B. Zwiebach
講演録
Seven-brane, String Junctions and Lie Algebra 記:大竹 由記子y 、 野口雅之y 要旨 これは、1998年12月の16、17、18日に行われた国際シンポジウム「ゲージ理 論の力学と弦双対性」における、
Barton Zwiebach
教授の二日間にわたる講義をノートと してまとめたものですz 。Massachusetts Institute of Technology,
zwiebach@irene.mit.edu y 筑波大物理,
ohtake, noguchi@het.ph.tsukuba.ac.jp z このノートはZwiebach
教授の講義を忠実に再現したものではありません。記者の責任において、章立 てや補足説明を加え講義内容を再構成したものです。1
目 次
1 序 3 2 理論の枠組み 5 3 モノド ロミーと7-brane配位の分類 103.1
モノド ロミーの分類: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
10
3.2
SL
(2
Z)
のAbel
化: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
13
3.3 7-brane
配位の分類と対称性: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
16
4 対称性と表現 214.1
接合を持つ弦: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
22
4.2
根と弦の接合: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
25
4.3
重みと弦の接合: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
28
5 対称性の拡大 305.1
一般論: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
30
5.2
無限次元の対称性: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
32
5.3 K3
全体の対称性: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
35
2
1
序
この講義では私がMIT
で一年半程前から研究していて、何人かの日本の研究者(その 内の何人かはのこ研究会に参加していると思いますが )も研究している課題、7-brane
やLie
代数、特に例外型の代数についての話をしたいと思います1]2]3]4]
。これらの問題 を研究する理由は幾つかありますが 、これからしばらくの間、我々が何故この問題に興味 を持って研究するのか、ということについて話していきたいと思います。 長い間、我々が扱ってきたbrane
の理論は本質的にbrane
間を飛ぶ開弦に由来するU
(1)
ゲージ対称性を持つことが知られていました。一方で、ある種の弦理論は明らかに例外型 の対称性を持っています。ここで、このような例外型の対称性がbrane
の立場からどのよ うに表現されるか、ということが疑問になります。これが 、我々がこの問題の研究を始め た直接の動機でした。 この問題を理解するためには、Vafa
やBershadsky
等5]
によってその存在が指摘され たF
理論と呼ばれる理論が重要な役割を果たします。このF
理論はある種のコンパクト 化によりIIB
型超弦理論を再現すると考えられている仮想的な12
次元の理論です。弦理 論のなかで例外型の対称性の発現を見る一つの方法としてこのF
理論をK3
曲面上にコン パクト化し 、そのK3
曲面に特異性を持たせるというものがあります。これはIIB
型超弦 理論の立場では、背景として7-brane
を導入しこの7-brane
を適当に重ねる極限に対応し ています。したがって、この対応をうまく解釈すれば 、F
理論のK3
曲面へのコンパクト 化で現れると考えられている例外型の対称性が 、IIB
型超弦理論のbrane
や開弦の立場で 理解できるはずで、実際にそれが可能なことが分ります1]6]
。この状況を具体的に解説 することをこの講義の目的にしたいと思います。 実は、この例外型の対称性の発現を説明するには単に二つのbrane
の間を結ぶ開弦を考 えるだけでは不十分で1 、多数のbrane
の間を結ぶ枝分かれした弦を考えることが必要と なります。このような枝分かれした弦を弦の接合(string junction
)と呼びます7]
。実際、 弦の接合がbrane
上のゲージ理論のBPS
状態のスペクトラムを弦理論の立場から理解す る上で必要不可欠であることがBergman8]
に続き橋本-
畑-
笹倉9]
、さらには今村10]
に よる興味深い論文により示されました。7-brane
上にど のような対称性が発現するかは、小平による楕円曲線の退化の分類11]
によりある程度知ることができます2 。この小平の分類はK3
曲面にコンパクト化したF
理 論のオービフォールド 極限で得られる対称性と非常に深く関連しています12]
。したがっ て、F
理論と7-brane
配位を持つIIB
型超弦理論の対応を考えれば小平の分類はどのよう な7-brane
配位がどのような代数を発現するかをある程度教えてくれます。しかしながら、 1 A n型の対称性の場合は二つのbrane
間を結ぶ開弦で説明可能。 2Appendix A
参照。3
物理において重要な全ての
7-brane
の配位を小平の分類が与えているわけではありません。 実際、あの大変有名なSeiberg-Witten
の理論(4
次元、N
= 2
、SU
(2)
、Y-M
理論)13]
はIIB
型超弦理論にある2
種類の7-brane
を背景として導入したときに、理論を調べる探針 として入れた3-brane
上のゲージ理論として実現されるのですが14]
、このときの7-brane
の配位は小平の分類に含まれていません。何故かというと、小平の分類は7-brane
がある 一点に集まったときの対称性を教えてくれるのですが 、今の場合、二つの7-brane
を一点 に集めることは理論の無矛盾性から不可能だからです3 。この状況はSeiberg-Witten
理論 において物質場の数を1
、2
、3
4 としても変りません。物質場の数を4
とすると状況が変 り、小平の分類に現れる始めての理論になります。このように、小平の分類を越えて物理 的に重要な全ての可能な7-brane
の配位を分類し 、そこにどのような対称性が発現するか を調べることは大変、意義深いことと思えます。 今、一点に集められない7-brane
の配位を考えてみましょう。これらの7-brane
