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* 海洋石油生産システムに関する近年の技術動向の紹介 * 海洋石油生産システムに関する近年の技術動向の紹介 ** 上田上田善紹善紹 ** 1. はじめに 19 世紀以降開発 生産が容易な陸上の油田からの生産は始まったが, その後生産が進み現在ではそれらの油田は生産末期もしくは生産停止に至っている.

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Academic year: 2021

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1. はじめに 19 世紀以降開発・生産が容易な陸上の油田からの生 産は始まったが,その後生産が進み現在ではそれらの 油田は生産末期もしくは生産停止に至っている.陸地 が見えないような沖合での油田開発は,第二次世界大 戦後の1947 年アメリカ・ルイジアナ沖が最初と言わ れている.以来,石油開発技術の進歩とともに,大陸 棚から大陸棚斜面さらに深海底へと発展し,海洋での 油ガス田開発が行われている.現在では世界の全石油 生産量の約30%が海洋油田からのものであり,今後深 海底への開発が進むにつれて,この比率はますます高 まるものと予想される.ここでは,これらの海洋石油 開発生産システムの技術動向について紹介する.なお, 本解説は,著者の許可を得て「石油鉱業便覧(2013) 7.6.1 海洋生産システムの種類」1)を大幅に引用した. 2. 海洋油ガス田開発の推移 2.1 日本の海洋油ガス田 わが国では19 世紀末に新潟県尼瀬海岸で岸から 30 ~50m の沖合まで桟橋を出して坑井掘削を行い,尼瀬 油田の開発が行われた.海上に,生産に用いられる構 造物であるプラットフォームを設置して開発が行われ た本格的な海洋油田は,1959 年に発見された土崎沖油 田が最初のものである.代表的な海洋油ガス田として は,阿賀沖油ガス田,磐城沖ガス田,岩船沖油ガス田 が挙げられる. 2.2 海外の海洋石油開発(北海から大水深開発へ) 1950 年代末にオランダのフローニンゲン地方で天 然ガス田が発見されたのを契機に,北海が石油の有望 地域として注目されるようになった.はじめは南部で 天然ガスが発見され,漸次北部の油田開発に発展し 1970 年以降商業生産が開始された.北海油田は,比較 的新しくかつ世界の代表的な海洋油田地域といえる. 北海は強い風,荒れ狂う波,冬の寒気と気象条件が非 常に厳しく,この開発条件の悪さを克服するための新 技術が駆使され,種々の海洋石油開発技術が開発され た. その後大水深開発は1990 年代には,北海,メキシ コ湾およびブラジルで進められ,この成果が西アフリ カと東南アジアに応用されてきた. 一般的に,水深300m (1000ft) 以上を大水深,水深 1500m (5000ft) 以上を超大水深と呼んでいる. 以下に海洋石油開発生産システムの技術動向につい て紹介する. 3. 海洋生産システムの種類 3.1 生産システムの種類と機能 生産プラットフォームは,水深や海象条件,離岸距 離,油ガス田の生産量などに応じて次のような3 形式 が用いられている.

1) 固定式: Jacket, Compliant Tower(CT) 2) 着底式 : GBS(gravity base structure),

Jackup

3) 浮遊式 :

FPSO(floating production, storage and offloading) FPS(floating production system) TLP(tension leg platform)

SPAR また生産システムの機能は,次の11 種に分類される. 1) 掘 削 ( drilling )・ ワ ー ク オ ー バ ー (workover) 2) 生産 (production) 3) 居住 (accommodation) 4) フレア (flare) 5) ウェルヘッド (wellhead) 6) 水圧入・ガス圧入 (water/gas injection)

海洋石油生産システムに関する近年の技術動向の紹介

* 上田 善紹** *原稿受付 平成 27年5月15日 **JX 日鉱日石開発(株)技術部 上 田 善 紹**

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図1 海洋生産システムの概念図2)

SPS : Subsea Production System GBS : Gravity Base Structure CPT : Compliant Piled Tower TLP : Tension Leg Platform FPS : Floating Production System

