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1 1.1 v = 1 P ρ r GM r r 2 (1.1.1) M r r M r = r 0 4πr 2 ρdr (1.1.2) free-fall time τ ff R (1.1.1) R τ 2 ff GM R 2 τ ff 1/ Gρ (1.1.3) gram/cm 3 free-f

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(1)

1

恒星の構造と進化に関する基本的事項

1.1

静水圧平衡

恒星内部での力のつり合いは、内向きの自己重力と外向きの圧力勾配の力の間で成り立つ。球対称の仮 定のもとで単位質量当たりの運動量保存の式は ˙v =−1 ρ ∂P ∂r GMr r2 (1.1.1) の様に書ける。ここで、Mr は中心から半径r の球の中に入っている質量で、 Mr = ∫ r 0 4πr2ρdr (1.1.2) のように定義される。 もし、圧力がなくなったとき星は free-fall time τff で崩壊する。星の半径をR と書くと(1.1.1)式 から、 R τ2 ff GM R2 −→ τ∼ 1/ (1.1.3)

が得られる。太陽の平均密度は約1gram/cm3 なので、太陽のfree-fall timeは約1時間、太陽の200倍

の半径を持つ赤色巨星の平均密度は約10−7gram/cm3 なので、free-fall timeは数ヵ月となる。

圧力勾配と重力との不均衡が生じた場合free-fall timescale で是正される。恒星の進化のtimescale

はfree-fall timescaleよりも格段に長いので、恒星では非常によい近似で静水圧平衡が保たれている。(た だ、脈動星は例外で、静水圧平衡の構造が不安定で、平衡状態の付近を振動し続ける。その振動周期は free-fall time程度である。) 静水圧平衡を表す微分方程式は(1.1.1)(1.1.2)より dP dMr =−GMr 4πr4 ( または dP dr = GMr r2 ρ ) (1.1.4) および dr dMr = 1 4πr2ρ ( または dMr dr = 4πr 2ρ ) (1.1.5) となる。 静水平衡の式に、理想気体の関係 P ∝ ρT/µ (µ はガスの平均分子量) を使い、粗い近似を使うと、 Ps− Pc R ∼ − GM R2 ρ −→ Tc µM R (1.1.6) という関係が得られる。ここで、添字のs は表面の量を表し、c は中心の量を表す。この関係は、恒星 が収縮して半径が小さくなると重力が強くなり、それに対抗する圧力勾配が必要となるので温度勾配も 大きくなり、内部温度が高くなることを表している。この温度勾配は、熱エネルギーを中心から表面へ と運ぶ。表面まで運ばれたエネルギーは星の表面から星の光として放出される。つまり、恒星は内部で 静水圧平衡を維持する必要性から光を放出し、エネルギーを失う。失われた熱エネルギーは中心部での 核融合反応によるエネルギー生成、または、収縮による重力エネルギーの発生でまかなわれる。つまり、 静水圧平衡(自己重力との拮抗)これが恒星の進化の原動力であると理解する事が出来る。 ガスの平均分子量µと元素組成 X, Y, Z 以下にしばしば出てくるガスの平均分子量µは、ガス粒子ひとつ当りの(原子質量単位で測った)質量を

(2)

表す。逆に言うと、1/µは1原子質量当りのガス粒子数、1/(µmu)はガス1グラム当りの粒子数を表す。 ここで、mu ≈ mp = 1.673× 10−24gである。また、1/µはイオンの数1/µIと電子の数1/µeとに分割 して 1 µ = 1 µI + 1 µe と表す事もある。µI, µeはそれぞれイオンの平均分子量と電子の平均分子量という。 ガスの元素組成をあらわすのに、水素の質量含有比、X、ヘリウムの質量含有比、Y、およびヘリウ ムより重い元素の含有比、Z (慣例として「重元素量」または「金属量」と言われる事が多い) が使わ れる事が多い。X + Y + Z = 1で3つのうちの2つが独立である。完全電離したガスの平均分子量と X, Y, Zとの関係は、 1 µ ≈ 2X + 3 4Y + 1 2Z; 1 µI ≈ X + 1 4Y ; 1 µe = 1 2(1 + X) のように書く事が出来る。 恒星の重力エネルギー 星の重力エネルギーは、星を構成しているガスすべてを無限遠まで運ぶのに必要なエネルギーに負の符 号をつけたものとして評価することができる。(∵エネルギーが必要なだけ低いエネルギー状態にある と考えることができるから負とする。)いま、質量Mの星の外側から質量を無限遠まで運んでいって、 質量がMr残った状況を考え、さらに微小質量dMrを取り去ることを考える。質量Mrをもつ半径rの 球を取り囲む微小質量dMrの球殻を無限遠まで運ぶのに必要なエネルギーをdW とすると、中心から の距離がr0 (> r)での重力(GMr/r02)dMrに逆らって運ぶので、 dW = dMrGMr r dr0 r02 = GMr r dMr (1.1.7) となる。これをdMrについて積分することにより、星全体のガスを無限遠に運ぶのに必要なエネルギー W が求められる。星の重力エネルギーEgは−W であるから、 Eg=M 0 GMr r dMr=−q GM2 R (1.1.8) と表される。ここで、qは1のオーダーの量である。 ビリアル定理 静水平衡の式(1.1.3)の両辺に4πr3をかけて、星全体で積分すると ∫ M 0 4πr3 dP dMr dMr=M 0 GMr r dMr= Eg (1.1.9) となる。左辺を部分積分して、表面でP = 0、中心でr = 0であることと、(1.1.5)式を使うと、 Eg= [4πr3P ]MMr=0− 3M 0 4πr2P dr dMr dMr =−3M 0 P ρdMr (1.1.10) が得られる。 理想気体では、P/ρ = (Cp− Cv)T = (γ− 1)ei という関係がある。ここに、CpおよびCvはそれぞ れ定圧比熱と定積比熱を表し、γ = Cp/Cvと定義される。また、ei は単位質量当りの内部エネルギーを 表す。理想気体であるか否かにかかわらず、圧力は運動量フラックスで表されるので、 P 1 3nv(mv)∝ ρei

(3)

と書ける。ここで、n はガス粒子密度、m はガス粒子一個の質量、v はガス粒子の熱運動速度を表す。 上の式で表されるように、P/ρeiに比例する量であるので一般に、 P/ρ = (γ− 1)ei (1.1.11) と書くことができる。但し、このγは一般には比熱比ではない。この関係を使うと(1.1.10)式から、こ の式は、恒星の静水平衡状態におけるビリアル定理 Eg =−3(γ − 1)Ei, where EiM 0 (γ− 1)eidMr (1.1.12) が得られる。 恒星の全エネルギーEtotはEgとEiの和であるから、 Etot= Eg+ Ei=−(3γ − 4)Ei= 3γ− 4 3(γ− 1)Eg ( = 3γ− 4 3(γ− 1)q GM2 R ) (1.1.13) と表される。この式はγ > 4/3のときにのみ、Etot< 0となり、星のガスが束縛された状態にあること を示している。単原子分子からなる理想気体の場合γ = 5/3でこの条件を満たしている。

