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(1)

企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資

産の回収可能性に関する適用指針」の概要

及び監査上の留意事項について

公認会計士 小 倉 加奈子

(会計制度担当常務理事、JICPA税効果会計検討プロジェクト・チーム構成員長、 ASBJ税効果会計専門委員会専門委員)

公認会計士 茂 木 哲 也

(理事、JICPA税効果会計検討プロジェクト・チーム構成員、

The Japanese Institute of Certified Public Accountants

(2)

目 次

1.回収可能性適用指針の公表について

(1) 公表の経緯

(2) 税効果会計プロジェクトの全体像

(3) 適用時期

2.回収可能性適用指針の概要

(1) 繰延税金資産の回収可能性の基本的な考え方

(2) 課税所得と一時差異等加減算前課税所得

(3) 企業の分類に応じた取扱い 総論

(4) 各分類の要件をいずれも満たさない企業の取扱い

(5) 企業の分類に応じた取扱い 分類1

(6) 企業の分類に応じた取扱い 分類2

(7) (分類2)及び(分類3)に係る分類要件の見直し

(8) (分類2)スケジューリング不能な将来減算一時差異

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(3)

目 次

2.回収可能性適用指針の概要(つづき)

(9) 企業の分類に応じた取扱い 分類3

(10) (分類3)合理的な見積可能期間に関する取扱い

(11) 企業の分類に応じた取扱い 分類4

(12) (分類4)を(分類2)又は(分類3)とする取扱い

(13) 企業の分類に応じた取扱い 分類5

(14) 従来の実務指針から踏襲しているその他の事項

(15) 適用時期等

3.監査上の留意事項

(1) 「合理的な説明」に関する留意事項

(4)

1.回収可能性適用指針の公表

について

4

(5)

1.回収可能性適用指針の公表について

(1) 公表の経緯

 平成10年10月に企業会計審議会から「税効果会計に係る会計基準」が公表され、当 該会計基準等を受けて、日本公認会計士協会(JICPA)は税効果会計に関する実務指 針等を公表した。  また、平成11年4月1日以後開始する事業年度における税効果会計の全面適用に当た り、JICPAは平成11年11月に監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の 判断に関する監査上の取扱い」(以下「監査委員会報告第66号」という。)を公表 した。  平成25年12月に基準諮問会議から、JICPAが公表している税効果会計に関する実務 指針等を企業会計基準委員会(ASBJ)に移管すべく審議を行うことが提言された。  これを受けて、ASBJは、税効果会計専門委員会を設置し、平成26年2月から審議を 開始した。  このうち監査委員会報告第66号に対する問題意識が強く聞かれることから、繰延税 金資産の回収可能性に関する指針を先行して開発することとなった。  平成27年5月26日適用指針公開草案第54号として公表され、パブリックコメントの 対応を経て、

(6)

1.回収可能性適用指針の公表について

(2) 税効果会計プロジェクトの全体像

 JICPAが公表している税効果会計に関する会計上の実務

指針及び監査上の実務指針(7本)

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 会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」 (以下「連結税効果実務指針」という。)  会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」 (以下「個別税効果実務指針」という。)  会計制度委員会報告第11号「中間財務諸表等における税効果会計に関する実務指針」 (以下「中間税効果実務指針」という。)  会計制度委員会「税効果会計に関するQ&A」(以下「税効果Q&A」という。)  監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」  監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税 効果会計の適用における監査上の取扱い」(以下「監査委員会報告第70号」とい う。)  監査・保証実務委員会実務指針第63号「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査 上の取扱い」(以下「監査・保証実務委員会実務指針第63号」という。)

(7)

1.回収可能性適用指針の公表について

(2) 税効果会計プロジェクトの全体像

現 行 税効果会計に係る会計基準 企業会計審議会  個別税効果実務指針※  連結税効果実務指針※  中間税効果実務指針  税効果Q&A※  監査委員会報告第66号 JICPA 移管後 税効果会計に係る会計基準 企業会計審議会

 回収可能性適用指針

ASBJ  企業会計基準適用指針公開草案第 55号「税効果会計に適用する税率 に関する適用指針(案)」 今回の主な 移管対象

(8)

1.回収可能性適用指針の公表について

(3) 適用時期

 平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年

度の期首から適用する。

 ただし、平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及

び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸

表から適用することができる。

(9)
(10)

2.回収可能性適用指針の概要

(1) 繰延税金資産の回収可能性の基本的な考え方

 繰延税金資産の回収可能性の判断(第6項)

将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性は、

次の(1)から(3)に基づいて、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかを

判断する。

(1) 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得

① 将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性

将来減算一時差異の解消見込年度及び繰戻・繰越期間に、一時差異等加減

算前課税所得が生じる可能性が高いと見込まれるかどうか。

② 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性

繰越期間に、一時差異等加減算前課税所得が生じる可能性が高いと見込ま

れるかどうか。

上記の判断を行うに当たっては、過去の業績や納税状況、将来の業績予測等

を総合的に勘案し、将来の一時差異等加減算前課税所得を合理的に見積る必要が

ある。

(2)タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得

(3)将来加算一時差異

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10

個別税効果実務指針における回収可能性に関する基本的な考え方及び回収可能性の水準 に関する基本的な考え方を踏襲している。

(11)

