲、一般試験要件、 試験結果の測定機器及び試験結果の記録に関する一般要件が示されている。

ISTA では、以下の機器の供用前及び IST を対象とすることが明記されている。

(31)

を遂行するために必要となるポンプ及び弁

• 原子炉の安全停止、安全停止状態の維持、あるいは事故影響の緩和を遂行するシステム あるいはシステムの一部を保護する圧力逃し装置

• 原子炉の安全停止、安全停止状態の維持、あるいは事故影響の緩和を遂行するシステム に使用されている動的レストレインと(スナバ)

Subsection ISTB:軽水炉におけるポンプの IST

ASME/ANSI OM-1987 の Part 6「軽水炉におけるポンプの供用期間中試験」を基に作成さ れており、ポンプのIST に関する適用範囲、一般試験要件、遠心ポンプ・縦型シャフト遠心ポ ンプ・容積式ポンプに関する特定の試験要件、試験のモニタリング、結果の分析及び結果の記 録に関する要件が示されている。対象とするポンプは、非常用電源を有する特定の遠心ポンプ 及び容積移送式ポンプである。 ISTB では、ポンプを以下のように分類している。 • グループ A:通常運転、冷態停止あるいは燃料交換 停止時に継続的あるいは定期的に 稼働しているポンプ • グループ B:試験時以外は定期的に稼働しない待機系のポンプ • 縦型シャフトのポンプ なお、以下のポンプは対象外となる。 • 駆動装置。但し、ポンプと駆動装置が一体のもの及びポンプの軸受けが駆動装置内に組 み込まれているものは除く。 • 運転上の利便さのためにのみ非常用電源が備えられているポンプ。 • 主要機器の一部として試験され、また適切に試験されたことがオーナーによって正当化 されるスキッド据付ポンプ

Subsection ISTC:軽水炉における弁の IST

ASME/ANSI OM-1987 の Part 10「軽水炉における弁の供用期間中試験」を基に作成されて おり、弁のIST に関する適用範囲、一般試験要件、駆動弁(POV)等に対する特定の試験要件、 試験のモニタリング、結果の分析及び結果の記録に関する要件が示されている。対象となる弁 は、特定の弁及び圧力逃し装置(及びそれらの作動システム及び位置表示システム)である。 ISTC では、弁を以下のように分類している。 • カテゴリーA:閉状態で必要となる機能を発揮し、最大許容漏洩量が設定されている弁 • カテゴリーB:閉状態でなくとも必要となる機能を発揮する弁

(32)

• カテゴリーC:圧力や流量等に応じて起動する弁 • カテゴリーD:破裂ディスクや爆発起動弁等の 1 回使用の弁 なお、以下の弁は対象外となる。 • ベント弁、ドレン弁、計装用弁及び試験弁等の運転上の便利さのためにのみ用いられる 弁。 • 圧力調整弁等の設備の制御のためにのみ用いられる弁。 • 設備あるいは機器の保守のためにのみ用いられる弁 • スキッド搭載弁は、それらが主要な機器の一部として試験され、またオーナーによって 適切に試験されていることが正当化される場合は対象外となる。 • プラントの状態を検知し、弁操作のために信号を送る外部の制御・保護設備は対象外と する。 Subsection ISTD:軽水炉の動的レストレイント(スナバ)の供用前及び供用中検査と試験 動的レストレイント(スナバ)の供用前及び供用中検査と試験に関する適用範囲、一般試験 要件、特定の試験要件及び供用期間中モニタリングに関する要件が示されている。対象となる スナバは、クラス1 機器、クラス 2 機器、クラス 3 機器及びクラス MC 機器に取り付けられて いる動的レストレイントである。 強制力ある付録 強制力のある付録として以下がある。 • 強制力のある付録 I:軽水炉における圧力逃し装置の IST(対象は、安全弁、安全逃し 弁、逃し弁、加圧器逃し弁、駆動逃し弁、再閉防止逃し弁、真空逃し装置にも適用可能。 付属品も含める(ソレノイド弁、エア・アクチュエータ、シリ ンダー、圧力スイッチ) • 強制力のある付録 II:チェック弁の状態監視プログラム(Subsection ISTC の可動試験 の代替試験が規定されており、パフォーマンス改善、試験・検査・予防保全の最適化を 目的としている) 強制力のない付録 強制力のない付録として以下がある。 • 強制力のない付録 A:試験計画の作成 • 強制力のない付録 B:動的レストレイント試験チェックリスト項目 • 強制力のない付録 C:動的レストレイントの設計及び運転情報 • 強制力のない付録 D:動的レストレイントの供用期間中試験のためのサンプル計画の比

(33)

