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平成13年11月20日

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平成20年8月26日

株式会社 東京証券取引所グループ

定例記者会見資料

1. 相場・売買データ授受の高速化を実現するコロケーションサービスのご提供について

2. 東証上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する投資家向け意見募集に対して寄せ

られた意見の概要について

3. M&Aをとりまく現状に関する投資家意見の概要

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平成20年8月26日 各 位 株式会社東京証券取引所 相場・売買データ授受の高速化を実現するコロケーションサービスのご提供について 株式会社東京証券取引所は、投資者及び取引参加者のより一層の利便性の向上を図る観 点から、コロケーションサービスを提供することを、本日開催の取締役会にて決定いたし ました。 昨今の金融工学及び IT 技術の進展による取引システムの高速化といった世界の証券市場 を巡る環境変化に対応するため、来年度稼働予定の新オプション取引システム(Tdex+シス テム)及び次世代売買システム(arrowhead)では、処理能力が現行システムと比較して格 段に高まりレスポンスが高速化されるとともに、これら新システムを支える新統合ネット ワーク(arrownet)によって、高速かつ大容量の通信も可能となります。 さらに、取引参加者等の自動発注機能を持つアプリケーションの普及に伴い、取引参加 者等の機器を取引所のデータセンター等に設置し、物理的な距離を短縮させることにより 更なるスピードを求めるコロケーションサービスへのニーズが高まっております。このた め、Tdex+システムの稼働に合わせてコロケーションサービスを提供することとし、サービ ス導入に向けた社内プロジェクトチームを立ち上げ、集中的に検討を行ってまいりました。 対象となるシステムは、Tdex+システム及び arrowhead は稼働当初からとし、派生売買 システムについては、arrownet と接続後を予定しております。 今回の決定にあわせて、コロケーションサービスに係る営業推進及びサービス企画を担 当するコロケーションサービス推進統括グループを IT サービス部に 9 月 1 日付けで設置い たします。コロケーションサービスにつきましては、今後、IT サービス部コロケーション サービス推進統括グループを中心に、営業推進及びサービス内容の更なる検討を行い、本 年 11 月下旬を目途に、詳細なサービスガイドラインを公表していく予定です。 なお、arrownet のアクセスポイント(AP)におきましても、広範な市場関係者からの要 望に応じたサービスの提供に向け、AP のデータセンター運営を行っているエヌ・ティ・テ ィ・コミュニケーションズ株式会社(NTT Communications)と協業し検討を行ってまい ります。

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【コロケーションサービス概要】 項 目 内 容 サービス ・ データセンター内における取引参加者向けコロケーションサ ービス 対象システム ・ Tdex+、arrowhead、派生(先物)、相場報道システム 供給電源 ・ ラック当たり 200V 30A 及び 100V 20A(各 2 系統)を予定 ・ 追加電源もオプションサービスとして提供予定 空調能力 ・ ラック当たり最大 4KVA ラック仕様 ・ W700xD1100xH2200(47U) 貸出単位 ・ ラック単位を予定 運用管理 ・ 東証は、設置機器等のシステム運用・監視業務は行わない ・ ユーザーのセンター内への立入は、セキュリティーの観点か ら禁止する予定 サービスデスク ・ 24 時間 365 日提供のサービスデスクを設置 ○コロケーション(Co-Location): 取引参加者等の機器(自動発注サーバー等)と売買システムや相場報道システム等と の物理的距離を極小化することで、レイテンシー(ネットワーク機器におけるデータ 授受の遅延)の低下を実現させるため、取引所のデータセンター又はネットワークの アクセスポイント(AP)に近接する場所に設置し接続することです。売買システムや 相場報道システムが高速化して 10 ミリセカンド(千分の 1 秒)以下で処理できるなど 世界中の証券市場のシステムは超高速化しているため、「いかに速く相場情報を得て、 いかに速く発注するか」が極めて重要視されています。この速度を究極的に速める方 法として、コロケーションが主に米国証券市場でここ数年急速に発達し、複雑なプロ グラムを組んで大量に多数の銘柄を高速で売買する証券会社、自己売買専門業者、ヘ ッジファンド等は、こうしたプログラムのアプリケーションを搭載した機器を取引所 データセンター内にコロケーションしています。 ○Tdex+システム: 2009 年 7 月を目途にオプション市場の機能強化・流動性向上のため導入する新オプシ ョン取引システムの呼称です。 対象取引は東証で扱う全てのオプション取引(有価証券オプション取引、指数オプシ ョン取引、国債証券先物オプション取引)です。 ○arrowhead: 2009 年後半の稼働を目途に開発を進めている、高速性・信頼性・拡張性を兼ね備えた、 次世代売買システムの呼称です。 対象取引は全ての現物にかかるオークション取引(株式・CB など)です。

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○arrownet: Tdex+及び arrowhead を支える最先端技術を利用した新統合ネットワークの呼称です。 arrownet では、高速かつ大容量の通信を実現すると伴に、災害時においてもバックア ップサイトでの業務が継続できるよう堅牢なネットワークとなります。 更に、海外の機関との相互接続等を視野に入れるなど、拡張性及び柔軟性を兼ね備えた ネットワークです。 arrownet へ接続する利用者は、首都圏内に設置される2箇所のアクセスポイント(AP) を経由し接続することとなります。 以 上 【本件に関するお問合せ先】 (株)東京証券取引所グループ 渉外広報部(報道G) 二木 03-3665-1214(直)

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Tokyo Stock Exchange will Launch Co-Location Service

Tokyo, August 26, 2008 -- Tokyo Stock Exchange, Inc. (TSE) has announced its decision today to introduce the “TSE Co-Location Service” at its data center. This service is designed to further enhance market convenience for investors and trading participants. The TSE will introduce 2 new trading systems as a response to changes in the development of financial engineering and information technology, as well as the increasing speed of trading systems. The new systems, the Tdex+ new options trading platform, and arrowhead, next generation cash equity matching engine, will boast higher capacity, throughput, and offer extremely rapid response time. The TSE will also launch arrownet, a new integrated ring network with 2 access points connected to the data center, which will enable extraordinarily fast and high volume data communication.

As applications with automated order placing functions have become popular for market users like trading participants, the demand for such co-location service has also increased. To meet this demand, the TSE created an internal project team to conduct intensive discussions and examinations into launching a co-location service at the data center on the same day as the inauguration of the Tdex+ system

The co-location service will be available when the Tdex+ and arrownet are introduced, and then for the derivatives trading system following connections with arrownet.

In accordance with this decision, the TSE will set up a “Co-Location Service Promotion Group” on September 1, 2008 in the IT Services Department. This group will be responsible for sales promotion and service planning related to the co-location service. The Co-Location Service Promotion Group and other related departments within the TSE will conduct further examinations of the detailed contents of the co-location service at the TSE data center. The TSE then plans to publish this information in the “Guideline for Co-Location Service” by late November, 2008.

In addition, in order to meet the broad demands of market users, the TSE has been in discussions with NTT Communications Corporation about providing customer connectivity service at the TSE arrownet access point. NTT Communications Corporation will thus operate data center at the TSE arrownet access point, which is planned to be launched in early 2009.

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<<Outline of Co-Location Service>>

Items Contents Service ・ Co-Location Service for TSE trading participants with rack

cabinets provided by TSE at TSE data center.