FPSO : Floating Production, Storage and Offloading

7) ライザー(riser), コンダクター(conductor) 8) 貯油 (storage) 9) 出荷 (export) 10) 発電 (power generation) 11) その他 生産システムは上で述べたように,そのジャケット の設置方法である固定式,着底式を2 つあわせて,固 定 式 ・ 着 底 式 生 産 シ ス テ ム (bottom supported system)と浮遊式生産システム(floating system)とに 大別される.図1 に海洋生産システムの概念図を示す. 固定式・着底式プラットフォームと浮遊式プラット フォームの最も大きな差は,波・風・潮流などの外力 に対してプラットフォームが動かないか動くかで分類 される.Compliant Tower は固定式であるが,最大暴 風時には,上部が 5m ほど水平方向に運動する.しか し,この運動は,石油生産にとって特に支障になるこ とではなく,固定式・着底式プラットフォームが持つ 機能を発揮できる.また,TLP と SPAR は水平方向に 運動するが,上下方向にはほとんど運動せず,実質的 に固定式・着底式の機能を発揮できる.したがって, TLP と SPAR は,石油の掘削や生産の機能に関しては, 固定式・着底式と同じカテゴリーに分類できると言え る.即ち,海底生産システム(Subsea Production System:SPS)を除いて,上下運動が零または極めて 小さいシステム(Jacket,Compliant Tower,GBS, TLP,SPAR)と上下運動が比較的大きいシステム (FPS,FPSO)の 2 種類に分類できるともいえる. 運動の大小は,坑口装置をプラットフォーム上に設 置できるか,または海底坑口装置としなければならな いかという選択や,掘削・坑井改修のし易さに影響す る.また,生産流体を海底面からプラットフォームま で輸送するライザーの形式にも影響する.海上坑口装 置は,海底坑口装置に比べて保守がはるかに容易であ る. 海底からプラットフォームまで立ち上がる生産用ラ イザーは,上下運動が零または極めて小さいシステム では鋼管製のリジッドライザーが用いられるが,上下 運動が比較的大きいシステムでは,プラットフォーム の上下動を吸収するためにフレキシブルライザーが用 いられる. その他の機能,即ち掘削,生産,居住,フレア,水 ガス圧入,発電,出荷などは,固定式・着底式あるい は浮遊式によらずほぼ同じである. 以下にこれらの海洋生産システムの特徴を述べる.

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図2 TLP の概念図2)3 SPAR の概念図2) 3.2 固定式・着底式生産システムの概要 海洋石油生産システムに最も多く用いられてき た構造物はJacket であり,今でも海洋石油・ガス 生産の主流である.しかし,その建設コストは水深 の増加に対して急激に増加するので大水深では,経 済性は急激に失われる.稼働中の固定式プラットフ ォームの半数ほどはメキシコ湾にある.Compliant Tower の実績は,メキシコ湾の Baldpate コンプラ イアント・パイルド・タワー(CPT:Compliant Piled Tower)など数基が使用されている.重力式プラット フォームはノルウェーのフィヨルドという特殊な地形 を背景に開発され,北海に多く,人工島を含め世界に 約40 基の GBS が稼働している.Jackup 型の生産シ ステムは世界に約40 基が稼働している. 3.3 浮遊式生産システムの概要 浮遊式生産システムには,TLP,FPS,FPSO, SPAR などがある. TLP のプラットフォームはテンドン(tendon:緊 張索,あるいはレグ(leg)ともいう)と呼ばれる鋼管に より係留されており,この鋼管にはプラットフォーム の余剰浮力によって常に張力がかかり,プラットフォ ームに水平変位が発生すると,張力の水平成分により TLP が元の位置に戻るような復原力が生じ,水平面内 運動が制限されている.鋼管で緊張係留されているた め,上下揺と縦揺および横揺などの鉛直面内運動が拘 束され,生産ライザーに作用する変位が少なく,プラ ットフォーム上に坑口装置を搭載でき,坑井の掘削や 改修ができる.図2 にその概念図を示す. 生産された油の貯蔵と出荷にのみ用いられるシステ ムを浮遊式貯油出荷システム(FSO:Floating Storage and Offloading System)と呼び,貯油機能のない生 産プラットフォームと組み合わせて用いられる. 出荷はパイプラインまたはシャトルタンカー (shuttle tanker)による.生産システムと出荷シス テムには種々の組み合わせが可能であるが,浮遊式の 利点を最も生かせる組み合わせは,建設する設備を少 なくするという観点からは FPSO とシャトルタンカ ーといえる. SPAR は,TLP の動揺が小さいが貯油能力が無いと いう欠点と FPSO の貯油能力を有するが動揺が大き い(厳海域では使用が難しい)という欠点をいずれも カバーするシステムとして開発された (図3 にその概 念図を示す).しかし,原油タンクとバラストタンクを 共用することを禁ずる国際条約により,貯油能力を持 つSPAR は現存しない.生産システムの実績は比較的 新しく,1996 年,Oryx がメキシコ湾の Neptune (Viosca Knoll 826,水深 588m)に世界で初めて SPAR を設置し,97 年より生産を開始した. 2010 年までに約 280 基の FPSO と FSO,22 基の TLP,約 80 基の FPS,19 基の SPAR が生産に使われ ている.浮遊式生産システムの特徴は次の通りである.

