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先物為替相場決定論--ハンス・ストールの理論の統計的検証---香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

先物為替相場決定論

−ハンス・ストーールの理論の統計的検証−−

横 井 義 則 Ⅰ.はしがき。 ⅠⅠ..ストールの先物為替相場決定論。 ⅠⅠⅠ.統計的検証。 ⅠⅤ.結語。 Ⅰ 第二次大戦後,貿易自由化の大前提の下で,国内均衡と国際均衡の同時達成 が,重要な経済政策課題となり,固定為替相場制度と変動為替相場の優劣をめ ぐる論争が展開され,決着をみないまゝ今日に.およんでいる。1)変動相場制度 反対論の・−ツの有力な論拠として,かつてほ弾力性悲観論が存在した。それ は,周知のように,各国の輸出と輸入需要の価格弾力性の和が1より小さく, 為替相場の切り下げ紅よって,貿易収支改善がもたらされない,との主張であ る。そこで,外国為替の理論的研究は,平価切り下げと貿易収支の改善効果を めぐる,以弾力性接近”として,いっそうの展開が試みられ,やがて学界の関 心は,‘‘アブソ−プレョン・アプローチノ’に.移行し,現在では,‘‘ポ−トフォ 1)“Fixedvs.Flexible”論争の全分野紅わたる吟味と文献K,ついては,M.0.Clement,

R.L.Pfister,and K.J。Rothwelleds.,TheoreticalZssuesin Znternational Econo′Tlics,HoughtonMifflin Company,1967,Chap.6が詳しい。/ト稿の狙いは,

きわめて限定されたもので,それはストールの先物為替相場決定モデルに彼とほ異なる 統計資料を当てほめ,彼の得た結論が確認されるか否かを見るに.すぎない。

Cf.Hans R.Stoll,=An Empirical Studyof Forward Exchange Market under Fixed and Flexible Exchange Rate Systems〃,Canadian.IournalofEconomics,

Feb..1968

− ,耶招か蕗椚痴加励・S0ノ■釣γ紺αγd Fβγβj−g〝且方Cゐα〝gβ屈αねs,A 一離∫ざβγfαJオ♂〝 S〝∂掴ま−〃鋸仁わ1物e U勉励汀扇≠.γ0./C力ま七αg〃,1966

(2)

先物為替相瘍決定論 ーJ∂グー リオ・・アプローチ”の拾頭となっている。2)この間,弾力性楽観論が支配的と なって,変動相場反対論から,その−・角が崩れ去った感が深い。 −・方,IMF体制の土台たる基軸通貨国では,国内・国際両均衡ほ容易に・達 成されず,その解決策として,先物為替市場への政府介入8)とマンデル流の ‘‘ポリレ−・ミックス’’4)に偏望がかけられた。然し政府介入は,チャン8),天 野¢),ブラック7)等によれば,基礎的不均衡の存在する場合にほ,無効であ り,りポリシー・・ミ.ックス” は,イェーガー8)に.よれば,国際収支の調整方法 に.非ずして,単なる・一一・時逃れの時間稼ぎに.すぎない。ここ.軋今日,変動為替相 場制度が,中央銀行或いほ政府当局に.よってさえ,見直されようとしている理 論的,径験的根拠がある。 変動相場制皮の支持者達は.,この制度の下では,最近の国際通貨体制の三ツ の問題,即ち,(1)国際流動性不足,(2)信認,(3)国際収支の調整のすべてが解決 可能であると主張する。此に対し,固定相場制度の擁護論者達は,変動相場制 度の下では,直物為替相場は,日々変動常なく,商品および資本の国際取引が 2)代表的文献としては,建元正弘,『外国貿易と国際収支』,創文社,1962,′J\山満男。『国 際経済理論.』,千倉香房,1964,Fritz Machlup,ZnternationalMonetaYy Economics, George A11en and Unwin Ltd..,1966,PartsI,ⅠⅠ,RonaldI.McKinnon,‘‘Portfolio

Balance amdInteInationalPayments Adjustment’,,inR..A.Murldelland A.Xn

Swoboda eds..^Io11e[arJ・Prob[(11LS Oj fhcI/)tCl−[]GtioIZalE(OIZOIJL.y,Unive【Sity of Cbicago PIeSS,1969,等があげられよう。