達が全 体として何らかの対称性を持っていたとしても、その対称性は決して完全には復活する ことはありません。7-brane
上の対称性は7-brane
の間を結ぶ弦達により担われているの ですが 、7-brane
達を一点に集められない場合、この対称性を担う全ての弦達の長さを同 時に0
にすることは出来ません。これはbrane
上の場の理論の立場では全てのゲージ粒子 の質量を同時に0
にすることが出来ないことを意味します。したがって、この場合、完全 に対称性を復活させることは出来ないのです。ある意味で、7-brane
達が離れて配置され ている状況はbrane
を一点に集めたときに持っていると思われている対称性(brane
の配 位から読み取れる対称性)が自発的に破れていることに対応しています。しかしながら、 このような状況において、brane
配位から読み取れる対称性に全く興味がないわけではあ りません。それどころか、この対称性によって、弦理論やbrane
上のゲージ理論の質量を 持った状態( 質量を持ったBPS
状態)を分類することができるのです15]
。このことは 弦理論の質量を持った状態が何らかの自発的に破れた対称性の表現に属するのでは、とい う以前からの考えと適合しています。実際に、7-brane
達の配位を決めれば 、その対称性 が( 例え自発的に破れていても)理論のBPS
状態のスペクトラムを完全に統制している ことが分ります。この状況は以前から物理学者に興味を持たれていたE
9、E
^
9、E
10 5 やそ の他の拡張された対称性の表現として弦理論のBPS
状態のスペクトラムが与えられるこ とを説明します。このことは大変興味深いことですが 、しばらく先の応用として心に留め ておくことにします。 これから、当面の目的として、どのように非自明な、そして、非U
(
n
)
の対称性が適当 なbrane
配位から現れるかを理解するかと探針上の理論のBPS
状態のスペクトラムがど 3 このことは3
章で説明します。 4 これらもIIB
型超弦理論に背景としてある種の7-brane
配位を導入すれば実現出来ます。 5 これらの対称性の詳しい説明は5
章で行います。4
T
2 退化したT
2 | {z } 24個所S
2 図1:
S
2 上の楕円曲線束 のように与えられるかという二点を説明することを考えていきましょう。このために、次 章では扱う理論の枠組みを説明していきます。 2理論の枠組み
では、どのような枠組みで考えるかを説明していきましょう。 まず、楕円曲線束を使って表わしたK3
曲面上にコンパクト化されたF
理論を考えます。 これは、7-brane
を背景として持つIIB
型超弦理論をS
2 にコンパクト化したものと等価に なっていると考えられます。ここで、この二つの描像を比較してみましょう。始めに楕円 曲線束で表わされたK3
曲面上にコンパクト化されたF
理論がどのようなものか考えてい くことにします。このK3
曲面を構成するには 、まず底空間として2
次元球面S
2 を持っ てきます。この2
次元球面の各点に2
次元トーラスT
2 ( すなわち、楕円曲線)を置きま す。すると、局所的にはS
2T
2 で表わされる4
次元の空間が得られたことになります。 さらに、この空間から滑らかで、閉じたK3
曲面を得るには束として導入された楕円曲線 がS
2 の24
個所の特別な点で退化していなければならないことが知られています16]
( 図1
)。この点上の楕円曲線の複素構造 はi
1と共役な値を持っています 6 。ここで強調し ておきますが 、このS
2 上の特別な24
点がバラバラに存在している限り、全体のK3
曲面 は完全に滑らかで特異性を持ちません。ここで現れる楕円曲線の退化(特異性)は束の特 異性であって、曲面全体の特異性を表わしているわけではないのです。しかし 、興味深い 現象はS
2 上の特別な点がお互いに近づいたときに起ります。このときはK3
曲面に真の 特異性が現れ、特別な現象が起きます。 6 楕円曲線T 2 の複素構造は複素平面の上半平面に値を取る。すなわち、Im
0
。5
i
11
;1
0
;1 2 1 2e
2 i 3 図2:
基本領域( 斜線部) この状況のIIB
型超弦理論への翻訳はある意味で明らかです。F
理論においてK3
曲面 の底空間として現れた2
次元球面S
2 はIIB
型超弦理論の立場でもコンパクト化の空間と して現れます。また、K3
上にコンパクト化されたF
理論の立場では、束である楕円曲線 の複素構造は底空間S
2 の位置に依存し 、S
2 の複素座標をz
とすれば(
z
)
と表わされ ます。この(
z
)
はIIB
型超弦理論の立場では、ディラトン場(
z
)
とアクシオン場a
(
z
)
を 用いて(
z
) =
i
e
;2 (z)+
a
(
z
)
(1)
のように表わされると仮定します。ここで、この(
z
)
は基本領域(図2
)に値をとるもの とします7 。いま、F
理論の立場ではS
2 上の特別な点で(
z
) =
i
1となっていました。当 然、IIB
型超弦理論の立場でも、同様にこの点((
z
) =
i
1となる点)が存在しなければ なりません。これは、S
2 の座標と共にディラトン場(
z
)
やアクシオン場a
(
z
)
の真空期待 値が変化することを意味しますが 、このような変化は通常の( 背景場を持たない)IIB
型 超弦理論では考えられません。これらの変化は何らかの背景場を導入し 、その影響により 起ると考える必要があります。ここで、(
z
)
がコンパクト化の空間S
2 の座標にのみ依存 していることを考えると、背景場はコンパクト化されていない残りの7+1
次元空間全体に 広がりを持っていなければなりません。したがって、ここで導入する背景場は7-brane
で なければならないということが分ります。実際、10
次元に於ける0
形式(
z
)
の電磁双対 場は8
形式であり、磁荷は7-brane
によって担われることが知られているので8 、7-brane
を背景場とすれば(
z
)
の値は変化します。 ここで、7-brane
のまわりで(
z
)
はどのような依存性を持つかを考えてみましょう。ア クシオン場a
(
z
)
がz
平面上の7-brane
が存在する点のまわりを一周すると、7-brane
のR-R
7IIB
型超弦理論が持つSL(2
Z)
双対性により必ず基本領域に値を取ることができます。 8 一般に弦理論の超重力近似におけるp+ 1
形式場の電荷は、弦理論のp-brane
によって担われると解釈 されます17]
。例えばアクシオン場aは0
形式で、その磁荷はD7-brane
が担うことが知られています。6
7-brane
+ 1
+ 1
K
(
+ 1) =
切断 図3: 7-brane
のまわりのモノド ロミー 磁荷を拾ってa
(
z
)
!a
(
z
) + 1
のような変換を受けます。いま、この変換性と(
