• 検索結果がありません。

Vol.26 , No.1(1977)024並川 孝「アビダルマにおける「力」という語について」

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Vol.26 , No.1(1977)024並川 孝「アビダルマにおける「力」という語について」"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ア ビ ダ ル マ に お け る ﹁ 力 ﹂ と い う 語 に つ い て ( 並 川 )

漢 訳 語 ﹁ 力 ﹂ は ア ビ ダ ル マ 論 書 で 如 何 な る 用 法 や 且 ハ体 的 な 教 理 内 容 を 有 し て い る か を 倶 舎 論 を 中 心 に 考 察 す る。 訳 語 ﹁ 力 ﹂ は 至 る 所 で 見 ら れ る が、 玄 装 訳 の 場 合、 意 味 上 か ら 適 宜 に ﹁ 力 ﹂ の 語 が 付 加 さ れ て い る こ と が あ る。 例 え ば、samadhi を 定 力、anitya を 無 常 力、cetanaを 思 の 願 力、rddhi を 通 力、dhad mata を 法 爾 力、karma を 業 力 と い つ た 訳 出 で あ る。 し か し、 多 く は ﹁ 力 ﹂ の 原 語 を 有 す る の が 普 通 で あ る。 倶 舎 論 で、 ﹁ 力 ﹂ と の 訳 出 は 玄 訳 ( 勢 力 ・ 威 力 と い う 訳 語 も 含 む ) でbala. Prabhava.

samarthya. samrthya. samartha. vasa

と 他 にadhisthana, anu bhavaとで、 真 諦 訳 (強 力 ・ 威 力 ・ 功 力 ・ 勝 力 と い う 訳 語 も 含 む ) で

はbala. eakti. Prabhaua, Samarthya, samartha. vaa. a

と で あ る。 こ れ ら は す べ て ﹁ 力 ﹂ と 訳 さ れ て い る わ け で は な く、bala 以 外 で は 功 能 ・ 能 ・ 用 や 随 ・ 由 と い つ た 訳 語 例 の 方 が 多 く、 そ こ で、 ど の 用 例 に ﹁ 力 ﹂ の 訳 語 が な ら れ て い る か を 吟 味 す る。 倶 舎 論 に お け

るsakti. Prabhava, samarthy Psamartha. vasa

と bala の 用 例 を 見 つ つ、 そ の 用 法 を 略 記 す る。 先 ずsaktiは 三 種 の 用 法 に 集 約 で き よ う。 一 は 相 続 の 前 後 に お け る 差 別 相 を 起 す 働 き と、 能 作 因 の 働 き と で あ る が、 前 者 が 圧 倒 的 に 多 く、 そ れ は 差 別 功 能 と 訳 さ れ る 例 で あ る。 二 は 仏、 天、 見 道(darsammarqa) に お け る 働 き と い つ た 用 法 で、 他 の 一 は 諸 魎 の 転 変 す る 能 力(samari tum sakti) と で あ る。 こ れ ら の 申 で ﹁ 力 ﹂ は 真 諦 訳 に、 能 作 因 の 働 き を 示 し て い る 一 例 見 ら れ る の み で、 他 は 功 能 ・ 能 ・ 用 と 訳 出 さ れ る。 次 にPrabava で あ る が、Tib. 訳 で はmthuに 統 一 さ れ る が、 漢 訳 と 用 法 と の 多 様 性 は 最 た る も の で あ る。 代 表 的 用 法 を 挙 げ る と、 定 力(samdhi-Prabhva) や 仏 の 果 円 徳 の 一 で あ る 威 力 円 徳 (prabhava-saat) と い つ た 修 道 上 の 用 法、 遍 行 因 や 因 縁 和 合 の 勢 力 の 如 き 因 の 働 き を 示 す 例、 憶 念(marapa) を 成 立 さ せ る た め の 心 の 働 き や、 神 通 の 働 き、 大 種(mahabta) の 働 き、 業 力 ( 犀 甲 rmababla の 業 力 と は 異 な り、 こ れ に よ り 生 起 す る の は 物 質 世 間 )、 そ し て 以 上 と は 異 質 な 光 明 と い つ た 用 例 が 見 ら れ る。 光 明 の 他 は 両 訳 の い ず れ か で 力 ・ 勢 力 ・ 功 力 ・ 威 力 と さ れ る。 次 のsamartbya の 用 法 は 三 区 分 で き る。 一 はsakti の 第 一 の 用 法 と 同 様 で、 二 の 用 法 もsakti に 見 ら れ た が、 一 切 智 に お け る 働 き、 聖 道 の 力(arya marqasamarthy)、 無 漏 に お け る 働 き、 択 滅 の 働 き と い つ た 道 に お け る 用 法 で、 三 は 犀armabala. armaprabhaa と 同 様、 業 に お け る 働 き と い つ た 用 法 で あ る。 こ れ ら 用 法 中、 両 訳 で ﹁ 力 ﹂ と さ れ て い る の は、 一 と 二 と の 用 法 で あ る が、 用 例 数 か ら 言 え ば、 そ の 割 合 は 小 さ く、 唯、 能 作 因 の 働 き と 聖 道 に お け る 力 と だ け で、 大 抵 の 場 合 はsaktiの 如 く 功 能 ・ 能 を 中 心 と し た 訳 語 で あ る。samartha は eakti, samarthya の 用 法 と ほ ぼ 同 じ で、 相 違 点 を 挙 げ れ ば、 煩 悩 が 生 じ る 働

