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(1)

平成27年度奈良労働局委託事業 人材不足分野における人材確保のための雇用管理改善促進事業 啓発実践コース<建設分野>

株式会社労働調査会 関西支社

建設事業所における

雇用管理改善

事例集

平成27年度 奈良労働局委託事業

(2)

はじめに

事例❶ A社

事例❷ B社

事例❸ C社

「雇用管理アドバイザー」による

相談支援とは?

建設事業所における

雇用管理改善の取り組み事例集

目 次

(3)

超高齢化社会が到来したわが国では、今後、生産年齢人口(15 歳~ 64 歳)が

急速に減少することが見込まれており、すでに産業界の一部では人材不足が事業

運営にも支障をきたしています。こうした状況は建設業においても例外ではな

く、将来に向けた警鐘と受けとめるべきではないでしょうか。

また、建設業では、震災被災地における復興需要や 2020 年に開催される東京

オリンピック・パラリンピックに向けて予想される建設需要の伸張などにより、

ますます人材不足が深刻化する可能性があると指摘されています。

こうした状況をふまえ、将来の建設業のあるべき姿を考えますと、安心して未

来を託せる後継者の確保と育成は欠かすことができません。しかし一方で、建設

業には中小零細企業が圧倒的に多く、雇用環境においても臨時、日々雇用といっ

た不安定な雇用形態の労働者も珍しくなく、その生産構造も重層的な下請制度に

依拠していることから、雇用管理上の問題を多く抱えています。雇用管理におけ

る脆弱さは、今後ますますひっ迫すると予想される労働力の確保に一層の不安材

料を投げかけるものといえるでしょう。いまこそ、若年労働者を中心としたすべ

ての働く人にとって、建設会社が魅力ある職場を形成するために、建設業界を挙

げて取り組むべきではないでしょうか。

平成 27 年度奈良労働局委託事業「人材不足分野における人材確保のための雇

用管理改善促進事業」は、以上のような背景を前提に実施するものです。平成

27 年度の事業では、建設業における雇用管理に精通した社会保険労務士を「雇

用管理アドバイザー」として選任し、雇用管理アドバイザーを魅力ある職場づく

りに前向きに取り組もうとしている建設会社に派遣して、雇用管理制度導入のた

めの相談・指導・助言などを行いました。この事例集は、雇用管理アドバイザー

による「魅力ある職場づくり」の一端を広く知っていただくために作成するもの

です。雇用管理の改善に参考にしていただければ幸いです。

平成28年3月

株式会社労働調査会 関西支社

 

はじめに

(4)

◎すでに取り組んでいる雇用管理制度

「休暇・労働時間制度」として、1年単位の変形労働時間制を採用しています。 「福利厚生関係」では、法人化を目途に、常用労働者全員を社会保険被保険者にする予定にしています。

◎事業主の雇用管理改善を通じた魅力ある職場づくりに対する意識について

近日中に法人化を予定しており、それを機会に常時使用する労働者を正社員とすることで労働者の雇用の 安定と福祉を推進しようとするなど、雇用管理改善に対する意識が高い事業主です。

◎対象企業が抱える雇用管理上の課題

事業主が長年勤務してきた企業の協力会社として創業したが、近年独自の受注先も増加して工事量は安定 化しています。しかし、工事量に対し施工人員の不足が慢性的あり、求められる工期で完工するために長時 間労働を強いる場合があります。

◎対象企業に提案した雇用管理制度について

(1)制度の概要 企業理念の制定と理解と浸透を図るとともに、規定等の整備を行い、労働関係法令の順守を徹底します。 また、賃金制度等を見直し、社会・労働保険の加入を促進します。 (2)導入支援のポイント(提案理由、工夫など) 地域から認知され、必要とされる企業にならないと、雇用を維持し事業を継続することはできないと考 え、「① 労働環境の改善」、「② 雇用の確保」、「③ 企業の維持発展」、「④ 労働者福祉の改善」の順 番で取り組むことが最適と考えます。 (3)特記事項 事業主がプレイングマネージャーであり、雇用管理等に手が回らないのが現状でした。そこで、専門家 の力を借りるなどして、事業主本来の業務に専念できる環境を構築することが課題でした。 業種:とび土工工事(主に解体工事) 創業:平成 17 年 従業員数:9 人 従業員の平均年齢:37 歳

A社

企 業 の 概 要

事例❶

(5)