z
)
は7+1
次元方向には均一で2
次元方向のみに広がりを持つことを考え併せると、7-brane
がz
平 面の原点に存在するとしたときの(
z
)
のz
依存性は(
z
) = 1
2
i
log
z
(2)
となることが分ります。ここで、z
!0
とすると、 !i
1となることから、K3
の底空間S
2 に現れた特別な点(=
i
1となる点)はIIB
型超弦理論では7-brane
が存在する点で あるということが分ります。また、式(2)
のような(
z
)
の依存性は7-brane
が切断(branch
cut)
を導入することを意味します9 。具体的には切断の右側でだったものが 、7-brane
の存在する点を反時計回りにまわりって切断の左側に移動すると+ 1
に変化するという ことになります。ここで 、切断の上でこの変化を吸収するようにモノド ロミーK
10 を導 入します(図3
)。要するに、切断の左側では+ 1
だったものが切断を乗り越えて右側に 移動したときにはK
(
+ 1) =
になっているものとします。今の場合、このK
はK
=
1
;1
0 1
!(3)
と表わされるということになります。ここで、は一般のSL
(2
Z)
の元K
=
a b
c d
! に 9log
zは多価関数なので必ず切断を持ちます。 10 この定義は通常のモノド ロミー行列の逆行列に対応しますが 、このノートではZwiebach
氏に倣ってこ のKをモノド ロミーと呼ぶことにします。7
対し
K
=
a
c
+
+
d
b
(4)
のように変換を受けるものとします。 実は、IIB
型超弦理論の枠組みの中で背景場として導入できる7-brane
は一種類ではあ りません。そのことを説明しておきましょう。まず、IIB
型超弦理論の7-brane
のうちで 通常の開弦(基本弦)を止める(発する)ことの出来るbrane
はD7-brane
と呼ばれます。 式(3)
で求めてたモノド ロミー行列は実はこのD7-brane
に対するものでした。ところが 、IIB
型超弦理論の超重力近似ではNS-NS 2
形式場とR-R 2
形式場が存在します。さらに、 これらの2
形式場はSL
(2
Z)
双対性の変換で混ざりあいます。したがって、IIB
型超弦理 論に現れる弦はR-R
とNS-NS
の二つの電荷を同時に持ち、この二つの電荷の値によって 特徴づけられています。そこで、これからはNS-NS
電荷p
、R-R
電荷q
をもつ弦を(
pq
)
弦と呼ぶことにします。この書き方を用いればいわゆる基本弦は(1
0)
弦ということにな ります。ここで、D7-brane
が基本弦((1
0)
弦)を止めて(発して)いる状況のSL
(2
Z)
変換を考えてみましょう。一般に適当なSL
(2
Z)
変換で、基本弦を(
pq
)
弦に変換するこ とができるので11 、D7-brane
もなにか(
pq
)
弦を止める( 発する)ことの出来る7-brane
に変換されていなければなりません。すなわち、IIB
型超弦理論では7-brane
も弦と同様 にp
、q
で特徴づけられるということになります。ここで、この(
pq
)
弦を止める( 発する) ことの出来る7-brane
をpq
]7-brane
と呼ぶことにします。D7-brane
は1
0]7-brane
とい うことになります。 いま、pq
]7-brane
のモノドロミーを考えてみましょう。pq
]7-brane
の構成法からD7-brane
(= 1
0]7-brane
)との違いはSL
(2
Z)
による変換分だけということになります。こ こで、背景配位全体にg
2SL
(2
Z)
という変換を作用させてみましょう。すると、はg
に変換され、モノドロミーを感じた後のK
はgK
に変換されます。したがってこの場合 のモノモド ミーの変換はg
!gK
=
gKg
;1g
となります。このことからg
2SL
(2
Z)
による変換後のモノド ロミーはgKg
;1 であることが分ります。ところで、g
は(1
0)
弦を(
pq
)
弦に変換するようなSL
(2
Z)
の元だとするとg
=
p
q
!(5)
のような形に書けます12 。( 弦の電荷(
pq
)
のg
2SL
(2
Z)
による変換はg
(
pq
)
T で与え られるものとします。)ここで、K
は1
0]7-brane
のモノド ロミー(3)
だったので、一般 11 厳密にはp、qが互いに素なものに変換される。 12 はdet
g= 1
を満たす任意の整数。8
退化した
T
2 退化したT
2T
22
サイクル7-brane
7-brane
弦S
2 図4: K3
曲面の2
サイクルと弦 のpq
]7-brane
のモノド ロミーK
pq]はK
pq]=
gKg
;1=
p
q
!1
;1
0 1
!p
q
! ;1=
1 +
pq
;p
2q
21
;pq
!(6)
で与えられます13 。 今までの議論で、F
理論においてコンパクト化したK3
曲面の底空間にあらわれる特別な点は
IIB
型超弦理論では何らかの7-brane
を表わしていることが分りました。では、IIB
型超弦理論における(
pq
)
弦はF
理論ではどのように解釈できるかを考えてみましょう。IIB
型超弦理論では7-brane
は弦の止れる点を表わしていました。F
理論の立場ではこの 点は束である楕円曲線が退化する点です。したがって、楕円曲線束上のあるサイクルを考 えると、この点上でサイクルは一点に退化し消えているように見えます。これは、IIB
型 超弦理論の弦と(
楕円曲線のあるサイクル)
(
S
2 上の線分)
から作られるK3
曲面の2
サイ クルとが対応していることを意味します。より厳密にはIIB
型超弦理論の(
pq
)
弦(
S
2 上 のある線分)
とK3
の2
サイクル((
楕円曲線のあるp
+
q
サイクル)
(
S
2 上の線分)
)が 対応していることになります( 図4
)。また、IIB
型超弦理論の持つSL
(2
Z)
双対性はそ のまま、K3
上のF
理論においては束である楕円曲線の複素構造のSL
(2
Z)
変換に対する 不変性に対応します。 これで 、理論の枠組み、特にF
理論とIIB
型超弦理論の対応の説明を終りたいと思い ます。 ( 質問)K3
の2
サイクルには物理的な意味があるのですか? 13 この計算において部分の詳しい情報は必要ではありません。det
g= 1
という条件だけで 、計算が可 能です。9
( 回答)それは分かりません。
F
理論自体、まだ正体が分からないんです。し かし 、M
理論の描像でみれば 、2
サイクルは完全に物理的なものです。M
理論 の描像は、今考えているIIB
理論を更にS
1 コンパクト化してT-dual
をとり、11
次元方向をひらくことで得られます。このとき、IIB
理論の(
pq
)
弦はM
理 論の2
サイクルp
+
q
にM2-brane