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セミサブリグ 海底マイホールド 海底生産井 FPSO タンカー 図4 海洋生産システムの一例2) 1) 初期投資額が小さい. 2) 既存の構造物を利用できる: FPSO と FPS は,各々既存(中古)のタンカ ーとセミサブリグを改造して利用でき,建設期 間の短縮と建造コスト削減が可能なため,新造 より改造がはるかに多い. 3) 完成状態で曳航できる: 設備が完成した状態で曵航・設置できるため, 海上での設置・試運転期間が短く,生産開始ま での期間を短くできる.従って,開発資金の回 収開始時期が早い. 4) FPSO は貯油機能を有する: 離岸距離が大きい場合,シャトルタンカーは, パイプラインより経済的で,FPSO は,小規模 油田,大水深,遠隔海域で優位性を発揮できる. 3.4 海底生産システムの概要 海底生産システムも固定式・着底式生産システムに 分類されるが,ここでは特に節を設けて説明を加える. 海底生産システム(SPS)は,海底仕上げ井と海底 機器,海底に設置された生産処理設備(分離設備,計 量設備,昇圧設備,圧入設備)などから成る海底で完 結された生産システムを指す.広義には,海底仕上げ 井とフローラインやマニフォールドだけで構成される システムについても海底生産システムと称するが,こ

のシステムはSubsea Tie-back System と言うことが 最近は多い.(図4 に Subsea Tie-back System の概念 図を示す) 以下にSPS の主な設備について述べる. 3.4.1 海底仕上げ井 海底仕上げ井は,1960 年 Shell がメキシコ湾の水深 17m の West Cameron 192 で世界で初めて採用した. この坑井は400m 離れたプラットフォームにフローラ インで接続され,61 年から 65 年までの 4 年間生産を 持続した.1975 年には,英領北海の水深 81m の Argyll に世界で,初めてのFPS が採用され,海底仕上げ井か ら生産を開始した.1991 年に油田のタイバック距離が 30 マイルを超え,1996 年には 60 マイルを超えた.ま た,1992 年には世界で始めて水平サブシーツリー (horizontal tree)が設置され,2001 年には海底セパ レータの第一号基が操業を開始した.その後2008 年 になって海底処理設備の導入が本格化し始めた. 当初,海底仕上げ井の設置とメンテナンスはダイバ ーによっていたが,水深 300m 以深ではダイバー作業 ができないため,ダイバーレスのサブシーウェルと作 業用ROV が開発された.その作業はワイヤーライン を通じて行われたが,大水深でのワイヤーラインの操 作の煩雑さを解消するためワイヤーラインレスのサブ シーウェルが開発され,1991 年ブラジルの水深 721m の Marlim に適用された.1999 年にはブラジルの

