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次元性を考慮したわが国従業員の組織コミットメントの再検討--国際調査データによる二次分析---香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

香 川 大 学 経 済 論 叢 第74巻 第 4号 2002年3月 135-155 ト i ? i i v ? ? ? ? t ; f F t t

次元性を考慮したわが国従業員の

組織コミットメントの再検討

1) 一 国 際 調 査 デ ー タ に よ る 二 次 分 析 一

8

s

は じ め に

わが国企業従業員と海外企業の従業員の組j織コミットメントの国際比較研究 これまでも行われてきた。会社に対して強い帰属意識を持っており日本の 日本の高い生産力の原因であったという

1

は, 従業員が献身的に仕事をすることが, 見解が,注目されたためと思われる。 日本と他国で はどれだけ違うかという組織コミットメントの高低そのものが関心の中心のひ コミットメントの水準が, とつとなってきたといえる。 これまでの国際比較研究の結果は r日本企業従業員は,企業に対 とは,逆の結果となっており, ところが, という「一般論」 するコミットメントが高い」 その理由に関して,多くの議論はな されてきたが,明瞭な結論に達しているとはいえない。 本稿は,

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の職業意識

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モジューノレの

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次分析

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による組織 研究者を当惑させてきた。研究者間では, コミットメントの国際比較分析を行う。主なメッセージは,第

1

に,

ISSP

の データは,積極的な態度を表す情動的コミットメント次元と組織に留まる意志 (1) 本研究のデータは,東京大学社会科学研究所付属日本社会研究情報センターより,デー タ提供を受けている。向研究所の佐藤博樹教授には,研究の契機をご提供していただい た。また,若林満教授(名古屋大学大学院)には,経営行動科学学会にて,貴重なご指摘 をいただ!いた。ここに記して深く感謝申し上げます。

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(2)

136ー 香川大学経済論叢 848 の継続的コミットメントの2次元構造を内包していることを示す。第2に,国 際比較を行った結果, 日本の雇用者のコミットメントは,組織に留まるという 高いけれども,感情的な思い入れを示す情動的コミットメントは,中 次元は, 位にあり, 高くはない。第3に,米国の雇用者の組織コミットメント次元は, 日本の雇用者とは対照的な構造をしており,情動的コミットメントが高く,継 続的コミットメントは,やや低い。第4に,過去の国際比較研究の多くは, OCQ (Organizational Commitment Questionnaire)を元にした研究であり,継続的 コミットメントに関する項目が少なく,情動的コミットメントの次元を主とし て測定しているために,米国人より日本人のコミットメントが低いという結果 になった可能性が高いことを指摘する。即ち, *品織コミットメントが多次元構 造であるにもかかわらず,単純に合計して

1

次元にしてきた過去の研究は,な かんずし 日本企業従業員の組織コミットメント構造を捉えるには適さないこ とを主張する。 また, 2次分析による研究の意義についても,述べたい。

2

先行研究の検討

先に述べたように, 日米比較を中心に,小数の国を対象とした国際比較研究 日本人が米国人よりも組織コミットメントが低い は,いくつか行われており, という, 一般的には,理解しがたい結果となっている。 これまでの国際比較研究で,最もよく使われてきた組織コミットメントの定 義は,-特定の組織に対する従業員の一体感(Identification)や関与(Involve -ment)の強さJ(Porter, Steers, and Mowday, 1974, p“604)というマウディら の定義である。マウディらの組織コミットメント理論を反映した研究として, もっとも良く参照される研究として, Lincoln & Kalleberg (1985)が挙げられ る。日米の約100社, 8,000人以上を調査している。 OCQ (Organiza ti onal Commitment Questionnaire)を修正したものが使用され,米国人の方が日本人 より組織コミットメントが高いと報告している。

Luthans, McCaul, & Dodd (1985)は, OCQを使用して,米国, 日本,韓国 人従業員の組織コミットメントを調査した結果, 日本人や韓国人従業員より米

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(3)

849 次元性を考慮したわが国従業員の組織コミットメントの再検討 7i QU 月 ﹁ 国人従業員の組織コミットメントが高いと報告している。 Near(1989)も, OCQ を元にして,日米の製造工場従業員を調査し,日本企業従業員の方が米国企業 従業員より組織コミットメントが低いと報告している。 渡辺(1989)は,米国に進出している日系自動車企業の日本人と米国人の組織 コミットメントについて,日本人よりも,米国人の方が組織コミットメントが 高く,肯定的な態度を維持していると報告している。 若林・城戸 (1986)は,多国間に及ぶ国際比較に関する先駆的な研究である。 若林・城戸(1986)の中で,電機労連の調査データを用いて, 9カ国の組織コミッ トメントに関する比較を行っている。それによると,日本は 9か国中 7位で ある。最も高い水準を示したのがスウェーデン,次いで,ユーゴスラピア,西 ドイツ,ハンガリー,イギリスの順であり,最も低い水準を示した国は,ホン コンとイタリア,次いで,日本,ポーランドという順であった。調査項目は,

