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無限次元の対称性

ドキュメント内 paper4.dvi (ページ 32-35)

この節では、fK(z)1の場合の代数を具体的に調べていきます36

前節で、fK(z) = 1の場合にはアフィン化が起こると述べました。数学の知識として、ア

フィンLie代数G^の根には長さが2のもの以外に長さが0のものが含まれていることが知 られています。これを虚根~と呼びます。~は長さ2の単純根の線形接合で与えられ、全て の根~に対して~ ~= 0を満たします。弦の接合で虚根に対応するものは、() = 0

満たすことから種数1、境界の数が0ですから、底空間上のループであることが分かりま す。また( ) = 0より、このループは7-brane配位全体の周りを回っています(図17

接合がとれるのはfK(z) = 1のときだけであることが示せます。前節に引続き、既知

36この節の内容は4]に詳しく書かれています。

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のbrane配位をGとし 、そのモノド ロミーをKとします。新たに加える7-braneの電荷

はzでモノド ロミーはKzです。このときz0弦のループが作れるための条件は

KzKz0 =z0 (36)

です。ループのうちXzの切断を横切る部分に注目すると、ある整数nに対してKz0;z0 = nzが成り立つことが分かります。さらにt= TrKとして(K;1);1 = (K;1;1)=(2;t)

が成り立つことを使うと

z0 = n

2;t(K;1;1)z

となります。これを(36)に代入すると

(1+zzTS)(1;K)z = (K;1;1)z

です。ここで(6)からKz =1+zzTSと書けることを使いました。これをK;1 =t1;K

及び zTSz= 0を使って変形すると

(zTSKz)z = (2;t)z

を得ます。(34)式より、これが成り立つのはfK(z) = 1のときだけであることが分かり ます。

Gに対してどのようなzを選べばfK(z) = 1になるのかは、表3から調べてやることが

できます。例えばG=EnE~nに対してz = (31)がとれます。全体のモノド ロミーは

K =

1 9;N

0 1

!

で、このとき固有値1の固有ベクトル(10)Tを持ちます。つまり、7-brane配位全体を一

周するループ は(10)弦によって作られます。ENには根の他に長さが2の重みはあり

ませんから、代数はE^Nに拡大します。

以上の知識を使うと、数学的に知られた事実E^8 = E97-braneの立場で示すことが

できます。E8の代数は31]7-braneを加えることでアフィン化し 、E^8を与えます。一方、

E

8A-braneを加えればE9になりますが 、E9のモノド ロミーには固有ベクトル(31)T

が取れるので、(31)弦のループが現れてアフィン代数になっていることが分かります。

^

E

8E9は切断の取り替えとg =

0 ;1 1 ;3

!

によるSL(2Z)変換で結び付きますから 、 確かにE^8 =E9であることが分かります。

さて、E8A-brane(31)-braneを加えればアフィン化したE9が得られます。これ

はどんな代数でしょうか。ループは二種類、A-braneE8の周りを回る(31)弦及び E8

と31]-braneの周りを回る(10)弦があります( 図18(31)弦は31]-braneを飛び越 33

10] E8 31]

(31) (10)

図 18: ^E9のループ

E6 E^6 E6H

図 19: hyperbolic代数のDynkin:E6の場合

えて全体を一周する になりますし 、(10)弦についても同じことが言えます。つまり、

E^9は虚根を二つ含むループ代数です。実際E^9のモノド ロミーは1ですから2つの固有ベ

クトルとれます。4.2節の方法でE^9の単純根を求めると、E8の単純根に加えて出てくる

2つの単純根の間の内積が正であることが分かります。Kac-Moody代数では異なる単純

根の間の内積は0以下ですから、E^9Kac-Moody代数の枠外にあります。

En以外の系列について表3からアフィン化の可能性を調べると、まずAnはアフィン 化できないことが分かります。HnDnについてはいくつかのnfK(z) = 1を満たすz

が存在します。しかしこれらを詳しく調べてみると、D5 =E5のようにEnの系列と等価 なものであるか、あるいはD8のように長さ2の重みが根以外に存在し 、このために単に アフィン化された代数が現れるのではなくE^nが現れていることがわかります。つまり、

7-brane配位で実現できるアフィン代数はEn起源のものだけです。

fK(z) > 1の場合についても具体例を紹介しておきます。En31]7-braneを加えて

アフィン化し 、更にもう一枚の31]7-braneを加えてEHn =An;1BC2X231]を考えると、

fK(z) >1になります。このときDynkin図は 、アフィン化した時に現れる新しい単純根

に、2枚の31]7-braneを結ぶ開弦に相当する単純根が付け加わったものになります( 図

19。このようなDynkin図に対応するKac-Moody代数はhyperbolic代数と呼ばれていま

37

数学的にはE8H =E10であることが知られていて、これはbraneの立場からも示すこと

ができます。なお、E10E8に二枚のA-braneを加えたものです。E^9に似てE8と各A

37但しn>8ではアフィン化の時点でKac-Moody代数から外れ 、hyperbolic代数とは言いません。

34

10]

10]

E8 (31)

(31) (21)

図 20: E10のループ

を回る2個のループが存在しますが 、これらは交叉していて全体を回るループにはなりま せん( 図20

以上、この節までに出てきたbrane配位を、jTrKj= 7まで表にまとめておきます。表 中のH(t)t= TrKの関数で、数学的に調べられたSL(2Z)で同一視出来ないモノド ロ ミーの数を与えています。

ドキュメント内 paper4.dvi (ページ 32-35)

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