事例❶

◎導入支援の経過、結果

(1)提案した雇用管理制度の導入状況 経営理念、経営方針、経営計画を策定し、それらを履行するために、その目的や実施方法を従業員に説 明し、周知する計画です。 36協定や変形労働時間制を採用した協定を締結し、労働時間の管理を適法・適切に行うことにしました。 就業規則を策定し、事業内のルールを定め、周知し、届け出ることにより、労使が共通の行動規範のも とで目的実現に取り組む環境を整備しました。 (2)助成金活用状況 助成金の活用には至っていませんが、対象労働者の増加後に活用を考えています。

◎今後の取組計画や課題

社会に必要とされる企業となり、納税や雇用等、企業としての社会的責任を果たすとともに、職人気質が いまだに残る従業員もいるのでそれらを刷新し、共通の目的を持った専門家集団となることで生き残りを図 るために、評価・処遇制度や、研修体系制度の導入が今後の課題となると認識しています。

◎事業主からの感想(事業主や従業員の意識の変化など)

創業から10年、がむしゃらに工事を受注し施工することで従業員の日々の生活の安定を実現してきまし た。しかし、創業以来、ともに汗を流してきた従業員の将来を考えたとき、不安を拭えなくなりました。事 業の安定が実現されつつある今、雇用を維持し、企業を存続させるためには、労働環境を改善し、人材を確 保することが重要だと痛感しました。また、評価・処遇制度や研修体系制度にも取り組みたいと思いました。

◎雇用管理アドバイザーの感想

今回の事業の目的のひとつである「中小建設会社の人材確保」は、競う相手は同じ建設業者ではなく、建 設業以外の事業者です。少なくとも建設業者以外の事業者と同等の労働環境を作って、初めてスタートライ ンに立ったことになると思います。雇用管理の改善は、すぐに完全を目指すのではなく、今できるところか らまず取り組み、労働環境を整備し、やがて雇用の確保に結びつくことで実現できると思います。

◎その他、他の事業主が雇用管理上の課題に取り組む上で参考となると考えられる事項

就業規則や労働関係法令にのっとった制度を整備するなかで、事業主とともに労働関係法令を勉強しまし た。労働基準法や各制度の趣旨を見直すことで、法を守ることのメリットに気付くことになり、雇用管理改 善の推進力となりました。

(6)

◎すでに企業が取り組んでいる雇用管理制度

(1)評価・処遇制度関係 定年は65歳とし、高齢者雇用も進んでいます。 (2)研修体系制度関係 研修の部屋を確保し、多くの研修を実施しています。また、資格取得を推進しており、従業員全員の資 格一覧を掲載し、資格取得のための費用を支援しています。 (3)健康づくり制度関係 健康診断の実施に加えて、インフルエンザの予防接種等も会社の費用負担で実施しています。 (4)休暇・労働時間制度関係 忙しい時は時間外労働も多くなりますが、労働時間に応じた時間外手当を払っています。有給休暇の残 日数を給与明細に記載しています。 (5)業務管理・組織管理・人間関係制度関係 会社の経理はオープンにされ、自分たちの目標を持ちやすくするように工夫しています。 (6)福利厚生関係 財形貯蓄制度があり、ケガや病気休業等の上乗せ保険があります。

◎事業主の雇用管理改善を通じた魅力ある職場づくりに対する意識について

社長は、社員のモチベーションを上げていくために何をしたらよいか悩んでいます。人事制度に問題があ るとは思っていませんが、将来のことを考えると、若い人を採用していくことは重要な課題になると考えて います。

◎対象企業が抱える雇用管理上の課題

社員のモチベーションアップのために、新たに評価制度をいれて、頑張った人に対して評価したいと考え ていました。 業種:クレーン作業、地盤改良 創業:昭和 47 年 従業員数:30 人 従業員の平均年齢:48 歳

B社

企 業 の 概 要

事例❷

(7)

事例❷

◎対象企業に提案した雇用管理制度について

(1)制度の概要 ① 会社のニーズを把握するためのヒヤリングの実施 ② 職務遂行能力の評価基準の資料の提供 ③ 職業能力評価シートの提供 ④ 人事考課のためのシートの提供 (2)導入支援のポイント(提案理由、工夫など) A社では、年1回会社の方針・計画を検討するために全社員で会議を行い、社員に目標を書かせていま すが、それを検証する仕組みがありませんでした。そこで、目標管理シートや、評価表、業績目標成果シー トなどを提案して、プロセス管理と結果を検証する制度を提案しました。 また、「情報発信力」と「営業力」をつけることを特に提案しました。情報発信力としては、社内では 様々な資格を持ち技術力が高い人が多く、新しい工法や技術を導入しているのに、そのことを十分に発信 できていません。それで、そのことを全社員が共有し、情報発信に取り組むことを勧めました。 営業力としては、営業担当社員だけが営業をするのではなく、全社員が前述のような情報発信をするこ とによってそれを営業へつなげる様に勧めました。