1

項目であり,

3

つの選択肢の中から

1

つを選ぶ、ものであった。

3

つの選択 肢とは r会社のために最善をつくしたいj,r会社が報いてくれる程度にした いj,r会担について関心がない」であり,情動的コミットメントに近いものに なっている。 さらに,若林・城戸(1986)は,わが国の職務満足度や組織コミットメントが 低い背景として,以下のような仮説を提示している。第1に,日本の労働者の 客観的労働条件が劣っているという仮説である。仕事を通じて得られる給与・ 昇進・労働時間とい、った「外的報酬」および仕事の面白さ・やりがい・重要性 といった「内的報酬」の量が少ない。第

2

に,日本の労働者は rより高い期待」 をもっているという仮説である。期待が高いため,現実とのギャップがあると いうことである。第

3

に r流出効果j (スピル・オーバー・イフェクト)の仮 説である。社会全体の充実度が低いために,不満足感が会社まで流出してくる という考えである。第

4

に,ストレス仮説である。日本の職場は,客観的条件 は悪くないが,仕事に対するストレスが強すぎるということである。以上は, 若林・城戸(1986)の中で,仮説として提示されているのであり,今後国際比較 研究を進めていく必要があると結論付けている。しかし,その後,明確な説明

(4)

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--138ー 香川大学経済論叢 850 力を持った研究は,見られない。 逆に,日本の雇用者の方が米国の雇用者よりコミットメントが高いという「一 般的な見方」と一致する研究結果も存在する。 Takezawa

&

Whitehill (1981) は,1960年と 1976年の2回の調査を行い, 2回とも日本人の雇用者の方が米国 人雇用者よりも,コミットメントが高いという結果を報告している。しかし, Takezawa

&

Whitehill (1981)の研究は,マウディらの組織コミットメント理 論以前の研究であり,例外的なものとして取り扱われることが多かった。 ところで,組織コミットメントの国際比較研究において,以下のような比較 研究の問題が指摘されている。第

1

に,文化的な影響による問題である。まず, 測定概念が,調査対象者にとって,等価な概念になっているかという問題であ る。また,翻訳等価性の問題もある。複数の固に等価な測定概念と質問項目を 作成することは,研究上の大きな課題である。さらに,回答上の文化ノてイアス の存在も指摘されている。日本人は極端な意見を嫌う傾向にあり,米国人より も中立的な回答が多い傾向がある (Lincoln,1990)。また,米国人の回答者は自 己の態度を過大評価し,日本人は過小評価するとする説 (Lincoln,1990; 渡 辺, 1989)もある。 なお,若林・城戸(1986)は,日本と外国の間での感情表出の文化格差の仮説 を示している。つまり,わが国の職場鳳土は,日本的な甘えの構造から,不満 や不平の表出を許容する風土があるという仮説である。それに対して,職業の 移動が当然とされている米国等では,不満を認めることは,無能さを自ら表明 していることになりかねないため,不満足を表明したがらないという仮説を示 している。

渡辺・藤本・加藤(1999)は,項目応答理論(ItemResponse Theory)を利用

した項目バイアスの分析を行い,組織コミットメントの質問項目の翻訳上の等 価性に問題があり,そのために,日本人より米国人が高い組織コミットメント となった可能性を指摘している。 第2に,サンプリングの問題も指摘されている。サンプルが国を代表するも のかどうかを確かめるのは容易でない(Lincoln,1990)。例えば,渡辺(1989)の

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(5)

851 次元性を考慮したわが国従業員の組織コミットメントの再検討 -139 研究は,米国に進出した日系自動車企業の研修生の研究であるが,米国人の方 が厳しい入社試験によって選抜されており,元々肯定的な態度をとる人が多 かった可能性があるという。さらに,米国人は入社当初の訓練中であり訓練へ の参加が必須条件であったのに対し,日本人は,訓練の仕事は必ずしも本来の 仕事ではなかったというキャリア・ステージの違いによるバイアスの可能性が 指摘されている(渡辺, 1989)。

3

研究の方法

本研究では, 1997年に 26カ国で実施されたISSP(Intemational Social Sur -(2)

vey Program)の職業意識 (Work Orientation)の調査データを用いて2次分析 を行う。このような大規模な調査によって多くの国の従業員の組織コミットメ

ントを扱った研究は,見当たらない。ISSPは, 1984年に,シカゴ大学のNORC

(N ational Opinion Research Center), ドイツのZUMA(Zentrum fur Um-fragen, Methoden und Analysen),ロンドンのSCPR(Social and Community

Planning Research)とオーストラリア国立大学の協力によって始まった社会 科学分野の国際的な調査である。日本では,

NHK

放送文化研究所が参加してい る。日本の調査は, 1997年10月に個人面接法で行われ, 16歳以上の国民1,800 人を住民基本台帳から層化無作為

2

段抽出法によって抽出し,有効サンプノレ数 は, 1,226人であった。なお,本研究では,自営業者と雇用者の組織コミットメ (3) ントは,異なると考えられるため,自営業者を除外し,雇用者を対象とした。 分析の対象は,米国,英国,日本,カナダ,スロベニア,キプロス,デンマー ク,フランス,イタリア,ドイツ,スイス,ハンガリー,ニュージーランド, ノルウェー,チェコ,ロシア,ポーランド,ブルガリア,ポルトズ1')レ,スウェー デン,イスラエルの21カ国の15,318人である。 (2 ) 提供されたデータは, SPSSのファイル形式で提供され, SPSS 10lJfor Windows versionで分析を行った。 (3 ) データベース上,変数名SELFEMPにおいて,回答2(work for someone)を選択し た。

(6)