光子ガスの場合、Prad = 13aT4 = 13Urad と表される(aは輻射定数、Uradは輻射エネルギー密度)の

で、γ = 4/3に相当する。これは、星全体で輻射圧がガス圧に比べて優勢になってくると、Etot = 0の 状態、つまり、束縛されない状態に近づいていくことを表している。 重力収縮 核融合反応によるエネルギーの供給がない場合、恒星は光を発することによりエネルギーを失う。lumi-nosity(恒星から単位時間当たり放出されるエネルギー) をLと書くと、 L =−dEtot dt = (3γ− 4) dEi dt = 3γ− 4 3(γ− 1) dEg dt (1.1.14) という関係が成り立つ。上の式から、核融合反応によるエネルギーの供給がない場合、恒星が光を発す ることにより内部エネルギーEiが増大し、重力エネルギーEgが減少する(星が収縮する)ことがわか る。理想気体ではEi∝ T なので、エネルギーを失うことによって温度が上昇する。このことは、‘恒星 は「負の比熱」を持っている’というように表現することもできる。 (1.1.8)式を使うと、Egの時間微分は近似的に dEg dt ' −qGM 2 d dt ( 1 R ) = qGM 2 R2 dR dt (1.1.15) と書けるので、(1.1.14)式に代入すると、 L =−q 3γ− 4 3(γ− 1) GM2 R2 dR dt (1.1.16) となる。内部温度が低く(Tc. 107K)核融合反応が起きないような状態では、恒星は収縮(dR/dt < 0; 重力収縮)をしなくてはならないことを上の式は示している。重力収縮によって重力エネルギーが減少 し、開放されたエネルギーの一部が内部エネルギーの増加に使われ、残りが星の表面まで運ばれて星の 光として放出されるというエネルギー収支になっている。

(4)

重力収縮のtimescale τgは次のように見積ることができる τg= d ln Rdt ' qGMRL2 |Eg| L |Ei| L ' 2 × 107 (M/M )2 (L/L )(R/R ) years ( τff) (1.1.17)

ここで、太陽の luminosity は L = 3.85× 1033 erg s−1 である (1 erg = 10−7J)。このtimescaleは Kelvin-Helmholtz time-scaleともいわれる。上の式からわかるように重力収縮のtimescale τg は力学的

timescaleにくらべて非常に長い。このことは、重力収縮では静水平衡が非常によい近似でなりたってい ることを意味する。 一方、水素からヘリウムへの核融合反応によるエネルギー発生が起こっている主系列星段階の寿命τn は、水素からヘリウムへの核融合反応によって約0.7%の質量がエネルギーに変わり、星全体の約10%の 水素がヘリウムに変えられるまで主系列段階が続くということから、 τn 0.1× 0.007Mc2 L ∼ 10 10 M/M L/L years のように評価できる。したがって恒星の重力収縮のtimescaleは主系列段階の進化のtimescaleのおよそ 百分の一であることがわかる。 重力収縮による恒星内部温度変化 次に、重力収縮による恒星内部の温度変化をHomologous contractionの近似を使って考察しよう。静水 平衡の式(1.1.4)に(∂/∂t)Mr を作用させると ∂ ˙P ∂Mr = 4GMr 4πr4 ˙r r ≡ −4 ˙r r ∂P ∂Mr (1.1.18) が得られる。ここで、ドットは時間微分(例えばP˙ ≡ (∂P/∂t)M r)を表す。次に、˙r/rが恒星内部の場 所によらず一定である(中心からの距離が、同じ比率で変化する)というhomologous contractionの 仮定 ˙r r = ˙ R R (1.1.19) を導入する。そうすると、(1.1.18)式は積分できて、 ˙ P =−4R˙ RP + constant が得られる。星の表面で、P = 0, ˙P = 0であるから、constant=0で、上の式は ˙ P P =−4 ˙ R R (1.1.20) となる。この式はP /P˙ も場所に依存しない量であることを示している。 次に、(1.1.5)式をtで微分して、 ∂ ˙r ∂Mr = 1 4πr2ρ ( −2˙r r ˙ ρ ρ ) (1.1.21)

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を得る。これに homologous contractionの仮定(1.1.19)式を使うと ˙ R R ∂r ∂Mr = ∂r ∂Mr ( −2R˙ R ˙ ρ ρ ) (1.1.22) となる。従って、 ˙ ρ ρ =−3 ˙ R R (1.1.23) となり、ρ/ρ˙ も場所によらない量であることがわかる。 温度TPρの関数で表せるので、 ˙ T T = ( ∂ ln T ∂ ln P ) ρ ˙ P P + ( ∂ ln T ∂ ln ρ ) P ˙ ρ ρ = [ 4 ( ∂ ln T ∂ ln P ) ρ + 3 ( ∂ ln T ∂ ln ρ ) P ] ( −R˙ R ) (1.1.24) と書くことができる。さらに、 ( ∂ ln T ∂ ln ρ ) P = ( ∂ ln T ∂ ln P ) ρ ( ∂ ln P ∂ ln ρ ) T (1.1.25) であることを使って、(1.1.24)式は ˙ T T = [ 4− 3 ( ∂ ln P ∂ ln ρ ) T ] ( ∂ ln T ∂ ln P ) ρ ( −R˙ R ) (1.1.26) と表すことができる。この式は、恒星が重力収縮(または膨張)で半径が変化したときに起こる内部温度 の変化を表している。 理想気体の場合P ∝ ρT であるから、(∂ ln P/∂ ln ρ)T = 1, (∂ ln T /∂ ln P )ρ= 1となり、 ˙ T T = ( −R˙ R ) = 1 3 ˙ ρ ρ (1.1.27) となるので、収縮によって星の内部温度が上昇する。 密度がある程度大きくなると電子が縮退をはじめる。電子の縮退したガスでは、電子の圧力Peがイ オンの圧力PIに比べて大きいので、 P = Pe+ PI' Pe∝ ρ 5 3 = ( ∂ ln P ∂ ln ρ ) T ' 5 3 (1.1.28) となる。ここでは、ガスは非相対論的に縮退(ρ < 106g/cm3)しているとした。また、温度依存性は理想 気体で近似できるイオン圧から来るので、 ( ∂ ln P ∂ ln T ) ρ = 1 P ∂(Pe+ PI) ∂ ln T ' PI P ( ∂ ln PI ∂ ln T ) ρ = PI P (1.1.29) と表せる。従って、 ˙ T T ' − P PI ( −R˙ R ) (1.1.30) となる。重力収縮によって密度が十分に大きくなり、電子の縮退が強くなると、重力収縮によって温度 Tが逆に減少しはじめることを示している。このことは、恒星が重力収縮することによって到達するこ

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とのできる最高温度Tmax が存在することを意味している。密度が大きくないときは、ガスはほぼ理想 気体としてふるまい、恒星の内部温度は T M R ∝ ρ 1 3M 2 3 (1.1.31) と表されるので、ある密度にたいする温度は質量が大きいほど高い。従って、Tmaxは質量が大きいほど 高い値を持つ。質量が十分小さく(M . 0.08M )、Tmax でも中心で水素からヘリウムへの核融合反応 によるエネルギーの発生が十分でない場合、主系列星となることができない。このような星は褐色矮星 (brown dwarfs)といわれる。 縮退が強くなると温度が下がる のは、内部エネルギーの増加が Fermi energy の増加にいって しまうためであると理解するこ とができる。完全に縮退した状 態では圧力は密度だけの関数と なるので、星の質量と半径が一 対ーの関係になる。

1.2

物質の状態式と電子の縮退 (electron degeneracy)

上で見たように、自己重力は圧力勾配で支えられるので、恒星内部を構成しているガスの性質が恒星の 内部構造と進化に大きな影響を与える。圧力Pは一般にガス圧 Pgasと輻射圧Prad = 13aT4 に分けられ、 P = Pgas+ Prad; β Pgas P ; Prad P = 1− β のように表される。さらに、ガス圧はイオンの分圧PIと電子の分圧Peの和となっている(Pgas= PI+Pe)。 ガス粒子密度Nが十分小さいときガスの熱運動はMaxwell-Boltzmann分布で表され、理想気体と してふるまう。このとき、運動量p をもつ粒子の単位位相空間体積当たりの粒子数f (p)f (p) = fM(p)≡ N (2πmkBT )3/2 e−2mkTp2 (1.2.1) で与えられ、ガス圧Pgas は Pgas= ∫ fM(p)(v· p) cos θd3p = 3 ∫ 0 fM(p) p4 mdp = N kT (1.2.2) となる。 電子のようなスピン1/2をもつFermi粒子からなるガスを考える。量子力学により、位置と運動量 からなる位相空間(実空間×運動量空間の6次元空間)の単位体積あたりの、スピン1/2の粒子の状態数