Trading System ・ Tdex+, arrowhead, derivatives (futures), market data distribution system

Power Supply ・ 2 x 200V-30A and 2 x 100V-20A per cabinet. (planned) ・ Optional additional power (planned)

Cooling ・ 4KVA maximum per cabinet (planned) Specification of Cabinet ・ W700 x D1100 x H2200 (47U)

Rental Unit of Cabinet ・ 1 cabinet (planned)

Operation ・ TSE will not conduct any operation nor supervision of devices of customers.

・ Physical access by customers at TSE data ceter will be prohibited for its security purpose.

Service Desk ・ 24/7 Service Desk will be available. (Note) Any content described herewith is subject to change.

(Terms)

“Co-Location” is a service that minimizes the latency between trading participants’ and other market users’ devices like automated order placement servers and systems of trading venues such as exchanges, by allowing market users to install their devices at data centers and/or network access points of trading venues to minimize the physical distance between data centers and/or network access points and market users’ devices.

“Tdex+” is the nickname of the TSE's new options trading platform, which is planned to be launched in July 2009 to strengthen system functions and enhance the liquidity of the TSE options market. All option products listed on the TSE such as securities options, index options, and options on Japanese Government Bond (JGB) futures will be traded on the Tdex+.

arrowhead is the nickname of the next generation trading system, which has been developed and is planned to be launched in late 2009 with faster response time, greater reliability, and more flexible expandability.

arrownet is the nickname of the new integrated network, which will utilize state-of-the-art technology to support the Tdex+ and arrowhead platforms., arrownet will be a robust network, achieving extraordinarily fast and high volume data communication and enabling operations to continue at TSE back-up site in case of disaster. Furthermore, the TSE believes that this arrownet network will offer greater expandability and flexibility regarding inter-networking with overseas institutions.

<<Contact>> IT Planning, Tokyo Stock Exchange Group, Inc. Tel: +81-3-3666-1361 Email: colo@tse.or.jp

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東証上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する投資家向け意見募集に対して 寄せられた意見の概要について 平成20年8月26日 株式会社東京証券取引所 当取引所では、本年5月27日に「2008年度上場制度整備の対応について」を 公表し、今年度の上場制度整備の重点課題として「上場会社のコーポレート・ガバナ ンス向上に向けた環境整備」を掲げており、その検討の進め方として、問題点や課題 の洗い出しを早急に行ったうえで総合的な施策を取りまとめていくこととしておりま す。そこで、その問題点や課題の洗い出しのため、当取引所では、平成20年6月2 6日から平成20年7月25日までの間、投資家向けの意見募集を行いました。本件 意見募集では、「2008年度上場制度整備の対応について」において問題として例 示した事項について項目ごとに意見を伺う(別紙aからd)とともに、買収防衛策を 含め東証上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する問題意識を併せて伺いました (別紙eからj)。 これらに対しまして、国内外の投資家から合計41件(海外機関投資家30件、国 内機関投資家6件、国内個人投資家5件)の意見が寄せられました。寄せられた意見 の概要につきましては別紙をご参照ください。 当取引所では、本件意見募集、及び、並行して実施した投資家に対するヒアリング において投資家の皆様からいただいた意見を参考にしながら、上場会社のコーポレー ト・ガバナンス向上に向けた環境整備を進めてまいりますので引き続きご協力お願い いたします。 以上

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別紙:寄せられた意見の概要 ◎:同様の意見が10件以上だったもの ○:同様の意見が4∼9件だったもの ●:同様の意見が3件以下だったもの a 大幅な希釈化を伴う新株式等の発行に関して寄せられた意見 【当該テーマに関する現状の評価】 ○差別的な希釈化が発生するような新株の発行は適切ではない。 ○大幅な希釈化を伴う新株の発行については支持できない。 ●日本には授権資本制度が存在するが、授権資本の枠が大きすぎる。 【当該テーマに関して求められる施策】 ◎全ての、又は、発行済み株式数の一定の割合を超えるものなど一定の新株の発 行について、株主総会の決議によるべき。 ◎全ての、又は、発行済み株式数の一定の割合を超えるものなど一定の新株の発 行の際には、希釈化から適切な保護を受けるため、既存株主に新株優先引受権 (Pre-emptive right)が与えられるべき。 ◎会社は、新株の発行により資金調達するのであれば、株式や社債など資金調達 手段ごとのコストの違いを踏まえて、新株の発行による資金調達をする合理的 な理由を株主に対して説明しなければならない。 ●株主は会社の支配権の変更など会社の長期的な成功に関わる基本的な決定に参 加することができるべき。 ●授権資本の枠については、毎年、株主総会で再決議されるべき。 ●既存株主権を大幅に希釈化する新株式の発行等については、既存株主の経済的 利益等が侵害される懸念があることから、既存株主、特に少数株主の権利を尊重 するようなエクイティ・ファイナンスに関するルールの策定が望まれる。 b 不透明な割当先に対する第三者割当てによる新株式等の発行に関して寄せられた 意見 【当該テーマに関する現状の評価】 ○ 希釈化を伴うことに加えて、発行者と第三者の間の情報公開がほとんどない点 が重要である。これが第三者に有利な発行条件で行われるならば、さらに株主 価値を破壊する。 ●透明性は資本市場の効率性において基本的な要件であるが、日本の市場は様々 な面で透明性が低い。 ● 情報開示の有無というよりは、不透明な割当先に対する第三者割当てによる新 株式等の発行が、株主の事前の同意や、適切で独立した監視が行われずに、実 行されることが問題だ。

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● 現在の判例を見る限り、株主の利益とならない経営陣の保身のための企業防衛 的第三者割当であっても、日本では会社法による差止めは実質的に不可能であ る。会社法上の適法性判断にとどまらず、もう一歩踏み込んだ「市場ルール」 が定められ、市場原理が働くような制度の設定および世界的に通用する価値観 が広く産業界に浸透することが期待される。 ● 不透明な割当先に対する第三者割当という形態による新株発行が起こり得ると いう事実が、日本のマーケットに対する既存投資家、潜在的投資家の信頼を傷 つける。 【当該テーマに関して求められる施策】 (透明性の確保) ◎ 少数株主を守るため、会社はすべての第三者割当(規模が一定以上のもの)に ついて、大幅な希釈化を伴う新株発行が行われたこと、この発行がどのように 既存株主の利益になるのかなど、既存株主への詳細な情報公開があるべき。 ●透明性の改善については、ACGA の日本のコーポレート・ガバナンス白書の提 案を参照するべき。 (第三者割当による新株式等の発行の制限) ○ 既存株主に新株優先引受権を与えるべき。 ●1年間に株主割当以外の方法により行われる新株発行の数量とディスカウント 率について制限がかけられることが望ましい。 ● 株主総会で年間の株式発行枠設定したときは、それを上回って発行した場合の 説明の手続きなどを確保するべき。 ● 株主に対する事前の同意を求めるべき。NYSE では、発行済み株式数の20% を超える新株発行については、株主投票を要求している。日本でも、このよう なルールが少数株主の利益を保護するために求められている。 ● 割当先の第三者が大規模な株式の取得を行うのであれば、適正価格による TOB を行うべき。 ● 株主割当以外の新株発行について年次総会での株主の承認を要件とすべき。 ● 適切で、経営陣から独立した監視が必要。新株を関係者に私募で発行する際に は、独立非執行取締役又は監査役によって承認されるべき。 ● 不透明な割当先に対する第三者割当による新株式等の発行については、取締役 会と経営陣が意思決定をするべき。 (その他の施策) ○ 上場会社の資金調達の柔軟性を確保しつつ、同時に少数株主の権利を保護する ため希釈化に対するルールを作るべき。 ● ルール作りにおいて、ACGA の日本のコーポレート・ガバナンス白書における 提案を参照すべき。