852 そ の 国 を 代 表 す る も の か ど う か を 確 か めるのは容易でない。個人が行う研究に比べれば,本研究で用いる ISSP(Inter -香川大学経済論叢 サンプノレが, -140-国際比較を行う上では, national Social Survey Program)の デ ー タ は , 多 く の 準 備 と 一 定 の 手 続 き に したがって,多くの国で行われ,信頼性も高いと考えられる。 組 織 コ ミ ッ ト メ ン ト に 関 す る 質 問 は , 表1の よ う な4つ の 質 問 で あ る 。 例 え そう思わない」を

2

点 Iど そ う 思 う 」 を

4

点 Iそ う 思 な お , 職 業 意 識 の 質 問 項 コ ミ ッ ト メ ン ト の 対 象 が 組 織 で は な く , 職 種 で あ る た 1 dO)Jがあるけれども, め,本研究の分析からは,除外した。

研 究 結 果

回答ノfイ ア ス の ひ と つ と し て 指 摘 さ れ て い る 日 本 人 の 雇 用 者 が 米 国 人 よ り も 中 立 的 な 回 答 が 多 い(Lincoln,1990)という傾向は見られない。 「どちらかといえば, ち ら と も い え な い 」 を3点 Iどちらかと言えば, (6) う」を

5

点 と す る 。 た だ し , 項 目

3

は , 逆 転 項 目 と な っ て い る 。 先 行 研 究 と 同 様に,尺度の平均得点を組織コミットメントとする。

目 と し て は I現 在 の 職 種 に 誇 り を 感 じ て い る (1am proud of the type of work

4

表 lから,

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ば Iそう思わない」をl点 (4 ) 本研究の分析では,以下のように,信頼性が低いデータと判定された5つの国を除いた 21カ国のデータを対象としている。まず, 26カ国の国別に信頼性分析を行い,第 1因子 および第 2因子の信頼性係数が 0.5以下の 3つの国のデータを除外した。信頼性係数が 0..5以下では,信号雑音比が 1以下となり,真値の分散より誤差の分散の方が大きくなる からである。第1に,フィリピンのデータについては,存続の次元の信頼性係数が a 0.1326と負の低い値であるため,集計に問題があると推定される。 第 2に,イスラエJレ (アラブ)も,存続の次元の信頼性係数がa=-0..7353と負の値となることから,逆転項目 である第3項目の翻訳妥当性に問題があると推定される。第 3に,バングラデシュについ ても,存続の次元の信頼性係数がa=0..2516と低いので,分析対象から除外する。第 4 に,スペインは, 121 1レコードのうち,自営業者か雇用者かどうかの変数(変数名:SEL-FEMP)の欠損値が 1128レコードと異常に多く,雇用者のデータが 3レコードしかない ため,有効な分析ができないと判断して,分析対象から除外した。第5に,オランダは, 自営業者か雇用者かどうかの変数(変数名:SELFEMP)がすべて欠損値であったため, 分析の対象から,除外した。 ( 5 ) データベースの変数名は, V55, V56, V57, V58である。 (6) 0 (Not applicable), 7 (Refused), 8 (Cannot choose), 9 (No answer)の4種類の回答 を欠損値とした。なお,入手したデータセットでは, 4変数の欠損値の指定がなされてい なかったため,自分で指定する必要があった。

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-141 次元性を考慮したわが国従業員の組織コミットメントの再検討 853 組織コミットメントの回答分布a 項 目 どちらか と言えば, そう思う どちら ともい えない とちらか といえば, そう思わ ない 95% う わ い そ 思 な 表1 合 計 そう思う 1000% 233% 326% 268% 7.8% 1000% 1000% 100 0% 209% 143% 23.7% 100.0% 1000% 1000% 555% 418% 31 1% 17 5% 258% 293% 203% 160% 175% 56% 13 3% 97% 04% 4.9% 62% 533% 42 4% 19.5% 項今の会社が発展するように,進ん?与え 早られた以上の仕事をしたい。 1 am willin唱towor k har der than 1 have to in order to help the firm or organization 1 work for succeed 項今の車総場で1動いていることに誇りを感じ 目ァ2 .~。 1 am proud to be working for my firm or or ganization 質 問 内 容 21 2% 30 3% 20.8% 46% 84% 7.8% 0.6% 3.0% 34 4% 1000% 1000% 1000% 100.0% 14 1% 133% 193% 4.6% 273% 25.1% 179% 13 5% 23 7% 20 1% 302% 25.0% 260% 26.3% 10 5% 392% 89% 15.3% 22 1% 178% 項チャンスがあるのなら,今とは違った職

F

場に変わりたい。(逆転項目) Given the chance, 1 would change my present type of work for something different 項今よりかなり高い給料をくれると誘われ ?ても,転職しないで今の組織にとどまり たい。 1 would turn down another job that offered quite a bit more pay in order to stay with this organization } i t I l l i t -i B i t i l i a -i

1000% a上段が日本,中段が米国,下段が日本以外の20カ国の有効回答の%を示す。 各項目の欠損値のケースが異なるため,日本のサンプル数は, 497から515の聞にあり,米国 のサンプル数は, 681から698の間にあり, 20カ国のサンプル数は, 12,027から12,724の間に ある。 b項目3は, 11直が大きいほどコミットメントが高くなるように, ISSPのデータを逆転させて いる。 74% 156% 22 0% 33.4% 21.5% 組織コミットメントの因子構造を探るために,表2や図1のように,全サン プルのデータについて,相関行列の主因子法によるプロマックス回転を用いた 4つの質問項目の回答を因子分析すると2因子が抽出 l因子から4因子までの分析を行い,それぞれの結果を得たが, 因子分析をおこなった。 された。なお, 最適解を得たのは因子数

2

であった。第

1

因子の説明率は,

5

2

.