が巻き付いたものに移りますから、2
サ イクルには物理的な意味があります。 3モノド ロミーと
7-brane配位の分類
前章では7-brane
が一枚存在する場合のモノド ロミーを求めました。しかし 、実際の理 論では複数枚の7-brane
が同時に存在し全体としてモノド ロミーを持ちます。これは本質 的に7-brane
が一枚のときとは異なるモノド ロミーです。このような状況をふまえ、この 章ではどのようなモノド ロミーや7-brane
配位が許され 、どのような性質を持つのかを議 論していきたいと思います14 。 3.1モノド ロミーの分類
モノド ロミーの分類をするにあたって、SL
(2
Z)
変換で結び付いているモノド ロミーは 同一のものと考えることにします。例えばモノド ロミーK
に関していえば 、g
2SL
(2
Z)
としたときK
!gKg
;1(7)
のような変換で移り変わるものは同一のものとする、ということです。これは、IIB
型超 弦理論が持つSL
(2
Z)
双対性を考えれば自然なことです。 いま、式(7)
の変換でTr
K
は不変なので、この値によってモノド ロミーの分類を行うこ とにしましょう。実はこのTr
K
の値はSL
(2
Z)
変換で不変である以上に重要な量になっ ています。何故重要かというとTr
K
の値を jTr
K
j= 2 : Parabolic
jTr
K
j<
2 : Elliptic
jTr
K
j>
2 : Hyperbolic
(8)
のように分類すると、モノド ロミー変換による固定点の性質が分類出来るからです。とこ ろで 、IIB
型超弦理論において7-brane
直上のの値は7-brane
の作り出すモノド ロミー によって変換されません15 。したがって、モノド ロミーの固定点とは7-brane
直上のの 14 この章の内容は3]
に詳しく書かれています。 15 一般に多価関数を考えた場合、分岐点での値は一価です。今の場合、7-brane
の位置が分岐点であり がどのような多価関数であっても分岐点の直上での値は唯一定まり、当然、モノド ロミーによる変換も受け ません。10
値に他なりません。このことは、固定点の性質の分類が
7-brane
配位の性質を知る上で重 要な役割を持つことを意味します。このことを具体的に見ていくことにしましょう。 固定点とはK
=
a b
c d
!(
ここで、det
K
= 1)
の作用によってある値を変換したとき、 またもとに戻る値のことなので、この値をとするとK
a
+
b
c
+
d
=
(9)
を満たします。この方程式の解は= 12
c
(
a
;d
)
q(Tr
K
)
2 ;4
(10)
で与えられます。ここで重要なのはTr
K
の値を(8)
のように分類することによってこの 解の性質が大きく変ることです。このことを確かめるために、まずは、それぞれの場合で の固定点の性質をおおまかに見てみましょう。 1)Parabolic(
jTr
K
j= 2)
の場合。 式(10)
の判別式は0
となりは有理数ということになります。有理数の固定点は基本 領域の点i
1とSL
(2
Z)
変換で結び付いています(図5a
)。このことは、以下のようにし て分ります。有理数の固定点を二つの互いに素な整数r
、s
を使って=
r sと表わしたとし ます。このをSL
(2
Z)
変換すると e +f g +h となり、g
、h
をうまくとれば分母を0
にできる ので 、変換後のは発散します。ここで、複素平面に無限遠点を加えてコンパクト化し ているとすれば 、この発散した値はi
1と対応していることになります。このことは、式(6)
で与えられる一枚の7-brane
によるモノド ロミーK
がTr
K
= 2
を満し 、また7-brane
直上でがi
1になることに正しく対応しています。 2)Elliptic(
jTr
K
j<
2)
の場合。 判別式が負では虚数となり、複素平面でみると上半平面の一点を与えます 16 。この ような点はSL
(2
Z)
変換により、基本領域のなかの(i
1以外の)一点に移すことができ ます(図5b
)。このようなモノドロミーは一枚の7-brane
から構成することはできません。 本質的に複数枚の7-brane
が必要で、これらの7-brane
達が一点に集まった場合、そこで のの値はこの基本領域内の一点の値ということになります。 3)Hyperbolic(
jTr
K
j>
2)
の場合。 は無理数 17 となりますが 、この無理数の固定点は非常にやっかいです。証明はしま せんが 、この固定点をSL
(2
Z)
変換で基本領域内に移すことはできません( 図5c
)。言 16 式(10)
の二つの解のうち、Im
0
となるものを選ぶということです。 17Tr
Kは整数なのでjTr
Kj>2
であれば p(Tr
K)
2 ;4
は必ず無理数です。11
i
1i
1i
1i
1へi
i
i
0
0
0
基本領域へ × 有理数 無理数(a)
(b)
(c)
図5:
基本領域への変換 い換えれば 、このような値を複素構造として持つ楕円曲線は存在しないということです。 このことは 、ある7-brane
配位が与えられたときに全体のモノド ロミーがHyperbolic
に なった場合、これらの7-brane
達を一点に集めることが出来ないことを意味します。何故 なら、これらが一点に集まるとその点でのの値は無理数になるのですが 、このような値 を複素構造として持つ楕円曲線は存在せず、楕円曲線束を使ったK3
曲面上のF
理論の描 像が破綻してしまうからです。このようにTr
K
の値による分類は非常に重要であること が分ります。 では、Tr
K
の値によって具体的にどのようなモノドロミーが許されるのかを見ていきま しょう。今考えてているモノドロミーK
はSL
(2
Z)
の元なので、2
行2
列の行列でdet
K
=1
です。したがって、Caylay-Hamilton
の公式によりK
2 ;(Tr
K
)
K
+
1= 0
(11)
を満します。これにより、例えばTr
K
=0
のときK
2=
;1となることが分ります。SL
(2
Z)
変換分を除いてこのような性質を持つモノド ロミーはS
、S
;1=
;S
の二つがあります 18 。ここで、S
はS
=
0
;1
1 0
!(12)
です。この二つのモノド ロミーがSL
(2
Z)
変換で移りあえないことは以下のようにして 分ります。もし 、この二つの行列があるg
2SL
(2
Z)
による変換で移りあえるとするとgS
=
;Sg
(13)
という関係があるはずです。ところが 、g
=
a b
c d
! とおいて式(13)
を解いてみるとg
=
a b
b
;a
!(14)
18Appendix B
参照。12
となります。しかし 、この行列の行列式は
det
g
=
;a
2 ;b
2 となりa
、b
が整数のとき1
に なり得ません。したがってg
はSL
(2