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はスピンの自由度が2であることから2/h3であることが知られている。一方Fermi-粒子に対するPauli の排他原理より、同じ状態をもつ2つ以上の粒子が存在することが禁止されている。この原理は分布関 数f (p)に対し、 2 h3 > f (p) (1.2.3) という条件が課せられることを意味する。したがってMaxwell-Boltzmann分布が、運動量の全領域(0 p <∞)でPauliの排他原理と矛盾しない、つまり、ガスが理想気体としてふるまうための条件は 2 h3 ≥ fM(p = 0) = N (2πmkBT )3/2 (1.2.4) であるということとなる。この条件は実空間での粒子密度Nが大きくて温度が低いときに満たされなく なる可能性がある。満たされなくなると、Fermi粒子からなるガスは理想気体の性質からずれ、縮退の影 響が現われる。この様な状態では、運動量pが小さいところで粒子密度が(1.2.3)の条件によって抑えら れ、そのぶん運動量の大きい粒子の密度がマクスウェル分布に比べて大きくなっている。そのため、縮 退の効果によりガス圧は理想気体の式を適用した場合よりも大きくなる。不等式(1.2.4)は粒子の質量が 小さい場合程満たさなくなりやすい。そのため、恒星の構造の進化では電子の縮退が重要な働きをする。 電子に対して(1.2.4)式 が満たされなくなる場合、つまり電子の縮退が始まる条件は、Ne= ρ/(µemp) の関係eは電子の平均分子量を表す)をつかって、 ρ µeT3/2 > 2mp(2πmekB) 3/2 h3 ≈ 8.05 × 10−9 (c.g.s.) (1.2.5) のように表される。例えば、電離したヘリウム核と電子だけから成るガスe= 2)で温度が108Kの場 合、ρ > 1.6× 104g/cm3で電子の縮退が起こる。 完全に縮退した状態の電子ガス 完全に縮退した電子ガスの運動量分布はすべて排他原理によって決められているので、分布関数は fe(p) = { 2 h3 for p≤ pF 0 for p > pF (1.2.6) のように表される。(上の状態が、粒子の運動量分布が温度に全く依存しないことから縮退(degenerate) した状態といわれる。) Fermi momentum pF は粒子密度Neとの関係 Ne= ρ µemp = h3 ∫ pF 0 p2dp = 8πp 3 F 3h3 −→ p 3 F = 3h3 8πmp ρ µe (1.2.7)

(8)

から決まる。これは、 ρ µe = 9.739× 105 ( pF mec )3 g cm−3 (1.2.8) のようにも表す事が出来、ρ& 106g cm−3 のときpF& mec となり相対論的な縮退となる事がわかる。 縮退した電子の圧力は Pe= 2 h3 3 ∫ pF 0 vp3dp =              3h3 1 5me p5F ( ρ µe )5/3 if pF mec 3h3 c 4p 4 F ( ρ µe )4/3 if pF mec (1.2.9) となり、非相対論的縮退の時(v = p/me)は密度の5/3乗に比例し、extreme relativisticな時(v = c)は 密度の4/3乗に比例する事が分かる。 完全に縮退した電子ガスの圧力は温度に全く依存しない。さらに、電子の縮退した状態ではPe PI で、星の構造を決める全圧力はP ≈ Peとなっているので、そのような状態で核融合反応が起こると、温 度が上昇しても膨張が起こらないで温度がさらに上昇し、フラッシュといわれる核融合反応の暴走がお こる。

M. Schwarzshild “Structure and Evolution of the Stars” (1958)

上の図は、log ρ− log T 図上の各領域での、物質の状態の性質の概要を表したものである。密度が小さ くて温度が非常に高い領域では輻射圧が優勢で、逆に密度が大きくて温度が比較的低い領域では電子の 縮退の影響が大きくなる事が見て取れる。太陽の中心から表面迄の状態はガス圧優勢な領域にあり、十 分内部の高温部では理想気体に近い性質を持つが、表面近くの低温部では水素ヘリウムの不完全電離領 域および中性領域が存在する。

1.3

Polytrope ガス球

1.3.1 Lane-Emden式 中心からの距離rを独立変数としたときの静水平衡と質量分布の式 dP dr = GMr r2 ρ, dMr dr = 4πr 2ρ (1.3.1)

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に入っている変数は、P, ρ, Mr であるのに対し、式が2本なのでこのままでは閉じていない。 一般に、 圧力Pは密度ρだけでなく温度にも依存するので、星の構造を得るためには、熱エネルギーの保存を考 え、温度勾配を与える微分方程式を加える必要がある。 しかしここでは熱エネルギー保存を考えるのを後回しにし、Polytropeの関係式 P = Kρ1+n1 (1.3.2) を仮定して力学平衡の式を閉じさせる。この関係と静水平衡の式を解いて得られるpolytropeガス球は 恒星の構造に対する粗い近似として有用であることが多い。ここで、nはpolytropic indexで適当な値 (1∼ 4)を仮定する。(n = 1.5は単原子分子理想気体の等エントロピー構造、つまり場所場所の圧力、密 度、温度が断熱関係で与えられる場合に対応する。) また、K は比例定数で、恒星の質量と半径と関係 づけられる。一方、縮退したガスに対してはK は物理定数によって与えられる。 (1.3.1)式からMrを消去すると、 d dr ( r2 ρ dP dr ) =−4πGr2ρ (1.3.10) となる。この式にpolytrope関係式(1.3.2)を使って密度分布に関する2階の微分式 K d dr ( r2 ρ 1+n1 dr ) =−4πGr2ρ (1.3.3) が得られる。さらに、変数θρ = ρcθn ( P = Pcθn+1 ) (1.3.4) で定義しcは中心の密度)、(1.3.3)式に使うと 1 n c d dr [ r2 θn dθ1+n dr ] =−4πGr2θnρc (1.3.4) となる。dθn+1/dr = (n + 1)θndθ/drであることと、rの代わりに、無次元化された中心からの距離 ξ r =(n + 1)K 4πG ρ 1 n−1 c ξ (1.3.5) を(1.3.3)に使うと、Lane-Emden式 1 ξ2 d ( ξ2 ) =−θn (1.3.6) を得る。 中心(ξ = 0、ρ = ρc)では、 θ = 1, and = 0 (1.3.7) となっている。二番目の関係は中心付近で dθ/dξ ∝ dP/dr ∝ Mr/r2 ∝ r であることから理解できる。(中心ではどの方向にも力が加わらない。)

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(1.3.6)式を中心付近で、展開すると θ = 1− 1 6ξ 2+ n 120ξ 4+ . . . (0 < ξ 1) (1.3.8) が得られる。 θは中心から外側に向けて単調減少し行き、あるξの値でゼロとなる。そこがポリトロープ球の表面 で、そこでのξの値をξ1 と書く。(ξ > ξ1でθは正負の間を振動するが、その領域の解は使わない。)ξ1 の値はポリトロープ指数の値によって異なる。 Lane-Emden式の解はn = 0, 1, 5の場合にだけは次のような解析的な解が求められる: 1) n = 0の場合は密度一定の非圧縮性流体に対応し、P ∝ θとなっており、θ(ξ)θ(ξ) = 1− ξ2/6, ξ1= 6 (1.3.9) のように表される。この場合P ∝ θである。 2) n = 1の場合ρ∝ θP ∝ θ2となっており、θ(ξ)θ(ξ) = sin ξ ξ , ξ1 = π (1.3.10) とあらわされる。 3) n = 5の場合θ(ξ)θ = (1 + ξ2/3)−1/2, ξ1 → ∞ (1.3.11) と表される。この場合半径は無限大であるが質量は有限である。