.

1

8

%

,第

2

因子 の説明率は,

2

0

.

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9

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であり,累積の説明率は,

7

3

.

.

1

2

%

となる。 第

1

因子に高い負荷量を示している項目は r今の会社が発展するように,進

(8)

-142- 香川大学経済論叢 854 んで与えられた以上の仕事をしたい」と「今の職場で働いていることに誇りを 感じる」の2項目である。したがって,第1因子は,積極的な信念や意欲など の感情を表しているものと判断して,-情動的コミットメント」と解釈した。 第2因子に高い負荷量を示している項目は,-チャンスがあるのなら,今とは 違った職場に変わりたい(逆転項目 )Jと「今よりかなり高い給料をくれると誘 われでも,転職しないで今の組織にとどまりたい」の2項目である。組織に継 続して留まりたいという行動を示すものであり,第2因子を「継続的コミット メント」と解釈した。 近年の組織コミットメント理論の主流ともいえるMeyer

&

Allen (1997)な どの多次元的なアプローチでも,情動的コミットメントと継続的コミットメン トという

2

つの次元は,よく用いられていることからも妥当と考えられる。尺 度が多次元性を内包すると,測定値が表現力を失うから 2つの尺度に分解す る必要がある。そこで,表 4のように,第 1項目と第 2項目の尺度得点、の平均 点を情動的コミットメントとし,第3項目と第4項目の尺度得点の平均点を継 続的コミットメントとした。情動的コミットメントと継続的コミットメントの 相関係数は, 0..44であり,信頼性係数が高くなく,相関係数が希薄化(attenua -tion)されていることを考慮すると,一定の相関関係があるといえる。 表2のように,日本や米国についても同様の因子分析を行ったが,同様の結 果を得た。ただし,米国の雇用者については,第4項目は,第 l因子について も, 0..278の因子負荷量があるから,米国の雇用者は,第1因子と第2因子がや や重なり合う面があるのかもしれない。 以上の21か国の全サンプルの信頼性係数は,積極的意欲がα =0..660,継続 的コミットメントがα=0刷556となる。項目数が少ない場合, α係数は小さく なる傾向があるため,一定の内的一貫性があるとみなして,分析を行った。 日米比較を行うと,表4において,情動的コミットメントの平均値は,日本 の 雇 用 者(μ=3.56)よ り 米 国 の 雇 用 者(μ=3.89)の 方 が 有 意 に 高 い(t= 6..90, p <001)。一方,継続的コミットメントの次元は,逆に,日本の雇用者 の平均値(μ=3..11)が,米国の雇用者(μ=2.67)よりも有意に高いコミットメ

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855 次元性を考慮したわが国従業員の組織コミットメントの再検討 -143-項目 表2 組織コミットメントの因子分析a 質 問 内 容 項目1 今の会社が発展するように,進んで与えられた以上の仕事 をしたい。 1 am wil1ing to work harder than 1 have to in order to help the firm or organization 1 work for succeed 項目2 今の職場で働いていることに誇りを感じる。 1 am proud to be working for my firm or organization 項目3 チャンスがあるのなら,今とは違った職場に変わりたい。 (逆転項目)

Given the chance, 1 would change my pres巴nttype of

work for something different 因子 l 因子 2 794 - 164 848 - 150 735 - 107 576 591 621 - 158 092 - 071 349 214 217 729 693 .727 項目4 今よりかなり高い給料をくれると誘われでも,転職しない 094 .382 で今の組織にとどまりたい。 278 359 1 would turn down another job that offered quite a bit 053 .531 more pay in order to stay with this organization 1 916 936 固有値 2.014 896 2087 ..838 47.90% 23.41% 説明率 5036% 22 41% 52 18% 20“95% a上段が日本,中段が米国,下段が21カ国の主因子法によるプロマックス回転後の因子負荷量 を示す。各項目の欠損値のケースが異なるため,日本のサンプル数は493,米国のサンプル 数は671,21カ国のサンプル数は, 11,520。 ントを示している (tニ7“50,p

<

..001)。 次に,表5にあるように,情動的コミットメントの次元の平均値は,日本の 雇用者 (μ=3.56)と米国を含めた日本以外の

2

1

カ国の雇用者 (μ=3..60)との 聞には,有意な差がない (t

=

0“46, p

=

.65)。一方,組織に留まるかどうかの 継続的コミットメントの次元は,日本の雇用者 (μ=311)は,日本以外の国の 雇用者 (μ=

2

.

7

7

)

よりも,有意に高いコミットメントを示している(t=

7

.

.