Z)
の元であるとすることに矛盾します。このことか らS
、S
;1 は独立な二つのモノド ロミーであることが分ります。同様な議論でTr
K
=
1
のときも独立な元を求めることが出来ます。具体的にはT
をT
=
1 1
0 1
!(15)
とすると、独立なモノド ロミーはTr
K
= 1
のときST
、(
ST
)
;1 、Tr
K
=
;1
のとき;ST
、 ;(
ST
)
;1 で与えられることが分ります19 。 次にTr
K
=
2
の場合、独立な元は1
;n
0 1
! 、 ;1
n
0
;1
!(16)
で与えられます20 。この場合、n
の値によって7-brane
配位の性質が変ってくるので、そ れについて少し説明をしておきましょう。 いま、このモノド ロミー変換によりは ! ;n
に変換されるので、この変換性を 満足する(z
が十分大きな領域での21 )(
z
)
の振る舞いは(
z
)
n
2
i
log
z
(17)
で与えられます。ここで、式(16)
のようなモノドロミーを生成する7-brane
達が一点に集 まっているとするとz
は限りなく0
に近づくことができます。しかし 、n <
0
の場合、こ の極限での値は;i
1とってしまいます。これはF
理論の立場では束である楕円曲線が 定義できず、IIB
型超弦理論の立場ではを与えるディラトン場の真空期待値が虚数にな ることに対応します。したがって、n <
0
の場合は矛盾なく7-brane
達を一点に集めるこ とは出来ないことになります。この場合、7-brane
達が一点に集まれる条件は全体としてn
0
の場合のモノド ロミーを持つことということになります。 この節での結果をまとめると表1
のようになります。 3.2 SL(2Z)の
Abel化
これから、具体的に上で分類されたモノド ロミーを与える7-brane
配位とそこでの対称 性を考える上で重要な定理の証明をしていきたいと思います。いま、あるモノド ロミーが 19Appendix B
参照。 20Appendix B
参照。 217-brane
達がある程度離れて配置されているとして、その距離が無視出来るほど 十分遠方という意味で す。13
表
1: Tr
K
の値によるモノド ロミーの分類Tr
K
の値 モノド ロミー7-brane
配位の性質Tr
K <
;2
7-brane
配位は一点に集まれない。Tr
K
=
;2
;1
n
0
;1
!n
0
のとき7-brane
配位は一点に集まれる。Tr
K
=
;1
;ST
,
;(
ST
)
;17-brane
配位は一点に集まれる。Tr
K
= 0
S
,
S
;1=
;S
7-brane
配位は一点に集まれる。Tr
K
= 1
ST
,(
ST
)
;17-brane
配位は一点に集まれる。Tr
K
= 2
1
;n
0 1
!n
0
のとき7-brane
配位は一点に集まれる。Tr
K >
2
7-brane
配位は一点に集まれない。 与えられたときに、そのモノド ロミーを構成するために最低何枚の7-brane
が必要かを知 ることは非常に重要なことです。この情報を引き出す上で重要な定理として ( 定理):SL
(2
Z)
のAbel
化はZ 12である。 というものがあります。これを以下の手順で証明していきたいと思います。 まず、G
=
SL
(2
Z)
とし 、G
cをこのG
の交換子部分群とし ます。交換子部分群とはgh
2G
とすると、ghg
;1h
;1 の形からなる全ての元で構成される部分群です。このとき、i)
G
cは正規部分群。 証明)ある群G
の部分群H
が正規部分群であることの定義は8a
2G
に対して、aH
=
Ha
となることです。いま、H
=
G
cとすると、aghg
;1h
;1=
g
0h
0g
0;1h
0;1a
となるgg
0hh
0 2G
が存在すれば良いのですが 、これはg
0=
aga
;1 、h
0=
aha
;1 とすれば得られるので 、G
c は正規部分群。証終。G
cが正規部分群であることが示されたので、この部分群を使ってG
の商群G=G
cを同 値関係a
aghg
;1h
;1a
2G ghg
;1h
;1 2G=G
c(18)
で定義することができます22 。このとき、この商群に対して、以下のことが成り立ちま す。ii)
G=G
cはAbel
群( 可換群)。 22 この同値関係はSL(2
Z)
の変換で結び付くという意味での同値関係、式(7)
とは異なります。式(18)
においてg=
a ;1 とすれば 、式(7)
は満たされますが 、逆は成り立ちません。14
証明)商群
G=G
cの元、AB
をab
2G
を用いてA
=
aG
c、B
=
bG
cと表わすことにします。このとき、
AB
=
aG
cbG
c=
abG
cG
c=
abG
cとなりますが 、G
c=
b
;1a
;1baG
cと書 き換えれば
AB
=
abb
;1a
;1baG
c=
baG
c=
BA
となるのでAbel
群( 可換群)。証終。 ここで 、g
2G
からgG
c 2G=G
cの写像を:
g
!gG
c と呼ぶことにします。このと き、このに対して以下のことが成り立ちます。iii)
は準同型写像。 証明)写像が準同型であるとは 、gh
2G
に対し(
gh
) =
(
g
)
(
h
)
が成り立つことで す。今の場合(
gh
) =
ghG
c=
ghG
cG
c=
gG
chG
c=
(
g
)
(
h
)
となりは準同型写像。 証終。 また、G
=
SL
(2
Z)
に対して以下の良く知られた事実があります。iv)
G
は二つの元SU
=
ST
により生成される。ここで、U
3=
S
2=
;1。 証明)良く知られた事実なので省きます18]
。ちなみにST
は式(12)
、(15)
で与えられま す。証終。 この事実により、G
=
SL
(2
Z)
の任意の元g
はU
とS
を適当な順番にかけたもので表 わされることが分ります。もしこの元g
がU
をn
回、S
をm
回適当な順番でかけたもの であるなら、ii)
、iii)
の事実により(
g
) =
U
nS
mG
c となります。さらに、U
3=
S
2=
;1 を考慮すると、G=G
cの独立な元として許される代表元は f1;U
2SUSU
2US
;1U
2S
;U
;S
;U
2 ;US
g(19)
の12
個で尽くされることが分ります。さらに、(
;U
2S
)
2U
(
;U
2S
)
3S
(
;U
2S
)
11 ;US
(
;U
2S
)
12 1となるので、式(19)
はG=G
cが;U
2S
を生成元とする可換群Z 12で あることを示しています。一応、これで定理の証明ができたことになるのですが 、7-brane
の枚数とモノドロミーの関係を見るためにもう少しこのG=G
cの性質をみておくことにし ます。簡便のために式(19)
