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技術資料
3-1 ISO19011の概要について
従来の環境マネジメントシステムの監査の指針であったISO14010・ISO14011・ISO1401 2が改正・統合され、2002 年 10 月にISO19011として発行されました。この指針は、単に審査登 録機関における審査の原則であるばかりでなく、環境マネジメントシステムの第二者監査(取引 先等利害関係対象の審査)や内部監査に適用できる有効な指針です。このISO19011「品質 及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針」について紹介します。3-1-1 改正の経緯
マネジメントシステム規格であるISO9000シリーズ(品質マネジメントシステム:現ISO9001) 及びISO14001(環境マネジメントシステム)が発行され、運用されていく中で、システムの審査 における審査員の資質の問題がクローズアップされてきました。また、両マネジメントシステムに 共通部分が多いことから、両規格の審査部分の統合が課題として提起されました。このため、両 システムの監査における確実性・効率性の向上を目指して、1997 年、京都における第 5 回ISO /TC207総会で、環境及び品質マネジメント規格の整合化及び両規格の検討委員会(TC20 7・TC176)の連携が提案されました。この結果、次の 6 監査関係規格が統合され、ISO19011 として 2002 年 10 月 1 日に発行されました。さらに、2003 年 2 月 20 日には国内版として、JISQ 19011が制定されました。 ISO14010 環境監査の指針-一般原則 ISO14011 環境監査の指針-監査手順-環境マネジメントシステムの監査 ISO14012 環境監査の指針-環境監査員のための資格基準 ISO10011-1 品質システムの監査の指針-第1部:監査 ISO10011-2 品質システムの監査の指針-第2部:品質システム監査員の資格基準 ISO10011-3 品質システムの監査の指針-第3部:監査プログラムの管理3-1-2 ISO19011制定の目的
ISO19011の制定には、ISO14001及びISO9001のシステムに対する監査の原則の統合 のほか、次のような目的がありました。 (1)監査プログラム管理の重視 (2)資格のみに頼らない、監査員の力量の重視及び評価方法の設定 (3)外部監査の他、内部監査や他の監査への応用への可能性拡大3-1-3 ISO19011の構成
この監査規格の構成は次のとおりです。 序文 1 適用範囲2 引用規格 3 定義 3.1 監査 3.8 監査員 3.2 監査基準 3.9 監査チーム 3.3 監査証拠 3.10 技術専門家 3.4 監査所見 3.11 監査プログラム 3.5 監査結論 3.12 監査計画 3.6 監査依頼者 3.13 監査範囲 3.7 被監査者 3.14 力量 4 監査の原則 5 監査プログラムの管理 5.1 一般 5.4 監査プログラムの実施 5.2 監査プログラムの目的及び範囲 5.5 監査プログラムの記録 5.3 監査プログラムの責任、資源及び手順 5.6 監査プログラムの監視及びレビュー 6 監査活動 6.1 一般 6.5 現地監査活動の実施 6.2 監査の開始 6.6 監査報告書の作成、承認及び配布 6.3 文書レビューの実施 6.7 監査の完了 6.4 現地監査活動の準備 6.8 監査のフォローアップの実施 7 監査員の力量及び評価 7.1 一般 7.5 力量の維持及び評価 7.2 個人的特質 7.6 監査員の評価 7.3 知識及び技能 7.4 教育、業務経験、監査員訓練及び監 査経験 解説 これらの内容の要約は次のとおりです。 (1)序論について このシステムは、環境及び品質システム監査、外部監査及び内部監査、監査員・環境マネ ジメントシステムあるいは品質マネジメントシステム実施組織・第二者監査組織・審査登録機 関・研修機関・認定機関等に幅広く利用できるよう柔軟性があります。また、利用する者の組 織の大小にかかわらず使用でき、特に中小企業の使用に配慮しています。 (2)適用範囲について 環境マネジメントシステム・品質マネジメントシステムあるいはそれらの統合システムについ ての監査(外部監査・第二者監査・内部監査)に適用できるとしています。さらに、内容を修 正することにより、他の様々なマネジメントシステムの監査に対しても応用できるとしていま す。 (3)監査の原則について ISO10011にはなかった監査の原則について、ISO14011のものを修正し、監査員に関 する 3 原則と監査方法に関する 2 原則をとりあげています。 (4)監査プログラムの管理について 限られた時間等所定の条件のなかで、効率的かつ確実な監査が実施されるために、監査