他の場合には数値的に解が求められる。下の表は種々のpolytropic indexに対するpolytrope球の表面

の値 ξ1、ξ21(dθ/dξ)1 および中心密度と平均密度の比ρc/ρを与える。 Lane-Emden解の定数 n ξ1 −ξ21 ( dθn ) 1 ρc/ρ 0.0 2.4494 4.8988 1.0 0.5 2.7528 3.7871 1.8361 1.0 3.1416 3.1416 3.2899 1.5 3.6538 2.7141 5.9907 2.0 4.3529 2.4111 11.403 2.5 5.3553 2.1872 23.406 3.0 6.8969 2.0182 54.183 3.5 9.5358 1.8906 152.88 4.0 14.972 1.7972 622.41 4.5 31.836 1.7378 6189.5 5.0 1.7321 Lane-Emden 解θ(ξ) 1.3.2 Polytrope球の性質 Polytrope球の表面での量 ξ1、 ξ21(dθ/dξ)1は恒星の種々の物理量と結びつけることができる。

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1.3.3 平均密度 平均密度ρはその定義から ρ = 3 4πR3 ∫ R 0 4πρr2dr = 3ρc ξ3 1 ∫ ξ1 0 θnξ2dξ =−3ρc ξ3 1 ∫ ξ1 0 d ( ξ2 ) dξ =−3ρc ξ1 ( ) 1 (1.3.12) と表される。上の表から、ポリトロープ指数nが大きいほどξ1が大きく|(dθ/dξ)1|が小さいので、nが 大きいほど、ρ/ρcが小さい、つまり質量の中心集中度が大きい事がわかる。 1.3.4 半径と質量  polytropeガス球の半径はξの定義式(1.3.5)から R =(n + 1)K 4πG ρ 1 n−1 c ξ1 (1.3.13) で与えられ、質量(M = 4π0Rρr2dr)M = 4π [ (n + 1)K 4πG ρ 1 n−1 c ]3/2 ρcξ1 0 θnξ2dξ =−4π [ (n + 1)K 4πG ]3/2 ρ 3−n 2n c ξ12 ( ) 1 (1.3.14) のように表される。n = 5のポリトロープに対してはξ1 = で半径が無限大であるが、ξ12(dθ/dξ)1は 有限値を持つので質量は有限である。言い替えると、n = 5のポリトロープは中心質量集中度が無限大 の、有限な質量を持つガス球である。nが5よりも大きい場合には質量も発散する。 主系列星などの理想気体に近いガスからなる星の近似的な構造としてポリトロープ球を考える場合、 Kは構造によって決まる量であるので、ある質量にたいして色々な半径を持つことができる(これは温 度分布の不定性に対応する)。逆にいうと、ある質量と半径を与えるとKが決まる。 それに対し、白色矮星のように電子の縮退圧で支えられている場合(P ' Pe)、圧力は密度だけに依 存し、Kは物理定数で決まる量となっている。この場合、(星の構造に温度分布は無関係なので)星の質 量に対し半径が一意的に決まる。例えば、非相対論的に縮退している場合、§3.7.3 より、 P ' Af(xF)' A 8 5x 5 F = 8 5AB −5/3( ρ µe )5/3 = 1.004× 1013 ( ρ µe )5/3 dyn cm−2 (1dyn = 10−5N) (1.3.15) で与えられ、n = 1.5のポリトロープの関係となっている。この場合µe = 2とすると Kは cgs 単位で 3.16× 1012となっている。このことを使うと白色矮星の質量と半径の関係を得ることができる。(1.3.13) と(1.3.14)式からρc を消去すると Mn−1 = Rn−3 [ (n + 1)K 4πG ]n ξ13−n [ −4πξ2 1 ( ) 1 ]n−1 (1.3.16) が得られる。この式にn = 1.5とこのポリトロープ球に対するξ1、ξ12(dθ/dξ)1と上のKの値を入れると R' 8.9 × 108 ( M M )1 3 cm ' 1.3 × 10−2 ( M M )1 3 R (1.3.17) が得られる。この式は、白色矮星の半径がM−1/3に比例し(質量が大きいほど半径が小さい)、白色矮星 の典型的な質量 0.6M に対してその半径が太陽半径の百分の1程度であることを表している。

(12)

また、相対論的極限の縮退の場合§3.7.3 より、 Pe ' 2Ax4F = 2AB−4/3 ( ρ µe )4/3 = 1.243× 1015 ( ρ µe )4/3 dyne cm−2 (1.3.18) で、n = 3のポリトロープとなっており、µe= 2に対してKはcgs単位で 6.13× 1014という値をもつ。 (1.3.14)式をn = 3に適用すると、質量は中心密度に依存せずある一定値 M = 4π ( K πG )3/2 × 2.018 ' 1.46M (1.3.19) となることがわかる。この質量が白色矮星の質量に対するChandrasekhar limitである。(1.3.14)式に、 n = 3−  (1   > 0)を入れてみると、 M ∝ ρ/6c ρc ∝ M6/ という関係が導かれ、白色矮星の質量がChandrasekhar limitに近付くにつれて中心密度が限りなく大 きくなってゆくことがわかる。 (理想気体が適用される主系列星に対しても n = 3のポリトロープが使われることがある。しかし、こ のときは、K の値は、物理定数でないことに注意する必要がある。ある質量に対して(1.3.14)式 K の 値が決まり、(1.3.13)式によって、中心密度と半径の関係が決まる。つまり、この場合には限界質量は存 在しない。) 1.3.5 重力ポテンシャルと重力エネルギー  ポリトロープガス球内での重力ポテンシャルは静水平衡の式にポリトロープの関係を使うと dr = 1 ρ dP dr =−(n + 1) d dr ( P ρ ) となるので、積分して ψ =−(n + 1)P ρ GM R (1.3.20) が得られる。ここで、積分定数−GM/Rは表面(P = 0)での値から得られた[ψ(r > R) =−GM/r]。 また、静水平衡の式dP/dMr =−GMr/(4πr4)の両辺に4πr3 をかけて星全体で積分することにより、 Eg =M 0 GMr r dMr= 4πr 3P|M 0 − 3M 0 P (4πr2) dr dMr dMr=−3M 0 P ρdMr (1.3.21) という関係が得られる。この式に(1.3.20)式を使うと、 Eg= 3 n + 1M 0 ψdMr+ 3 n + 1 GM2 R (1.3.22) となる。さらに、重力エネルギーEgは Eg = 1 2 ∫ M 0 ψdMr (1.3.6)

(13)

とも書ける[(1.3.6)式参照]ことを使うと(1.3.22)式より Eg = 3 5− n GM2 R (1.3.23) が得られる。つまり、ポリトロープ球では(1.3.3)式においてq = 3/(5− n)であることを表している。 また、ビリアル定理を使うと、内部エネルギーEiおよび全エネルギーEtotは Ei= Eg 3(γ− 1) = 1 (5− n)(γ − 1) GM2 R Etot= 4− 3γ (5− n)(γ − 1) GM2 R (1.3.24) と表される。 上の(1.3.6)式は、ポテンシャルの定義式dψ/dr = −GMr/r と、星の表面と外で ψ(r) = −GM/r (r≥ R)となることを使って、以下のように部分積分によって導出することが出来る: Eg = M 0 GMr r dMr = [ 1 2 GMr2 r ]M 0 1 2 ∫ M 0 GMr2 r2 dr dMr dMr = 1 2 GM2 R 1 2 ∫ R 0 drMrdr =− 1 2 GM2 R 1 2[ψ(r)Mr] R 0 + 1 2 ∫ R 0 ψdMr dr dr = 1 2 ∫ M 0 ψdMr 1.3.6 等温度球に対する Lane-Emden 理想気体で等温球の構造は(1.1.2)式のポリトロープ関係でn→ ∞に対応する。この場合、異なる変数 を使う方が都合が良い。等温の理想気体の圧力は P = (γ− 1)CvT ρ≡ K0ρ (1.3.1) のように表せるので、これを静水平衡の式に使うと dP dr = drρ −→ d ln ρ dr = 1 K0 dr (1.3.2) となる。これを積分して ln ρ =−ψ K0 + C が得られる(Cは積分定数)。中心の密度をρcと書くと、 C = ψc K0 + ln ρc となるので、変数Θ Θ≡ (ψ − ψc)/K0 (1.3.3) を定義すると(ψc は中心のψの値) ρ = ρce−Θ (1.3.4) が得られる。Θの定義から明らかなように、中心でΘ = 0である。 (1.3.1)式と(1.3.4)式を(1.1.10)式に使うと、 K0 d dr ( r2 dr ) = 4πGr2ρce−Θ (1.3.5)