2.回収可能性適用指針の概要

(2) 課税所得と一時差異等加減算前課税所得

 回収可能性適用指針は、監査委員会報告第66号における企業の分類

に応じた取扱いの枠組みを基本的に踏襲した上で当該取扱いの一部に

ついて必要な見直しを行っている。

いずれを重視するかについて検討を行った。

 監査委員会報告第66号では、過去の事象が重視されすぎており、実

態が反映されていないのではないかとの意見が聞かれた(第64項)。

回収可能性を判断する際に

・過去の事象

・将来の事象

(12)

事象

要件を検討する目的

検討する項目

過去の事象

過去において将来減算一時差異が解消し

た時に税金負担額が軽減したかどうかに

関する実績を把握する必要があるため

課税所得

将来の事象

将来において当期末に存在する将来減算

一時差異が解消する時に税金負担額を軽

減する効果を有するかどうかを判断する

必要があるため

一時差異等加減算

前課税所得

2.回収可能性適用指針の概要

(2) 課税所得と一時差異等加減算前課税所得

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(13)

2.回収可能性適用指針の概要

(2) 課税所得と一時差異等加減算前課税所得

法人税等に係る法令の規定に基づき算定した各事業年度の所得の金額の計算上、

当該事業年度の益金の額が損金の額を超える場合におけるその超える部分の金

額をいう。

課税所得(第3項(7))

将来の事業年度における課税所得の見積額から、当該事業年度において解消す

ることが見込まれる当期末に存在する将来加算(減算)一時差異の額(及び該

当する場合は、当該事業年度において控除することが見込まれる当期末に存在

する税務上の繰越欠損金の額)を除いた額をいう。

一時差異等加減算前課税所得(第3項(9))

(14)

2.回収可能性適用指針の概要

(2)-2 将来の課税所得の見積り

回収可能性適用指針(第32項) ・第26項、第28項、第29項及び第30項に 従って企業を分類する場合、並びに第20 項、第23項、第24項及び第27項に従っ て繰延税金資産の計上額を見積る場合、 合理的な仮定に基づく業績予測によって、 将来の課税所得又は税務上の欠損金を見 積ることとなる。 ・具体的には、適切な権限を有する機関の 承認を得た業績予測の前提となった数値 を、経営環境等の企業の外部要因に関す る情報や企業が用いている内部の情報 (過去における中長期計画の達成状況、 予算やその修正資料、業績評価の基礎 データ、売上見込み、取締役会資料を含 む。)と整合的に修正し、課税所得又は 税務上の欠損金を見積る。なお、業績予 測は、中長期計画、事業計画又は予算編 成の一部等その呼称は問わない。

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監査委員会報告第66号 ・収益力に基づく課税所得の十分性を根拠 に繰延税金資産を計上する場合は、会社 によって将来の業績予測が作成されてい なければならない。 ・将来の業績予測は、事業計画や経営計画 又は予算編成の一部等その呼称は問わな いが、原則として、取締役会や常務会等 (以下「取締役会等」という。)の承認 を得たものであることが必要である。た だし、取締役会等の承認を得たもので あっても、会社の現状の収益力等を勘案 し、明らかに合理性の欠く業績予測であ ると認められる場合には、適宜その修正 を行った上で課税所得を見積ることが必 要であることに留意する。 将来の業績予測は合理的な金額であるべきとい う趣旨を変えることを意図するものではない (第97項)。

(15)

2.回収可能性適用指針の概要

(3) 企業の分類に応じた取扱い 総論

 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い

(第15項)

 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて繰延税金資産の回

収可能性を判断する際に、各分類の要件に基づき企業を(分類1)から(分

類5)に分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上

額を決定する。

(16)

2.回収可能性適用指針の概要

(4) 各分類の要件をいずれも満たさない企業の取扱い

 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い

(第16項)

 各分類の要件をいずれも満たさない企業は、過去の課税所得又は税務上

の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の

一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要

件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する。

 当該判断は、各分類の要件からの乖離度合いを定量的に検討することを

意図するものではない

(17)

2.回収可能性適用指針の概要

(5) 企業の分類に応じた取扱い 分類1

 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い

(分類1)

回収可能性適用指針における取扱い 監査委員会報告第66号における取扱い 分 類 要 件 次の要件をいずれも満たす企業 (1) 過去(3年)及び当期のすべての事業年 度において、期末における将来減算一時差異 を十分に上回る課税所得が生じている。 (2) 当期末において、近い将来に経営環境に 著しい変化が見込まれない。 期末における将来減算一時差異を十分に上回 る課税所得を毎期計上している会社等 ・期末における将来減算一時差異を十分に上 回る課税所得を毎期(当期及びおおむね過 去3年以上)計上している会社等で、その 経営環境に著しい変化がない場合 ・一般的に、繰延税金資産の全額について、 その回収可能性があると判断できる。 計 上 額 ・ 繰延税金資産の全額について回収可能性が あるものとする。