き(k-esanam praroha samartha)や

因 の 差 別 を 了 ず る 働 き(karana-Parichedem-samartha)ぐ ら い で、 漢 訳 も 功 能 を 中 心 と し、 ﹁ 力 ﹂ は 金 剛 喩 定 力(vajra-upamasamadhi)の 場 合 だ け で あ

(2)

-138-る。 次 にvaeaで あ る が、Tib.訳は、dban、 漢 訳 は ﹁由 ﹂ を 中 心 と し 他 に 比 較 し て 一 定 し て い る。 多 く は 複 合 語 の 後 文 に 用 い ら れ、 格 も-m・ が 大 半 で、 他 にAb. の 用 例 が 顕 著 で あ る。 (由 随 の 訳 か ら も 力 の 意 義 は 弱 い が、 ﹁ 自 在 力 ﹂ と い つ た 訳 語 も 有 し て い る。 以 上 のsaktiよりvasaま で の 用 例 を 見 る と、 ﹁ 力 ﹂ と 訳 さ れ ず と も そ れ と 全 く 同 じ 用 例 も あ り、Skt. 原 語 が 異 な つ て も 用 例 の 同 じ 場 合 が 幾 度 も 見 ら れ る。 ﹁力 ﹂ の 原 語 と し て 一 般 的 なbalaは 力 ・ 勢 力 と 訳 が 一 定 し て い る。 こ の 用 法 は 四 種 に 整 理 で き よ う。 第 一 は 劫(ka-Pa) の 数 え 方 の 一 単 位 と し て、 第 二 は 暴 力 や 強 迫 命 令 す る 働 き、 杖 が 支 え る 力、 aa-akr Prama-ba と い つ たrUPa の 存 在 様 態 の 一 要 素、 軍 隊(balakaya) に お け るbala 等 の 物 理 的 肉 体 的 意 味 の 強 い 用 法 で、 第 三 は 少 例 だ が 浬 架 に 入 る こ と を 障 げ る 働 き と、samartha と 同 様、 煩 悩 を 増 長 す る 働 き と し て の 用 法 で あ る。 次 は 第 三 の 用 法 と 正 反 対 でbalaの 用 例 中 顕 著 な 特 色 な の が こ の 用 法 で あ る。 即 ち、 五 力、 十 力 等 で 代 表 さ れ る 修 道 上 の 悟 り へ と 向 わ し め る 働 き や 悟 り そ の も の に お け る 働 き と し て の 用 法 で あ る。Prabava. の 定 力、 威 力 円 徳、samaraの 金 剛 喩 定 力 以 外 で 修 道 や、 十 八 不 共 法 で 代 表 さ れ る 仏 に 関 す る 用 語 の ﹁ 力 ﹂ は 原 語 をbala と 考 え て よ い。ary