で与えた独立な元を順番に f0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
g(20)
と名付けておきます。このとき1
枚の7-brane
からのモノド ロミーK
pq]に対して以下の 事実が成り立ちます。v)
(
K
pq]) = 1
2Z 12、さらに(
K
1K
N) =
N
2Z 12。ここで、K
i=
K
p iqi ]。 証明)K
10]=
;U
2S
なので 、(
K
10]) = 1
。ここで、商群G=G
cを作るときの同値関係 はK
10]K
10]ghg
;1h
;1(
gh
2G
)
で与えられますが 、g
=
K
;1 10] とすれば 、K
10]hK
10]h
;1 となります。したがって、どんなpq
]7-brane
のモノド ロミーK
pq]もK
10]と15
A;brane l枚 z }| { B;brane m 枚 z }| { C;brane n枚 z }| { | {z } 切断 図
6: 7-brane
の配位と切断 同じ 同値類に入っていることになり、(
K
pq]) =
(
K
10]) = 1
となります。これにより(
K
1K
N) =
N
も明らかです。証終。v)
の結果からモノド ロミーK
が与えられたとき、(
K
)
が必要な7-brane
の枚数を与え ていることが分ります。具体的には(
K
) =
N
であれば 、このモノドロミーをもつ7-brane
配位を構成するにはN
mod 12
枚必要であることが分ります。この事実をふまえ次節では7-brane
配位の分類とその7-brane
配位による対称性を考えていきたいと思います。 3.3 7-brane配位の分類と対称性
では 、先ほどTr
K
の値で分類したモノド ロミーがど のような7-brane
背景で実現し 、 また、どのような対称性を持つかを具体的に見ていきましょう。まず、7-brane
配位の分 類の便宜のため、幾つかの7-brane
に名前をつけておきたいと思います。まず、通常のD7-brane
をA-brane
と呼ぶことにします。また、B-brane
やC-brane
も以下ように定義します。
A
-brane = 1, 0]7-brane (= D7-brane)
、 B-brane = 1,
;1]7-brane
、 C-brane = 1, 1]7-brane
。 これらの7-brane
のモノド ロミー行列をK
A、K
B、K
Cと表わすことにすると式(6)
よりK
A=
1
;1
0 1
! 、K
B=
0
;1
1 2
! 、K
C=
2
;1
1 0
!(21)
で与えられます。 ここで、A、B、C-brane
を使った7-brane
配位の与え方を統一しておきましょう。例え ば 、7-brane
配位をA l B m C n(lmn
0
lmn
6= 0
)のように書いたとすると、これは左からA
-brane
をl
枚、B-brane
をm
枚、C-brane
をn
枚並べ、さらにそれぞれの7-brane
から下方に切断が走っているものとします( 図
6
)。したがって、この背景全体を反時計回りにまわったときに感じるモノド ロミーは切断を横切る順番にそれそれの
7-brane
のモ ノド ロミーをかけてK
nCK
BmK
lAということになります。 ではこれから、具体的にモノド ロミーと7-brane
配位の関係についてみていきたいと思 います。1) Tr
K
= 2
のとき。 この場合、独立なモノド ロミーは表1
と式(21)
よりn >
0
の場合K
nAで与えられます。 このときの7-brane
配位はA n ということになります。ここで、良く知られた事実なので すが 、同一のbrane
がn
枚重なったときにbrane
上に現れる対称性はSU
(
n
) =
A
n;1で す。したがって、この場合もこの背景の持つ対称性はSU
(
n
) =
A
n;1 ということになり ます。これは3.1
節で示したようにこれは1
点に集まれる7-brane
配位で小平の分類ではA
n;1として知られるものです。n
= 0
の場合は事情が異なります。3.2
節で示したように、複数枚の7-brane
から単位行列 のモノドロミーを出すには最低12
枚必要であることが分ります。実際、K
CK
BK
CK
BK
8 A=
1となるので、7-brane
配位はA 8 BCBCということになります。このときの対称性はE
^
9 という対称性になります。n <
0
の場合は一点に集まれない7-brane
配位で、対称性はE
^
9+nとなります。 ここで現れたE
^
nという対称性については5
章で説明したいと思います。2) Tr
K
= 1
のとき。 この場合、独立なモノド ロミーはST
、(
ST
)
;1 です。ここで、式(19)
より(
ST
) = 2
、((
ST
)
;1) = 10
となることが分ります。したがって、それぞれのモノド ロミーを出す7-brane
配位にはそれぞれ、最低でも2
枚と10
枚の7-brane
が必要なことが分ります。さら に、これらのモノド ロミーはST
K
CK
A、(
ST
)
;1K
2 CK
BK
7 A となっています23 。こ れより、7-brane
配位はそれぞれ、AC、A 7 BC 2 で与えられることが分ります。両者とも1
点に集まれる7-brane
配位です。 ここで 、これらの7-brane
配位の与える対称性を考えてみましょう。ACの場合、A-brane
とC-brane
の間には開弦を飛ばすことができません。したがって、brane
間に飛ぶ開弦に由来する対称性の拡大は起らず、なんの対称性も持たないことになります。A 7 BC 2 の場合は
brane
間に様々な開弦や接合を持つ開弦を飛ばすことができ、これらを注意深く 解析することによりE
8の対称性を持つことが分ります。このことは4
章で詳しく述べま す。これらの配位は小平の分類ではそれぞれH
0、E
8と呼ばれるものになっています。3) Tr
K
= 0
のとき。 23 ここで、等号\="
ではなく同値関係\
"
を使ったのは両者は完全には一致せず、SL(2
Z)
による変換 で結び付いているからです。17
この場合、独立なモノドロミーは
S
、;S
の二つでした。ここで、(
S
) = 3
、(
;S
) = 9
となります。このことからこれらのノモド ロミーを出すには3
枚と9
枚の7-brane
が必要 なのですが 、実際にK
CK
AK
AS
、K
2 CK
BK
6 A ;S
となっていることが分ります。し たがって、モノド ロミーS
、;S
を持つ7-brane
配位はそれぞれAAC、A 6 BC 2 というこ とになります。これらの
7-brane
配位の持つ対称性ですが 、AACの場合はA-brane
間を飛ぶ開弦により
SU
(2)
の対称性を持ちます。また、A 6 BC 2 はA 7 BC 2 の場合と同様の解析によりE