2

7

, p

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..001)。

(10)

856 香川大学経済論叢 -144-因子空間の因子プロット 項目3 口 項目4 口 項目口2 口 項目1 図1 1 0 5 -1 0 -1 0

戸 、

υ 因子 2 l川O ..5 注)主因子法によるプロマックス回転 23カ国 (N=11,520) e j i l t

1 1 3 i l } } f t i -f i ド E f f b

因子1 に υ 組織コミットメント尺度a 表3 g 標準偏差 平 均 説 明 率 回有{直 因子名 因子 660 .556 0..863 L036 3 54 2.78 5218% 20 95% 2..087 0..838 情動的コミットメント 継続的コミットメント 第1因子 第2因子 aN

=

11,520 図

2

で示したように,日本の情動的コミットメントは,

2

1

カ国中

1

2

位と中位 日本の継続的コミットメントは,

2

1

カ国中

1

位と最も平均点が 日本と対称的な位置にある。即ち,情動的コミットメントは, にある。一方, 高い。米国は,

2

1

カ国中

2

位と極めて高い。一方,米国の継続的コミットメントは,

2

1

カ国中 15位と中位よりやや低い順位となっている。他の国々から比較すると,日本の 雇用者は継続的コミットメントが高く,米国は情動的コミットメントが高いと いう異なる組織コミットメント構造が存在することになる。

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t ! i 寸 t i t i -145 次元性を考慮したわが国従業員の組織コミットメントの再検討 857 組織コミットメントの日米比較a 表4 米 国 平 均 (標準偏差) 日本平均 (標準偏差) t 値 項 目 3.91*** -6 49 (0 80) 3..54 (1 17) ~ 廿 今の会社が発展するように,進んで与えら れた以上の仕事をしたい 1 am willing to work harder than 1 have to in order to help the firm or organiza -tion 1 work for succeed 内 問 質 項目 -5.75 3..88' ** (0 80) 3..56 (117) 今 の 職 場 で 働 い て い る こ と に 誇 り を 感 じ る。 1 am proud to be working for my firm or organization. 項 目 2 6..90 389'" (0 70) 3 56 (100) 項目Iと項目2の平均 情 動 的 コミyトメント 4 32 2 88 (120) 3.22' * * (152) チャンスがあるのなら,今とは違った職場 に変わりたい。(逆転項目)

Given the chance, 1 would change my present type of work for something dif -ferent 項 目 3 7 50 2..48 (107) 3..02**本 (139) 今よりかなり高い給料をくれると誘われで も,転職しないで、今の魁織にとどまりたい。 1 would tum down another job that offered quite a bit more pay in order to stay with this organization 項 目 4 7 26 2.67 (0 91) 3..11'" (117) 項目3と項目4の平均 継 続 的 コミットメント a t統計量による平均の差の検定, * * * pく 001 •• P

<

.01 * P

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..05(両側検定) 各項目の欠損値のケースが異なるため,米国のサンプル数は, 671から698の間にあり,日本 のサンプル数は, 493から515までの間にある。

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(12)

-146 香川大学経済論叢 858 表5 日本と日本以外の組織コミットメントの比較a 項目 質 問 内 容 日本平均 日本以外平均 t 値 (標準偏差) (標準偏差) 項 目 1 今の会社が発展するように,進んで与えら れた以上の仕事をしたい。 I am willing to work harder than I have to in order to help the firm or organiza -tion I work for succeed十 項 目 2 今の職場で働いていることに誇りを感じ る。 1 am proud to be working for my firm or orgamzation 情 動 的 項 目1と項目2の平均 コミットメント 3..54 (1 17) 3.56 (1 17) 3..56 (LOO) 項 目 3 チャンスがあるのなら,今とは違った職場 3..22ホ* に変わりたい。(逆転項目 (152) Given the chance, I would change my

present type of work for something dif -ferent 項 目 4 今よりかなり高い給料をくれると誘われて 3..02ホ** も,転職しないで今の組織にとどまりたい。(1.39) 1 would turn down another job that offered quite a bit more pay in order to stay with this organization 継 続 的 項 目3と項目4の平均 コミットメント 3..11*** (1 17) 3..47 1 50 (L04) 3..60 -0肝91 (080) 3..54 0..46 (086) 3 05 3 04 (1..27) 2..52 9 11 (1 19) 2..77 7..27 (1..03) a t統計鐙による平均の差の検定, *..p<“001 **P< 01 'P<..05 (両側検定) 各項目の欠損値のケースが異なるため,日本のサンプル数は, 493から515の聞にある。日本 以外の21カ国のサンプノレ数は, 11,027から12,209までの聞にある。

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(13)

859 次元性を考慮したわが国従業員の組織コミットメントの再検討 -147-ー 表 Lincoln& Kalleberg (1985)の記述統計a 項 組織コミットメントの尺度 米国 日本 目 1 am willing to work harder than 1 have to in order to help 3..91 3..44 A this company succeed (805) (..983) 私は,この会社の成功を助けるために,やらなければならない 以上に一生懸命働きたいと思う。

1 would take any job in order to continue working for this 3.12 3..07

B company (1.14) (113) 私は,この会社に留まるためにどのような仕事でもする。 My values and the value of this company are similar 3..15 2..68 C 私の価値と会社の価値は非常に類似している。 (1..06) ( 949) 1 am proud to work for this company 3 70 3..51 D 私は,この会社で働くことに誇りを感じている。 (943) (1..02) 1 would tum down another job for more pay in order to stay 2..71 2..68 E with this company (1 17) (108) 私は,この会社に留まるために,より高い報酬があっても断る だろう。 F 1 feel very little loyalty to this company 3 45 3.40 この会社に対して忠誠心は全く感じていない。 (1 13) (1 03) a原典)Lincoln & Kalleberg (1985)およびLincoln(1990)の記述統計表から号│用 数字が大きいほど組織コミットメントが高い。 N=3,735(日本), N=4,567(米国),

