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寄稿 叡山電鉄観光列車 ひえい について 1. はじめに叡山電鉄では 2018 年 3 月 21 日より観光列車 ひえい の運行を開始した この車両は既存の700 系車両の改造ではあるものの 当社としてはおよそ 20 年ぶりとなる新車両であり 京阪グループ全体で取り組んでいる 京都中心部から八瀬 比

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1.はじめに  叡山電鉄では、2018 年 3 月 21 日より観 光列車「ひえい」の運行を開始した。  この車両は既存の700系車両の改造ではあ るものの、当社としてはおよそ20年ぶりとな る新車両であり、京阪グループ全体で取り組 んでいる、京都中心部から八瀬、比叡山を経 由し、坂本、びわ湖に至る観光ルート「比叡山・ びわ湖<山と水と光の回廊>」をさらに活性 化させ、その道しるべとするべく、構想から 約4年の歳月をかけて導入したものである。  現在、出町柳駅~八瀬比叡山口駅間で火曜 日を除く毎日運行しており、沿線の歴史ある 神社仏閣、比叡山や大原へといった人気の観 光ルートの一翼を担っている。 2.叡山電鉄について  当社は、京都市内の北東部「洛らくほく北」地域に 叡山本線と鞍馬線の2路線を運営しており、 沿線の皆様から「えいでん」の愛称で呼ばれ ている。  叡山本線は、電力会社の京都電燈株式会社 により 1925 年に開業した出町柳駅~八瀬 ( 現:八瀬比叡山口 ) 駅間の路線、鞍馬線は、 鞍馬電気鉄道により1928年に山端(現:宝ケ 叡山電鉄株式会社 鉄道部 運輸課 課長

なかにし

西 喜

きよし

叡山電鉄 観光列車

「 ひえい 」について

池 ) 駅~市原駅間が開業、その翌年に市原駅 ~鞍馬駅間が開業した路線である。叡山本線 は 1942 年、京都電燈より独立し京福電気鉄 道となり、同年に鞍馬電気鉄道も合併、2路 線は総称して叡山線と呼ばれた。  自動車の普及やバス路線の拡大、接続して いた京都市電の廃止によりお客さまが減り続 けたため、京福電気鉄道は叡山線を分離して 別会社にすることとなり、1985 年に叡山電 鉄株式会社を設立、翌年から新会社としての 営業を開始し、現在に至っている。 3.導入の経緯  当社では 1997 年、主に鞍馬線で運行する 車両として展望列車「きらら」を導入した。  紅葉の季節には、市原駅~二ノ瀬駅間の「も みじのトンネル」での徐行運転やライトアッ プなどにより多くのお客さまに好評をいただ いている。その一方で、秋シーズン以外との 繁閑差が大きく、閑散期のお客さま誘致が大 きな課題であった。  特に叡山本線の終点である八瀬比叡山口駅 周辺は、かつて遊園地などのレジャー施設が

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「ひえい」732号車諸元表 観光列車「ひえい」 732 カルダン 1 方式 静止型インバーター 85(30席/跳ね上げ椅子使用時32席) 出力(kVA) 30.0 37.0 方式 HS5 15.7×2.69×4.158 出力容量(kW) 3.3 SME発電保安 有 電動カム軸式EC-260 有 形式 TDK8120-A1 自動密着式 出力(kW) 130kW×4基 昭和63年12月 歯数比 5.25 武庫川車両工業 形式 KW31 平成30年3月 軸距(mm) 2100 川崎重工業 心皿間距離(mm) 10200 有 車輪径(mm) 860 ワンマン仕様 車両番号 両数(両) 定員(人) 自重(t) 最大寸法(長m×幅m×高m) 制動形式 補助電源装置 空気圧縮機 主電動機形式 台車 制御形式 製造所 改造年月 改造所 デッドマン装置の有無 備考 駆動方式 列車無線 冷房装置 連結器 製造初年年月

