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序文(pdf)

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Academic year: 2021

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ellfct2:<2015/6/5>(9:23)

kbdbook6a<2014/08/08>: pLaTeX2e<2006/11/10>+0 (based on LaTeX2e<2011/06/27>+0):

本書は大学4年生と大学院初年度の学生を対象とした何年かにわたる講義

ノートをもとにしてまとめられた.まず気ままな一連の講義の機会を与えてく ださった津田塾大学数学教室と講義につき合ってくれた学生諸君に,さらに

一部についてはパキスタン,LahoreのAbdus Salam School of Mathematical

Scienceと大学院生諸君にも感謝する. 本書の話題は楕円積分に始まり,楕円関数の虚数乗法にまでおよぶ.さらに 最後に超楕円積分や超楕円曲線とそのJacobi多様体の紹介も試みる.この最 後の話題についてはRiemann-Rochの定理に依拠して第一種微分の空間を決 定し,これを用いて紹介する.しかし緻密な証明には踏み込まない. 本書では楕円関数を複素平面上の有理型関数で実数体上で線型独立な二つの 周期を持つものとして捉える. 歴史的に観れば,楕円関数は,微分積分法による円弧の求長公式を踏み台に して,まず楕円やレムニスケートの求長積分の積分関数として捉えられ,もっ ぱら実数の世界における微分積分法の枠組みのなかで研究されていた.18世 紀の半ばになってdi Fagnanoは,円弧の求長に伴う三角関数の加法公式に対 応するものとして,Jacob Bernoulliのレムニスケート曲線に伴うレムニスケー ト関数に対する「加法公式」を得た.これに刺激されたEulerは何年もかけて 楕円積分に対してその一般化をなしとげた.またLegendreは「楕円積分」の 積分関数を「楕円関数」と呼び,それらについての集成をまとめあげるととも に,その関数値の表を作成して公刊し,彼に続く若き英才たちに旅立ちの踏み

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ii 序 石を与えた.さらに19世紀に入るころにはGaussがまったく新しい方向性を 与えた.特に複素数の世界での微分積分法の展開が実り豊かなことを例示して 若き英才たちに強い影響をもたらした.一つには,多項式を複素関数として捉 えて代数学の基本定理の証明の厳密化を図ったことがある.また直接には彼の 画期的な円分論がある.これは複素指数関数の複素平面上の単位円の等分点で の,あるいはこの関数の周期2π√−1の等分値での値についての代数的な考察 であり,彼の有名な『数論研究』の第VII章で与えられた.特にこの章の序文 ではレムニスケート関数についての同様な考察が豊かな数学をもたらすことが 示唆された.そしてAbelが,楕円積分の積分関数の複素関数としての逆関数 を取り上げ,その2重周期性を発見した.また彼は楕円積分に基づく変数分離 型微分方程式の代数的な解に基づいた楕円関数の虚数乗法を提示し,虚2次体 における数論との関連を示唆した.楕円関数論におけるAbelのライヴァルで もあったJacobiはAbelの早世を悼み,彼の画期的な寄与を記念するため,楕 円積分の積分関数の複素関数としての逆関数を新たに「楕円関数」と呼ぶこ と,ならびに,「楕円積分」という用語を新たに導入して旧来のものの記述に あてることを提案した.上ではすでに楕円積分という用語を自在に用いてきた が,実はこれはJacobiによる提案に始まる.(因みに「虚数乗法」という用語 を導入し,その理論的な枠組みを構想したのはKroneckerで,これはAbelの 没後28年を経た1857年に始まる.) 以下に本書の内容について略述しておく. 本書では複素数の世界における関数の微分積分を展開する必要がある.第 1章では,このときに生じる√z, z C,を巡る問題の対処法としてその Riemann面の考え方を導入し,さらに進んで楕円積分についてのRiemann面 を解説して背景にある幾何学的な観点を紹介する. 第2章では実数の世界における微分積分をいわば形式的に複素数の世界へと 拡張する.ところがこのとき,思いもかけないまったく新しい世界が広がるこ とになるのだが,特に楕円関数の解説に必要とされる事柄を中心として証明に はあまりこだわらないで複素関数論について概観する. 第3章は本書の中心的主題である楕円関数の解説に充てられる.楕円関数