◎導入支援の経過、結果

(1)提案した雇用管理制度の導入状況 提供した資料が多く、一度に全部を実行することは難しいですが、目標管理制度を利用して、目標の焦 点を絞って考える、実効性のあるものにする、結果を検証することが必要だとして、目標シート等を活用 する意向です。また、今回の事業をきっかけにして、若年者の採用を考え、特に女性の活用を考えている ということです。 (2)助成金活用状況 職場定着支援助成金や建設労働者確保育成助成金などの活用を計画しています。

◎今後の取組計画や課題

今回の取り組みを通して、会社としての強みを再認識し、それを社員全員が共有して、景気に左右されな い経営体質を作ることに確信を持ったようです。長期的展望で若年者雇用に取り組むことは、今後の企業の 発展にとって重要です。

◎雇用管理アドバイザーの感想

ヒヤリングでは、中小企業としては、社員の資質向上のための研修や資格取得支援などにかなり力を入れ ていることがわかりました。社員の定着がよいのも、その結果だと思われます。また、アドバイザーとして は、「いくら一生懸命に取り組んでも、情報を発信しないと、自己満足になります」と伝えました。

(8)

◎すでに企業が取り組んでいる雇用管理制度

(1)研修体系制度関係 必要に応じて研修に行かせています。   (2)健康づくり制度関係 年1回の定期健康診断を実施しています。 ◎

事業主の雇用管理改善を通じた魅力ある職場づくりに対する意識について 

若い人は、仕事の負担と賃金が見合っていない、将来展望が持てないなどの理由で退職しているので、き ちんとした賃金体系を作りたいと考えています。 ◎

対象企業が抱える雇用管理上の課題

賃金制度がなく、また、営業も工事部も外で勤務することが多いので、労働時間の管理が十分行われてい ません。このため、労働時間と賃金の関係が明確ではありません。また、賃金を決定する際の基準がないの で、若い社員の中には、『要領のよい人間が高い給与をもらい、長時間勤務しても賃金が上がらない』と考 えている者も少なくありません。賃金の決定について、規定を整備する必要がありました。 ◎

対象企業に提案した雇用管理制度について

1)制度の概要 賃金の望ましい形を提案し、具体的に賃金の規定を整備して提案しました。 (1)現状の賃金について次の分析を行いました。 ① 年齢別賃金の実態と年齢との関連 ② 勤続年数別賃金の実態と勤続年数との関連 ③ 役職別賃金実態と、職責との賃金の関連 ④ 男女別賃金の実態 ⑤ 労働時間数と賃金の関連(残業時間数と賃金) 業種:建築(内装・設計施工) 創業:平成 14 年 従業員数:41 人 従業員の平均年齢:44 歳

C社

企 業 の 概 要

事例❸

(9)

事例❸

(2)基本給と手当の整備を提案しました。 ① 時間外手当の支払いを明確にしました。 ② 職責に応じた賃金を支払うことを提案し、役職を明確にし、役職手当を職責に応じて決定しました。 ③ 扶養家族手当、住宅手当などの生活補助に当たる賃金を支払うことにしました。 ④ 資格手当も明確にして支払うことにしました。 (3)賃金規定を整備して、基本給の決定や手当の内容、支給額を明確にして文書化しました。 2)導入支援のポイント(提案理由、工夫など) 賃金分析を行った結果、年齢、勤続年数、職責、職務と賃金との関連性が見えませんでした。 また、本来は、労働時間の実態に応じて賃金が支払わなければなりませんが、外勤のため時間管理がで きないことや、仕事上、本人の裁量で現場にいる時間等を決定していることもあり、労働時間の把握が難 しい実態があります。しかし、おおよその労働時間は推定できるので、その時間に応じた賃金を支払う必 要があることを助言しました。 また、賃金は職務や職責の大きさに応じて決定するものです。その関連も見えませんでした。役職手当 も決まっていませんでした。呼称と役職との関連がなかったので、まず職責に応じた賃金を決めることを 助言しました。また、家族手当、住宅手当等を明確にして、子育て世代の賃金の引き上げを行うことにし ました。さらに、基本給は、職務の内容から見て賃金が低いと判断された者について引き上げを行いました。 3)特記事項(支援の際に障害となった事情・課題。それをどのように解決したか など 今回の依頼は、管理本部長から「若い人が、やりがいがもて将来展望が持てるようにしたい。その一歩 として賃金を見直したい」という依頼で着手しました。しかし、社長の同意にまで至っていなかったこと もあり、全面的な改正にはなっていません。役職制度の整備と、比較的若い人や勤続年数の短い人が働き に応じて賃金が支払われていると感じることが出来るように整備しました。 ◎

