相続税の計算において、亡くなった方の自宅敷地を同居していた親族等が相続する場合、 その土地の課税価格を80%減とする小規模宅地等の特例という規定があります。 この特例の適用において、入口も構造も完全に別な二世帯住宅に親子が別々に居住して いる場合、その親子は同居として扱えるかという問題がありました。 平成25年度の税制改正大綱で、平成 26 年1月 1 日以後に発生する相続については、 親子が二世帯住宅の各独立部分に居住していたとしても、親と子が居住している部分に対応 する土地について、いずれも特例の対象になることが明確になりました。 この改正により、完全区分型の二世帯住宅でも、容易に敷地全体が特例の対象になるも のと考えていましたが、新たに公表された政令によると、話はそう簡単ではなさそうです。 今月のharatax通信では、二世帯住宅の敷地にかかる小規模宅地等の特例の適用につ いてご紹介します。 1. 特定居住用宅地等 お亡くなりになった方(被相続人)が住んでいた自宅の敷地を①配偶者、②被相続人 の同居親族、③配偶者および同居親族がなく、自己所有の家屋に住んでいないなど一 定の要件を満たす非同居親族が相続した場合には、その土地(以下、「特定居住用宅地 等」という。)の課税価格を一定の限度面積まで80%減とする「小規模宅地等の特例」と いう規定があります。 お亡くなりになった方の配偶者が自宅敷地を相続すれば基本的に80%減となります が、配偶者に先立たれている場合、同居していた親族または③に該当する親族が相続し ない限り、基本的に自宅敷地の評価減はありません。 2. 改正前の取扱い (1) 基本的な考え方 措置法通達 69 の 4-21 で同居親族とは相続開始の直前においてその家屋で被相 続人と共に起居していた者をいい、その建物が構造上数個の部分に区分される1棟の 建物で、被相続人がその独立部分の一に居住していた場合には、その独立部分におい て被相続人と共に起居していた者をいいます。 つまり、構造上区分された二世帯住宅で各独立部分に被相続人と相続人が別々に 居住している場合には、原則として、共に起居していたことにならず、同居親族には該 当しませんでした。 川崎市中原区小杉御殿町1-868 電話 044-271-6690 Fax044-271-6686 E-mail:[email protected] URL:http://www.haratax.jp
haratax 通信
二世帯住宅の敷地にかかる小規模宅地等の特例
2013 年 7 月 15 日 第 57 号(2) 同居として認められる場合 措置法通達 69 の 4-21 のなお書きにおいて、次の要件を満たし、被相続人の居住 用家屋に居住していた者に当たるとして申告があった場合には、同居していたものと認 めるとの規定があります。 (3) 同居として認められる場合の二世帯住宅のイメージ (4) まとめ 構造上区分された二世帯住宅で各独立部分に被相続人と相続人が別々に居住し ている場合、基本的に同居と認められませんが、(2)の要件を満たす場合のみ、同居し ているものとして小規模宅地等の特例を適用することができました。 逆にいうと、(2)の要件をすべて満たせない限りは、同居として認められません。 配偶者がいる状況で二世帯住宅の敷地を子に相続させたいなど、(2)の要件を満た せなくなる可能性があるときは、あらかじめ内階段を設け、内部で行き来できる体裁を とるなど、完全独立型の二世帯住宅に該当しないように対策を講じていました。 2F 親族が居住 (長男夫婦) 1F 被相続人が居住 (母のみ) 敷地 240㎡ 上記の場合、措置法通達なお書きのすべての要件を満たすため、 2Fに居住している親族が敷地を相続した場合には、同居親族と認め、 敷地全体が80%減となりました。 玄 関 玄 関 要件1 建物全部を被相 続人またはその 親族が所有 要件2 親族は被相続人が居住してい た独立部分以外の独立部分に 居住している 要件3 被相続人が居住していた 独立部分に配偶者または一 緒に居住していた相続人が いないこと 1. その構造上区分された数個の部分の各部分(以下「独立部分」といいます)を独立 して居住その他の用途に供することのできる建物の全部を被相続人または被相続 人の親族が所有していること 2. 小規模宅地等の適用を受ける親族は、被相続人が相続開始の直前において居住 の用に供していた独立部分以外の独立部分に居住していること 3. 被相続人の配偶者または被相続人が居住の用に供していた独立部分にともに起 居していた被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかっ たものとした相続人)がいないこと。
3. 改正後の取扱い (1) 平成25年度税制改正大綱 今年の1月24日に公表された「平成25年度税制改正大綱」の内容 (2) 租税特別措置法施行令の取扱い 本年5月31日公布の政令において具体的な整備がなされました。 (3) 建物の区分所有等に関する法律 建物区分所有に関する法律第1条(建物の区分所有) 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又 は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各 部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることがで きる。 