*:

P<..OOl 4..0 3 8 情

3.6 コ 、3.4 ツ ト メ 3.2 ト 3..0 2 8 図2 国別の組織コミットメント アメリカ A 二ュージーランド ポルトガル 企 カナダ スロエ7. イギ

A

ス スウェーデンハンガリー

プルガリ.~ うェコ ポ』ランド プ ラ ン ス 且 A ロシア & イタリア A .キプロス 企 イルラエル ス

f

ス A ノルウェー 晶 企 ドイツ 企 デンマーク A 日本 企 2.4 2 5 2.6 2.7 2.8 2.9 30 3.1 3.2 継続的コミットメント 注)情動的コミットメントと継続的コミットメントの国別の平均値 有 意I 本 l

*

*

(14)

860 香川大学経済論叢 148

5

論 結 5ド1 日米両国の従業員の組 組織コミットメントを 2次元で捉えることによって, 織コミットメントは,特殊な位置にあることがわかる。図2では,標準的な2 日米両国は つの次元の比例関係を表す対角線上からはずれた対称的な位置に, 位置する。 日本の雇用者の情動的コミットメ 日本の雇用者 日本のいわゆる年功を 1997年のISSPのデータから判断すると, ントは,国際比較すると,中位にある。一方,日本の組織コミットメントは, 同一組織に留まるという継続的コミットメントは,極めて高い。 の継続的コミットメントが非常に高い水準にあるのは, 重視した処遇や労働力の流動性の相対的な低さを反映していると仮定すれば, 納得できることであろう。 経営管理者は,業績との相関関係があるとされている信念や愛着を伴うよう な情動的コミットメントについては,近年の日本企業従業員は,決して高い訳 日本企業従業員は,積極的な思い入れや とにかく組織に継続的に留まって ではないことに注意すべきであろう。 信念によってコミットしているのではなく, いたいという受身的ともいえるコミットメントの側面が強いのである。 逆に,米国の雇用者の組織コミットメントは,情動的コミットメントが非常 やや低い水準にあ る。米国では,市場主義が高度に発達し,転職が当然のこととされているため, 継続的なコミットメントは,低くなり,2つの組織コミットメント次元の比例関 に高く,組織に留まりたいという継続的コミットメントは, ロシア・ポーラ 係が失われる傾向にあると考えられる。 表

6

および図

2

によると,組織コミットメントが低い国は, ンド・ブルガリアなど旧社会主義国およびフランス・イタリアである。組織コ スイ ドイツ, 日本, ミットメントが高い国は,西欧や北欧の国が多い。なお, デンマークなど,労働者を安定して雇用していると考えられる国では,継 このように,組織コミットメントは, 続的コミットメントが高いようである。 ス,

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(15)

-149--次元性を考慮したわが国従業員の組織コミットメントの再検討 861 経済的状況を反映していると考えられる。 表7や図 2で示されるように,経済的に良好である国ほど,従業員のコミッ トメントは,高い傾向にある。近年の日本的経営の改革論の中で,組織へのコ ミットメントは,否定的な意味合いで語られることもあるけれども,従業員の ことなのである。 「望ましい」 組織コミットメントが高いのは,全体としては, 国別の組織コミットメントの高低と経済データとの関係を見ることにする。 国別の組織コミットメント 表7 1997年b 実質GDP成長率 (%) 1997年b l人あたりのGDP (ドル) 組織コミットメントa 国 継続的コミットメント 日本 米国 ドイツc 英国 ハンガリー イタリア ノJレウヱー スウェーデン チェコ スロベニア ポーランド ブルガリア ロシア ニュージーランド カナダ イスラエル フランス キプロス ポルトガノレ デンマーク スイス Q U 4 A A A P D ρ b Q O ウ t a u o O 戸b o O 凸 汐 Q u o o q J q o Q d A u o o t i n i -A せ 1 1 つ リ バ 宮 守 i d -ム ハ U n b n b c O A U つ d 4 ‘ qtu'iqδqonJ 胃 よ 33,265 31,025 25,780 22,372 4,511 20.621 35,109 27,033 5.116 9,122 3,721 1,212 2,952 18.162 21,127 17,165 24,267 11,106 11,238 32.018 36,012 ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) t i a q r D A υ 1 ょっ d 目 υ t o q L Q d 弓 i p o -A 汐 0 0 々 t A υ 0 0 4 4 η L q δ -A 1 ム 1 マ ム 1A11 唱 i 1 ム 1 i η 4 1 i q L ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ' i ワ a ワ a d 坐 Qd0020 っ “ QUAqnY1A つ ω ハ yquFhυηLFDFbQdno マ i F O n t υ 7 ・ nhυpooophvnORυFhυFORd ウ a R υ n O R υ n 白 白 d A U Q d つ iυ? “ つ ρ つ ん つ 臼 ヮ “ つ ω つ ム ワ 白 つ U つ u q ' u 。 , “ つ ' u つ ω つ れ ︼ つ ム ワ 企 つ 白 内 J 。 , “ 情動的コミットメント ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) q L つ u q O 1 i d 告のリハ υ F U F O 々 t 0 6 7 a T よ 司 υ p b Q U Q d F b τ i A 生 o o -1 A T ムーょっ b 1 i 1 i 1 1 1 ム τ っ “ ‘ i ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( nbqu ヴ a ヴ t 4 企 今 δ q d q υ 1 i 4 ・ A せ 4 A 7 ・ っ “ ハ υ ワ u o o q J A υ 4 ム 今 、 υ に d o 白 A q F U A せ 1 A F D 4 企 A 性 n b つ 白 q J q d O 0 7 a p o t i n i n 汐 7apo q t υ q J 今 、 υqoqδ つ d q J つ d q J ﹃ υnJqδ つ b q υ q J ハ J つ d つ -V 今 δ 。 ο 。 δ aISSP (International Social Survey Program) 97による国別の平均値 カツコ内は, 21カ国の平均値の順位 b日本貿易振興会 (2001)のデータベースによる CISSP97の組織コミットメントのデータは,旧西ドイツと旧東ドイツに区分されているた め,人口比で加重平均した