7 の対称性を持つことが分ります24 。これらの背景は小平の分類ではH
1、E
7と呼ばれるも のです。4) Tr
K
=
;1
のとき。 この場合、独立なモノドロミーは;ST
、;(
ST
)
;1 の二つでした。(
;ST
) = 4
、(
;(
ST
)
;1) =
8
で 、K
CK
AK
AK
A ;ST
、K
2 CK
BK
5 A ;(
ST
)
;1 となっているので、7-brane
配位は それぞれ 、AAAC、A 5 BC 2 ということになります。 これらの背景の持つ対称性は前の場合と同様の理由によりAAACがSU
(3)
でA 5 BC 2 がE
6ということが分ります 25 。これらは小平の分類によりH
2、E
6として知られていま す。5) Tr
K
=
;2
のとき。 この場合のモノド ロミーは;1K
nAのように考えることができます。したがって、;1となる
7-brane
配位を見つければ 、それにA-brane
を加えることにより、7-brane
配位を構成することができます。このことから、まずはモノド ロミー;1を与える
7-brane
配位を 考えることにしましょう。いま、(
;1) = 6
であり、さらにK
CK
BK
4 A=
;1なのでモ ノド ロミー;1を与える7-brane
配位はA 4 BCであることが分ります。ここで 、この配 位にA-brane
を加えていくことによってn
0
の系列が得られます。また、元々;1の モノド ロミーを与える配位は4
枚のA-brane
を含んでいるので 、これを取り除いていく ことによって、n
=
;1
;2
;3
;4
の場合の7-brane
配位も得られます。具体的にはこれ らの配位はA n+4 BCで与えられます。このとき、対称性はSO
(2
n
+ 8)
で与えられます 26 。特にn
=
;1
;2
;3
の場合はそれぞれSO
(6)
SU
(4)
、SO
(4)
SU
(2)
SU
(2)
、SO
(2)
U
(1)
で 、n
=
;4
のときは対称性はありません 。ここで 、n
0
は一点に 集まれる7-brane
配位で 、小平の分類ではD
n+4で知られる理論になっています。また、n
=
;4
;3
;2
;1
0
での7-brane
背景をD3-brane
による探針で調べると、D3-brane
上の理論が
N
f= 4 +
n
のSeiberg-Witten
理論なっています。 244
章参照。 254
章参照。 264
章参照。18
E
8E
7E
6 図7:
E
型のDynkin
図E
5=
D
5 図8:
E
5のDynkin
図6)
その他の場合。 今までの結果からA
n、D
n、E
n(
n
= 6
7
8)
、H
n(n
= 0
1
2)
の四つの系列が得られ 、 それぞれの7-brane
配位はA n+1 、A n+4 BC、A n;1 BC 2 、A n+1 Cで与えられることが分り ました。ここで、E
nやH
nの系列の拡張を考えてみましょう。E
nの場合、E
8の7-brane
配位から1
枚づつ A-brane
を取り除くことによって、E
7、E
6 が得られます。この様子をDynkin
図でみると( 図7
)のように単純根を表わす点を端か ら一つづつ取り除くことに対応します。逆にA-brane
の数を増やせばE
n(
n
9)
を得る こともできます。 ここで、E
6のDynkin
図からもうひとつ A-brane
を取り除くことを考えましょう。こ のときの、7-brane
配位はA 4 BC 2 で与えられますがこれをE
5と呼ぶことにします。この とき様子をDynkin
図でみると( 図8
)のようになり、D
5SO
(10)
のDynkin
図と一致 します。したがって、この背景の持つ対称性はD
5SO
(10)
であることが予想されます。 しかし 、D
5の7-brane
配位は A 5 BCであり、一見すると異なる配位のように思われます が 、これらは本当に違うものなのでしょうか。 この問題を考えるために、ある配位における7-brane
の順番の入れ替え、すなわち切断 の取り方を変えたときにどのような変化が起るかを考えてみましょう。 まず、2
枚の7-brane
がある場合を考えましょう(図9a
)。ここで、それぞれをXz 1、 Xz 2 と呼び 、それぞれのモノド ロミーをK
1、K
2とします。また、z
1=
p
1q
1 ! 、z
2=
p
2q
2 ! 、z
1z
2=
;z
T 1Sz
2= det
p
1p
2q
1q
2 !(22)
としておきます。いま、Xz 1から延びる切断を Xz 2の右側に移動さることを考えましょう (図9b
)。切断の移動前、Xz 1から延びる切断の左側では、右側では Xz 1のモノド ロミー の影響でK
1となっていました。切断を移動させた後はこのモノドロミーの影響がなくる ので、図9b
の斜線部分のは最初に比べて(
K
1)
;1 の作用の分だけずれます。このため、19
Xz 1 Xz 1 Xz 1 Xz 2 Xz 2 Xz 2 +(z 1 z 2 )z 1
K
1K
2K
1K
2K
1K
2K
1(
K
1)
;1K
1(
K
1)
;1K
2K
1(
K
1)
;1K
2K
1(a)
(b)
(c)
図9:
切断の取り替え:最初の状態(a)
、切断の移動(b)
、最後の状態(c)
K
1だった部分はとなります。一方、 Xz 2から延びた切断を横切るとは(
K
1)
;1K
2K
1 になります。これは、最初K
2だったモノドロミーが切断の移動後では(
K
1)
;1K
2K
1になっ たことを意味します。このことは、もともとz
2というラベルを持っていた Xz 2が切断の移 動によりz
2+ (
z
1z
2)
z
1というラベルをもつ Xz 2 +(z 1 z 2 )z 1に変化したことに対応します。 結局7-brane
配位はXz 1 Xz 2から Xz 2 +(z 1 z 2 )z 1 Xz 1に変化したことになります。同様な議論 で2
枚の7-brane
を逆に入れ替えることも可能です。この場合、7-brane
配位はXz 1 Xz 2 か らXz 2 Xz 1 +(z 1 z 2 )z 2 に変化します。 ここで、具体例としてE
5とD
5の配位の比較をしてみましょう。まず、それぞれのモ ノド ロミーはK
2 CK
BK
4 A=
;2 1
;1 0
!=
;K
11]K
CK
BK
5 A=
;1 1
0
;1
!=
;K
10](23)
となっているので、両者はSL
(2
Z)
変換g
によりK
11]=
gK
10]g
;1g
=
1 0
1 1
!(24)
のように結び付いています。ここで、この変換g
でA 5 BCの7-brane
配位はC 5 AX 12]の ように変換されます。この配位に上で考えた7-brane
の順番の取り替えを適当に行うと C 5 AX 12]=
AX 01])
5 X 12]=