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c 株式持合いに関して寄せられた意見 【当該テーマに関する現状の評価】 ◎資本が非効率的に利用され、投資家のリターンを低下させる。 ◎ 株主総会における投票結果を歪め、株式持合いの相手方以外の少数株主の権利 を侵害するおそれがある。 ◎ 株式持合いは、説明責任を妨げ、質の低い経営陣の保身を助ける。 ○ 株式持合いを「議決権の取引」に使用し、買収防衛目的に利用するのは問題。 ● 一般の株主は、事業を行う公開会社に資金を提供しているのであって、有価証 券投資をする会社に資金を提供しているのではない。生産的でない株式持合い に会社の資本を拘束するのでなく、余剰資金は、事業に再投資するか、株主が 再投資できるよう、自社株買い又は配当により株主に還元することが望ましい。 ● 相手方が自社の株式を保有しているかどうかによって、会社が相手方とのビジ ネスを行うかどうかを決めるべきではない。 ● もし株式持合いがビジネスに有益であるとするなら、投資に対するリターンは 株式持合いをしている会社の方が高くあるべきだが、証拠が全くない。 ● 他社の株式を保有することについての株主への説明が不十分。 ● 株式持合いは、株式持合いの相手方の株式を持つという不必要な市場リスクに 株主をさらすことになる。したがって、1 つの株式における株価の下落が不必 要に他の上場会社の株価に影響することになる。 ● 株式持合いは、取引関係を強固にする目的に有効に働くこともありうる。 ● 株式持合い行為そのものに対する反対論が最近多く見られるが、株式持合いを 通じて得られる業務上の利益も勘案する必要があり、原理的観点からのみ反対 することは、いささか短絡的。 ● 株式持合いのような行為が規制されない市場全体に対する投資家の不信感、投 資意欲の低下につながる恐れがある。 【当該テーマに関して求められる施策】 ○一定以上の規模又は全ての株式持合いに関する開示義務を強化する。 ○株式持合いの相手方との取引に関して、株主の承認を求めるなど規制を強化す る。 ●事業目的に役に立たない株式の持合いを防ぐため、株主に対する信認義務を理 解している独立取締役の必要性と適格性が明確にされるべき。 ● 法改正を要するかもしれないが、経営者の保身目的での持合い行為に歯止めを かけるため、株式持合い分の議決権の行使を否認する。 ● 新たな株式の持合いが計画されるなら、それが会社の利益になるかどうかを判 断するため、株主の投票によって決定されるべき。大株主/支配株主が株式持 合いの当事者である場合には、彼らはその承認の決議から排除されるべき。

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● 多くの取引所で、上場に際して、株式持合いを排除して計算する高いレベルの 浮動株基準を設定している。これは、市場参加者がより正確に投資先の会社の 所有構造を理解することを確実にする。 ● 買収防衛策などの重要な案件を株式持合いに参加していない独立株主の投票に よること、少数株主が公平に取り扱われることを確実にするガバナンス構造の 導入などを通じて、株式持合いの削減に取り組むべき。 ●取締役が自分たちだけで新たな株式持合いを作り出すことができないように、 大規模な新株の発行について株主の承認を必要とする規制を導入するべき。 【その他】 ● 株式持合いについては、明確な定義がなく、そのことが上場会社にとっても株 主にとっても混乱のもととなっている。 ● 株式持合いに関する我々の見方は ACGA の日本のコーポレート・ガバナンス白 書に反映されている。 d 多くの株主の株主権を奪うような株式併合に関して寄せられた意見 【当該テーマに関する現状の評価】 ○ 多くの少数株主の権利を事実上取り除くために株式併合をするのは、まったく 受け入れられない。 ○ 株式併合を使って、小さな単元未満株主を排除し、効果的に少数の大株主の手 に会社の所有権を集中させることは、少数株主に対する経営権の不公平な悪用 である。 ● 一般的な株式併合は、株価基準に係る上場資格の維持など、会社にとって合法 的な戦略的な選択肢となる可能性があり、必ずしも既存株主の株主権を奪うこ とにはならないと考えている。また、上場会社は、同業他社の株価水準と合わ せるためや、特定の機関投資家の投資ガイドラインに規定するレベルの株価に 持ってくるために株式併合を行うことも考えられる。 【当該テーマに関して求められる施策】 ○ 多くの株主の議決権を奪うような株式併合は、特に例外的な状況でのみ使用さ れるべき。株主に対して明確な説明をし、株主の承認を求めることが重要。 ○ どんな株式併合も、すべての株主が公平に取り扱われることを確保された方法 で行われるべき。少数株主が搾取される、又は、他の株主と比較して高い経済 的損失のリスクにさらされることから守られるようなルールであるべき。 ● 大株主/支配株主が、その持分に比例せずに資本構成の変更から利益を得るの であれば、彼らはその承認決議から排除されるべき。 ● 多くの株主の議決権を奪うような株式併合については、取締役会と経営陣が意 思決定をするべき。

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● 会社は、株式併合の目的だけでなく、会社の所有権に対する潜在的な影響につ いても、株式併合が株主の投票にかけられる前に、情報公開するべき。 e 買収防衛策の導入に関して寄せられた意見 【当該テーマに関する現状の評価】 ● 利害関係者の利益を侵害するものであり、すべての買収防衛策に強く反対。 ● 買収防衛策の激増に対して懸念している。これらの買収防衛策は、株主の利益 を守るために使われているのではなく、一般株主の犠牲のもとに経営陣を守る ために使われている。 ● 買収、開示に関する法令、規制は更新され、新しい TOB ルールなど会社の M&A のための公平な仕組みは作られた。買収防衛策は企業価値を守るために 必要ではなく、株主の利益にも合致しない。 【買収防衛策導入の目的】 ◎ 買収防衛策の目的は、成果を出していない取締役会・経営陣を保護することで はない。 ○ 買収防衛の目的は株主が可能な限り良い価格を得ることができるようにするこ とである。 ● 買収防衛策は、買収が適正な価格(すなわち買収者が利益を上げることができ る価格で、かつ、買収に応じた既存の株主が適切に補償されるような価格)で 行われるように入念に設計されなければならない。 【買収防衛策導入の手続き】 ◎ 買収防衛策の導入にあたっては、「株主価値向上に資するのか」「取締役の保 身目的ではない仕組みか」等について株主に対して徹底的な説明がされるべき。 ◎買収防衛策の導入にあたっては、株主の承認を得るものとするべき。 ○ 株主が、毎年の定時株主総会において、買収防衛策について見直すことができ るようにするべき。 ● 手続きの公正さを確保するため、取締役の構成は、独立社外取締役が過半数を 占めるべき。 ● 買収防衛は、株主の利益に寄与する機能を果たすことができるが、潜在的な濫 用を防ぐための適切な対策が必要だ。独立取締役が取締役会にいることは基本 的な対策である。 ● 企業価値研究会による報告書において、株主総会決議に諮ることで防衛策導入 に係る株主のお墨付きを得たことにすること及び第三者委員会にその発動に係 る判断を「丸投げ」することが取締役の「責任逃れ」である旨が指摘されては いるが、法的拘束力の無い報告書による指摘事項を上場会社が実務面でどの様 に反映するかについてはかなりの温度差があることが予想されるため、会社法 上の適法性判断からもう一歩踏み込んだ「市場ルール」が定められ、市場原理