(16)

150-- 香川大学経済論叢 862 1人当たり GDPと継続的コミットメントは,正の有意な相関関係が見られる (r= ..543, p =005)。一方, 1人当たり GDPと情動的コミットメントは,正 の弱い相関関係が見られる(r= ..365, pニ ド052)。また,実質GDP成長率と情 動的コミットメントとは,正の相闘がみられる (r

=

37,p =06)。なお,実 質GDP成長率と継続的コミットメントとは,明確な相関関係はみられない (r= .043, p = .427)0 1997年の一時点の限られたデータではあるものの,情 動的コミットメントと経済成長率と相関関係があり,継続的コミットメントと 経済的な豊かさと相関関係があるというのは,興味深い。 なお,調査方法が大きく異なるけれども,若林・城戸(1986)の研究と比較す ると, イタリアについては,若林・城戸(1986)の研究でも,低い水準であり, 本研究と一致している。推論ではあるが, イタリアには,何か文化的なパイア スがあるのかもしれない。 また, ポーランドが低い水準であることは,本研究 と若林・城戸(1986)は,一致している。 しかし,若林・城戸(1986)の研究で最 も高い水準を示したスウェーデンの情動的コミットメントは, 21か国中15位 と低い水準になっており, 一致していない。 5..2 先行研究の再評価 これまでの組織コミットメントの国際比較研究は, OCQを元にしたものが多 かった。しかし, OCQが異なる文化を持つ米国以外の国で適合するかどうか疑 聞であるという指摘もある (Randall, 1993;関本・花田, 1985, 1986;田尾, 1997)

代表的な国際比較研究であるLincoln& Kalleberg (1985)の研究を検討する

と,本分析と同様の傾向が見られる。表6のように, Lincoln& Kalleberg (1985) の研究で,米国が日本より,有意に平均点が高い質問項目は,項目A,

C

D の3項目であり, いずれも,積極的な態度に関する情動的コミットメントの項 自である。なお,表

6

の項目

A

D

は,

ISSP

の項目

1

,項目

2

とほぼ同じ内容 である。 一方,表6の中で,組織に留まるかどうかのコミットメントに関係す る項目

B

や項目

E

は, 日米聞に有意な差が見られない。なお,項目

E

は,

ISSP

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(17)

151ー

次元性を考慮したわが国従業員の組織コミットメントの再検討

8

6

3

の項目

4

と類似の内容となっている。

Lincoln

&

Kalleberg

(

1

9

8

5

)

では,組織に留まるかどうかの

以上のように, 肯定的な態度に関する情動的コミット コミットメントの質問が少なく,他は, メントに関する質問項目が中心であったため,米国のコミットメントの平均点 が高くなったと考えられる。他の米国の方が組織コミットメントが高いという

OCQ

を 利用しており,積極的な態度を中心とした尺度になっている。 日米の組織コミットメント比較研究の中で,例外的に,米国より日本の方が 高い結果となった Takezawa

&

Whitehill

(

1

9

8

1

)

は,組織コミットメント研究 で

OCQ

が登場する以前の調査である。項目はひとつだけであり,.会担の業績 より業績の良い会社に転職するか,現在の会社に留まるかどう (8) という内容である。この尺度は,積極的な態度ではなく,継続的コミット が悪化した時, か」 メントの次元を測定した尺度といえる。

t

l

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F

i

結果を示した Luthans,McCaul, & Dodd

(

1

9

8

5

)

やNear(1

9

8

9

)

も,

日本企業従業員の組織コミットメ 以上の過去の国際比較研究の検討からも, ントが高いとは言えず,逆に,米国系企業従業員の方が組織コミットメントが ( 7) OCQ (Organizational Commitment Questionnair巴)の項目は,下記の15項目である (Mowday, Steers,

&

Porter,

1

9

7

9

p

.