3)Herbert G…Grubel,Forward Exchange,SPeculati’on,and theIni Flow ofCaPital,Stanford University PIeSS,1966

4)Robert A..Mundell,InieY’natironalEconomics,University of Chicago Press, 1968,Cbap.16

5)S.C.、Tsiang,“The Theory ofForwa工d Exchange and Effectsof Government

Interventionsonthe ForwardExchange Market”,ZWSiqHhbers,Apr.1959 6)天野明弘,『先物為替政策の効果と限刺,『禰戸大学経営学部訴究年報』,1964

7)Stanley W..Black,‘‘Theory and Policy Analysis of Short・term Movementsin the Balance of Payments”,Yale Economc Essa.ys,Spring1968

8)LelandB.Yeager,hderhationalMoneiar.yRelaii.ons.:如eoY:y,肋ioY・.y,and Poli’c.y,Ha工perand Row,1966,‘‘Appendix to Chap.6:Separate Weapons of FinancialPolicyりわ尚,マンデルのモデルの数学的展開と批判紅ついてほ,小山満男,

(3)

香川大学経済学部 研究年報 9 J969 −J3β− 著しく阻害されるであろうと反対する。9)この反対論を屈服させるため紅ほ, 変動相場制度の下でも,日々直物為替相場ほ安定的であるという命題が一・般的 に証明されねばならない。然しこの命題の理論的・経験的証明は未だ与えられて いない。それを与えることほ,或いは不可能な企てかも知れない。その理由 は,投機者の予憩為替相場の形成要因と予想形成方式が解明されていない点紅 あると思われる。10) そこで変動相場論者は過去の−−・定期間に.おける統計資料に基づいて,変動相 場制度を支持するような,こまぎれの実証を積み上げている。小稿で取り上げ るノ、ンス・ストールの業績も亦その岬・ツである。 通常,直物為替市場と先物為替市場は,金利裁定者による国際短期資本移動 を通じて−,密接紅関連しており,従ってこ.の相互依存関係を陽表的に.考慮に入 れた,直・先為替相場甲同時決定モデルが,ヨリー・般的であるのほ論を倹たな い。11)然しと.のようなモデルの統計的検証ほ,資料の制約匿.より,はなはだ困 難である。 ストールほ,直物相場を与えられたものとして,先物市場での先物為替相場の 単独決定モデルに.より,第二次大戦後のU.S.−・U.X.(固定相場制)とU.S.− Canada(変動相場制)の統計資料を使って次の結論を導いている。 〔1〕固定相場制の下でほ,先物為替相場決定紅おいて,投機の果たす役割が 重要である。 〔2〕変動相場制の下では,金利裁定の役割が重要である。 もしストールの結論が何時でも何処でも正しいとするならば,それほ次のこ 点を含意する。 〔1〕固定相場が金に腐びつけられようと,ドルに結びつけられようと,或い ほSDRに結びつけられようと,こ・の制卑の下では,先物相場の決定に投機

9)Charles P”Kindleberger,Eurobe andihe Dollar,the M.、Ⅰ・T・Press,1966, Cbap.8 10)為替投機の問題紅ついて,すぐれた展望が天野氏に・よって与えら叶ている0天野明 弘,「為替投機と変動為替相場の安定性」,『国民経済雉詠』,第111巻第4号,1965年4月。 11)このようなモデルはJerome L..Stein,1nternationalShort−termCapitalMove・ ments,,,A∽β.励0搾.及紺.∴MaI.1965および,前掲注5),6),7)の各論者檻よ って展開されている。

(4)

先物為替相場決定論 ーJβ9− 者の果たす役割が重要なのであるから,投機者の予想形成要因と形式が一腰 的に・解明出来ない以上,固定相場制度は,早晩,円滑鱒作用しなくなる。 〔2〕変動相場制度の下でほ,何時でも何処でも,金利裁定が先物相場の重要 な決定要因であるとするならば,金利裁定の条件を整備,統制することに.よ り,先物相場の安定が確保され,従って,商品と資本の円滑な移動を促進 できる。 果たして,ストールの結論は異った国,異った時代に.も妥当サーるか。彼のモ デルと推定方法をそのま」異った国,異った時代のデータに.適用して如何な る結果が得られるか検討してみたい。先ず,.ストールのモデルと計測結果を紹 介し,次紅我々の計測との比較検討を試みよう。 ⅠⅠ 若干の記号と定義