プログラムの管理を重要視しています。ここでは、PDCAによる継続的改善の実施による的 確な監査マネジメントを求めています。 また、環境マネジメントシステムと品質マネジメントシステムの統合マネジメントシステムの監 査すなわち「複合監査」の他に、複数の監査組織が参加する「合同監査」についても言及し ています。さらに、これらの監査の実施における、監査プログラムの管理責任者の役割につ いてもとりあげています。 (5)監査活動について 監査の実際について、開始から報告書の作成・配布までのプロセスについて標準的な手 順を示し、具体的要点及び実用上の手引きとして実際の場面を想定した留意事項を挙げて います。 (6)監査員の力量及び評価 監査員の資質の指標を「力量」として明確化しました。力量には、環境マネジメントシステム、 品質マネジメントシステムそれぞれに独自のもの及び両者に共通のものがあることを示してい ます。さらに、力量を得る手段として教育・業務経験・監査員訓練・監査経験とあげています。 監査経験及びリーダーの資質については、より詳細に要求事項を定めています。
3-1-4 監査の原則
ISO19011規格4.において、適正な監査の実施のために監査及び監査員に基礎的に求め られる事項について述べています。 ①倫理的行動 職業専門家であることの基礎として、監査に対する信頼性・誠実性等の倫理的行動を求 めています。 ②公正な報告 監査において、ありのままに、かつ正確に報告することを求めています。 ③職業専門家としての正当な注意 必要な力量を基礎として、監査において相当の詳細な注意が払われることを求めていま す。 ④独立性 監査の公正を保つために、監査対象からの監査の独立性・公平性・客観性等が求められ ています。 ⑤証拠に基づくアプローチ 体系的な監査プロセスにおいて、信頼性及び再現性の有る監査結論に到達するために、 監査におけるすべての判断が、適正な証拠に基づいて行われることを求めています。3-1-5 監査プログラムの管理
継続的改善による環境マネジメントシステムあるいは品質マネジメントシステムの監査の実施 を担保するために、Plan/Do/Check/Actionの思想に基づき監査プログラムを策定するこ ととされています。 (1)監査プログラムのための権限 監査プログラムの管理者の権限及び実施すべき事項を示しています。 (2)監査プログラムの策定:Plan 次の事項の明確化を求めています。 ・監査計画及び実施を方向付けるための監査プログラムの目的・監査プログラムを具体化するための範囲:単に監査対象の物理的範囲のみではなく、 監査プログラムの意義に基づく具体的範囲を必要としています。 ・監査プログラムの管理責任者の責任 ・目的に対応する監査が実施されるために必要な物的・人的その他の資源 ・監査のために、プログラムで策定されるべき実施事項 (3)監査プログラムの実施:Do 監査プログラムが実行に移される場合における考慮すべき事項を示しています。 ・監査プログラムの関係者への連絡 ・監査プログラムに関連する監査及びその他の活動についてのスケジュール作成 ・監査員の力量の評価及び開発 ・監査チームの選定 ・監査のための資源の準備 ・監査実施における監査プログラムの確実な適用 ・監査記録の適正な管理 ・監査報告書のレビュー及び確実な配布 ・必要な場合のフォローアップに関する事項 (4)監査プログラムの監視及びレビュー:Check 監査プログラムの目的が満たされているかを評価し、改善の必要性及び機会を評価するこ ととされています。 (5)監査プログラムの改善:Action 監査プログラムの監視及びレビューの結果から、監査プログラムの是正処置・予防処置等 の改善につなげていくこととされています。
3-1-6 監査活動