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Roncador の水深1853mの海底仕上げ井からSeillean FPSO が生産を開始した.2007 年にはメキシコ湾の 水深 2440m の Independence Hub FPS に水深 2400-2700m の周辺フィールドの海底仕上げ井からの フローラインがつなぎ込まれ,生産が開始された. 2009 年にはメキシコ湾の Tobago の水深 2934m の海 底仕上げ井が水深2383m の Perdido SPAR に接続さ れ,これが現在の海底仕上げ井の最大水深記録となっ ている. 1993 年末,世界には789 坑の海底仕上げ井があり, 北海が282 坑,ブラジル沖が 221 坑,メキシコ湾が 89 坑であった.その後,大水深開発の進展とともに海 底仕上げ井は急速に数が増え,1997 年に 1000 坑目, 2002 年に 2000 坑目,2010 年に 3000 坑目が設置され た.2010 年以降も毎年 400-500 坑のペースで海底仕 上げ井の掘削・仕上げが行われると予想されている. 3.4.2 サブシータイバックシステム 坑井の温度・圧力などの測定システムは,油田管理 上非常に重要になってきているが,信号や測定は光フ ァイバーによって 200km 以上が可能で,電力供給も 高電圧にすれば可能である.また,これらの動力と信 号を送るアンビリカルのコネクターなどもそれに合わ せて開発が進められてきた.サブシー電動ポンプ,多 相流ポンプ,パイプライン保温技術も同様である.こ のような技術に支えられて,大水深・長距離のタイバ ックシステムが多数開発されている.その技術的特徴 は次の通りである. 1) 海底仕上げ井は,メキシコ湾で初めて採用さ れた後,ブラジルのカンポス海盆(Campos Basin)で実用化され,メキシコ湾でも大水深 開発の有力な手段となった.ただし,海底仕上 げ井はリグレートの高い移動式リグによって 保守しなければならないので,坑井改修が頻繁 にある場合は,経済的に不利になる. 2) 現在,プラットフォームから 10km 程度離れ た油ガス田は,大偏距掘削井で開発することが できる.サブシーウェルで開発すれば,さらに 遠距離の油ガス田も開発できるが,フローライ ンが長距離になるほど,また大水深になるほど, フローラインでの圧力低下が大きく,さらに, 温度低下によるパラフィン・ハイドレートの析 出などが発生しやすくなり,生産性を阻害する 要因が増加する. 3) 生産流体を処理できる生産設備が坑井から近 ければ,坑井と生産設備をフローラインで接続 することが可能である.しかし,坑井までの距 離が大きい場合には,昇圧ポンプが必要となる. サブシータイバックシステムの難点は,上記のよう に長距離フローラインに於ける温度と圧力の低下で, 石油の重質分が析出し,あるいはガスと水が反応して ハイドレートが生成したり,スケール,アスファルテ ンなどが堆積しフローラインを塞ぐことである.対策 (流路保全対策:flow assurance)として次の Active solution と Passive solution として,種々の方法が開 発されている.今後の氷海域開発で有力な手段となる と考えられる.

1) Active solution Electrical Heating Hot Fluids Circulation 2) Passive solution Buried Pipe Jacket Insulation Pipe-in-Pipe Insulation Vacuum Insulation Internal Insulation ガスは 100km を超えて輸送可能であるが,油は 70km が最大距離となっている. 3.4.3 海底生産システム サブシータイバックは低コストの開発手段であるが, 前項で述べたように温度低下,圧力低下による流路不 全を招きやすい.坑井元で生産流体を気液あるいは気 液液分離することができれば,水は現地で圧入するこ とが可能となり,ガスと油を個別に或いは混相で送る ことができる.この結果,長距離の海底パイプライン 輸送と流路保全が容易になる.そのために,サブシー セパレーターと水圧入ポンプさらにブースティングポ ンプや多相流ポンプが開発されてきた.ブースティン グを行うと,自噴圧力より低い圧力で生産されるため, 生産量を高く長期に維持でき,また総生産量は同じで も生産期間を短縮できるため操業費全体の削減が可能 となる. ブースティング,セパレーション,水圧入などは単 独として,あるいは組み合わせて利用されていて, 2010 年現在,多くのシステムが全世界で実用化され, あるいは計画されているが,トラブルなども発生して おり,信頼性という点ではまだ課題も残されている. セパレーターの原理は,重力分離または遠心(サイ クロン)分離で,分離する液体の種類により液液セパ レーターと気液セパレーターの2 種類がある. サブシーブースティングは,ガスと水を個別に送る とともに多相流として送るシステムも開発され,多相 流ポンプシステムが使用されている. 多相流ポンプは,海底坑口装置から産出する多相流 体(油,水,ガス)をフローラインで遠隔の陸上施設 や洋上生産設備などに昇圧輸送するための設備である. 油田の立地条件が大深度化・遠隔地化し,また,自噴

