河口域の栄養塩動態国土交通省国土技術政策総合研究所沿岸海洋研究部海洋環境研究室主任研岡田知也国土交通省国土技術政策総合研究所

(1)

河口域の栄養塩動態

国土交通省　国土技術政策総合研究所

沿岸海洋研究部　海洋環境研究室

主任研　　　岡　田　知　也

国土交通省国土技術政策総合研究所国土交通省国土技術政策総合研究所

(2)

１．私の研究のモチベーション

豊富な栄養豊富な栄養豊富な栄養豊富な栄養砂粒子の沈降干潟・浅場の形成ベントスの生息高い漁獲量高い漁獲量高い漁獲量高い漁獲量稚仔魚の育成場高い一次生産高い一次生産高い一次生産高い一次生産

本来の河口域

稚仔魚の生育場

多量の負荷多量の負荷多量の負荷多量の負荷赤潮赤潮赤潮赤潮沈降沈降沈降沈降有機物の堆積有機物の堆積有機物の堆積有機物の堆積貧酸素水塊の発生貧酸素水塊の発生貧酸素水塊の発生貧酸素水塊の発生

都市部の

河口域

劣悪な環境

(3)

２．今日の視点：内湾域の環境管理

! !

河口域（感潮域）：

! !

ここでの

『水質変化』

を考慮しないと，実質的に内湾に入ってくる負荷

の量・質を正確には判らない．

陸域

内湾

河口

N

N?

河川

(4)

３．その水質変化の要因

－河口の特徴－

! !

塩分の急変

! !

化学変化

! !

生物相の変化

! !

成層構造（塩分成層）

! !

各物質が鉛直方向に分布する

! !

鉛直循環流

! !

種々の主要時間スケール

! !

季節変動：河川流量変化

! !

朔望周期：大潮・小潮→混合形態変化

! !

潮汐周期：上げ潮，下げ潮

! !

突発的：洪水

(5)

３．その水質変化の要因

－河口の特徴－

! !

塩分の急変

! !

化学変化

! !

生物相の変化

! !

成層構造（塩分成層）

! !

各物質が鉛直方向に分布する

! !

鉛直循環流

! !

種々の主要時間スケール

! !

季節変動：河川流量変化

! !

朔望周期：大潮・小潮→混合形態変化

! !

潮汐周期：上げ潮，下げ潮

! !

突発的：洪水

(6)

化学変化

海域の主要イオンは線形増加

pHは非線形

カドニウム等の金属性化学

物質の動態はpHの影響を受

ける

（McLusky,1999)

(7)

３．その水質変化の要因

－河口の特徴－

! !

塩分の急変

! !

化学変化

! !

生物相の変化

! !

成層構造（塩分成層）

! !

各物質が鉛直方向に分布する

! !

鉛直循環流

! !

種々の主要時間スケール

! !

季節変動：河川流量変化

! !

朔望周期：大潮・小潮→混合形態変化

! !

潮汐周期：上げ潮，下げ潮

! !

突発的：洪水

＋　栄養塩

(8)

４．栄養塩について着目

!

季節変動

!

朔望周期変動

(9)

４．１　季節変化（雨季，乾季）

雨季

乾季

ほぼ0 m

3

_/day

排出

凝集

沈降（蓄積）

内部で循環

蓄積

負荷

排出量

大

小

（リッチモンド川：Eyre,1997）

通常時

洪水時

(10)

４．２　朔望周期

!