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が働くような制度の設定および広く産業界に世界的に通用する価値観の浸透が 期待される。 ● 不公平で適切でない買収防衛策の採用は、妨げられるか、あるいは、少なくと もやる気をなくさせるようにするために、経済産業省のガイドラインが修正さ れることが不可欠である。 【買収防衛策の内容】 ● 買収防衛において防衛対象とするのは「濫用的買収者」に限られるべき。 ● 買収防衛策の濫用を防ぐため適格オファー条項、サンセット条項や、株主によ る承認などを含む構造的な対策も必要だ。 ● 買収防衛策については、トリガー条項の必要性を含め、ISS の提案に沿ったも のにするべき。 【その他】 ○ 買収の提案は、公開企業の株主になされるものであり、それゆえに意思決定を するのは株主であって、どんな買収提案についても本質的に利益相反関係にあ る経営陣ではなく株主が最終的な決定権を持つべき。 ○ 買収提案に対する最高の防御は、株主に支持されるような経営管理と資本管理 に基づく高い株価である。 ●企業価値研究会の新たな報告書などを踏まえ、経営者の保身につながるような 方策については、東証として制限してほしい。 ● 買収防衛策は、完全に経営陣から独立した委員会によって厳格にコントロール されたものであるべき。 ● 最終的には、会社の買収防衛策が一般株主を守っているのか、経営陣の保身に 寄与し、株主の権利を奪っているのかについては、どれだけ公平に当該買収防 衛策が組成され、導入されたのかに、大いに依存する。多くの国において、買 収防衛策が本来的に不公平であるとされていることは、特筆に値する。 ● 企業価値研究会の報告書は、東証によって何らかの形で推薦されるべき。 ● 「買収防衛策」という呼称をやめ、「株式の大規模買付時の対応手続」に変更 する。 ● 買収防衛策の適切性を考えるときは、TOB が会社のパフォーマンスを向上する のに重要な役割を果たすことが出来るということを認めることが重要だ。TOB が起こる可能性があることだけでも、実際に経営に規律をもたらし、経営陣に 株主価値の向上に焦点を当てさせることによって、企業価値の向上に実際に役 立っている。さらに、戦略的買収者による買収は、株主共通の利益を増大させ るような価値のあるシナジーをもたらす可能性があり、単にさらなる経営陣の 個人的な利益のために買収防衛策によって毀損されるべきでない。

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● 買収者に対して金員を交付することを伴う買収防衛策は、短期的な利益の追求 のため特定の株主に破壊的な活動に関与することを奨励することになりかねな いため、そのような買収防衛策を支持することは株主の利益にならない。 f 買収防衛策の発動に関して寄せられた意見 【当該テーマに関する現状の評価】 ○ パフォーマンスの悪い取締役会と経営陣を守ろうとするような買収防衛策の発 動は、どちらも等しく一般株主に対して悪用されるおそれがあるため、反対。 ●利害関係者の利益を侵害するものであるため、すべての買収防衛策に強く反対。 ● 買収防衛は株主の利益のために行使されるべきで、支配権市場の効率的な運用 を妨げるようなものであってはならない。 ● 経営陣による買収提案の検討期間の引き延ばしは、買収者による買収の実行・ 完了を著しく遅延させ、実質的に防衛策の発動と同様の効果を持ち、ひいては 買収に賛成しているかもしれない一部または多くの株主の株式売却の機会を奪 っており適切でない。 【買収防衛策発動の手続き】 (買収防衛策発動の決定者) ◎ 買収防衛策の発動の是非、方法について決定する者は、経営陣及び関係会社か ら完全に独立したものであるべき。 ○ 独立/特別委員会委員の「独立性」要件について、客観的な定義が提供される べき。 ● 独立取締役は、買収防衛のような経営陣、会社、株主の利益が分離するような 場面で、重要な役割を果たしうる。買収防衛策発動の決定の公正さを確保する ため、社外取締役が取締役会で過半数を占めるべき。 ● 適切な株主の代表が、買収提案の評価をしなければならない。 ● 買収防衛策の発動の是非の決定者は、関係するビジネスの経験を相当程度積ん だ者であるべき。 ● TOB が開始されるとき、独立取締役から成る委員会が、提案を評価して、勧告 するべき。ただし、委員会が、ポイズンピルを実行することを勧めたとしても、 買収防衛策を発動するには、3分の2の株主が承認しなければならないとすべ き。 ● 独立/特別委員会のメンバーは株主の利益に対して責任を持ち、必要であれば株 主と対話するべき。 ● 一般的に、株主に代わって行動するとされる独立/特別委員会は、買収防衛策 の発動に関する取締役会の決定を覆す権限を持っておらず、独立/特別委員会 が選任されても株主の利益の保護には十分ではない。

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● 独立/特別委員会を構成する委員は究極的には既存経営者によって選任される ため、委員会の独立性に対する疑念は払拭できない。さらに、経営や投資に関 する実務経験や知識を十分有していない委員が選任されるケースもあり、委員 会の質が問われる場合もある。そこで、東京証券取引所が主体となって構成さ れる、名実共に独立性の高い委員会を設立することを提言する。 ● 主たる会社(株主)に対する信認義務、法律的な責任が執行取締役にかかって いるときや、社外取締役が経営陣から「独立」していない場合、及び、日本に おいて、社外取締役の価値が一般に理解されていないような状況のなかでは、 買収防衛策を発動する際に、社外取締役を主たる意思決定者とする利点につい ては、懐疑的である。 ● 株式持合いが増えてきていることを踏まえると、株式持合いをしている多数株 主が買収防衛策の発動を承認しても、発動は完全には正当化できない。 ● 取締役は、あらゆる投資の意思決定の実行について、既存株主に責任を持たな ければならない。正式で、透明性の高い手続きが必要だ。 ●経産省と法務省による買収防衛に関するガイドラインと金融商品取引法におけ る TOB ルールは、買収防衛策が導入されている上場会社に対し買収提案があっ た場合における買収防衛策の公平な適用を確保するために、当該上場会社の取 締役会の役割と責任を明確にするよう修正されるべき。 (買収防衛策発動の決定に係る情報公開) ● 買収防衛策の発動のプロセスにおいては、全ての株主に対する高いレベルの説 明責任と透明性が要求されるべき。とりわけ、買収防衛策の発動条件と、買収 防衛策の発動がなぜ、またどのように長期的に株主の利益にとってベストなの かについて説明を望む。敵対的買収の際は、株主は、既存経営陣と買収者の両 方から会社の将来計画に関して、適切な情報を受領する機会が与えられるべき。 ● 防衛策発動のためには、グリーンメーラーでない場合、上場会社が考えるみず からの理論株価が TOB 価格を上回ることを説明して開示するべき。 ● 買収提案が株主共同の利益を毀損するかという実質判断に基づく発動が安易に 行われることを防ぐため、より厳格な開示要請(例えば、経営者が考える安定 株主比率を自主申告させる等)を求めることなどを期待。 (買収者に対する金員交付) ● 買収者に対して金員を交付して行うような買収防衛策の発動は、企業からの多 額の資金流出を招くこととなるなど、一般株主の利益が損なわれるおそれがあ ることから発動されるべきではない。 【その他】 ● 買収防衛策の発動を株主総会に確認するタイプが増えており、防衛策を導入す る企業は安定株主工作を行う誘惑にかられる恐れが大きいと思われる。こうし た持合いなどの安定株主が支配する資本市場になることはガバナンス上の健全