較 • 強制力のない付録 E:10%及び 37 スナバ試験計画のフローチャート(許容できないス ナバが発見された場合に利用できる是正措置を決定するフローチャートに関する付録) • 強制力のない付録 F:動的レストレイント(スナバ)の供用寿命モニタリング方法 • 強制力のない付録 G:表 ISTD-4252-1、スナバの目視検査の適用(スナバの目視検査頻 度の決定に関する付録) • 強制力のない付録 H:試験パラメータと方法(スナバの機能試験手法を確立するための 付録) • 強制力のない付録 J:弁の分解後のチェック弁の試験(保守後のチェック弁に行う適切 な試験方法の決定に関する付録) 3.3.2 ASME OM コード・ケース ASME では、規格の正式改訂を待たずに緊急に規定を作成する必要がある場合や特別な条件下で の代替要件を設定する必要がある場合等、迅速な対応とするために暫定的な処置としてコード・ケ ースを作成発行している。OM コード・ケースは、2003 年 6 月時点で 14 件作成されており、更に 2 件追加されることが検討されている。表 3.2 に OM コード・ケースの一覧を示す。 3.4 NRC の容認状況 NRC は、10CFR50.55a「コード及びスタンダード」の(b)(3)項において、ASME OM コードの適 用に関する容認要件を規定している。現在容認されているASME OM コードのバージョンは、1995 年版から2000 年アデンダである。なお、認可取得者が ASME OM コードを適用する際には制限及 び修正が要求される。以下に主な制限を示す(表3.3 を参照)。

• 電動弁(MOV)の試験に関して、コード・ケース OMN-1「特定の電気 MOV アセンブ リの供用前及びIST に関する代替規則」を適用する場合、次の条件に従うこと。 各弁の診断試験の妥当性を、OMN-1 の施行開始から 5 年あるいは 3 燃料交換停止の いずれか長い期間以内に評価及び調整しなければならない。 高いリスクを持つMOV の試験間隔を四半期以上の拡大する場合、拡大に伴う炉心損 傷頻度の増加が小さいこと及び委員会の安全目標政策声明書に準拠していることを 示さなければならない。 • 強制力のある付録 II「チェック弁の状態監視プログラム」を適用する場合、次の条件に

表 2.1  産業界が示した NRC による ASME コード・ケース承認迅速化のオプション  オプション  長所  短所  1.  法律を改正する。  不要かつ不確かであり、政治的 要素を含む。  2
表 2.2  調査対象案とした ASME Code SectionⅢ及び XI コード・ケース一覧(1/2)  No.  コードケース  名称  内容  状況  1 N-20-4  SectionⅢ  Divison 1  Class 1  SB-163 の補足要件 S2 を満足す る SB-163 の冷間 加 工 UNS  N08800 または SB-163 UNS  N06600、N06690、N08800 適 用  設計応力、降伏強度等の追加要件を満足するのであれば、標記材料をクラス1 機器の製造に
表 2.2  調査対象案とした ASME Code SectionⅢ及び XI コード・ケース一覧(2/2)  No.  コードケース  名称  内容  状況  8 N-577-1  Section  XI  Division 1  クラス 1、2 及び 3 の配管に関 するリスク情報に基づく要件、 手法 A  クラス 1、2 及び 3 の配管に対する IST 要件(ASME Code Section XI, Subsection IWB、IWC あるいはIWD の追加要件)の代わりにリス ク情報に基づく
表 2.3  ASME Section Ⅲ及びⅩⅠコード・ケース調査結果概要(1/2)  コー ド・ケー ス  番号  名  称  概  要  ASME の  承認状況  ASME の主要 検討小委員会 WG、及び  SG  ASME の  検討期間  提案者  対象機器  コード・ケース提案理由  XI コードへの格上げ  NRC の容認状況  N-504-2  Section XI  Division 1  クラス 1、2 及 び 3 のオース テナイト鋼配 管の修繕に関 する代替要件  欠陥のあるクラ
+7

参照

関連したドキュメント

当初申請時において計画されている(又は基準年度より後の年度において既に実施さ

そのため、ここに原子力安全改革プランを取りまとめたが、現在、各発電所で実施中

当面の間 (メタネーション等の技術の実用化が期待される2030年頃まで) は、本制度において

(平成 29 年度)と推計され ているが、農林水産省の調査 報告 15 によると、フードバン ク 76 団体の食品取扱量の合 計は 2,850 トン(平成

(平成 28 年度)と推計され ているが、農林水産省の調査 報告 14 によると、フードバン ク 45 団体の食品取扱量の合 計は 4339.5 トン (平成

(平成 28 年度)と推計され ているが、農林水産省の調査 報告 14 によると、フードバン ク 45 団体の食品取扱量の合 計は 4339.5 トン (平成

概念と価値が芸術を作る過程を通して 改められ、修正され、あるいは再確認

この間,北海道の拓殖計画の改訂が大正6年7月に承認された。このこと