先物為替市場:将来,特定の時点,(例えば30日,90日,120日後)に,

今日契約した相場で−−・国通貨と他国通貨の交換,受渡しが 行なわれる市場である。 金利裁定者: 為替リスクを負担するこ.となく,短期金利の国際的差異か ら利益を得る目的で,国際短期資本移動に従事す 為替相場の変動より利益を得る目的で,為療リスクを進ん で負担すろ者。 才時点での邦貨建直物為替相場(β.g−.,$1=¥360) ≠時点での邦貨建先物為替相場 f時点での自国短期利子率(90日当り) 才時点での外国短期利子率(90日当り) ヂ時点で保有されている先物為替盈 90日後に外貨を受け取る契約(先物外貨需要) 90日後に.外貨を引渡す契約(先物外貨供給) i時点で金利裁定者(arbitrageurs)が保有している先物 為替最 投機者: ふh畑山﹁ 〆.G

(5)

香川大学経済学部 研究年報 9 J969 −J4〃・− C言 i時点で投機者(speculators)が保有している先物為替畳。 全都裁定者の先物外貨需要曲線

今後90日間遊休資金孝保有し,それを短期市場で最も有利紅運用しようと考

えている個人を想定サる。更に証券投資のための取引費用がゼロセ且つ貸倒そ

の他の信用リスクが両国で同程度であるとの単純化仮定をおく。 自国で運用すれば,90日後に彼の得る元利合計は投資資金$1当り, $(1・十′・d)となり, 外国で運用すれば, $1・一缶(1・十γr)・為となる0

もし(1再d)‘>−主(1+〆)・為ならば自国で運用するであろうし,

もし(1再d)く÷(1・〆)・昂ならば外国で運用するであろう0 従って,金利裁定者が国際短期資本移動を行なわないための均衡条件ほ, (1再・d)=ま−(1十〆)・為となる0

この条件が成立している場合の先物相場を特に.曹と表示すれば,

埠=晶〔墨㌃〕

(ⅠⅠ十)

そこで,巧一−・符>0ならば,外国で資金運用,従って,この金利裁定者

ほ直物為替市場では裁定資金に㌧見合った外貨を需要するであろうし,90日の先 物市場でははば同額の外貨を供給する。

逆に,為・−・一群<0ならば,先物外貨の需要となる。

さて,金利裁定者による今期の先物外貨の売買契約高は裁定純利益の関数で 次の単純な形をもつものとする。 q=A(為一群),A<0 (ⅠⅠ−・2)

金利裁定利益がゼロの時,即ち,為=符の時には,C㌢=0となる。−・定の

(6)

先物為替相場決定論 ∼∫4ユー サイズの(為一−・曹)に対するC㌢の大小ほ係数Aの大きさ如何に.よる。 係数Aの大きさを決定するものは, (1)裁定取引に.伴うリスク(政情不安,貸倒リスク,為替管理の導入,強 化のリスク等)の大きさ (2)裁定者の危∴険回避の程度である。 もし上記(1)のリスクが存在せず,裁定者が危険回避者でなければ,為 と腎の間の僅かの噴い違いでも,巨額の資金を移動させ,Aのサイズはマイ ナ・ス無限大(−・∞)になるかも知れない。この場合にのみ,周知のケインズお よびアイソチッヒの金利平価説が妥当性をもつものとなる。 投機者の先物外貨需要曲線 投機者ほ今日から90日後に盾物市場で成立する相場はギであると,今日予 想するものとせよ。 もし(為・−・ぶ芸)>0ならば,誰でも今日,先物外貨を為の相場で空売り し,90日後に.ぶgの相場で買って,先物契約を実行することにより,外貨1単 位当り(省一一都)の投機利益を予想出来る。従って,投機者は先物外貨を売 ろうとする(先物為替供給)。逆に.,もし(為・−ぷ)<0ならば,投機者は先 物外貨を買うであろう(先物為替需要)。 このような先物売買契約を行なうに.当り,投機者は自国通貨又ほ外貨を現実 に保有しなくてもよい。(但し若干の契約履行保証金を積まされる場合がある)。 投機者の先物為替需給曲線も亦,予想投機利益の・−・次関数として次の単純な 形をもつものと仮定する。 q=β(為・−ぶ芸),β<0 (ⅠⅠ−3) さて,この予想相場ぶ言は果たして実現するかしないか不確実であるので, 予想相場と90日後に実現された相場に噴い違いのある場合紅は,投機者は損失 を家る危険を負担しなければならない。この種の不確実性の大きさと投機者の 危険回避の程度がBの大きさを決定する要因となる。もし不確実性が存在しな いならば,或いほ投機者の危険回避がないならば,Bの大きさほ,マイナス無