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性が損なわれ日本企業のダイナミズムを殺ぐことになると資本市場関係者とし て強く懸念している。 g 取締役の機能・役割に関して寄せられた意見 【取締役に求められる機能・役割】 ◎ 取締役の役割は、究極的には、株主の利益を代表して、中長期的な戦略を策定 し、戦略を実行する経営陣を監視し、会社の成長・企業価値の最大化を図るこ とであり、株主に対する信認義務を負っている。 ●取締役の責任は、細かくは、a)実行可能な長期的な経営戦略を持っていること、 b)会社がその戦略を達成するための体制を有していること、c)CEO を雇い評価 すること、d)適切な財務慣習や内部統制が導入され、財務数値が正確に会社の 業績を反映していること、e)会社の長期的な目標を達成することに向けてやる 気を促すような報酬制度が導入されていること、以上のことを確実にすること である。 ● 債権者や顧客、ビジネスパートナー、従業員、地域社会などの他の利害関係者 の利益も取締役にとって重要であるが、しかし、これらは、会社の長期的な成 功における株主の利益を代表する基本的な役割に関連するので、株主の利益と 一体をなすものである。 【取締役の機能・役割に関する現状の評価】 ● 監査役設置会社においては、社外取締役を選任する義務はなく、自主的に独立 社外取締役を選任するのは自由であるがそれをしている会社は比較的少ないこ ととあいまって、経営陣にほぼ完全な裁量を与え、経営上の意思決定に関して 効果的で、独立した監視がほとんど行われない状況となっている。 ● 独立した非執行取締役あるいは社外取締役の人数が、他の先進国の市場と比べ て日本ではきわめて少ない。 ● 日本の社外取締役の本当の独立性について疑問を感じることが多い。例えば、 任命された社外取締役が、実はメインバンクや、親会社、他のグループ会社や ビジネスパートナーたちの関係者であることが多い。 ●日本の現状は、取締役の利己的な行動に関して、特に買収防衛の状況において、 効果的なチェックアンドバランスを提供するのにまだ十分でない。 【会社の機関設計】 ● 取締役会は、報酬、任命、監査の3つの重要な委員会を設置し、全ての委員会 が独立取締役によって最低でも過半数を占められるべきであり、それぞれの委 員会の委員長は会社から独立しているべき。 ● 全ての会社は、独立取締役により構成される報酬委員会と監査委員会を取締役 会とは別に設けるべき。

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● 会社が監査役設置会社にとどまることを選択したときにも、取締役会の独立性 についての必要条件を適用されるべき。 【取締役会の構成】 ◎ 一定の社外取締役を選任するべき。あるいは、社外取締役の選任を推奨するべ き。 ○ 取締役会の役割が経営陣の監視とされるのに、経営陣が取締役会の多数を占め るのは間違っている。取締役会は、経営陣で構成されるのではなく、必要なと きに政策や経営陣の変更を行うことができるよう独立取締役が多数を占めるべ き。 ○ 社外取締役のより厳しい「独立性」の定義を制定するべき。 ○ Comply or explain 形式で上場会社に対して社外取締役の任命を義務付けるよう な上場ルールの制定をするべき。 ● 取締役会には、会社が行っているビジネスをよく知っている会社出身の取締役 も選任されるべき。 ●取締役会の議長は、CEO は別の者で、執行権限のない社外取締役が務めるべき。 ● OECD のコーポレート・ガバナンス原則に、取締役会は会社の問題について客 観的な独立した判断をすることができるようにするべきであり、また取締役会 の独立性には、通常、取締役会の十分な数のメンバーがマネジメントから独立 していることを必要とすると、はっきり記載されている。 ● 経営陣が会社に重要な量の持分を持っているか、または大株主によって推薦さ れる場合のみ、経営陣は取締役会の一員であることができる。 ● 取締役会に関する法的な枠組みも慣習も日本では他の国と異なっているのは理 解しているが、全ての株主に代わって行われる、外部からの独立した監視が必 要であると強く信じている。 ● 取締役会の人数に上限を設けるべき。 ● 社外取締役に財務の専門家を配備するべき。 ● 社外取締役による監視機能に期待している。 ● 海外で活躍する会社は、外国人の取締役を任命することを考えるべき。 【社外取締役の適格性】 ● 独立/社外取締役は、必ずしも上場会社の所属する業界の専門知識を持ってい る必要はない。 ● 関連するビジネスの経験を持っていること。 ● 取締役会での議論において建設的な役割を果たせるだけの十分なビジネスある いは類似の見識を持っているべき。 ● 適切で多様な能力、知識、経験を持っていること。 ● 重要な関係会社と結びつきがないこと。 ● 経営者から独立していること。

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●有能な執行取締役であった者が、有能な「非執行取締役」であるとは限らない。 ● 独立取締役は会社の外部者であるべきで、過去にも現在にも会社と関係があっ たことのない人であるべき。 【社外取締役に求められる機能・役割】 ● 独立社外取締役の存在は、適切な外部の見方を促進することによって、資本活 用の効率性の改善や、会社の競争力の強化、リスクマネジメントにおける精通 といった点において役に立つ。社外取締役は、独立した精神と外部の見方を取 締役会における議論にもたらすだけでなく、真に独立した取締役の存在は、経 営陣の利己主義と会社の戦略の不十分な実行に対する重要な防御策をも提供す る。 ●真に独立した取締役が取締役会にいることは、取締役会が株主に対する信認義 務に対して敏感でいるということを助ける。 ● 社外取締役の積極的な取締役会への出席が望まれる。 【その他】 ● 潜在的に経営陣と利害の対立が起こる領域を回避し、取締役会の独立した監視 機能を守るため、経営陣による干渉や承認なく外部コンサルタントを雇う権限 を含め、取締役会の独立した仕事をサポートする内部の仕組みが必要。 ● 取締役関連のガイドランと独立取締役の定義についてはACGAのガイドライ ンに同意する。 ● 年次報告書において、独立取締役の役割をはっきりと説明して、自社のコーポ レート・ガバナンスシステムの構造について説明するべき。情報公開は、関連 する委員会の詳細、何回取締役会と委員会が会合を開いたかについての情報を 含むべき。 ● 取締役の選任に際して、取締役候補者の資質が判断できるような資料を望む。 ● 社外取締役を任命していない会社は、任命する動機が与えられなければ、自主 的には社外取締役を受け入れることは難しい。 h 監査役の機能・役割に関して寄せられた意見 【監査役に求められる機能・役割】 ○ 伝統的な監査役制度を採用している会社においては、社外監査役が一般的に委 員会設置会社で社外取締役が果たす監視機能を果たすことが期待されている。 【監査役の機能・役割に関する現状の評価】 ○ 内部監査役は、社外取締役と同じ役割、責任を果たすものではなく、広くコー ポレート・ガバナンスの件について明確な知識を持ってはおらず、また彼らは 取締役会での投票権もない。したがって、彼らは独立取締役の代替にはなりえ ない。