租税特別措置法施行令第 40 条の 2 第 4 項 その居住の用に供されていた部分が被相続人の居住の用に供されていた一棟 の建物(建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物を除く。) に係るものである場合には、その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等 のうちその被相続人の親族の居住の用に供されていた部分を含む。 租税特別措置法施行令第 40 条の 2 第 10 項 特定居住用宅地等にかかる法第69条の4第3項第2号イに規定する政令で定 める部分は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める部分とす る。 ①被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が建物の区分所有等に関 する法律第1条の規定に該当する建物である場合 当該被相続人の居住の用 に供されていた部分 ②前号に掲げる場合以外の場合 被相続人又は当該被相続人の親族の居住 の用に供されていた部分 一棟の二世帯住宅で構造上区分のあるものについて、被相続人及びその親族 が各独立部分に居住していた場合には、その親族が相続又は遺贈により取得し たその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人及びその親族が居住し ていた部分に対応する部分を特例の対象とする 。 この改正は平成26年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る 相続税について適用する。
(4) まとめ 政令の規定によると、建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する区 分所有建物以外である場合には、被相続人およびその親族の居住の用に供されてい た部分に対応する土地が特定居住用宅地等の対象となりますが、区分所有建物であ る場合には、被相続人の居住の用に供されていた部分に対応する土地のみが対象に なるとされています。 4. 改正後の政令に対する疑問 税制改正大綱が公表され、税制改正後は、完全独立型の二世帯住宅であっても、細 かい要件を気にせずに敷地全体が特例の対象になるものと考えていました。 ところが今回公表された政令を確認すると、区分所有建物に該当する二世帯住宅の 場合、従来通り、被相続人の居住の用に供されていた部分のみで特定居住用宅地等に 該当するか判断するとしています。 これでは緩和措置といえないのではないかと考えていたところ、多くの税理士も疑問 に思っていたようで、専門誌に財務省に確認した記事が出ていました。 それによると、政令でいう建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する 建物とは、各独立部分について、それぞれ所有権の目的とすることができる建物をいう のではなく、実際に区分所有建物として登記しているかどうかで判断するということです。 つまり、完全独立型の二世帯住宅であっても、各独立部分を区分所有登記していな ければ、被相続人が居住していた部分とその親族が居住していた部分の両方に対応す る敷地を特例の対象とすることができるということのようです。 5. 改正後のイメージ (1) 区分所有登記をしていない場合 2F 親族が居住 (長男夫婦) 1F 被相続人が居住 (母のみ) 1,2Fに対応する敷地全体が特定居住用宅地等に該当 玄 関 玄 関 敷地 1,2Fを区分所有登 記していない場合
(2) 区分所有登記をしている場合 6. さいごに 小規模宅地等の特例の特定居住用宅地に該当するかどうかで数千万円の相続税が 変わることがあります。 区分所有登記しているかどうかで小規模宅地等の特例を適用できるかが決まるとい うことは、本来区分所有登記ができるのにしなかった場合と実際に区分所有登記をした 場合で相続税に多額の差が発生するということです。 例えば、完全独立型の二世帯住宅で、親子が半々で建築資金を出す場合、1 階は親、 2 階は子と区分登記するよりも建物の1/2ずつを共有登記しておいた方が、相続税の 計算上、有利ということになります。 もうすでに二世帯住宅を区分所有登記している人にも新しい政令を適用するのであ れば、せめて経過措置として、現行の措置法通達 69 の 4-21 のなお書きの内容を残し ておいてほしいと思います。 また、この規定は単純な二世帯住宅に限らず、1 棟の建物で複数の居住部分と賃貸 部分がある賃貸併用住宅などにも影響があると考えます。例えば 1 階から 3 階までは 賃貸用、4 階が子世帯居住、5 階が親世帯居住のマンションについて、居住部分につい て住宅ローン控除を適用するためにあえて区分所有登記をすることがあるのですが、小 規模宅地等の特例に影響があるのであれば、どちらの登記が有利か事前の検討が必 要になるかもしれません。 政令の文章からだけでは、登記の有無により区分所有建物を判定することは読み切 れませんし、措置法通達 69 の 4-21 のなお書きがどうなるかも分かりません。これらの 点は今後の通達の改正で整理されることを期待したいと思います。 今回ご紹介した二世帯住宅の改正は平成 26 年 1 月 1 日以後に発生した相続が対 象です。まだ時間がありますので、通達の改正まで見極めて、今後の対応を検討する必 要があると考えます。 2F 親族が居住 (長男夫婦) 1F 被相続人が居住 (母のみ) 被相続人が居住している1Fに対応する土地を配偶者または 1Fで同居している親族が相続する場合には特定居住用宅地等に該当 今回は2Fに居住する長男が相続するので、特例を適用できない。 玄 関 玄 関 敷地 1,2Fを区分所有登 記をしている場合