(18)

2.回収可能性適用指針の概要

(6) 企業の分類に応じた取扱い 分類2

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 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い

(分類2)

回収可能性適用指針における取扱い 監査委員会報告第66号における取扱い 分 類 要 件 次の要件をいずれも満たす企業 (1) 過去(3年)及び当期のすべての事業年度 において、臨時的な原因により生じたものを 除いた課税所得が、期末における将来減算一 時差異を下回るものの、安定的に生じている。 (2) 当期末において、近い将来に経営環境に著 しい変化が見込まれない。 (3) 過去(3年)及び当期のいずれの事業年度 においても重要な税務上の欠損金が生じてな い。 業績は安定しているが、期末における将来 減算一時差異を十分に上回るほどの課税所 得がない会社等 ・過去の業績が安定している会社等の場合、 すなわち、当期及び過去(おおむね3年 以上)連続してある程度の経常的な利益 を計上しているような会社等の場合 ・一時差異等のスケジューリングの結果に 基づき、それに係る繰延税金資産を計上 している場合には、当該繰延税金資産は 回収可能性があると判断できるものとす る。 計 上 額 ・一時差異等のスケジューリングの結果、繰延 税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は 回収可能性があるものとする。 ・なお、一定要件を満たしたスケジューリング 不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産 の回収可能性があるものとする。

(19)

2.回収可能性適用指針の概要

(7) (分類2)及び(分類3)に係る分類要件の見直し

 (分類2)及び(分類3)に係る分類の要件において、以下のとおり変更されている。

 (分類2)に係る分類の要件として示している「臨時的な原因により生じたものを除いた課税所 得が、期末における将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じている」の趣旨(第70 項) 将来において一時差異等加減算前課税所得を安定的に獲得する収益力があるか否かを 判断することを意図している。 回収可能性適用指針 臨時的な原因により生じたものを除 いた課税所得 監査委員会報告第66号 経常的な利益

(20)

2.回収可能性適用指針の概要

(7) (分類2)及び(分類3)に係る分類要件の見直し

 課税所得から「臨時的な原因により生じたもの」を除くことについて(第71項)

・過去において臨時的な原因により生じた益金及び損金は、将来において頻繁に生じること は見込まれないという推定に基づき、臨時的な原因により生じたものを除いている。 ・営業損益項目に係る益金及び損金は、通常の事業活動から生じたものであることから、原 則として「臨時的な原因により生じたもの」に該当しないと考えられる。 ・営業外損益項目に係る益金及び損金は毎期生じるものが多く、通常は「臨時的な原因によ り生じたもの」に該当しないと考えられるが、項目の性質によっては「臨時的な原因によ り生じたもの」に該当するものが含まれることがあると考えられる。 ・特別損益項目に係る益金及び損金であっても必ずしも「臨時的な原因により生じたもの」 に該当するとは限らず、企業が置かれた状況や項目の性質等を勘案し、将来において頻繁 に生じることが見込まれるかどうかを個々に項目ごとに判断することとなると考えられる 。

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(分類2)に係る分類の要件として、会計上の利益に基づく要件から課税所得に基づく要 件に変更するものの、これによりこれまで(分類2)又は(分類3)に該当していた企業の 範囲を変更しないこと、及び監査委員会報告第66号における「経常的な利益」に基づく判 断とおおむね整合的になることを意図している(第71項)。

(21)

2.回収可能性適用指針の概要

(8) (分類2)スケジューリング不能な将来減算一時差異

回収可能性適用指針(第20項及び第21項) ・ (分類2)に該当する企業においては、 一時差異等のスケジューリングの結果、 繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税 金資産は回収可能性があるものとする。 ・ 原則として、スケジューリング不能な 将来減算一時差異に係る繰延税金資産に ついて、回収可能性がないものとする。 ・ ただし、スケジューリング不能な将来 減算一時差異のうち、税務上の損金算入 時期が個別に特定できないが将来のいず れかの時点で損金算入される可能性が高 いと見込まれるものについて、当該将来 のいずれかの時点で回収できることを企 監査委員会報告第66号 スケジューリングの結果に基づき、繰延 税金資産を計上している場合には、回収 可能性があると判断できるものとする。 本取扱いは、(分類2)に該当する企業 においては、スケジューリング不能な将 来減算一時差異に係る繰延税金資産につ いて回収可能性がないものとする原則的 な定めに対して、スケジューリング不能 な将来減算一時差異を回収できることを 企業が合理的な根拠をもって説明する場 合には原則とは異なる取扱いを容認する

(22)