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圧力の低下した油田では坑口圧力を維持するために昇 圧が不可欠になるなど,多相流ポンプの需要は増えて いる. 多相流ポンプの主な問題点は,混合流体によるポン プの振動,摩耗,腐食,キャビテーション,および, それらの結果としてのポンプ効率の低下などである. 多相流ポンプは容積型(positive displacement, hydrostatic)と多段ターボ型(hydrodynamic)に大 別される.容積型は流体をポンプ内部にて機械的に移 動させ,多段ターボ型は回転翼を高速回転させて流体 を加速させる.各々の特徴は次の通りである. 1) 容積型 GVF(ガス容積比率)0-100%に対応できる. 構造が簡単で信頼性が高い. 流体性状の変化に自動的に追従する. 混在微少固体に強い(クリアランスを許容する オープンタイプインペラー). 2) 多段ターボ型 大容量. キャビテーションがなく,大容量吸引. 容積型に比べて蒸気・ガスなどの気体に弱い. 長寿命. Statoil,Total,BP,Eni,Shell などの石油会社が, Framo Engineering AS(ノルウェー),IFP(Institute Francais du Petrol,仏)などと開発を進めていて, 現在,多くのシステムが海上と海底の実機生産ライン に組み込まれて実用化されている. 3.5 FLNG 世界の天然ガスの確認埋蔵量は6624Tcf と推定され (石油・天然ガス開発技術のしおり2013,石油鉱業連 盟),可採年数は60 年程度で石油の 40 年程度と比べ ると大きい.また石油の確認埋蔵量の約2/3 が中東に あることと比べると,天然ガスは地域的な遍在性が少 なく(中東の埋蔵量は1/3),更に非在来の資源ポテン シャルが大きいことから,今後とも極めて有望な化石 資源と言える. 全世界の天然ガスの生産量は陸上と海洋を併せて年 間約110TCF で,海洋生産はその 1/3 ほどである.海 洋の天然ガスは地下からは既に述べてきた生産システ ムによって生産され,海底パイプラインを経て陸上施 設にて処理後,陸上の消費地に輸送されるのが一般的 である.海洋を隔てた海外輸出にはガスをLNG 化し, LNG 船で輸送されている. 離岸距離が大きいガス田ではガスをパイプラインで 陸上に輸送することは経済的に得策ではなく,海洋で LNGに変換しLNG船で消費地に輸送することが検討 されてきた.ガスをLNG に転換し,貯蔵・出荷する 設備をFLNG または LNG-FPSO と呼ぶ.ガスの転換 は LNG のみでなく,GTL (Gas to Liquid),CNG (Compressed Natural Gas),NGH (Natural Gas Hydrate)なども現在検討されている. 天然ガスは油田の随伴ガスとしても相当量が生産さ れるが,天然ガスの全生産量の 4%程度は焼却され, あるいは大気中に放散され,利用されず環境負荷とな っている.2008 年現在,年間 200Bcf 以上のフレアガ ス国は,ロシア(1400 Bcf),ナイジェリア(520 Bcf),イラン(350 Bcf),イラク(230Bcf),アルジ ェリア(200 Bcf)の 5 ヶ国である.近年環境問題よ り随伴ガスの焼却,大気放散を避けるためゼロフレア リングに取り組む方向であり,ナイジェリアでは, LPG-FPSO などを建造している. 参考文献 1) 石油鉱業便覧(2013)P833~ 石油技術協会 2) 石油・天然ガス 開発技術のしおり(2013) 石油鉱業連盟 著者紹介 姓 名 上田 善紹  1957 年生.  所属.JX 日鉱日石開発(株)  最終学歴 テキサス大学石油工学科大学院  専門分野.油層工学  工学博士(東京大学)

図 1  海洋生産システムの概念図 2)     SPS      : Subsea Production System  GBS     : Gravity Base Structure  CPT     : Compliant Piled Tower  TLP     : Tension Leg Platform  FPS     : Floating Production System

参照

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