A(
X 01])
4(
X 01] X 12]) =
A(
X 01])
4 CX 01]=
A(
X 01])
2 CA 2 X 01]=
A(
X 01])
2 A 2 BX 01]=
A((
X 01])
2 A)
A(
BX 01]) =
A 2 B 2 A 2 B=
A 4(
X 3;1])
2 B=
A 4 BC 2(25)
20
のように変換されます。これにより、
E
5とD
5の7-brane
配位の同等性が示せました。 では、E
n系列の話に戻りましょう。E
5からもう一枚 A-brane
を取り除くと7-brane
配 位はA 3 BC 2 になり、これをE
4と呼びます。この場合のDynkin
図はA
4=
SU
(5)
のもの と同じものになり、対称性はSU
(5)
を持ちます。しかし 、A
4の7-brane
配位は A 5 であり7-brane
の枚数が違うので本質的に違う配位になっています。実はこのE
4はSU
型の対称 性を持つもう一つの系列H
nのうち、H
4と同等であることが示せます。H
1、H
2はそれぞれ対称性として
SU
(2)
、SU
(3)
を持ち、その7-brane
配位はAAC、AAACで与えられます。これを拡張して、
H
n系列の7-brane
配位をA n+1 Cで与えるとします。この系列はn
+ 1
枚のA-brane
間を飛ぶ開弦に由来するSU
(
n
)
の対称性を持ちます。ここで、H
3はSU
(4)
D
3の対称性を持つのでD
3と等価であると考えられます。同様にH
4はE
4と等 価と考えられます。これらの等価性はE
5とD
5の等価性を示したときと同様に、SL
(2
Z)
変換と7-brane
配位の順番の取り替えにより証明することが出来ます。E
型のA-brane
の 数をさらに減らしていくとE
3、E
2、E
1も同様に定義できて、それらの対称性はそれぞれSU
(3)
SU
(2)
、SU
(2)
U
(1)
、SU
(2)
であることが分ります。また、E
nの7-brane
配 位は A n;1 BC 2=
A n;2 BX 01] C 2=
A n;2 BA 2 X 01]=
A n X 3;1] X 01] K;1 A A n X 2;1] C(26)
と変形されますから、X 2;1] CからE
0が得られます。E
0は対称性を持ちません。 上記の変形はn
= 1
では成り立ちませんから 、E 1=
BC 2 とE~
1=
AX 2;1] Cが等し いことは示されていません。実際、E 1では7-brane
の電荷をz
i(
i
= 1
2
3)
とすると、切 断の取り方を変えてもz
iz
jは偶数にしかなりませんから、E~
1には等しくありません。 この違いは、D3-brane
探針上ではスペクトラムの違いとして観測されます27 。モノド ロ ミーとbrane
の枚数が同じであっても、異なる理論を与える場合があるわけです。数学的 には、特異点の次元を1
上げてE
2になるようなdel Pezzos
面が二種類あることに対応し ています。 この節での結果をまとめると表2
のようになります。 ここで 、それぞれの系列の7-brane
配位はA
n:
A n+1 、D
n:
A n BC、E
n:
A n;1 BC 2 、H
n:
A n+1 Cで与えられます。 4対称性と表現
前章では異なる物理を与える7-brane
配位を分類し 、表2
を得ました。表には、各配位 に対して現れると推察される対称性が書いてあります。馴染みのある結果は、A n+1 とい 27 E 1を背景場としてとった場合、D3-brane
上に現れる粒子の電荷には p+
q= 0(mod2)
という制限がつ きますが 、E~
1にはこのような制限はつきません。21
表
2: Tr
K
の値による7-brane
配位と対称性の分類Tr
K
H
系列E
系列Tr
K
;8
H
nn
9
Tr
K
=
;7
H
8(
SU
(9))
E
0(
対称性無し)
Tr
K
=
;6
H
7(
SU
(8))
E
1(
SU
(2))
6= ~
E
1(
U
(1))
Tr
K
=
;5
H
6(
SU
(7))
E
2(
SU
(2)
U
(1))
Tr
K
=
;4
H
5(
SU
(6))
E
3(
SU
(3)
SU
(2))
Tr
K
=
;3
H
4=
E
4(
SU
(5))
Tr
K
=
;2
D
0(
無し),
D
1,
D
2,
D
3=
H
3,
D
4,
D
5=
E
5,
D
系列Tr
K
=
;1
H
2(
SU
(3))
E
6Tr
K
= 0
H
1(
SU
(2))
E
7Tr
K
= 1
H
0(
無し)
E
8Tr
K
= 2
, ^
E
8=
E
9, ^
E
9,
A
0(
無し),
A
1,
A
2,
A
系列Tr
K
3
E
nn
10
うbrane
配位の下でA
nの対称性が現れるというものでしょう。これは、開弦を群の生成 子に対応付けることで説明されています。この説明を任意のbrane
配位の場合に拡張し て、対称性を理解するのがこの章の目標です28 。 4.1接合を持つ弦
基本弦((1
0)
弦)
は、D1-brane((0
1)
弦)
に端点を持つことができます(図10a
)。しかし 電荷の保存が成り立つことを要請すると、図10b
のように(1
0)
(0
1)
弦と(1
1)
弦が一点 で交わっているべきです。これがSchwartz
によって導入された弦の接合(string junction
) です7]
。一般にはP 3 i=1(
p
iq
i) = (0
0)
を満たす3
本の弦が一点に流れ込んでいるような ものが考えられます。 接合を持つ弦は、IIB
理論において開弦と同じ役割を果します。理由は次のようなもの です。pq
]7-brane
の切断を(
rs
)
弦が横切ったとします(図11a
)。このとき弦の電荷は、 モノド ロミーにより切断の前後でr
s
! !K
pq]r
s
!=
1 +
pq
;p
2q
21
;pq
!r
s
!=
r
s
!+ (
qr
;ps
)
p
q
!(27)
と変換されます。ここで 、(
rs
)
弦を上方に動かしてpq
]7-brane
を横切らせた場合を考 28 この章の内容は2] 3]
に詳しく書かれています。22
(0
1)
(0
1)
(1
0)
(1
0)
(1
1)
(a)
(b)
図10: (a)D1-brane
を端点に持つ基本弦(b)
接合を持つ弦(a)
(b)
pq
]
r
s
!r
s
!K
pq]r
s
!K
pq]r
s
! )(
qr
;ps
)
p
q
! 図11:
開弦と弦の接合(Hanany-Witten
効果) えてみて下さい( 図11b
)。左右にのびた弦の電荷は(27)
式の分だけ異なりますから、電 荷が保存しているためにはpq
]7-brane
から(
qr
;ps
)
本の(
pq
)
弦が出てくる必要があります(