amara amarthya もryamarqaba-a

の 用 例 の 方 が 多 い。 構 文 的 に は、 複 合 語 の 後 文 に 用 い ら れ ﹁-力 ﹂ と 訳 さ れ る の が 特 色 で あ る が、 こ の 用 法 の 力 と は 何 か。 倶 舎 論 で は、 根 は 屈 伏 す べ き も の ( avamardanya)、 力 は 屈 伏 せ ざ る べ き も の(anavamardaniya) と し て 根 よ り 一 層 強 い も の と 示 し、 婆 沙 論 で は 根 を 善 法 を 生 ぜ し む る 作 用、 力 を 悪 法 を 破 し た り、 他 を 擢 伏 す る も の と 定 義 す る。 更 に、 如 来 身 中 に あ る 智(jnam)、 即 ち 一 切 の 障 擬 な く 自 在 力 の あ る 智 を 力 と し、 十 力 の 力 と は、 堅 固 な る も の、 他 に 屈 伏 さ れ な い も の 等 と 列 挙 さ れ る。 こ れ ら か ら、 力(bala)と は 堅 固 に し て 他 よ り 屈 伏 さ れ る こ と な く 悪 法 を 破 し、 自 か ら 障 擬 の な い 自 在 力 の あ る 智 で あ る と 言 え よ う。 即 ち ﹁-力 ﹂ と 訳 さ れ る 場 合 の 力 と は、 そ の 複 合 語 の 前 文 と シ ノ ニ ム で、 且 つ そ の 働 き を 一 層 強 調 す る も の で あ る。 漢 訳 ﹁ 力 ﹂ の 用 法 と 意 義 を 整 理 す る と 次 の 如 く に な ろ う。 (一) ﹁ 他 を 生 起 さ す 働 き ﹂、 原 語

はsakti. samarya. Prabhava.

ba-aで、saktiとsamarta は 能 作 因、Prabava は 遍 行 因 や 因 縁 和 合 の 勢 力 と い つ た 因 の 働 き と し、 定 型 化 し た 因 力はbalaが 用 い ら れ る。 こ の 用 法 は 功 能 等 の 訳 が 主 流 を 占 め て い る。 と こ ろ で、 法 を 生 起 さ す 働 き と 言 え ぱ、 有 部 の 法 体 系 で は 心 不 相 応 行 法 中 の 生相(jati)や得(prati) に 該 当 す る が、 ﹁ 力 ﹂ は 具 体 的 法 を 指 し 示 さ ず、 諸 法 の 相 互 関 係 の 観 念 的 術 語 を 意 味 す る。 (二) ﹁ 修 道 や 仏 に お け る 働 き ﹂ 原 語 は 大bala で 他 にPrabhaa. samarthya. samartha で あ る。 こ れ ら は 常 に 確 固 と し て 悟 り へ と 向 わ し め る 働 き や 屈 伏 す る こ と の な い 働 き と し て 意 味 付 け ら れ る。 尚、 業 力(karmabaa) や 因 力(etba) も 無 色 定 を 起 す 場 合 は こ の カ テ ゴ リ ー に 含 ま れ る で あ ろ う。 (三) ﹁ 浬 繋 に 入 る こ と を 障 擬 す る 働 き ﹂ 原 語 はbaaとPrabhava で、ba-a は 不 善 業 力、 罪 業 力 や 煩 悩 を 増 長 す る と い つ た 働 き で、 Prabhava は 強 い 煩 悩 を 起 す 遍 行 因 の 場 合 で あ る。 (四) 由 ・ 随 に 置 換 で き る 程 意 味 の 弱 い 用 法 で、 原 語 はvasa。 国 物 理 的 肉 体 的 意 義 の 場 合 で、 原 語 はbalaの他、 大 種 の 働 き、 業 力 の 用 例 を も つPrabhavaと で あ る。 ア ビ ダ ル マ に お け る ﹁ 力 し と い う 語 に つ い て ( 並 川 )

参照

関連したドキュメント

見た目 無色とう明 あわが出ている 無色とう明 無色とう明 におい なし なし つんとしたにおい つんとしたにおい 蒸発後 白い固体

[r]

[r]

しかし,物質報酬群と言語報酬群に分けてみると,言語報酬群については,言語報酬を与

紀陽インターネット FB へのログイン時の認証方式としてご導入いただいている「電子証明書」の新規

The results indicated that (i) Most Recent Filler Strategy (MRFS) is not applied in the Chinese empty subject sentence processing; ( ii ) the control information of the

(Sexual Orientation and Gender

という熟語が取り上げられています。 26 ページ