不静定力学Ⅱ
骨組の崩壊荷重の計算
不静定力学Ⅱでは,最後の問題となりますが,骨組の崩壊荷重の計算法について学び ます。
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参考書
松本慎也著「よくわかる構造力学の基本」,
秀和システム
崩壊荷重
構造物に作用する荷重が徐々に増大すると,構造物内に発生する 応力は増加し,やがて,構造物は荷重に耐えられなくなる。そのとき の荷重を崩壊荷重あるいは終局荷重という。 弾性状態 塑性状態 終局状態 荷重 変形 (a) (b) (c) 建物の設計では,地震などによって損傷を受けないということが重要ですが,数百年に 一度おこるような巨大地震に対しては,損傷を完全に回避することは困難なことです。 したがって,このような巨大地震に対しては,人命保護のために,損傷は受けても潰れ ない(崩壊しない)ことを保証する必要があります。 巨大地震で建物の崩壊を防ぐには,どの程度の地震荷重(水平力)によって,建物が崩 壊するのかを求めておく必要があります。 このように建物が崩壊する荷重を“崩壊荷重”または“終局荷重”と呼びます。 (なお,終局荷重は,建物が抵抗力を無くした時点での荷重です。) 図には,骨組に作用する水平荷重が徐々に大きくなっていった時の建物の変形と作用 する荷重との関係を図とグラフで示してあります。 (a)の弾性状態では,建物に損傷がなく,荷重が無くなると元の状態に戻ります。4
材料特性のモデル化
ε ひずみ σ 応力 ε ひずみ σ 応力 実際の応力-ひずみ関係(複雑) 完全弾塑性モデル(単純) y σ 降伏応力 モデル化 まず,このような骨組の崩壊荷重を求めるためには,いくつかの仮定が必要です。 一つは,材料の応力とひずみの関係を右の図のようにモデル化します。 このような応力-ひずみ関係のモデルを,完全弾塑性モデルと呼びます。 この完全弾塑性モデルでは,ある応力に達するとひずみが一定になります。すなわち, 同じ応力でどんどん変形が進むということです。 このひずみが一定になる時の応力を“降伏応力”と呼びます。 ここでは,完全弾塑性という言葉と,降伏応力σyという言葉を憶えてください。完全弾塑性モデルの部材断面
内における応力分布
このような完全弾塑性モデルを仮定すると,曲げモーメントが加わる部材の断面の応力 状態は図に示すように変化して行きます。 まず,応力が降伏応力に至るまでは,(a), (b)のように応力の傾きは直線になります。 断面の端が,降伏応力に達すると,それ以上応力は高くならないため,(c)のように,断 面の端から徐々に応力一定の領域が進展していきます。 この状態が弾塑性状態です。 そして,最終的に(d)のように,断面の全領域が降伏し,曲げに対する抵抗力が0になり ます。これが断面の崩壊です。 この状態を全塑性状態と呼びます。 崩壊荷重を求めるためには,この全塑性状態の曲げモーメントを求める必要があります。 この全塑性状態の曲げモーメントを“全塑性モーメント”と呼びます。6
全塑性モーメント
B D x y y σ y σ T C j 部材断面 全塑性状態 2 y BD C= =T ×σ 2 D j= 2 2 2 4 p y y p y BD D BD M = × = × =C j T j σ × = σ =Z σ 2 4 p BD Z = 全塑性モーメント 塑性断面係数 全塑性モーメントMpは,力の釣合からσyと断面寸法を用いて,ここに示す式で表され ます。 ここで,Zpは,“塑性断面係数”と呼ばれ,σyは,全塑性モーメントを塑性断面係数で 割ることによって得られます。 全塑性モーメントMpと塑性断面係数Zpという言葉を憶えてください。 また,ZpがBD^2/4となることも憶えてください。代表的な断面形に対する塑性
断面係数
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崩壊機構の形成
荷重が増大すると 荷重 崩壊荷重 塑性ヒンジ 崩壊荷重を求めるためには,もう一つ仮定が必要です。 それは,どの部分(断面)が壊れるかと,どのような形で構造全体が崩壊するかがわかっ ているという仮定です。 例えば,図のような問題では,部材端部と荷重点が壊れることを仮定しています。 そして,断面が崩壊する部分を図に示すようなヒンジで表します。 そして,全体崩壊が生じる時のヒンジの位置を仮定します。様々な崩壊機構
たとえば,図に示すような門形ラーメンでは,様々な崩壊形(崩壊機構)が考えられます。 このような崩壊形の中から,どのような崩壊形で崩壊に至るかを仮定する必要があります。 なお,演習問題では,崩壊形(崩壊機構)は,与えられています。 実際は,いくつかの崩壊形に対して,崩壊荷重を計算し,その最も小さいものを崩壊荷 重とします。10
崩壊荷重の計算法
1.