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○ 実際には、監査役の機能はむしろ限定的で、法令遵守と会計監査の問題に焦点 を絞っている。 ● 日本の監査役の役割は米国と全く異なっている。 取締役会が日本では独立して いないので、監査役は株主が持っている唯一の防護壁。 しかし、監査役は多く の場合、経営陣から完全に独立しているというわけではない。 さらに、退職一 時金を監査役に支払う習慣があるため、株主よりも経営陣のために行動すると いう疑念を払拭できない。 【会社の機関設計】 ○ 上場会社は、国際標準である委員会設置会社に移行すべき。 ● 会社が監査役設置会社にとどまることを選ぶなら、独立監査役が会社の効果的 な監視にとって鍵になる。その場合は、社外監査役の人数や、改選頻度など、 経営に対する効果的な監視ができるような体制を整えるべき。 【監査役の適格性要件】 ○ 経営陣から独立しているべき。 ● 社外監査役の設置は義務付けられているが、これを一歩進め会社と利害関係が ない独立監査役の義務付けをすべき。独立監査役の定義については会社法の社 外監査役の定義とは逆に独立性を有しない場合の考え方を示すべき。 ● 独立取締役によって、ファイナンスと会計の経験に基づき選任されるべき。 ● 社外監査役の独立性を強化した基準を設定されるべき。 ● 監査役について、独立性の要件が実際に守られているかどうか疑問。 ● 監査役の独立性が強化されることを望む。監査役の独立性に関する経営陣の関 与を減らすための方策が採られるべき。監査役の任命についても、株主の投票 が義務化されるべき。 【その他】 ● 監査役設置会社においても真に独立した取締役を1名あるいは2名任命するこ とが必要。 ● 監査役の報告者は監査委員会(もし存在するなら)であるべきで、経営陣では ないべき。究極的には、監査役は経営陣でなく株主のために雇用されているの であって、それゆえ株主は監査役の任命、再任に際して、毎年の年次株主総会 で、投票する機会を与えられるべき。 ● 私は監査役の機能・役割については、ACGA ガイドラインに賛成する。 ● 社外監査役の社外取締役への変更を推奨する。 i 機関投資家の議決権行使に関して寄せられた意見 【株主総会の開催日程の集中】

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◎株主が効果的に投票することを制限する株主総会の集中は緩和されるべき。株 主総会の集中は、物理的に株主が総会に出席することを妨げるだけでなく、機 関投資家の議決権行使の意欲をそぎ、議決権行使の意思決定の質を下げる。 ○ 株主総会の集中を緩和するため、株主総会の招集時期について、基準日から3 か月以内とされている規制について、4か月、5か月とするなど緩和するべき。 【株主総会に関する株主への情報提供】 ◎ 株主総会の招集通知、議決権行使のための参考書面などの情報をより早期(3 週間前、4週間前)に開示すべき。 ○ 会社は、株主総会の招集通知、議決権行使のための参考書面などの情報を英語 で作成するべき。 ● 株主総会の招集通知、議決権行使のための参考書面などの情報をより充実させ るべき。 ● 株主総会招集通知書を PDF 形式で閲覧できるようにする。 【株主総会における議決権行使】 ◎ 株主総会の議決結果について、賛成、反対、棄権の総投票数を含め、全てが開 示されるべき。 ○電子的に議決権行使を可能とし、海外投資家の議決権行使を容易にするために、 上場会社の ICJ(機関投資家向け議決権電子行使プラットフォーム)への登録を義 務付ける又は促進する。 ○ 株主総会における議決においては、全ての決議案において投票による議決を行 うべき。 ● 株主総会への出席者に対する規制を緩和し、仲介業者が合法的な代理人として 認識されることが必要。 ● 機関投資家が受託責任を果たしているかに関する情報を提供するため、機関投 資家による議決権行使記録の公開を義務化するべき。 ●株主は、異なる議案について、別々に投票する権利を持つべきであり、会社は、 異なる議案をまとめて採決してはならない。 ● 株主は、秘密投票が出来るべき。 ● 株主は一人あるいは複数の取締役候補に累積的な数の票を投票できるべき。累 積投票が使用できることで、株主は自分の利益が取締役会において代表される 確率を上げるよう投票することができる。 ● ノミニーアカウントを通じて実質的に株式を保有する海外の投資家は、基準日 において株式を保有している限り、議決権を行使し、株主総会に出席する権利 が与えられるべき。 ● 機関投資家は議決権行使を行うべき。機関投資家は、自らの事業の利益を基に 投票行動をしてはならない。

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j その他の意見 【取締役報酬の開示】 ○ 経営陣・取締役の報酬の方針や関連する仕組みについて、株主に対して、透明 性の高い方法で、適時に開示されるべき。コーポレート・ガバナンス報告書の 情報は有益だが、報酬制度とインセンティブスキームに関する情報はまだ網羅 的でない。 ● 取締役・監査役の個別報酬の開示、取締役の経歴等の開示、各取締役の取締役 会出席率の開示が求められる。 ● 報酬の仕組みは、経営陣・取締役の利害を会社のパフォーマンス(理想的には 株主へのリターン)に連動させ、株主の利害と一致させる仕組みとならなけれ ばならない。 【子会社上場】 ● 子会社上場は、親会社と上場子会社の少数株主との利害衝突の可能性があるこ とから、望ましくない。 ● 上場子会社のガバナンスを強化するために、上場子会社の社外取締役に関する 厳しい独立性の要件が導入されるべき。親会社出身者が、上場子会社の社外取 締役及び社外監査役として選任されないことが望ましい。 ●原則として、子会社上場は、規則等によって厳しく制限されることが望ましい。 既存の上場会社について、利益相反が発生しないように適切な資本政策をとる よう取引所が指導することが望まれる。 【支配株主との取引】 ● 少数株主保護の観点から、次の3つの段階の規則が、関連会社取引に関して考 えられる。(1)上場会社に対して関連会社取引の公平性を担保するためにと っている手段を開示させる。(2)関連会社取引の公平性を担保するための手 段 に つ い て 、 ベ ス ト プ ラ ク テ ィ ス を 定 め 、 上 場 会 社 に 対 し て 、 Comply or explain を求める。(3)上場会社に対して、親会社、兄弟会社あるいは、支配 株主との重要な取引に関して、特別委員会の承認を取るよう求める。 【資本コストの意識の必要性】 ● 上場企業は、資本コストを意識して経営をするべき。事業に投資され魅力的な リターンを生み出すのでなければ、株主資本は内部留保されるべきではない。 余剰資本については、株主に払い戻して、株主がその資金を効率的にほかの投 資に再配分できるようにするべき。 ● コーポレート・ガバナンス報告書などにおいて、経済的利益(Economic Profit)、 株主資本コストに関する認識、株主還元策についての開示を義務付ける。 【株主との対話の促進】 ●上場会社の取締役は、一般株主が取締役会に何を期待しているかを知るために、 株主と積極的に対話をするべき。