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寄 稿

あった頃の賑わいが失われ、比叡山エリアも 含めた活性化が検討されていた。  ちょうどその頃、700系車両が製造から約 30 年を迎え、延命改修工事を行うタイミン グとなり、工事の最初となる 732 号車につ いては、単なる延命にとどまらない大規模な 改造を施し、観光車両とすることとした。  このように、観光列車「ひえい」は、シー ズンに左右されない新たな洛北エリアの観光 創造を目指して計画した車両で、わずか 14 分の乗車時間しかない叡山本線で運用する 1 両のみの改造車両であるが、鞍馬線の展望列 車「きらら」に負けない観光車両を目指した ものである。 4. 700系車両について  改造の種車である 700 系車両は、1987 年に運用を開始した車両である。当社初の冷 房装置を搭載し、ワンマン運転用として設計 された車両で、主に1両編成で運行している。  全部で8両所有しているが、細かな仕様の 違いにより、デオ 710 形(2 両)、デオ 720 形(4 両)、デオ 730 形(2 両)の 3 種類に 分かれており、今回「ひえい」に改造した車 両は1988年に製造した732号車である。  732号車は改造直前の2013年9月~2017 年 5 月の間、車体の片面をパトカー、もう片 面を機動隊が利用する大型輸送車のデザイ ンをした警察車両ラッピングの「PATRAIN ( パトレイン )」として運行し、特に沿線の子 供達からの人気を集めていた。  改造にあたっては、兵庫県神戸市の川崎重 工業 ( 株 ) まで搬出して行ったが、当社の車両 が当社以外の場所で改造をする初めての例と なった。 5.デザインコンセプト  デザインは京阪電気鉄道の車両および案内 サイン等のデザインで実績がある ( 株 )GK デ ザイン総研広島に依頼した。  当社の2つの終着点にある霊峰、比叡山と 鞍馬山が持つ「二つの極」の荘厳で神聖な空 気感や深淵な歴史、木漏れ日や静寂な空間か ら感じる大地の気やパワーなど、「神秘的な 雰囲気」や「時空を超えたダイナミズム」と いったイメージを、二極の焦点を有する楕円 形に見立て、車両の内外装にシンボリックに 展開している。  ロゴマークは、Spiritual Energy( スピリ チュアル・エナジー ) と名付け、大地から放 出される気のパワーと灯火を抽象化したもの を用いている。  現代の街から歴史ある御山への時空を越え た旅を演出するだけではなく、通勤・通学列 車としての機能の向上も図り、非日常の情緒 感と日常の機能性との両立を図っている。 6.外観デザイン  比叡山、鞍馬山の神秘感、時空感およびそ の2極性を象徴する楕円リングをシンボリッ PATRAIN時代の732号車 観光列車「ひえい」車体側面

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リーンガラスを採用した。 7.内装デザイン  連続するスタンションポール、袖仕切りを 楕円形状とし、フェイスの楕円リングがイン テリアを貫通しているかのような空間構成と した。 あたかも時空を超えるタイムトンネル で旅をしているような演出を意図している。  通勤車両として必要な機能をきちんと装備 する一方で、観光車両としての非日常感を損 なわないよう、これら各部位の形や色、質感 などには十分配慮した。 (1)座席  モケットのデザインは「神秘的な力・気」「御 山の等高線」「歴史の積層」をイメージした ものとしている。  座布団構造は従来と同じ盃バネ構造とし、 バケット形状で側窓を挟んで座っていただく 座席配置としたので、1人あたりの座席幅が 525mm とゆとりある寸法となった。座面は 奥行きのある560mmとしたほか、背もたれ 角度を 15 度に設定。揺れに対し、背面から 臀部までをしっかりホールドして座り心地の 向上を図っている。また、背もたれもできる だけ高くし、ゆったりと座っていただいた時  車体色は次のイメージとした。  グリーン= 深淵な御山の緑  金色=木漏れ日/神々しい光の輝き  階段状のストライプ=比叡山にかかる山霧 (2)前部標識灯  楕円の2極を強調することを意図して2灯 を上下に配置した。 (3)後部標識灯  楕円リングを際立たせるよう、楕円の内側 に沿わせて配置した。 (4)ワイパー形状  楕円リングとの干渉を考慮しながらも、視 界を最大限に払拭できるように配置した。 (5)衝突安全性向上  フロントフェイスの改造にあたって、車体 前面の鉄板を厚くし、万が一の衝突事故に対 する安全性を向上させた。また、床下損傷を 抑える台枠下部のスカートは、700系では初 めての採用である。スカートは楕円リングの 一部となっているため、連結器との干渉を考 慮しながらもイメージを損なわないよう苦労 した。 (6)側窓  下窓固定、上窓下降式からバランサー付き 下降ユニット窓に変更した。(車椅子・ベビー 後部標識灯 「ひえい」車内