(7)

J96.9 香川大学経済学部 研究年報 9 −ヱ42− 限大になるかも知れない。 直物市場を使って行なわれる為替投機は結局,金利裁定と先物市場投機に分 解されるので,こゝでは取り上げない。同じ理由で貿易業者の輸出・輸入に伴 う先物為替の売買もストールによって明示的紅取り上げられない。 先物為替亙墾旦鞄艶 直物為替投機および貿易業着からの先物為番需給を,金利裁定と先物投機に 両極分解してしまうと,先物為替市場の需給均衡条件は次の如く与えられる。 q=−・Cg,又ほβ(為−∫言)=・−・A(為−符) (ⅠⅠ−4) 此を凧Fについて解き 臣意ギ (ヱト5) を得る。 薫= A十β 即ち先物為替相場は∫言と符との加重平均として与えられる。市場均衡先 物相場は,投機者が保有しようと望む罠(売)契約高と金利裁定者が保有しよ うと望む売(罠)契約高とが等しい場合紅成立する相場である。ぶ;,曹,或い は人々のリスクに.対する態度が変化しない限り−・時点から次の時点払渡って新 規の先物契約は行なわれないであろう。金利裁定者による先物契約の裏面には 常紅反対方向の直物売買が存在するが,此の倦も亦変化しないであろう。即ち ∫言,曹,或いは危険回避の程度の何れかが変化しない限 る短期資本移動も行なわれないであろう。 次に直物相場ふが外垂的に与えられたものとして,先物為替市場の均衡を図 示すれば次ぺ一ジの図1の如くなろう。こiで注意すべきは,,SS曲線,AA曲線 は,共紅第1象限の部分は需要を,第2象限の部分は供給を示すように慮義され ていることである。需給塁の一・致する点,(即ちC言=−C㌢)紅均衡相場雪が決 まる。

(8)

先物為替相場決定論 −J4β− ニッの極端な場合 ケースi) (ⅠⅠ−2)式,C㌢=A(為−曹),A<0において係数Aの大きさがマイ ナ欠無限大に㌧近づけば,AA曲線ほ水平に近くなり,帯は曹に近づく。投機 者は単に先物契約高と裁定者に.よる短期資本移動量を決定するに.すぎなく,先 物相場の決定に5等ほ余り影響しない。このように極端な場合紅のみ,金利平 価説が妥当しよう。この場合が図2に示されている。 為替相場 S ・−Cモ 0 先物供給) C; ( ケースii) (ⅠⅠ一3)式,q=β(為一ぶg),β<0に.おいて係数Bの大きさがマイナ

(9)

J969 香川大学経済学部 研究年報 9 ーJ才イー

ス無限大に近づく場合で,SS曲線が水平に近くなり,ダgはぶZの近傍に・決定

される。金利裁定者は単に投機嵐を規定するに・すぎない0この極端な場合を

ExpectatinsTheoryと呼んでもよかろう。

現実ほ,これら両極端の中間で,恐らくは欝1図に示したように,投機者も

金利裁定者も共に.,先物均衡相場の決定紅関係する。そこセ投機者の活動と金利 裁定者の活動の相対的重要度を資料紅よって検証しよう0 ⅠⅠⅠ

先ず前節のモデルを統計的検証に適するよう,若干修正しよう◇そのため,

(ⅠⅠ−・5)式を次のように書き換える。 (ⅠⅠⅠ−1)