2.回収可能性適用指針の概要

(8) (分類2)スケジューリング不能な将来減算一時差異

<具体例>

 いわゆる政策保有株式のうち上場株式の減損に係る将来減算一時差異

(当該上場株式の売却時期の意思決定又は実施計画等が存在していないため)

税務上の損金算入時期が個別に特定できでないが将来のいずれかの時点で損金

に算入される可能性が高いと見込まれる(市場環境、保有目的、処分方針等を

勘案すると将来のいずれかの時点で売却する可能性が高いと見込む場合)もの

について、当該将来の税務上の損金算入時点における課税所得が当該スケジュ

ーリング不能一時差異の額を上回る見込みが高いことにより、繰延税金資産が

回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジ

ューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるも

のとした(第75項)。

 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異

税務上の損金算入時期を個別に特定できない場合であっても、いずれかの時点

では損金算入されるものであることから、(分類2)に該当する企業において将

来のいずれかの時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する

場合、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとす

る(第106項)。

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(23)

2.回収可能性適用指針の概要

(9) 企業の分類に応じた取扱い 分類3

 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い

(分類3)

回収可能性適用指針における取扱い 監査委員会報告第66号における取扱い 分 類 要 件 次の要件をいずれも満たす企業(第26項(2)又は (3)の要件を満たす場合を除く。) (1) 過去(3年)及び当期において、臨時的な 原因により生じたものを除いた課税所得(負の 値となる場合も含む)が大きく増減している。 (2) 過去(3年)及び当期のいずれの事業年度 においても重要な税務上の欠損金が生じていな い。 業績が不安定であり、期末における将来減 算一時差異を十分に上回るほどの課税所得 がない会社等 ・過去の業績が不安定な会社等、すなわち、 過去の経常的な損益が大きく増減してい るような会社等の場合 ・将来の合理的な見積可能期間(おおむね 5年)内の課税所得の見積額を限度とし て、当該期間内の一時差異等のスケ ジューリングの結果に基づき、それに係 る繰延税金資産を計上している場合には、 計 ・ 将来の合理的な見積可能期間(おおむね5 年)以内のスケジューリングの結果、繰延税金 資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可 能性があるものとする。

(24)

2.回収可能性適用指針の概要

(10) (分類3)合理的な見積可能期間に関する取扱い

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監査委員会報告第66号 「おおむね5年内」の課税所得の見積り を限度として、繰延税金資産の回収可能 性があると判断できるものとする。

 (分類3)に該当する企業における将来の一時差異等加減算前課税所得の合理

的な見積可能期間に関する取扱い

回収可能性適用指針(第23項及び第24項) ・ 将来の合理的な見積可能期間(おおむね 5年)以内のスケジューリングの結果、繰 延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資 産は回収可能性があるものとする。 ・ 上記にかかわらず、臨時的な原因により 生じたものを除いた課税所得が大きく増減 している原因、中長期計画、過去における 中長期計画の達成状況、過去(3年)及び 当期の課税所得の推移等を勘案して、5年 を超える見積可能期間においてスケジュー リングされた一時差異等に係る繰延税金資 産が回収可能であることを企業が合理的な 根拠をもって説明する場合、当該繰延税金 資産は回収可能性があるものとする。 将来の合理的な見積可能期間について 一律に5年を限度とすることは、企業 の実態を反映しない可能性があると考 えられる(第84項)。

(25)

2.回収可能性適用指針の概要

(10) (分類3)合理的な見積可能期間に関する取扱い

<具体例>

 製品の特性により需要変動が長期にわたり予測できる場合

需要変動の推移から課税所得が大きく増減している原因を合理的な根拠をも

って説明できる可能性があり、当期に策定した中長期計画等に基づき、5年を

超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税

金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは、

当該繰延税金資産は回収可能性があるものと考えられる(第85項)。

 長期契約が新たに締結されたことにより、長期的かつ安定的な収益が計

上されることが明確になる場合

長期契約の内容を勘案し、5年を超える見積可能期間においてスケジューリ

ングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理

的な根拠をもって説明するときは、当該繰延税金資産は回収可能性があるもの

(26)

2.回収可能性適用指針の概要

(11) 企業の分類に応じた取扱い 分類4

 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い

(分類4):その1

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回収可能性適用指針における取扱い 監査委員会報告第66号における取扱い 分 類 要 件 次のいずれかの要件を満たし、かつ、翌期にお いて一時差異等加減算前課税所得が生じること が見込まれる企業 (1) 過去(3年)又は当期において、重要な 税務上の欠損金が生じている。 (2) 過去(3年)において、重要な税務上の 欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。 (3) 当期末において、重要な税務上の欠損金 の繰越期限切れが見込まれる。 重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社等 ・期末において重要な税務上の繰越欠損金が存在 する会社、過去(おおむね3年以内)に重要な 税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実 があった会社、又は当期末において重要な税 務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる会 社の場合 ・原則として、翌期に課税所得の発生が確実に見 込まれる場合で、かつ、その範囲内で翌期の 一時差異等のスケジューリングの結果に基づ き、それに係る繰延税金資産を計上している 場合には、当該繰延税金資産は回収可能性が あると判断できるものとする。 ・また、過去の経常的な利益水準を大きく上回る 将来減算一時差異が期末に存在する会社につ いて、翌期末において重要な税務上の繰越欠 損金の発生が見込まれる場合には、期末にお いて重要な税務上の繰越欠損金が存在する会 社と同様に取り扱うこととする。 計 上 額 ・ 翌期の一時差異等加減算前課税所得の見積 額に基づいて、翌期の一時差異等のスケ ジューリングの結果、繰延税金資産を見積る 場合、当該繰延税金資産は回収可能性がある ものとする。

