I -161 土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)
矩 形 水 槽 の 固 有 振 動 数 の 変 化 に 着 目 し た 波 高 抑 制 手 法 の 提 案
森 松 総 合 研 究 所 正 会 員
O
青 木 大 祐 愛 知 工 業 大 学正 会 員 鈴 木 森 品
愛知工業大学(研究当時)学生会員久保田拓也 愛知工業大学(研究当時)学生会員黒田亮
1 .はじめに
我国は地震大固と呼ばれるくらい地震が多く発生する
地域である.近年では,2003年に発生した北海道十勝沖地
震(M8.0),2007年の新潟県中越沖地震(M6.8)および2011年
の東北地方太平洋沖地震(M9.0)が記憶に新しい.特に東北
地方太平洋沖地震では,病院施設や学校などに設置されて
いる矩形型貯水槽(以下,貯水槽)に破損が多く発生した
筆者ら1),2)は,貯水槽におけるスロッシング‘現象を抑制する
ための様々な手法を検討し,開口率の異なる全桐を貯水槽の中
間位置に設置することを提案した.その結果,金網の開口率を低
くすることで,効果的な波高抑制効果が認められた. しかし,前
報2)での金網の関口塁手は50~ 70純であり,関口率が低くなる
と槽内での水の流動挙動は隔壁とした場合に類似し,水の固有
振動数が変化して波高抑制効果も変わるものと予想される.
そこで本研究では,貯水槽に設置することが容易であり槽の
補強材ともなりうる既製のパンチング、メタル板を制震装置とし
て用いることを提案する.関口率を 5~ 位協の範囲で変えた
パンチング、メタル板を矩形水槽の中間位置に設置して,固有振
動数に及ぼす開口率の影響を明確にするとともに,波高抑制効
果についても検討した.
2
.
実験計画
2
.
1
実験条件
写真-1に実験で用いた水槽を示す.水槽は,幅 L=900mm,
奥行き D=450阻 お よ び 高 さ H=450凹 の ガ ラ ス 製 で , 水
深は h=200醐とした.加振方向を写真一1に示す.内容水
の溢流を防ぐため振幅を::t5阻とした.また,水槽の前面
にメジャーを貼り付け,ビデオカメラで波高を観測した.
パンチングメタノレの開口率が O犯に近づくにつれて,槽内
での内容水の流動挙動は隔壁(幅Lが450聞 に 分 割 さ れ
る)の場合に類似する.そこで, L=900, 450 mmの場合の
固有振動数を式(1)3)から算出した.表-1に幅 900,450凹
の場合の1,2次モードの固有振動数の理論値を示す.
写真-1用いた水槽
表-1国有振動数の理論{直
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震装置 図ー
1
制振装置の設置位置
図-1に示すように,パンチングメタノレ板を水槽幅の中間位置に、水面に対して垂直に設置した.パンチ
ングメタル板の穴径は 15凹で一定とし,開口率pは42,30, 20, 15, 10および5%の6種類とした.
なお, p=位 協 のパンチングメタル板の穴を順次減らして開口率を低くした.
2
.
3
実験方法
開口率の異なるパンチング‘メタル板を用い,周波数を O.60 '"2. 4 Hzの範囲で0.02Hz刻み(表 lに
示す理論値付近では 0.01Hz刻み)で変えて最大波高を測定した(スイープ試験) .
キーワード: スロッシング,矩形型貯水槽,スロッシング波高抑制,一次モード,二次モード,開口率
連絡先.〒501-0417 岐阜県本巣市屋井1057番1 TEL: 058-323-8228、FAX:058-323-8229
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土木学会第70四年次学術講演会(平成27年9月)
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振動数[Hz]
最大応答波高と振動数の関係(関口率 42~15 見)
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結果および考察
図ー2および図-3に,開口率 p=42~ 15九および
15~ 5 %の場合の最大応答波高LlH/Fと振動数の
関係を示す.各振動数における加振力が異なるので,
縦軸には最大波高LlH を各振動数における加振力
Fで除した最大応答波高LlH/Fを示した.なお,
L=900, 450凹における固有振動数の理論値を図中
に{井言己した.
図-2の p=42~ 15犯の場合では, L=900凹 の 理
論値付近の周渡数で、波高が上がっており,これらの
開口率においては内容水の固有振動数に大きな差異
は見られない.また,開口率が低くなるにつれて,波
高抑制効果が大きくなることがわかる.
一方,図-3におけるp=10,5切の場合では, L=450
聞の理論値付近で、波高が上がっており,開口率が15免
より低くなると隔壁の状態に近づき,固有振動数に変
化が現れると考えられる.
図-4に最大応答波高LlH/Fに及ぼす開口率 pの
影響を示す.開口率が15覧まで低くなるほど波高
が抑制されるが, 15話より低くなると波高抑制効果
が小さくなることがわかる.
1 -161
援動数[Hz]
45
最大応答波高と振動数の関係(関口率15~5 犯)
20 25
関口率p,弘[]
最大応答波高に及ぼす関口率の影響
波高抑制効果に及ぼす穴径あるいは形状
40
35
....,次モード
す 2次モード
30
15
10
5
4
.
おわりに
パンチングメタル板を制震装置として用い,ス
ロッシング波高の変化および固有振動数に及ぼす
関 口 率 の 影 響 に つ い て 検 討した結果,以下の結論
を得た.
1)開口率が 15覧 よ り 低くなると隔壁の状態に
類似し水槽が半分に分割されるので,固有振動
数は L=900聞 から L=450mmの値へと変わる.
2) 関口率を15~ 20誌とすることで,高い波高
抑制効果が得られる.しかし,開口率を15対
より低くすると隔壁に類似するので,
i
度高抑制
効果は期待されない. 図
-
4
今回使用したパンチングメタノレ板の穴は15凹径の円としたが,
の影響については今後の課題である.
図-3
。
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参考文献
1)則竹一輝,鈴木森晶,奥村哲夫,佐口浩一郎,倉橋奨・矩形貯槽におけるスロッシング挙動とその抑制方法に対
する検討,土木学会論文 集A2分冊(応用力学)特集号,
V
o
l
.
15,1_785-1_794,2012. 8.
2)曽根龍太,小野泰介, 井田剛史, 平野慶和,佐藤尚次:矩形断面貯水槽におけるスロッシング制援対策の検討,
土木学会論文集 A2(応用力学),
V
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l.69,
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2 (応用力学論文集
V
o
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.
16), 1_833-1_843, 2013.9.
3
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l.53, 1963.
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