2

2

8

を訳出)。なお, (R)は逆転項目である。 ①この会社を成功させるためには,通常期待されている以上の努力を進んで行う。 ②この会社は働くのにとても良い会社だと友人に話せる。 ③この会社にほとんど忠誠心は持っていなしユ。 (R) ④この会社で働き続けるためにどのような仕事も引き受けるだろう。 ⑤私の価値観とこの会社の社風は非常に合っていると思う。 ⑥この会社の一員であることを他の人に誇りを持って言うことができる。 ⑦仕事が似ているなら,どこか他の会社で働いてもいっこうに構わない。 (R) ③この会社は,良い仕事をする上で自分の最善のものを発揮させてくれる。 ⑨この会社を辞める理由は,今の状況でも十分に存在する。 (R) ⑮他の会社でなしこの会社を選んで本当に良かったと思っている。 ⑪この会社にずっと勤めても何も得られない。 (R) ⑫この会社の従業員に関する政策に賛成しかねることが多い。 (R) ⑬私は,この会社の将来のことが大変気になる。 ⑬この会社は,自分が仕事をするには,最も良い会社である。 ⑬この会社で働くことを決めたのは,全くの間違いであった。 (R)

(

8

)

Takezawa & Whitehill(1

9

8

1

)

1

9

7

6

年の調査では,日本の雇用者は r転職する」 と回答したのは5%であったのに対して,米国では, 36%が転職すると回答した。

(18)

-152 香川大学経済論叢 864 高いという結果が多い理由の一つは,先行研究の多くが,

OCQ

を元にしてきた ために,継続的コミットメントに関する項目が少なく,情動的コミットメント などの態度に関する項目が測定の中心となっていたため,米国が日本より高い という結果になったと推定できる。米国の従業員を中心として開発された情動 的コミットメントを中心とした

OCQ

による組織コミットメントの国際比較研 究は,特に,継続的コミットメントが高い日本の従業員の組織コミットメント を測定するのに,適していないのである。組織コミットメントの構造は, l次 元ではないのにもかかわらず,

1

次元で捉えようとした結果が国際比較研究混 乱の

1

つの要因である。 5..3 本研究の限界 本研究の組織コミットメント尺度の項目数は少なし信頼性には限界があっ た。今後は,高い信頼性と妥当性を持ち,情動的コミットメントや継続的コミツ トメントを含んだMeyer& Allen (1997)の組織コミットメント理論等の多次 元的アプローチによる測定が必要である。さらに,

IRT

を利用した異文化比較 研究(高橋ら, 1998;高橋, 1999)などによって,尺度の精撤化を行っていく ことが望まれる。 本研究は, これまでの国際比較研究で指摘されている若林・城戸(1986)の諸 仮説や日本人と外国人の聞の文化的な影響や回答ノてイアスや翻訳等価性の問題 の存在を否定するものではない。例えば,項目2の「誇りを感じる(beproud to, 日本人が回答する場合に,一種の気恥ずかしさを感 じる可能性もあるように思われる。若林・城戸(1986)が指摘したように,積極 的な態度に関する回答は,米国人などの方が肯定的な感情表出を行う可能性も について, be proud of)J あるだろう。 本研究のデータは, 1997年のデータである。再検討した先行研究と ISSPの データは,研究対象も調査時点も異なることには注意しなければならない。花 田(1991)は,日本の大企業の大卒男子従業員を対象として, 1984年と 1989年 に組織コミットメントの調査を行い,同一世代でも,組織コミットメントが低

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

(19)

153-次元性を考慮したわが国従業員の組織コミットメントの再検討 865 日 本企業従業員の組織コミットメントは,

1

9

9

7

年より一層低下しているかもしれ ない。今後は, 下していると報告している。長期的な雇用慣行が崩れ始めていることから, このような調査が継続的に行われ,時系列の研究が行われるこ とが望ましい。 研究方法論上の展望 研究者自らデータ収集を行う 1次分析ではなく,公開データを利用する 2次 分析によっても,有効な研究を行える可能性を示すことができたと思う。デー タベースやインターネットなど情報技術の活用によって

2

次分析による研究 の可能性は高まっている。一般に,研究者自身がデータを収集する l次分析が 、 1 1 1 ! i i ; l i l -L t f t i l i -t f f

5 4 データを収集する過 程で研究者が得るものは,少なくないけれども,本来の社会科学研究の目的は, データ収集自体にあるのではなく,現実世界の理解にある。

2

次分析は,デー タ収集に関するコストやワークロードを大きく節約でき,仮説の検証など本来 の研究に集中できるという利点がある。特に,本稿のような国際比較研究は, 個人の研究者では,難しく, 重複した調査が行われることを防ぐこともできるだろう。公開されたデータを

2

次分析のメリットが大きい。社会全体として, もちろん, 望ましいという考え方が強いように思われる。 多くの研究者が,分析を行うことで,分析のレベルが向上することが期待され しかし,多くの費用を投じて調査を実施したとしても,有効な尺度がなけ れば,質の高い研究成果は生まれない。公聞を前提として,有効な尺度を用い た信頼性と妥当性を持った調査が必要である。適切な公開データによる二次分 析の研究が多く行われ,研究者間の議論が活性化することが望まれる。 る。 データファイル International Social Survey Program (ISSP), 1997, International Social Survey Pro -(9 ) わが国では,佐藤・石田・池田 (2000)が二次分析の研究方法や研究例の啓蒙的な論文 集となっている。

(20)

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l

ι -154 香川大学経済論叢 866

gram: Work Orientation II, 1997 [computer fi!e], ICPSR version, Koln, Germany: Zentralarchiv fur Empirische Sozialforschungj Ann Arbor, MI: Inter-university Consor -tium for Political and Social Research [distributors]

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