(27)

2.回収可能性適用指針の概要

(11) 企業の分類に応じた取扱い 分類4

 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い

(分類4):その2

回収可能性適用指針における取扱い 監査委員会報告第66号における取扱い (分類2)又は(分類3)に該当するものとして 取り扱う場合 ・ただし、重要な税務上の繰越欠損金や過去の経常的な利益水準を大きく上回る将来減 算一時差異が、例えば、事業のリストラク チャリングや法令等の改正などによる非経 常的な特別の原因により発生したものであ り、それを除けば課税所得を毎期計上して いる会社の場合には、将来の合理的な見積 可能期間(おおむね5年)内の課税所得の 見積額を限度として、当該期間内の一時差 異等のスケジューリングの結果に基づき、 それに係る繰延税金資産を計上している場 合には、当該繰延税金資産は回収可能性が 第27項にかかわらず、第26項の分類の要件を満た す企業においては、重要な税務上の欠損金が生じ た原因、中長期計画、過去における中長期計画の 達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税 務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差 異等加減算前課税所得を見積る場合、 ・ 将来において5年超にわたり一時差異等加減 算前課税所得が安定的に生じることを企業が合 理的な根拠をもって説明するときは、(分類

(28)

2.回収可能性適用指針の概要

(12) (分類4)を(分類2)又は(分類3)とする取扱い

 (分類4)に係る分類の要件を満たす企業を(分類2)又は(分類3)とする取扱い

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28 回収可能性適用指針 (第27項、第28項及び第29項) ・ 翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延 税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能 性があるものとする。 ・ 重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、 過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及 び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案 して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場 合、 - 将来において5年超にわたり一時差異等加減算前 課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根 拠をもって説明するとき ⇒ (分類2)に該当するものとして取り扱い、第 20項及び第21項の定めに従って繰延税金資産を見 積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるも のとする。 - 将来においておおむね3年から5年程度は一時差 異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的 な根拠をもって説明するとき ⇒ (分類3)に該当するものとして取り扱い、第 23項の定めに従って繰延税金資産を見積る場合、 当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。 監査委員会報告第66号 ・翌期に課税所得の発生が確実に見込まれる場 合で、かつ、その範囲内で繰延税金資産を計 上している場合には、その繰延税金資産は回 収可能性があると判断できるものとする。 ・ただし、重要な税務上の繰越欠損金等が、例 えば、事業のリストラクチャリングや法令等 の改正などによる非経常的な特別の原因によ り発生したものである場合、「おおむね5年 内」の課税所得の見積額を限度として繰延税 金資産の回収可能瀬があると判断できる。 (分類4)に係る分類の要件を満たす企業が (分類3)に該当するものとして取り扱われる 場合、第24項の定め((分類3)に該当する企 業の5年超の見積可能期間に関する規定)は適 用されない(第89項)。

(29)

2.回収可能性適用指針の概要

(12) (分類4)を(分類2)又は(分類3)とする取扱い

<具体例>

 (分類2)に該当するものとして取り扱われる例

過去において(分類2)に該当していた企業が、当期において災害による

損失により重要な税務上の欠損金が生じる見込みであることから(分類4)

に係る分類の要件を満たすものの、将来の一時差異等加減算前課税所得を見

積もった場合に、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得

が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明できるとき(第91

項)

 (分類3)に該当するものとして取り扱われる例

過去において業績の悪化に伴い重要な税務上の欠損金が生じており(分類

(分類4)に係る要件を満たす企業が(分類3)に該当するものとして取り 扱われるケースに比べて多くはない。

(30)

2.回収可能性適用指針の概要

(13) 企業の分類に応じた取扱い 分類5

 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い

(分類5)

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回収可能性適用指針における取扱い 監査委員会報告第66号における取扱い 分 類 要 件 次の要件をいずれも満たす企業 (1) 過去(3年)及び当期のすべての事業年度 において、重要な税務上の欠損金が生じてい る。 (2) 翌期においても重要な税務上の欠損金が生 じることが見込まれる。 過去連続して重要な税務上の欠損金を計上し ている会社等 ・過去(おおむね3年以上)連続して重要な 税務上の欠損金を計上している会社で、か つ、当期も重要な税務上の欠損金の計上が 見込まれる会社の場合 ・原則として、将来減算一時差異及び税務上 の繰越欠損金等に係る繰延税金資産の回収 可能性はないものと判断する。 ・また、債務超過の状況にある会社や資本の 欠損の状況が長期にわたっている会社で、 かつ、短期間に当該状況の解消が見込まれ ない場合には、これと同様に取り扱うもの とする。 計 上 額 ・原則として、繰延税金資産の回収可能性はな いものとする。