荒川　塩分縦断面分布

国土交通省国土技術政策総合研究所国土交通省国土技術政策総合研究所 -15 -10 -5 0 De p th ( m ) st.1 st.5 st.10 st.15 st.20 st.25 28 2420 32 16 12 8 ₄ 0 4 8 12 16 20 24 28 32 Salinity -15 -10 -5 0 De p th ( m ) st.1 st.5 st.10 st.15 st.20 st.25 32 28 24 20 4 8 12 16 28 24 20 0 4 8 12 16 20 24 28 32 Salinity

大潮：緩混合

小潮：弱混合

(11)

秋ヶ瀬取水堰：35 km st.32， 20 km st.22， 10 km st.12，0 km st.1 st.2 st.3 st.4 st.5 st.6 st.7 st.8 １km 東京灯標荒川さいたま東京隅田川東京港旧江戸川東京東航路東京湾秋ヶ瀬取水堰：35 km st.32， 20 km st.22， 10 km st.12，0 km st.1 st.2 st.3 st.4 st.5 st.6 st.7 st.8 １km 東京灯標荒川さいたま東京隅田川東京港旧江戸川東京東航路東京湾

(12)

小潮：60cm 大潮：140cm 15日間

45日間

(13)

!

PO

₄

-

P

の流出量の時系列変化

国土交通省国土技術政策総合研究所国土交通省国土技術政策総合研究所 time (day) -4.0x108 0.0x100 4.0x108 PO 4 -P (m g P /t id e) 30 45 60

小

大

小

中

上流端で与えたPO

₄

-P

河川→海

海→河川

Stn.7 Stn.1 （河川域上流端）河川域海域蓄積排出

(14)

!

流入負荷の変動プロセス　２

!

Conveyor Belt Process

　

(Small and

Prahl

, 2004)

大潮

小潮

浸食

リサイクル

蓄積排出

(15)

５．質の変化

!

鉛直構造

!

Chlorophyll a

(16)

!

Chl

-

a

の縦断面分布（荒川　

2001

年

8

8 月　小潮）

月　小潮）

-15 -10 -5 0 D ep th ( m ) st.1 st.5 st.10 st.15 st.20 st.25 32 28 24 20 4 8 12 16 28 24 20 0 4 8 12 16 20 24 28 32 Salinity -15 -10 -5 0 D ep th ( m ) st.1 st.5 st.10 st.15 st.20 st.25 0 5 10 15 20 25 30 35 Chl-a ( g/l)µ

Chl-a

塩分

(17)

!

荒川　

2005

年　

8

8 月

月

15

15 日

日

Chl-a

塩分

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 station -15 -10 -5 0 D ept h ( m ) 30 25 20 15 10 5 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 station -15 -10 -5 0 D ept h ( m ) 50 40 ₃₀ 20 10

(18)

!

鉛直分布　　塩分　流速

Depth (m

)

上層

下層

表層

0 10 20 30 salinity 5 4 3 2 1 0 -20 0 20

Velocity (cm/s)

-5 -4 -3 -2 -1 0

D

epth (m)

(19)

!

鉛直分布　　塩分　

Chlorophyll a

国土交通省国土技術政策総合研究所国土交通省国土技術政策総合研究所 0 10 20 30 salinity 5 4 3 2 1 0 0 10 20 30 40 50 60 5 4 3 2 1 0 Chlorophyll a De p th (m)

表層

上層

下層

(20)

!

鉛直分布　　塩分　

Chlorophyll a

　

PO4

-

P

　

フェオ色素

国土交通省国土技術政策総合研究所国土交通省国土技術政策総合研究所 5 10 15 20 25 30 Salinity (-) 5 4 3 2 1 0 D epth (m ) 0 20 40 60 80 100 120 140 Chlorophyll a (micro g/l) 5 4 3 2 1 0 D epth (m ) 0 0.04 0.08 0.12 PO₄-P(mg/l) 5 4 3 2 1 0 D e pt h (m ) 0 0.1 0.2 0.3 0.4 pheo/Chl a 5 4 3 2 1 0 D epth (m )

供給

生産

消費

分解

Salinity _{Chl-a (μｇ/l)} _PO 4-P (mｇ/l) フェオ色素/Chl-a

表層

上層

下層

50cm間隔，ポンプ採水

(21)

!