(14)

が得られる。無次元化した中心からの距離Ξ Ξ4πGρc/K0 r (1.3.6) を定義して(1.3.5)式に使うと、等温球に対するLane-Emden式 1 Ξ2 d ( Ξ2 ) = e−Θ (1.3.7) が得られる。 境界条件は中心(Ξ = 0)でΘ = 0、およびdΘ/dΞ = 0(中心で力がはたらかない条件)で与えられ る。(1.3.7)式の中心付近での解は、中心付近で展開することにより Θ = 1 6Ξ 2 1 120Ξ 4+ 1 1890Ξ 6+ . . . (1.3.8) ρ∝ e−Θ= 11 6Ξ 2+ 1 45Ξ 4+ . . . (1.3.9) のように得られる。 一方、中心から離れたところΞ 1での(1.3.7)式の解を考える。Ξ−→ ∞ρ−→ 0なので、Cα を正の定数として e−Θ= CΞ−α or Θ =− ln C + α ln Ξ (1.3.10) と書き(1.3.7)式に代入すると CΞ−α= 1 Ξ2 d dΞ(αΞ) = αΞ −2 となるので、C = 2α = 2であれば、(1.3.10)式がΞ 1での(1.3.7)式の解となっていることがわか る。これは、中心から十分はなれたところで ρ∝ r−2 となることを表している。したがって、等温球に境界は存在せず全体の質量(∫0∞4πr2ρdr)も無限大で ある。 ポリトロープについては、

Chandrasekhar, S. “An Introduction to the Study of Stellar Structure” (1939, Dover) に詳説されて いる。

1.4

恒星内部でのエネルギー輸送

恒星内部の静水平衡の式を閉じさせて内部構造を得るためには、温度分布を記述する式が必要である。 この式を得るためには、エネルギーの発生と輸送について考える必要がある。この章ではエネルギー輸 送について考察する。温度勾配が存在すると、熱エネルギーは温度の高い場所から低い場所へと運ばれ る。星の中で重要な働きをするエネルギー輸送には、輻射、電子伝導、対流がある。 輻射によるエネルギーの流れ 恒星の中での温度勾配は |dT/dr| ∼ Tc/R∼ 107K/1011cm = 10−4K/cm

(15)

であり、それに対して 光子の平均自由行程`

`κρ∼ 1; ` ∼ 0.1cm

なので、上向きに走る光子と下向きに走る光子の温度さは

`|dT/dr| ∼ 10−5K 1

非常に小さく、恒星内部のほとんどの領域で、radiative transfer はdiffusion 近似がよい近似となって

いる。

Diffusion approximation のもとでは振動数ν の光によるenergy flux Fν は、

= 3(κν+ σν)ρ dBν dr = 3(κν+ σν)ρ dT dr dBν dT (1.4.1) で与えられる。ここで、κν は単位質量当たりの吸収係数、σν は単位質量当たりの散乱断面積を表す。 恒星の内部構造に重要なのは全振動数領域の輻射によるエネルギーフラックス Lr,rad 4πr2 = Frad = ∫ 0 Fνdν =− dT dr 0 1 (κν+ σν) dBν dT (1.4.2) である。 ここに、Lr,radは星の中心を中心とする半径rの球面を単位時間当り外向きに通過する輻射エ ネルギーを表す。吸収係数κν はガスの密度と温度と光の振動数の関数であり、振動数に関して非常に複

雑な振舞いを示す。その部分を切り離すために、以下のように定義されたRosseland mean opacity κ

1 κ = [∫ 0 dBν dT ]−1 0 1 κν + σν dBν dT (1.4.3) を導入する。そうするとtotal fluxは Lr,rad 4πr2 = 4ac 3ρκT 3dT dr (1.4.4) のように表される。 (Rosseland-mean)Opacity

Rosseland-mean opacity は単にopacityまたは吸収係数と言われる事も多いが、恒星内部の放射によ

るエネルギーの流れを決定する非常に重要な量である。 opacityを得るためにはあらゆる可能な吸収プ

ロセスを種々のイオンに対して考慮して(1.4.3)式の積分を実行する必要があり、非常に大掛かりな仕

事である。恒星内部構造のモデルの計算には、温度、密度および元素組成の関数として公開されている opacity tablesを使用する。現在、OPAL (http://opalopacity.llnl.gov/opal.html)と OP(http://opacity-cs.obspm.fr:8080/opacity/)の二つのグループによるopacity tablesが使用できる。下の図は、例として

太陽組成に対するopacty が温度とρ/T63の関数として描かれている(OPAL)。ここで、T6 = T /(106K)

(16)

Rosseland mean opacityに寄与するプロセスには、bound-bound吸収(線吸収)、bound-free吸収、 free-free吸収、及び電子散乱(electron scattering)等がある。electron scatteringは高温で密度が小さい

状態に現われる(他のプロセスが働かなるので、電子散乱がopacityの底値となる)。Electron-scattering

opacity κelはThomson scattering 断面積σT = 6.65× 10−25cm2に、1 gram 当りの電子の数を乗じた

ものとなる。1 gram 当りの電子の数 は 1/(µemp) (= NAe)であらわされ、電子の平均分子量µe は 完全電離したガスではµe= 2/(1 + X) (X は水素の質量含有量) と書ける。したがって、完全電離した ガスではκel は温度と密度に対する依存性をもたず κel = σT µemp = σT NA 2 (1 + X)' 0.20(1 + X) cm 2/g (1.4.5) のように表される。(ただし、非常に高温(T  108K)ではコンプトン効果に因って電子散乱の不透明 度は上の式の値よりも小さくなる。)

Bound-free吸収、free-free吸収の寄与は近似的にKramers型のopacity

κK= κ0ρT−3.5 (1.4.6)

で表される。Opacity は比較的高温の状態では、温度が高くなる程減少する。この傾向は、上の図の高

温側で温度が増加するにつれてopacityが大雑把に行って減少している事に対応する。ただし、H、He、

Fe、などが電離する温度付近ではopacityが大きくなり、’コブ’を形成する。このこぶは、恒星の振動

を励起するのに重要な働きをする。とくに、∼ 2 × 105K付近にある、Feの内殻電子の電離による吸収の

コブは1990年代にOPAL opacity tableにより始めて明らかになり、これ迄原因の不明であったβ Cep

型などの高温脈動星の脈動がこのFe-bumpによって励起する事が明らかになった。

低温側で、温度が. 104opacityが温度とともに急激に増加するのは、負の水素イオンの吸収の効

(17)

恒星のMass-Luminosity(-Radius) relation 輻射のenergy fluxの式(1.4.4)をおおざっぱな近似を使って書くと、 L R2 T4 ρκR の関係が得られる。さらに、ρ∝ M/R3と書ける事と、静水圧平衡の式から得られるT ∝ µM/R (1.6) の関係を使うと L∝ µ 4M3 κ (1.4.7)

が得られる。大質量星のように密度が小さく opacityが electron scattering opacityで近似的に表され

る場合、κ が定数になるので、

L∝ µ4M3 (Electron scattering opacity) (1.4.8)