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序 iii を実数体上で線型独立な二つの周期をもつ複素平面上の有理型関数として捉 える.そしてまずそのような二つの周期から生成される階数2のZ-加群であ る周期加群 m を取り,それに対してWeierstrassの関数℘(m; z)とその導関 数℘′(m; z)を与え,m に対応する楕円関数が必ず存在することを示す.さら にこれら二つの楕円関数の間のWeierstrassの関係式を決定するとともに,剰 余加群として与えられる複素輪環面C/m を射影平面に埋め込み,その像と してWeierstrassの標準形で定義される楕円曲線を与える.継いでこの複素 輪環面の自然な加群の構造がもたらす楕円関数の加法構造を書き上げ,対応 する楕円曲線における加法を表示する.さらに周期加群で定まる楕円関数体 C(℘(m; z), ℘′(m; z))の抽象的な体としてのC 上の同型類がその「モデュラス」 によって決定されることを示し,3.9節で楕円モデュラー関数を紹介する. 第4章では上でも触れたAbelの意味での楕円関数の虚数乗法から出発し, 虚数乗法を持つ楕円関数を対応する複素輪環面C/m の自己準同型環によって 特徴付け,現代的な虚数乗法論の歴史的な根拠を明かす.さらに虚数乗法を 持つ楕円関数体の「特異モデュラス」がもたらす虚2次体の数論,特にそれが 「Hilbertの類体」を生成することを紹介する. 最後の第5章では,種数が2以上の超楕円積分と超楕円曲線について,特 にJacobiが切り開いた多変数Abel関数への道へのおおざっぱな導入部を与え る.ここでは,超楕円曲線上の第一種微分,すなわち正則な1次微分形式の空 間の双対空間を用いたJacobi多様体の構成法を略述する.5.3節では,一つに はこの第一種微分の空間の次元が種数と等しいことを納得するための一助とし て,Riemann-Rochの定理を紹介する.もちろんこの章での解説は種数が1, すなわち楕円曲線の場合も一貫して含まれており,第3章との対比によって楕 円関数の立ち位置に対する理解が深まることを希望する. 基本的な参考文献についても述べておこう.上記のように本書の第2章では 微分積分を複素数の世界で展開する.ここでは,岸正倫・藤本担孝共著『複素 関数論』[9]および高木貞治著『解析概論』[14]に委ねて詳細な解説に踏み込 まなかった部分がある.本題である楕円関数に関しては岩澤健吉著『代数函数 論』[2]および梅村浩著『楕円関数論 楕円曲線の解析学』[8]の助けを借りた.

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kbdbook6a<2014/08/08>: pLaTeX2e<2006/11/10>+0 (based on LaTeX2e<2011/06/27>+0):

iv 序 また,読者諸君にぜひとも馴染んでほしいものとして佐武一郎著『現代数学の 源流』上,下[10]をあげておく.これは学生諸君が大学において唐突に直面し て戸惑いを感じかねない数学について,その必然性を解き明かすために「基礎 理論を論理と歴史の両面から解説し,数学の面白さに対する興味や関心が,高 校から大学へと自然に繋がり,高まってゆくように」という「著者の願望」が 結実したものである.本書では話題を楕円関数に特化し,できるだけそれを 「手で触れながら」調べようとしているが,もしこれが『現代数学の源流』に 展開される広大な世界への一つの入門書の役割を果たせるならば筆者にとって は望外の喜びである. なお,第5章からの自然な展開としてのAbel多様体とその虚数乗法に関し ては,筆者の最新の論文[22]の§6で参考文献とともにその入り口が略述され ている.興味がある読者はまずこれを参照されたい. 最後に謝辞を付す.立教大学の佐藤文広氏は概略が書き上げられた段階での 原稿に目を通し,いくつかの有益なご助言と鼓舞とをくださった.また共立出 版(株)および特に同編集部の赤城圭氏には筆者はかねてより「数学文献を読 む会」についてお世話になって来ているが,今回本書の出版をお願いしたとこ ろ快くお引き受け下さった.ここに記して筆者の謝意を表す. 2015年4月 調布にて

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