(31)

2.回収可能性適用指針の概要

(14) 従来の実務指針から踏襲しているその他の事項

 下記については、従来の実務指針の内容を基本的に踏襲している。

 タックス・プランニングの実現可能性に関する取扱い(第33項及び第34項)

 解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異(第35項)

 固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異の取扱い(第36項)

 役員退職慰労引当金に係る将来の一時差異の取扱い(第37項)

 その他有価証券の評価差額に係る一時差異の取扱い(第38項から第42項)

 退職給付に係る負債に関する一時差異の取扱い(第43項から第45項)

 繰延ヘッジ損益に係る一時差異の取扱い(第46項)

(32)

2.回収可能性適用指針の概要

(15) 適用時期等

(3月決算会社の場合)

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強 制 適 用

早 期 適 用

平成28年4月1日以後開始する 連結会計年度及び事業年度の期 首から適用する。 平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度 末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から早期適用できる。 年度の期首に遡って適用する。 平成28年 4月1日 平成28年 3月31日 平成27年 4月1日 公表日 (平成27年 12月28日)

(33)

2.回収可能性適用指針の概要

(15) 適用時期等

 適用初年度の取扱い(第49項(3))

本適用指針の適用初年度の期首において、以下の項目を適用することに

より、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改

正に伴う会計方針の変更として取り扱う。

①(分類2)に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算

一時差異に係る繰延税金資産について回収できることを企業が合理的な

根拠をもって説明する場合には回収可能性があるとする取扱い(第21

項ただし書き)

②(分類3)に該当する企業において、おおむね5年を明らかに超える見

積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金

資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合

には回収可能性があるとする取扱い(第24項)

(34)

2.回収可能性適用指針の概要

(15) 適用時期等

 適用初年度の取扱い(公開草案からの変更)

<公開草案からの変更理由(第122項)>

 会計方針の変更として取り扱う公開草案の提案に対し、以下の意見が寄せ

られた。

 これに対応するため、「監査委員会報告第66号の定めの内容を実質的に変

更しているもの」を特定し、これまでの会計処理と異なることとなる場合

には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととした

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公開草案第49項(3)

・ 本適用指針の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計

方針の変更として取り扱う。

監査上の取扱いが会計上の指針に移管されるに当たって、本適用指針の各々の 定めが、監査委員会報告第66号における取扱いをより明確に定めたものなのか、 内容を実質的に変更しているものなのかを詳細に検討することが困難であり、 各企業により利益剰余金等に加減する範囲が異なる可能性があることについて 懸念を示す。

(35)

2.回収可能性適用指針の概要

(15) 適用時期等

 適用初年度の取扱い(第49項(4)及び(5))

 適用初年度の期首時点で新たな会計方針を適用した場合の繰延税金資産及

び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と

の差額を、適用初年度の期首の利益剰余金等に加減する(その他の包括利

益累計額に計上する場合又は直接純資産の部の評価・換算差額等に計上す

る場合は別途の取扱い。)。

 会計方針の変更による影響額の注記事項は以下のとおり。

・ 適用初年度の期首の繰延税金資産に対する影響額

・ 適用初年度の期首の利益剰余金に対する影響額

(36)

2.回収可能性適用指針の概要

(15) 適用時期等

 早期適用(第49項(2))

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(3月決算会社の場合)

 平成28年3月期の年度末から適用できる。

 適用初年度の期首の影響額を利益剰余金等に加減する。

 翌年度の四半期財務諸表等においては、比較情報として開示される平成28

年3月期の各四半期財務諸表等について、本適用指針を当該年度の期首に

遡って適用する。

 早期適用する年度の年度末において、第49項(3)①~③に示されている項目

の適用を検討する際には、当該年度の期首における当該項目の状況も合わせ

て整合性がとれるように検討を行うこととなる(第124項)。

(37)
(38)

3.監査上の留意事項

(1) 「合理的な説明」に関する留意事項

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論点1:「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」に関する監査上の留意点

 回収可能性適用指針では、下記に関する「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」 の規定(以下「合理的な説明規定」という。)が設けられている。 ①(分類2)に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異 ②(分類3)に該当する企業における5年を超える合理的な見積可能期間に関する取扱い ③(分類4)に係る分類の要件を満たす企業が、(分類2)又は(分類3)に該当する場合の取扱い  本規定は、企業が合理的な根拠をもって説明する場合には原則とは異なる取扱いを容認 することで、繰延税金資産の計上額が企業の実態をより適切に反映したものとなること を意図したものであり、いわゆる「反証規定」である。  「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」において、監査人は、企業の説明が合理 的か否かを総合的に判断し、十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならない。