の Mass-luminosity relation が得られる。ただし、質量が非常に大きい場合は、輻射圧が優勢になり、

luminosityは下記のEddington luminosity (∝ M)に近づいてゆく。このような場合、Mass-luminosity

関係はL∝ M に近づいてゆく。 また、中小質量星の内部のようにopacityが Kramers型で近似的にあらわされる場合、 κ∝ ρT−3.5∝ M R3 ( µM R )−3.5 = µ−3.5M−2.5R−7.5 と書くことが出来るので、(1.4.7)式は L∝ µ7.5M5.5R−0.5 (Kramers opacity) (1.4.9) のように書ける。 このように、星のluminosity Lは、核融合によるエネルギー発生率ではなく、静水圧平衡とエネル ギーの流れによってほぼ決まっている。 Eddington Luminosity

恒星内部では、radiation pressure Prad = 13aT4 のように書けることをつかうと、輻射エネルギーflux

に対する(1.4.4)式は温度の勾配のかわりにradiation pressureの勾配を使って、 Lr,rad 4πr2 = c ρκ dPrad dr (1.4.10) のようにも表される。この式と、静水圧平衡の式を組み合わせる事により、luminosity の上限である Eddington luminosityを導く事が出来る。 静水平衡の式に現れる圧力をガス圧Pgasと輻射圧Pradに分け、後者に対して(1.4.10)式を使うと、 静水平衡の式は以下のように変形される: −ρGMr r2 = dP dr = dPgas dr + dPrad dr = dPgas dr κρLr,rad 4πcr2 従って、 dPgas dr = GMr r2 ρ ( 1 κLr,rad 4πcGMr ) (1.4.11) という関係が得られる。

(18)

星の表面(Lr,rad= L, Mr= M )でガスの密度は外側に向かって減少しているので、ガス圧も外側に

向かって減少していて (dPgas/dr) < 0であるべきなので、上の関係から

1 κL

4πcGM > 0 (1.4.12)

という条件が得られる。次の節で記されているように、表面近くで密度が非常に薄い場所でのRosseland

mean opacity は電子散乱によるopacity κel が支配的になり、水素ヘリウムが完全電離している状況で

は、κel= 0.20(1 + X)とかけるので、(1.43)式は、恒星のluminosity L に対する上限値を与える式 L < 4πcGM κel ≡ Ledd= 6.5× 104 M/M 1 + X L (1.4.13)

となる。つまり、星のluminosity は限界luminosity Ledd よりも小さくないといけない。Leddは

Ed-dington luminosityとよばれる。 電子による熱伝導 温度勾配があると、ある面を通過するガス粒子のエネルギーは、温度の高い側から来るもののほうが大 きいので、ガス粒子の熱運動によってエネルギーが流れる。これが粒子による熱伝導である。電離した ガスの中では、イオンに比べて電子の方が速く飛び交っているので、熱伝導はもっぱら電子によって起 こる。しかし、一般には輻射によるエネルギー輸送の方が、電子熱伝導に比べて格段に効率がよい。こ れは、通常光子の平均自由行程が電子の平均自由行程に比べて非常に長いためである。しかし、太陽コ ロナのように高温で稀薄なガスでは電子の熱伝導が重要で、コロナ内は電子の熱伝導のはたらきでほぼ 等温に保たれる。また、逆にガスの密度が非常に大きく電子が縮退している状態では、空いている電子 のエネルギー状態が少ないので、電子の衝突の確率が減少して平均自由行程が長くなる。そのため、電 子の縮退した高密度状態では輻射によるエネルギー輸送よりも、電子熱伝導によるエネルギー輸送の方 が卓越している。このため、白色矮星の内部は、効率のよい電子熱伝導によりほぼ等温に保たれる。 熱伝導係数をkcと書くと、熱伝導によるエネルギーフラックスFcondは Fcond=−kc dT dr (1.4.14) と表される。Fconは輻射によるエネルギーフラックスと同様に温度勾配に比例するので、熱伝導に対す

る不透明度(conductive opacity) κconを

κcon= 4acT3 3ρkc (1.4.15) と定義すると、輻射と熱伝導両方によるエネルギーフラックスは Frad+ Fcon = ( 1 κ + 1 κcon ) 4ac 3ρT 3dT dr (1.4.16)

と表すことが出来る。conductive opacity κconは密度が大きいほど小さい値を持ち、熱伝導が重要になっ

てくる。そのため、熱伝導の効果は主系列星の内部では非常に小さいが、進化の進んだ星の中心部に実 現される非常に密度の高い状態では輻射よりも効率がよくなる。

下の図は、密度-温度図上の各領域で、どの吸収がRosseland mean opacity に重要であるかを表し

たものである。高温で低密度では電子散乱(electron scattering)が重要で、低温高密度では電子による

熱伝導が重要となる。この図でα と記されている量は、電子の縮退の程度を表す量で、α = 0の線より

(19)

対流の発生 ガスの流れが発生しない限り、星の内部でエネルギーは輻射と熱伝導によって運ばれる。ガスの不 透明度が大きい場合、あるエネルギーフラックスを輻射と熱伝導で運ぶには大きな温度勾配が必要とな る。しかし、温度勾配の大きさがある臨界値を越えると対流が発生し、エネルギーフラックスの大部分 を対流が運ぶようになる。 最初に対流の発生を考える。いま、ガスの塊が揺らぎによって微小距離 drだけ上昇する場合を考える。ガス塊内部の物理量には添え字iを付け てあらわし、ガス塊の内外を問わず元の位置からdr上昇した場所での物 理量にはを付けて表す。 上昇を始める位置、つまりガス塊が生まれた位置ではガス塊の内部と外の温度、密度、圧力は同じであっ たとする。また、ガス塊は常に周囲と圧力平衡を保ちながら上昇する、つまり常にPi= Pがなりたって いると仮定する。微小距離drだけ上昇したとき、ガス塊の内部と外の密度差は ρ∗i − ρ∗= ( ∂ρ ∂T ) P (Ti∗− T∗) = ( ∂ρ ∂T ) P ( dTi dP dT dP ) dP drdr (1.4.17) と表される。ガス塊内の密度の方が大きい(ρ∗i > ρ∗)とき、ガス塊に負の浮力が働き元の位置に戻る。 この時、このガスの構造は安定である。逆に上昇したガス塊内の密度の方が小さい(ρ∗i < ρ∗)場合、ガ ス塊に浮力が働きさらに上昇し、ガスの運動が発生する。これは対流が発生することを意味している。

(20)

(∂ρ/∂T )P < 0dP/dr < 0なので、(1.4.17)式は dTi dP < dT dP のとき対流が発生することを示している。 一般に熱の交換に要する時間は力学的時間スケールに比べて非常に長いので、ガス塊の運動は断熱 的に起こると近似できる。つまり、dTi/dP ' (dT/dP )ad と書ける。ここで、添え字のadは断熱変化を 表す。したがって、 dT dP > ( dT dP ) ad (1.4.18) のとき、つまり温度勾配が断熱的温度勾配より急なときに対流が発生する。 輻射(と熱伝導)だけでエネルギーが運ばれると仮定したときに予想される温度勾配に添え字radを 付けて表すと、(1.4.4)式より ( dT dP ) rad = ( dT dr ) rad ( dP dr )−1 = Lrad 4πr2 3κρ 4acT3 r2 GMrρ = 3κLr 16πGMracT3 (1.4.19) と表されるにはconductionの効果が入っているものとする)。恒星内部構造の記述にはしばしば、圧 力に対する対数的温度勾配: rad ( d ln T d ln P ) rad = P T 3κLr 16πGMracT3 = κLr 16πGMrc(1− β) , ad ( d ln T d ln P ) ad (1.4.20) が使われる。ここに、β はガス圧の全圧に対する比Pgas/P で定義され、 1− β = Prad P = aT4 3P (1.4.21) である。これらの記号を用いると、対流の発生条件(1.4.18)は rad >∇ad (1.4.22) と書ける。 対流によるエネルギーフラックスをFconvと書くと、対流層内でのエネルギーの流れは Lr

4πr2 ≡ Fconv+ Frad+ Fcond (1.4.23)