爪芦Ⅳぶg+(1−W)ダぎ+勒,

(1−Ⅳ)=,

β A+β, 但しlγ= 的=撹乱変数。 更に未知の∫…,即ち予想直物相場を何か観察可能な変数で置き換え.る必要 がある。そこで投機者の予想形成方式忙閲し,次の非常に単純な仮定をおいて みる。 (ⅠⅠⅠ−・2) (ⅠⅠⅠ−・3) ∫芳一郎_1=Ⅴ(ふ一郎一1) ぶ言=略+(1−y)ギ_1

(ⅠⅠⅠ−・1)式を1期ずらせて,∫g−1に・、ついて解けば(ⅠⅠⅠ−4)式を得る○

為_l=Ⅳぶg_1・十(1−Ⅳ)ぞ畏1+〝L」 (トーⅣ) 吼・−・一友〟才一1 ∫g−1=一束軋1−・ (ⅠⅠⅠ−4) Ⅳ (ⅠⅠトー・4)式を(ⅠⅠⅠ一3)式に代入して,次式を得る。 (1−Ⅳ) 軌−一束軋1〕 ∫冨=関√+(卜Ⅴ)〔一右裾一

(10)

先物為替相場決定論 ーJ4β− 更に,このぶ冨を(ⅠⅠトー1)式に代入すれば, 昂=y肝ふ+(1−・坪)ダ㌢十(1仙y)薫_1′■り・・・・(1爛γ)(1一肝)ダ諷1 +彷㌃−(トーア)的」1 (ⅠⅠⅠ−5r) (ⅠⅠⅠ−5)式に現われる独立変数の数を減らすため,両辺をふで割って, 項を配列し直せば,

(卜y)葦−=膵・(1−一昭〔憲一(ト一作誓〕

為 ∫才 物・−(1■−・Ⅴ)玖Ll (ⅠⅠトーー6) + 又は, βc 謹上(卜り一告コ トⅣ(1−y) * +(卜Ⅳ)〔ムー(1劇γ)告 〕十gゎ * 但し音=1+軋点£=〔 物−・(1−γ)拘_1 γd−−γ/ 〕, 釣= 1+〆■ ふ (ⅠⅠⅠ−7)

この新しい撹乱変数g一については,β(gJ)=0,β(才一,窮_1,)〒0,β(g−)2=

定数という最小自乗法のための古典的仮定が満たされているものとする。次の

作業は(ⅠⅠⅠ一7)式にデータを当てはめて,係数(1・−・Ⅳ)を推定することで

ある。

さて,(ⅠⅠト1)式より明らかなように・,(1−Ⅳ)はぎヂに・与えられるクェ

−ト,即ち金利裁定者の先物相場決定に・おける相対的重要度を示す。又,耶ま

ぶ書に与え.られるクェーート,即ち投機者の相対的重要度を示す0

前述の金利平価説(Interest Rate Parity Theory)はW=0を意味し,

ExpectationsTheoryほW=1を意味する。もし先物相場を決定するのは,

金利裁定と投機の両者であるとすれば,Ⅳの値は,0<Ⅳく1でなければなら

ない。

(11)

香川大学経済学部 研究年報 9 J969 −J46− ストールは.(ⅠⅠⅠ−7)式を使って,U.・S.−U.K.およびU.S.−Canadaの 各種先物為替,(1ケ月物,3ケ月物,6ケ月物)紅ついて,詳しい推定結果を 示しているがその中,我々の推定結果と比較可能なものだけを取り出して次 表紅掲げる。12) 表 1 r’=相関係数 D−W=ダービン・ワトソン統計墓 *カナ■ダはMay30,1962紅 固定相場制に復帰した。 12)Hans R..Stoll,0♪.cよfり 統計資料と出所 ≪U.S.−Canada>> 直物,先物為替相場:

Decい27,1962までは毎木曜日,それ以後は毎金曜日の相場,mid point be− tween bid and ask,ContinentalIllinois NationalBankの相場表