骨組の崩壊機構を仮定する
2.
外力のなす仕事を計算する
3.
内力のなす仕事を計算する
4.
仮想仕事の原理より崩壊荷重を求める
P
δ
∑
外力のなす仕事=
M
θ
∑
内力のなす仕事=
P
δ
M
θ
∑
∑
外力のなす仕事=内力のなす仕事
=
それでは,以上の基礎知識を元に,崩壊荷重の求め方について説明します。 まず,骨組の崩壊機構を仮定します。 次に,その仮定された崩壊機構の変位をδなどの変数とし,外力のなす仕事量を計算 します。 外力のなす仕事量は,外力×(外力の作用している点の外力方向の変位)によって計 算できます。 これをすべての外力に対して計算し,総和をとったものが外力の仕事量です。 次に,仮定された崩壊機構の各部材の内力のなす仕事量を計算します。 各部材の内力の仕事量は,各部材両端断面の回転角とその部材の全塑性モーメントを 掛けることによって計算されます。 そして,最後に外力のなす仕事量と内力のなす仕事量が等しいという仮想仕事の原理 を用いて,崩壊荷重Pを求めます。 この時,各部材の回転角θは,節点の変位δを用いて表すことができるため,仮定した 仮想変位δは,この式から消去されます。 したがって,崩壊荷重Pは,全塑性モーメントを長さで割った形で表されます。例題
3L 2L L 2Mp p M 2Mp P A B C D 次に,具体的な例題で崩壊荷重の求め方を説明します。 この例題では,柱の全塑性モーメントが,梁の場合の2倍になっていることに注意してく ださい。12
Step1 崩壊機構の仮定
3L 2L L u P θ θ 2θ δ δ 2θ A B C D まず,崩壊機構を図のように仮定します。 この場合,梁の両端B, Cと固定端側の柱脚Aにヒンジを仮定しています。 なお,D点は,ピン支持であるため,ここでは仕事は発生しません。 次に崩壊機構のどこかの節点の変位をδと置き,どこかの部材の回転角をθと置きます。 この場合は,B点の荷重方向の変位をδと置き,柱ABの傾きをθと置いています。 次に,機構のヒンジの回転角をすべてθで表します。 この場合は,B点とC点の変位が等しいことから,柱DCの傾きは2θになります。 また,柱BAと梁BCは,B点にヒンジができなければ直角のはずですから,B点の梁の回 転角はθになります。 また,C点がヒンジでなければ,DCとCBは直角のはずですから,C点の梁の回転角は 2θになります。Step2 外力のなす仕事の計算
L u P θ θ 2θ δ δ 2θ A B C D uP
δ
P
δ
∑
=
2L
δ
θ
ただし,
2L 次に,外力の仕事量を計算します。 外力の仕事量は,外力×(外力が作用する節点の外力方向の変位)となります。 この場合は,Pu×δとなります。 また,δは,近似的に,AB要素の長さ×θとなりますから,2Lθで表されます。14
Step3 内力のなす仕事の計算
L u P θ θ 2θ δ δ 2θ A B C D2
p p p2
M
θ
M
θ
M
θ
M
θ
∑
=
× +
× +
×
A
ヒンジ
ヒンジ
B
ヒンジ
C
2L 次に内力のなした仕事量を計算します。 内力の仕事量は,ヒンジを発生させるためのエネルギーに費やされますから,それぞれ のヒンジについて仕事量を計算すればOKです。 まず,ヒンジAができるためには,柱の全塑性モーメント2Mpの内力が必要です。した がって,ヒンジAができた時の仕事量は,2Mp×θとなります。 次に,ヒンジBができるためには,梁の全塑性モーメントMpの内力が必要ですから,仕 事量はMp×θです。 ヒンジCができるためには,梁の全塑性モーメントが必要ですから,仕事量はMp×θで す。 ここで,柱にヒンジがある場合は,柱の全塑性モーメントを,梁にヒンジがある場合は,梁 の全塑性モーメントを用いることに注意してください。Step4 仮想仕事の原理より崩壊荷重を求める
L u P θ θ 2θ δ δ 2θ A B C D2
2
2
5
5
2
u p p p u p p uP
M
P
M
M
M
P L
M
M
P
L
δ
θ
δ
θ
θ
θ
θ
θ
∑
= ∑
=
+
+
⇒
=
⇒
=
2L 最後に,外力の仕事量と内力の仕事量が等しいとする仮想仕事の原理を用いて,崩壊 荷重Puを求めます。 この時,荷重は曲げモーメントを長さに割ったものになることを頭に入れておいて下さい。 この式によれば,Mpの値が計算されれば,崩壊荷重が求まります。16