と表される。対流はエネルギーを運ぶと共に、ガスの混合を行い対流が起こっている領域の元素組成を 均一にする効果も持つ。 理想気体では、断熱変化に対して、P ∝ ργ ∝ (P/T )γ =⇒ T ∝ P(γ−1)/γ であり、単原子分子のと き、γ = 5/3であるから、ad = (γ− 1)/γ = 2/5 = 0.4となる。 対流によるエネルギーの輸送; Fconv (1.4.23)式を解くためには、対流によるエネルギーflux Fconv と温度勾配との関係を知る必要がある。 恒星内で起こる対流はスケールが大きいため、高いレイノルズ数の乱流状態となっている。星の中での 乱流に対する我々の知識はまだ不十分で、星の中における対流の物理状態を正確に記述する理論は存在

(21)

しない。そのため、現在でも多くの場合、1950年代に導入された混合距離モデル(mixing length theory) という単純なモデル(またはそれから派生したモデル)もとづいて対流による熱の輸送を計算する。混合 距離モデルでは、周りより僅かに温度の高いガス塊(eddy or blob)が混合距離`上昇した後周りのガス と混ざりあってその塊が持っていたエネルギーの超過を周囲に解放し、逆に周りより僅かに温度の低い ガス塊は混合距離` 下降した後周囲のガスと混ざり合う。したがって、上昇、下降どちらの場合もエネ ルギーは内側から外側の方向に運ばれる。 星の中心からの距離がrの球面を考えよう。その面を通過する対流によって運ばれるエネルギーフ ラックス(単位面積当たり、単位時間当たりに通過するエネルギー)は Fconv = Cpρ v∆T (1.4.24) と表される。ここに、Cpは等圧比熱、vはガス塊の速度、∆T はガス塊と周囲との温度差を表す。また v∆Tv∆Tの平均値を表す。ガス塊は周囲と圧力平衡を保ちながら(つまり亜音速(subsonic speed)で) 移動すると仮定するので、等圧比熱と温度超過の積で単位質量当たりの熱エネルギー超過が得られる。 ガス塊の中の温度と周囲との温度差∆T は、ガス塊の中での温度勾配(dT /dr)iと周囲の温度勾配 dT /drとの差から生じる。ガス塊が移動する間に周囲との熱の交換は、表面近くで起こる対流では無視 できないため、実際のモデル計算ではその効果が考慮されるが、ここでは、議論を簡単にするため熱の 交換はないとし、ガス塊の中の温度は断熱的に変化するとし、(dT /dr)i' (dT/dr)ad とする。(実際の 進化モデル計算には熱の交換も考慮した式が使われている。) この断熱近似のもとでは、ガス塊の移動にともなうその内部の温度超過∆T の変化は d∆T dr ' [( dT dr ) ad ( dT dr )] = (T− ∇ad) T Hp (1.4.25) と表される。ここに、対流層中での圧力に対する対数的温度勾配Tと、圧力変化に対する距離スケー

(pressure scale height) Hpとは T d ln T d ln P Hp ≡ − dr d ln P = P ρg (1.4.26) のように定義される。gはその位置での重力加速度g = GM/r2を表す。 ガス塊は周囲圧力平衡にあるので、温度差∆T に相当する密度差は∆ρ = (∂ρ/∂T )p∆T と表される。 (∂ρ/∂T )p < 0なので、周囲よりも温度が高い時密度が低く、浮力−g∆ρがはたらいて上方に加速され る。ガス塊に対する運動方程式は ρdv dt =−g∆ρ = −g ( ∂ρ ∂T ) p (T− ∇ad) T ∆r Hp (1.4.27) と書くことが出来る。ここに、∆rはガス塊が発生してから移動した距離を表す。上の式の両辺にv = d∆r/dtを乗じ、(1.4.27)式の右辺の係数がガス塊の移動距離程度では大きく変化しない事を仮定すると 積分できる形になり v2' 1 2gδ(∇T− ∇ad) (∆r)2 Hp (1.4.28) を得る。ここにδは定圧膨張率δ≡ −(∂ ln ρ/∂ ln T )p を表す。(1.57)式右辺の 12はガス塊が移動する際 に約半分のエネルギーが周囲のガスを押し退けるのに使われる事を考慮して付けられた。

(22)

ある面を通過するガス塊が生まれてから移動した平均距離∆rが混合距離`の半分、つまり∆r = `/2 とすると v2' δ 8(T− ∇ad) g`2 Hp , ∆T ' ` 2Hp T (∇T− ∇ad) (1.4.29) となる。従って対流によるエネルギーフラックスFconvは、(1.4.24)式で、 v∆T 'v2 ∆T (1.4.30) の近似を行なうと Fconv ' ρCpT 42 √ δP ρ(T− ∇ad) 3/2 ( ` Hp )2 (1.4.31) と表すことが出来る。この式から明らかなように、対流によるエネルギーフラックスは、混合距離と圧 力変化のスケールの長さとの比`/Hpがパラメータとなっている。`/Hpに適当な値を与え、上の式を (1.4.23)式に使って、対流層内での温度勾配が決定される。 上の式を太陽の対流層に当てはめてみよう。簡単のため、完全電離した水素からなる理想気体(δ = 1) を想定し、`∼ Hpとしてみる。このとき、 Lr,conv = 4πr2Fconv ∼ 1.2 × 1012r2ρT3/2(T− ∇ad)3/2 となる。太陽対流層の比較的内側の部分のでの状態、ρ∼ 1gcm−3T ∼ 106K、r∼ 1010cmを使うと、 Lr,conv ∼ 1041(T− ∇ad)3/2erg/s となる。従って、太陽表面から出るエネルギー∼ 4 × 1033erg/s を対流で運ぶのに必要な温度勾配は T− ∇ad ∼ 10−6となる。つまり、対流層深部では、温度勾配は良い近似で断熱的温度勾配となってい る。このことは、内部では対流による熱輸送の効率が非常に良いこと示している。

(23)

表面に非常に近いとこでは、ガスの密度が小さいために対流の熱輸送効率が充分でなく、比較的大 きなT− ∇ad (super-adiabatic temperature gradient)が生じる。T− ∇adが大きな層でのその値の 大きさは、仮定された混合距離の大きさに依存し、それは星の半径に影響を及ぼす。そのため、表面温

度が低くて対流外層を持つような星に対する構造モデルの半径は 仮定されたmixing length の値に依存

し、一意的には決まらない。観測との比較に使われるモデルを計算する際には、1M の質量を持つモデ

ルが、46億年進化したときに太陽の半径とluminosityを持つように、mixing length と pressure scale

height との比`/Hpの値を決定し、その値を他の質量を持つモデルについても適用されることが多い。 しかし、`/Hpの値が対流層の中で一定であるという保障はないし、太陽と異なる構造をもつ星に対 して、太陽で calibrate した値が適当であるという保障もない。対流の取扱いは恒星内部構造理論のう ちでもっとも不確定な点の一つである。

1.5

エネルギー保存

恒星内部でのエネルギーの交換が準静的に起こるとすると、ある単位体積にたいするエネルギー保存は、 熱力学の法則d0Q = ρT dS の関係から導くことが出来る。ここで、d0Qは単位体積あたりガスが吸収す る熱エネルギー、Sは単位質量当たりのentropyを表す。恒星内部ガスに上の関係を適用すると、 −∇ · F + ρ(n− ν) = ρT dS dt (1.5.1) と表される。ここに∇ · F はエネルギーフラックスF による単位体積あたりのエネルギーの損失率を表 し、nは核反応による単位質量当たりのエネルギー発生率、は ニュートリノの発生による単位質量 当たりのエネルギー損失率を表す。[ニュートリノは通常恒星内のガスと相互作用せず発生すると光速に 近い速度で星の外に出てしまうのでエネルギーの損失となる。(例外:超新星爆発)] 球対称の場合、 ∇ · F = 1 r2 d drr 2F r= 1 4πr2 d dr(4πr 2F r) = 1 4πr2 dLr dr とかけるので、 (1.5.1)式は 1 4πr2 dLr dr + ρ(n− ν) = ρT dS dt とかける。ここに、Lrは中心からrの距離にある球面を単位時間当たりに通過するエネルギーを表す。 上の式に、4πr2ρ = dM r の関係を使うと、(Mr, t)を独立変数としたときのLrに対する微分方程式 dLr dMr = n− ν− T dS dt (1.5.2) を得る。 重力エネルギー源 ビリアル定理により、恒星内のガスはエネルギーを得る(T dS/dt > 0)と膨脹して温度(内部エネルギー) が減少し、逆にエネルギーを失うと重力収縮して温度が上昇する(収縮による重力エネルギーの減少に ともない解放された重力エネルギーの一部が内部エネルギーとなる)。重力収縮によるエネルギー発生率 gを g ≡ −T dS dt (1.5.3) と定義すると、(1.5.2)式は dLr dMr = n− ν + g (1.5.4)