監査における留意点

(39)

3.監査上の留意事項

(2) 企業の分類に応じた回収可能性の判断に関する留意事項

論点2:各分類の要件のいずれも満たさない場合の取扱い

 監査委員会報告第66号では、繰延税金資産の回収可能性については、多くの場合、将 来年度の会社の収益力に基づく課税所得によって判断することになるものの、将来年 度の収益力を客観的に判断することは実務上困難な場合が多いことから、会社の過去 の業績等の状況を主たる判断基準として、将来年度の課税所得の見積額による繰延税 金資産の回収可能性を判断する場合の指針(例示区分に応じた取扱い)が示されてい たが、例示区分を付すことが必須ということではなかった。  一方、回収可能性適用指針では、各分類の要件をいずれも満たさない企業は、過去の 課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、 将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件から

監査における留意点

(40)

3.監査上の留意事項

(2) 企業の分類に応じた回収可能性の判断に関する留意事項

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論点3:新規に設立した企業に関する企業分類の考え方

 新規に設立した企業については、過去の実績の課税所得で判断できず、いずれの要件 にも該当しないことから、回収可能性適用指針第16項を適用し、各企業分類からの乖 離度合いが最も小さいと判断されるものに分類することとなる。  乖離度合いの判断は、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異 等加減算前課税所得の見込み等を勘案して判断することとなるが、当該判断は、各分 類の要件から乖離度合いを定量的に検討することを意図するものではないとされてい る(回収可能性適用指針第65項)。

監査における留意点

(41)

3.監査上の留意事項

(2)企業の分類に応じた回収可能性の判断に関する留意事項

論点4:(分類4)の要件を満たす企業を(分類2)又は(分類3)に該当するものとして

取り扱う場合の留意事項

 監査委員会報告第66号では、「重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社等」であっ ても、重要な税務上の繰越欠損金等が非経常的な特別の原因により発生したものであ り、それを除けば課税所得を毎期計上している会社の場合には、おおむね5年内の課 税所得を限度として、スケジューリングの結果に基づき、繰延税金資産を計上できる とされていた。  一方、回収可能性適用指針では、(分類4)の要件を満たす企業であっても、その原 因が臨時的なものである等、重要な税務上の欠損金が生じた原因や中長期計画等を勘 案して、将来の一時差異等加減算前課税所得の十分性を企業が合理的な根拠をもって 説明する場合は、状況に応じて、(分類2)又は(分類3)に該当するものとして取 り扱うことができるとされている。

監査における留意点

(42)

3.監査上の留意事項

(3)繰延税金資産の計上額に関する留意事項

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論点5:(分類1)に該当する企業における繰延税金資産の計上額の取扱いについて

 監査委員会報告第66号では、例示区分1号の企業においては、「スケジューリング不能 な将来減算一時差異についても、回収可能性があると判断できるものとする。」とされ ており、実務上、一部のスケジューリング不能な将来減算一時差異について繰延税金資 産を計上しない実務が行われることもあった。  一方、回収可能性適用指針では、「繰延税金資産の全額について回収可能性があるもの とする。」とされている。  回収可能性適用指針における企業の分類に応じた取扱いは、企業を五つに分類した上で、 当該分類に応じた繰延税金資産の計上額を定めており、個々の企業の裁量で繰延税金資 産の計上額が決定できるとすると、恣意的な操作を可能にし、企業間の比較可能性が著 しく阻害される可能性がある。  したがって、各分類の要件に該当した場合、その該当した分類において定められている 計上額に関する規定に従って、繰延税金資産を計上することとなる

 なお、(分類2)におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異の取扱いについて も同様である

監査における留意点

(43)

3.監査上の留意事項

(3)繰延税金資産の計上額に関する留意事項

論点6:(分類2)に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異

の取扱いに関する留意事項①

 監査委員会報告第66号では、(分類2)に該当する企業においては、スケジューリング不能 な将来減算一時差異について、一律に繰延税金資産を計上することができないとする取扱い が示されていた。  一方、回収可能性適用指針においては、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、 税務上の損金の算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される 可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを企 業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に 係る繰延税金資産は回収可能性があるものするとされている(回収可能性適用指針第21項)。 (例:役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異など)  (分類2)に該当する企業は、長期的に安定して一時差異等加減算前課税所得が生じること

監査における留意点

(44)

3.監査上の留意事項

(3)繰延税金資産の計上額に関する留意事項

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論点6:(分類2)に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異