利子率

Y’a:Market yieldsor)1JS.・Treasurybi11rates(3−Months),Solomon Bros. Hutzler quotation sheets

rf:Dec・27,1962までは毎木曜日,それ以後は毎金曜日の Canadian Treasury billIateS at tender,Bank ofCanada,StatisticalSummar.y

(12)

先物為替相場決定論 −J4グ・− カナ・ダが変動相場制をとっていた期間中,1一W=0.9650,(W=、0.035)で あり,投機者の活動は先物相場決定に.重大な影響を及ばしていない。このこと β A+・β はWの値が1より遥かに小さいことからうかがわれる。(ⅠⅠⅠ−1)式より =0.035,即ちAはBの27・6倍になる。 此に.反し,固定相場制をとっていた英国についてほ,1−W=0.5963(W= 0.4037)であり投機者の活動ほ先物相場決定紅相対的に重要な影響を与えてい

るoWr=芯=0・・40,Aほ・Bの1・5倍研ぎない0

さて,1931年9月金本位制を停止し,その後為替平衡勘定の活動を許した けれども,基本的に.は変動為替相場制をとった英国と,いわゆる金ブロック諸 国の・−・員として,あくまで金本位制下の固定為替相場制に固執したフランスの 両国について,第二次大戦前の資料紅ストールのモデルを適用してみよう。 (ⅠⅠⅠ−7)式に.よる我々の推定結果ほ表2の通りである。1さ)14) ≪ロ.S.−U・Ⅹ・≫ 漬物,先物為替相場= 毎金曜日の相場,出所は同上 利子率 ㌢・虎:同上

rT:British Treasury billrates(3−Months)at tender,Board of Governors

Of the FederalReserve System,PbderalReserveBulleiin,VOlL(Oct. 1964) 先物期間:90日のみ0 尚,ストールの用いた為替相場は,日々の相場そのままで,−・週間毎の平均値ではな い。 13)表2の計算については,木村等教授および大数和雄助教授から懇切な指導と協力を戴 いた。記して感謝申し上げたい。推定の計算手続は次の通りである。 前掲(ⅠⅠⅠ一7)式,即ち ★ =ト叩−Ⅴ)・(トⅣ)〔孔−(トⅤ)キト古の左辺第2項 一(トy)一 * を移項して昔=ト昭トy)・(1−Ⅴ)寺十(トⅣ)&−(トⅣ)(1−y)一驚→gf * ダg ダト」

なる式を待暮更匿γ=す,ズ1=−・高一,・γ2輔,・方3=として

(13)

香川大学経済学部 研究年報9 J969 −ヱ尋β− γ=α0+α1∬1十α2γ皇−α1α2∬a+gJとおく。ここで

α0=ト(ト(1−Ⅳ)〉(トり=トα1+α1α2であるから,

γ=(1−α1+α1α2)+α1∬1+α2∬2−α1α2方$・+gとなる。 誤差項,g,の自東の和を最小紅するようなα1,α2を求めるため先ず

¢=∑z2=∑‡.γ−(トα1+α1α2トα1鴛1−α純・α1αB∬8)2とおき

姐=0,霊=0む求の適当に整理すると ∂α1

〈(犯一2∑一恥+ズ・琉)α1・g一方2−・且鞄恥〉α狛〈2(g∬8現+・蝕一神石)α1−∫・方2−み十狸+ 加1」方2十方恥γ一掬〉α2+((邦−2∑ガ1十∑ガ類1+∑」γ−”−∑1椚+・∑方1〉=0 および 〈(〝−祇鶴里沼)α2+∑・方1瑚+∑・ガB−∑・方1∬8〉α12・〈2(∑鞄−∑鵜・ガ3)α汗犯・−∑∬2一∑・喝 +∑礼方2−∑腑恥γ〉α1+〈∑・方…α2−∑・穐ツ+∑・方2〉=0 を得る。この両式を同時に満たすようなα1,α2を求め次紅α1(=1−・y)を用いて

* y=告−(トy)葦L,Ⅹ輔岬(トy)キとおいて‥(Ⅱ−7)式を

y=β0十β1ズ+g として,これに最小自乗法を用いること紅より,βの β1,およびそ・の 標準誤差,決定係数グー2,ダービソ・ワトソソ統計量などを求めた。 14)統計資料と出所 ≪U.S¶ −FI・anCe≫ 直物,先物為替相場=