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● 英語による適時開示の普及には進展も見られるが、一部の会社はまだ英語で開 示をしていない。英語による開示を全ての上場会社に対して義務化すべき。 【MBO、親会社・支配株主による買収】 ● MBO、親会社又は支配株主による買収においては、株主と取締役・経営陣の利 害が対立するおそれがあるため、開示の強化に加えてこれらの取引に関連する コーポレート・ガバナンスを強化すべき。 ●投資家と少数株主の保護の観点から、MBO や支配株主による買収の際の利害 対立について、関連会社取引と同様、(1)上場会社に対して当該取引の公平 性を担保するためにとっている手段を開示させる。(2)当該取引の公平性を 担保するための手段について、ベストプラクティスを定め、上場会社に対して、 Comply or explain を求める。(3)上場会社に対して、親会社、兄弟会社ある いは、支配株主との重要な資本取引に関して、特別委員会の承認を取るよう求 める等の方策を採用するべき。 ● MBO 価格は公開時価格を下回ってはならない。 【1株1議決権の原則】 ● 我々は、全ての株主に等しい議決権が与えられるような株式の構成を好む。 我々は、少ないあるいは多い議決権のある株式の発行については、支持しない。 会社による議決権について均等でない資本構成の資金調達にも賛成しない。 ●ひとつのグループの株主が、不均衡に議決権を有することを許すような構造は、 少数の株主が個人的な利益のために多数の少数株主の意思を踏みにじる可能性 を作り出す。そのような二重構造は合法的であれば、会社はそのような構造、 状況、及びそれが他の株主に与える影響の方法と程度について開示をするべき。 【コーポレート・ガバナンス一般】 ●コーポレート・ガバナンス原則を発展させるなどにより、コーポレート・ガバ ナンスにおけるベストプラクティスを定める規範を作成し、株主と会社との間 の建設的な対話を確保するために、Comply or explain の仕組みを導入するべき。 ● 上場会社の取締役会は、明確なコーポレート・ガバナンスのガイドラインを持 つべき。企業年金連合会のコーポレート・ガバナンス原則を受け入れることは 価値ある第一歩の1つである。 【その他】 ● 取締役の任期は、複数年ではなく1年間であるべきであり、任期をずらすこと もするべきでない。 ●経営陣の責任においては、長期的に株価を上昇させ会社の価値を高めることと、 定期的な配当を含め余剰資本を株主に返すことを含めて、株主価値がもっとも 重要であるべき。

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● アメリカの ERISA 法のように、日本でも仲介業者(インベストメントマネージ ャー、受託者、年金基金、寄付金基金など)による信認義務に関して、明確な 基準が必要。上場企業の取締役に対しても同様の義務を課すべき。 ● 会計監査人は監査機能だけを果たすべきであり、コンサルティングや税準備な どのサービスを会社に対して提供するべきでない。 ● 日本は効率的な支配権市場を発展させる必要がある。そのためには、会社法・ 金融商品取引法などの法令、各種規制は、調和が取れている必要がある。 ● コーポレート・ガバナンス報告書を、表計算ソフトで編集できる形でデータベ ース化してほしい。 ● 無配企業に対して、ペナルティを設ける。 ※ 本資料は、本件意見募集に対して寄せられた意見の概要を紹介することを目的とし ており、それぞれのテーマに関する当取引所の見解を示すものではなく、また、今 後の当取引所の施策の方向性を示すものでもありません。 ※ 寄せられた意見につきましては、意見の多寡にかかわらず参考にさせていただきま すので、同様の意見が多数寄せられたことをもって施策の方向性を決定するという ことではありません。 ※ 寄せられた意見の中には個別具体的な事例について言及するものもありましたが、 それらの意見については一般化した意見として紹介しております。 以上

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M&A をとりまく現状に関する投資家意見の概要

― 買収防衛策を中心に ―

2008年8月26日

株式会社東京証券取引所

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目 次 一 はじめに... 2 二 投資家の意見の収集方法... 3 三 投資家からの意見の紹介... 3 1 概観...3 2 投資家からのコメント...3 (1) 買収防衛策の現状に関する評価...3 (2) 導入について...4 (3) 発動について...5 (4) 買収防衛策に関するルール等について...5 3 その他買収防衛に関連して寄せられた意見...5 四 まとめ... 6 <資料編>... 7 上場会社による買収防衛策の導入状況の分析...7 買収防衛策に関する当取引所のルール...9 買収防衛策に関して寄せられた投資家の声... 11 本レポートで紹介する意見は、投資家から当取引所に寄せられた意見をとりまとめたものであ り、その分類や集約方法については、当取引所の判断に基づくものであるが、内容については、 当取引所の意見や、将来的施策を何ら示すものではないことにご留意いただきたい。

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一 はじめに

企業のM&Aは、適正に行われれば企業価値を高め、産業の再編を促すほか、海外の資 本を日本に呼び込む手法でもあり、国際的な連携を促す効果も期待されている1。かかるM &Aの活発化は一般的に我が国経済の活性化に資するほか、対日直接投資を促進する上で も望ましい効果が期待されている2。 しかしながら、日本においても敵対的買収が珍しくなくなり、産業界・経済界の危機感 を背景に、買収防衛策を導入する公開会社は500社を超える状況3となり、現実に買収防 衛策が発動される事案も出現した。このような状況については、買収防衛策の導入等に係 るルールの理解が定着していないことや司法判断に対する理解の混乱がみられること等か らM&Aの円滑な発展が妨げられ、これが諸外国からの投資の阻害要因となるおそれが出 てきているとの指摘がある4。 東京証券取引所(以下「当取引所」という。)では、これまでも、企業行動規範で買収防 衛策の導入に関する尊重事項を定めてきたほか、開示事項の充実を図るなど、株主・投資 者保護のために様々な方策を講じてきたところであり5、また、本年度の重点課題としても、 上場会社のコーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備を掲げ6、M&Aに関する事項 を含めて広く検討を進めていく方針としているが、最近の買収防衛策の増加を懸念する声 の一層の高まり7や、経済産業省の企業価値研究会における買収防衛に関する報告書の見直 し8に伴う今後の実務への影響等を勘案し、M&Aに関する事項については市場開設者とし てより早急に取り組むべき課題であるとの認識から、今後の具体的な制度整備に向けての 参考とするため、コーポレート・ガバナンス全般に対して行った投資家の意見聴取のうち、 M&Aに関するものを中心に集約を行い、その結果をここにとりまとめることとしたもの である。 1 自由民主党総合経済調査会企業統治に関する委員会「公正なM&Aルールに関する提言」(2005年7 月7日)参照。 2 対日投資有識者会議「対日直接投資の抜本的な拡大に向けた5つの提言」①我が国における企業のM& A活動(2008年5月19日)参照。 3 最近の買収防衛策の状況については、資料編7頁参照。 4 対日投資有識者会議「対日直接投資の抜本的な拡大に向けた5つの提言」②早急な買収ルールの整理・ 明確化(2008年5月19日)参照。 5 資料編9頁参照。 6 東京証券取引所「2008年度上場制度整備の対応について」(2008年5月27日)参照。 (http://www.tse.or.jp/rules/seibi/2008program.pdf)。 7 ACGAより公表された日本のコーポレート・ガバナンス白書 (http://www.acga-asia.org/public/files/Japan%20WP_%20May2008.pdf。日本語版は、 http://www.acga-asia.org/public/files/ACGA_Japan_WP_May2008_(Japanese2).pdf)も同様の懸念を示している。 8 経済産業省が主催する企業価値研究会では、2005年5月27日に企業価値報告書を公表し、これを 受けて、経済産業省及び法務省が「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関す る指針」を公表しており、広く上場会社の指針として利用されてきた。企業価値研究会では、上記指針が 制定されて以降500社を超える我が国企業に買収防衛策が導入された実態に鑑み、本年6月30日に、 今日において株主や投資家の理解と納得を得ることができるような合理的な買収防衛策の在り方を示すこ とを目的として、投資家、産業界をはじめ、関係各方面の多様な意見を反映した「近時の環境変化を踏ま えた買収防衛の在り方」を公表している。