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には、後頭部が側窓パネルに当たらないよう ヘッドレストを設置した。  座席端部の袖仕切りは、列車衝突事故等の 衝撃から身体を保護するために大型化した。 (2)優先座席  優先座席は4席用意し、ヘッドレストを茶 系色に替え、直上の吊り手を長くして赤系色 に替えることで、識別を容易にしている。 (3)車椅子・ベビーカースペース  八瀬比叡山口駅方の1か所に2人掛け跳ね 上げ式腰掛を設置し、通常時は座席として使 用している。また、座席の裏には跳ね上げた 際に使用する曲線形状の手すりを取り付けて いる。 (4)側窓カーテン  側窓カーテン生地も座席とほぼ同イメージ とした。側窓カーテンはユニット窓に組み込 まれており、側窓パネルは窓キセを兼用した 差し込み方式のためカーテンカバーがなく なった。  窓枠も楕円となっているため、下部がゴミ 溜まりとなることが懸念されたため、ストッ パーを取り付けてカーテンが下がりきらない ようにしている。 (5)スタンションポール  デザインコンセプトに基づき、2本のパイ プを先頭のリングと繋がりを持たせた円弧形 状で設置した。 (6)立ち席スペース  中間部および乗降扉部の立ち席には、足も とまで延びるダイナミックな眺望が楽しめる 楕円の大窓を設けた。中間部の大窓には腰当 てクッションを装備した。 (7)吊手  デザインコンセプトに基づき、吊手輪、サ ヤ、ベルト、吊手止め、座板は、優先座席部 分を除き黒色で統一した。 (8)壁面  深淵な御山に包まれる雰囲気を意図して、 マットメタリックグリーンの壁面とした。落 ち着いた空間になるよう、天井まわりもでき るだけマットな表現を選択した。 (9) 荷棚ブラケット、吊り手ブラケット、照 明カバー  天井材色に色を合わせ、天井に溶け込むよ う配慮した。 8.機器関係 (1)乗務員室  前面に楕円のリングを取り付けることによ り、運転士の視界が悪化する懸念があった。 そこで、実車による視角検証を入念に行い、 運転士ポジションを300mm車体中央部に移 設した。それに伴い、主幹制御器、制動弁、 計器盤等も移設している。また、リングの外 側もガラスにすることとした。 (2)台車  京阪電気鉄道で廃車となった5000系車両 が使用していた川崎重工業製 KW-31 に交換 した。従来の台車は金属ばねであったが、交 換により空気バネとなり乗り心地が向上した。 (3)主電動機  台車変更に伴い、主電動機をTDK8120-A1 に変更した。 (4)パンタグラフ  菱型式から下枠交差式 PT48E に変更し折 畳み時サイズを小さくした。 (5)前部標識灯  視認性の向上を図りLED灯とした。 優先座席と車椅子・ベビーカースペース

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灯は予備灯兼用)設置した。 (8)乗務員室灯  直管型LED灯を採用した。 (9)行先表示装置  正面にフルカラーの LED 表示器、側面に 白色 LED 表示器を採用。日本語、英語、韓 国語、中国語 ( 簡体字 ) の4か国語表示とし、 訪日外国人のお客さまにもわかりやすくご案 内できるようにした。 (10)非常通報装置  ブザー音式非常通報装置を客室側面と車椅 子・ベビーカースペースに各1か所設置して いる。  客室側面は側厚みが厚くなったため、押し ボタンを側厚内に埋め込み、客室内への出っ 張りを無くした。なお、蓋はツマミを持って 開ける方式をやめ、蓋に穴を開けて指を引掛 けて開けるタイプに変更し、すっきりとした 形状に仕上げた。 (11)乗務員の誤操作防止装置  客室側引戸開の状態で SAP 圧力 100kPa 以下になると警告音が鳴動するようにした。 これにより、開扉中 ( お客さま乗降中 ) の車両 転動防止を図った。  また、ワンマン運転時に入口ドアからの降 車を防ぐために入口ドアを閉状態にする「ド アカットスイッチ」の戻し忘れ(入口ドア開 扉忘れ)を防止するため、スイッチ操作時は 警告音が鳴動するようにした。 (12)ワンマン機器の変更  従来設置していたワンマン設定器を撤去し タッチパネル系統設定器を運転台前面に新設 し、系統設定器でダイヤおよび列車番号を設 定すると行先表示器も連動して変更される仕  従来は車掌台側にしか設置していなかった 車掌マイクを運転台側にも追加し、乗務員の 利便性を向上した。 9.おわりに  観光列車「ひえい」は、独特な外観や非日 常感あふれる内装からデビュー以来、多くの お客さまにご好評をいただいている。また、 優れたデザイン性が高く評価され「2018 年 度グッドデザイン賞」受賞という栄誉に輝い た。  これから初夏を迎え、爽やかな「青もみじ」 が揺らぐえいでん沿線へ是非「ひえい」でお 越しいただき、京都市内中心部では味わえな い“もう一つの京都”をお楽しみいただきた いと考えている。  最後に、「ひえい」の導入にあたり、多大 なるご協力をいただいた関係各社の皆様に厚 く御礼申し上げたい。

参照

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