の取扱いに関する留意事項②

 回収可能性適用指針では、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金 資産の回収可能性について、「ただし、期末において税務上の損金の算入時期が明確 ではない将来減算一時差異のうち、例えば、貸倒引当金等のように、将来発生が見込 まれる損失を見積もったものであるが、その損失の発生時期を個別に特定し、スケ ジューリングすることが実務上困難なものは、過去の税務上の損金の算入実績に将来 の合理的な予測を加味した方法等によりスケジューリングが行われている限り、スケ ジューリング不能な一時差異とは取り扱わない。」(回収可能性適用指針第13項ただ し書き)とされている。  当該定めは、監査委員会報告第66号の定めを踏襲したものであり、見積りやスケ ジューリングが合理的であるべきという趣旨を変えることを意図するものではない (回収可能性適用指針第62項)。  また、回収可能性適用指針第21項ただし書きにおいて取り扱うスケジューリング不能 な将来減算一時差異には、第13項ただし書きを適用してスケジューリング不能な将来 減算一時差異とは取り扱わないこととしているものは含まれないことに留意が必要で ある(回収可能性適用指針第76項)。

監査における留意点

(45)

3.監査上の留意事項

(3)繰延税金資産の計上額に関する留意事項

論点7:(分類3)に該当する企業における合理的な見積可能期間に関する留意事項

 回収可能性適用指針における(分類3)に該当する企業においては、将来の合理的な 見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度として、繰延税金資産を 計上できるという、監査委員会報告第66号の定めの内容を基本的に踏襲している。  一方で、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、 中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得 の推移等を勘案して、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一 時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説 明する場合、繰延税金資産は回収可能性があるものとされている。  一般的に、企業が中長期計画を策定する場合、3年から5年の期間で見積もっている

監査における留意点

(46)

3.監査上の留意事項

(4) 判断の継続性に関する留意事項

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論点8:合理的な説明規定の継続性に関する監査上の留意事項

 合理的な説明規定の適用は、いわゆる反証規定であるため、合理的な説明ができる状 況にあっても、企業が当該規定を適用しないことを選択することも可能であり、企業 が当該規定を適用する時期によっては、恣意的な適用になる可能性が想定される。  企業会計原則において、会計処理の原則及び手続は、毎期継続して適用しなければな らないとされており、企業が、合理的な説明規定を適用するに当たっても、当該会計 処理の継続性に関する検討が必要になると考えられる。  前年度においては合理的な説明規定を適用しなかったが、当年度において企業が合理 的な説明規定を適用する場合、監査人は、例えば、当年度において当該規定を適用す ると判断した理由(状況の変化)を併せて確認することが必要になると考えられる。

監査における留意点

(47)

3.監査上の留意事項

(5) 適用初年度に関する留意事項

論点9:適用初年度における留意事項

 回収可能性適用指針の適用初年度の期首において、次の項目を適用することにより、 これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う変更とし て取り扱うこととされている。 ①(分類2)に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異 ②(分類3)に該当する企業における合理的な見積可能期間に関する取扱い ③(分類4)に係る分類の要件を満たす企業が、(分類2)に該当する場合の取扱い  また、これらの項目を適用したことによる、適用初年度の期首の影響額は、利益剰余 金等に加減されることとなる。  これらの項目については、「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」の取扱いで あるため、適用初年度の期首時点において、「企業が合理的な根拠をもって説明す る」状況にあるか否かの判断が必要となる。

監査における留意点

(48)

3.監査上の留意事項

(5) 適用初年度に関する留意事項

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論点10:早期適用における取扱い

 3月決算会社の場合、平成28年3月期の年度末から早期適用できるとされており、早 期適用初年度の期首の影響額を利益剰余金等に加減するとされている。  また、翌年度(平成29年3月期)の四半期財務諸表においては、比較情報として開示 される平成28年3月期の四半期財務諸表について、期首に遡って適用するとされてい る。  早期適用を行った場合の適用初年度においては、適用初年度の期首が既に経過してい るため、期首における影響額を把握するために必要な情報の入手とその評価が難しい ケースがあると考えられる。したがって、監査人は慎重に判断を行う必要がある。  例えば、企業が早期適用年度の期首においては、「合理的な根拠をもって説明する」 状況にないと説明しているにもかかわらず、早期適用年度の期末においては、「合理 的な根拠をもって説明する場合」において、企業における期首の判断と期末の判断が 異なる理由(例えば、どのような状況の変化によって「合理的な根拠をもった説明」 が可能となったかなど)を慎重に評価する必要があると考えられる(論点8参照) 。

監査における留意点

(49)

3.監査上の留意事項

(5) 適用初年度に関する留意事項

論点11:JICPAから公表されている繰延税金資産の回収可能性に関する監査上の取

扱いとの関係について

 回収可能性適用指針は、監査委員会報告第66号、監査委員会報告第70号等の内容を基 本的に引き継いだ上で、必要と考えられる見直しを行ったものである。  監査委員会報告第66号及び監査委員会報告第70号は、平成28年1月19日付けで廃止 されている点に留意する必要がある。  なお、平成28年4月1日前に開始する連結会計年度及び事業年度の連結財務諸表及び 個別財務諸表については、回収可能性適用指針を早期適用する場合を除き、従前のと おり両委員会報告を適用することとなる。

監査における留意点

(50)

ご清聴ありがとうございました

参照

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