栄養塩の構成　（

2005.8.5

　観測）

国土交通省国土技術政策総合研究所国土交通省国土技術政策総合研究所 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 TP (mg/l) 5 4 3 2 1 0 De p th ( m )

0.52

0.67

0.53

0.51

0.46

0.35

0.32

0.30

0.27

0.18

0.19

0.35

0.30

0.32

0.37

0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 TN (mg/l) 5 4 3 2 1 0 De p th ( m )

0.37

0.51

0.42

0.39

0.34

0.26

0.24

0.25

0.50

0.45

0.44

0.45

0.41

0.47

0.46

0.39

0.42

Chl-a PO₄-P その他 TP Chl-a DIN その他 TN 約50%が植物プランクトンとして流入溶存態は20~30% その他（懸濁態等）は約20~30% 約40%が植物プランクトンとして流入溶存態は40~50% その他（懸濁態等）は約10~20%

(22)

６　循環

(23)

!

荒川　塩分・

Chl

-

a

・

流速　空間分布　（

2005.8.15

）

国土交通省国土技術政策総合研究所国土交通省国土技術政策総合研究所 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 -10 -5 0 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 -10 -5 0 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 -10 -5 0 塩分 Chl-a 流速塩分１０ 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 -10 -5 0 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 -10 -5 0 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 -10 -5 0 海側河口３つを重ねた図流速　0 cm/s 東京灯標河口

(24)

!

河口における

Chl

-

a

フラックスの鉛直分布（

2005.8.5

）

国土交通省国土技術政策総合研究所国土交通省国土技術政策総合研究所下流側へ　600 (*) 上流側へ　1000 (*)

-800

-400

0

400 velocity * chlorophyll-a

-10

-8

-6

-4

-2

0 D

ep

th

(

m

)

海側に流れる

Chl-aと

川側に流れる

Chl-aは

同じオーダー

(25)

!

河口域での循環

沈降・拡散

_再生産へ

10 km

(26)

!

もう少しイメージ化し，これまでのことをまとめると

河川流量

潮汐

日射・風

10km 5m

これらの境界条件の下で，

河口域

10km×5mの領域を

的確に評価しないと，

流入負荷を質・量共に正しく

評価できない．

(27)

河口域

_Chl

_-

_a

に関する研究

! ! 河川水の海洋での広がり河川水の海洋での広がり ! ! 濁度と一次生産の関係濁度と一次生産の関係 !

! AyukaiAyukaiand and WolanskiWolanski, 1997, 1997

!

! De De SeveSeve, 1993, 1993

!

! LohrenzLohrenzet al., 1990et al., 1990

!

! Robertson et al., 1993Robertson et al., 1993

!

! SchuchardtSchuchardtand and SchirmerSchirmer, 1991, 1991

!

! Turner et alTurner et al.,.,19901990

!

! 河川流量（雨季・乾季，洪水）河川流量（雨季・乾季，洪水）

!

! Eyre and Eyre and TwiggTwigg, 1997;, 1997;

!

! LegovicLegovicet al., 1994et al., 1994

!

! MuylaertMuylaertand and RaineRaine, 1990, 1990

!

! Sin et al., 1999Sin et al., 1999

!

! 大潮・小潮と河口域一次生産大潮・小潮と河口域一次生産

!

! Small and Small and PrahlPrahl, 2004, 2004

!

! LunvenLunvenet al., 2005et al., 2005

!

! 風による底質巻上げと一次生産風による底質巻上げと一次生産

!

! Verity et al.,1998Verity et al.,1998

!

! Yin et al., 2004Yin et al., 2004

!

! PoegnerPoegner et al., 2002et al., 2002

国土交通省国土技術政策総合研究所国土交通省国土技術政策総合研究所平面分布鉛直分布時間スケール：大時間スケール：小鉛直スケール：小 1990年代 2000年代

(28)

おわりに

! !

通常，湾内の水質シミュレーションでは，流入負荷を陸域の

発生源から見積もって入力する．

! !

陸域と内湾の接点に河口域（感潮域）というバッファー領域

がある．

! !

陸域・内湾と比べて領域は相対的には小さい

! !

循環機構によって，領域のわりには滞留時間は長い

! !

鉛直方向の変化が大きい

! !

境界条件の変化による変動が非常に大きい

! !

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