導入支援の経過、結果

賃金規定の整備を行い、社員への説明を行い導入の準備を進めています。 ◎

事業主からの感想(事業主や従業員の意識の変化など)

「賃金について不明確で、法令順守の立場からも改善を図りたかったが、どのように何から着手したらよ いか悩んでいました。基本給や手当を明確にして、賃金規定を整備することができ、人材の確保が非常に困 難ななか、魅力のある会社にして現社員の定着と採用のできる会社にしていきたい」という管理部長の感想 です。 ◎

雇用管理アドバイザーの感想

賃金は労働者にとって非常に重要な労働条件です。また、労働時間に応じた賃金を支払うことが法令遵守 の立場から重要です。とくに、時間外労働相当の手当を支給し、労働時間に応じた賃金が支払われるように なったことは大きいです。また、職責と呼称(肩書)と賃金の整合性が採れていなかったころを改めました。 仕事に見合った賃金となり、家族手当、住宅手当を文書化し支給するようになったので、子育て世代にとっ ても魅力のある改正になったものと思われます。

(10)

「雇用管理アドバイザー」による

相談支援とは?

雇用管理アドバイザーとは

 雇用管理アドバイザーは、建設業における人事・労務管理に 精通した社会保険労務士等が務めます。中小建設会社様からの 要請にもとづいて企業訪問し、雇用管理の改善を進める上での 課題を整理し、課題解決のための手順・方法などについて相談 支援を行います。  平成 27 年度「人材不足分野における人材確保のための雇用管理改善促進事業」 (啓発実践コース)では、雇用管理の改善の必要性や具体的な進め方に関心を持っ ている中小建設会社を対象に、雇用管理アドバイザーを派遣して、魅力ある職場 づくりに役立つ相談支援を行いました。 こんなことでお困りではありませんか?

・若年者の入職と職場の定着率を高めたい

・賃金体系や賞与制度の課題を指摘してもらいたい

・社員の士気があがる人事考課・評価制度を作りたい

・外国人の技能実習生を受け入れたい

・社会保険未加入対策について知りたい

・定年後の継続雇用者のために多様な就労形態を導入したい

・女性の技能労働者が活躍できる職場環境を整えたい

・マイナンバー制度対応と社内規定を作りたい

・建設労働者確保育成助成金制度の活用方法を知りたい

――など様々な課題に対応しました。 ◆

費用はすべて無料

(11)

雇用管理改善啓発セミナーとは

 平成 27 年度「人材不足分野における人材確保のための雇用管理改善促進事業 (啓発実践コース)」では、奈良県内で 2 回の「雇用管理改善啓発セミナー」を開 催しました。  このセミナーは、建設会社における雇用管理のレベルアップを目的に、建設業 の事業主と労務管理担当者を対象に実施するもので、セミナーの内容は以下のと おりです。講師は、建設業の状況に精通した社会保険労務士が務めました。 【日程と会場】※平成 27 年度に開催されたセミナー

奈良会場

平成 27 年

10月14日(水)

13:00 ∼ 17:00

     公益財団法人奈良県人権センター

橿原会場

平成 27 年

10月23日(金)

13:00 ∼ 17:00

     奈良県社会福祉総合センター

【受講料】

無料(テキスト配布)

【セミナーの内容】

(1)建設業の人材不足の現状

(2)社会保険未加入問題の現状と課題

(3)雇用管理責任者の選任とその役割

(4)「魅力ある職場づくり」の必要性とメリット

(5)建設業で活用可能な助成金制度

(6)質疑応答とアンケート

※ このセミナーに参加された方は、当日、雇用管理アドバイザーによる相談支援 を申し込むことが可能です。また、会場では、雇用管理アドバイザーによる個 別相談コーナーも設けています。

(12)

平成27年度奈良労働局委託事業 人材不足分野における人材確保のための雇用管理改善促進事業 啓発実践コース<建設分野>

株式会社労働調査会 関西支社

建設事業所における

雇用管理改善

事例集

平成27年度 奈良労働局委託事業

参照

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