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二 投資家の意見の収集方法

M&Aに関する投資家の意見を集約するにあたり、当取引所では、以下のような方法に より、投資家の意見聴取を行った。 まず、個別ヒアリングによるもので、これは、本年7月22日に開催された主にM&A に関する投資家ヒアリング9によるもののほか、個別面談による意見聴取を含んでいる。 このほか、当取引所において、本年6月26日から7月25日にかけて行ったコーポレ ート・ガバナンス全般に関する投資家アンケートによるものであり、国内外の投資家から 合計41件の意見(海外機関投資家30件、国内機関投資家6件、国内個人投資家5件) が寄せられているが、本報告書では、このうちM&Aに関係するものを取り上げた。

三 投資家からの意見の紹介

1 概観 M&Aには、様々な態様がありうるが、当取引所では、特にM&Aの態様を限定するこ となく、投資家の意見聴取を行ったところ、その多くが、買収防衛又はそれと同等の効果 を有する持合いや第三者割当て10など、敵対的買収を前提とするものであった。そのほかに は、買収防衛策の問題に派生して公開買付ルールの強化が必要であるとの意見や、合併や M&Aの一手段としての第三者割当てへの意見等も寄せられている。 2 投資家からのコメント 上場会社の導入する買収防衛策に関し、当取引所のヒアリングやアンケート調査に対し て寄せられた意見は、大きく分けて、導入状況そのものへの評価、導入の目的・手続き・ 導入後の体制に関するもの、発動の手続き、その他に関するものに分類することができ、 その概要は以下のとおりである。 具体的に寄せられた意見については、資料編11頁を参照されたい。 (1) 買収防衛策の現状に関する評価 買収防衛策に対する現状の評価については、適切な買収防衛策の導入や発動の在り方に について議論する以前に、そもそも買収防衛策自体を歓迎しないとする意見が多数寄せら れた。実際に買収防衛策を導入した企業のパフォーマンスは悪いとのデータを示した上で、 一般株主や投資家にとっては好ましいものでないことは明らかであるとする意見をはじめ、 本来、買収防衛策は買収者との交渉の道具として用いられるべきところ、日本の実態は、 既存の経営陣の保身のために発動を前提としており、戦略的買収者との交渉についても拒 9 当該投資家ヒアリングの議事要旨については、http://www.tse.or.jp/rules/seibi/2008hearing.pdf参照。 10 買収の一手段として用いられる第三者割当て(支配権の移動を目的とするもの)ではなく、敵対的買収 者を排除するためにその権利の希釈化を目的として行われるもの。

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もうとする印象が強いとする意見や、根本的にその会社が買収防衛策を必要とする納得で きる理由が見当たらないとする意見のほか、株式の売却機会を狭める可能性という観点か ら市場全体の流動性の低下、ひいては日本市場からの投資家離れの危険性に言及するもの などが見られた。 一方で、既存の経営陣と潜在的買収者による提案を評価する適切な時間を株主に提供す るために買収防衛策には一定の意義があることから、買収防衛策が長期的な株主価値の向 上に資することについて十分な説明があり、かつ、スキームの内容が経営者の恣意性を排 除するものである場合など一定の条件を満たす場合には賛成するとの意見も寄せられてい る。 なお、最近における買収防衛策の廃止や継続見送りの動きについては評価する意見が寄 せられている。 (2) 導入について まず、導入にあたっては、経営陣の保身や株主への説明責任を妨げることを目的とする ことは許されず、その目的を限定すべきであるという意見がみられた。具体的には、投資 家に対する情報提供の観点やより良い価格を得ることができるための交渉の手段とすると いう観点から、あくまで「少数株主の権利を守る」目的に限定すべきであるとの意見や、 買収防衛策は濫用的買収者に対して適用するものではあるが、資本市場を歪めることのな いよう「真」の濫用的買収者のみが対象となるよう限定すべきとの意見などがあった。 導入の手続き面では、買収防衛策の導入における意思決定過程において、株主の利益と なるかどうかをきちんと判断できる仕組みが望ましいという意見が多数を占めた。その具 体的な手段としては株主による承認を必要とすることや、独立社外取締役を含む取締役会 で意思決定すべきとの意見があった11。 買収防衛策の内容面については、買収者に対して金員を交付する買収防衛策は、短期的 な利益追求のため特定の株主に破壊的な活動に関与することを奨励しかねないため支持し ない旨のコメントが数点寄せられており、この点については本年6月30日に公表された 企業価値研究会の「近時の環境変化を踏まえた買収防衛の在り方」(以下「企業価値研究会 の新報告書」という。)での整理に沿うものといえる。 さらに、導入後のガバナンスについて言及するものとして、買収防衛策は、取締役の地 位を強化するものであるから、発動に関する判断という局面に限ることなく独立取締役の 導入が必要であるという意見があった。 11 この点、本年6月30日に公表された企業価値研究会による「近時の環境変化を踏まえた買収防衛の在 り方」では、株主が買収の是非を適切に判断するための時間・情報や、買収者・被買収者間の交渉機会を 確保する場合については、恣意的運用がなされないことを前提に、取締役会がこれを導入することが認め られるとしている。

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(3) 発動について 買収防衛の発動に関する意思決定については、公正性の担保は不可欠であり、取締役会 の責任強化による実効性の確保や独立取締役の存在を前提として、取締役会であるとする ものと、適正な株主構成(必要以上の持合いがないことが前提)のもとでの株主総会決議 によるべきとするもののいずれの意見も寄せられており、投資家サイドにおいても明確な 方向性は見出せていないことがうかがえた12。 なお、株主総会決議によるべきとする意見については、それは株式持合いを助長しかね ないとする意見が寄せられているほか、買収防衛策のスキームとして多くの会社が採用し ている独立委員会については、適正に機能するような構成が望ましいが、現状の委員会の 独立性や専門性について疑問視する意見が多く見られた。 (4) 買収防衛策に関するルール等について 以上、買収防衛策そのものについての意見のほか、買収防衛策に関連するルール等につ いての意見も寄せられている。 まず、買収防衛策に直接関連するルールとしては、企業価値研究会の新報告書が存在す るが、同報告書における、買収防衛策の導入や発動に関し、形式的に株主総会にその判断 を委ねることは「取締役の責任逃れ」であり、説明責任を果たしていない旨の指摘につい ては、同様の意見が寄せられている一方で、同報告書により示された取締役の行動規範に 関しては、大きな方向性としては賛同を示すものの、当該報告書の拘束力・実効性に懸念 を示す意見が寄せられている。 また、現状の法制面への意見として、直接的に買収防衛策の導入方法や弊害防止策を検 討するよりも、TOB規制の見直し(100%買付ルールの導入)を行うことによって、 強圧的な買収を排除することで、過剰な買収防衛策を講じる必要をなくすことで、株主が 最終的に提示された株価で株式を売却するか、保有するかという単純な判断で平等を保つ こととすべきとの意見や、強圧性に対する方策としてフェアネスオピニオンの活用や公開 買付け終了前に応募しなかった株主に対して引き続き株式譲渡の機会を提供することがで きる米国の制度(Subsequent Offering Period)についても検討すべきといった意見などが寄 せられている。フェアネスオピニオンについては対象会社に開示義務がないことを問題視 する声も寄せられた。 3 その他買収防衛に関連して寄せられた意見 以上が、買収防衛策に関して投資家から寄せられた意見であるが、投資家からは、買収 防衛策と類似の効果を有するものとして、買収防衛策同様に規制する必要があるとして、 12 この点、企業価値研究会では、株主意思の原則との関係について、①株主が買収の是非を適切に判断す るための時間・情報や、買収者・被買収者間の交渉機会を確保する場合、②買収提案の内容に踏み込んで 実質的に判断を下して発動し、買収をとめる場合に分けて整理している。

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