(24)

のように書くことが出来る。 恒星内でおこる熱核反応 恒星内部で起こる核融合反応は熱核反応と呼ばれる。それは、ガスを構成する粒子(原子核)が熱運動 で飛び回っている間に衝突して核反応を起こすためである。粒子aと粒子bが反応を起こして粒子cと 光子 γ になったとする:a + b−→ c + γ この核反応が起こったとき、反応前後での静止質量の差に対応 するエネルギーをもつガンマ線が放出される。光はMeVのオーダーのエネルギーを持ち、発生すると すぐに周りのガスに吸収されて粒子の熱運動のエネルギーと低いエネルギーの光に変えられる。 原子核の静止質量は、その質量数(核内の陽子、中性子の数)とその結合エネルギー EB によって 決まる。原子核の陽子数、中性子数をそれぞれZ, N とかくと、原子核の静止質量Miは Mi= Zmp+ N mn− EB/c2 と表される。ここに、mp、mnはそれぞれ、陽子と中性子の質量を表す。核融合反応では、質量数は保 存されるので、 (Ma+ Mb− Mc)c2= EB,c− EB,a− EB,b (1.5.5) 結合エネルギーの差がエネルギーとして出てくる。次ぺ-ジの図は1核子当りの結合エネルギー EB/A を質量数に対して描いたものである。1核子当りの結合エネルギーは質量数と共に急激に増加し、A(= N + Z)& 12では∼ 8MeV程度となっている。その値は質量数∼ 60の鉄グループの原子核で最高となっ て、それより重い原子核に対してはなだらかに減少している。そのため、水素からヘリウム、炭素、等 と鉄までの重い原子核がつくられていく核融合反応が起こるとエネルギーが発生し、恒星の中でのエネ ルギー源となる。

Kippenhahn & Weigert (1991)

二つの原子核 a, bが、単位体積当たり、単位時間当たりに起こす核反応rab(単位体積当たりの核反 応率)は、 rab= NaNb 1 + δab 0 σab(E)v(E)f(E)dE = NaNb 1 + δabhσviab (1.5.6) のように表される。ここで、Na, Nbは原子核a, b の数密度、σab(E)は運動エネルギーEでおこる a, b 間の反応の反応断面積、vはその相対速度、f (E)は運動エネルギーE に対する規格化された Maxwell-Boltzmann分布関数 f (E) ∝ e− E kTE1/2

(25)

を表し、hσviabσab(E)v(E)の平均を表す。δab は原子核 a, b が同じ種類の原子核のときに1 、違う 種類の場合には 0をもつ。 原子核は正電荷を持っているので、クーロン反発力が働く。質量数Aをもつ原子核の半径は近似的に Rn ≈ 1.2 × 10−13A1/3 cm (1.5.7) のように表される。 原子核のa, b の質量数をAa, Ab と書き、電荷をそれぞれZa, Zb と書くと、それ 等か反応を起こすために越えなければならない静電エネルギーの壁 (Coulomb barrier)は EC ZaZbe2 1.2× 10−13(A1/3a + A1/3b ) erg ≈ 1.2 ZaZb A1/3a + A1/3b MeV (1.5.8) となる。これに対して、主系列星およびヘリウム燃焼段階の星の中心温度は107 ∼ 108Kで、これに対 応する熱運動エネルギー (∼ kBT ) は1 ∼ 10 keV となっている。したがって、星の中で核反応がおき るためには原子核はトンネル効果によって、Coulomb barrier を通過する必要がある。EC E のとき のトンネル効果による透過率P`(E) はWKB 近似によって求められ、 P`(E) ∝ e−ζ/ E, with ζ = π2m ab ZaZbe2 ~ (1.5.9) のように表される。

Kippenhahn & Weigert (1991)

反応断面積 σabはこのCoulomb barrier透過率P`(E)に比例するとともに、二つの原子核 a, bの相 対速度に対するドブロイ波長(DeBroglie wavelength)の2乗に比例する(面積に対応する)。ドブロイ波 長は相対速度に対する運動量をpと書くと、 λ = h p = h 2mabE なので、λ2は1/E に比例することがわかる。 反応断面積 σabのこれらのエネルギー依存性を具体的に表して、 σab= S(E) E e−ζ/ E (1.5.10) と表し、Astrophysical S-factor S(E)を定義する。σabがエネルギーとともに急激に変化するのに対し、 S(E) はエネルギー E に対してゆっくり変化する量となる。一般に、恒星内部で起こる核反応での相対 運動のエネルギー E が、反応断面積を計測する実験でもちいられるエネルギーにくらべて非常に低い ので、外挿によって恒星内部での熱核反応に対応する反応断面積を得る必要がある。それには、エネル ギー依存性の小さいAstrophysical S-factor S(E)を使うほうが都合がよい。[共鳴的反応が起こる場合は

(26)

S(E)にも強いエネルギー依存性があるため特別の扱いが必要であるが、以下では簡単のため非共鳴的反 応だけを考える。]

Cross section をAstrophysical S facotorを使って表すと、

hσvi = √ 8 πmab (kT )−3/2 0 S(E) exp ( E kT ζ E ) dE (1.5.11) を得る。積分の中のexp[−E/(kT )]はマクスウエル分布からきたもので、この値はエネルギーが大きく なるに連れて急速に減少する。一方exp(−ζ/√E)はクーロン壁に対する透過確率からきたものでエネル ギーが増加するに連れて大きくなる。それらの積は下図に表されているように二つの関数の裾の交わる 当りのエネルギーに鋭いピークを持つ。このピークはガモフ-ピーク(Gamow-peak)と呼ばれる。

Clayton “Principles of Stellar Evolution and Nucleosynthesis”(1968) ピークの位置(E0)は、−E/(kT ) − ζ/ E が最大になるところなので、 d dE ( E kT ζ E ) = 1 kT + 1 2ζE −3/2 0 = 0 −→ E0= ( ζkT 2 )2/3 のように得られる。exp(kTE ζ E ) のピークの値はE = E0として exp ( −E0 kT ζ E0 ) = exp ( −E0 kT 2E03/2 kT E −1/2 0 ) = exp ( 3E0 kT ) ≡ e−τ (1.5.12) のように得られる。ここに、ττ 3E0 kT = 3 ( ζ2 4kT )1/3 m 1/3 ab (ZaZb) 2/3 T1/3 (1.5.13) で与えられる。 exp ( E kT ζ E ) をE0(ピーク) のまわりで(2次まで)展開し、(1.5.11)式の積分を解析的に実行す ることができて、 hσvi ≈ 8~ 35/2m abπe2 S0 ZaZb τ2exp(−τ) (1.5.14) が得られる。温度依存性はτ2e−τ ∝ T−1/3) に入っているが、τ2よりもe−τ のほうが温度変化に対 して急激に変わるので、核反応率は温度が高いほど大きい。また、二つの原子核の電荷の積が大きいほ ど(高いクーロン壁のために)高い温度でしか核反応が起こらない。

参照

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