Dailyissues of the New York7首mes 利子率

r虎:New York3−mOnth U.S.Teasury billrates;Board of Governors of FederalReserve System,BankingandMo7ietar:ySlatistics(Washington: NationalCapitalPress,1943),Pp・46トー462

rT:Privatediscountrate(for3,・・mOnth)in Paris;Dailyissuesof tke Londo72

7盲㈹β.S

≪U.S..−UりK.≫ 直物,先物為替相場:

Historicalrecords of the First NationaICity Bank of New York,aS

appearedin AppendixI,Fred R.Glahe,An Em?iricalStu4y ofthe Forei−gn・E方Change MaY’ket:Tesiof a Theor・.y,Princeton Uuiversity PI■ess,1967

利子率

ra:Same as above

(14)

一一JJ9・− 先物為替相場決定論 衷 2 示w)l(トⅤ)lr2lD−・可 1− W(1−Ⅴ) U.,S.−France l/8/,36− 8/23/,39 平価切下(1936年 9月25日)を含む 全期間 ∴7518 (.0198)

2.0823 (.4939)

.8614 (.0475) .8746 (.0596) 小9562 (.0075) 平価切下以前,直 物相場変動巾 $0.070∼0.065/ FI・anC 直 $0.034∼0い03(l/F U..S.−France l/8/,36− 9/23/,36 2.0342 (.4718) U.S〃−France lO/7/,36− 9/29/,37 平価切下以後,遣 物相場変動巾 80.034∼0一.026/p 直物相場変動巾* $5…06∼4い50/£ U.S.−FIanCe ll/24/′37− 8/23/,39 U岬S.−U.X. 1/8/,36− 8/30/,39 償 ピソ.ワトソン統計壷 英国が変動相場制をとっている期間中,(1仙W)=0.9542,(W=0.045) で,ストールの結論が確認される。 固定相場制のフランスについては,工2の非常に・小さい1936年1月8日から 1937年9月29日までの期間を除いて,(1岬W)芸0.86,(W=0・14)となり, こ⊥でも彼の結論が確認される。 ⅠⅤ 戦前戦後を通じて,固定相場制の下でほ.,金利裁定が余り活発に行れないと いう結果を得たが,此は次の理由によるものと思われる0 前述のように,AA曲線の勾配は主として貸倒リスク,為替管理の導入,強 化のリスク,即ち短期資本の自由移動を制限する要因紅依存しているが,固定

(15)

香川大学経済学部 研究年報 9 J夕69 一㌧た托トー 相場制の下では国際収支困難を口実に.,こ.の短期資本移動を−・国政府が制限す る危険がほ.なほだ大である。従ってAA曲線の勾配は大となる。 反面,固定相場制の下では,投機者の活動が激しくなるのは,直物相場の変 動方向紅閲し,切下か又ほ切上のOne−Sidedbetが利くからである。例え.ば, 戦前のフラン把.閲し切上を予想する者はなく,唯,切下あるのみであった。即 ち,予想直物相場紅まつわる不確実性が変動相場制の下におけるより遥かに小 となる。従ってSS曲線の勾配は非常に小さくなり得る。 然し,以上の結果を以て変動相場制を全面的紅支持する論拠となし得ないこ とは,我々のとった予想形成方式の単純な仮定からも明らかであろう。 我々の戦前デー・タ紅よる推定結果ほストールの結論を藤認するものではある が,それほ単に変動相場制度を部分的に支持するもう一山ツの例を積み重ねた紅 すぎない。

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C)付為替によって決済されることが約定されてその契約が成立する。信用

これは基礎論的研究に端を発しつつ、計算機科学寄りの論理学の中で発展してきたもので ある。広義の構成主義者は、哲学思想や基礎論的な立場に縛られず、それどころかいわゆ

Maurer )は,ゴルダンと私が以前 に証明した不変式論の有限性定理を,普通の不変式論

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夏場以降、日米の金融政策格差を巡るドル高圧力

経済的要因 ・景気の動向 ・国際情勢