監査活動について、その具体的実施に係る必要事項及び留意事項を述べています。 (1)監査の開始 ①監査チームリーダーの指名 力量に不足なく、監査全体を統括できる監査チームリーダーを指名します。監査チーム リーダーは、関係者との必要な連携・連絡を行うこととされています。 ②監査の目的・範囲及び基準の明確化 ISO14001やISO9001への適合の判定や契約要求事項あるいは法的要求事情への 適合の判定等、監査の目的を明確にします。 監査範囲として、監査対象の場所・活動・プロセスや期間等を示します。 監査基準は、監査の目的により設定されるべきものであり、監査依頼者のとの間で決定 するとされています。 ③監査の実施可能性の判定 監査における情報・被監査者の協力・時間や資源等の状況から、監査の実施の可能性 を判定します。 ④監査チームの選定 監査の性格(監査の目的・範囲・基準、複合監査あるいは合同監査か、力量、独立性担 保のレベル等)の観点から監査チームを選定・構成します。 ⑤被監査者との最初の連絡 監査者・被監査者の窓口、日程や監査内容、必要な手配等監査の実施に必要な事項 を、双方で確認しておきます。 (2)文書レビューの実施現地の監査に先立って、文書面からの監査及び現地監査の効率性向上のために、すでに 文書化されている範囲(各種の記録を含む)において、被監査者の文書のレビューを行いま す。 (3)現地監査活動の準備 ①監査計画の作成 監査について、監査依頼者、監査チーム及び被監査者が理解をしやすくするために、 監査チームリーダーは監査目的・範囲、監査報告等についての監査計画を作成することと されています。この監査計画は、監査内容や状況により弾力性を持たせることができるとさ れています。 ②監査チームへの作業の割当て ③作業文書の作成 監査チームリーダーは、監査チーム内での監査作業の分担を決めます。さらに、監査チ ームメンバーは、チェックリスト等監査実施に必要な様式を作成します。 (4)現地監査活動の実施 ①初回会議の開催 監査チームリーダー、その他のメンバーは、被監査者の経営者あるいは部門の責任者 等と、次の事項の確認のために監査実施前の初回会議を開催します。 ・監査計画の確認 ・監査活動実施の要点 ・連絡窓口の確認 ・被監査者側からの質問の受入の確認 ②監査中の連絡 監査中に監査チームと被監査者あるいは監査依頼者の間に情報交換の必要が生じた 場合には、適宜、打合せを行います。これには、緊急かつ重大なリスクを発見した場合の 対応も含みます。 ③案内役及びオブザーバの役割及び責任 案内役及びオブザーバについて、その役割とともに役割の限界を述べています。 ④情報の収集及び検証 情報収集の方法・記録について述べるとともに、それに基づく監査証拠の不確実性につ いても言及することとしています。情報収集の方法をして、面談・現地活動の観察・文書の 調査を挙げています。 ⑤監査所見の作成 監査証拠と監査基準に照らし合わせて監査の所見を作成することになりますが、適合・ 不適合いずれの場合においても十分な証拠、その記録及び現場での確認を求めていま す。なお、目的にある場合には、改善の機会の特定も可能とされています。 ⑥監査結論の作成 監査チームとしての、監査の結論を作成します。ここでは次の事項に留意することとされ ています。 ・収集情報のレビュー ・監査プロセスに内在する不確実性の考慮 ・監査目的にある場合には、提言についても検討 ・監査計画にある場合には、フォローアップについても検討 ⑦最終会議の開催 監査所見、監査結論の提示、該当する場合の是正処置及び予防処置の計画の検討、 監査結論に影響した監査中の事象の説明等を中心に最終会議を開催します。この会議で
の意見の相違については会議中で解決を図るか、それができない場合には記録に残すこ ととされています。 (5)監査報告書の作成、承認及び配布 ①監査報告書の作成 ②監査報告書の承認及び配布 監査チームリーダーは、監査概要・監査結論その他の関連事項をまとめた監査報告書 を作成します。さらに、レビュー及び承認を行い、監査依頼者及び監査依頼者の指名者に 配布します。 (6)監査の完了 監査報告書配布の段階で監査は完了となります。その後の監査報告書等関連文書の保 存・破棄及び開示については、法令、契約内容あるいは監査依頼者の承認に基づき厳格に 運用します。